JPH0665735A - 反応性高周波バイアススパッタリング装置 - Google Patents

反応性高周波バイアススパッタリング装置

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JPH0665735A
JPH0665735A JP14279191A JP14279191A JPH0665735A JP H0665735 A JPH0665735 A JP H0665735A JP 14279191 A JP14279191 A JP 14279191A JP 14279191 A JP14279191 A JP 14279191A JP H0665735 A JPH0665735 A JP H0665735A
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宗憲 石見
Noboru Kuriyama
昇 栗山
Yoshiki Kuroda
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 相対向する高周波スパッタリング電極間をバ
イアスが印加される被処理物が移動しても、一定でしか
も安定なバイアス電界を発生することができ、ひいては
高品質なスパッタリング成膜を量産的に形成できる反応
性高周波スパッタリング装置を提供する点。 【構成】 本発明に係わる高周波スパッタリング装置で
は、相対向して配置するスパッタリング電極に印加する
高周波を発振器により発振すると共に、グリッドをスパ
ッタリング電極と被処理物支持機構間に設置するので、
高周波電流は、被処理物に流れずにスパッタリング電極
にながれるので、被処理物の表面状態や被処理物支持機
構の状態に依存する高周波インピーダンスの変化を受け
ずに安定したスパッタリング放電を発生・維持すること
ができる。更に、高周波の位相をほぼ180度または1
80度±30度ずらすことは、周波数のずれによる干渉
がなくなるので好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スパッタリング成膜装
置に係わり、特に、成膜中に被処理物に電界を加えて膜
質を制御する高周波バイアススパッタリング装置に好適
するものである。
【0002】
【従来の技術】高周波スパッタリングによる成膜工程中
に、被処理物に電界を印加して成膜を完了するバイアス
スパッタリング法は、被処理物に堆積する膜に関する密
着性、被覆性、成膜密度及び膜の結晶性の向上などの目
的から多用されている。
【0003】この目的を達成する高周波バイアススパッ
タリング装置では、被処理物に直流バイアス電界が印加
できるように直流電源または交流電源に接続する方式を
採っている。この内、直流電源を用いる方法は、被処理
物及び成膜の導電性が高い場合に使用し、交流(高周
波)電源を用いる構造を図1に明らかにする。
【0004】即ち、導電性材料例えばステンレスから成
る減圧容器1は、図示しない排気機構ならびに気体導入
機構を付設して所定の気体圧力に制御可能とし、更に内
部にマグネトロンスパッタリング放電(以後スパッタリ
ング放電と記載する)を発生するのに必要な部品として
平板状の両マグネトロンスパッタリング電極2(以後ス
パッタリング電極と記載する)と被処理物支持機構3を
互いに対向して取付ける。一方の平板状のスパッタリン
グ電極2の主面には、ターゲット4を電気的に接続して
設置すると共に、図3に示す磁界発生装置5、5を両者
間に連続して取付け、更に流路6を備えた冷却機構を一
体に形成する。図2に記載した平板状のスパッタリング
電極2、2は、簡略化していることを付記する。
【0005】しかし、平板状のスパッタリング電極2と
減圧容器1を電気的に絶縁するために両者の接触部分に
第1絶縁層7を配置する他に、固定には固定機構8を利
用しており、更に減圧容器1内の気密性を保持するため
第1絶縁層7及び固定機構8には、図示しない真空シー
ル機構を設置する。
【0006】被処理物支持機構3は、被処理物9、被処
理物ホルダ10及び遮蔽板11により構成し、減圧容器
1間との電気的絶縁を保持するために接触部分に第2絶
縁層12を配置し、更に被処理物支持機構3には、バイ
アス印加用の高周波電源13を高周波整合器14を介し
て電気的に接続し、その上被処理物9の冷却部材即ち流
路6に加えて加熱部材及び移動部材を併設する。
【0007】このような高周波バイアススパッタリング
装置での動作について説明すると、先ず高周波電源13
から発する高周波を平板状のスパッタリング電極2に印
加することにより、減圧容器1内部にスパッタリング放
電が発生し、このスパッタリング放電を介して生ずる高
周波電流が、高周波放電に面する被処理物9及び遮蔽板
11ならびに減圧容器1に流れる。更に、膜形成材料で
あるターゲット4表面に発生する負の直流自己バイアス
電位によって放電空間に存在する気体イオンがターゲッ
ト4表面を衝撃してターゲット材料が飛散する。しか
も、飛散したターゲット材料は、被処理物9表面に堆積
することによってターゲット材料から成る薄膜即ち成膜
が得られる。高周波バイアススパッタリング法により被
処理物9表面へのターゲット材料堆積過程では、被処理
物9表面でスパッタリング放電をバイアス印加用高周波
電源13により発生し、スパッタリング電極2表面と同
様に被処理物9表面を気体イオンで衝撃しながら薄膜を
形成するので、結合力の弱い薄膜部分や不必要な堆積粒
子を除去でき、安定した品質の薄膜が形成できる。
【0008】近年、LCD技術の発展に伴い基板の大型
化及び生産性の向上が求められており、図2に明らかに
した量産設備が知られている。図2では、図1と同一の
機能を発揮する部品には同じ番号を付ける。即ち、移動
可能な被処理物支持機構3の両側に平板状のスパッタリ
ング電極2を設置する方式が採られており、2個の被処
理物に同時にスパッタリング成膜を行って、生産性を向
上する利点を備えている。構造としては、減圧容器1を
三分割するために気密隔離バルブ機構15、15を設置
している。成膜工程に当たっては、気密隔離バルブ機構
15、15を減圧容器1内にセットして中央部分を10
-4〜10-5パスカルとした後、2枚の被処理物9、9を
固定した被処理物支持機構3を左側の扉16を開けて挿
入する。次に減圧機構を稼働して中央部分と同じ減圧状
態としてから、気密隔離バルブ機構15、15を解放し
て減圧容器1内を所定の減圧状態として、所定のスパッ
タリング成膜工程に移行する。なお右側の扉16は、高
周波スパッタリング後開けて移動した被処理物9、9を
取出す。扉16には気密状態が維持できる真空シール機
構(図示せず)を当然設置する。スパッタリング成膜工
程中に次々に被処理物支持機構3を移動することにな
る。
【0009】独立した高周波電源13、高周波整合器1
6を電気的に接続した平板状のスパッタリング電極2、
2のスパッタリング成膜工程では、被処理物9を配置し
た被処理物支持機構3を平板状のスパッタリング電極
2、2間を連続して移動しながら同時に成膜を堆積す
る。このスパッタリング成膜工程終了時には、図2の減
圧容器1の右側方向に被処理物9を配置した被処理物支
持機構3を移動後、前記の方法で成膜を堆積した被処理
物9の大量生産を行う。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】高周波電源13により
発生する高周波電流は、スパッタリング電極2に対向し
て配置する被処理物支持機構3や減圧容器1に流れる
が、被処理物支持機構3から対向して配置するスパッタ
リング電極2や減圧容器1にも流れる。一方、減圧容器
1の高周波インピーダンスは、常に一定であるが、スパ
ッタリング電極2及び被処理物支持機構3には、高周波
が同時に印加され、交番電界によるインピーダンスが一
定でないため安定した高周波電流が流れない。この結
果、被処理物9表面にアーク放電が、遮蔽板11と減圧
容器1間にホローカソード放電が発生するなどにより、
自己バイアス電位の大きさに影響を与えることになり、
意図的にバイアス電位を制御することが困難になる。
【0011】しかも、スパッタリング電極2に供給する
高周波電界と、被処理物支持機構3に供給する高周波電
界の発振周波数は、発振回路定数の経時変化によって正
確に一致させることが困難となり、わずかな発振周波数
のずれにより互いに干渉して低周波数のうなりを生ず
る。これによりアーク放電の発生、局部へのホローカソ
ード放電の発生が不安定になり、兩電極間に安定なグロ
ー放電を発生するのが困難になる。従って、再現性よく
バイアス電界を印加することが困難になる。
【0012】更に、移動する被処理物9に安定にかつ再
現性よく高周波電力を供給するのには、高周波電源13
と被処理物9を常に一定の高周波インピーダンスで接続
しなければならないが、成膜工程中に被処理物9を移動
する時は、常に状態が変化しているために運動伝達機構
のインピーダンスを一定に維持することは不可能に近
い。
【0013】更に図2に示したスパッタリング装置で
は、膜質制御を目的としてバイアススパッタリングを行
うと、平板状のスパッタリング電極2、2により発生す
るスパッタリング放電の中を第3の高周波が供給される
被処理物支持機構3を移動するために、高周波の干渉は
より複雑であり、安定なスパッタリング放電を発生する
のが困難である。
【0014】図4には、図1のスパッタリング装置の平
板状の両スパッタリング電極による放電における曲線
が、縦軸にVDC(電圧V)を、横軸に放電時間を採っ
て示すが、極めて不安定な放電状態が明らかである。V
DCは、高周波放電を行った場合、スパッタリング電極
に発生する直流自己バイアスである。
【0015】本発明は、このような事情により成された
もので、相対向する高周波スパッタリング電極間を、バ
イアスが印加される被処理物が成膜工程中移動する際で
も、被処理物に一定でかつ、安定なバイアス電界を発生
することができ、ひいては高品質なスパッタリング成膜
を量産的に形成できる反応性高周波スパッタリング装置
を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するのための手段】減圧容器に相対向して
取付ける一組の高周波マグネトロンスパッタリング電極
と,前記減圧容器及び高周波マグネトロンスパッタリン
グ電極の接触部分に設置する絶縁物層と,前記高周波マ
グネトロンスパッタリング電極に電気的に接続して配置
するターゲット層と,前記高周波マグネトロンスパッタ
リング電極及びターゲット間に一体に取付ける磁界装置
と,前記高周波マグネトロスパッタリング電極間に配置
する減圧容器と絶縁する被処理物支持機構と,前記被処
理物支持機構に固定して設ける被処理物と,前記高周波
マグネトロスパッタリング電極と前記被処理物間に配置
する前記ターゲット面積以下の部分に網目を形成するグ
リッドと,前記高周波マグネトロンスパッタリング電極
に電気的に接続する発振器を備える点が、本発明に係わ
る高周波スパッタリング装置の特徴である。
【0017】更に、前記高周波マグネトロンスパッタリ
ング電極間に磁界を印加する点と、前記高周波マグネト
ロンスパッタリング電極に電気的に接続して設置するタ
ーゲット表面の磁界を可変にする点と、前記ターゲット
表面と被処理物表面間の距離を可変にする機構を磁界装
置に設ける点にも前記高周波スパッタリング装置の特徴
がある。
【0018】
【作用】本発明に係わる高周波スパッタリング装置で
は、相対向して配置する一台以上の高周波マグネトロン
スパッタリング電極即ちスパッタリング電極を配置し、
かつ、被処理物支持機構は移動可能もしくは静止状態で
減圧容器に配置する。被処理物のインピーダンスを高め
る手段として被処理物とスパッタリング電極間に配置す
るグリッドに高周波電流が流れないようにする。このた
めにスパッタリング電極に高周波電流が流れるので、高
周波スパッタリング放電は、被処理物表面状態や支持機
構の状態に依存する高周波インピーダンスの変化を受け
ずに安定かつ高品質な成膜を安定して堆積することがで
きために、高品質なスパッタリング成膜を得る。
【0019】加えて、相対向して配置するスパッタリン
グ電極に印加する高周波を発振器により発振させると共
に、高周波の位相をほぼ180度もしくは180度±3
0度ずらすことによって周波数のずれによる干渉を発生
することなくスパッタリング放電が得られる。しかも、
相対向して配置するスパッタリング電極間に配置する被
処理物の高周波電位を一定に保持することが可能になる
ので、被処理物では、高周波電位の変動に伴う異常放電
を防ぐことができると共に、一定の直流自己バイアス電
位が発生する。また、相対向するスパッタリング電極間
方向に磁界を印加するとによって高周波電流がスパッタ
リング電極近傍の減圧容器などに流入せずに被処理物に
流れるのでバイアス電位が大きくなる。従って、複数の
高周波による干渉に起因する異常放電などの問題が起ら
ない。更に、印加するバイアス電位の大きさの制御は、
磁界の強さと、スパッタリング電極表面からターゲット
と被処理物の距離により制御する。
【0020】
【実施例】本発明に係わる実施例を新番号を付けた図5
乃至図12を参照して説明する。即ち、本発明に係わる
高周波バイアススパッタリング装置では、減圧容器を気
密隔離バルブ機構により分割して挿入搬出可能な被処理
物にスパッタリング成膜を行い、また、被処理物を支持
する被処理支持機構をスパッタリング電極間に位置する
減圧容器部分に静止または移動しながらスパッタリング
成膜工程を行う。実施例の説明として、移動可能な装置
の構造から始める。導電性物質例えばステンレスから成
る減圧容器20は、気密隔離バルブ機構21、21によ
り例えば3つに区分けすることができる。本実施例で
は、単一の種類から成る高周波スパッタリング成膜を堆
積する方式を採っているが、複数種の成膜を堆積する場
合には、相対向して配置する一組のスパッタリング電極
の複数組を減圧容器20に配置するために気密隔離バル
ブ機構により多分割できるようにして、所定の複数種の
高周波スパッタリング成膜を堆積する。
【0021】スパッタリング放電により成膜を堆積する
被処理物22は、被処理物支持機構23にセット後、減
圧容器20に出入れするために気密隔離バルブ機構2
1、21を駆動して減圧容器20を三分割する。即ち、
被処理物22をセットした被処理物支持機構23を減圧
容器20に挿入するには、所定の真空度例えば10-5
スカルに維持した減圧容器20を、気密隔離バルブ機構
21、21をセットして中央部分を閉じる。次に、減圧
容器20の一部に設置した、開閉自在でかつ気密状態を
維持できるシール機構(図示せず)を備えた扉24、2
4を開けて大気状態としてから、被処理物22をセット
した被処理物支持機構23を挿入する。次に扉24、2
4を閉じてから減圧して中央部分と同一の真空度とし、
更に気密隔離バルブ機構21、21を再度開けて減圧容
器20内を同一真空度としてスパッタリング放電に移行
する。
【0022】スパッタリング放電を行うのに必要な一組
以上の平板状のスパッタリング電極25、25を減圧容
器20に相対向して設置するが、減圧容器20との接触
部分には、絶縁物層26を設置する。また、図8に示す
ように、磁界装置27及び後述するターゲット31を平
板状のスパッタリング電極25、25に連続して形成し
て一体とする。即ち、放電により高温となる平板状のス
パッタリング電極25、25は、熱伝導性の良い材料例
えば銅で構成し、図8のように銅で構成する平板状のス
パッタリング電極本体28内に磁界装置27を設置し、
これに連続してターゲット31を半田付けにより電極本
体28に取付ける。
【0023】本実施例の磁界装置27には、冷却媒体が
流れる水路29を設け、これを囲んで設置する複数の磁
石30…は、極性の違うものを互い違いに配置すると共
に、相対向して配置する平板状のスパッタリング電極2
5、25では、極性の違う磁石30が向合った状態とす
る。更に、第1モータ32により鉛直方向に移動可能と
するが、減圧容器20と平板状のスパッタリング電極本
体28の間には、絶縁物層26を形成して絶縁を確保す
る。
【0024】以上の構造を備えた磁界装置27では、極
性の違う磁石30が向合って配置されているために、図
8の矢印により明らかにするように、平板状の両スパッ
タリング電極25、25方向の磁力線aと、隣合った磁
石30、30に向かう磁力線bが発生し、同極性の磁石
を向合わせた従来の技術と違って磁力線aが得られるの
が特徴である。
【0025】被処理物22をセットした被処理物支持機
構23を、図6aの平面図と図6bの側面図により説明
すると、一対の支持部33には、成膜を堆積する被処理
物22例えばガラスをセットするが、その上端には、ガ
ラスが倒れないようにベアリング機構を備えたガイド3
4を設ける。更にまた、下の支持部33には、第2モー
タ35に直結した移動機構即ちローラ36を設置してガ
ラス22が減圧容器20内を移動可能にする。
【0026】また、被処理物22としては、ガラスのよ
うな絶縁物に限定されず、導電性材料も適用可能であ
る。ローラ36は、図6に明らかにしたように3重構造
の中心部分にテフロンから成る第1絶縁部37を設置し
て被処理物支持機構23と減圧容器20を絶縁し、図7
aには、ローラ36と支持部33の間にギヤ構造38を
設置した被処理物支持機構23の上面図を示した。また
図7bは、被処理物22を支持部33に2個取付けた例
を示しており、この場合は支持部33に第2絶縁部39
を設置する。前記実施例では、減圧容器20を3分割し
て一種類の材料を堆積する手法が示されているが、複数
種類の材料を堆積するために、減圧容器20に相対向し
て配置する複数組の平板状のスパッタリング電極25を
設置することもある。この場合は、減圧容器20に気密
隔離機構21を平板状のスパッタリング電極数より一つ
余分に設置して、前記実施例と同様に被処理物支持機構
23の挿入などに備える。
【0027】次にグリッドについて図9a、b、cによ
り説明する。グリッド40は、図9a、bに明らかにす
るように導電性金属例えば銅で網目41…を構成してい
る。グリッド40は、図9aにあるような被処理物22
に堆積する成膜に対応する面積だけに網目41を設けた
型と、図9bのように全体に網目41を形成した型も適
用できる。
【0028】グリッドの特徴としては、図9cに示すよ
うに、被処理物支持機構23の移動方向に沿った方向即
ち横方向の金属線42、42の関係がある。即ち、隣り
合った横方向の金属線Aの下端は、金属線Bの上端より
上方に位置して堆積する成膜の厚さが不均一になること
を防止する。
【0029】取付け場所は、通常スパッタリング電極2
5に取付けたターゲット31を囲んで減圧容器20に、
捩子などで機械的に固定する。
【0030】次に、被処理物22を減圧容器20内を移
動して高周波放電を行う本発明に係わる高周波スパッタ
リング装置の放電について説明するが、高周波電源から
高周波を印加する減圧容器20が基準電位となること及
び実際の放電には、例えばアルゴンガスを導入して例え
ば10-2パスカル程度の減圧状態とすることを付記す
る。
【0031】このようなスパッタリング放電は、後述す
る手段により安定化することができるものの、それだけ
で被処理物22に制御されたバイアス電位を発生するこ
とはできない。即ち、スパッタリング放電が発生する
と、平板状のスパッタリング電極26、26の対向電極
となる被処理物支持機構23に高周波電流が流れるため
に自己バイアスが発生する。
【0032】しかし、被処理物支持機構23の移動に伴
うインピーダンスの変化によって流れる高周波電流が変
化して自己バイアスが一定とならない。
【0033】本実施例に係わる高周波バイアススパッタ
リング装置の平板状のスパッタリング電極25には、図
5に示すように独立した高周波整合器43を介して高周
波電源に電気的に接続する。また、高周波電源として
は、高周波発振器44、発振した高周波を2系統に分配
して位相をずらす位相調整器45、電力を増幅し2つの
平板状のスパッタリング電極25に高周波を供給する独
立の電力増幅器46と他の電力増幅器47により構成す
る。
【0034】このような構成によると、高周波発振器4
4により発振した高周波を位相調整器45により位相を
ほぼ180度または180度±30度ずらして、平板状
のスパッタリング電極25、25に分配・増幅して供給
する。
【0035】これにより、発振回路に経時変化が発生し
ても、平板状のスパッタリング電極25、25に供給す
る高周波電力の周波数が同一となり、平板状のスパッタ
リング電極25、25により生ずる高周波スパッタリン
グ放電における周波数の違いによる異常放電は、発生し
ない。
【0036】その上、平板状のスパッタリング電極2
5、25に供給する高周波は、位相がほぼ180度また
は180度±30度異なっているために、その間に配置
する被処理物支持機構23の高周波電位は、減圧容器2
0を接地することにより常に一定に保たれる。従って、
被処理物支持機構23を配置する減圧容器20に対する
電位変動により、被処理物支持機構23と減圧容器20
間に異常放電が発生しない。
【0037】このような構造により発生するスパッタリ
ング放電を安定化することができるが、これだけでは、
被処理物22に制御されたバイアス電位を発生させるこ
とはできない。従って前記のようなインピーダンスに着
目した手段を採っている。
【0038】次に放電の変動に対応して変化するVDC
については、縦軸にVDC電圧(V)を、横軸に放電時
間(分)を採って両者の関係を示す図11及び図12に
より検討する。即ち、被処理物支持機構23と減圧容器
20間に絶縁有無によるVDC電圧の相違が明確に示さ
れており、両曲線を比べると、図12即ち絶縁を施した
方がはるかに安定している。
【0039】また、先ず従来の技術即ち発振器の位相を
ずらしていない場合は極めて大きな変動が現れる(図4
参照)の比べて、図11、図12では極めて平坦になっ
ており、本発明の有効性を明らかに示している。しか
し、図11の曲線を詳細に見ると、周期的に多少大きな
変動が現れているのに対して、図12では現れていない
ことが分る。また、図10は、被処理物22の移動及び
被処理物支持機構23に取付けるローラ34等に絶縁を
施さない時に得られる曲線であり、図11のようにロー
ラ34等に絶縁を施すと図10より極めて平坦な曲線が
得られる。
【0040】更に、本発明に係わる高周波スパッタリン
グ装置では、極性の違う磁石を相対向して配置する方式
を採っているので、平板状のスパッタリング電極間方向
の磁力線aが発生するので、被処理物に流れるバイアス
電位が大きくなる。
【0041】
【発明の効果】以上のように、本発明に係わる高周波ス
パッタリング装置では、安定したスパッタリング放電を
発生でき、ターゲット材料が絶縁物であっても、スパッ
タリング膜が絶縁物であっても安定に堆積して成膜が得
られる。しかも、平板状のスパッタリング電極に面して
2個の被処理物を配置することによって生産性を2倍に
することが可能になる。その上、所望のバイアス電位制
御、所望のスパッタリング成膜の形成が可能になるなど
顕著な効果を発揮でき、生産性の高い高周波スパッタリ
ング装置である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の高周波スパッタリング装置の要部を示す
断面図である。
【図2】従来の他の型の高周波スパッタリング装置の要
部を示す断面図である。
【図3】従来の高周波スパッタリング装置に設置する磁
界装置の断面図である。
【図4】従来の高周波スパッタリング装置における放電
時間に対応して変化するVDC電圧を示す曲線図であ
る。
【図5】本発明に係わる高周波スパッタリング装置の要
部を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に設
置する被処理物支持機構23に関する図である。図6a
はその上面図、図6bは側面図である。
【図7】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に設
置する他の被処理物支持機構に関する図である。図7a
はその上面図、図7bは側面図である。
【図8】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に設
置する磁界装置の断面図である。
【図9】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に設
置するグリッドに関する断面図である。図9aはその一
例を示す図である。図9bは他の例を示す図である。図
9cは横線A、Bの位置関係を示す図である。
【図10】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に
おける放電時間に対応して変化するVDC電圧を示す曲
線図である。
【図11】絶縁を施した被処理物支持機構を備えた本発
明に係わる高周波スパッタリング装置における放電時間
に対応して変化するVDC電圧を示し、位相を180度
±30度ずらした高周波を印加して得られる曲線図であ
る。
【図12】本発明に係わる高周波スパッタリング装置に
おける放電時間に対応して変化するVDC電圧を示し、
位相を180度ずらした高周波を印加して得られる曲線
図である。
【符号の説明】
20:減圧容器、 21:気密隔離バルブ機構、 22:被処理物、 23:被処理物支持機構、 24:扉、 25:スパッタリング電極、 26:絶縁物層、 27:磁界装置 28:スパッタリング電極本体、 29:水路、 30:磁石、 31:ターゲット、 32、35:モータ、 33:支持部、 34:ガイド、 36:ローラ、 37、39:絶縁部、 38:ギヤ、 40:グリッド、 41:網目、 42:金属線、 43:高周波整合器、 44:高周波発振器、 45:位相調整器、 46、47:電力増幅器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 黒田 吉己 東京都江東区亀戸6丁目31番1号 セイコ ー電子工業株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 減圧容器に相対向して取付ける高周波マ
    グネトロンスパッタリング電極と,前記減圧容器及び高
    周波マグネトロンスパッタリング電極の接触部分に設置
    する絶縁物層と,前記高周波マグネトロンスパッタリン
    グ電極に電気的に接続して形成するターゲットと,前記
    高周波マグネトロンスパッタリング電極及びターゲット
    間に一体に取付ける磁界装置と,前記高周波マグネトロ
    スパッタリング電極間に位置する減圧容器部分に絶縁し
    て配置する被処理物支持機構と,前記被処理物支持機構
    に固定して設ける被処理物と、前記高周波マグネトロン
    スパッタリング電極と前記被処理物間に配置する、前記
    ターゲット面積以下の部分に網目を形成するグリッド
    と,前記高周波マグネトロンスパッタリング電極に電気
    的に接続する発振器を具備することを特徴とする反応性
    高周波バイアススパッタリング装置。
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