JPH0662403B2 - 腎臓疾患の治療または予防用薬剤 - Google Patents

腎臓疾患の治療または予防用薬剤

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JPH0662403B2
JPH0662403B2 JP15515387A JP15515387A JPH0662403B2 JP H0662403 B2 JPH0662403 B2 JP H0662403B2 JP 15515387 A JP15515387 A JP 15515387A JP 15515387 A JP15515387 A JP 15515387A JP H0662403 B2 JPH0662403 B2 JP H0662403B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、腎臓および肝臓疾患の治療および予防用薬剤
に関し、さらに詳しくは、単独に発生する腎臓疾患およ
び肝臓疾患の各々にも、さらに両臓器の疾患が併発した
場合にも優れた治療および予防効果を発揮する腎臓およ
び肝臓疾患の治療および予防用薬剤に関するものであ
る。
〔従来の技術および問題点〕
周知のように、生体における腎臓は、その尿細管上皮細
胞において、濾過および分泌機構により血液から老廃物
および生体内に取り込まれた有害物質、例えば薬物また
は毒物を尿中に排泄する機能を有する。
他方、生体における肝臓は、主として以下に列挙する3
つの機能を有する。すなわち、まず第1の機能として、
肝臓は、消化腺として働き、1日に500〜1000cc
の胆汁を分泌して小腸における脂肪の消化ならびに吸収
を助ける。また、第2の機能として、肝臓は、各種栄養
素の体内における化学的変化、貯蔵および利用、すなわ
ち、中間代謝にあずかる。さらに、第3の機能として、
肝臓は、解毒作用を営み、体外からの有害物質、例えば
毒物および体内で作られた有毒物質に酸化、還元、抱合
などの解毒処理を加え、あるいは、これを胆汁に混ぜて
廃棄するか、腎臓へ送って尿中へ排泄する。
このように腎臓および肝臓は、それぞれ独自の機能を営
なんでいるが、前記老廃物および薬物は局在的に蓄積し
やすく、そのために、これら物質に起因して腎臓および
肝臓の各単独疾患ばかりでなく、両臓器の併発的疾患が
多発しやすい。このような単独または併発的な腎臓およ
び肝臓の疾患の原因となる物質は、具体的には多岐多様
にわたるが、薬物を例にとり、各臓器ごとに分けて示す
と、以下のようである。なお、以下の列挙薬剤のうち各
頭に◎印を付した薬剤は、腎臓、肝臓の両方に障害を生
じさせるものである。
(腎障害を起こしやすい薬剤) ◎鎮痛、下熱、抗炎症剤、抗リウマチ剤 フェナセチン、アスピリン、インドメタシン、 メフェナム酸、フェノプロフェン、金製剤、 D−ペニシラミン等。
◎抗生物質 アミノグリコシド系、ポリペプチド系、 ポリエン系、セファロスポリン系、 ペニシリン系等。
◎化学療法剤 スルファミド類等。
◎抗癌剤 マイトマイシンC、ダウノマイシン、 シスプラチン、ニトロソウレア系等。
・免疫抑制剤 シクロホスファミド等。
◎麻酔剤 メトキシフルラン等。
◎利尿剤 チアジド系等。
・増影剤 (肝障害を起こしやすい薬剤) ◎罌痛、下熱、抗炎症剤、抗リウマチ剤 アセトアミノフェン、アスピリン、 フェニルブタゾン、スリンダック、 イブフェナック、金製剤等。
◎抗生物質 アミノグリコシド系、ポリエン系、 セファロスポリン系、ペニシリン系、 テトラサイクリン系等。
◎化学療法剤 サルファ剤、イソニアジド等。
◎抗癌剤 マイトマイシンC、シスプラチン、6−MP、 ニトロソウレア系等。
◎麻酔剤 ハローセン、メトキシフルラン等。
・向精神薬 クロルプロマジン系、ジアゼパム系、 バルビタール系等。
◎利尿剤 チアジド系等。
なお、前記した腎臓および肝臓の疾患の原因となる薬物
例は、以下の文献に基づいて整理したものである。
すなわち、〔臨床成人病16巻8号(1986)45〜
62頁、85〜103頁〕、〔最新医学文庫42「慢性
肝炎の診療」西岡幹夫著、(株)新興医学出版社、昭和6
2年1月26日発行、29〜31頁〕、〔臨床と研究6
3巻4号、昭和61年4月発行、38〜39頁〕、
〔「肝臓の病気」織田敏次他著、中外医学社、1980
年10月20日発行、323〜333頁〕、〔「医薬品
要覧」大阪府病院薬剤師会編、薬業時報社、昭和58年
11月10日発行〕。
以上、腎臓および肝臓疾患をそれら臓器の物質代謝機能
面から考察してきた。しかし、肝臓疾患にあっては、こ
の他に免疫機序を介すると考えられる疾患もある。
本発明で言う肝臓疾患とは、(イ)前記物質代謝機能異
常に起因する腎機能障害、例えば薬物等により生じる急
性腎炎およびかかる急性腎炎が慢性化した慢性腎炎、
(ロ)免疫機序を介する急性腎炎およびかかる急性腎炎
が慢性化した慢性腎炎、(ハ)細菌およびウィルス感染
により生じる急性腎炎およびこれらが慢性化した慢性腎
炎等、糸球体、尿細管、ループス等の肝臓部位に機能障
害を呈する疾患をいう。
また、同じく本発明で言う肝臓疾患とは、(a)前記物
質代謝機能異常ならびに生合成機能異常に起因する肝機
能障害、例えば、薬物等による急性肝炎もしくは、かか
る急性肝炎が慢性化した慢性肝炎、(b)飲酒等による
脂肪肝またはこれらが慢性化した慢性肝炎、(c)ウィ
ルス感染によるウィルス肝炎、またはこれが慢性化した
慢性肝炎、そして以上の各障害の結果生じる肝硬変、等
の広く肝臓機能障害を呈する疾患をいう。
ところで、腎臓疾患の治療方法としては、現在、その重
度に応じて、腎臓機能保持のための療法、例えば安静療
法、食事療法もしくは薬物療法、血液透析療法または腎
臓移値が知られている。前記血液透析療法は、腎疾患の
最終療法とされているが、腎臓機能障害により体内に貯
留される老廃物を血中から除去するのみで、腎機能は改
善されず、患者は生涯透析療法を続けねばならず、しか
も最終的には、多くの場合、心不全、感染症等を併発し
死に至る。他方、薬物療法としては、利尿剤、免疫抑制
剤、副腎皮質ステロイド療法、マンニトール、ラクツロ
ース療法等が現在行なわれているが、これらは、いずれ
も対症療法であり、かつ、その治療効果が乏しく、患者
は食事療法および安静療法等に依存しているのが現状で
ある。例えば、腎疾患治療剤として利尿剤が使用されて
いるが、その薬理作用は低下した腎臓機能を補うもので
あり、腎臓疾患を未然に防いだり、または腎臓疾患を治
癒するものではない。また、利尿剤のうちでも、チアジ
ド系利尿剤の大部分および非チアジド系利尿剤フロセミ
ドは、その副作用として肝臓機能障害を惹起し、治療上
好ましくないという問題点を有する。
したがって、腎臓疾患の治療用薬剤として未だ十分に満
足し得るような薬剤が存在するとはいえないのが現状で
あり、さらに有効な薬剤の開発が嘱望されている。
同様に、肝臓疾患の治療方法としては、現在、肝臓機能
保持のための療法、例えば安静療法、食事療法および薬
物療法が知られている。これら療法のうち薬物療法とし
ては、具体的には、アミノ酸、例えばアスパラギン酸、
チオクト酸、メチオニン、チオプロリン、グリシンおよ
びグルタチオン等のペプチド類、肝臓抽出エキス、肝臓
水解物、胎盤水解物、グルクロン酸誘導体および甘草か
ら抽出精製したグリチルリチン等を使用する療法があ
る。そして、これら薬剤のうち、グリチルリチンは慢性
肝炎に起因する肝臓機能の改善に有効であることが知ら
れているが、このグリチルリチンは経口投与では無効で
あるという投与上の問題点を有している。
また、肝臓疾患の発生機序はウィルス肝炎、中毒性肝炎
以外は解明されておらず、肝臓疾患の治療法も安静療法
および食事療法等が主となっていた。しかし、近年、例
えば、肝細胞の蛋白質合成およびRNA合成を賦活する
ことにより肝繊維化進展抑制作用を有するマロチラート
が開発された。しかしながら、かかるマロチラートは肝
硬変の治療にのみ適用することが認められているに過ぎ
ない。
さらにまた、その作用機序は不明であるものの免疫賦活
剤としてシアニダノールが開発され、B型ウィルス性肝
炎の治療に有効であるとされている。しかし、イタリ
ア,ポルトガルにおいて、シアニダノールの投与を受け
た患者の死亡事故が発生したために、我国においては、
シアニダノールの販売が現在停止されている。
したがって、広範な肝臓疾患の治療および予防に真に有
効であり、安全性に優れた薬剤の開発が嘱望されている
のが現状である。
さらには、前記のように腎臓および肝臓は生体代謝機能
に重要な役割を有し、相互に関連しあっている。この事
は、肝臓もしくは腎臓の一方に機能障害が生じた場合、
他方に代謝機能の負担が増大し、結果的に両臓器の機能
障害を生ずる場合が多く、特に肝機能障害者においては
肝機能障害の進行に伴い、腎機能障害を併発する場合が
多い。従って、治療薬剤としては、両臓器の機能を同時
に改善する薬剤が望ましい。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、前記従来の問題点を解決するために鋭意
研究を重ね、多岐多様な物質を検討した結果、イソリク
イリチゲニンに着目し、下記のように知見を得るに至っ
た。
イソリクイリチゲニンは、植物甘草成分として自然界に
存在することは、古くから知られている。しかし、甘草
中のイソリクイリチゲニンの含量は極く微量で、しかも
その大部分は配糖体として存在し、かつ多数の類似同族
体が共存するため、その分離精製が困難であり、イソリ
クイリチゲニンの薬理効果については定かとは言えなか
った。例えば、特公昭48−8485号に甘草より抽出
したリクイリチン、イソリクイリチン、リクイリチゲニ
ン、イソリクイリチゲニン等の混合物が抗潰瘍作用を有
するとの報告がある。しかしながら、かかる報告におい
ては、ごく微量共存するイソリクイリチゲニンが抗潰瘍
作用の有効成分である事の明療な示唆はない。
また、同様に使用したイソリクイリチゲニンの純度は不
明であるが、イソリクイリチゲニンが比較的強い鎮痙作
用を有するという報告(薬学雑誌第80巻620〜62
4頁1960年)が柴田らによりなされている。
また、ここ数年カルコン類の薬理活性が注目を集めてい
る。例えば中館らによる発癌プロモータ−TPAによる
皮膚血管透過性亢進の抑制作用の報告(“炎症”第4巻
554〜556頁1984年)や特願昭60−1788
15号における動物の腫瘍細胞に対する分化誘導活性、
さらには制癌剤としての有用性に関する報告がみられ
る。
かくして、かかる知見を基に本発明者等は独自に研究を
進め、先にイソリクイリチゲニンの有用性として抗アレ
ルギー剤としての用途について提案した(特願昭61−
49530号)。そこで、かかる知見を基に更に検討を
重ねた結果、イソリクイリチゲニンが腎臓および肝臓の
疾患の治療および予防に有効であるとの新たな知見を得
るに至った。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明は、イソリクイリチゲニンまたはその
薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とす
る腎臓および肝臓疾患の治療および予防用薬剤である。
ここでいう腎臓疾患とは、前記したように、(イ)物質
代謝機能異常に起因する腎機能障害、例えば薬物等によ
り生じる急性腎炎およびかかる急性腎炎が慢性化した慢
性腎炎、(ロ)免疫機序を介する急性腎炎およびかかる
急性腎炎が慢性化した慢性腎炎、(ハ)細菌およびウィ
ルス感染により生じる急性腎炎およびこれらが慢性化し
た慢性腎炎等、糸球体、尿細管、ループス等の肝臓部位
に機能障害を呈する疾患をいう。
また、同じくここで言う肝臓疾患とは、(a)物質代謝
機能異常ならびに生合成機能異常に起因する肝機能障
害、例えば、薬物等による急性肝炎もしくは、かかる急
性肝炎が慢性化した慢性肝炎、(b)飲酒等による脂肪
肝またはこれらが慢性化した慢性肝炎、(c)ウィルス
感染によるウィルス肝炎、またはこれが慢性化した慢性
肝炎、そして以上の各障害の結果生じる肝硬変、等の広
く肝臓機能障害を呈する疾患をいう。
イソリクイリチゲニンの薬学的に許容される塩として
は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属塩のような無
毒性の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネ
シウム塩、カルシウム塩等があり、さらに、アンモニウ
ム塩などの無毒性のアミン塩等がある。
本発明の腎臓および肝臓疾患の治療および予防用薬剤
は、経口又は非経口投与(例えば静注、皮下投与、直腸
投与など)することができ、投与に際しては、それぞれ
の投与方法に適した剤型に調製することができる。
かかる薬剤は、その用途に応じて錠剤、カプセル剤、顆
粒剤、散剤、細粒剤、丸剤、トローチ錠、舌下錠、坐
剤、軟膏、注射剤、乳剤、懸濁剤、シロップなどのいず
れかの製剤形態に調製することができる。
これらの調製に際しては、例えば、この種の薬剤に通常
使用される無毒性の賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、
保存剤、酸化防止剤、等張化剤、緩衝剤、コーティング
剤、矯味剤、溶解補助剤、基剤、分散剤、安定化剤、着
色剤等の添加剤を使用して公知の方法により製剤化する
ことができる。
前記使用し得る無毒性の添加剤の各剤の具体例を列挙す
ると、以下のようである。
まず、賦形剤としては、デンプン及びその誘導体(デキ
ストリン,カルボキシメチルスターチ等)、セルロース
及びその誘導体(メチルセルロース,ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロース等)、糖類(乳糖,白糖,ブドウ糖
等)、ケイ酸及びケイ酸塩類(天然ケイ酸アルミニウ
ム,ケイ酸マグネシウム,メタケイ酸アルミン酸マグネ
シウム等)、炭酸塩(炭酸カルシウム,炭酸マグネシウ
ム,炭酸水素ナトリウム等)、水酸化アルミニウム・マ
グネシウム,合成ヒドロタルサイト,ポリオキシエチレ
ン誘導体、モノステアリン酸グリセリン,モノオレイン
酸ソルビタン等が挙げられる。
結合剤としては、デンプン及びその誘導体(アルファー
化デンプン,デキストリン等)、セルロース及びその誘
導体(エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース
ナトリウム,ヒドロキシプロピルメチルセルロース
等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブ
ドウ糖,白糖等)、エタノール、ポリビニルアルコー
ル、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
崩壊剤としては、デンプン及びその誘導体(カルボキシ
メチルスターチ,ヒドロキシプロピルスターチ等)、セ
ルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロー
ス,カルボキシメチルセルロースナトリウム,結晶セル
ロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、炭
酸塩(炭酸カルシウム,炭酸水素ナトリウム等)、トラ
ガント、ゼラチン、寒天等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウ
ム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸及びそ
の塩(軽質無水ケイ酸,天然ケイ酸アルミニウム等)、
酸化チタン、リン酸水素カルシウム,乾燥水酸化アルミ
ニウム・ゲル、マクロゴール等が挙げられる。
保存剤としては、パラオキシ安息香酸エステル類、亜硫
酸塩類(亜硫酸ナトリウム,ピロ亜硫酸ナトリウム
等)、リン酸塩類(リン酸ナトリウム,ポリリン酸カル
シウム,ポリリン酸ナトリウム,メタリン酸ナトリウム
等)、アルコール類(クロロブタノール,ベンジルアル
コール等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウ
ム、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール、デヒ
ドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸グリセ
リン、糖類等が挙げられる。
酸化防止剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸ナトリウム,
亜硫酸水素ナトリウム等)、ロンガリット、エリソルビ
ン酸、L−アスコルビン酸、システイン、アセチルシス
テイン、チオグリセロール、ブチルヒドロキシアニソー
ル、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、
アスコルビン酸パルミテート、dl−α−トコフェロー
ル、ノルジヒドログアヤレチック酸等が挙げられる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硝
酸ナトリウム、デキストラン、グリセリン、ブドウ糖等
が挙げられる。
緩衝剤としては、炭酸ナトリウム、塩酸、ホウ酸、リン
酸塩(リン酸水素ナトリウム等)等が挙げられる。
コーティング剤としては、セルロース誘導体(ヒドロキ
シプロピルセルロース,酢酸フタル酸セルロース,ヒド
ロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラ
ック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類
(ポリ−2−ビニルピリジン,ポリ−2−ビニル−5−
エチルピリジン等)、ポリビニルアセタルジエチルアミ
ノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタ
アクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられ
る。
矯味剤としては、糖類(ブドウ糖,白糖,乳糖等)、サ
ッカリンナトリウム、糖アルコール類等が挙げられる。
溶解補助剤としては、エチレンジアミン、ニコチン酸ア
ミド、サッカリンナトリウム、クエン酸、クエン酸塩
類、安息香酸ナトリウム、石ケン類、ポリビニルピロリ
ドン、ポリソルベート類、ソルビタン脂肪酸エステル
類、グリセリン、プロピレングリコール、ベンジルアル
コール、ジェチリン、糖エステル等が挙げられる。
基剤としては、脂肪類(豚脂等)、植物油(オリーブ
油、ゴマ油等)、動物油、ラノリン、ワセリン、パラフ
ィン、ロウ、樹脂、ベントナイト、グリセリン、グリコ
ール類、高級アルコール類(ステアリルアルコール,セ
タノール等)セルロース誘導体等が挙げられる。
分散剤としては、アラビアゴム、トラガント、セルロー
ス誘導体(メチルセルロース等)、ステアリン酸ポリオ
キシル類、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリ
ン酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベ
ート類、ソルビタン脂肪酸エステル類等が挙げられる。
最後に、安定化剤としては、亜硫酸塩類(亜硫酸水素ナ
トリウム等)、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。
また、かかる製剤中におけるイソリクイリチゲニンの含
有量は、その剤型に応じて異なるが、一般に0.1〜1
00重量%の濃度で含有していることが望ましい。
本発明にかかる製剤の投与量は、対象とする人間をはじ
めとする温血動物の種類、症状の軽重、医師の診断など
により広範に変えることができるが、一般に活性成分と
して、経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01
〜300mg/kg、好ましくは、0.01〜50mg/kg、
非経口投与の場合、体重1kg当たり1日に0.01〜1
50mg/kg、好ましくは、0.01〜20mg/kg投与す
るのが好ましい。しかし、患者の症状の軽重、医師の診
断に応じて投薬範囲を変えることも可能である。上記投
与量は1日1回又は数回に分けて投与することができ
る。
以下、本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれら実
施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕 「毒性試験」 本実施例は本発明の有効成分であるイソリクイリチゲニ
ンの安全性を確認するために行なったものである。
5週令のddY 雄性マウス5匹に、イソリクイリチゲニン
を経口および腹腔内に投与した。その結果、最少致死量
は3000mg/kg以上(経口)および1000mg/kg以
上(腹腔内)であった。
〔実施例2〕 「ゲンタマイシン(Gentamycin)惹起急性腎障害に及ぼ
す作用」 本実施例は、物質代謝機能異常に起因する腎機能障害の
内、薬物により生じる急性腎炎モデルとして、その腎機
能障害惹起作用が極めて強いことが知られているアミノ
グリコシド系抗生物質ゲンタマイシンを選び、これが惹
起する急性腎炎に対するイソリクイリチゲニンの作用を
調べ、本発明薬剤の有用性を確認するために行なったも
のである。
鈴木らの方法(日本薬理学会誌84巻463〜469
1984年)に準じて行った。すなわち、体重160〜
180gのWistar系雄性ラット(日本チャールス・リバ
ー株式会社1群5匹)にゲンタマイシン80mg/kg/da
y を1日1回、15日間背部皮下投与して腎障害を惹起
させ、1%カルボキシメチルセルロース(以下1%CMC
と略す)水溶液に懸濁したイソリクイリチゲニン50,
150,300mg/kg/day を5ml/kg宛15日間連続
経口投与した。溶媒対照群には、ゲンタマイシンをイソ
リクイリチゲニン投与群と同様に投与した後、1%CMC
水溶液5ml/kgを15日間連続経口投与した。初回投与
前日と最終投与日からそれぞれの翌日にかけて代謝ケー
ジを使用して24時間蓄尿により採尿し、尿量測定後、
3000rpm 、15分間遠心して、その上清について尿
中の乳酸脱水素酵素活性(LDH )を自動分析装置(AU-5
50、オリンパス光学工業)を使用して測定した。さら
に、尿中のN−アセチル−β−D−グルコサミダーゼ活
性(NAG )をNAG テストシオノギ(塩野義製薬)を使用
して測定した。採尿終了後、試験開始前の場合は、尾静
脈より採血した。また、最終投与翌日は、エーテル麻酔
下で腹大動脈より採血し、放血致死せしめ、開腹し、腎
を滴出した。採血した血液は3000rpm ,15分間遠
心後、血清について血中尿素窒素(BUN )を自動分析装
置を用いて測定した。摘出した腎は二分割し、10%緩
衝ホルマリンにて固定後、ヘマトキシリン・エオジン染
色標本を作製して鏡検した。
その結果を下記表1〜表2に示す。
(結果) (1)ゲンタマイシンのみを投与した群はゲンタマイシ
ン投与後15日目でNAG ,LDH が顕著に増加し、BUN の
増加も認められ、ゲンタマイシンによる腎障害発症が明
らかに認められた。
(2)イソリクイリチゲニンはほぼ用量依存的にゲンタ
マイシン惹起対照群に比してNAG ,LDH ,BUN 値の増加
を顕著に抑制した。
(3)腎組織病理所見においても、ゲンタマイシン惹起
対照群に比してイソリクイリチゲニン300mg/kg投与
群では尿細管上皮細胞の壊死,変性,再生及び分裂,侵
潤の顕著な改善が認められた。又、イソリクイリチゲニ
ン50,150mg/kg投与群でも尿細管上皮細胞の壊
死,変性,再生,分裂の改善が認められた。
以上の試験結果からイソリクイリチゲニンは薬物により
惹起される急性腎炎を顕著に改善していることが明らか
でありイソリクイリチゲニンは薬物による急性腎炎の治
療に極めて有用であると考えられる。
〔実施例3〕 「シスプラチン惹起急性腎障害に対するイソリクイリチ
ゲニンの作用」 本実施例は、物質代謝機能異常に起因する腎機能障害の
内、薬物により生じる急性腎炎モデルとして、その腎機
能障害惹起作用が極めて強いことが知られている抗癌剤
シスプラチンを選び、これが惹起する急性腎炎に対する
イソリクイリチゲニンの作用を調べ、本発明薬剤の有用
性(予防効果および治療効果)を確認するために行なっ
たものである。
(1) 予防試験 20〜25gのddY 雄性マウス(1群10匹)に1%CM
C 水溶液に懸濁したイソリクイリチゲニン200mg/kg
/day を5日間連続経口投与し、5日目に生理食塩水に
2mg/10mlに溶解したシスプラチン16mg/kgを1回
皮下投与し、その翌日からさらに5日間イソリクイリチ
ゲニンを同様に経口投与した後、採血し、3000rpm
、15分間遠心後、血清中のBUN を測定した。
(2) 治療試験 20〜25gのddY 雄性マウス(1群10匹)に生理食
塩水に溶解したシスプラチン2mg/10mlを16mg/kg
1回皮下投与後、1%CMC 水溶液に懸濁したイソリクイ
リチゲニン200mg/kg/day を1日1回5日間連続経
口投与した後、採血し、3000rpm 、15分間遠心
後、血清中のBUN を測定した。
(1) ,(2) の試験において、20〜25gのddY 雄性マ
ウス(1群10匹)にイソリクイリチゲニン200mg/
kg/day のみを連続経口投与したものをイソリクイリチ
ゲニン単独投与対照群とし、腎炎惹起対照群として20
〜25gのddY 雄性マウス(1群10匹)にシスプラチ
ン16mg/kgを皮下に1回投与し、イソリクイリチゲニ
ンの代りに1%CMC 水溶液を連続経口投与した以外は、
シスプラチン+イソリクイリチゲニン投与群と同様に処
理し、各々を同投与群と比較した。その結果を表−3に
示す。
(結果) (1) 無処置対照群に比してシスプラチンを投与した腎障
害惹起対照群は著しくBUN が増大しており、シスプラチ
ンによる急性腎障害発症が明らかに認められた。
(2) イソリクイリチゲニンは予防試験、治療試験いずれ
においても腎障害惹起対照に比して、BUN の増加を顕著
に抑制した。
(3) 腎障害を発症させないイソリクイリチゲニン単独投
与対照群では、無処置対照群に比して、BUN の変化は認
められず、イソリクイリチゲニンは腎障害発症によるBU
N の増加を特異的に抑制する事が明らかである。
以上の結果から、イソリクイリチゲニンは、薬物により
惹起される急性腎障害を顕著に改善する事が明らかであ
り、薬物による急性腎障害の予防、治療に極めて有用で
あると考えられる。
〔実施例4〕 (ラットの抗GBM 腎炎に対するイソリクイリチゲニンの
作用) ヒト慢性腎疾患の70%が免疫機序を介して発症すると
言われており、特に糸球体腎炎では多数の症例で免疫機
序の関与を示唆する所見が認められており、これに基づ
きヒト慢性腎炎モデルとしての動物実験モデルの作製が
種々研究されて来た。中でも本邦で開発された馬杉腎炎
モデルは、糸球体組織抗原(GBM )に対する抗体による
腎炎モデルで世界的に広く用いられている。したがっ
て、本発明者らは、ヒト慢性腎炎モデルとして馬杉腎炎
モデルを選び、鈴木良雄らの方法(日本腎臓学会誌23
巻323〜331頁 1981年)および(日本薬理学
会誌77巻407〜417頁 1981年)により本実
施例を行ない、本発明薬剤の有用性の確認を行なったも
のである。
即ち、体重180〜200gのSD系雄性ラット(日本
チャールス・リバー株式会社、腎炎惹起対照群は7匹、
他の群は6匹ずつ)抗ラットGBM ウサギ血清0.5ml/
ラットを静注し、直ちに1%CMC 水溶液に懸濁したイソ
リクイリチゲニン30,100,300mg/kg/day を
5ml/kg宛3週間毎日連続各群ラットに経口投与した。
腎炎惹起対照群は抗ラットGBM ウサギ血清0.5ml/ラ
ットを静注後、1%CMC 水溶液5ml/kg宛3週間毎日連
続経口投与した。抗GBM 血清投与3週間目の最終投与日
からその翌日にかけて代謝ケージを使用して24時間蓄
尿により採尿し、尿量測定後、3000rpm 、15分間
遠心後、その上清について尿中の乳酸脱水素酵素活性
(LDH ),アルカリ性ホスファターゼ(ALP ),蛋白量
を自動分析装置(AU-550,オリンパス光学工業)を使用
して測定した。採尿終了後エーテル麻酔下に腹大動脈よ
り採血し3000rpm 、15分間遠心した血清について
BUN ,クレアチニン,ALP ,総コレステロール,総蛋
白,アルブミンを測定した。
その結果を下表4に示す。
(結果) (1) 3週目の腎炎惹起対照群は無処置対照群に比して尿
中の総蛋白,総ALP ,総LDH が顕著に増加した。血中の
BUN ,クレアチニンは顕著な変化は見られないものの、
ALP の低下,総コレステロールの増加が認められた。
又、血清総蛋白量には変動が見られないもののアルブミ
ン含量の減少が認められ、それに伴うA/G 比の低下が見
られた。以上の結果から免疫系を介した腎障害の発症が
明らかである。
(2) イソリクイリチゲニン投与群は各用量群において、
腎炎惹起対照群に比して、尿中の総蛋白,総ALP ,総LD
H の増加を顕著に抑制した。又、血中ALP ,総コレステ
ロール,アルブミン量の顕著な改善が見られた。
以上の結果から、イソリクイリチゲニンは、免疫を介す
る腎障害の予防及び治療に極めて有用であると考えられ
る。
〔実施例5〕 (d−ガラクトサミン惹起肝臓障害に対するイソリクイ
リチゲニンの作用) d−ガラクトサミンはヒトにおけるウィルス性肝炎の病
変に似た障害を惹起する化合物で、ウィルス性肝炎のモ
デルとして利用されている。したがって、本発明者らは
坂本らの方法(「新薬開発のための薬効スクリーニング
法第1巻」69〜82,1984年、坂本浩二、清至書
院)により以下の通り、本実施例を行ない、本発明薬剤
の有用性の確認を行った。
即ち、体重180〜200gのWistar系雄性ラット(日
本チャールス・リバー株式会社、1群6匹)に1%CMC
水溶液に懸濁したイソリクイリチゲニン10,30mg/
kg/day を5ml/kg宛5日間各ラット群に経口投与し、
4日目のイソリクイリチゲニン投与1時間後に、生理食
塩水に溶解したd−ガラクトサミン250mg/5ml/kg
を腹腔内投与し、d−ガラクトサミン投与48時間後に
エーテル麻酔下に腹大動脈より採血し3000rpm 、1
5分間遠心した血清についてグルタミン酸オキザロ酢酸
トランスアミナーゼ(GOT ),グルタミン酸ピルビン酸
トランスアミナーゼ(GPT ),ALP を自動分析装置AU-5
50により測定した。
なお、腎障害惹起対照群は、イソリクイリチゲニン1%
CMC 懸濁液の代りに1%CMC 水溶液を経口投与した以外
はイソリクイリチゲニン投与群と同様に処置した。
又、陽性対照群としてイソリクイリチゲニンの代りに各
々1%CMC 水溶液に懸濁したマロチラート30mg/kg/
day ,100mg/kg/day ,シアニダノール30mg/kg
/day ,100mg/kg/day 宛を経口投与した以外はイ
ソリクイリチゲニン投与群と同様に処置した。
測定結果は表−5に示す。
(結果) (1) 肝障害惹起対照群においては無処置対照群に比し
て、GOT ,GPT ,ALP の明らかな増加が認められた。
(2) イソリクイリチゲニン投与群では、肝障害惹起対照
群に比して、10mg/kg投与でGOT ,GPT ,ALP の増加
抑制が見られ、30mg/kg投与で明らかなGOT ,GPT の
改善が認められた。
(3) 陽性対照群マロチラート,シアニダノールは100
mg/kg投与群においてイソリクイリチゲニン10mg/kg
投与群とほぼ同等のGOT ,GPT の増加抑制が見られた。
以上の結果からイソリクイリチゲニンはマロチラート,
シアニダノールよりも低い用量において、d−ガラクト
サミン惹起肝障害を抑制する事が明らかであり、ウィル
ス性肝炎等の予防,治療に有用であると考えられる。
〔実施例6,7〕 四塩化炭素は肝細胞中の薬物代謝酵素系により極めて反
応性の高いフリーラジカルを生じ、これが肝細胞膜蛋白
と結合して細胞活性を強く抑制したり、細胞内小器官の
膜脂質の過酸化を起こすことにより、肝細胞の壊死,肝
脂肪の蓄積を生じると言われており、ヒト急性薬物肝
炎,脂肪肝,慢性肝炎及び肝硬変の実験モデルとして最
も広く用いられている。
したがって、本発明者らはImaizumiらの方法(Japan Jo
urnal of Pharmacology vol.31 15-21 1981年)および
加藤稔らの方法(日本薬理学会誌80巻、p83−91
1982年)に準じた方法により以下の実施例6,7
を行ない、本発明薬剤の有用性の確認を行なった。
(実施例6) 「四塩化炭素(C Cl)惹起急性肝障害に対するイソリ
クイリチゲニンの作用」 体重180〜200gのWistar系雄性ラット(日本チャ
ールス・リバー株式会社、1群6匹)に1%CMC 水溶液
に懸濁したイソリクイリチゲニン10,30mg/kg/da
y を4日間連続経口投与した。溶媒対照群には、1%CM
C 水溶液5ml/kg/day を4日間連続経口投与し、陽性
対照群にはマロチラート(Malotilate)30mg/kg/da
y ,100mg/kg/day とシアニダノール(Cianidano
l)30mg/kg/day ,100mg/kg/day を1%CMC
水溶液に懸濁して4日間連続経口投与した。
四塩化炭素は精密分析用試薬を使用し、ラットに薬物投
与2日目から3日間連続経口投与して0.2ml/kg/da
y 皮下投与した。
四塩化炭素最終投与24時間後にエーテル麻酔下に腹大
動脈から採血した。血液は3000rpm 、15分間遠心
の血清についてGOT ,GPT について自動分析装置(AU-5
50、オリンパス光学工業)を使用して測定した。その結
果を表6に示す。
(結果) (1) 肝障害惹起対照群は無処置対照群に比して、顕著に
GOT ,GPT の増加が認められ、四塩化炭素による肝障害
発生が明らかに認められた。
(2) イソリクイリチゲニン投与群は、肝障害惹起対照群
に比して、各用量群においてGOT ,GPT の顕著な改善が
見られた。
(3) 陽性対照群マロチラート,シアニダノールは30mg
/kg投与群あるいは100mg/kg投与群においてイソリ
クイリチゲニン10mg/kg投与群とほぼ同等のGOT ,GP
T の増加抑制が見られた。
以上の結果からイソリクイリチゲニンはマロチラート,
シアニダノールよりも低い用量において四塩化炭素惹起
急性肝障害を抑制し、急性肝障害の予防および治療に有
用であると考えられる。
(実施例7) 「四塩化炭素惹起慢性肝障害に対するイソリクイリチゲ
ニンの作用」 体重180〜200gのWistar系雄性ラット(日本チャ
ールス・リバー株式会社、1群6匹)にイソリクイリチ
ゲニン30mg/kg/day を1%CMC 水溶液に懸濁して3
週間毎日連続経口投与した。溶媒対照群には、1%CMC
水溶液5ml/kg/day を3週間毎日連続経口投与し、陽
性対照群にはマロチラート30mg/kg/day とシアニダ
ノール30mg/kg/day を1%CMC 水溶液に懸濁して3
週間毎日連続経口投与した。
四塩化炭素は薬物投与3日目から3週間連続各週2回
0.5ml/kg腹腔内投与した。
四塩化炭素最終投与4日目にエーテル麻酔下に腹大動脈
から採血した。血液は3000rpm 、15分間遠心後の
血清についてGOT ,GPT について自動分析装置(AU-55
0)を使用して測定した。その結果を表7に示す。
(結果) (1) 肝障害惹起対照群は無処置対照群に比して、GOT ,
GPT の顕著な増加が見られ、四塩化炭素による重度の肝
障害発症が明らかである。(2) イソリクイリチゲニン投
与群は、陽性対照群シアニダノールとほぼ同等のGOT ,
GPT の増加抑制が見られた。一方、マロチラートはこの
試験系では顕著な抑制が見られた。
以上の結果からイソリクイリチゲニンは慢性肝障害の予
防および治療に有用であると考えられる。
〔実施例8〕 「シスプラチン惹起急性肝障害に対するイソリクイリチ
ゲニンの作用」 制ガン剤シスプラチンは腎臓に障害を与えるのと同時に
肝臓に障害を与える事が知られている(F.Cawalli らCa
ncer Treatment Reports vol.62 No. 12 2125〜 2126 1
978年)。本発明者らは制ガン剤シスプラチンが腎臓と
同様に肝臓にも障害を与え、しかも腎臓障害を生じるよ
りも低いシスプラチン投与量でも肝障害が惹起される事
を見い出した。本実施例は、このシスプラチン惹起急性
肝障害に対するイソリクイリチゲニンの作用を調べるこ
とによって本発明薬剤の有用性を確認したものである。
体重150〜180gのWistar系雄性ラット(日本チャ
ールス・リバー株式会社、1群6匹)に生理食塩水2mg
/10mlに溶解したシスプラチン8.5mg/kgを1回皮
下投与後、1%CMC 水溶液に懸濁したイソリクイリチゲ
ニン200mg/kg/day を10日間連続経口投与した
後、解剖し、肝臓のヘマトキシリン−エオジン染色標本
を作製し、鏡検した。
肝障害惹起対照群として、150〜180gのWistar系
雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社、1群6
匹)にイソリクイリチゲニンの代りに1%CMC 水溶液の
みを10日間連続経口投与した他は、イソリクイリチゲ
ニン投与群と同様に処理したものを用いた。その結果を
表8に示す。
(結果) (1) 無処置対照群と比して、シスプラチンを投与した肝
障害惹起対照群はシスプラチン投与により肝臓に障害を
生じた事が明らかにある。
(2) イソリクイリチゲニンは、シスプラチン惹起急性肝
障害を顕著に抑制した。
以上の結果からイソリクイリチゲニンはシスプラチン惹
起急性肝障害を顕著に改善することが明らかであり、薬
物により急性肝障害の治療に極めて有用であると考えら
れる。
〔実施例9〕 (シスプラチン惹起急性腎及び肝障害に対するイソリク
イリチゲニンの作用) 上述して来たように、イソリクイリチゲニンは腎及び肝
障害の予防及び治療にいずれも有用である事が明らかと
なったので、本発明者らは前述した実施例3及び実施例
8の制ガン剤シスプラチンによる実験モデルを用い、以
下の予防及び治療試験を行い、本発明薬剤の腎臓及び肝
臓の併発性疾患に対する有効性の確認を行なった。
(1) 予防試験 体重215〜240gのフィッシャー系雄性ラット(日
本チャールス・リバー株式会社、1群3匹)に1%CMC
水溶液に懸濁したイソリクイリチゲニン20mg/kg/da
y を1群は経口投与、1群は腹腔内投与で1日1回12
日間連続投与した。投薬開始6日目から生理食塩水に溶
解したシスプラチン2mg/kgを2mg/kg/day 1日1回
4日間連続皮下投与し、シスプラチン投与日およびシス
プラチン投与終了後も3日間同様にイソリクイリチゲニ
ンを投与した。但し、シスプラチン投与日は、シスプラ
チン投与直後にイソリクイリチゲニンを投与した。
腎及び肝障害惹起対照群には、シスプラチンをイソリク
イリチゲニン投与群と同様に投与し、イソリクイリチゲ
ニン1%CMC 懸濁液の代りに1%CMC 水溶液を経口投与
した以外は、イソリクイリチゲニン投与群と同様に処理
した。
イソリクイリチゲニン投与終了24時間後、エーテル麻
酔下で腹大動脈から採血後、剖検を行ない肝臓を摘出
し、10%緩衝ホルマリン液に固定し、ヘマトキシリン
−エオジン染色ならびにPAS染色を行ない鏡検した。
採血した血液は3000rpm 、15分間遠心後、血清に
ついてBUN を自動分析装置(AU-550,オリンパス光学工
業)を使用して測定した。
(2) 治療試験 体重215〜240gのフィッシャー系雄性ラット(日
本チャールス・リバー株式会社、1群3匹)に生理食塩
水に溶解したシスプラチン2mg/10mlを2mg/kg/da
y 1日1回4日間皮下投与し、腎及び肝障害を惹起させ
た。毎目シスプラチン投与直後、1%CMC 水溶液に懸濁
したイソリクイリチゲニン20mg/kg/day を1群は経
口投与で、もう1群は腹腔内投与で、1日1回4日間連
続投与し、シスプラチン投与後も1日1回3日間連続投
与した。腎及び肝障害惹起対照にはシスプラチンをイソ
リクイリチゲニン投与群と同様に投与し、イソリクイリ
チゲニン1%CMC 懸濁液の代りに1%CMC 水溶液を経口
投与した以外、イソリクイリチゲニン投与群と同様に処
理した。
イソリクイリチゲニン投与終了24時間後、エーテル麻
酔下で腹大動脈から採血後、剖検を行ない肝臓を摘出
し、10%緩衝ホルマリン液に固定し、ヘマトキシリン
−エオジン染色ならびにPAS染色を行ない鏡検した。
採血した血液は3000rpm 、15分間遠心後、血清に
ついてBUN を自動分析装置(AU-550,オリンパス光学工
業)を使用して測定した。
なお、無処置対照群は、体重215〜240gのフィッ
シャー系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会
社、1群3匹)にイソリクイリチゲニン1%CMC 懸濁液
の代りに1%CMC 水溶液を1日1回12日間経口投与し
た。投与終了24時間後に、採血、剖検し、BUN 測定、
鏡検は上記同様に行なった。結果を表9および表10に
示す。
(結果) (1) 無処置対照群に比して、腎及び肝障害惹起対照群は
BUN の増大及び肝臓組織、細胞の病理所見、即ち、肝細
胞の好酸化変性、空腔変性等からシスプラチンによる腎
障害、肝障害発症が明らかである。
(2) 予防試験および治療試験において、イソリクイリチ
ゲニン投与群は、腎及び肝障害惹起対照群比して、経口
投与、腹腔内投与いずれにおいてもBUN の増加を顕著に
抑制し、かつ肝臓障害の発症抑制が認められた。
以上の結果並びに前記実施例3および実施例8からイソ
リクイリチゲニンが腎障害及び肝障害併発症の予防およ
び治療に極めて有用であると考えられる。
以上、前記各実施例において、腎臓、肝臓の各疾患およ
び両臓器の併発疾患における本発明薬剤の有用性を示し
た。続いて以下に示す実施例においては、具体的に剤
型、組成物を特定した処方例を示す。
なお、本発明は、以下の実施例になんら限定されるもの
ではない。
〔実施例10〕 1錠当たりの5mg及び25mgの活性成分を含有する錠剤
の処方例は次の通りである。
処方例1(5mg錠) 処方例2(25mg錠) 製造方法の詳細は以下の通りである。
イソリクイリチゲニンの結晶を粉砕し、それに乳糖及び
でんぷんを加え混合する。10%のでんぷんのりを上記
の混合体に加え、攪拌し顆粒を製造する。乾燥後粒径を
約850ミクロンに整粒し、これにタルク及びステアリ
ン酸マグネシウムを混合し、打錠した。
〔実施例11〕 (20mgカプセル) イソリクイリチゲニン 20 乳糖 53 でんぷん 25ステアリン酸マグネシウム 2 100mg イソリクイリチゲニンをよく粉砕し、でんぷん、乳糖お
よびステアリン酸マグネシウムを加え充分に混合した
後、カプセルに充填した。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明は、イソリクイリチゲニン
またはその薬学的に許容される塩を有効成分とすること
を特徴とする腎臓および肝臓疾患の治療および予防用薬
剤であり、本発明によれば、単独に発生する広範な腎臓
および肝臓疾患の各々にも、さらに両臓器の疾患が併発
した場合にも優れた治療および予防効果を発揮する腎臓
および肝臓疾患の治療および予防用薬剤を提供すること
ができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イソリクイリチゲニンまたはその薬学的に
    許容される塩を有効成分とすることを特徴とする腎臓疾
    患の治療または予防用薬剤。
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