JPH0658106B2 - 回転式油圧ポンプのケ−シング構造 - Google Patents

回転式油圧ポンプのケ−シング構造

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JPH0658106B2
JPH0658106B2 JP60099303A JP9930385A JPH0658106B2 JP H0658106 B2 JPH0658106 B2 JP H0658106B2 JP 60099303 A JP60099303 A JP 60099303A JP 9930385 A JP9930385 A JP 9930385A JP H0658106 B2 JPH0658106 B2 JP H0658106B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、回転式油圧ポンプのケーシング構造に関し、
特に、前輪および後輪を同一のエンジンで駆動するため
の駆動連結装置として用いられる回転式油圧ポンプのケ
ーシング構造に関する。
〔従来の技術〕
従来、回転駆動軸によって駆動される回転式油圧ポンプ
(差動ポンプ)として車両のトランスミッションケース
に収納されるものでは、この差動ポンプの作動油は、ト
ランスミッションケースやトランスファケース内におけ
るギヤ潤滑用オイルと共用したり、あるいは、差動ポン
プ専用ケース内のオイルを使用したりしている。
さらに、前輪に駆動力を伝達する第1の回転軸と後輪に
駆動力を伝達する第2の回転軸との間に相互に駆動力を
伝達しうる連結機構として、回転式油圧ポンプ(差動ポ
ンプ)をそなえた4輪駆動用駆動連結装置も考えられ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、このような差動ポンプのケース内のオイ
ルは、差動ポンプの回転体自身やギヤの回転によって、
さらに、車両の走行状態や差動ポンプの回転速度の変化
によるオイルレベルの変化によっては、オイルをむやみ
に撹拌し、泡立てることになり、この泡立った(空気を
含んだ)オイルや空気そのものを差動ポンプが吸入する
と、キャビテーションの原因となり、その結果、不整ト
ルクを生じて、車両のフィーリングに悪影響を及ぼす恐
れがあるという問題点がある。
このため、差動ポンプが吸い込むオイルは空気を含まな
いことが不可欠の条件となる。
特に、油圧ポンプ型回転式連結機構をそなえた4輪駆動
用駆動連結装置では、油圧ポンプが高温状態となるのを
防止するため、作動油の循環が必要となり、作動油に空
気が混入すると、差動ポンプの吸入口の位置によって
は、オイルが差動ポンプに供給されず、伝達トルクが低
下して4輪駆動状態にならない。
本発明は、このような問題点を解決しようとするもの
で、簡単な構成により、すなわち真空ポンプやアスピレ
ータ等の負圧源を必要とせずに、オイル溜めから供給油
路を通じて油圧ポンプ内へ空気が侵入するのを防止でき
るようにした、回転式油圧ポンプのケーシング構造を提
供することを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
このため本発明の回転式油圧ポンプのケーシング構造
は、回転駆動軸によって駆動される回転式油圧ポンプと
同ポンプに供給する作動油とを収容する回転式油圧ポン
プのケーシングにおいて、上記回転式油圧ポンプまたは
同ポンプの回転に連動する回転体を収容する第1の油室
と、隔壁を介して上記第1の油室と区画された第2の油
室と、上記第1の油室内で上記ポンプまたは回転体がか
き上げる上記作動油を上記第2の油室に導くべく設けら
れた主通路と、同主通路より低位に位置して上記第1の
油室と上記第2の油室とを連通する補助通路と、上記第
2の油室内の作動油を上記回転式油圧ポンプのオイル吸
入口へ供給する供給油路とをそなえたことを特徴として
いる。
〔作 用〕
上述の本発明の回転式油圧ポンプのケーシング構造で
は、第1の油室のオイル溜めから第2の油室へ供給され
る作動油が、第2の油室において沈静化され、泡立ち
(空気)の消えた作動油が供給油路を通じて、回転式油
圧ポンプのオイル吸入口へ供給される。また、第1の油
室から第2の油室への作動油の供給は、回転体によって
かき上げられた作動油を隔壁を乗り越えて主通路を通っ
て移動することにより行なわれ、登板発進時等のオイル
レベルが低下したときには、主として補助通路を通って
移動することにより行なわれる。
〔実施例〕
以下、図面により本発明の実施例について説明すると、
第1〜13図は本発明の第1実施例としての回転式油圧
ポンプのケーシング構造をそなえた4輪駆動用駆動連結
装置を示すもので、第1図はその組付け前のケーシング
要部を示す正面図(第3図のI−I矢視図)、第2図は
その要部縦断面図、第3図はその組付け後のケーシング
要部を示す断面図(第1図のIII−III矢視断面図)、第
4図は第3図のIV−IV矢視断面において示す模式図、第
5図は第3図のV−V矢視図、第6図は第5図のVI−VI
矢視断面図、第7図はそのマグネットの変形例を示す正
面図、第8図はそのマグネットの変形例を第6図に対応
させて示す断面図、第9図(a),(b)はいずれもその排出
用油路を示す断面図、第10図は本装置を装備した車両
の動力系を示す概略構成図、第11図はその油圧ポンプ
型回転式連結機構および油圧回路を示す油圧系統図、第
12図はその制御機構のブロック図、第13図はその作
用を説明するためのグラフであり、第14〜20図は本
発明の第2実施例としての回転式油圧ポンプのケーシン
グ構造をそなえた差動機構の差動制限装置(4輪駆動用
駆動連結装置)を示すもので、第14図はその要部を示
す断面図、第15図はその要部の縦断面図、第16図は
その組付け前のアダプタを示す正面図、第17図はその
組付け前のリヤカバーを示す斜視図、第18図は本装置
を装備した車両の動力系を示す概略構成図、第19図は
そのオイルポンプのための油圧回路図、第20図はその
作用を説明するためのグラフである。
第1〜6図に示すごとく、本発明の第1実施例では、横
置きのエンジン1にトルクコンバータ1aおよび入力軸
(内軸)142を介して自動変速機2の出力軸のギヤ3
には、中間軸のギヤ3′が噛合し、さらに、このギヤ
3′に出力軸38aの一端側のギヤ38′が噛合してい
る。
この出力軸38aの他端側には、第10図に示すごとく、
ギヤ38が取り付けられており、このギヤ38は前輪用
差動機構40(以下、「前輪用デフ40〕という)のリ
ングギヤ39に噛合している。これにより出力軸38aか
らのトルクは、前輪用デフ40で分割され左右の前輪軸
41,42へ伝達されて、前輪43,44を回転駆動す
る。
そして、このリングギヤ39と一体のデフケース8付き
のピニオン9,10には、サイドギヤ11,12が噛合
しており、サイドギヤ11には前輪軸41が連結され、
サイドギヤ12には前輪軸42が連結されている。
また、このリングギヤ39に噛合するギヤ39′が設け
られており、このギヤ39′は第1の回転軸としての前
輪出力軸5に固定されている。
また、油圧ポンプ型回転式連結機構としての4輪駆動用
駆動連結装置13が前輪出力軸5と第2の回転軸として
の後輪出力軸4との間に介装されている。
また、後輪出力軸4はベベルギヤ機構45のギヤ45a,46
aを介してプロペラ軸47に連結されており、このプロ
ペラ軸47のベベルギヤ47aが後輪用差動機構49(以
下、「後輪用デフ49」という)のリングギヤ48に噛
合している。これにより後輪出力軸4からのトルクは、
後輪用デフ49で分割され左右の後輪軸50,51へ伝
達されて、後輪52,53を回転駆動する。
また、第10図に示すように、第1の回転軸としての前
輪出力軸5のギヤ39′の歯部に対向して、第1の回転
数検出器としての回転数センサ(ピックアップ)127
が設けられており、このセンサ127からの検出信号が
コントロールユニット128のカウンタ128bに入力する
ようになっている。
そして、第2の回転軸としての後輪出力軸4のギヤ45a
の歯部に対向して、第2の回転数検出器としての回転数
センサ(ピックアップ)126が設けられており、この
センサ126からの検出信号が運転状態演算手段M5
してのコントロールユニット128のカウンタ128aに入
力するようになっている。
これらのカウンタ128a,128bは、タイマ128c等からの所
定時間幅毎のカウント数(検出信号)を演算器(CP
U)128dへ送るようになっていて、この演算器128dは、
前輪出力軸5のカウント数を、ギヤ39とギヤ39′と
の比iを用いて前輪43,44の回転数Rfに換算する。
そして、演算器128dは、後輪出力軸4のカウント数を、
ギヤ45aとギヤ46aとの比iBおよびギヤ47aとギヤ48と
の比iDを用いて後輪52,53の回転数Rrに換算する。
演算器128dは、これらの前輪回転数Rfおよび後輪回転数
Rrの差を演算して、表示信号として表示装置129に出
力する。
そして、表示装置129は、表示信号を受けて、回転速
度差が0〜20(rpm))であれば、LED129aを点灯し、
20〜30(rpm)であれば、LED129bを点灯して、3
0〜40(rpm)であれば、LED129cを点灯し、40(rp
m)以上であれば、LED129dを点灯する。
また、コントロールユニット128には、ステアリング
角検出器(舵角センサ)130からの操舵角信号および
油温センサ135からの作動油温信号が入力するように
構成されており、コントロールユニット128および表
示装置129は警告灯131に結線されていて、警告灯
131により警報を発することができるようになってい
る。
この駆動連結装置13は、前輪出力軸5と後輪出力軸4
との回転速度差によって駆動されこの回転速度差に応じ
た圧力でオイルを吐出する差動ポンプとしてのオイルポ
ンプ(ベーンポンプ)14と、このオイルポンプ14か
らの吐出油の圧力を制御することにより出力軸4,5間
の回転速度差を抑制しうる吐出圧制御機構(油圧回路)
71とをそなえて構成されている。
前輪出力軸(回転駆動軸)5によって駆動される回転式
油圧ポンプとしてのオイルポンプ14のケーシングCA
は、第2,3図に示すように、カバー部材94c付きのト
ランスミッションケース94と、トランスミッションケ
ース94に接続するコンバータハウジング150と、こ
のコンバータハウジング150に接続するトランスファ
ケース151とで構成されている。
そして、このケーシングCAには、第1図に示すよう
に、4輪駆動用駆動連結装置13の回転体としての後輪
出力軸4,前輪出力軸5およびオイルポンプ14のハウ
ジング70(このハウジング70は、カムリング部70
a,カバー70b,フランジ70c,間挿材70d,70eからな
る。)が収容される第1の油室80Aと、第1の油室8
0Aのオイル溜め80と、4輪駆動用駆動連結装置13
のオイル吸入口22とを連通する供給油路98とがもう
けられている。
この供給油路98には、作動油沈静化第2の油室80B
が第1の油室80Aの側方に近接して介装されており、
この第2の油室80Bは、隔壁152によって第1の油
室80Aと区画されていて、隔壁152の上端部におけ
る主通路153および隔壁152の下部における補助通
路154により、第1の油室80Aと連通している。
この補助通路154は、自動車の登坂路停車時(登坂角
38゜)のオイルレベルL2における油中に位置するよ
うに形成されている。
そして、主通路153は、自動車の通常の停車時のオイ
ルレベルL1における油中の位置するように形成されて
いる。
また、主通路153の入口側上部におけるトランスファ
ケース151には、ガイド状突起151aが形成されてお
り、後輪出力軸4の前進方向fへの回転時に、第4図中
の符号F1で示すように、作動油を積極的に第2の油室
80Bへ方向転換させる。
この第2の油室80Bで沈静化されて泡立ちの消えた作
動油は、第6図中の符号F2で示すように、コンバータ
ハウジング150とトランスファケース151とのあわ
せ面300にフィルタ取付部材157cにより挟み込まれる
粗目のオイルフィルタ157aを通過して、ろ過された後、
マグネット100へ向けて流れるようになっている。
このマグネット100は、第5,6図に示すように、一
端を露出されるようにマグネットケース100aに取り付け
られていて、このマグネットケース100aは、取付ボルト
161により、コンバータハウジング150の折り返し
用孔部150aにボルト締めされている。
そして、マグネット100により、オイル中の磁性体
(鉄粉等)が取り除かれたオイルは、連通路(切欠部)
155aを通じて、折り返し部下部80Cに送られ、第3図
中の符号F3で示すように、この折り返し部下部80C
からコンバータハウジング150とトランスファケース
151との合わせ面300にフィルタ取付部材157cによ
り挟み込まれる細目のオイルフィルタ157bを通過して、
さらに、ろ過された後、供給油路98の導入油路155bを
通じて、第3図中の符号F4で示すように、後輪出力軸
4の端部に形成されたオイル吸入口22に供給されるよ
うになっている。
なお、マグネットとしては、第7,8図に示すように、
円柱状のマグネット100′を用いてもよく、このマグ
ネット100′はマグネットケース100′aに取り付
けられていて、マグネット100′,マグネットケース
100′aの中央孔部において、取付ボルト161によ
り、コンバータハウジング150の折り返し用孔部150a
にボルト締めされる。
次にこれらのオイルポンプ14や吐出圧制御機構71の
配設状態等について説明する。
第1〜6図,第9図(a),(b),第11,12図に示すご
とく、ハウジング70内にオイルポンプ14と吐出圧制
御機構71とが設けられる。
このオイルポンプ(ベーンポンプ)14には、第11図
に示すように、そのロータ69の外周面69aに周方向に
等間隔に多数(ここでは、10個)の孔部69bが形成さ
れていて、この多数の孔部69bのそれぞれには、カムリ
ング部70aの内周面70fに摺接しうるベーン68が嵌挿さ
れている。
さらに、ハウジング70の間挿部材70dとベーン68お
よびロータ69との軸方向の隙間が所定値以下となるよ
うに、各部が形成されており、油膜が切れないようにな
っていて、ハウジング70の間挿部材70eとベーン68
およびロータ69との軸方向の隙間も、同様に、所定値
以下となるように、各部が形成されている。
そして、これら隙間の和が、所定値以下となるように設
定されている。
また、ベーンポンプ14は、その回転数に比例した油量
を吐出するものであり、ロータ69とカムリング部70a
との間に相対回転、すなわち、後輪出力軸4と前輪出力
軸5との間に相対回転が生ずると油圧ポンプとして機能
して、油圧を発生する。
ベーンポンプ14の吐出口(ハウジング70に対するベ
ーン68の相対的回転方向先端の吸入吐出口72〜77
がこれに相当)を塞ぐことにより、油を介してその静圧
でロータ69とカムリング部70aとが剛体のようになっ
て一体に回転される。
このため、カムリング部70aとロータ69との間には、
回転中心線から120゜間隔に3つのポンプ室86〜8
8が形成され、また、回転方向基端側に位置したとき吸
込口となり先端側に位置したとき吐出口となる6個の吸
込吐出口72〜77がほぼ120゜間隔に形成してあ
り、同一機能をなす120゜間隔の吸込吐出口72,7
4,76がハウジング70のカバー70b,フランジ70c,
間挿材70d,70eを介して第1油路OL1により連通されて
いる。
そして、吸込吐出口73,75,77が、ハウジング7
0のカバー70b,フランジ70c,間挿材70d,70eを介して
第2油路OL2により連通されている。
また、第1油路OL1と第2油路OL2とは、それぞれチ
ェック弁78,79を介してトランスミッションケース
94の底部のオイル溜め(オイルタンク)80に連通さ
れ、オイル溜め80から各油路OL1,OL2への流れの
みが許容されるとともに、第1油路OL1と第2油路O
2との間に吐出圧が所定圧以上となると両油路OL1
OL2を相互に連通させる2つの吐出圧制御用リリーフ
弁83,84が設けられている。
これらのリリーフ弁83,84は、それぞれスプリング
83a,84aによって閉方向に付勢されている。
チェック弁79と吸込吐出口73,75,77との間の
第2の油路OL2には、オイル溜め80へ吐出圧をリリ
ーフするための排出用油路89が接続しており、この排
出用油路89にはオリフィス81a付きの空気侵入防止用
チェック弁81が介挿されている。
また、チエック弁78と吸込吐出口72,74,76と
の間の第1の油路OL1には、オイル溜め80へ吐出圧
をリリーフするための排出用油路90が接続しており、
この排出用油路90にはオリフィス82a付きの空気侵入
防止用チェック弁82が介挿されている。
このような油圧回路71とすることで、ロータ69とカ
ムリング部70aとの相対回転方向によらず、常に吐出圧
がリリーフ弁83またはリリーフ弁84の弁体に作用
し、オイル溜め80が吸込口と連通することになる。
また、ベーンポンプ14のハウジング70を構成するフ
ランジ70cは、ベアリング93を介してトランスミッシ
ョンケース94に軸支されていて、カバー70bと一体の
後輪出力軸4は、第2図中の左方において軸受部97を
介してトランスミッションケース94に軸支されてい
る。
ベーンポンプ14のロータ69にスプライン係合部64a
を介して連結された前輪出力軸5は、スプライン係合部
64aの両側において、ブッシング(軸受)95,96を
介してそれぞれカバー70bおよび間挿材70eに軸支されて
いる。
そして、ベーン68の底部68bは、油路OL1,OL2
うちの吐出側の油路(ここでは、第1油路OL1)から
の吐出圧をチエック弁123(122)付き流路121
(120)を通じて減圧された作動圧を受けて、ベーン
68の先端部68aはハウジング70の内周面70fへ付勢さ
れる。
さらに、ロータ69の両端面には、スプリングまたはリ
ング等を軸部を介して5つずつ取り付けて、ベーン68
の各底部68bを押圧するようにしてもよい。
さらに、ベーン68と間挿材70dとが摺接する軸方向摺
動部106およびロータ69と間挿材70eとが摺接する
軸方向摺動部106には、第2図に示すように、円環状
の油圧室109,109が形成されて、この油圧室10
9,109は、ロータ69の孔部69bに連通するととも
に、排出用油路89,90に連通するようになってい
る。
すなわち、油圧室109,109は、各吸込吐出口7
2,74,76に接続する第1油路OL1にベーン付勢
機構(ベーン押し上げ機構)M1としてのチェック弁1
23付き流路121を介して連通して高油圧を受けると
ともに、各吸込吐出口73,75,77に接続する第2
油路OL2にベーン付勢機構(ベーン押し上げ機構)M1
としてのチェック弁122付き流路120を介して連通
して高油圧を受けるようになっている。
また、このベーン押し上げ用油圧室109には、ベーン
付勢機構(ベーン押し上げ機構)M2としてのA/T用
オイルポンプ140からのベーン押し上げ用油圧が逆止
弁144を介して供給されるように構成されており、A
/T用オイルポンプ140は従来より自動変速機2の油
圧回路用に用いられているもので、ベーンポンプ14自
体とは別個にトランスミッションケース94内に配設さ
れている。
このA/T用オイルポンプ140の内歯アウタギヤ140b
は、トランスミッションケース94に取り付けられてお
り、さらに、A/T用オイルポンプ140の外歯インナ
ギヤ140aはポンプ側外軸143に取り付けられている。
そして、自動車のエンジン回転時に伝えられる回転駆動
力がポンプ側外軸143へ伝えられて、ポンプ側外軸1
43が回転するので、エンジン回転式時に、A/T用オ
イルポンプ140から押し上げ用圧油供給油路141,
逆止弁144を経由してベーン押し上げ用油圧室109
へベーン押し上げ用油圧が供給されるのである。
この押し上げ用圧油供給油路141は、トランスミッシ
ョンケース94に形成された油路部分141aと、前輪出力
軸5に形成された油路部分141bと、トランスミッション
ケース94から外部のA/T用オイルポンプ140まで
連通する油路部分141cとで構成されている。
そして、ハウジング70側の後輪出力軸4とロータ69
側の前輪出力軸5との間に差回転が生じていないとき、
すなわち、前輪43,44と後輪52,53との間に差
回転が生じていないときにも、ベーン68がカムリング
部70aの内周面70fへ所定の押圧力で付勢されて、エンジ
ン1の始動時におけるオイルポンプ14の駆動力が十分
伝達される。
また、チェック弁122付き流路120およびチェック
弁123付き流路121を設けずに、第1油路OL1
第2油路OL2とを連通するオリフィス125付き連通
路124を設けてもよく、これらの流路120,121
および連通路124を併設してもよい。
なお、図中の符号69cはロータ69の内径側底部、9
1,92,93,93′,93″は前輪出力軸5を軸支
するベアリングを示しており、101はボルトをそれぞ
れ示している。
また、4輪駆動用駆動連結装置13とオイル溜め80と
の間にオイル循環機構M3が設けられていて、このオイ
ル循環機構M3は、上述の吸込用油路104およびチェ
ック弁78,79と、ポンプ室86,87,88に接続
する第1油路OL1,第2油路OL2とオイル溜め80と
を連通する排出用油路89,90と、これらの排出用油
路89,90に介装されたオリフィス81a,82aとから構
成されている。
そして、排出用油路89,90は、第9図(a)に示すよ
うに、吸込吐出口72〜77よりも外周側(4輪駆動用
駆動連結装置13の回転中心軸線CLよりも外径側)に
形成された遠心分離用通路89a,90aと、この遠心分離用
通路89a,90aに形成されたオリフィス81a,82aと、このオ
リフィス81a,82aの一端部に近接して配設される遠心式
空気侵入防止用チェック弁81,82と、この遠心式空
気侵入防止用チェック弁81,82にその外径側端部89
c,90cを接続されてその内径側端部89d,90dにオイル溜め
80への排出口70gを形成された(すなわち、その排出
方向を4輪駆動用駆動連結装置13の回転中心軸線CL
に関して大径側から小径側へ向けて形成された)放出用
通路89b,90bとから構成されている。
なお、排出口70gは、4輪駆動用駆動連結装置13の吸
入口から離れた位置(ベアリング93)へ向けて開口し
ていて、その排出方向も吸入口には向けられていない。
遠心式空気侵入防止用チェック弁81,82は、次に示
すようにフランジ70c,間挿材70eに形成されており、第
2図中のフランジ70c,間挿材70eの上半部および第9図
(a)に示すように、作動油より比重の大きい球状ボール
弁体81c(82c)と、流入側オリフィス81a(82a)と、流
出側円筒穴81f(82f)と、これらのオリフィス81a(82
a)と円筒穴81f(82f)とを結ぶ弁座としての円錐面81d
(82d)とから構成されており、オリフィス81a(82
a),円筒穴81f(82f)および円錐面81d(82d)の中心
線C1が円筒穴81f(82f)側の延長上で後輪出力軸4お
よび前輪出力軸5の回転中心軸線CLと交わるように構
成されている。
なお、第2図中のフランジ70c,間挿材70eの下半部に
は、後述する空気侵入防止用チエック弁81,82の変
形例が示されている。
そして、中心線C1と回転中心軸線CLとの交角αは、
円錐角θの(1/2)の角度γとの差(α−γ)が、例えば
20゜以下となるように設定されている。
また、第2図中のフランジ70c,間挿材70eの上半部およ
び第9図(a)に示すような遠心式空気侵入防止用チェッ
ク弁81,82を設けずに、第2図中のフランジ70c,
間挿材70eの下半部および第9図(b)に示すようなスプリ
ング式空気侵入防止用チェック弁81′,82′を設け
てもよく、この場合には、遠心力の生じない状態(エン
ジン1の回転時かつ自動変速機2のP,Nレンジのと
き)においても、球状ボール弁体81′c,82′cが
受け面81′e,82′eへスプリング81′b,8
2′bにより非常に弱いスプリング力で付勢されて、遠
心式空気侵入防止用チェック弁81′,82′を閉状態
とするので、吐出圧が球状ボール弁体81′c,82′
cに作用した時のみ、空気侵入防止用チェック弁8
1′,82′が開状態となる。
なお、球状ボール弁体81′c,82′cが開方向に移
動して、スプリング81′b,82′bの密着時のへた
りを防止するための、球状ボール弁体81′cの移動を
規制する受け面81′e,82′eが設けられている。
油圧回路71により、もしデフケース8側と後輪出力軸
4側との間に回転速度差が生じて、ロータ69が矢印a
方向に相対的に回転すると、オイルが、オイルタンク8
0からチェック弁79を経て第2油路OL2を通じ吸込
吐出口73,75,77へ吸入されたあと、ポンプ室8
6〜88の吸込吐出口72,74,76から第1油路O
1を経てオリフィス82a付きチェック弁82からオイル
タンク80へ吐出される。このときの吐出圧特性は第1
3図に符号Aで示すようになる。
逆に、ロータ69が矢印b方向に回転すると、オイル
は、オイルタンク80からチェック弁78を経て、第1
油路OL1を通じ吸込吐出口72,74,76へ吸入さ
れたあと、ポンプ室86〜88の吸込吐出口73,7
5,77から第2油路OL2を経てオリフィス81a付きチ
ェック弁81からオイルタンク80へ吐出される。この
ときの吐出圧特性は第13図に符号Bで示すようにな
る。
なお、各特性A,Bにおいて、回転速度差がある値以上
になると、吐出圧の上昇がほとんどなくなるのは、吐出
圧が各所定値以上で、リリーフバルブ83,84が開く
からである。
また、各特性A,Bにおけるリリーフバルブ83,84
が開く前の特性部分は、オリフィス81a,82aの作用によ
り、回転速度差の2乗に比例している。
ここで、リリーフバルブ83,84の開特性やオリフィ
ス81a,82aの絞り度合を適宜異ならせてあるので、特性
A,Bが異なったものとなっているが、これらの特性
A,Bを同じにしてもよい。
なお、図中の符号156はOリング溝、156aはOリン
グ、157はフィルタ溝、158,159はそれぞれド
レンプラグ、160はエアブリーザ、162はボールプ
ラグを示している。
本発明の第1実施例としての回転式油圧ポンプのケーシ
ング構造は上述のごとく構成されているので、オイルポ
ンプ14のオイル吸入口22へ供給されるオイルは、後
輪出力軸4,前輪出力軸5が前進方向fへ回転している
ときには、回転体としての後輪出力軸4,前輪出力軸5
およびハウジング70によってかき上げられて、隔壁1
52の堰部152aを乗り越えて主通路153により第2の
油室80Bに供給され、登坂発進時等のオイルレベルが
変化したときや後輪出力軸4,前輪出力軸5が停止ない
し後進方向bへ回転しているときには、主として補助通
路154を通じて第2の油室80Bに供給される。
なお、この主通路153は、第2の油室80Bにおける
撹拌の影響が極力第2の油室80Bにおける及ぼされな
いような大きさに形成される。
この第2の油室80Bでは、回転体による運動エネルギ
ーが低減されるので、作動油が沈静化され、作動油中の
空気が作動油から分離されて、泡立ちが極めて小さくな
り、供給油路98の連通路155a,導入油路155bを通じ
て、オイルポンプ14のオイル吸入口22へ供給され
る。
このように、「第1の油室80A→(主通路153)→
第2の油室80B→折り返し用孔部150a,折り返し部下
部80c→オイル吸入口22」と流れる作動油の流れは、
各図中において「F1→F2→F3→F4」で示す流れであ
り、「第1の油室80A→(補助通路154)→第2の
油室80B→折り返し用孔部150a,折り返し部下部80c
→オイル吸入口22」と流れるものは、各図中において
「F1′→F2→F3→F4」で示す流れである。
また、エンジン1によってベーン付勢機構(ベーン押し
上げ機構)M2としてのA/T用オイルポンプ140が
直接駆動されて、エンジン回転時、このA/T用オイル
ポンプ140から吐出されたベーン押し上げ用圧油は、
押し上げ用圧油供給油路141を通り、逆止弁144を
開状態にして、オイルポンプ14のベーン押し上げ用油
圧室109へ入るように構成してもよく、この場合、ベ
ーン押し上げ用油圧室109に入ったベーン押し上げ用
圧油は、チェック弁122,123を閉鎖状態にするの
で、ベーン押し上げ用油圧室109内の油圧が上昇し、
ベーン68の底部68bに油圧が作用し、ベーン68が押
し上げられて、カムリング部70aの内周面70fへ付勢され
る。
これにより、前・後輪の回転速度差が生じて、オイルポ
ンプ14が作動すると即座に吸込吐出口72〜77の吐
出側から吐出圧が発生する。
ついで、吸込吐出口72〜77の吐出側から吐出される
吐出圧が、ベーン押し上げ用油圧室109内の油圧より
高くなるとすぐに、ベーン付勢機構(ベーン押し上げ機
構)M1を構成するチェック弁122またはチェック弁
123が開状態となって、さらに、A/T用オイルポン
プ140からの吐出圧より高くなるとすぐに逆止弁14
4が閉状態となって、ベーン押し上げ用油圧室109内
の油圧がオイルポンプ14の吐出圧まで高められる。
また、4輪駆動での走行中に、後輪52,53がスリッ
プを起こして、後輪出力軸4側の回転速度が前輪出力軸
5側の回転速度よりも速くなった場合に、ロータ69が
矢印a方向へ相対的に回転する。
これにより、オイルが、オイルタンク80からチェック
弁79を経て第2油路OL2を通じ吸込吐出口73,7
5,77へ吸入され、ポンプ室86〜88の吸込吐出口
72,74,76から第1油路OL1を経てオリフィス8
2a付きチエック弁82からオイルタンク80へ吐出され
る。
すなわち、オイル循環機構M3における空気侵入防止用
チェック弁82(81)では、第9図(a)に示すよう
に、球状ボール弁体82c(81c)自身の遠心力および浮力
の合力F5と、球状ボール弁体82c(81c)の前後の差圧
6との合力Fが、外径側の円錐面82e(81e)の垂線l
より、第9図(a)中の右方にかかると空気侵入防止用チ
ェック弁82(81)が閉状態となり、左方にかかると
空気侵入防止用チェック弁82(81)が開状態となる。
ここでは、垂線lより第9図(a)中の右方に合力Fがか
かるので、空気侵入防止用チェック弁82(81)の開
(op)状態から閉(cl)状態への移行が、空気侵入防止
用チェック弁82(81)で行なわれるが、オリフィス
82a(81a)に供給される作動油が停止すると、球状ボー
ル弁体82c(81c)の比重は作動油の比重より大きいの
で、球状ボール弁体82c(81c)は、遠心力Fにより直ち
に円錐面82e(81e)へ押し付けられて、空気侵入防止用
チェック弁81(82)の閉鎖が迅速に行なわれる。
これにより、第2油路OL2中の油圧が、吸込吐出口7
3,75,77からの吐出圧まで直ちに上昇する。
なお、球状ボール弁体81c,82cは、作動油の比重より大
きな比重の材質で作られているので、ベーンポンプ14
の回転が停止しているときには、円筒穴81f,82fの重力
方向へ沈下する。
この吐出圧は後輪出力軸4側と前輪出力軸5側との回転
速度差に応じた値であるので、このオイルポンプ14に
よって伝えられるトルクの大きさも上記回転速度差に応
じて変わる。
このように回転速度差が生じると、この差に応じた結合
度で、4輪駆動用駆動連結装置13が接状態となるた
め、該回転速度差が抑制されるようになって、その結果
前輪出力軸5側へもトルクが伝達される。これにより後
輪52,53が空転した場合でも、前輪43,44を回
転駆動できる。
このとき、上記回転速度差に応じて4輪駆動用駆動連結
装置13による伝達トルク量を自動制御しているので、
運転フィーリングや操縦安定性の悪化を招くことがな
い。
なお、該回転速度差がある値を超えると、安全のため、
リリーフ弁84の作用により、吐出圧の上昇が抑えられ
て、一定値となり、両軸4,5間の伝達トルクが一定値
以上にならない。
逆に前輪43,44がスリップを起こした場合に、すな
わち、前輪43,44が後輪52,53よりも速く回転
している場合に、自動的にロータ69が矢印b方向へ相
対的に回転する。
これによりオイルの供給路が自動的に切り替わって、オ
イルは、オイルタンク80からチェック弁78を経て、
第1油路OL1を通じ吸込吐出口72,74,76へ吸
入され、ポンプ室86〜88の吸込吐出口73,75,
77から第2油路OL2を経てオリフィス81a付きチェッ
ク弁81からオイルタンク80へ吐出される。
このときのオイル循環機構M3の空気侵入防止用チェッ
ク弁81の作動は、上述の空気侵入防止用チェック弁8
2とほぼ同様になる。
この吐出圧も後輪出力軸4側と前輪出力軸5側との回転
速度差に応じた値であるので、オイルポンプ14によっ
て伝えられるトルクの大きさも上記回転速度差に応じて
変わる。
この場合も回転速度差に応じた結合度で、4輪駆動用駆
動連結装置13が接状態となるため、該回転速度差が抑
制されようになって、その結果後輪出力軸4側へもトル
クが伝達される。これにより前輪43,44が空転した
場合でも、後輪52,53を回転駆動できる。
そして、この場合も、上記回転速度差に応じて4輪駆動
用駆動連結装置13による伝達トルク量が自動制御され
ているので、運転フィーリングや操縦安定性の悪化を招
くことがない。
なお、この場合も上記回転速度差がある値を超えると、
安全のため、リリーフ弁83の作用により、吐出圧の上
昇が抑えられて、一定値となり、両軸4,5間の伝達ト
ルクが一定値以上にならない。
また、本装置においては、伝達トルクと回転速度差の積
がエヌ瑠ギーロスとなって発熱するが、オイルの一部が
排出用油路89,90を通じてオイルタンク80へ排出
されるようになっているので、オイルポンプ14の作動
油の冷却や潤滑を十分に行なうことができる利点もあ
る。
すなわち、ブレーキ時の後輪52,53がロック気味と
なる場合には、4輪駆動用連結装置本体13に接続する
第1の回転軸5と第2の回転軸4との間の回転速度差が
非常に大きくなる。
これにより、ベーンポンプ14では、第11図に実線で
示す状態の油の流れが生じて大きな油圧が発生するが、
所定値を超えると、リリーフ弁83がスプリング83aに
抗して開き吐出圧がほぼ一定に制御され、後輪52,5
3に一定の吐出圧に対応した一定の駆動力が伝達された
4輪駆動状態となる。
そして、前輪43,44の回転速度が減少するととも
に、後輪52,53の回転速度が増大することとなり回
転速度差を縮少(ノンスリップデフと同一機能)するよ
うになる。
このように、前輪43,44のスリップ状態では後輪5
2,53への駆動トルクが増大されて走行不能となるこ
とを回避できるとともに、後輪52,53がロック気味
の場合には、前輪43,44のブレーキトルクを増大し
て後輪52,53のロックを防止する。
また、前後回転数Rf,Rrの変動の小さな定常走行(40
〜60km/時)において、前輪43,44および後輪5
2,53に大きな回転速度差があるときは、警告灯13
1を点灯ないし点滅させて、停止の警報を与える。
さらに、ステアリング角(操舵角)fと、前輪回転数Rf
と、後輪回転数Rrとに応じて、異常運転状態となれば、
警告灯131を点灯ないし点滅させる。
また、車両の通常の直進状態において、前輪43,44
と後輪52,53とのタイヤの有効半径が同一で、タイ
ヤのスリップ回転速度が少ないことから、4輪駆動用連
結装置13に接続する第1の回転軸5と第2の回転軸4
との間に回転速度差が生じない。
したがって、ベーンポンプ14では油圧の発生はなく、
後輪52,53に駆動力が伝達されず、前輪43,44
のみによる前輪駆動となる。
この状態においては、前輪43,44と後輪52,53
との回転速度差が小さく、0〜20(rpm)になるので、
LED129aが点灯して、「2WD」の表示が行なわれ
る。
しかし、車両の直進加速時のように、大きなスリップが
なくても通常、前輪43,44が約2%以内でスリップ
する状態では、これによる回転速度差が第1の回転軸5
と第2の回転軸4との間に生じると、ベーンポンプ14
が機能してこの回転速度差に応じた油圧が発生し、ロー
タ69とカムリング部70aとが一体になって回転し、こ
の油圧とベーン68の受圧面積とに対応した駆動力が後
輪52,53に伝達されて4輪駆動状態になる。
この状態においては、前輪43,44と後輪52,53
との回転速度差に応じて、適宜LED129a〜129dのいず
れかが点灯して、運転者に2WDから4WDまでの中間
状態ないし4WD状態を表示する。
このように、高速旋回時には、旋回半径も大きいので、
ブレーキング現象はごくわずかであり、4輪駆動による
操縦安定性が確保されるのである。
また、従来のフルタイム4輪駆動車では必ず装備されて
いたセンタデフに比べ、本装置では、小型コンパクト化
をはかることができるとともに重量軽減もはかれ、コス
ト低減ともなる。
なお、実施例におけるベーン68の数は、13枚でもよ
く、この場合もベーン68はロータ69の外周面69aに
等間隔に開口された孔部69bに内装される。
また、ベーン68は10枚(11枚でもよい。)設けら
れており、吸込吐出口72〜77が6個開口しており、
各ポートの受圧面積における力の合力がゼロとなるよう
に、ケーシング70の各部が設定されている。
この変形例でも、実施例とほぼ同様の作用効果を得るこ
とができる。
なお、実施例および変形例におけるベーンの枚数Vnと一
対の吸込口および吐出口の数Pnとは、例示であり、それ
らの比(Vn/Pn)は非整数、すなわち整数でない実数に設
定されていればよい。
このように、本実施例によれば、簡素な構成で、次のよ
うな効果ないし利点を得ることができる。
(1)前輪と後輪との差回転が許容されるので、パートタ
イム4輪駆動車のタイトコーナブレーキング現象などの
不具合や運転操作の煩雑さを解消できる。
(2)第1の回転軸と第2の回転軸との間で、速く回って
いる方から遅く回っている方へ力が伝達されるので、前
輪ないし後輪の一方が過回転することはなくなり、ホイ
ルスピンを確実に防止でき、車両の安定性に寄与しう
る。
(3)フルタイム4輪駆動車に、従来装備されていたセン
タデフに比べ、小型・軽量とすることができ、低コスト
化にも寄与しうる。
(4)第1油路および第2油路のうち吐出側となったもの
における吐出圧の脈動(変動)が低減されて、第1の回
転軸と第2の油圧との間で伝達されるトルクの変動が減
少する。
(5)低速急旋回時において、前輪側の回転軸と後輪側の
回転軸との回転速度差を許容でき、ブレーキング現象を
確実に防止できる。
(6)高速走行時において、車両の直進安定性が確保され
る。
(7)スプリング式空気侵入防止用チェック弁によれば、
エンジンの回転時に変速機のP,Nレンジにおいて、す
なわち、停車時において、球状ボール弁体が落下して、
チェック弁が開状態となる不具合がない。
(8)遠心分離用通路が設けられているので、オイルポン
プが吸入するゴミやオイルポンプ内部で発生する摩耗物
等のオイルよりも比重の大きいゴミ(鉄粉,アルミ粉
等)を、差動ポンプの回転により動く遠心力を利用して
外周側に導き、そして、油の流れに乗せて4輪駆動用駆
動連結装置外へ排出させることができ、これにより、ベ
ーンおよびロータと間挿部材との間における摩耗を減少
させることができ、4輪駆動用駆動連結装置の摺動部の
信頼性が向上する。
(9)放出用通路が外周側から回転中心軸線側へ向けて形
成されているので、油圧ポンプ中の作動油を直接オイル
溜めの油中または油面へ向けて排出することができ、す
なわち、極力空中への油放出を回避し、オイル溜めの油
面における泡立ちを極力押さえて作動油に空気が混入し
ないようにすることができる。
(10)油圧ポンプの油温を低下させて、低速回転時におけ
る油漏れを確実に防止でき、本装置の始動性を改善で
き、これにより、駆動力伝達性能を向上させることがで
きる。
(11)第2の逆止弁としての遠心式空気侵入防止用チェッ
ク弁ないしスプリング式空気侵入防止用チェック弁が排
出用油路に介装されているので、開状態から閉状態への
移行を迅速に行なうことができ、後輪出力軸と前輪出力
軸との相対的回転方向が逆転した場合にも、油圧ポンプ
(差動ポンプ)からの吐出圧を直ちに上昇させることが
でき、吐出圧がこの空気侵入防止用チェック弁に作用し
ていないとき、且つ、オイルポンプが回転しているとき
(エンジンの回転時かつ変速機のP,Nレンジ以外のと
き)には、球状ボール弁体が必ず閉鎖する。
すなわち、差動ポンプにおいては、前輪と後輪との相対
的回転速度差の正負により、油圧回路における吐出側と
吸込側とが入れ換わるが、空気侵入防止用チェック弁が
設けられているので、吐出圧の作用しているときに、空
気侵入防止用チェック弁が開状態となり、吸入負圧の作
用しているときに、空気侵入防止用チェック弁が閉状態
となって、空気侵入防止用チェック弁から油圧回路の油
路に空気を吸い込まないようになる。
(12)吸入負圧が作用する側の空気侵入防止用チェック弁
の開口がオイルレベルよりも上(大気中)にある場合の
発進時に、前輪のみが空転(インナーロータのみが回
転)しようとするが、このように吸入負圧が作用した時
にも、空気侵入防止用チェック弁が閉鎖しているので、
空気を油圧回路に吸い込むことが防止され、これに伴う
伝達駆動力の低下(4WDにならないという不具合)が
回避される。
(13)第1の油室と隔絶した第2の油室により回転体やギ
ヤにより撹拌されて泡立っている第1の油室内の作動油
を沈静化させて、供給油路およびオイル吸入口を通じて
オイルポンプ内へ供給することができる。
特に、隔壁によりかき上げられたオイルが第2の油室に
導かれるので、油の運動エネルギーが低減して、沈静化
の促進をはかることができる。
(14)第1の油室と第2の油室とを連通する補助通路が設
けられているので、撹拌の影響を極力押さえながら、登
坂発進時等においてオイルレベルの位置が変化しても、
必ず第2の油室にはオイルが供給されるので、オイル供
給が安定する。
(15)ケースを分割して、その合わせ面を一部切り欠き、
供給油路の一部を形成する構造としたので、製作上も供
給油路の一部を鋳型にて製造することも可能となり、機
械加工や板金ビス止めする等よりも簡易化および低廉化
をはかることができる。
(16)ケースの合わせ面に、オイルフィルターを挟み込む
ことにより、オイルフィルターを保持するスナップリン
グやボルトが不用となり、従って、スナップリング溝や
ねじ穴加工が不用となるので、製造上およびコスト上の
メリットが大きい。
(17)オイル溜めから供給油路を通じて油圧ポンプ内へ空
気が侵入するのを防止するために、真空ポンプやアスピ
レータ等の負圧源などの付属装置を必要としないため、
製造コストおよびメンテナンスの面で有利である。
第14〜18図に示すごとく、本発明の第2実施例で
は、横置きのエンジン1に変速機2が連結され、そのド
ライブギヤ(または4速カウンタギヤ)3には、このド
ライブギヤ3付きの軸(入力軸)からのトルクを等分割
して2個の出力軸4,5[一方の出力軸4が後輪駆動用
の軸(以下、「後輪出力軸」という)で、他方の出力軸
5が前輪駆動用の軸(以下、「前輪出力軸」という)で
ある]に与える差動機構6(以下、この差動機構を「セ
ンタデフ6」という)のリングギヤ7が噛合している。
そして、このリングギヤ7と一体のデフケース8付きの
ピニオン9,10には、サイドギヤ11,12が噛合し
ており、サイドギヤ11には後輪出力軸4が連結される
とともに、サイドギヤ12には前輪出力軸5が連結され
ている。
また、差動制限装置13′がデフケース8側と後輪出力
軸4との間に介装されている。
この差動制限装置13′は、デフケース8と後輪出力軸
4との回転速度差によって駆動され、この回転速度差に
応じた圧力でオイルを吐出するベーン式オイルポンプ1
4′と、このオイルポンプ14′からの吐出油を油路を
介して受けることによりデフケース8側と後輪出力軸4
側との結合度を調整して上記回転速度差を抑制する湿式
クラッチ32とをそなえて構成されている。
次にこれらのオイルポンプ14′や湿式クラッチ32の
配設状態について説明する。
第14図に示すごとく、デフケース8にボルト締めされ
たリングギヤ7には、ケース15がスプライン嵌合して
おり、このケース15内にオイルポンプ14′が設けら
れる。
オイルポンプ14′は、後輪出力軸4にスプライン嵌合
したロータ17と、このロータ17の孔部17bに嵌入し
て大径側へ付勢されたベーン17aと、ベーン17aの先端に
常に摺接するカムリング(ケーシング)18とをそなえ
ており、ロータ17,ベーン17aおよびカムリング18
はポンプケース16内に設けられる。
なお、オイルケース16はボルト19でケース15に固
定されている。
また、このオイルポンプ14′には、第19図に示すご
とく、2つのポート20,21が形成されているが、一
方のポート21は、油路292,チェックバルブ24お
よび吸入油路291を介して後輪出力軸4の軸端に開口
するオイル吸入口22に連通接続されるとともに、油路
294およびチェックバルブ28を介して吐出油路(制
御油路)29に連通接続されており、他方のポート20
は、油路293,チェックバルブ25および吸入油路2
91を介してオイル吸入口22に連通接続されるととも
に、油路295およびチェックバルブ28′を介して吐
出油路(制御油路)29′に連通接続されている。
さらに、油路291と、湿式クラッチ32の接方向制御
油室37に連通する戻し油路298との間には、リリー
フバルブ26付きの油路296が介装されている。
また、油室37から、湿式クラッチ32のピストン36
に穿設されたオリフィス30付きの潤滑油路297が分
岐している。
これにより、もし前輪出力軸5側と後輪出力軸4側との
間に回転速度差が生じて、ロータ17が矢印a方向に相
対的に回転すると、オイルが、オイル吸入口22,油路
291,チェックバルブ25,油路293を経てポート
20へ吸入されたあと、ポート21,油路294,チェ
ックバルブ28を経て油路29から吐出される。このと
きの吐出圧特性は第20図に符号A′で示すようにな
る。
逆に、ロータ17が矢印b方向に相対的に回転すると、
オイルは、オイル吸入口22,油路291,チェックバ
ルブ24,油路292を経て、ポート21へ吸入された
あと、ポート20,油路295,チェックバルブ28′
を経て油路29′から吐出される。このときの吐出圧特
性も第20図に符号A′で示すようになる。
なお、特性A′において、回転速度差がある値以上にな
ると、吐出圧の上昇がほとんどなくなるのは、吐出圧が
各所定値以上で、リリーフバルブ26が開くからであ
る。
また、特性A′におけるリリーフバルブ26が開く前の
特性部分は、オリフィス30の作用により、回転速度差
の2乗に比例している。
ここで、リリーフバルブ26の開特性やオリフィス30
の絞り度合を適宜設定してあるので、特性A′を所望の
ものにすることができる。
なお、油路291は、その一部が後輪出力軸4内に穿設
されており、油路291のオイル吸入口22寄りの部分
には、オイルフィルタ23が設けられている。
ところで、ポンプケース16の外周には第14図に示す
ごとく、環状の段部16aが形成されており、この段部16a
には、環状ピストン36が嵌め込まれている。これによ
りこのピストン36とシリンダ37a(ポンプケース16
およびスリーブ35)との間に、油室37が形成される
ことになる。そして、このピストン用油室37に油路2
9,29′が連通している。
したがって、油路29,29′から吐出されるオイルに
よって、ピストン36が押し出されるようになってい
る。
このようにピストン36が押し出されると接状態となる
湿式クラッチ32がピストン36に隣接して設けられて
いる。
油室37には、シリンダ37aの内壁37bとピストン36と
の間に、付勢機構としての環状スプリング56が介装さ
れていて、第20図中の符号B′で示すように、ピスト
ン36に予め湿式クラッチ32の接方向に付勢力(初期
制限トルク)を付与している。
湿式クラッチ32は、クラッチハブとしてのポンプケー
ス15,16の外周部にスプライン係合する複数(ここ
では、4)の環状クラッチ板33と、後輪出力軸4付き
のクラッチシリンダ37aとしてのスリーブ35の内周部
にスプライン係合する複数の環状クラッチ板34とをそ
なえて構成されており、クラッチ板33,34は交互に
配設されて、摩擦係合要素を構成している。
したがって、油室37へ圧油が供給されて、ピストン3
6が押し出されると、クラッチ板33,34が相互に密
着せしめられて、ポンプケース15とスリーブ35,す
なわち前輪出力軸5側と後輪出力軸4側とが係合する。
このときオイルポンプ14′の吐出圧に応じてピストン
36を押し出す力が変わるので、湿式クラッチ32の係
合度、すなわちトルク伝達度もこれに応じて変わる。な
お、第14図中の符号54,54′はストッパ部材を示
す。
また、前記の油路297は湿式クラッチ32のクラッチ
板33,34(この部分の圧力はほぼ大気圧となってい
る)に向けて開口しており、これにより油路297から
のオイルによって湿式クラッチ32の冷却や潤滑を行な
うことができる。
すなわち、オリフィス30は、ピストン36に穿設され
ていて、その半経方向位置はディスク33aの内周側に形
成されたインボリュートスプライン57に向けて形成さ
れている。
ところで、前輪出力軸5には、ギヤ38が取り付けられ
ており、このギヤ38は前輪用差動機構40(以下、
「前輪用デフ40」という)のリングギヤ39に噛合し
ている。これにより前輪出力軸5からのトルクは、前輪
用デフ40で分割され左右の前輪駆動軸41,42へ伝
達されて、前輪43,44を回転駆動する。
また、後輪出力軸4はベベルギヤ機構45を介してプロ
ペラ軸47に連結されており、このプロペラ軸47の後
部のベベルギヤ47aが後輪用差動機構49(以下、「後
輪用デフ49」という)のリングギヤ48に噛合してい
る。これにより後輪出力軸4からのトルクは、後輪用デ
フ49で分割され左右の後輪駆動軸50,51へ伝達さ
れて、後輪52,53を回転駆動する。
前輪出力軸(回転駆動軸)5によって駆動される回転式
油圧ポンプ(差動ポンプ)としてのオイルポンプ14の
ケーシングCAは、第14図に示すように、カバー部材
94c付きのトランスミッションケース94と、トランス
ミッションケース94に接続するアダプタ94aと、この
アダプタ94aに接続するリヤカバー94bとで構成されてい
る。
そして、このケーシングCAには、第14図に示すよう
に、差動制限装置13′の回転体としての後輪出力軸
4,後輪出力軸5および湿式クラッチ32が収容され
る。第1の油室80Aと、第1の油室80Aのオイル溜
め80と差動制限装置13′のオイル吸入口22とを連
通する供給油路98とがもうけられている。
この供給油路98には、作動油沈静化用第2の油室80
Bが第1の油室80Aの側方に近接して介装されてお
り、この第2の油室80Bは、隔壁152によって第1
の油室80Aと区画されていて、隔壁152の上端部に
おける主通路153および隔壁152の下部における補
助通路154により、第1の油室80Aと連通してい
る。
この補助通路154は、自動車の登坂路停車時(登坂角
38゜)のオイルレベルL2における油中に位置するよ
うに形成されている。
そして、主通路153は、自動車の通常の停車時のオイ
ルレベルL1における油中に位置するように形成されて
いる。
この第2の油室80Bには、第15図中の符号F1で示
すように、回転体によりかき上げられた作動油が案内さ
れる。
この第2の油室80Bで沈静化されて泡立ちの消えた作
動油は、第15図中の符号F2で示すように、アダプタ9
4aとリヤカバー94bとのあわせ面300にフィルタ取付
部材157cにより挟み込まれる粗目のオイルフィルタ157a
を通過して、ろ過された後、マグネット100″へ向け
て流れるようになっている。
このマグネット100″は、第15図に示すように、テ
ーパプラグ100″aにより、アダプタ94aにボルト締
めされている。
そして、マグネット100″により、オイル中の磁性体
(鉄粉等)が取り除かれたオイルは、連通路(切欠部)
155aを通じて、折り返し部下部80Cに送られ、第15
図中の符号F3で示すように、この折り返し部下部80cか
らアダプタ94aとリヤカバー94bとの合わせ面300にフ
ィルタ取付部材157cにより挟み込まれる細目のオイルフ
ィルタ157bを通過して、さらに、ろ過された後、供給油
路98の導入油路155bを通じて、第14図中の符号F4
で示すように、後輪出力軸4の端部に形成されたオイル
吸入口22に供給されるようになっている。
また、リング状スプリング170が設けられており、こ
のリング状スプリング170は、ベーン17aの底部に当
接してベーン17aをカムリング18の内周面18aへ常時付
勢する。
さらに、トランスミッションケース94のリヤカバー94
bには突起部171が形成されていて、この突起部17
1の孔部に後輪出力軸4の端部が嵌合して、軸受部97
が構成される。
なお、図中の符号172はディスク潤滑用通路、17
3,174は通路をそれぞれ示している。
本発明の第2実施例としての回転式油圧ポンプのケーシ
ング構造は、上17述のごとく構成されているので、オ
イルポンプ14のオイル吸入口22へ供給されるオイル
は、後輪出力軸4,前輪出力軸5が前進方向fへ回転し
ているときには、回転体としての後輪出力軸4,前輪出
力軸5およびケーシング18によってかき上げられて、
隔壁152の堰部152aを乗り越えて主通路153により
第2の油室80Bに供給され、登坂発進時等のオイルレ
ベルが変化したときや後輪出力軸4,前輪出力軸5が停
止ないし後進方向bへ回転しているときには、主として
補助通路154を通じて第2の油室80Bに供給され
る。
なお、この主通路153は、第2の油室80Bにおける
撹拌の影響が極力第2の油室80Bにおける及ぼされな
いような大きさに形成される。
この第2の油室80Bでは、回転体による運動エネルギ
ーが低減されるので、作動油が沈静化され、作動油中の
空気が作動油から分離されて、泡立ちが極めて小さくな
り、供給油路98の連通路155a,導入油路155bを通じ
て、オイルポンプ14のオイル吸入口22へ供給され
る。
このように、「第1の油室80A→(主通路153)→
第2の油室80B→折り返し用孔部,折り返し部下部8
0C→オイル吸入口22」と流れる作動油の流れは、各
図中において「F1→F2→F3→F4」で示す流れであ
り、「第1の油室80A→(補助通路154)→第2の
油室80B→折り返し用孔部,折り返し部下部80C→
オイル吸入口22」流れるものは、各図中において「F
1′→F2→F3→F4」で示す流れである。
また、前輪駆動での走行中に、前輪43,44がスリッ
プを起こして、前輪出力軸5側の回転速度が後輪出力軸
4側の回転速度よりも速くなった場合には、ロータ17
が矢印a方向へ相対的に回転する。
これにより、オイルが、オイル吸入口22,油路29
1,チェックバルブ25,油路293を経てポート20
から吸入され、ポート21,油路292,チェックバル
ブ28を経て油路29から油室37内へ吐出される。
この吐出圧は、前輪出力軸5側と後輪出力軸4側との回
転速度差に応じた値であるので、ピストン36によるク
ラッチ板33,34を押し付ける力も上記回転速度差に
応じて決まる。
その結果湿式クラッチ32によって伝えられるトルクの
大きさも上記回転速度差に応じて変わる。
このように回転速度差が生じると、この差に応じた結合
度で、湿式クラッチ32が接状態となるため、該回転速
度差が抑制されるようになって、その結果後輪出力軸4
側へもトルクが伝達される。これにより前輪43,44
が空転した場合は、自動的に4輪駆動状態に切り替って
後輪52,53を回転駆動できる。
このとき、上記回転速度差に応じて湿式クラッチ32に
よる伝達トルク量を自動制御しているので、運転フィー
リングや操縦安定性の悪化を招くことがない。
また、環状スプリング56により、ピストン36が常時
クラッチ板34に付勢されていて、クラッチ板33,3
4の間のクリアランスがないので、回転差が生じてオイ
ルポンプ14が吐出を開始すれば、直ちにクラッチ板3
3,34を押圧するところとなり、差動回転数が生じた
後には、速やかに油圧が立ち上がり、差動回転数に応じ
たクラッチトルクが瞬時に得られる。
そして、環状スプリング56により、第20図中の符号
C(C′)で示す付勢機構をそなえない従来のものと比
較して、大きな初期制限トルクB′を与えられることが
でき、その初期制限トルクB′の値は、環状スプリング
56により任意の値に設定できる。
さらに、第20図中の符号A′,Cで示すように、オリ
フィス30の設置により、緩やかなトルク立上り特性と
なってタイトコーナブレーキング現象等も解消すること
ができる。
特に、第20図に示す特性A′(A″)の立上がり部分
は、回転速度差の2乗に比例しているので、微少な回転
速度差では、トルクが余り変化せず、これにより低速旋
回時などのブレーキング減少を小さくできる利点もあ
る。
また、ピストン36でクラッチ板33,34を押し付け
るタイプの湿式クラッチ32およびベーン式小半径のロ
ータポンプがオイルポンプ14′として使用されている
ので、構造のコンパクト化をはかれるとともに、このオ
イルポンプ14′が湿式クラッチ32の軸方向の幅のな
かに収まるように、湿式クラッチ32の内径側に配設さ
れているので、より一層コンパクト化をはかれるのであ
る。
すなわち、オイルポンプ14′と湿式クラッチ32と
が、回転軸4,5と同軸的に配設されるとともに、回転
軸4,5の半径方向に整合して配設されているので、半
径方向の寸法を小さくすることができる。
なお、該回転速度差がある値を超えると、安全のため、
リリーフバルブ26の作用により、吐出圧の上昇が抑え
られる。
逆に後輪52,53の方が前輪43,44よりも速くま
わった場合は、自動的にロータ17が矢印b方向へ相対
的に回転する。
これによりオイルの供給路が自動的に切り替わって、オ
イルは、オイル吸入口22,油路291,チェックバル
ブ24,油路292を経てポート21から吸入され、ポ
ート20,油路295,チェックバルブ28′を経て油
路29′から油室37内へ吐出される。
この吐出圧も前輪出力軸5側と後輪出力軸4側との回転
速度差に応じた値であるので、ピストン36によるクラ
ッチ板33,34を押し付ける力は上記回転速度差に応
じて決まる。
その結果湿式クラッチ32によって伝えられるトルクの
大きさも上記回転速度差に応じて変わる。
この場合も回転速度差に応じた結合度で、湿式クラッチ
32が接状態となるため、該回転速度差が抑制されるよ
うになって、その結果前輪出力軸5側へもトルクが伝達
される。これにより後輪52,53の回転を抑制して、
前輪43,44を回転駆動できる。
そしてこの場合も、上記回転速度差に応じて湿式クラッ
チ32による伝達トルク量が自動制御されているので、
運転フィーリングや操縦安定性の悪化を招くことがな
い。
なお、この場合も上記回転速度差がある値を超えると、
安全のため、リリーフバルブ26の作用により、吐出圧
の上昇が抑えられる。
また、本装置においては、伝達トルクと回転速度差の積
がエネルギーロスとなって発熱するが、オイルの一部が
油路297を通じて湿式クラッチ32のクラッチ板3
3,34へ向けて排出されるようになっているので、湿
式クラッチ32の冷却や潤滑を十分に行なうことができ
る利点もある。
なお、本装置は後輪駆動ベースの4輪駆動車にも適用で
きるが、この場合、常時はエンジンからの動力が後輪出
力軸に伝達される。
また、付勢機構としては、各種スプリング等が用いられ
る。
本発明の第2実施例によれば、次のような効果ないし利
点を得ることができる。
(1)回転速度差に応じて上記湿式クラッチによる伝達ト
ルク量を自動的に制御できるので、運転フィーリングや
操縦安定性の悪化などを招くことがなく、しかもファー
ガソンタイプのように極めて多くのクラッチ板を使用し
なくても、十分にその機能を発揮することができるの
で、構造のコンパクト化や低コスト化にも寄与しうる。
(2)湿式クラッチのディスクへの潤滑が可能となって、
これによりディスクの焼損が防止され、耐久性の向上が
できる。
(3)さらに、ディスク部品の共通性等も損なわれない。
(4)第1の油室と隔絶した第2の油室により回転体やギ
ヤにより撹拌されて泡立っている第1の油室内の作動油
を沈静化させて、供給油路およびオイル吸入口を通じて
オイルポンプ内へ供給することができる。
特に、隔壁によりかき上げられたオイルが第2の油室に
導かれるので、油の運動エネルギーが低減して、沈静化
の促進をはかることができる。
(5)第1の油室と第2の油室とを連通する補助通路が設
けられているので、撹拌の影響を極力押さえながら、登
坂発進時等においてオイルレベルの位置が変化しても、
必ず第2の油室にはオイルが供給されるので、オイル供
給が安定する。
(6)ケースを分割して、その合わせ面を一部切り欠き、
供給油路の一部を形成する構造としたので、製作上も供
給油路の一部を鋳型にて製造することも可能となり、機
械加工や板金ビス止めする等よりも簡易化および低廉化
をはかることができる。
(7)ケースの合わせ面に、オイルフィルターを挟み込む
ことにより、オイルフィルターを保持するスナップリン
グやボルトが不用となり、従って、スナップリング溝や
ねじ穴加工が不用となるので、製造上およびコスト上の
メリットが大きい。
(8)オイル溜めから供給油路を通じて油圧ポンプ内へ空
気が侵入するのを防止するために、真空ポンプやアスピ
レータ等の負圧源などの付属装置を必要としないため、
製造コストおよびメンナンスの面で有利である。
〔発明の効果〕
以上詳述したように、本発明の回転式油圧ポンプのケー
シング構造によれば、次のような効果ないし利点が得ら
れる。
(1)第1の油室内でかき上げられた作動油が主通路を介
して第2の油室に導かれるため、第1の油室内で攪拌さ
れて泡立っている作動油を第2の油室内で沈静化させる
ことができ、第2の油室内の作動油を供給油路を介して
ポンプに供給するので、キャビテーションを効率良く防
止することができる。
(2)主通路より低位に位置して第1の油室と第2の油室
とを連通する補助通路を設けているので、作動油のオイ
ルレベルが低くなった場合でも、第2の油室へ作動油を
確実に供給することができ、これによりポンプへの作動
油の供給を安定化することができるし、主通路の設定に
対する制約が少なくなって作動油沈静効果が効率良く得
られるよう主通路を設定することができる。
(3)負圧源等の付属装置を必要としないため、製造コス
トおよびメンテナンスの面で有利である。
【図面の簡単な説明】
第1〜13図は本発明の第1実施例としての回転式油圧
ポンプのケーシング構造をそなえた4輪駆動用駆動連結
装置を示すもので、第1図はその組付け前のケーシング
要部を示す正面図(第3図のI−I矢視図)、第2図は
その要部縦断面図、第3図はその組付け後のケーシング
要部を示す断面図(第1図のIII−III矢視断面図)、第
4図は第3図のIV−IV矢視断面図において示す模式図、
第5図は第3図のV−V矢視図、第6図は第5図のVI−
VI矢視断面図、第7図はそのマグネットの変形例を示す
正面図、第8図はそのマグネットの変形例を第6図に対
応させて示す断面図、第9図(a),(b)はいずれもその排
出用油路を示す断面図、第10図は本装置を装備した車
両の動力系を示す概略構成図、第11図はその油圧ポン
プ型回転式連結機構および油圧回路を示す油圧系統図、
第12図はその制御機構のブロック図、第13図はその
作用を説明するためのグラフであり、第14〜20図は
本発明の第2実施例としての回転式油圧ポンプのケーシ
ング構造をそなえた差動機構の差動制限装置(4輪駆動
用駆動連結装置)を示すもので、第14図はその要部を
示す断面図、第15図はその要部の縦断面図、第16図
はその組付け前のアダプタを示す正面図、第17図はそ
の組付け前のリヤカバーを示す斜視図、第18図は本装
置を装備した車両の動力系を示す概略構成図、第19図
はそのオイルポンプのための油圧回路図、第20図はそ
の作用を説明するためのグラフである。 1……エンジン、1a……トルクコンバータ、1b……クラ
ッチ、2……変速機、2′……出力軸、3,3′……ギ
ヤ、4……第2の回転軸としての後輪出力軸、5……第
1の回転軸としての前輪出力軸、6……センタデフ、7
……リングギヤ、8……デフケース、9,10……ピニ
オン、11,12……サイドギヤ、13……油圧ポンプ
型回転式連結機構としての4輪駆動用駆動連結装置、1
3′……油圧ポンプ型回転式連結機構としての差動制限
装置、14……回転式油圧ポンプ(差動ポンプ)として
のオイルポンプ(ベーンポンプ)、14′……ベーン式
オイルポンプ、15……ケース、16……ポンプケー
ス、16a……ポンプケース段部、17……ロータ、17a…
…ベーン、17b……孔部、18……カムリング(ケーシ
ング)、18a……内周面、19……ボルト、20,21
……ポート、22……オイル吸入口、23……オイルフ
ィルタ、24,25……チェックバルブ、26,27…
…リリーフバルブ、28,28′,28″……チェック
バルブ、29,29′……油路(制御油路)、30,3
1……オリフィス、32……湿式クラッチ、33,34
……クラッチ板(ディスク)、35……スリーブ(クラ
ッチリテーナ)、36……ピストン、37……ピストン
用油室、38,38′……ギヤ、38a……出力軸、39
……リングギヤ、39′……ギヤ、40……前輪用デ
フ、41,42……前輪軸、43,44……前輪、45
……ベベルギヤ機構、45a,46a……ギヤ、47……プロ
ペラ軸、47a……ベベルギヤ、48……リングギヤ、4
9……後輪用デフ、50,51……後輪軸、52,53
……後輪、54,54′……ストッパ部材、55……ボ
ルト、56……付勢機構としての環状スプリング、57
……インボリュートスプライン、64a……スプライン係
合部、68……ベーン、68a……先端部、68b……底部、
68c……凹所、69……ロータ、69a……外周面、69b…
…孔部、69c……内径側底部、69d……凹所、70……ハ
ウジング、70a……カムリング部、70b……カバー、70c
……フランジ、70d,70e……間挿材、70f……内周面、70
g……排出口、71……吐出圧制御機構としての油圧回
路、72〜77……吸込吐出口、78,79……第1の
逆止弁としてのチェック弁、80……オイル溜め(オイ
ルタンク)、80A……第1の油室、80B……作動油
沈静化用第2の油室、80C……折り返し部下部、8
1,82……第2の逆止弁としての遠心式空気侵入防止
用チェック弁、81′,82′……第2の逆止弁として
のスプリング式空気侵入防止用チェック弁、81a,8
1′a,82a,82′a……オリフィス、81′b,8
2′b……スプリング、81c,81′c,82c,82′c
……球状ボール弁体、81d,81′d,82d,82′d…
…円錐面、81e,81′e,82e,82′e……受け面、
81f,81′f,82f,82′f……円筒穴、83,84
……吐出圧制御用リリーフ弁、83a,84a……スプリン
グ、86〜88……ポンプ室、89,90……排出用油
路、89a,90a……遠心分離用通路、89b,90b……放出用通
路、89c,90c……外径側端部、89d,90d……内径側端部、
91〜93,93′,93″……ベアリング、94……
トランスミッションケース、94a……アダプタ、94b……
リヤカバー、94c……カバー部材、95,96……ブッ
シング(軸受)、97……軸受部、98……供給油路、
100,100′,100″……マグネット、100a,1
00′a……マグネットケース、100″a……テーパ
プラグ、101……ボルト、104……吸入用油路、1
06……軸方向摺動部、109……ベーン押し上げ用油
圧室、120,121……流路、122,123……チ
ェック弁、124……連通路、125……オリフィス、
126……第2の回転数検出器としての回転数センサ
(ピックアップ)、127……第1の回転数検出器とし
ての回転数センサ(ピックアップ)、128……コント
ロールユニット、128a,128b……カウンタ、128c……タ
イマ、128d……演算器(CPU)、129……表示装
置、129a〜129d……LED、130……ステアリング角
検出器(舵角センサ)、131……警告灯、135……
油温センサ、140……A/T用オイルポンプ、140a,
140′a……外歯インナーギヤ、140b,140′b…
…内歯アウタギヤ(ケーシング)、140c,140′c…
…クリセント、141……押し上げ用圧油圧供給油路、
141a,141b,141c……油路部分、142……入力軸(内
軸)、143……トルクコンバータのポンプ側外軸、1
44……逆止弁、150……コンバータハウジング、15
0a……折り返し用孔部、151……トランスファケー
ス、151a……ガイド状突起、152……隔壁、152a……
堰部、153……主通路、154……補助通路、155a…
…連通路、155b……導入油路、156……Oリング溝、
156a……Oリング、157……フィルタ溝、157a,157b
……オイルフィルタ、157c……フィルタ取付部材、15
8,159……ドレンプラグ、160……エアブリー
ザ、161……取付けボルト、162……ボールプラ
グ、170……ベーン押し上げ用リング状スプリング、
171……突起部、172……ディスク潤滑用通路、1
73,174……通路、291〜293……吸込油路、
294,295……吐出油路(制御油路)、296,2
98……戻し油路、297,299……潤滑油路、30
0……合わせ面、C1……中心線、CA……ケーシン
グ、CL……回転中心軸線、L……オイルレベル、
1,M2……ベーン付勢機構(ベーン押し上げ機構)、
3……オイル循環機構、M5……運転状態演算手段、O
1……第1油路、OL2……第2油路、T……動力伝達
系。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転駆動軸によって駆動される回転式油圧
    ポンプと同ポンプに供給する作動油とを収容する回転式
    油圧ポンプのケーシングにおいて、 上記回転式油圧ポンプまたは同ポンプの回転に連動する
    回転体を収容する第1の油室と、 隔壁を介して上記第1の油室と区画された第2の油室
    と、 上記第1の油室内で上記ポンプまたは回転体がかき上げ
    る上記作動油を上記第2の油室に導くべく設けられた主
    通路と、 同主通路より低位に位置して上記第1の油室と上記第2
    の油室とを連通する補助通路と、 上記第2の油室内の作動油を上記回転式油圧ポンプのオ
    イル吸入口へ供給する供給油路と をそなえたことを特徴とする、回転式油圧ポンプのケー
    シング構造。
JP60099303A 1985-05-10 1985-05-10 回転式油圧ポンプのケ−シング構造 Expired - Lifetime JPH0658106B2 (ja)

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