JPH0657910A - タイル剥落防止用ネット及びユニットタイル - Google Patents

タイル剥落防止用ネット及びユニットタイル

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JPH0657910A
JPH0657910A JP5070679A JP7067993A JPH0657910A JP H0657910 A JPH0657910 A JP H0657910A JP 5070679 A JP5070679 A JP 5070679A JP 7067993 A JP7067993 A JP 7067993A JP H0657910 A JPH0657910 A JP H0657910A
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Osamu Nohira
修 野平
Tatsuo Naito
龍夫 内藤
Takashi Takada
貴 高田
Mitsunobu Otani
光伸 大谷
Tetsuya Ito
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Abstract

(57)【要約】 【目的】目地調整が容易で且つ壁面との接着強度に優れ
たユニットタイルを連結するためのタイル剥落防止用ネ
ット及びユニットタイルを提供する。 【構成】第1の手段のネットは、繊度が200〜1,0
00デニールの範囲にある糸条からなり、目の大きさが
3〜15mmの範囲にある。第2の手段ネットは、太さ
がメートル式番手で10〜60番の範囲にある紡績糸の
経編物からなり、目の大きさが2〜20mmの範囲にあ
る。第3の手段のネットは、エンボス加工が施された、
太さがメートル式番手で10〜60番の範囲にある紡績
糸の織物からなり、目の大きさが2〜20mmの範囲に
ある。しかも、第1〜3の手段のネットは、塗工可能な
状態にあるモルタル中において少なくとも1.5%伸長
する。第4及び第5の手段は、これらのネットによって
多数のタイルが連結されたユニットタイルである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数のタイルを連結し
て一つのユニットとしたユニットタイルを壁面へ施工す
るに際し、その接着強度を向上させることのできるタイ
ル連結材としてのネットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のユニットタイルの施工方法とし
ては、特願昭58−219860号で既に出願済みの図
4の縦断面図に示す方法が公知である。この従来のユニ
ットタイル1は、所定の目地間隔を置いて配列された多
数のタイル2の裏面側にポリプロピレンよりなる合成繊
維不織布3を配設し、該不織布3の全面にポリマー配合
のポルトランドセメントを含浸させて各タイル2を連結
している。尚、ユニットタイル1の表面側には、例えば
クラフト紙4等が貼着されているが、これはユニットタ
イル1に必須のものではなく、省略することも可能であ
る。表面側のクラフト紙4は、ユニットタイル1の全体
が軟らか過ぎて各タイル2どうしがバラバラに動くの
で、全体の剛性の向上を図り、取り扱い易くするための
ものである。而して、従来のユニットタイル1の施工
は、先ず建物躯体のコンクリート等の壁面5に貼付用の
モルタル6を所定厚みだけ塗布し、該モルタル6に前記
ユニットタイル1の裏面側を不織布3と共に押し付けて
貼着している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来の
ユニットタイル1の施工方法にあっては、各タイル2の
連結を、裏面側に配設した不織布3の全面に、ポリマー
配合のポルトランドセメントを含浸させることで行って
いる。そのため、前記ポリマー配合のポルトランドセメ
ントが硬化した後にあっては、不織布3の浸透性が失わ
れるようになり、ユニットタイル1を壁面5の貼付用モ
ルタル6へ貼着する時に、貼付用モルタル6が不織布3
を通ってタイル裏面側へ廻り込まなくなる。
【0004】すなわち、ユニットタイル1の壁面5への
貼着は、ポリマー配合のポルトランドセメントを含浸さ
せた不織布3と壁面5の貼付用モルタル6との界面の接
着力によってのみ行われる。つまり、ユニットタイル1
の各タイル2と貼付用モルタル6とが直接に接着される
ことがない。そのため、各タイル2の壁面5に対する接
着強度が弱くなり、ユニットタイル1の全体が剥離・落
下するという重大な事故が発生するという欠点があっ
た。しかも、目地8へ貼付用モルタル6が浸透,透過せ
ず、ユニットタイル1の施工後に新たに目地材を充填し
て目地仕上げ加工することが必要であった。
【0005】また各タイル2と不織布3との接着は、不
織布3に含浸させたポリマー配合のポルトランドセメン
トで行っており、単に含浸させているだけであるので、
このポルトランドセメントがタイル裏面の裏足凹部7へ
積極的に入り込むということがない。そのため、各タイ
ル2と不織布3の接着強度も比較的に弱く、剥離の原因
となる欠点があった。しかも、このことが原因してタイ
ル裏面の凹凸形状を大きくすることが不可能となり、裏
足の低いユニットタイル専用のタイルを準備する必要が
あった。
【0006】それに加えて、不織布3へポリマー配合の
ポルトランドセメントを含浸させて各タイル2を連結す
ると、不織布3自体の剛性が前記ポルトランドセメント
の硬化により高くなり、ユニットタイル1を壁面5へ貼
着した直後の目地8の調整がし難くなるという欠点があ
った。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来の前記課
題に鑑みてこれを改良除去したものであって、裏足の高
いタイルを使用でき、且つ接着強度に優れ、目地調整が
簡単なタイル剥落防止用のネットを提供せんとするもの
である。
【0008】而して前記課題を解決するために本発明が
採用した第1の手段は、繊度が200〜1,000デニ
ールの範囲にある糸条からなり、目の大きさが3〜15
mmの範囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあるモルタ
ル中において少なくとも1.5%伸長するものであるこ
とを特徴とするタイル剥落防止用ネットである。
【0009】また本発明が採用した第2の手段は、太さ
がメートル式番手で10〜60番の範囲にある紡績糸の
経編物からなり、目の大きさが2〜20mmの範囲にあ
り、かつ、塗工可能な状態にあるモルタル中において少
なくとも1.5%伸長するものであることを特徴とする
タイル剥落防止用ネットである。
【0010】また本発明が採用した第3の手段は、エン
ボス加工が施された、太さがメートル式番手で10〜6
0番の範囲にある紡績糸の織物からなり、目の大きさが
2〜20mmの範囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあ
るモルタル中において少なくとも1.5%伸長するもの
であることを特徴とするタイル剥落防止用ネットであ
る。
【0011】
【作用】本発明の第1乃至第3の手段のネットは、いず
れも繊度の太さと目の大きさとを限定し、ネット全体と
しての強度とモルタルの浸透性とが得られるようにして
いる。所定の強度が得られるようにすることで、タイル
を複数個連結してユニットタイルとした場合に、その取
扱いに不便を生じない程度のタイル相互の連結強度が得
られるようにしている。また目の大きさを限定すること
により、ネットとタイル裏面とが接着剤で貼り付けられ
ていても壁面側に塗布されるタイル接着用のモルタルの
浸透に優れるようにしている。そのため、タイル裏面が
モルタルへ直接接着されるようになり、両者の接着強度
に優れ、タイルが壁面から剥落するようなことはない。
更に本発明に係るネットは、塗工可能な状態にあるモル
タル中において、少なくとも1.5%伸長するので、タ
イル施工時におけるタイルの移動が容易であり、正確な
目地調整が行える。
【0012】
【実施例】以下は、本発明の第1〜第3の手段のネット
の基本的な構成及びその重要な技術事項である数値の臨
界的意義について説明する。
【0013】本発明の第1の手段のネットを構成する糸
条の材料としては、耐アルカリ性に優れた、例えばポリ
アミド系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリプロピレン系
繊維,ポリアクリル系繊維,ポリビニルアルコール系繊
維,綿系繊維,レーヨン系繊維からなる。これらのなか
でも、耐久性に優れたポリアクリル系繊維やポリビニル
アルコール系繊維が好ましい。ポリアクリル系繊維は、
モルタルとの接着性にも優れているので最適である。ま
たポリアクリル系繊維は、共重合成分が5%以下、好ま
しくは2%以下、更に好ましくは共重合成分を有しない
ものが、耐アルカリ性の点で好ましい。
【0014】更に第1の手段の糸条は、フィラメント糸
であっても、紡績糸であってもよい。紡績糸の場合は、
表面に多数の短い繊維,すなわち毛羽を有するので後述
するネットに剛性を付与するための糊材との付着性に優
れ、またモルタルとの接着性にも優れている。
【0015】本発明の第1の手段のネットにあっては、
糸条の繊度を200〜1,000デニールとしている。
これは繊度が200デニールより小さいと、ネットの強
度が不足したり、ネットの剛性が低下して複数個のタイ
ルを連結したユニットタイル全体の連結強度が弱くな
り、タイル個々がバラバラになり易く、取扱いが不便と
なって施工が難しくなるからである。また1,000デ
ニールよりも大きいと、モルタルが浸透しにくくなっ
て、壁面側のモルタルとタイル裏面とが直接接着しなく
なり、接着強度の低下を来して所定のタイル剥落防止効
果が得られないからである。なお、好ましい繊度は、3
50〜700デニールである。
【0016】また本発明の第1の手段のネットは、織組
織や編組織として構成され、目の大きさが3〜15mm
であって、好ましくは5〜10mmの範囲にある。目の
大きさが3mmよりも小さいと、モルタルが浸透しにく
くなって、タイルを壁面へ貼着した場合のタイル裏面と
モルタルとの直接の接着が得られ難くなり、タイル接着
強度の低下を来して所定のタイル剥落防止効果が得られ
なくなるからである。また15mmよりも大きい場合
は、ネットの形態保持性が低下してやはりユニットタイ
のタイル個々がバラバラになり易くなり、施工が難しく
なるからである。なお、目の大きさは、ネットを静置し
た状態でみたときの、もっもと大きい目の大きさを測定
したものである。
【0017】更に本発明の第1の手段のネットは、塗工
可能な状態にあるモルタルにおいて、縦と横の両方向に
少なくとも1.5%、好ましくは2〜10%伸長する。
塗工可能な状態にあるモルタルとは、タイルを壁面へ接
着するに際し、接着剤として壁面へ塗布されたモルタル
においてタイルが移動できる程度に未硬化の状態にある
ことをいう。伸長率が1.5%よりも低いと、タイル施
工時においてタイルが移動し難く、タイルどうしの間の
目地間隔の微調整が困難になり、目地の揃った美麗なタ
イル壁面が得られ難いからである。伸長率の上限は、1
5%程度が実際的である。なお、伸長率は次のようにし
て求めている。
【0018】すなわち、10cm角のネットの中央に、
4.5cm角のタイルを貼り付け、これを塗工可能な状
態にあるモルタル中に浸漬して充分に湿潤させた後、そ
の湿潤下において、ネットの周囲を固定し、タイルをネ
ットの面と平行に移動させて、その移動距離を最初の長
さ10cmで除して求めたものである。
【0019】ネットが塗工可能な状態にあるモルタル中
で少なくとも1.5%伸長するようにするには、織組織
の場合、螺旋状のクリンプ構造(スプリング構造)を有
する糸を使用したり、ニット・デ・ニット法によって得
られるような凹凸状のクリンプ構造を有する糸を使用し
たりすればよい。これは弾性を有する糸を使用すること
によっても達成できる。また編組織の場合は、もともと
伸縮が可能であり、少なくとも1.5%の伸長は容易で
ある。
【0020】更に、本発明の第1の手段において、ネッ
トの取扱い性を向上させるために、糊材を含浸・乾燥さ
せて付与することも可能である。糊材は、ユニットタイ
ルを施工する以前の乾燥した状態では固形化して剛性を
有し、ユニットタイル全体が一枚の板材と同じようにな
り、その取扱いが便利となる。また糊材は、ユニットタ
イルの施工後にあっては、貼り付け用のモルタルに含ま
れる水分によって溶け出し、各タイルを連結しているネ
ットが本来的に有する伸縮性を発現し得る状態になるの
が好ましい。このような水溶性の糊材としては、ポリビ
ニルアルコール,ポリアクリルアミド,ポリアクリル酸
やその塩,澱粉,セルロース誘導体,多糖類等がある
が、そのなかでも耐久性に優れ、またモルタルとの接着
性に優れたポリアクリル酸やその塩が好ましい。
【0021】更にまた本発明の第1の手段のネットは、
タイル裏面の好ましくは中央部において接着剤で貼り付
けて使用に供せられる。例えば、30cm角ほどのネッ
トに、45二丁(45mm×95mm)のタイルを目地
幅5mmごとに配列して接着し、合計18枚が一つのユ
ニットとして使用される。接着剤としては、ネットとタ
イルとの接着性に優れた合成ゴム系,アクリル系,塩化
ビニル系,エポキシ系及びポリマーセメント等の接着剤
を用いることが可能である。
【0022】次に本発明の第2の手段のネットについて
説明する。この第2の手段のネットの材料は、前述した
第1の手段のネットの場合と同じであるが、第2の手段
のネットでは紡績糸に特定している。而して、第2の手
段のネットの紡績糸は、太さがメートル式番手で10〜
60番、好ましくは15〜35番の範囲にある。太さが
60番よりも細いと、ネットの強度が不足したり、ネッ
トの剛性が低下してユニットタイルの施工が難しくなる
からである。また10番手よりも太いと、壁面へ塗布さ
れるタイル貼着用のモルタルが浸透しにくくなってタイ
ル裏面とモルタルとの直接の接着が行われにくく、タイ
ルの剥落防止効果が低下するからである。
【0023】またこの第2の手段のネットは、トリコッ
ト,ラッセル,ミラニーズ,リバース等の編機で製編さ
れる経編物として構成される。そのうちでも目が大き
く、安定したネットが得られるラッセル編によるものが
最適であり、また編地の組織としては、目の大きさを揃
えることができるチュール編が好ましい。すなわち、第
2の手段のネットは、ラッセルチュール編が最適実施例
である。
【0024】更に、本発明の第2の手段のネットの目の
大きさは、2〜20mm,好ましくは3〜15mm,よ
り好ましくは5〜10mmの範囲にある。目の大きさが
2mmよりも小さいと、モルタルが浸透しにくくなって
タイルの剥落防止効果が低下し、また20mmよりも大
きいと、ネットの形態保持性が低下してユニットタイル
全体の腰が弱くなり、施工が困難になるからである。
【0025】更にまた、ネットが塗工可能な状態にある
モルタル中において、伸長できるものであることは前述
した第1の手段の場合と同じである。その他の構成並び
に作用効果についても、前述した第1の実施例の場合と
同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0026】最後に、本発明の第3の手段のネットにつ
いて説明する。この第3の手段のネットを構成する材料
及びその材料の紡績糸の太さは、前述した第2の実施例
の場合と同じである。而して、この第3の手段のネット
は、平織や絡み織などの織物から構成され、目の大きさ
は2〜20mm,好ましくは3〜15mm,より好まし
くは5〜10mmの範囲にある。目の大きさが2mmよ
りも小さいと、モルタルが浸透しにくくなってタイルの
剥落防止効果が低下し、また20mmよりも大きいと、
ネットの形態保持性が低下してユニットタイル全体の腰
が弱くなり、施工が困難になるからである。その他の構
成並びに作用効果は、前述した第1及び第2の手段の場
合と同じであり、ここでの説明は省略する。次に、本発
明の第1〜第3の手段の具体例を図面を参照して説明す
ると次の通りである。
【0027】
【具体例1】図1は本発明の第1の手段の具体例であ
る。この具体例では、先ず共重合成分を有しない100
%ポリアクリロニトリルの500デニールのウーリー加
工糸を使用し、平組織して目の大きさが5mmのネット
9を製造している。そして、該ネット9を糊材としての
ポリアクリル酸水溶液に浸漬し、乾燥させてネット9の
全体に剛性を付与している。なお、このネット9は、塗
工可能な状態にあるモルタル中において約3%伸長する
ことが可能である。
【0028】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット9を配置し、ネット9とタイル裏面中央部とを
アクリル系接着剤10で貼着してユニットタイル11を
製造する。
【0029】次に、コンクリート壁面5の下地に、セメ
ント,砂,合成ゴムラテックス及びメチルセルロースか
らなるモルタルを厚さが5mmになるように塗工してモ
ルタル層6を形成する。そして、該モルタル層6に前記
ユニットタイル11の裏面側を押し付け、タイル表面側
をたたいてネット9にモルタルを浸透させ、各タイル2
の裏面側とモルタルとを直接接着させる。このとき、タ
イル2の側面側を叩くと、前記ネット9が約3%伸長す
ることができるのでタイル2は容易に移動し、目地間隔
の微調整を行うことが容易である。
【0030】このようにしてユニットタイル11を施工
した後、タイル2を強制的に剥離してその裏面を調べた
ところ、モルタルはネットを通過し、タイル裏面の蟻溝
に充分に充填されていた。従って、タイル2の接着強度
に優れたタイル壁面が得られていることが明らかであ
る。
【0031】
【具体例2】図2は本発明の第2の手段の具体例に使用
するネット12の拡大図である。この具体例では、先ず
共重合成分を有しない100%ポリアクリロニトリルの
25番の紡績糸を用い、ラッセル編機で目の大きさが5
mmのラッセルチュール経編物からなるネット12を製
造している。そして、該ネット12を糊材としてのポリ
アクリル酸水溶液に浸漬し、乾燥させてネット12の全
体に剛性を付与している。なお、このネット12は、塗
工可能な状態にあるモルタル中において約7%伸長する
ことが可能である。
【0032】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット12を配置し、図1の場合と同じようにネット
12とタイル裏面中央部とをアクリル系接着剤で貼着し
てユニットタイル(図示せず)を製造している。
【0033】次に、このユニットタイルを図1に示す場
合と、同じ要領でコンクリート壁面5へ貼着し、強制的
に剥離してタイル裏面を調べたところ、図1の具体例1
の場合と同じ結果が得られた。
【0034】
【具体例3】図3は本発明の第3の手段の具体例に使用
するネット13の拡大図である。この具体例では、先ず
共重合成分を有しない100%ポリアクリロニトリルか
らなり、経糸が32番双糸で緯糸が17番単糸の紡績糸
を用い、目の大きさが5mmの絡み織物を得ている。そ
して、その織物に高さ1mmで幅2mmの格子状エンボ
ス加工14を、経方向が25mmピッチで緯方向が75
mmピッチに施したネット13を製造している。次に、
該ネット13を糊材としてのポリアクリル酸水溶液に浸
漬し、乾燥させてネット13の全体に剛性を付与してい
る。なお、このネット13は、塗工可能な状態にあるモ
ルタル中において、経方向に約8%、緯方向に約3%伸
長することが可能である。
【0035】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット13を配置し、図1の場合と同じようにネット
13とタイル裏面中央部とをアクリル系接着剤で貼着し
てユニットタイル(図示せず)を製造している。
【0036】次に、このユニットタイルを図1に示す場
合と、同じ要領でコンクリート壁面5へ貼着し、強制的
に剥離してタイル裏面を調べたところ、図1の具体例1
の場合と同じ結果が得られた。なお、エンボス加工は、
経方向及び緯方向の双方向へ施すことが可能であり、こ
の場合にはどの方向へも充分な伸長が可能である。また
エンボス加工は、線状でなく、スポット状に施してもよ
い。その場合、スポットが千鳥配列になるようにするこ
とも可能である。更に、エンボス加工の高さや幅及び大
きさは、加工のピッチなどにもよるが、0.5〜5mm
で充分である。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明の第1乃至第
3の手段のネットは、いずれも繊度の太さと目の大きさ
とを限定し、ネット全体としての強度とモルタルの浸透
性とが得られるようにしている。所定の強度が得られる
ようにすることで、タイルを複数個連結してユニットタ
イルとした場合に、その取扱いに不便を生じない程度の
タイル相互の連結強度が得られるようにしている。
【0038】また目の大きさを限定することにより、ネ
ットとタイル裏面とが接着剤で貼り付けられていても壁
面側に塗布されるタイル接着用のモルタルの浸透に優れ
るようにしている。そのため、タイル裏面がモルタルへ
直接接着されるようになり、両者の接着強度に優れ、タ
イルが壁面から剥落するようなことはない。また裏足の
高いタイルを使用することができ、より一層の接着強度
の向上が図れる。
【0039】更に本発明に係るネットは、塗工可能な状
態にあるモルタル中において、少なくとも1.5%伸長
するので、タイル施工時におけるタイルの移動が容易で
あり、正確な目地調整が行え、仕上がりの美麗なタイル
壁面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の手段のネットを用いてなるユニ
ットタイルを施工した場合の壁面の縦断面図である。
【図2】本発明の第2の手段に係るネットの拡大図であ
る。
【図3】本発明の第3の手段に係るネットの組織状態を
示す模式図である。
【図4】従来のユニットタイルを用いた壁面の縦断面図
である。
【符号の説明】
2…タイル 5…コンクリー
ト壁面 6…モルタル 9…ネット 11…ユニットタイル 12…ネット 13…ネット 14…エンボス
加工
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年5月19日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 タイル剥落防止用ネット及びユニット
タイル
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数のタイルを連結し
て一つのユニットとしたユニットタイルを壁面へ施工す
るに際し、その接着強度を向上させることのできるタイ
ル連結材としてのネット及びこれを用いたユニットタイ
ルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のユニットタイルの施工方法とし
ては、特願昭58−219860号で既に出願済みの図
4の縦断面図に示す方法が公知である。この従来のユニ
ットタイル1は、所定の目地間隔を置いて配列された多
数のタイル2の裏面側にポリプロピレンよりなる合成繊
維不織布3を配設し、該不織布3の全面にポリマー配合
のポルトランドセメントを含浸させて各タイル2を連結
している。尚、ユニットタイル1の表面側には、例えば
クラフト紙4等が貼着されているが、これはユニットタ
イル1に必須のものではなく、省略することも可能であ
る。表面側のクラフト紙4は、ユニットタイル1の全体
が軟らか過ぎて各タイル2どうしがバラバラに動くの
で、全体の剛性の向上を図り、取り扱い易くするための
ものである。而して、従来のユニットタイル1の施工
は、先ず建物躯体のコンクリート等の壁面5に貼付用の
モルタル6を所定厚みだけ塗布し、該モルタル6に前記
ユニットタイル1の裏面側を不織布3と共に押し付けて
貼着している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前記従来の
ユニットタイル1の施工方法にあっては、各タイル2の
連結を、裏面側に配設した不織布3の全面に、ポリマー
配合のポルトランドセメントを含浸させることで行って
いる。そのため、前記ポリマー配合のポルトランドセメ
ントが硬化した後にあっては、不織布3の浸透性が失わ
れるようになり、ユニットタイル1を壁面5の貼付用モ
ルタル6へ貼着する時に、貼付用モルタル6が不織布3
を通ってタイル裏面側へ廻り込まなくなる。
【0004】すなわち、ユニットタイル1の壁面5への
貼着は、ポリマー配合のポルトランドセメントを含浸さ
せた不織布3と壁面5の貼付用モルタル6との界面の接
着力によってのみ行われる。つまり、ユニットタイル1
の各タイル2と貼付用モルタル6とが直接に接着される
ことがない。そのため、各タイル2の壁面5に対する接
着強度が弱くなり、ユニットタイル1の全体が剥離・落
下するという重大な事故が発生するという欠点があっ
た。しかも、目地8へ貼付用モルタル6が浸透,透過せ
ず、ユニットタイル1の施工後に新たに目地材を充填し
て目地仕上げ加工することが必要であった。
【0005】また各タイル2と不織布3との接着は、不
織布3に含浸させたポリマー配合のポルトランドセメン
トで行っており、単に含浸させているだけであるので、
このポルトランドセメントがタイル裏面の裏足凹部7へ
積極的に入り込むということがない。そのため、各タイ
ル2と不織布3の接着強度も比較的に弱く、剥離の原因
となる欠点があった。しかも、このことが原因してタイ
ル裏面の凹凸形状を大きくすることが不可能となり、裏
足の低いユニットタイル専用のタイルを準備する必要が
あった。
【0006】それに加えて、不織布3へポリマー配合の
ポルトランドセメントを含浸させて各タイル2を連結す
ると、不織布3自体の剛性が前記ポルトランドセメント
の硬化により高くなり、ユニットタイル1を壁面5へ貼
着した直後の目地8の調整がし難くなるという欠点があ
った。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来の前記課
題に鑑みてこれを改良除去したものであって、裏足の高
いタイルを使用でき、且つ接着強度に優れ、目地調整が
簡単なタイル剥落防止用のネットを提供せんとするもの
である。
【0008】而して前記課題を解決するために本発明が
採用した第1の手段は、繊度が200〜1,000デニ
ールの範囲にある糸条からなり、目の大きさが3〜15
mmの範囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあるモルタ
ル中において少なくとも1.5%伸長するものであるこ
とを特徴とするタイル剥落防止用ネットである。
【0009】また本発明が採用した第2の手段は、太さ
がメートル式番手で10〜60番の範囲にある紡績糸の
経編物からなり、目の大きさが2〜20mmの範囲にあ
り、かつ、塗工可能な状態にあるモルタル中において少
なくとも1.5%伸長するものであることを特徴とする
タイル剥落防止用ネットである。
【0010】また本発明が採用した第3の手段は、エン
ボス加工が施された、太さがメートル式番手で10〜6
0番の範囲にある紡績糸の織物からなり、目の大きさが
2〜20mmの範囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあ
るモルタル中において少なくとも1.5%伸長するもの
であることを特徴とするタイル剥落防止用ネットであ
る。
【0011】更に本発明が採用した第4及び第5の手段
は、第1乃至第3の手段のいずれかのネットに、タイル
の裏面が貼着されて連結されているユニットタイル又は
第1乃至第3の手段のいずれかのネットに、タイルの裏
面中央部が貼着されて連結されているユニットタイルで
ある。
【0012】
【作用】本発明の第1乃至第3の手段のネットは、いず
れも繊度の太さと目の大きさとを限定し、ネット全体と
しての強度とモルタルの浸透性とが得られるようにして
いる。所定の強度が得られるようにすることで、タイル
を複数個連結してユニットタイルとした場合に、その取
扱いに不便を生じない程度のタイル相互の連結強度が得
られるようにしている。また目の大きさを限定すること
により、ネットとタイル裏面とが接着剤で貼り付けられ
ていても壁面側に塗布されるタイル接着用のモルタルの
浸透に優れるようにしている。そのため、タイル裏面が
モルタルへ直接接着されるようになり、両者の接着強度
に優れ、タイルが壁面から剥落するようなことはない。
更に本発明に係るネットは、塗工可能な状態にあるモル
タル中において、少なくとも1.5%伸長するので、タ
イル施工時におけるタイルの移動が容易であり、正確な
目地調整が行える。
【0013】
【実施例】以下は、本発明の第1〜第3の手段のネット
の基本的な構成及びその重要な技術事項である数値の臨
界的意義について説明する。
【0014】本発明の第1の手段のネットを構成する糸
条の材料としては、耐アルカリ性に優れた、例えばポリ
アミド系繊維,ポリエチレン系繊維,ポリプロピレン系
繊維,ポリアクリル系繊維,ポリビニルアルコール系繊
維,綿系繊維,レーヨン系繊維からなる。これらのなか
でも、耐久性に優れたポリアクリル系繊維やポリビニル
アルコール系繊維が好ましい。ポリアクリル系繊維は、
モルタルとの接着性にも優れているので最適である。ま
たポリアクリル系繊維は、共重合成分が5%以下、好ま
しくは2%以下、更に好ましくは共重合成分を有しない
ものが、耐アルカリ性の点で好ましい。
【0015】更に第1の手段の糸条は、フィラメント糸
であっても、紡績糸であってもよい。紡績糸の場合は、
表面に多数の短い繊維,すなわち毛羽を有するので後述
するネットに剛性を付与するための糊材との付着性に優
れ、またモルタルとの接着性にも優れている。
【0016】本発明の第1の手段のネットにあっては、
糸条の繊度を200〜1,000デニールとしている。
これは繊度が200デニールより小さいと、ネットの強
度が不足したり、ネットの剛性が低下して複数個のタイ
ルを連結したユニットタイル全体の連結強度が弱くな
り、タイル個々がバラバラになり易く、取扱いが不便と
なって施工が難しくなるからである。また1,000デ
ニールよりも大きいと、モルタルが浸透しにくくなっ
て、壁面側のモルタルとタイル裏面とが直接接着しなく
なり、接着強度の低下を来して所定のタイル剥落防止効
果が得られないからである。なお、好ましい繊度は、3
50〜700デニールである。
【0017】また本発明の第1の手段のネットは、織組
織や編組織として構成され、目の大きさが3〜15mm
であって、好ましくは5〜10mmの範囲にある。目の
大きさが3mmよりも小さいと、モルタルが浸透しにく
くなって、タイルを壁面へ貼着した場合のタイル裏面と
モルタルとの直接の接着が得られ難くなり、タイル接着
強度の低下を来して所定のタイル剥落防止効果が得られ
なくなるからである。また15mmよりも大きい場合
は、ネットの形態保持性が低下してやはりユニットタイ
のタイル個々がバラバラになり易くなり、施工が難しく
なるからである。なお、目の大きさは、ネットを静置し
た状態でみたときの、もっもと大きい目の大きさを測定
したものである。
【0018】更に本発明の第1の手段のネットは、塗工
可能な状態にあるモルタルにおいて、縦と横の両方向に
少なくとも1.5%、好ましくは2〜10%伸長する。
塗工可能な状態にあるモルタルとは、タイルを壁面へ接
着するに際し、接着剤として壁面へ塗布されたモルタル
においてタイルが移動できる程度に未硬化の状態にある
ことをいう。伸長率が1.5%よりも低いと、タイル施
工時においてタイルが移動し難く、タイルどうしの間の
目地間隔の微調整が困難になり、目地の揃った美麗なタ
イル壁面が得られ難いからである。伸長率の上限は、1
5%程度が実際的である。なお、伸長率は次のようにし
て求めている。
【0019】すなわち、10cm角のネットの中央に、
4.5cm角のタイルを貼り付け、これを塗工可能な状
態にあるモルタル中に浸漬して充分に湿潤させた後、そ
の湿潤下において、ネットの周囲を固定し、タイルをネ
ットの面と平行に移動させて、その移動距離を最初の長
さ10cmで除して求めたものである。
【0020】ネットが塗工可能な状態にあるモルタル中
で少なくとも1.5%伸長するようにするには、織組織
の場合、螺旋状のクリンプ構造(スプリング構造)を有
する糸を使用したり、ニット・デ・ニット法によって得
られるような凹凸状のクリンプ構造を有する糸を使用し
たりすればよい。これは弾性を有する糸を使用すること
によっても達成できる。また編組織の場合は、もともと
伸縮が可能であり、少なくとも1.5%の伸長は容易で
ある。
【0021】更に、本発明の第1の手段において、ネッ
トの取扱い性を向上させるために、糊材を含浸・乾燥さ
せて付与することも可能である。糊材は、ユニットタイ
ルを施工する以前の乾燥した状態では固形化して剛性を
有し、ユニットタイル全体が一枚の板材と同じようにな
り、その取扱いが便利となる。また糊材は、ユニットタ
イルの施工後にあっては、貼り付け用のモルタルに含ま
れる水分によって溶け出し、各タイルを連結しているネ
ットが本来的に有する伸縮性を発現し得る状態になるの
が好ましい。このような水溶性の糊材としては、ポリビ
ニルアルコール,ポリアクリルアミド,ポリアクリル酸
やその塩,澱粉,セルロース誘導体,多糖類等がある
が、そのなかでも耐久性に優れ、またモルタルとの接着
性に優れたポリアクリル酸やその塩が好ましい。
【0022】更にまた本発明の第1の手段のネットは、
タイル裏面の好ましくは中央部において接着剤で貼り付
けて使用に供せられる。例えば、30cm角ほどのネッ
トに、45二丁(45mm×95mm)のタイルを目地
幅5mmごとに配列して接着し、合計18枚が一つのユ
ニットとして使用される。接着剤としては、ネットとタ
イルとの接着性に優れた合成ゴム系,アクリル系,塩化
ビニル系,エポキシ系及びポリマーセメント等の接着剤
を用いることが可能である。
【0023】次に本発明の第2の手段のネットについて
説明する。この第2の手段のネットの材料は、前述した
第1の手段のネットの場合と同じであるが、第2の手段
のネットでは紡績糸に特定している。而して、第2の手
段のネットの紡績糸は、太さがメートル式番手で10〜
60番、好ましくは15〜35番の範囲にある。太さが
60番よりも細いと、ネットの強度が不足したり、ネッ
トの剛性が低下してユニットタイルの施工が難しくなる
からである。また10番手よりも太いと、壁面へ塗布さ
れるタイル貼着用のモルタルが浸透しにくくなってタイ
ル裏面とモルタルとの直接の接着が行われにくく、タイ
ルの剥落防止効果が低下するからである。
【0024】またこの第2の手段のネットは、トリコッ
ト,ラッセル,ミラニーズ,リバース等の編機で製編さ
れる経編物として構成される。そのうちでも目が大き
く、安定したネットが得られるラッセル編によるものが
最適であり、また編地の組織としては、目の大きさを揃
えることができるチュール編が好ましい。すなわち、第
2の手段のネットは、ラッセルチュール編が最適実施例
である。
【0025】更に、本発明の第2の手段のネットの目の
大きさは、2〜20mm,好ましくは3〜15mm,よ
り好ましくは5〜10mmの範囲にある。目の大きさが
2mmよりも小さいと、モルタルが浸透しにくくなって
タイルの剥落防止効果が低下し、また20mmよりも大
きいと、ネットの形態保持性が低下してユニットタイル
全体の腰が弱くなり、施工が困難になるからである。
【0026】更にまた、ネットが塗工可能な状態にある
モルタル中において、伸長できるものであることは前述
した第1の手段の場合と同じである。その他の構成並び
に作用効果についても、前述した第1の実施例の場合と
同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0027】最後に、本発明の第3の手段のネットにつ
いて説明する。この第3の手段のネットを構成する材料
及びその材料の紡績糸の太さは、前述した第2の実施例
の場合と同じである。而して、この第3の手段のネット
は、平織や絡み織などの織物から構成され、目の大きさ
は2〜20mm,好ましくは3〜15mm,より好まし
くは5〜10mmの範囲にある。目の大きさが2mmよ
りも小さいと、モルタルが浸透しにくくなってタイルの
剥落防止効果が低下し、また20mmよりも大きいと、
ネットの形態保持性が低下してユニットタイル全体の腰
が弱くなり、施工が困難になるからである。その他の構
成並びに作用効果は、前述した第1及び第2の手段の場
合と同じであり、ここでの説明は省略する。次に、本発
明の第1〜第3の手段の具体例を図面を参照して説明す
ると次の通りである。
【0028】
【具体例1】図1は本発明の第1の手段の具体例であ
る。この具体例では、先ず共重合成分を有しない100
%ポリアクリロニトリルの500デニールのウーリー加
工糸を使用し、平組織して目の大きさが5mmのネット
9を製造している。そして、該ネット9を糊材としての
ポリアクリル酸水溶液に浸漬し、乾燥させてネット9の
全体に剛性を付与している。なお、このネット9は、塗
工可能な状態にあるモルタル中において約3%伸長する
ことが可能である。
【0029】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット9を配置し、ネット9とタイル裏面中央部とを
アクリル系接着剤10で貼着してユニットタイル11を
製造する。
【0030】次に、コンクリート壁面5の下地に、セメ
ント,砂,合成ゴムラテックス及びメチルセルロースか
らなるモルタルを厚さが5mmになるように塗工してモ
ルタル層6を形成する。そして、該モルタル層6に前記
ユニットタイル11の裏面側を押し付け、タイル表面側
をたたいてネット9にモルタルを浸透させ、各タイル2
の裏面側とモルタルとを直接接着させる。このとき、タ
イル2の側面側を叩くと、前記ネット9が約3%伸長す
ることができるのでタイル2は容易に移動し、目地間隔
の微調整を行うことが容易である。
【0031】このようにしてユニットタイル11を施工
した後、タイル2を強制的に剥離してその裏面を調べた
ところ、モルタルはネットを通過し、タイル裏面の蟻溝
に充分に充填されていた。従って、タイル2の接着強度
に優れたタイル壁面が得られていることが明らかであ
る。
【0032】
【具体例2】図2は本発明の第2の手段の具体例に使用
するネット12の拡大図である。この具体例では、先ず
共重合成分を有しない100%ポリアクリロニトリルの
25番の紡績糸を用い、ラッセル編機で目の大きさが5
mmのラッセルチュール経編物からなるネット12を製
造している。そして、該ネット12を糊材としてのポリ
アクリル酸水溶液に浸漬し、乾燥させてネット12の全
体に剛性を付与している。なお、このネット12は、塗
工可能な状態にあるモルタル中において約7%伸長する
ことが可能である。
【0033】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット12を配置し、図1の場合と同じようにネット
12とタイル裏面中央部とをアクリル系接着剤で貼着し
てユニットタイル(図示せず)を製造している。
【0034】次に、このユニットタイルを図1に示す場
合と、同じ要領でコンクリート壁面5へ貼着し、強制的
に剥離してタイル裏面を調べたところ、図1の具体例1
の場合と同じ結果が得られた。
【0035】
【具体例3】図3は本発明の第3の手段の具体例に使用
するネット13の拡大図である。この具体例では、先ず
共重合成分を有しない100%ポリアクリロニトリルか
らなり、経糸が32番双糸で緯糸が17番単糸の紡績糸
を用い、目の大きさが5mmの絡み織物を得ている。そ
して、その織物に高さ1mmで幅2mmの格子状エンボ
ス加工14を、経方向が25mmピッチで緯方向が75
mmピッチに施したネット13を製造している。次に、
該ネット13を糊材としてのポリアクリル酸水溶液に浸
漬し、乾燥させてネット13の全体に剛性を付与してい
る。なお、このネット13は、塗工可能な状態にあるモ
ルタル中において、経方向に約8%、緯方向に約3%伸
長することが可能である。
【0036】然る後は、45二丁(縦45mm×横95
mm)のタイル2を裏面側を上にして、縦方向に6枚、
横方向に3枚、それぞれ目地幅5mm間隔で並べる。そ
して、これらのタイル裏面側に31cm角に切断した前
記ネット13を配置し、図1の場合と同じようにネット
13とタイル裏面中央部とをアクリル系接着剤で貼着し
てユニットタイル(図示せず)を製造している。
【0037】次に、このユニットタイルを図1に示す場
合と、同じ要領でコンクリート壁面5へ貼着し、強制的
に剥離してタイル裏面を調べたところ、図1の具体例1
の場合と同じ結果が得られた。なお、エンボス加工は、
経方向及び緯方向の双方向へ施すことが可能であり、こ
の場合にはどの方向へも充分な伸長が可能である。また
エンボス加工は、線状でなく、スポット状に施してもよ
い。その場合、スポットが千鳥配列になるようにするこ
とも可能である。更に、エンボス加工の高さや幅及び大
きさは、加工のピッチなどにもよるが、0.5〜5mm
で充分である
【0038】
【発明の効果】以上説明したように本発明の第1乃至第
3の手段のネットは、いずれも繊度の太さと目の大きさ
とを限定し、ネット全体としての強度とモルタルの浸透
性とが得られるようにしている。所定の強度が得られる
ようにすることで、タイルを複数個連結してユニットタ
イルとした場合に、その取扱いに不便を生じない程度の
タイル相互の連結強度が得られるようにしている。
【0039】また目の大きさを限定することにより、ネ
ットとタイル裏面とが接着剤で貼り付けられていても壁
面側に塗布されるタイル接着用のモルタルの浸透に優れ
るようにしている。そのため、タイル裏面がモルタルへ
直接接着されるようになり、両者の接着強度に優れ、タ
イルが壁面から剥落するようなことはない。また裏足の
高いタイルを使用することができ、より一層の接着強度
の向上が図れる。
【0040】更に本発明に係るネットは、塗工可能な状
態にあるモルタル中において、少なくとも1.5%伸長
するので、タイル施工時におけるタイルの移動が容易で
あり、正確な目地調整が行え、仕上がりの美麗なタイル
壁面が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の手段のネットを用いてなるユニ
ットタイルを施工した場合の壁面の縦断面図である。
【図2】本発明の第2の手段に係るネットの拡大図であ
る。
【図3】本発明の第3の手段に係るネットの組織状態を
示す模式図である。
【図4】従来のユニットタイルを用いた壁面の縦断面図
である。
【符号の説明】 2…タイル 5…コンクリー
ト壁面 6…モルタル 9…ネット 11…ユニットタイル 12…ネット 13…ネット 14…エンボス
加工
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内藤 龍夫 東京都港区元赤坂一丁目2番7号 鹿島建 設株式会社内 (72)発明者 高田 貴 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (72)発明者 大谷 光伸 滋賀県大津市園山1丁目1番1号 東レ株 式会社滋賀事業場内 (72)発明者 伊藤 哲也 愛知県常滑市鯉江本町5丁目1番地 株式 会社イナックス内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊度が200〜1,000デニールの範
    囲にある糸条からなり、目の大きさが3〜15mmの範
    囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあるモルタル中にお
    いて少なくとも1.5%伸長するものであることを特徴
    とするタイル剥落防止用ネット。
  2. 【請求項2】 太さがメートル式番手で10〜60番の
    範囲にある紡績糸の経編物からなり、目の大きさが2〜
    20mmの範囲にあり、かつ、塗工可能な状態にあるモ
    ルタル中において少なくとも1.5%伸長するものであ
    ることを特徴とするタイル剥落防止用ネット。
  3. 【請求項3】 エンボス加工が施された、太さがメート
    ル式番手で10〜60番の範囲にある紡績糸の織物から
    なり、目の大きさが2〜20mmの範囲にあり、かつ、
    塗工可能な状態にあるモルタル中において少なくとも
    1.5%伸長するものであることを特徴とするタイル剥
    落防止用ネット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018028205A (ja) * 2016-08-18 2018-02-22 株式会社ケー・エフ・シー コンクリート補修用シート及びコンクリート構造物の補修方法

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