JPH0655051B2 - 田植機の苗植装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、田植機において、苗載台上の苗マットから苗
を一株づつ分割したのちこれを圃場面に植付けるための
苗植装置に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、この種の苗植装置には、例えば実公昭３３−１８
９２２号公報に記載されているように、回転体に複数個
の分割爪を設けたロータリー式のものと、例えば特公昭
４９−２７７６２号公報に記載されているように、先端
に分割爪を有する植付け杆の基端を、機体側に扇動リン
クを介して連結する一方、該植付け杆の中途部を、エン
ジンにて回転駆動される爪軸に固着したクランクの先端
に枢着し、該クランクの回転により植付け杆をその分割
爪における先端が閉ループの軌跡を描くように上下動さ
せる揺動式のものとがあった。

〔発明が解決しようとする課題〕

前者のロータリー式のものは、その回転体の回転に振動
がなく且つ回転体の一回転当たり複数回の植付けができ
る特長を有する反面、各分割爪の先端における運動軌跡
の閉ループが曲率の大きい円状になるので、当該分割爪
が苗マットに侵入するときに苗の葉を傷め易く、且つ苗
を圃場面に植付けたあと分割爪が植付け後の苗から素早
く逃げないので、苗の植付け姿勢が不安定である等の欠
点があり、後者の揺動式のものは、分割爪の先端におけ
る運動軌跡の閉ループを縦方向に細長い楕円状にできる
から、苗マットから苗を分割するときに苗を傷めること
を低減できると共に、苗を圃場面に植付けたあと分割爪
が植付け後の苗から素早く逃げて苗の植付け姿勢が安定
化する特長を有する反面、植付け杆の急激な上下揺動の
ために振動が発生するのであり、しかも、この振動は、
上下揺動の速度に比例して増大すると共に、このものは
一回の上下揺動当たり、つまりクランクの一回転当たり
一回の苗植えしかできないから、植付け速度を早くする
ことができないのである。

本発明は、前記ロータリー式苗植装置と揺動式苗植装置
との両方の特長を持った構造簡単で且つ軽量の苗植装置
を提供するものである。つまり、ロータリー式を基調と
し、その回転体に取付く複数個の植付け杆における分割
爪の先端が、前記揺動式苗植装置における分割爪の先端
と同様に縦方向に細長い楕円状の閉ループ運動軌跡を描
くようにしたものである。

〔課題を解決するための手段〕

このため本発明は、田植機の機体に水平に軸支され、且
つ動力源から動力伝達される回転軸に回転体を固着し、
該回転体における回転中心位置には、前記機体に対して
回転不能に構成した太陽輪体を配設し、回転体には、こ
れが取付く回転軸から半径方向に適宜距離だけ離れた位
置で且つ回転体の回転円周方向の等分個所に植付け軸
を、前記回転軸と平行に軸支し、該各植付け軸に、分割
爪付き植付け杆を、当該植付け杆における分割爪が前記
機体に取付く苗載台の方向を向くように取付けると共
に、遊星輪体を嵌着し、この遊星輪体と前記太陽輪体と
の間に回転体の一回転によって植付け軸が一回転するよ
うにエンドレスチエン又はエンドレスベルトを巻掛け
し、更に、前記各植付け軸上における遊星輪体を、偏芯
輪体に構成したものである。

〔実施例〕

以下、本発明の実施例を、図面について説明すると、図
において、符号１は田植機の機体における伝動ケース
で、該伝動ケース１の側面には、ボス体２が水平横向き
に突出し、該ボス体２内には、田植機の機体に搭載した
エンジン（図示せず）からの動力伝達にて回転駆動され
る回転軸３が挿入され、この回転軸３の前記ボス体２か
らの突出端には、小判型で且つ中空状の回転体４が嵌着
され、該回転体４は側面視において矢印Ａの右方向に回
転されるように構成されている。

この回転体４内における中心部には、太陽輪体の一つの
実施例であるところの太陽スプロケット５が前記ボス体
２に回転自在に被嵌し且つ回転体４に対して回転自在に
配設され、この太陽スプロケット５は、伝動ケース１に
対して適宜の回転位相調節手段（図示せず）にて、回転
不能に係止されている。

前記回転体４の左右両端には、回転軸３からの距離が等
しい位置に、支軸６を前記回転軸３と平行に回転体４に
対して回転不能に軸支して、該両支軸６，６に中空状の
植付け軸７を回転自在に各々被嵌し、該両植付け軸７の
一端を回転体４の外側に突出して、その突出端に分割爪
９を備えた植付け杆８を、当該植付け杆８における分割
爪９が苗載台１０に向かうように各々取付ける一方、回
転体４内における両植付け軸７には、遊星輪体の一つの
実施例であるところの遊星スプロケット１１を嵌着し、
該両遊星スプロケット１１と前記太陽スプロケット５と
の間に、エンドレスチエン１２を巻掛けして、回転体４
の一回転によって両植付け軸７が一回転するように構成
し、前記各植付け軸７上における両遊星スプロケット１
１を、当該遊星スプロケット１１の中心（Ｏ）を植付け
軸７の回転中心から適宜寸法（ｅ）だけ偏芯した偏芯ス
プロケットに構成して成るものである。

なお、前記回転体４内には、エンドレスチエン１２を太
陽スプロケット５と両遊星スプロケット１１との間にお
いて太陽スプロケット５に押圧するためのテンション機
構１３が一対に設けられ、この両テンション機構１３
は、基端が回転体５にピン１４枢着されたレバー１５、
該レバー１５の先端に取付き且つ前記チエン１２の外周
面に摺接するテンションローラ１６、及び該テンション
ローラ１６をチエン１２に押圧するための捻りばね１７
によって構成されている。

また、前記太陽スプロケット５を二個にし、その一方の
太陽スプロケットと一方の遊星スプロケット１１との
間、及び他方の太陽スプロケットと他方の遊星スプロケ
ット１１との間に、各々別々にエンドレスチエンを巻掛
けするように構成しても良く、更にまた、他の実施例に
おいては、太陽輪体及び遊星輪体を、前記のようにスプ
ロケットにすることに代えて、プーリに構成してその間
にエンドレスベルトを巻掛けするようにしても良い。

この構成において、回転体４がその回転軸３により矢印
Ａの右方向に公転すると、伝動ケース１に対して回転不
能の太陽スプロケット５にエンドレスチエン１２及び遊
星スプロケット１１を介して連動する両植付け軸７は、
回転体４の公転に伴って、その公転の回転角度と同じ回
転角度だけ矢印Ｂの左方向つまり回転体４の公転方向と
は逆方向に自転するから、この両植付け軸７に取付く植
付け杆８は、苗載台１０の方向を向いた状態のまま、回
転軸３を中心に旋回運動することになり、この旋回運動
中において、苗載台１０に面する側を上から下に下降す
るときその分割爪９の先端にて苗載台１０上の苗マット
から苗を一株だけ分割したのち、その下降下限の近傍に
おいて圃場面１８に植付けし、その後において圃場面１
８より上昇するのである。

この場合、前記両植付け軸７上の遊星スプロケット１１
が偏芯スプロケットでないときには、両植付け軸７の矢
印Ｂの左方向への自転の回転角度が、回転体４における
矢印Ａの右方向への公転の回転角度とが同じであるため
に、両植付け軸７に取付く分割爪９付き植付け杆８は、
回転体４の公転に伴って、その公転方向と逆方向に、同
じ回転角度だけ遅れ回転することにより、各植付け杆８
は苗載台１０の方向を向いた状態で、しかも苗載台１０
に対して一定の姿勢を保った状態のもとで旋回運動する
から、その分割爪９の先端における運動軌跡の閉ループ
は、回転軸３から植付け軸７までの距離を半径とする円
状にしかならないが、両植付け軸７上における遊星スプ
ロケット１１を、前記のように偏芯スプロケットに構成
したことにより、回転体４の右方向への公転に伴う両植
付け軸７の左方向への自転は、その一回転中において偏
芯型の遊星スプロケット１１の直径差にて回転体４の公
転速度に対して早くなったり、遅くなったりすることに
なる。

従って、回転体４の公転に対して植付け軸７の左方向へ
の自転が遅くなる時期が、植付け杆８の圃場面１８に近
付くように下降する時期に、植付け軸７の左方向への自
転が早くなる時期が、植付け杆８の上昇上限に近付くよ
うに上昇する時期に各々該当するように設定することに
より、各植付け杆８は、圃場面１８に近付くように下降
するときに回転体４の公転よりも左方向に遅れ勝手に自
転して姿勢を下向きに変え、上昇上限に近付くとき回転
体４の公転よりも余分に左方向に進み勝手に自転して姿
勢を上向きに変えるから、各植付け杆８の分割爪９にお
ける先端の運動軌跡の閉ループは、第１図に二点鎖線で
示すように、上下方向に細長い楕円状の閉ループ曲線１
９となるのである。

なお、前記植付け杆８は、前記実施例のように２個に限
らず、回転体４の回転円周方向に等分の３個以上の複数
個にすることも任意にできるのであり、更にまた、図面
の実施例のように植付け杆８の植付け軸７への取付け基
部と、分割爪９が取付く部分又は分割爪９の先端とを、
第２図の平面視において回転軸３の軸方向に適宜寸法
（Ｓ）だけずらせておけば、分割爪９の先端と植付け杆
８基部との衝突干渉を回避した状態のもとで両植付け軸
７間の間隔を狭めて、苗植装置の小型化を図ることがで
きるのである。

〔発明の効果〕

以上の通り本発明は、特許請求の範囲に記載した構成と
したことにより、一つの回転体に複数個の各植付け杆
に、上下揺動式苗植装置の場合と同様な、縦に細長い閉
ループの軌跡の運動を付与できるから、一条の苗植え条
に対する苗植えが複数の植付け杆によって、振動の増大
を招来することなく高速度にできて、田植え作業の能率
を著しく向上でき、しかも、本発明は回転体中心部の太
陽輪体と植付け軸上の遊星輪体との間におけるチエン又
はベルト伝動によって、各植付け杆の方向姿勢を前記の
ように制御するもので、前記太陽輪体と植付け軸との間
を歯車伝動するときのような構造の複雑さ、及び重量の
増大がない効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示し、第１図は正面図、第２図
は平面図、第３図は第１図のIII−III視拡大断面図、第
４図は第３図のIV−IV視断面図図である。 １……伝動ケース、３……回転軸、４……回転体、５…
…太陽輪体の一つの実施例である太陽スプロケット、７
……植付け軸、８……植付け杆、９……分割爪、１１…
…遊星輪体の一つの実施例である遊星スプロケット、１
２……チエン。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】田植機の機体に水平に軸支され、且つ動力
   源から動力伝達される回転軸に回転体を固着し、該回転
   体における回転中心位置には、前記機体に対して回転不
   能に構成した太陽輪体を配設し、回転体には、これが取
   付く回転軸から半径方向に適宜距離だけ離れた位置で且
   つ回転体の回転円周方向の等分個所に植付け軸を、前記
   回転軸と平行に軸支し、該各植付け軸に、分割爪付き植
   付け杆を、当該植付け杆における分割爪が前記機体に取
   付く苗載台の方向を向くように取付けると共に、遊星輪
   体を嵌着し、この遊星輪体と前記太陽輪体との間に回転
   体の一回転によって植付け軸が一回転するようにエンド
   レスチエン又はエンドレスベルトを巻掛けし、更に、前
   記各植付け軸上における遊星輪体を、偏芯輪体に構成し
   たことを特徴とする田植機の苗植装置。