JPH0654672A - 高圧による食品の殺菌方法 - Google Patents

高圧による食品の殺菌方法

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JPH0654672A
JPH0654672A JP21123292A JP21123292A JPH0654672A JP H0654672 A JPH0654672 A JP H0654672A JP 21123292 A JP21123292 A JP 21123292A JP 21123292 A JP21123292 A JP 21123292A JP H0654672 A JPH0654672 A JP H0654672A
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JP
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food
pressure
acid
osmotic pressure
pressure treatment
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JP21123292A
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Asako Takahashi
麻子 高橋
Shinya Ochiai
信哉 落合
Yoshihiro Nakagawa
善博 中川
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Toppan Printing Co Ltd
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  • Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】1000mOsmol/Kg以上という高い浸透圧を有
する食品の殺菌を、比較的低圧で、しかも低温、短時間
で十分に行なうことができる方法を提供する。 【構成】液状の高浸透圧食品に安息香酸またはソルビン
酸などの有機酸を0.5〜1.0mM添加した後、積層
フィルム製の袋に食品を充填し、20℃、400MP
a、30秒〜30分の条件で、静水圧力を加える。食品
のpHが4.5以上の場合、クエン酸によりpHを4.
5未満に調製してから高圧処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液状食品:すなわち液
体またはこれに準ずる、流動性を有する食品を殺菌する
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、食品の殺菌は加熱により食品に付
着等している微生物を殺菌するものが殆どであった。し
かし、近年、例えば100MPa以上の、きわめて高い
圧力(静水圧力)を加えること(以下、高圧処理とい
う)によって、食品の風味を損なったり栄養分を損失す
ることなく、殺菌やタンパク質の変性が可能となること
が明らかとなり、一部実用化され始めている。例えば、
特開昭62−69969号公報には、液状圧力媒体を加
圧することにより、間接的に飲料などの食品等を殺菌す
るための、高圧殺菌装置が開示されている。この高圧処
理は、パスカルの原理に基づいて、対象食品が液状であ
る場合に効果が確実である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、本発明者ら
の研究によれば、糖や塩などを含むことによって食品の
浸透圧が高くなると、高圧処理の効果、特に殺菌効果が
低下することが判明している。
【0004】表1は、塩化ナトリウムおよびショ糖の水
溶液における、溶液の濃度と殺菌効果の関係を示すもの
である。実験に用いた菌は、カンディダ・トロピカリス
(Candida tropicalis,IFO1400)で、初発菌数は1.6
×106 個/mlである。また、高圧処理の条件は、20
℃、400MPa、120秒である。
【0005】
【表1】
【0006】上述の結果からわかるように、対象品の浸
透圧が高まるほど、生存菌数が多く、すなわち殺菌効果
が低下していることがわかる。特に、浸透圧が1000
mOsmol/Kgを超えると、実質的に殺菌効果は認められな
くなる。
【0007】なお、浸透圧を表す「1Osmol /Kg」の単
位は、1molの溶質が解離しないで存在する状態を表
す。そして、通常はその1/1000単位を用い、「mOsmol/
Kg」としている。
【0008】このような殺菌効果の低下を補う手段とし
て、高圧処理の条件を厳しくすること(温度を高めるこ
と:特開平2−312577号公報、処理時間を長くす
ること、処理圧力を高めること)が考えられるが、温度
を高めることは高圧処理の利点を損ない、また、圧力を
高める、時間を長くする等は、経済的な問題がある。
【0009】また、従来使用されている保存剤としての
有機酸やその他の殺菌剤を添加することは、食品の保存
において周知の技術であるが、その効果は添加量に依存
し、十分な保存効果を得るには多量の混合を必要とす
る。
【0010】さらに、これらの添加剤を混合して高圧処
理を施すことも提案されている(例えば特開平2−17
7852号公報、特開平3−180143号公報)が、
その添加量は従来の添加剤混合量と同等であり、また、
いずれも食品の浸透圧との関係についての言及はない。
【0011】そこで本発明は、上述したような1000
mOsmol/Kg以上の浸透圧を有する食品の殺菌を、比較的
低圧で、しかも常温(温度制御することなく)、短時間
で十分に行なうことができる方法を提供するものであ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、液状
の高浸透圧食品に、高圧処理を施して殺菌する方法であ
って、高浸透圧食品に有機酸を添加した後、高圧をかけ
ることを特徴とする、高圧による食品の殺菌方法であ
る。本発明の好ましい態様は、有機酸として安息香酸ま
たはソルビン酸のいずれかを用いるものである。そし
て、本発明は、対象となる食品の浸透圧が、1000mO
smol/Kg以上である場合にその効果が著しい。また、食
品のpHが4.5以上である場合には、クエン酸などの
pH降下剤を予め添加して、pHを4.5未満に調製す
ることが好ましい。
【0013】
【作用】本発明では、上記有機酸を添加した後、高圧処
理を施すことで、浸透圧が高い食品であっても、効果的
に微生物を殺菌することができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で殺
菌の対象となる食品は、液状食品である。液状食品と
は、液体、またはこれに準ずる粘稠体等の流動性を有す
るもので、比較的小さい、あるいは柔らかい固形物を含
んだものであってもよい。具体的には、スープ、シロッ
プ、ジャム、ケチャップ、ジュース、清涼飲料水、アル
コール飲料、ソース、醤油、酢が例示できる。本発明
は、これらの食品の中でも、スープ、シロップ、ジャ
ム、ケチャップ、ソース、醤油などのように、浸透圧が
1000mOsmol/Kg以上と高い場合に特に効果が著し
い。すなわち、浸透圧が1000mOsmol/Kg未満の場合
は高圧処理のみで十分な殺菌効果が得られるが、100
0mOsmol/Kg以上の浸透圧を有する場合、前述のように
殺菌効果が極端に低下するからである。
【0015】本発明は、この食品に予め有機酸を添加
し、高圧処理を施すものである。後述する実験結果か
ら、有機酸としては、安息香酸またはソルビン酸のいず
れかを用いることが好ましい。有機酸の添加量は、従来
保存剤として効果が認められる濃度の1/10〜1/4
程度で十分である。
【0016】また、食品のpHが4.5以上の場合に
は、クエン酸などのpH降下剤を添加して、pHを4.
5未満に調製することが好ましい。もっとも、安息香酸
やソルビン酸もある程度pHを降下させることができる
ので、この有機酸の添加でpHが4.5未満になれば、
pH降下剤の添加は不要である。
【0017】高圧処理の条件は、浸透圧が1000mOsm
ol/Kg未満の場合において十分な殺菌効果が得られるよ
うな条件と同様でよく、例えば100〜400MPa、
30秒〜30分の高圧処理である。また、温度は、特に
制御しない常温であることが本発明の趣旨に合致する。
【0018】<実験1>ショ糖の1M水溶液(浸透圧:
1621mOsmol/Kg(実測値))に、下記の有機酸をそれぞ
れ0.5mMの濃度となるように加え、サッカロミセス
・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae IAM1425)を
約106 個/mlとなるように懸濁し、その10mlを
Ny(15μm)/CPP(60μm)の積層フィルム
からなる4方シール袋(大きさ50×70mm)に充填、
密封した。なお、この際、袋内には空気が残らないよ
う、脱気しながらシールした。このサンプルに、それぞ
れ20℃、400MPa、60秒の高圧処理を施し、菌
数を測定した。また、比較のため、有機酸を加える前に
上記と同条件で高圧処理し、その後有機酸を添加したも
の、および、高圧処理を施さず有機酸を添加しただけの
ものを、併せて検査した。また、有機酸を添加せず高圧
処理のみほどこしたものも検査した。結果を表2に示
す。
【0019】
【表2】
【0020】表2の結果から、有機酸を添加した後、高
圧処理を施したものは、十分な殺菌効果が得られている
ことが分かる。特に、安息香酸、ソルビン酸を使用した
場合に、効果が高い。
【0021】<実験2>塩化ナトリウムの1M水溶液
(浸透圧:1913mOsmol/Kg)に、下記濃度となるように
安息香酸を添加し、サッカロミセス・セレビシェ(Sacc
haromyces cerevisiae IAM1425)を約106 個/mlと
なるように懸濁し、実験1同様に4方シール袋に充填、
密封した。このサンプルに、それぞれ20℃、400M
Pa、45秒の高圧処理を施した。この処理前後の菌数
を測定した結果を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】安息香酸は、シロップ、醤油などの食品中
に4.9mMまで添加することが認められている。本発
明によれば0.5〜1.0mMでも十分に殺菌効果が認
められる。
【0024】<実験3>塩化ナトリウムを15wt/v%添
加したグルコースペプトン培地(pH5.0、浸透圧5
700mOsmol/Kg(実測値))に、クエン酸を加えてp
Hを4.0に調製した後、安息香酸をそれぞれ下記濃度
となるように加え、カンディダ・トロピカリス(Candid
a tropicalis,IFO1400)を約104 個/mlとなるよう
に懸濁し、実験1同様に4方シール袋に充填、密封し
た。このサンプルに、それぞれ20℃、400MPa、
10分の高圧処理を施した。また、比較のため、クエン
酸を添加しない他は同様に高圧処理したサンプルを作成
した。さらにまた、安息香酸を添加しただけで高圧処理
を施さなかったサンプル、および、クエン酸と安息香酸
を添加して高圧処理を施さなかったサンプルを作成し
た。それぞれのサンプルを30℃、7日間保存した後、
サンプルの状態を観察したところ、一部のサンプルに菌
の増殖に起因する発泡が認められた。表4に観察結果を
示す。
【0025】
【表4】
【0026】上述の結果から明らかなように、pHを調
節したものは、安息香酸の濃度が低くても、十分な殺菌
効果が認められた。なお、安息香酸の通常の許容量は、
4.9mMであり、本発明によれば、その1/10の添
加量で効果が認められることが分かる。
【0027】<実験4>50wt/v%のショ糖溶液(シロ
ップ)(浸透圧2100mOsmol/Kg(実測値))に、ソ
ルビン酸を下記濃度となるように加え、さらにクエン酸
を加えてpHを3.6に調製した。他方、リンゴの皮と
芯を取り除いたものを約5mmの厚さに切り、この約1
0gを実験1と同様の袋に入れ、さらに先のシロップ1
0gを充填、密封した。この袋に、20℃、400MP
a、15分の高圧処理を施し、ジャム状の加工品を得
た。このサンプルを30℃、20日間保存した後、サン
プルの発泡状態を観察するとともに、食味を官能検査し
た。また、クエン酸によるpH調製を行なわないものに
ついても、同様の検査を行なった。また、ソルビン酸、
クエン酸を加えないものも検査した。結果を表5に示
す。
【0028】
【表5】
【0029】上述の結果から明らかなように、pHを調
節したものは、安息香酸の濃度が低くても、十分な殺菌
効果が認められた。
【0030】<実験5>トマトケチャップ(pH3.6
8、浸透圧2600mOsmol/Kg(実測値))に、ソルビ
ン酸を0.05mg/g(≒4.446×10-4mmo
l/g)加え、特開平4−135470号に示した連続
式高圧処理装置にて、連続的に高圧処理を施した(20
℃、400MPa、15分)。その後、実験1で用いた
のと同様の袋をγ線により滅菌したものに、無菌室内
で、無菌的に12gを充填、密封した。また、比較のた
め、ソルビン酸を添加しない他は同様に高圧処理したサ
ンプルを作成した。さらにまた、ソルビン酸を添加した
だけで高圧処理を施さなかったサンプルを作成した。
【0031】それぞれのサンプルを30℃で保存し、経
時的にサンプルの状態を観察(最長15日)したとこ
ろ、本発明によるものは、袋の膨れ等の異常は認められ
なかったが、ソルビン酸を添加せずに高圧処理を施した
ものは、4日後に膨れが認められ、また、ソルビン酸を
添加して高圧処理を施さなかったものは、7日後に膨れ
が認められた。
【0032】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、従
来の保存剤として効果が認められる有機酸の濃度に比べ
て、1/10〜1/4という低濃度の有機酸と高圧処理
を組み合わせることにより、1000mOsmol/Kg以上の
高い浸透圧を有する液状食品であっても、優れた殺菌効
果が得られる。また、pHが4.5以上の食品にあって
は、クエン酸などを加えてpHを調製することで、十分
な殺菌効果が得られる。そして、本発明によれば、高圧
処理の条件、例えば温度を高くする必要がないので、食
品の風味、味覚などの劣化がない。また、処理時間も長
くする必要がないので、経済的である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液状の高浸透圧食品に、高圧処理を施して
    殺菌する方法であって、高浸透圧食品に有機酸を添加し
    た後、高圧をかけることを特徴とする、高圧による食品
    の殺菌方法。
  2. 【請求項2】有機酸が、安息香酸またはソルビン酸のい
    ずれかであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】液状の高浸透圧食品が、1000mOsmol/
    Kg以上の浸透圧であることを特徴とする、請求項1また
    は請求項2のいずれかに記載の方法。
  4. 【請求項4】食品のpHを予め4.5未満に調製するこ
    とを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記
    載の方法。
JP21123292A 1992-08-07 1992-08-07 高圧による食品の殺菌方法 Pending JPH0654672A (ja)

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