JPH0647708B2 - オ−ステナイト系快削ステンレス鋼 - Google Patents

オ−ステナイト系快削ステンレス鋼

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JPH0647708B2
JPH0647708B2 JP60170152A JP17015285A JPH0647708B2 JP H0647708 B2 JPH0647708 B2 JP H0647708B2 JP 60170152 A JP60170152 A JP 60170152A JP 17015285 A JP17015285 A JP 17015285A JP H0647708 B2 JPH0647708 B2 JP H0647708B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は快削ステンレス鋼に係り、より詳細には、必須
快削元素としてBiを添加して被削性を付与したオーステ
ナイト系快削ステンレス鋼に関する。
(従来の技術及び問題点) ステンレス鋼は一般に粘性が大きく、熱伝導度が悪く、
しかも切削時に切り屑が工具と凝着しやすいため、切削
加工が困難である。そこで、S、Pb、Bi、Te、Seなどの
快削元素を添加して被削性を改善する研究開発がなさ
れ、いわゆる快削ステンレス鋼として各種用途に供され
るようになってきた。
しかし乍ら、この種の快削ステンレス鋼は上記快削元素
を添加することにより被削性は改善されるものの、逆に
快削元素の添加に起因して熱間加工性が劣化するという
欠点があり、製造上問題がある。特にオーステナイト系
ステンレス鋼にあっては、熱間加工性が余り良好ではな
い点に加えて、快削元素を添加することによって熱間加
工性を一層劣化させている。
また、ステンレス鋼は耐食性を有するがために多方面で
利用されているが、特にオーステナイト系ステンレス鋼
はその耐食性が優れている特性によって広範囲の用途に
適している材料である。しかし、上記快削元素が含有す
るために用途が制限されることがある。例えば、食品機
器用材料として利用するには、S、Pb、Te、Se等の添加
は耐食性及び食品衛生上問題があり、特にPbの添加は後
者の問題により使用することができない。一方、Biは薬
剤や化粧品などに使用されている元素であることから、
食品機器用快削ステンレス鋼として最適と考えられてき
たが、Biの添加によって熱間加工性が著しく低下するの
で、製造上問題があった。
(発明の目的) 本発明は、上記従来技術の欠点を解消するためになされ
たものであって、特に耐食性が優れているオーステナイ
ト系ステンレス鋼につき、快削元素としてBiを添加して
も熱間加工性が劣化せず、併せて用途の拡大も期待し得
る新規な含Biオーステナイト系快削ステンレス鋼を提供
することを目的とするものである。
(発明の構成) 上記目的を達成するため、本発明者等は、オーステナイ
ト系ステンレス鋼にBiを必須の快削元素として添加して
も熱間加工性の劣化を防止し得る方策について種々研究
を重ねたところ、従来焼入れ性改善成分として極微量添
加されているBを比較的多量に添加することにより、熱
間加工性劣化を顕著に防止できることを見い出した。そ
して、この知見をキーとして含Biオーステナイト系快削
ステンレス鋼の諸特性の一層の改善を図り得る各種実験
を重ね、こゝに本発明をなしたものである。
すなわち、本発明に係る含Biオーステナイト系快削ステ
ンレス鋼は、C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005〜
0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜0.
40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下及
びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、残部
がFe及び不可避的不純物からなる化学成分を有するもの
を基本組成とし、必要に応じて、以下に示すグループの
1又は2以上の組合せで他の元素を添加した化学成分を
有するものである。
(1)Mo:5.0%以下、Cu:4.0%以下及びAl:1.50%以
下のうちの1種又は2種以上、 (2)Zr:0.5%以下、Ti:2.0%以下、Nb:3.0%以
下、V:0.5%以下及びTa:0.5%以下のうちの1種又は
2種以上、 (3)Ca:0.009%以下及びSe:0.35%以下のうちの1
種又は2種。
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
まず、本発明鋼は、必須の快削元素としてBiを添加する
ことによって被削性の改善を図ることと、このBi添加に
よる熱間加工性の劣化をB添加によって防止することを
基本的狙いとするものである。勿論、このB添加は、被
削性向上のために任意に添加でき、しかし、熱間加工性
の劣化を招く他の元素に対しても、熱間加工性の低下防
止にも効果がある。
Biは前述の如く被削性改善に非常に効果的な元素であ
り、また食品衛生上何らの問題も生じない元素でもある
ので、少なくとも0.005%を添加する必要がある。しか
し、多量に添加すると熱間加工性が著しく劣化し、上記
Bを添加しても十分な熱間加工性を確保できなくなるの
で、上限値を0.50%とする。
Bは前述の如くBi添加による熱間加工性の劣化を防止
し、また他の快削成分添加による熱間加工性の低下を防
止するのに効果的な元素である。更には、後述の如く鋼
中に適量含有せしめるN、Oと結合して窒化物(B
N)、酸化物(B23)を生成し、熱間加工性の低下を
招くことなく被削性を改善することができ、なおかつ、
Bi添加に際してBiの歩留を向上させることもできる。こ
れらの効果を確実にするためには0.020%を超える量で
Bを添加する必要があり、しかし、あまり多量に添加し
ても上記効果がそれ以上期待できず、コスト、添加歩留
なども考慮して、上限値を0.10%とする。
次に本発明鋼の他の必須成分について、その含有量の限
定理由を示す。
Cは強力なオーステナイト化元素であるが、耐食性の面
からは少ない方がよく、特に本発明の対象とするオース
テナイト系の場合、0.2%以下とする。
Siは脱酸剤として作用する元素であるほか、耐酸化性を
増大するのに有効であるが、フェライト化元素であり、
多すぎると靱性を劣化させるので2.0%以下とする。
Muはオーステナイト化元素であり、Niよりも安価である
ため、Niの置換元素として含有させることができる。ま
た、MnはS、Seなどと化合物をつくり、赤熱脆性を防止
するのに有効な元素である。しかし、多量に添加すると
被削性を低下させるので10.0%以下とする。
Crはオーステナイト系ステンレス鋼の基本元素であり、
耐食性及び耐酸化性向上のために7.5〜30.0%添加する
必要がある。
Niはオーステナイト系ステンレス鋼にとって好ましい重
要な元素であって、安定なオーステナイト相を形成し、
耐食性及び靱性を向上させるのに有効である。しかし、
多く添加しすぎると被削性が低下し、また高価になるの
で40.0%以下とする。
Sはオーステナイト系ステンレス鋼に快削性を付与する
元素であるが、多量に添加すると熱間加工性と耐食性を
低下するので、上限値を0.40%とする。特に食品機器の
ように高い耐食性が要求される場合には、0.02%以下で
あることが好ましい。しかし、0.002%未満にすること
は製造上コストの上昇を招き、かつ、被削性を低下させ
るので、下限値を0.002%とする。
Pは多量に含めると熱間加工性を害するので0.20%以下
とする。
Nは、Bと結合して窒化物を生成し、被削性を改善する
のに効果があり、また耐力上昇及びオーステナイト安定
化などの効果もあるが、多量の含有はB添加による熱間
加工性改善効果を阻害するので、0.10%以下とする。特
にオーステナイト系ステンレス鋼は熱間加工性がそれ程
良くないので、B添加による十分な熱間加工性を確保す
るべく0.05%以下にするのが好ましい。
OはBと結合して酸化物を生成し、被削性を改善するの
に効果があるので0.002%以上とする。しかし、多過ぎ
ると却って熱間加工性を阻害することになるので上限値
を0.4%とする。
上記組成を基本化学成分とする本発明鋼には、Mo、Cu、
及びAlの1種又は2種以上を耐食性、耐酸化性成分とし
て必要に応じて添加することができる。
MoはCr−Ni系ステンレス鋼において不動態皮膜を強化し
て耐食性を向上させる効果を有するが、多量に添加する
と逆に有害となるので5.0%以下とする。
Cuはオーステナイト安定化元素であり耐食性を改善する
が、多量に添加すると熱間加工性を低下させるので4.0
%以下とする。
Alは、耐酸化性を増す成分で、脱酸の目的で使用する場
合には鋼中に0.005〜0.050%残留するように添加すれば
よいが、析出硬化型ステンレス鋼においては1.50%以下
の範囲で添加することができる。
また、Zr、Ti、Nb、V及びTaのうちの1種又は2種以上
を必要に応じて添加することができる。これらの元素
は、適量添加することにより、耐食性及び強度等を改善
することができ、また熱間加工性を向上させる効果もあ
る。添加する場合には、被削性、コスト等を考慮して、
Zrは0.5%以下、Tiは2.0%以下、Nbは3.0%以下、Vは
0.5%以下、Taは0.5%以下で各々添加することができ
る。
更にまた、Ca及びSeのうちの1種又は2種を被削性をよ
り一層向上させるために必要に応じて添加することがで
きる。添加する場合には、清浄度、耐食性、熱間加工性
等を考慮して、Caは0.009%以下、Seは0.35%以下で各
々添加することができる。但し、Seは、食品機器用材料
として本発明鋼を用いる場合には添加しないのが好まし
い。
なお、上記の任意添加元素群の各々は1又は2以上で組
合わせて添加できることは云うまでもない。
(実施例) 第1表に示す化学成分の各種オーステナイト系ステンレ
ス鋼を2トンアーク炉で溶解し、取鍋精錬装置(GRA
F)で精錬した後、造塊して2トン鋼塊を得た。
次いで、各鋼塊を約1250℃に加熱した後、140mm
角のビレットに圧延し、熱間加工性を調べた。なお、熱
間加工性は、ビレット割れの有無を調べる外観試験と、
ビレット表層部から切り出した試験片を用いて熱間引張
試験(1250℃)を行い、破断絞り(%)とで評価し
た。これらの結果を第2表に示す。
また、被削性を調べるため、各ビレットを60mm径の丸
棒に鍛造し、固溶化処理を施した材料について第3表に
示す切削条件でドリル切削試験を行い、ドリル穴あけ性
(工具寿命が1000mmとなる切削速度)(m/min)で
被削性を評価した。その結果を第2表に示す。
耐食性は、上記被削性試験に用いた材料と同じものを第
4表に示す各種溶液中に浸漬し、腐食減量で判定した。
その結果を第2表に示す。
第2表に示す上記試験結果からわかるように、必須快削
元素としてBiを添加し、またBの適量を添加した本発明
鋼No.1〜10は、いずれも熱間加工性の劣化が効果的
に防止され、Bi無添加の比較鋼No.11と同等乃至より
以上の熱間加工性を示し、また被削性が顕著に改善され
ていると共に耐食性も優れている。これに対し、B含有
量が本発明の範囲より極少でBiを含む比較鋼(No.1
2)は熱間加工性の劣化が著しく、またその場合にBi添
加量を下げてB添加量を増加させても、B添加量が十分
でない比較鋼(No.13)は、被削性の改善度合が小さ
くなるので依然として熱間加工性は劣化の状態にある。
(発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、熱間加工性の劣
化が特に著しい含Biオーステナイト系ステンレス鋼につ
き、Bを適量添加して熱間加工性の劣化を防止すること
を基本とし、更に他成分の含有を調整したものであるか
ら、熱間加工性を劣化することなく被削性を顕著に改善
でき、かつ、優れた耐食性も付与できる。したがって、
特に製造上の問題が生ぜず、また食品機器用材料として
も利用できるなど用途を拡大することもできる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%(以下、同じ)で、C:0.2%以
    下、Si:2.0%以下、Mn:10.0以下、Cr:7.5〜30.0%、
    Ni:40.0%以下、Bi:0.005〜0.50%、B:0.020%を超
    え0.10%以下、S:0.002〜0.40%及びP:0.20%以下
    を含み、更にN:0.10%以下及びO:0.002〜0.4%のう
    ちの1種又は2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物
    からなることを特徴とする含Biオーステナイト系快削ス
    テンレス鋼。
  2. 【請求項2】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005〜
    0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜0.
    40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下及
    びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更に
    はMo:5.0%以下、Cu:4.0%以下及びA:1.50%以下
    のうちの1種又は2種以上を含み、残部がFe及び不可避
    的不純物からなることを特徴とする含Biオーステナイト
    系快削ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005〜
    0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜0.
    40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下及
    びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更に
    Zr:0.5%以下、Ti:2.0%以下、Nb:3.0%以下、V:
    0.5%以下及びTa:0.5%以下のうちの1種又は2種以上
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特
    徴とする含Biオーステナイト系快削ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005〜
    0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜0.
    40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下及
    びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更に
    はCa:0.009%以下及びSe:0.35%以下のうちの1種又
    は2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなるこ
    とを特徴とする含Biオーステナイト系快削ステンレス
    鋼。
  5. 【請求項5】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    %以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005
    〜0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜
    0.40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下
    及びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更
    にはZr:0.5%以下、Ti:2.0%以下、Nb:3.0%以下、
    V:0.5%以下及びTa:0.5%以下のうちの1種又は2種
    以上を含み、並びにCa:0.009%以下及びSe:0.35%以
    下のうちの1種又は2種を含み、残部がFe及び不可避的
    不純物からなることを特徴とする含Biオーステナイト系
    快削ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    %以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005
    〜0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜
    0.40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下
    及びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更
    にはMo:5.0%以下、Cu:4.0%以下及びA:1.50%以
    下のうちの1種又は2種以上を含み、並びにZr:0.5%
    以下、Ti:2.0%以下、Nb:3.0%以下、V:0.5%以下
    及びTa:0.5%以下のうちの1種又は2種以上を含み、
    残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする
    含Biオーステナイト系快削ステンレス鋼。
  7. 【請求項7】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    %以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005
    〜0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜
    0.40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下
    及びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更
    にはMo:5.0%以下、Cu:4.0%以下及びA:1.50%以
    下のうちの1種又は2種以上を含み、並びにCa:0.009
    %以下及びSe:0.35%以下のうちの1種又は2種以上を
    含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴
    とする含Biオーステナイト系快削ステンレス鋼。
  8. 【請求項8】C:0.2%以下、Si:2.0%以下、Mn:10.0
    %以下、Cr:7.5〜30.0%、Ni:40.0%以下、Bi:0.005
    〜0.50%、B:0.020%を超え0.10%以下、S:0.002〜
    0.40%及びP:0.20%以下を含み、更にN:0.10%以下
    及びO:0.002〜0.4%のうちの1種又は2種を含み、更
    にはMo:5.0%以下、Cu:4.0%以下及びA:1.50%以
    下のうちの1種又は2種以上を含み、並びにZr:0.5%
    以下、Ti:2.0%以下、Nb:3.0%以下、V:0.5%以下
    及びTa:0.5%以下のうちの1種又は2種以上を含み、
    更にCa:0.009%以下及びSe:0.35%以下のうちの1種
    又は2種を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる
    ことを特徴とする含Biオーステナイト系快削ステンレス
    鋼。
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