JPH0645849B2 - 耐摩耗性高透磁率合金の製造法 - Google Patents

耐摩耗性高透磁率合金の製造法

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JPH0645849B2
JPH0645849B2 JP26270089A JP26270089A JPH0645849B2 JP H0645849 B2 JPH0645849 B2 JP H0645849B2 JP 26270089 A JP26270089 A JP 26270089A JP 26270089 A JP26270089 A JP 26270089A JP H0645849 B2 JPH0645849 B2 JP H0645849B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明はNi ,Nb ,P,SおよびFe を主成分とし、
副成分としてCr ,Mo ,Ge ,Au ,Co ,V,W,
Cu ,Ta ,Mn ,Al,Si ,Ti ,Zr ,Hf ,S
n ,Sb ,Ga ,In ,Tl,Zn ,Cd ,希土類元
素、白金族元素,Be ,Ag ,Sr ,Ba ,Bの1種ま
たは2種以上を含有する耐摩耗性高透磁率合金の製造法
に関するもので、その目的とするところは、鍛造加工が
容易で、実効透磁率が大きく、飽和磁束密度が4000G以
上で、{110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組
織を有して耐摩耗性が良好な磁性合金を得るにある。
(従来の技術) テープレコーダーなどの磁気記録再生ヘッドは交流磁界
において動作するものであるから、これに用いられる磁
性合金は高周波磁界における実効透磁率が大きいことが
必要とされ、また磁気テープが接触して摺動するため耐
摩耗性が良好であることが望まれている。現在、耐摩耗
性にすぐれた磁気ヘッド用磁性合金としてはセンダスト
(Fe−Si−Al系合金)およびフェライト(MnO−
ZnO−Fe2)があるが、これらは非常に硬く脆い
ため、鍛造、圧延加工が不可能で、ヘッドコアの製造に
は研削、研磨の方法が用いられており、従ってその製品
は高価である。またセンダストは飽和磁束密度は大きい
が薄板にできないので高周波磁界における実効透磁率が
比較的小さい。またフェライトは実効透磁率は大きい
が、飽和磁束密度が約4000Gで小さいのが欠点である。
他方パーマロイ(Ni−Fe 系合金)飽和磁束密度は大
きいが、実効透磁率は小さく、また鍛造、圧延加圧およ
び打抜きは容易で量産性にすぐれているが、摩耗しやす
いのが大きな欠点であり、これを改善することが強く望
まれている。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明者らは、先にNi−Fe−Nb 系合金は鍛造加工が
容易で硬度が高く、すぐれた高透磁率合金であることか
ら、磁気記録再生ヘッド用磁性合金として好適であるこ
とを見い出し、これを特許出願した(特公昭47−29690
号)。その後本発明者らは、Ni−Fe−Nb 系合金の摩
耗について系統的な研究を行った結果、Ni−Fe−Nb
系合金の摩耗は硬度によって一義的に決定されるもので
なく、合金の再結晶集合組織と緊密な関係があることが
明らかとなった。
(問題点を解決するための手段) 本発明の特徴とする所は次の通りである。
第1発明 重量比にてNi 60〜90%、Nb 0.5 〜14%、PおよびS
の合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以下、PおよびS
は0%を含まず)および残部Fe を主成分とし、副成分
としてCr ,Mo ,Ge ,Au をそれぞれ7%以下、C
o ,Vをそれぞれ10%以下、Wを15%以下、Cu ,Ta
,Mn をそれぞれ25%以下、Al,Si ,Ti ,Zr
,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,Tl,Zn ,Cd
,希土類元素、白金族元素をそれぞれ5%以下、Be
,Ag ,Sr ,Ba をそれぞれ3%以下、Bを1%以
下の1種または2種以上の合計0.01〜30%、少量の不純
物とからなる合金を900 ℃を超え1000℃以下の温度で熱
間加工した後冷却し、次に加工率50%以上の冷間加工を
施した後、900 ℃以上融点以下の温度で加熱し、ついで
規則−不規則格子変態点以上の温度から100 ℃/秒〜1
℃/時の組成に対応した適当な速度で常温まで冷却する
ことにより、1KHz における実効透磁率3000以上、飽
和磁束密度4000G以上で、且つ{110}<112>+{31
1}<112>の再結晶集合組織を形成せしめることを特徴
とする耐摩耗性高透磁率合金の製造法。
第2発明 重量比にてNi 60〜90%、Nb 0.5 〜14%、PおよびS
の合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以下、PおよびS
は0%を含まず)および残部Fe を主成分とし、副成分
としてCr ,Mo ,Ge ,Au をそれぞれ7%以下、C
o ,Vをそれぞれ10%以下、Wを15%以下、Cu ,Ta
,Mn をそれぞれ25%以下、Al,Si ,Ti ,Zr
,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,Tl,Zn ,Cd
,希土類元素、白金族元素をそれぞれ5%以下、Be
,Ag ,Sr ,Ba をそれぞれ3%以下、Bを1%以
下の1種または2種以上の合計0.01〜30%、少量の不純
物とからなる合金を900 ℃を超え1000℃以下の温度で熱
間加工した後冷却し、次に加工率50%以上の冷間加工を
施した後、900 ℃以上融点以下の温度で加熱し、ついで
規則−不規則格子変態点以上の温度から100 ℃/秒〜1
℃/時の組成に対応した適当な速度で冷却し、これをさ
らに規則−不規則格子変態点以下の温度で1分間以上10
0 時間以下の組成に対応した適当時間加熱し冷却するこ
とにより、1KHz における実効透磁率3000以上、飽和
磁束密度4000G以上で、且つ{110}<112>+{311}
<112>の再結晶集合組織を形成せしめることを特徴と
する耐摩耗性高透磁率合金の製造法。
(作 用) 一般に摩耗現象は合金結晶の方位によって大きな差異が
あり、結晶異方性が存在することが知られているが、N
i−Fe−Nb 系合金においては{100}<001>再結晶集
合組織は摩耗し易すく、{110}<112>とこの<112>
方位を軸として多少回転した{311}<112>の再結晶集
合組織が耐摩耗性にすぐれていることが明らかとなっ
た。すなわち、Ni−Fe−Nb 系合金は{110}<112>
+{311}<112>の再結晶集合組織を形成させることに
よって耐摩耗性が著しく向上することを見い出したので
ある。
本発明者らはこの知見に基づいて、Ni−Fe−Nb 系合
金の{110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織
を形成させるための研究を幾多遂行した結果、これにP
およびSの合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以下、P
およびSは0%を含まず)添加すると{100}<001>再
結晶集合組織の発達は抑制され、{110}<112>+{31
1}<112>の再結晶集合組織の形成が著しく促進するこ
とを見い出したのである。すなわちNi−Fe 2元系合
金は冷間圧延加工すると{110}<112>+{112}<111
>の再結晶集合組織が生じるが、これを高温加熱すると
{100}<001>再結晶集合組織が発達することが知られ
ている。しかし、これにNb を添加すると積層欠陥エネ
ルギーが低下するが、さらにこれにPおよびSの合計0.
001 〜1%(但し、S0.1 %以下、PおよびSは0%を
含まず)添加すると、リン化物および硫化物が粒界に析
出して粒界エネルギーが低下して、二次再結晶において
{100}<001>再結晶集合組織の発達を強く抑制し、
{110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織の成
長が優先的に促進され、{110}<112>+{311}<112
>の再結晶集合組織が形成されて、耐摩耗性が著しく向
上する。またNi−FeNb 系合金にPおよびSを添加す
ると硬いリン化物および硫化物がマトリックス中にも析
出し、耐摩耗性の向上に寄与するとともに、これらの弱
強磁性および非強磁性の微細なリン化物および硫化物の
分散析出によって磁区が分割されて、交流磁界における
渦電流損失が減少し、このために実効透磁率が増大する
ことも見い出した。要するにNb とPおよびSの相乗的
効果により、{110}<112>+{311}<112>の再結晶
集合組織が発達するとともに実効透磁率が増大し、耐摩
耗性のすぐれた高透磁率磁性合金が得られるのである。
本発明の合金を造るには、Ni 60〜90%、Nb 0.5 〜14
%、PおよびSの合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以
下、PおよびSは0%を含まず)および残部Fe の適当
量を空気中、好ましくは非酸化性雰囲気(水素、アルゴ
ン、窒素など)中あるいは真空中において適当な溶解炉
を用いて溶解する。上記合金に副成分としてCr ,Mo
,Ge ,Au の7%以下、Co ,Vの10%以下、Wの1
5%以下、Cu ,Ta ,Mn の25%以下、Al,Si ,
Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,Tl,Z
n ,Cd ,希土類元素、白金族元素の5%以下、Be ,
Ag ,Sr ,Ba の3%以下、Bを1%以下の1種また
は2種以上の合計0.01〜30%の所定量を更に添加する。
また、鍛造性および加工性を改善する為、必要に応じて
脱酸剤としてC,Ca ,Mg 等を少量(各0.5 %以下)
添加する。かくして得た混合物を充分に撹拌して組成的
に均一な溶融合金を造る。
次にこれを適当な形および大きさの鋳型に注入して健全
な鋳塊を得、さらにこれに高温において鋳造あるいは熱
間加工を施して適当な形状のもの、例えば棒あるいは板
となし、また、必要ならば焼鈍する。次いでこれに冷間
圧延などの方法によって加工率50%以上の冷間加工を施
し、目的の形状のもの、例えば厚さ0.1 mmの薄板を造
る。次にその薄板から例えば外径45mm、内径33mmの環状
板を打抜き、これを水素中その他の適当な非酸化性雰囲
気(水素、アルゴン、窒素など)中あるいは真空中で90
0 ℃以上融点以下の温度で適当時間加熱し、ついで規則
−不規則格子変態点(約600 ℃)以上の温度から100 ℃
/秒〜1℃/時の組成に対応した適当な速度で冷却する
かあるいはこれをさらに規則−不規則格子変態点(約60
0 ℃)以下の温度で適当時間再加熱し、冷却する。この
ようにして実効透磁率3000以上、飽和磁束密度4000G以
上を有し、且つ{110}<112>+{311}<112>の再結
晶集合組織を有した耐摩耗性高透磁率合金が得られる。
次に本発明を図面につき説明する。
第1図は80%Ni−Fe−5%Nb−P−S系合金(但
し、P:S=10:1)について加工率90%の冷間圧延
し、1100℃で加熱した後1000℃/時の速度で冷却した場
合の再結晶集合組織および諸特性とPおよびS量との関
係を示したものである。Ni−Fe−Nb 系合金は冷間圧
延加工すると{110}<112>+{112}<111>の再結晶
集合組織が生じるが、これを高温加熱すると{100}<0
01>と{110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組
織が生成する。しかし、これにPおよびSを添加すると
{100}<001>再結晶集合組織の生成が抑制され、{11
0}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織が発達
し、それとともに摩耗量は減少する。また実効透磁率は
PおよびSの添加によって増大するが、PおよびSの1
%以上では鍛造加工が困難となり好ましくない。第2図
は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S合金に
ついて、1100℃で加熱した場合の再結晶集合組織および
諸特性と冷間加工率との関係を示したもので、冷間加工
率の増加は{110}<112>+{311}<112>の再結晶集
合組織の発達をもたらし、耐摩耗性を向上させ、実効透
磁率を高める。第3図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05
%P−0.01%S合金を冷間加工率85%で圧延した後の加
熱温度と再結晶集合組織および諸特性との関係を示した
もので、加熱温度の上昇とともに{112}<111>成分が
減少し、{110}<112>+{311}<112>が発達して耐
摩耗性が向上し、また実効透磁率は増大する。第4図は
合金番号7(81.5%Ni−Fe−2%Nb−0.155 %P−
0.022%S合金)、合金番号45(79.3%Ni−Fe−7%
Nb−0.04%P−0.008 %S−2%Mo 合金)、合金番
号37(82%Ni−Fe−3.5 %Nb−0.062 %P−0.01%
S−5%V合金)について実効透磁率と冷却速度との関
係およびこれをさらに再加熱処理を施した場合の実効透
磁率(×印)を示したものである。合金の組成に対応し
た最適冷却速度、最適再加熱温度および再加熱時間が存
在することが判る。
第5図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金にCr ,Mo ,Ge ,Au あるいはCo を添加した
場合の磁気ヘッドの摩耗量および実効透磁率の特性図
で、Cr ,Mo ,Ge ,Au あるいはCo を添加する
と、何れも実効透磁率は高くなり、摩耗量は減少する
が、Cr ,Mo ,Ge あるいはAu の7%以上では飽和
磁束密度が4000G以下となり好ましくない。またCo 10
%以上では残留磁気が大きくなり、帯磁ノイズが増大す
るので好ましくない。
第6図は同じく80%Ni−Fe−5%Nb−0.05 %P−0.
01%S合金にV,W,Cu ,Ta あるいはMn を添加し
た場合の磁気ヘッドの摩耗量および実効透磁率の特性図
で、V,W,Cu ,Ta あるいはMn を添加すると、何
れも実効透磁率は高くなり、摩耗量は減少するが、Vを
10%以上、Wを15%以上、Cu ,Ta あるいはMn を25
%以上添加すると飽和磁束密度が4000G以下となり好ま
しくない。
第7図は同じく80%Ni−Fe−5%Nb−0.05 %P−0.
01%S合金にAl,Si ,Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,S
b ,Ga ,In あるいはTlを添加した場合の磁気ヘッ
ドの摩耗量および実効透磁率の特性性図で、Al,Si
,Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In あるい
はTlを添加すると、何れも実効透磁率は高くなり、摩
耗量は減少するが、Si ,Ti ,Zr ,Hf ,Ga ,I
n あるいはTl5%以上では飽和磁束密度は4000G以下
となり、Al,Sn あるいはSb が5%以上では鍛造加
工が困難となり好ましくない。
第8図は同じく80%Ni−Fe−5%Nb−0.05 %P−0.
01%S合金にZn ,Cd ,La ,Pt ,Be ,Ag ,S
r ,Ba あるいはBを添加した場合の磁気ヘッドの摩耗
量および実効透磁率の特性性図で、Zn ,Cd ,La ,
Pt ,Be ,Ag ,Sr ,Ba あるいはBを添加する
と、何れも実効透磁率は高くなり、摩耗量は減少する
が、Zn ,Cd ,La ,Pt を5%以上、Be ,Sr ,
Ba を3%以上添加すると飽和磁束密度が4000G以下と
なり、Ag を3%以上あるいはBを1%以上添加すると
鍛造加工が困難となり好ましくない。
第9図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金を実施例1に準じて製造した場合の熱間圧延加工の
温度と再結晶集合組織および摩耗量との関係を示す特性
図である。80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%
S合金を約1000℃で鍛造して厚さ7mmの板とした。さら
に種々な加熱温度で厚さ1.0mmまで熱間圧延加工し、つ
いで常温で冷間圧延加工を施して0.1mmの薄板(冷間加
工率90%)とした。この薄板を1100℃の水素中で2時間
加熱後800 ℃/hrの速度で常温まで冷却した場合の熱間
圧延加工の温度と再結晶集合組織および摩耗量との関係
を第9図に示した。熱間圧延加工の温度が900 ℃以下で
は摩耗の激しい{112}<111>が残留し摩耗量が大きい
が、900 ℃〜1000℃間の温度では{110}<112>と{31
1}<112>の再結晶集合組織が発達し摩耗量が特に小く
なる。
本発明において、冷間加工は{110}<112>+{112}
<111>の集合組織を形成し、これを基として{110}<
112>+{311}<112>の再結晶集合組織を発達させる
ために必要で、第1図および第2図に見られるようにP
およびSの合計0.001 %以上において、特に加工率50%
以上の冷間加工を施した場合に{110}<112>+{31
1}<112>の再結晶集合組織の発達が顕著で、耐摩耗性
は著しく向上し、その実効透磁率も高い。また上記の冷
間加工に次いで行われる加熱は、組織の均一化、加工歪
の除去とともに、 {110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織を発
達させ、高い実効透磁率とすぐれた耐摩耗性を得るため
に必要であるが、第3図に見られるように特に900 ℃以
上の加熱によって実効透磁率および耐摩耗性は顕著に向
上する。
尚、上記の900℃を越え1000℃以下の温度で熱間
圧延加工と、冷間加工と、次いで行われる900 ℃以上融
点以下の加熱を繰り返し行うことは、 {110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織の集
積度を高め、耐摩耗性を向上させるために有効である。
この場合最終冷間加工の加工率が50%以下でも{11
0}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織が得られ
るが、本発明の技術的思想に包含されるものである。し
たがって、本発明の冷間加工率は、全製造工程における
冷間加工を総計した加工率を意味し、最終冷間加工率の
みを意味するものではない。
上記の900 ℃以上融点以下の温度から規則−不規則格子
変態点(約600 ℃)以上の温度までの冷却は、急冷して
も徐冷しても得られる磁性には大した変りはないが、第
4図に見られるようにこの変態点以下の冷却速度は磁性
に大きな影響を及ぼす。すなわちこの変態点以上の温度
より100 ℃/秒〜1℃/時の組成に対応した適当な速度
で常温迄冷却することにより、地の規則度が適度に調整
され、すぐれた磁性が得られる。そして上記の冷却速度
の内100 ℃/秒に近い速度で冷却すると、規則度が小さ
くなり、これ以上速く冷却すると規則化が進まず、規則
度はさらに小さくなり磁性は劣化する。しかし、その規
則度の小さい合金をその変態点以下の200 ℃〜600 ℃の
組成に対応して、1分間以上100 時間以下再加熱し冷却
すると、規則化が進んで適度な規則度となり磁性は向上
する。他方、上記の変態点以上の温度から、例えば1℃
/時以下の速度で徐冷すると、規則化は進みすぎ、磁性
は低下する。
尚、上記の熱処理を水素が存在する雰囲気中で施すこと
は、実効透磁率を高めるのに特に効果があるので好まし
い。
(実施例) 次に本発明を実施例につき説明する。
実施例1 合金番号45(組成Ni=79.3%,Nb=7%,P=0.04
%,S=0.008 %,Mo=2%,Fe=残部)の合金の製
造 原料として99.8%純度の電解ニッケル、99.9%純度の電
解鉄、99.8%純度のニオブ、99.5%純度の硫黄、モリブ
デンと、リン10%の鉄−リン母合金を用いた。試料を造
るには、原料は全重量800 gでアルミナ坩堝に入れ、真
空中で高周波誘導電気炉によって溶かした後、よく撹拌
して均質な溶融合金とした。次にこれを直径25mm、高さ
170 mmの孔をもつ鋳型に注入し、得られた鋳塊を約1000
℃で鍛造して厚さ約7mmの板とした。さらに900℃を
超え1000℃以下の温度で適当な厚さまで熱間圧延
し、ついで常温で種々な加工率で冷間圧延を施して0.1
mmの薄板とし、それから外径45mm、内径33mmの環状板を
打ち抜いた。
次にこれに種々な熱処理を施して、磁気特性および磁気
ヘッドのコアとして使用した場合湿度80%、温度40℃に
おいてCrO磁気テープによる200 時間走行後の摩耗
量をタリサーフ表面粗さ計で測定を行い、第1表のよう
な特性を得た。
なお代表的な合金の特性は第2表に示す通りである。
上記のように本発明合金は加工が容易で、耐摩耗性にす
ぐれ、4000G以上の飽和磁束密度3000以上の高い実効透
磁率、低保磁力を有しているので、磁気記録再生ヘッド
のコアおよびケース用磁性合金として好適であるばかり
でなく、耐摩耗性および高透磁率を必要とする一般の電
磁器機の磁性材料としても好適である。
次に本発明において合金の組成をNi 60〜90%、Nb 0.
5 〜14%、PおよびSの合計0.001 〜1%(但し、S0.
1 %以下、PおよびSは0%を含まず)および残部Fe
を限定し、これに副成分として添加する元素をCr ,M
o ,Ge ,Au を7%以下、Co ,Vを10%以下、Wを
15%以下、Cu ,Ta ,Mn を25%以下、Al,Si ,
Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,Tl,Z
n ,Cd ,希土類元素、白金族元素を5%以下、Be ,
Ag ,Sr ,Ba を3%以下、Bを1%以下の1種また
は2種以上の合計で0.01〜30%と限定した理由は実施
例、第2表および図面で明らかなように、この組成範囲
の実効透磁率は3000以上、飽和磁束密度4000G以上で、
且つ{110}<112>+{311}<112>の再結晶集合組織
を有し、耐摩耗性がすぐれているが、この組成範囲をは
ずれると磁気特性あるいは耐摩耗性が劣化するからであ
る。
すなわち、Nb 0.5 以下およびPおよびSの合計0.001
%以下では{110}<112>+{311}<112>の再結晶集
合組織が充分発達しないので耐摩耗性が悪く、Nb 14%
以上およびPおよびSの合計1%以上およびS0.1 %以
上で鍛造加工が困難となり、また実効透磁率3000以下、
飽和磁束密度4000G以下になるからである。
そしてNi 60〜90%、Nb 0.5 〜14%、PおよびSの合
計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以下、PおよびSは0
%を含まず)および残部Fe の組成範囲の合金は、実効
透磁率3000以上、飽和磁束密度4000G以上で、耐摩耗性
がすぐれ、且つ加工性が良好であるが、一般にこれにさ
らにCr ,Mo ,Ge ,Au ,W,V,Cu ,Ta ,M
n ,Al,Zr ,Si ,Ti ,Hf ,Ga ,In ,T
l,Zn ,Cd ,希土類元素,白金族元素,Be ,Ag
,Sr ,Ba ,B等を添加すると特に実効透磁率を高
める効果があり、Co を添加すると特に飽和磁束密度を
高める効果があり、Au ,Mn ,Ti ,Co ,希土類元
素,Be ,Sr ,Ba ,Bを添加すると鍛造、加工を良
好にする効果があり、Al,Sn ,Sb ,Au ,Ag ,
Ti ,Zn ,Cd ,Be ,Ta ,Vの添加および副成分
の各元素のリン化物および硫化物は{110}<112>+
{311}<112>の再結晶集合組織を発達させ、耐摩耗性
を向上する効果がある。
(発明の効果) 要するに本発明合金は鍛造加工が容易で、{110}<112
>+{311}<112>の再結晶集合組織を形成させること
によって耐摩耗性がすぐれ、飽和磁束密度が4000G以上
で、実効透磁率が高いので、磁気記録再生ヘッド用磁性
合金として好適であるばかりでなく、耐摩耗性および高
透磁率を必要とする一般の電磁器機の磁性材料としても
好適である。
【図面の簡単な説明】
第1図は80%Ni−Fe−5%Nb−P−S系合金の諸特
性とPおよびS量(但し、P:S=10:1)との関係を
示す特性図、 第2図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金の諸特性と冷間加工率との関係を示す特性図、 第3図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金の諸特性と加熱温度との関係を示す特性図、 第4図は81.5%Ni−Fe−2%Nb−0.155 %P−0.022
%S合金(合金番号7)、79.3%Ni −Fe−7%Nb
−0.04%P−0.008 %S−2%Mo合金(45)、および8
2%Ni−Fe−3.5 %Nb−0.062 %P−0.01%S−5%
V合金(37)の実効透磁率と冷却速度、再加熱温度およ
び再加熱時間との関係を示す特性図、 第5図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金にCr ,Mo ,Ge ,Au あるいはCo を添加した
場合の諸特性と各元素の添加量との関係を示す特性図、 第6図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金にV,W,Cu ,Ta あるいはMn を添加した場合
の諸特性と各元素の添加量との関係を示す特性図、 第7図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金にAl,Si ,Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,G
a ,In あるいはTlを添加した場合の諸特性と各元素
の添加量との関係を示す特性図、 第8図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金にZn ,Cd ,La ,Pt ,Be ,Ag ,Sr ,B
a あるいはBを添加した場合の諸特性と各元素の添加量
との関係を示す特性図、 第9図は80%Ni−Fe−5%Nb−0.05%P−0.01%S
合金の熱間圧延加工温度と再結晶集合組織および摩耗量
との関係を示す特性図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比にてNi 60〜90%、Nb 0.5 〜14
    %、PおよびSの合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以
    下、PおよびSは0%を含まず)および残部Fe を主成
    分とし、副成分としてCr ,Mo ,Ge ,Au をそれぞ
    れ7%以下、Co ,Vをそれぞれ10%以下、Wを15%以
    下、Cu ,Ta ,Mn をそれぞれ25%以下、Al,Si
    ,Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,T
    l,Zn ,Cd ,希土類元素、白金族元素をそれぞれ5
    %以下、Be ,Ag ,Sr ,Ba をそれぞれ3%以下、
    Bを1%以下の1種または2種以上の合計0.01〜30%、
    少量の不純物とからなる合金を900 ℃を超え1000℃以下
    の温度で熱間加工した後冷却し、次に加工率50%以上の
    冷間加工を施した後、900 ℃以上融点以下の温度で加熱
    し、ついで規則−不規則格子変態点以上の温度から100
    ℃/秒〜1℃/時の組成に対応した適当な速度で常温ま
    で冷却することにより、1KHz における実効透磁率30
    00以上、飽和磁束密度4000G以上で、且つ{110}<112
    >+{311}<112>の再結晶集合組織を形成せしめるこ
    とを特徴とする耐摩耗性高透磁率合金の製造法。
  2. 【請求項2】重量比にてNi 60〜90%、Nb 0.5 〜14
    %、PおよびSの合計0.001 〜1%(但し、S0.1 %以
    下、PおよびSは0%を含まず)および残部Fe を主成
    分とし、副成分としてCr ,Mo ,Ge ,Au をそれぞ
    れ7%以下、Co ,Vをそれぞれ10%以下、Wを15%以
    下、Cu ,Ta ,Mn をそれぞれ25%以下、Al,Si
    ,Ti ,Zr ,Hf ,Sn ,Sb ,Ga ,In ,T
    l,Zn ,Cd ,希土類元素、白金族元素をそれぞれ5
    %以下、Be ,Ag ,Sr ,Ba をそれぞれ3%以下、
    Bを1%以下の1種または2種以上の合計0.01〜30%、
    少量の不純物とからなる合金を900 ℃を超え1000℃以下
    の温度で熱間加工した後冷却し、次に加工率50%以上の
    冷間加工を施した後、900 ℃以上融点以下の温度で加熱
    し、ついで規則−不規則格子変態点以上の温度から100
    ℃/秒〜1℃/時の組成に対応した適当な速度で冷却
    し、これをさらに規則−不規則格子変態点以下の温度で
    1分間以上100 時間以下の組成に対応した適当時間加熱
    し冷却することにより、1KHz における実効透磁率30
    00以上、飽和磁束密度4000G以上で、且つ{110}<112
    >+{311}<112>の再結晶集合組織を形成せしめるこ
    とを特徴とする耐摩耗性高透磁率合金の製造法。
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