JPH0645133B2 - 超高曲靭性ｐｃ杭の製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、土木、建築物の基礎に
使用する超高曲靭性ＰＣ杭の製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、ＰＣ杭、即ち縦方向にＰＣ鋼材を
埋設し、全体に縦方向のプレストレスを付与したプレス
トレストコンクリート杭の製造は、円筒型の型枠を使用
し、遠心力によって中空の筒状に成形する遠心成形法が
一般的である。

【０００３】この従来の方法を図６について説明する
と、まず、編成機により縦向のプレストレスを付与する
ためのＰＣ鋼線１，１……からなる縦筋群を円筒状に配
置し、これにフープ筋２を螺旋状、もしくは多数のリン
グ状に巻き付けて溶接することにより、円筒籠状に編成
する（図６Ａ）。これを半割にした円筒型枠３の上半分
を取り外した状態で下半分内に挿入し、各ＰＣ鋼線１，
１……を端鉄板（通称「はかま」）４に通し、緊張支圧
金具５に固定する（図６Ｂ）。

【０００４】この状態で所定量のコンクリート６を充填
した後、円筒型枠３の上半分を被せて固定し、一方の緊
張支圧金具５をジャッキにより引張し、ＰＣ鋼線に所定
の緊張力を与え、その反力を円筒型枠３の両端に支持さ
せる（図６Ｃ）。また、上記コンクリート６の充填前に
円筒型枠３の上半分を被せて固定し、緊張支圧金具５を
ジャッキによって引張り、ＰＣ鋼線に所定の緊張力を与
えた後、ポンプによりコンクリートを充填する。

【０００５】この状態で円筒型枠３を遠心成形機の回転
ローラー７に載せ、回転させ、遠心力によりコンクリー
ト６を型枠内面に沿わせて円筒形に成形し（図６Ｄ）、
次いで蒸気等によって温度コントロールした養生室に入
れて養生させた後、緊張支圧金具５を外し、緊張を解く
ことによりコンクリートにプレストレスを導入させるよ
うにしている。

【０００６】このようにして製造される従来のＰＣ杭
は、導入するプレストレスを大きくすることによって曲
げ破壊耐力が増大されるが、地震時の耐震性の増大に
は、曲げ破壊耐力の増強と同時に塑性変形能力の増大を
図ることが重要であり、プレストレスを大きくすると塑
性変形能力が小さくなり、かえって耐震性能を低下させ
るという問題があった。

【０００７】このような問題にかんがみ、本発明者は耐
震性能を向上させるため、円筒状配置の縦鉄筋群と杭外
周面との間に螺旋状の横拘束筋を埋設するとともに、一
様伸び率の大きい縦筋群を使用することにより、曲げ破
壊耐力が大きく、しかも塑性変形能力の大きい超高曲靭
性ＰＣ杭を開発した（特開昭６２−２８０４１８号公
報）。

【０００８】上述の如き超高曲靭性ＰＣ杭は、縦筋群の
耐力及び高一様伸び率等の性状を維持させるには、籠筋
編成に使用されるスポット溶接が好ましくなく、しか
も、横拘束筋による曲靱性改善効果を高めるためには、
縦筋群と離れた状態で可能な限り杭外周面に近い位置に
横拘束筋を配筋しなければならず、更に、これらの配筋
は、遠心成形に耐えるように強く位置決めする必要があ
った。

【０００９】そこで本発明者は、横拘束筋を型枠内に位
置決めするために、螺旋状もしくはリング状の横拘束筋
の内側に横拘束筋支持線材を挿入して籠状にし、その支
持線材を型枠内に緊張するようにした超高曲靭性ＰＣ杭
の製造方法を開発した（特願平１−１４３００６号）。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上述した従来
の方法は、支持線材の外側に横拘束筋を巻き付ける形状
であるため、横拘束筋と支持線材とを全周において強固
に固定しないとコンクリート成形時の遠心力によって横
拘束筋が外側に張り出し、杭の外周面からの一定のコン
クリートのかぶりが得られなくなる場合が生じるという
問題があった。このため、横拘束筋と支持線材間を多数
箇所において結束等により強固に固着する必要があり、
そのための工数が多く、コスト高とならざるを得ないと
いう問題があった。

【００１１】本発明はこのような従来の問題にかんが
み、従来に比べより少ない工数にて手軽に、しかも横拘
束筋の位置決めが正確に、しかも強固になされる超高曲
靭性ＰＣ杭が製造できる方法の提供を目的としたもので
ある。

【００１２】

【課題を達成するための手段】上述の如き目的を達成す
るための本発明の要旨とするところは、円筒状をした型
枠内に、その軸方向に向けた多数のＰＣ鋼材からなる縦
筋群を挿入し、その各ＰＣ鋼材の両端を一対の緊張支圧
金具に支持させて、前記型枠と同心の円筒状に配置さ
せ、かつ、該縦筋群の外側にあって前記型枠の内面に近
づけた位置に該型枠との間に複数の横拘束筋支持用の棒
材を円筒状配置に挿入し、該棒材の円筒状内側に前記型
枠内面に沿った螺旋状の横拘束筋を収容し、然る後前記
緊張支圧金具の一方をジャッキにより引張し、前記縦筋
群に所定の緊張力を付与し、この状態で内部に充填した
コンクリートを遠心成形することを特徴としてなる超高
曲靭性ＰＣ杭の製造方法に存する。

【００１３】なお、横拘束筋の外側に横拘束筋支持用の
棒材を予め固定し、円筒籠状にしたものを使用してもよ
く、更に横拘束筋は、コイルバネ状に成形したものを所
定の螺旋ピッチに引き伸して横拘束筋支持用の棒材に固
定してもよく、更にまた棒材の外周面にコンクリート製
の被覆層を付着させ、該被覆層をスペーサーとしてもよ
い。更に棒材を型枠内面に接触させた状態に収容してお
き、遠心成形して脱型後、棒材を取り除き、その取り除
き後の溝を埋めるようにしてもよい。

【００１４】

【作用】この超高曲靭性ＰＣ杭の製造方法では、横拘束
筋支持用の棒材がスペーサーを介して型枠内面に支持さ
れることにより、螺旋状の横拘束筋の外周位置が規制さ
れることとなり、横拘束筋支持用の棒材は型枠に対する
横拘束筋の連続したスペーサーとしての役割を果たすこ
ととなる。

【００１５】このようにして横拘束筋を位置決めさせる
とともに縦筋を緊張し、コンクリートを型枠内に充填し
た状態で遠心成形することによりコンクリートは型枠内
面に均一な厚さに移動し、各筋を埋設した状態で円筒状
に成形される。

【００１６】

【実施例】次に本発明の実施例を図１〜図５について説
明する。

【００１７】図３、図４は本発明方法によって製造され
るＰＣ杭の一例を示している。このＰＣ杭は、円筒形を
なしており、その肉厚内に軸方向に向けた多数のＰＣ鋼
材１０，１０……を円筒状に配置した縦筋群１０Ａが埋
設されており、その外側にあって、ＰＣ杭の外周面近く
に螺旋状配置に円周方向に向けた横拘束筋１１が埋設さ
れている。この横拘束筋１１は、その外周面に軸方向に
向けて筒状に配置した多数の横拘束筋支持用の棒材１
２，１２……が接触している。

【００１８】次にその製造方法について説明すると、横
拘束筋１１は、コイルバネ製造機により小ピッチのコイ
ルバネ状に成形しておく。横拘束筋１１にはＰＣ鋼線を
用いる。

【００１９】また、棒材１２は、円環状の横拘束筋１１
を所定の位置に保持するためのものであり、通常は普通
鉄筋を用いるが、この他、その他の金属材料、強化木材
又は合成樹脂等の各種材料を使用できる。

【００２０】そして図２に示すように棒材１２の内側に
横拘束筋１１を支持させて型枠１４内に配筋する。この
配筋に際し、各棒材１２にはコンクリート製のスペーサ
ー１２ａを必要数だけ固定し、型枠１４の内面から所定
の間隔を隔てる。また横拘束筋１１内に所要数の軸方向
に向けたＰＣ鋼材１１，１１……からなる縦筋群１１Ａ
を挿入する。各ＰＣ鋼材１１は一例として予め所定の長
さに切断した後、その両端に雄ねじ１１ａを刻設したも
のを使用する。

【００２１】両筋１０，１１及び棒材１２を型枠１４内
に収容した後、型枠１４の両端稍内側内に端鉄板１６を
組み込む。然る後、棒材１２及びＰＣ鋼材１１の両端を
一対の緊張支圧金具１７，１８の各貫通孔に挿入し、そ
の外側にて各ＰＣ鋼材１１の両端の雄ねじ１１ａに定着
ナット１１ｂを螺嵌する。

【００２２】そして一方の緊張支圧金具１７を型枠１４
の端部に支持させるとともに、他方の緊張支圧金具１８
を型枠１４内に移動自在に挿入し、その中央に引張用ロ
ッド１９を連結しておき、このロッド１９外に成形した
雄ねじ１９ａに定着板２０を螺嵌し、その定着板２０
（図１に示す）を型枠１４の端部に支持させる。

【００２３】このようにして棒材１２及びＰＣ鋼材１１
を所定位置に設置した後、コイルバネ状の横拘束筋１１
を両端鉄板１６，１６間いっぱいに引き伸して所定の螺
旋ピッチとなし、数箇所を各棒材１２に対して結束線２
１により固定する。

【００２４】次いで型枠１４の端部にジャッキ（図示せ
ず）をセットし、ロッド１９を介して一方の緊張支圧金
具１８を引張し、ＰＣ鋼材１１を緊張し、プレストレス
用の引張力を与える。

【００２５】このようにして緊張の後、定着板２０を旋
回させて、その周囲の面が型枠１４の端面に当接するま
で移動させた後、ジャッキによる緊張を解除し、型枠１
４の端部に反力をもたせてジャッキを取り外す。

【００２６】次いで常法により型枠１４内に必要量のコ
ンクリート２２を充填し、遠心成形機にかけて円筒型に
成形し、必要な養生処理を施した後脱型する。

【００２７】なお上述の実施例では、棒材１２として普
通鉄筋を使用した場合を示しているが、この他角棒であ
ってもよく、表面に凹凸のある異形鋼棒を使用してもよ
い。

【００２８】またスペーサーとして、図５に示すように
予め棒材１２の外周面に、モルタル、セメントミルク、
ポリエステル樹脂、更にはエポキシ樹脂による被覆層１
２ｂを被着させておき、これをスペーサーとしてもよ
い。

【００２９】更に、上述の実施例では型枠１４内で横拘
束筋１１を引き伸ばして棒材１２に固定しているが、型
枠１４内に配筋する前に、横拘束筋１１の外側に棒材１
２を固定して籠状にしておいてもよい。

【００３０】更にまた、棒材１２と横拘束筋を分離可能
にしておくとともに、棒材１２を型棒に接触させて配置
しておき、コンクリート打設成形し、脱型した後、杭表
面に露出している棒材１２を取り除き、その取り除き後
の溝をモルタルにて埋めてもよい。

【００３１】

【発明の効果】上述したように本発明の超高曲靭性ＰＣ
杭の製造方法においては、杭の表面近くに円周方向の向
きで配置される横拘束筋を軸方向のＰＣ鋼材と同じ方向
に向けた円筒状配置の棒材の内側に螺旋状の横拘束筋を
支持させることによって、棒材が型枠に対する連続した
スペーサーの役目を果たすこととなり、横拘束筋と棒材
とを固定しなくても、遠心成形時に横拘束筋が外周方向
に膨れ出ることがなく、このため従来のように棒材と横
拘束筋とを多数箇所にて固着し、完全な籠筋状態にする
必要がなくなり、高性能のＰＣ杭の製造を作業性良く行
うことができることとなったものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】型枠内での成形完了後の状態を示す断面図であ
る。

【図２】型枠内への配筋工程を示す断面図である。

【図３】本発明方法によって製造されるＰＣ杭の一例の
縦断面図である。

【図４】図１中のＡ−Ａ線断面図である。

【図５】本発明方法によって製造されるＰＣ杭の他の例
の縦断面図である。

【図６】従来の製造方法の工程を示す断面図である。

【符号の説明】

１０ ＰＣ鋼材 １０ａ 雄ねじ １０ｂ ナット １１ 横拘束筋 １２ 棒材 １２ａ スペーサー １２ｂ 被覆層（スペーサー） １３ フープ筋 １４ 型枠 １６ 端鉄板 １７，１８ 緊張支圧金具 １９ ロッド ２０ 定着板 ２１ 結束筋 ２２ コンクリート

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 円筒状をした型枠内に、その軸方向に向
   けた多数のＰＣ鋼材からなる縦筋群を挿入し、その各Ｐ
   Ｃ鋼材の両端を一対の緊張支圧金具に支持させて、前記
   型枠と同心の円筒状に配置させ、かつ、該縦筋群の外側
   にあって前記型枠の内面に近づけた位置に該型枠との間
   に複数の横拘束筋支持用の棒材を円筒状配置に挿入し、
   該棒材の円筒状内側に前記型枠内面に沿った螺旋状の横
   拘束筋を収容し、然る後前記緊張支圧金具の一方をジャ
   ッキにより引張し、前記縦筋群に所定の緊張力を付与
   し、この状態で内部に充填したコンクリートを遠心成形
   することを特徴としてなる超高曲靭性ＰＣ杭の製造方
   法。
2. 【請求項２】 横拘束筋の外側に横拘束筋支持用の棒材
   を予め固定し、円筒籠状にしたものを使用する請求項１
   に記載の超高曲靭性ＰＣ杭の製造方法。
3. 【請求項３】 横拘束筋は、コイルバネ状に成形したも
   のを所定の螺旋ピッチに引き伸して横拘束筋支持用の棒
   材に固定する請求項１又は２に記載の超高曲靭性ＰＣ杭
   の製造方法。
4. 【請求項４】 棒材の外周面にコンクリート製の被覆層
   を付着させ、該被覆層をスペーサーとなす請求項１に記
   載の超高曲靭性ＰＣ杭の製造方法。
5. 【請求項５】 棒材を型枠内面に接触させた状態に収容
   しておき、遠心成形して脱型後、棒材を取り除き、その
   取り除き後の溝を埋める請求項１に記載の超高曲靭性Ｐ
   Ｃ杭の製造方法。