JPH0643858B2 - Ｖベルト式自動変速機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は自動二輪車や雪上車などに用いられるＶベルト
式自動変速機に関するものである。

〔従来の技術〕 Ｖベルト式自動変速機は、駆動側プーリと従動側プーリ
との間にＶベルトを掛け渡したものであり、前記駆動側
プーリおよび従動側プーリは、それぞれ回転軸に対して
固定された固定プーリプレートとこの固定プーリプレー
トに対向してベルト溝を形成し軸線方向に進退自在な可
動プーリプレートとを有している。そして、前記駆動側
プーリの可動プーリプレートを、この可動プーリプレー
トの背面および周壁に係接し駆動側プーリに伴って回転
するウェイトの遠心力で押動することによって、Ｖベル
トとプーリとのかみ合い半径を連続的に変化させるよう
に構成されている。

特に、このＶベルト式自動変速機は、無段階でスムーズ
な変速比が得られることや構造が簡単であることなどか
ら、近年、スクータをはじめとしてファミリーバイクや
実用バイク、あるいは雪上車などに広く使用されてい
る。

ところで、この種のＶベルト式自動変速機は、回転軸の
回転数の変動に応じて絶えずウェイトが摺動して変速が
行われるため、ウェイトの摩耗が問題となる。このた
め、従来、実開昭５５−１５２９００号公報に開示され
ているように、可動プーリプレートの背面側にグリース
溜めを形成し、グリース等の潤滑剤によって、可動プー
リプレートの背面を摺動する際の摩耗を抑制するように
している。

〔発明が解決しようとする問題点〕

しかしながら、従来のこの種Ｖベルト式自動変速機にお
いては、前記潤滑剤の飛散を防止するカバーが装着され
ているため、ウェイトが収納された空間が外気に触れず
に高温になり、Ｖベルトやウェイトの寿命が短くなると
いう不具合があった。その結果、Ｖベルトを交換する回
数が増える傾向を招いている。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明はこのような事情に鑑みなされたもので、Ｖベル
トなどの部材の寿命の延長化がはかれるＶベルト式自動
変速機を提供するものである。本発明に係るＶベルト式
自動変速機は、可動プーリプレートを押動するウェイト
を自己潤滑性を有する材料から形成するとともに、カム
部材と可動プーリプレートとの少なくとも一方のウェイ
トが係接しない部分に、カム部材と可動プーリプレート
との間に形成されたウェイト収納空間を外部に連通する
通気孔を設けたものである。ここで、自己潤滑性を有す
る材料とは、例えば潤滑油を含浸させた多孔質材や、潤
滑剤を混入した繊維強化樹脂などをいう。

〔作用〕

本発明においては、グリース等の潤滑剤を使用すること
なくウェイトを潤滑するとともに、外部の空気を通気孔
からウェイト収納空間内に流通させてウェイトおよび可
動プーリプレートを冷却する。

〔実施例〕

以下、本発明の一実施例を図により詳細に説明する。第
１図は本発明に係るＶベルト式自動変速機の要部を示す
断面図、第２図は第１図のII−II線断面図で、これらの
図において符号１で示すものはスクータ等のユニットス
イング式エンジンを示す。このエンジン１は前方に配設
されたエンジン本体２と、後方に配設され減速機を介し
て後輪側プーリ軸に接続された図示しない後輪軸と、前
記エンジン本体２の動力をクランク軸３から遠心クラッ
チを介して前記後輪側プーリ軸に伝達するＶベルト式自
動変速機４とが伝動ケース５により一体に保持され、後
輪を懸架する懸架装置の一構成要素として機能してい
る。５ａは伝導ケース５に備えられたファンケースであ
る。

前記Ｖベルト式自動変速機４は、クランク軸３に支承れ
たクランク側プーリ６と、前記後輪側プーリ軸にカラー
を介して回転自在に支承された後輪側プーリと、これら
プーリ間に掛け渡されたＶベルト７などから構成されて
いる。

前記クランク側プーリ６は、クランク軸３に固定された
固定プーリプレート６ａと、この固定プーリプレート６
ａに対向してベルト溝を形成し軸線方向に進退自在な可
動プーリプレート６ｂとを有している。固定プーリプレ
ート６ａおよび可動プーリプレート６ｂは、例えばアル
ミニウム材や鉄材あるいはステンレス鋼材などから傘状
に形成されている。可動プーリプレート６ｂは外周縁に
軸線方向後方に突出する周壁が一体に形成されている。

８は前記可動プーリプレート６ｂ背面側に位置してクラ
ンク軸３上に固定されたカム部材で、このカム部材８
は、例えば鋼板などプレス加工材から傘状に形成され、
外周には複数個のガイド部材９が円周方向に等間隔に嵌
合されている。これらガイド部材９は鞍型状に形成さ
れ、可動プーリプレート６ｂの周壁の内側に円周方向に
等間隔をおいて一体に突設されたガイド部１０にこれを
跨ぐように摺動自在に係合されており、カム部材８に対
して可動プーリプレート６ｂを案内している。

１１はウェイトであり、前記カム部材８と可動プーリプ
レート６ｂとの間に円周方向に間隔をおいて複数個介装
されており、これら両部材のカム面１２，１３によって
径方向に摺動かつ転動自在に挾持されている。換言すれ
ば、ウェイト１１は可動プーリプレート６ｂとカム部材
８との間に形成されたウェイト収納空間Ｓ内に収納され
ており、可動プーリプレート６ｂおよびカム部材８の両
カム面１２，１３に係接されている。これらカム面１
２，１３は、クランク側プーリ６の回転に伴うウェイト
１１の遠心力で、可動プーリプレート６ｂを押動しＶベ
ルト７との噛み合い半径を変化させるように、外径方向
に向かって対向間隔が漸次狭小となるように形成されて
いる。

前記ウェイト１１は自己潤滑性を有する材料から形成さ
れ、第３図に縦断面を拡大して示すように内側に金属材
からなる円筒状の重量調整部材１４が設けられている。
この自己潤滑性を有する材料としては、例えば潤滑油を
含浸させた多孔質材や、潤滑剤を混入した繊維強化樹脂
を用いることができる。

詳述すれば、この場合の樹脂は、ナイロン樹脂，ポリア
セタール樹脂（POM），ポリテトラフルオルエチレン樹
脂（PTFE），ポリブチレンテレフタレート樹脂（PB
T），ポリプロピレン樹脂（PP），ポリエチレン樹脂（P
E），もしくはフェノール樹脂，ポリイミド樹脂などと
される。繊維はガラス繊維，カーボン繊維，もしくはア
ラミド繊維（例えばデュポン社製のケブラー繊維）など
とされる。潤滑剤はポリテトラフルオルエチレン樹脂
（PTFE），黒鉛，二硫化モリブデン（Ｍ_０ Ｓ_２）など
の固体潤滑剤や鉱油などの流体潤滑剤とされる。但し、
前記PTFEは母材がPTFEの場合は使用しない。

１５は前記カム部材８と可動プーリプレート６ｂとの少
なくとも一方のウェイト１１が係接しない部分に設けら
れ、前記ウェイト収納空間Ｓをクランク側プーリ６の外
部に連通する通気孔である。本実施例においては、カム
部材８に断面円形を呈する３個の通気孔１５が設けられ
ており、カム面１３の内縁部であってウェイト１１が係
接しない部位に円周方向に等間隔をおいて配設されてい
る。すなわち、通気孔１５はウェイト１１の円滑な移動
を阻害しない位置に形成されている。この通気孔１５は
カム面１３側にばりが残らないように、カム部材８の内
側から背面側方向に加工されている。

また、カム部材８は可動プーリプレート６ｂの周壁の内
径よりも小さい外径に形成されており、カム部材８の外
周縁と可動プーリプレート６ｂの内周縁との間には、前
記通気孔１５と同様にウェイト収納空間Ｓを外部に連通
する間隙ｇが設けられている。この間隙ｇは、第１図中
鎖線で示すトップ時に、カム部材８と可動プーリプレー
ト６ｂとが軸線方向において離間し最大となるように設
定されている。

このように構成されたＶベルト式自動変速機において
は、遠心力で可動プーリプレート６ｂを押動するウェイ
ト１１を自己潤滑性を有する材料から形成したから、潤
滑剤を供給することなく摩耗が抑制できる。そのため、
従来のように、潤滑剤の飛散を防止するカバーを装着す
る必要がなく、カム部材８をクランク側プーリ６の外部
に露呈させることができる。

また、カム部材８に、ウェイト１１が収納されたウェイ
ト収納空間Ｓを、クランク側プーリ６の外部に連通する
通気孔１５を設けたから、この通気孔１５から外部の空
気をウェイト収納空間Ｓ内に流通させることができる。
実施例においては、カム部材８の外周縁と可動プーリプ
レート６ｂの内周縁との間に、間隙ｇが設けられている
ため、外気の流通量が多くなっている。さらに、間隙ｇ
はトップ時に最大となるように設定されているから、Ｖ
ベルト７などの発熱量が最大となるトップ時に外気の流
通量を最大とすることができる。

したがって、この外気とウェイト８および可動プーリプ
レート６ｂの背面とを接触させ、これら部材の熱を外気
に伝達して冷却することができる。このとき、Ｖベルト
７の熱は冷却された可動プーリプレート６ｂに伝達され
るため、この可動プーリプレート６ｂを介してＶベルト
７も同時に冷却されることになる。

その結果、ウェイト１１やＶベルト７などの部材が高温
になるのを防止し、劣化や摩耗を低減することができ
る。

ここで、前記ウェイト１１の内側は、熱伝導性，熱伝達
性に優れた金属製の重量調整部材１４から形成されてい
るから、この重量調整部材１４を一種の放熱部材として
機能させることができる。これにより、重量調整部材１
４からウェイト１１の熱を外気に伝達して熱放散を円滑
に行い、効果的に冷却することができる。

なお、上記実施例においては、通気孔１５をカム部材８
に設けた例について説明したが、本発明はこれに限定さ
れるものではなく、可動プーリプレート６ｂに通気孔を
設けても同様な作用効果を得ることができ、カム部材８
および可動プーリプレート６ｂ設けてもよい。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明によれば、ウェイトを自己潤
滑性を有する材料から形成するとともに、カム部材と可
動プーリプレートとの少なくとも一方のウェイトが係接
しない部分に、カム部材と可動プーリプレートとの間に
形成されたウェイト収納空間を外部に連通する通気孔を
設けたから、グリース等の潤滑剤を使用することなくウ
ェイトを潤滑し、しかもウェイトの円滑な移動を阻害す
ることなく通気孔から外部の空気をウェイト収納空間内
に流通させ、外気でウェイトおよび可動プーリプレート
を冷却することができる。

したがって、Ｖベルトなどの部材が高温になるのを防止
し、劣化や摩耗が低減できるから、寿命の延長化がはか
れる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るＶベルト式自動変速機の要部を示
す断面図、第２図は第１図のII−II線断面図、第３図は
ウェイトを拡大して示す縦断面図である。 ４……Ｖベルト式自動変速機、６ａ……固定プーリプレ
ート、６ｂ……可動プーリプレート、７……Ｖベルト、
８……カム部材、１１……ウェイト、１５……通気孔。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】固定プーリプレートに対向してベルト溝を
   形成する可動プーリプレートとカム部材との間に介装さ
   れたウェイトを備えたＶベルト式自動変速機において、
   前記ウェイトを自己潤滑性を有する材料から形成すると
   ともに、前記カム部材と前記可動プーリプレートとの少
   なくとも一方のウェイト係接しない部分に、カム部材と
   可動プーリプレートとの間に形成されたウェイト収納空
   間を外部に連通する通気孔を設けてなるＶベルト式自動
   変速機。