JPH0643623B2 - 耐硝酸腐食性の優れたTi−Ta系合金 - Google Patents

耐硝酸腐食性の優れたTi−Ta系合金

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JPH0643623B2
JPH0643623B2 JP61042473A JP4247386A JPH0643623B2 JP H0643623 B2 JPH0643623 B2 JP H0643623B2 JP 61042473 A JP61042473 A JP 61042473A JP 4247386 A JP4247386 A JP 4247386A JP H0643623 B2 JPH0643623 B2 JP H0643623B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、耐硝酸腐食性の優れたTi−Ta系合金に関
するものである。
[従来の技術] 金属Tiは耐硝酸腐食性の比較的良好な金属材料である
ことが知られている。しかし高温高濃度の硝酸中とくに
Tiイオンが蓄積されない硝酸溶液中に金属Tiが曝さ
れる様な条件下では、金属Tiは硝酸によってかなり腐
食される。この様な腐食を抑制する為、従来から環境面
及び材料面の双方から種々検討され色々な技術が提案さ
れている。
環境面から提案されている技術の一例としては、硝酸溶
液中に各種のインヒビター物質を添加する技術を挙げる
ことができる。添加されるインヒビター物質としては、
例えばTiイオン、Cr6+イオン等の酸化剤、
金属Mo又はMo化合物、アクリロニトリル等の有機
高分子化合物、珪酸の様なSi含有化合物等が一般的
によく知られている。しかしながら上述した様な技術
は、金属Tiを硝酸溶液中に単純に浸漬する様な環境下
ではそれなりの効果を得ることができるが、実際的な技
術としては期待されたほどの効果は得られていない。即
ち、金属Tiの耐硝酸腐食性が問題になるのは、例えば
硝酸蒸留回収系のコンデンサー(凝縮器)の様に純度の
高い精製硝酸を得る為のプロセスにおいて、コンデンサ
ーの伝熱管壁面で硝酸及び水の混合蒸気が冷却されて凝
縮する様な箇所である。従って蒸留回収される硝酸中に
蒸気インヒビター物質を添加したとしても、該インヒビ
ター物質が硝酸と共に蒸気系で同時回収されるとは限ら
ず、インヒビター物質を添加する技術自体が理論的に無
意味な場合もあり得る。又上記の様な技術が技術的或は
理論的に可能であったとしても、回収プロセス系の流体
(硝酸溶液)を汚染することになると、当該プロセスの
所期の目的とは完全に相反する結果を招くことになる。
上記した様な事情で、環境面から耐硝酸腐食性の問題を
解決する技術の開発はほぼ不可能であり、材料面から耐
硝酸腐食性の良好な特性を要求する試みがなされている
のが実情である。材料面から提案されている技術として
は、TiにTaを添加した所謂Ti−Ta2元合金(例
えば特公昭43−5980号公報参照)が耐硝酸腐食性
の良好な金属材料として知られており、工業的にはTi
−5%Ta合金が広く実用化されている。確かにTiへ
のTaの添加は耐硝酸腐食性において優れた効果を発揮
し得るものであるが、この様なTi−Ta系合金であっ
ても苛酷な硝酸酸化性の環境下では耐食性が不十分な場
合もあり、より一層良好な耐硝酸腐食性を有する材料の
実現が強く望まれている。
ここで材料面から耐硝酸腐食性を良好にする一手段とし
て、現在工業的に実用化されている添加量(5%程度)
よりもTa添加量を単純に増加させることは容易に思い
付くことである。しかしながらTaの添加効果は、添加
量に対して単純な直線的比例関係にあるのではなく、添
加量が5〜6%程度でほぼ飽和状態となり、それ以上添
加しても思ったほどの効果は得られない。一方コスト的
に見てもTaはTiよりも遥かに高価であり、Taの添
加量に対して直線比例的に上昇する。例えばTi−5%
Ta合金では純Tiの約2倍ものコストを要する。即ち
Ta添加量を5%以上添加してみたところで、コストが
上昇するだけであり、それに見合ったたげの耐硝酸腐食
性の向上は認められない。この様なところから、Ti−
Ta2元合金よりもむしろ安価で且つより耐硝酸腐食性
を向上させた材料の実現が望まれている。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は上記の様な現状に鑑みてなされたものであっ
て、その目的とするところは耐硝酸腐食性の極めて優れ
た金属材料を提供しようとする点にある。
[問題点を解決する為の手段] 本発明は、1≦Ta≦6%(重量%、以下同じ)及び0.
01≦Si≦0.5 %を含み、残部が実質的にTi及び不可
避不純物からなる点に要旨を有するものである。
[作用] 硝酸溶液中における金属Tiの腐食現象は所謂不働態存
在下における反応系であり、酸化被膜(不働態被膜)の
生成速度と溶解速度の大小関係によって金属Tiの耐硝
酸腐食性が左右される。従って金属Tiの耐硝酸腐食性
を良好にするのは、金属Tiの表面に安定強固な不働態
被膜を形成営し、該被膜の溶解をいかにして抑えるかに
かかっている。そしてこのことは、特に金属Tiが接触
する硝酸溶接中のTiイオンの存在が少なくなる様な環
境下においては、最も重要な項目である。即ち、硝酸溶
液中にTiイオンが十分存在すると安定な不働態被膜が
形成する機構は既に解明されているのであるが、Tiイ
オンの存在が少ない硝酸溶液中に金属Tiが常時接触す
る環境下においては金属Tiの耐硝酸腐食性は劣化する
のである。Ti−Ta系合金が良好な耐硝酸腐食性を発
揮するのに前述した通りであるが、これは表面被膜中に
Ta酸化物が濃縮され、Ti酸化物との間の結合反応に
よって何らかの物質を形成し、該物質の作用によって不
働態被膜の溶解が抑えられる為と思われる。
本発明者らはTi−Ta2元合金に代り得る様な耐硝酸
腐食性の良好なTi−X2元合金(X:Ta以外の各種
元素)について種々検討した。しかしながら2元合金で
は、Ti−Ta2元合金と同等或はそれ以上の効果を発
揮するものは得られなかった。即ちTi−X2元合金に
関する限りにおいては、TiにTaを添加した場合のみ
が顕著な耐食性改善効果が認められた訳である。本発明
者らはこの様な状況のもとで上記の現象はTaのみが持
つ固有な特性であると判断し、Tiの耐硝酸腐食性の向
上の為にはTaが基本的に不可欠の元素であると知見の
もとで更に研究を進めた。
その結果、単独でTiに添加しても(前記Ti−X2元
合金)ほとんど効果の得られなかった元素であっても、
Taと共に、(換言すればTi−Ta系合金に)添加し
た場合(Ti−Ta−X系3元合金)には、Taやその
元素を単独で添加した場合の効果及び単純な代数和を想
定した効果と比べて遥かに顕著な効果を発揮する元素が
存在することを見出した。即ちTi−Ta系合金に更に
Siを所定量添加すると、TiにSiを単独添加した場
合の効果と比べて予想し得ない様な著しい複合添加効果
(相乗効果)を発揮し、この様なTi−Ta−Si系合
金は従来では見られない程の耐硝酸腐食性を発揮するこ
とを見出し本発明を完成するに至った。
硝酸溶液中に珪酸等のSi化合物を添加すると金属Ti
の腐食が抑制されることは、既に公知であり種々検討さ
れているのは前述した通りである。そしてこのことによ
って、金属TiにSiを添加するという着想は容易に考
え得るものであるが、Ti−Si2元合金の耐硝酸腐食
性はTi−Ta合金より遥かに劣り純Tiとほぼ変わら
ないものであることも既に知られているところである。
従って本発明は、単独添加効果がほとんどないSiをT
aと共存させてTiに含有させることによって、耐硝酸
腐食性に関して極めて優れた相乗効果を発揮し得たとこ
ろに特筆すべき特徴が存在するものである。
本発明において上記の様な顕著な効果が発揮される理由
の詳細は不明であるが、金属表面における不働態被膜中
への濃縮過程において相互に1種の触媒的作用をもたら
し、夫々の元素の濃縮を促進して安定強固な不働態被膜
の形成に寄与する為であると推定される。
そこで本発明者らは、上記推定を裏付ける為に下記に示
す様な実験を行なった。即ちTi−2%Ta、Ti−0.
2 %Si、Ti−2%Ta−0.2 %Siの各合金試験片
を用い、該試験片を沸騰50%硝酸中に6時間×10回
浸漬した後(各回毎に液を取替える)放射価分析法に従
って表面被膜のオージエ電子分光解析を行ない、各元素
の被膜中へ濃縮の程度を調査した。各合金を用いた場合
の夫々の結果を第2〜4図に示す。尚第2〜4図はT
i,Ta,Si及びOの各元素における被膜厚み方向へ
の存在量比のプロフィルを示すグラフであり、スパッタ
リング時間(横軸)が被膜表面から金属素地に向けての
深さ(距離)に対応し(従ってスパッタリング時間が0
は被膜最表面)、ピーク強度比(縦軸)が各元素の存在
原子数比にほぼ対応する。
第2〜4図の結果から明らかであるが、Ti−Ta−S
i系合金(第4図参照)は、Ta或はSiをTiに単独
で添加した場合(第2図及び第3図参照)と比べてT
a,Siの濃縮が多いことが理解される。これは、上述
した推定を裏付けるものである。
本発明は上述した様にTiにTa及びSiを所定量含有
させることによって、得られたTi−Ta−Si系合金
の耐硝酸腐食性をより一層向上し得たものであるが、T
a及びSiの含有量は1≦Ta≦6%、0.01≦Si≦0.
5 %であることが必要である。
Taの含有量が1%未満では、Siを添加しても相乗効
果は発揮し得ず、耐硝酸腐食性は不十分である。一方T
aの含有量は6%で飽和状態となり、6%を超えて添加
してもそれに応じた効果は得られない。又Siを複合添
加した場合には2元系合金よりもTaの飽和点が低含有
量側に傾き、経済性等をも考慮すると6%が上限であ
る。更にSiの含有量が0.01%未満では、Siを添加し
ただけの効果が得られない。そしてSiの効果をより顕
著に発揮させる為には0.03%以上のSiを含有させるの
が好ましい。又Siの含有量は0.5 %でほぼ飽和状態と
なるのでSiの含有量は0.5 %以下にする必要がある
が、多量のSi添加は金属材の熱間加工性を阻害する傾
向を示すのでその点を考慮すると0.3 %以下にするのが
より好ましい。尚JIS,ASTM等の規格にはSi量
の規定がなく、現在工業的に生産されているTi材料展
伸材には不可避不純物としてのSiが0.002 〜0.006 %
程度含まれているが、本発明におけるSi含有量はこれ
ら不可避不純物を含めた値である。
[実施例] Tiスポンジ、Ti粉末、Ta粉末及びメタSi等を原
料として、真空アーク溶解炉で下記に示す様な各種組成
のTi又はTi合金のインゴットを溶製した。
<Ti又はTi合金組成> 純Ti:Ta,Si無添加、但し不可避不純物としてS
iを0.003 %含む Ti−Ta2元合金:0.5 ≦Ta≦15%、不可避不純
物としてSiを0.002 〜0.005 %含む Ti−Si2元合金:0.01≦Si≦2%、Ta無添加 Ti−Ta−Si3元合金:0.5 ≦Ta≦8%、0.01≦
Si≦1% 溶製したTi又はTi合金を用い、熱間鋳造・熱間圧延
によって板厚3mmの板を製作し、所定の焼鈍熱処理後、
2×15×25(mm)の試験片No.1〜46を得た。得ら
れた試験片No.1〜46を用いて、耐硝酸腐食性試験を
行なった。耐硝酸腐食性試験は、50%及び60%沸騰
硝酸溶液中に前記各試験片No.1〜46を浸漬し、硝酸
蒸気凝縮部を想定して硝酸溶液を6時間毎に新しい液と
取り替え、合計60時間(6時間×10回)行ない、試
験片の重量減少量から腐食速度(mm/年)を算出した。そ
の結果を下記表1表に示す。
第1表の結果に基づいて、各種Ta量レベルにおけるS
i添加量の影響及び各種Si量レベルにおけるTa添加
量の影響を夫々第1図(1) ,(2) に示す。
第1表及び第1図(1) ,(2) の結果からも明らかである
が、本発明で規定される成分範囲(1≦Ta≦6%、0.
01≦Si≦0.5 %)のTi−Ta系合金(Ti−Ta−
Si3元合金)は、従来実用化されているTi−5%T
a合金はもとより、Ti−(8〜15%)Ta合金の腐
食速度と同等若しくはより小さく、極めて優れた耐硝酸
腐食性を有していることが理解される。
[発明の効果] 以上述べた如く本発明によれば、既述の構成を採用する
ことによって、耐硝酸腐食性の極めて優れた金属材料が
実現し得た。
【図面の簡単な説明】
第1図(1) は各種Ta量レベルにおけるSi添加量の影
響を示すグラフ、第1図(2) は各種Si量レベルにおけ
るTa添加量の影響を示すグラフ、第2〜4図はTi,
Ta,Si及びOの各元素における被膜厚み方向への存
在量比のプロフィルを示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1≦Ta≦6%(重量%、以下同じ)及び
    0.01≦Si≦0.5 %を含み、残部が実質的にTi及び不
    可避不純物からなることを特徴とする耐硝酸腐食性の優
    れたTi−Ta系合金。
JP61042473A 1986-02-26 1986-02-26 耐硝酸腐食性の優れたTi−Ta系合金 Expired - Lifetime JPH0643623B2 (ja)

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