JPH0641819A - アルミナ質繊維及びその製造方法 - Google Patents

アルミナ質繊維及びその製造方法

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JPH0641819A
JPH0641819A JP21241492A JP21241492A JPH0641819A JP H0641819 A JPH0641819 A JP H0641819A JP 21241492 A JP21241492 A JP 21241492A JP 21241492 A JP21241492 A JP 21241492A JP H0641819 A JPH0641819 A JP H0641819A
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alumina
yttrium
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spinning
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Shigeyuki Date
重之 伊達
Takashi Shinpo
隆 新保
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Mitsui Mining Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Ti系複合材料の補強材として有用なアルミ
ナ質繊維及びその成形体並びにそれらの製造方法を提供
すること。 【構成】 酸化物基準で35〜95重量%の Al2O3及び
5〜65重量%の Y2O3を含有するイットリウム改質ア
ルミナ質繊維及びアルミナ系繊維の前駆体繊維を低温度
で仮焼した仮焼体繊維あるいはその成形体に、イットリ
ウム化合物を含浸させたのち、焼成するイットリウム改
質アルミナ質繊維あるいはその成形体の製造方法。 【効果】 従来知られていなかったTi系複合材料の補
強材として優れた特性を有するアルミナ質繊維及びその
成形体を、簡単なプロセスにより得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種工業用材料として
好適な Y2O3を含有するイットリウム改質アルミナ質繊
維、その製造方法及びこの繊維よりなるアルミナ質繊維
成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミナ繊維は、高い強度と優れた耐熱
性を有する材料であり、各種の高温耐熱材料、複合材料
の補強材などの分野で広く用いられている。現在市販さ
れているアルミナ繊維の大部分は、オキシ塩化アルミニ
ウムなどの無機塩類あるいはポリアルミノキサン等のア
ルミナ繊維前駆体ポリマ−を主原料とする無機塩法ある
いは前駆体ポリマ−法によって製造されている。これら
の方法においては紡糸時の原料及び得られる繊維の取扱
性を改良するため珪素分を添加しているので、アルミナ
繊維とはいっても、通常10%程度以上のシリカを含ん
でいるアルミナ−シリカあるいはアルミナ−シリカ−ホ
ウ素系セラミックス繊維となっている。このように多量
のシリカ分を含む繊維は、鉄などの金属と反応し、劣化
しやすく、使用分野の制約が多い。
【0003】これに対し、アルミナ微粉末を無機塩類の
溶液中に分散させたスラリ−を紡糸原料とするスラリ−
法では、アルミナ純度95%以上の高純度のアルミナ繊
維を得ることができる。この方法で得られる高純度のア
ルミナ繊維は、シリカ分を含有する繊維に比較して金属
類との反応性は小さいが、それでもチタン、チタン系合
金あるいはチタン化合物に対してはなお反応性を有して
いる。そのため、これらの物質との複合材を製造した場
合、十分な補強効果が得られないという問題があった。
これらのアルミナ繊維に、耐熱性あるいは特定の金属に
対する反応性などを改良する目的でZr、Li、Mg、
Hfなどの金属化合物を添加して改質する方法が種々試
みられている。これらの方法においては、アルミナ繊維
の紡糸原液中に各種金属化合物を混入させて紡糸した
り、一旦製造されたアルミナ繊維に金属化合物を付着さ
せたのち、再度加熱処理するなどの手段が採られている
(特開昭52−114727号公報、特開昭61−18
6517号公報、特開平3−174017号公報な
ど)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のように、アルミ
ナ繊維に金属化合物を添加して改質する場合、均一に混
合させるためには、紡糸原料中に添加するのが好まし
い。しかしながら、一般にアルミナ繊維の紡糸条件の許
容範囲は狭く、特に連続長繊維を製造する場合には紡糸
原液の組成、紡糸ノズルの形状等の装置上の条件、温度
や乾燥条件などの操作上の条件が細かく設定されてい
る。紡糸液中への金属化合物の添加は、曳糸性等の紡糸
性能に悪影響を与え易いので、この方法により金属改質
を行おうとすると、紡糸液の調整に工夫を要する上に、
添加できる金属化合物の種類、添加量はごく限られてし
まうという問題点がある。また、一旦焼成したアルミナ
繊維を金属塩等の溶液中に浸漬させたのち、加熱処理す
る方法では、金属塩等のアルミナ繊維中への浸透が十分
でなく、アルミナ繊維の反応性も小さくなっているた
め、十分な効果が得られにくい。更に、イットリウム化
合物で改質したアルミナ繊維は従来知られていない。本
発明の目的は、航空、宇宙関係機材などの材料として有
用なチタン系複合材料の補強材として好適な新規な組成
を有するアルミナ質繊維を提供すること、及びアルミナ
系繊維の金属改質における前記従来技術の問題点を解決
し、操作が容易で簡単なプロセスにより、金属改質され
たアルミナ質繊維を製造できる方法を提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するべく鋭意検討の結果、高純度アルミナ繊維に
イットリウム化合物を添加して改質した繊維がチタン、
チタン系合金あるいはチタン化合物に対してすぐれた耐
蝕性を示すこと、及び高純度アルミナ繊維の製造過程で
得られる中間製品である仮焼体繊維の段階でイットリウ
ム化合物を含浸させて焼成することにより、容易にイッ
トリウム化合物改質されたアルミナ質繊維が得られるこ
とを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
酸化物基準で35〜95重量%の Al2O3及び5〜65重
量%の Y2O3を含有するイットリウム改質アルミナ質繊
維及び高純度アルミナ繊維前駆体を主成分とする紡糸液
を紡糸して前駆体繊維とし、その前駆体繊維を400〜
1000℃で仮焼して得られる仮焼体繊維に、イットリ
ウム化合物の溶液又はスラリ−を含浸させたのち、焼成
することを特徴とするイットリウム改質アルミナ質繊維
の製造方法並びに高純度のアルミナ繊維前駆体を主成分
とする紡糸液を紡糸して前駆体繊維とし、その前駆体繊
維を400〜1000℃で仮焼して得られる仮焼体繊維
を、必要により成形助剤を用いて成形し、得られた仮焼
体繊維成形体にイットリウム化合物の溶液又はスラリ−
を含浸させたのち、焼成することを特徴とするアルミナ
質繊維成形体の製造方法である。
【0006】ここで「高純度」とはこのアルミナ繊維前
駆体を主成分とする紡糸液を紡糸した前駆体繊維をその
まま焼成した際に得られるアルミナ繊維中のアルミナが
95%以上となるものをいう。また、「仮焼体繊維」と
は、前駆体繊維を400〜1000℃で仮焼した繊維で
あり、溶媒中に分散させた際に繊維の形状が損なわれる
ことがなく、繊維どうしの融着性もないが、仮焼温度よ
り高い1000℃以上の温度で焼成することにより焼結
し得る性状を有する繊維をいう。通常、高純度アルミナ
繊維の製造工程(前駆体−仮焼−焼成(1000℃以
上))における最終の焼成工程を実施する前段階で得ら
れるものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】本発明のイットリウム改質アルミナ質繊維
は、酸化物基準で35〜95重量%の Al2O3及び5〜6
5重量%の Y2O3を含有することを特徴とする。イット
リウムの含有量が5重量%未満では改質効果が不十分で
あり、また、65重量%を超えるとアルミナ質繊維の特
徴が失われるので好ましくない。また、酸化物基準でAl
2O3及び Y2O3のほかに、後記の焼結助剤等に由来する金
属成分を0.1〜10重量%の範囲内で含んでもよい
が、SiO2成分の混入は繊維の耐蝕性を低下させるので好
ましくない。本発明のイットリウム改質アルミナ質繊維
中において、イットリウムは通常 Y3Al5O12(YAG)又は Y
4Al2O9(YAM) の形で存在し、Al2O3とこれらの化合物の
混合物若しくはYAGとYAMの混合物の形で繊維を構
成している。また、これらの成分は通常、繊維中に均質
に分布しているが、外側にイットリウム成分が片寄った
ド−ナツ型あるいは傾斜型の繊維も本発明のイットリウ
ム改質アルミナ質繊維に含まれる。
【0008】本発明のイットリウム改質アルミナ質繊維
は、例えば次のような方法に従って製造することができ
る。先ず、高純度アルミナ繊維の前駆体繊維を製造し、
これを仮焼して仮焼体繊維とする。前駆体繊維を得る方
法は特に限定されるものではなく、無機塩法、前駆体ポ
リマ−法、スラリ−法、ゾル法などが適用できるが、特
に高純度のアルミナ繊維の製造法として実用化されてい
るスラリ−法(特公昭57−27210号公報、特開昭
63−75117号公報など)が好適である。以下、ス
ラリ−法に基づいて本発明の方法を詳細に説明する。先
ず、塩基性アルミニウム塩の水溶液又は水とアルコ−ル
類等の水溶性溶媒との混合溶媒等の水系溶媒溶液中に焼
成後の繊維中の全酸化物量基準で10〜40重量%相当
の平均粒径0.1μm以下のアルミナあるいは焼成によ
りアルミナとなるアルミニウム化合物の粉末、4〜10
重量%相当の紡糸助剤、更に所望により酸化物基準で3
重量%以下の焼結助剤とを含有するスラリ−を紡糸液と
し、これを紡糸、乾燥して前駆体繊維とする。
【0009】ここで使用する塩基性アルミニウム塩とし
ては塩基性塩化アルミニウム、塩基性硝酸アルミニウ
ム、塩基性酢酸アルミニウム、塩基性アルミニウムクロ
ロアセテ−トなどがあげられる。また、紡糸原料の流動
性及び前駆体の安定性を向上させかつ仮焼及び焼成時の
揮発分を少なくし、繊維強度の向上を図るために添加す
る粉末としてはアルミナのほか、ギブサイト、ベ−マイ
ト、バイヤライト、ダイアスポアあるいは擬ベ−マイト
などの焼結によりアルミナとなるアルミニウム化合物を
使用することができる。更に紡糸原料の曳糸性を向上さ
せるための紡糸助剤として、エチレングリコ−ル、グリ
セリン、酢酸等の有機化合物又は、ポリビニルアルコ−
ル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンキシド等の
水溶性有機高分子化合物あるいはこれらの混合物を酸化
物基準で0.1〜10重量%添加する。また、焼結助剤
として CuO、MgO 、ZrO2、PbO 、Cr2O3 、Fe2O3、Mo
O3、及びTiO2の中から選ばれる1種以上の酸化物あるい
は CuSO4、MgCl2 、ZrCl2などの焼成によりこれらの酸
化物となる化合物を添加するのが好ましい。このように
して得られた前駆体繊維は繊維径5〜200μm程度で
あり、これを、酸化雰囲気中で400〜1000℃の比
較的低温度で仮焼して仮焼体繊維とする。仮焼温度は、
前駆体繊維の性状、含浸させる金属化合物の性状や添加
量、目的とするアルミナ質繊維の性状等により、前記温
度範囲内において適宜設定すればよいが、400℃未満
では仮焼処理の間に繊維が融着する虞があり、また、1
000℃を超えると繊維の焼結が進み過ぎて金属化合物
が繊維の内部に浸透しにくくなり、改質効果が小さくな
るので好ましくない。
【0010】このようにして得られた仮焼体繊維にイッ
トリウム化合物を含浸させる。含浸方法としては、仮焼
体繊維をイットリウム化合物の溶液又はスラリ−中に浸
漬させたのち、乾燥して仮焼体繊維にイットリウム化合
物を均一に付着、含浸させる方法が好適である。イット
リウム化合物としては焼成により酸化物に変化するもの
であれば特に制限なく使用できるが、水溶液の形で使用
できるYCl3、Y(NO3)3、YBr3などが好適である。ここで
使用する溶媒としては、取扱の容易さから水が最適であ
るが、使用するアルミナ繊維前駆体の種類、イットリウ
ム化合物の種類や使用量等に応じて、メタノ−ル、エタ
ノ−ル、ジエチレングリコ−ルなどのアルコ−ル系溶
媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒あるいはア
セトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒などの
有機溶媒又はこれらの混合溶媒あるいはこれらの有機溶
媒と水との混合溶媒などを使用することができる。この
含浸操作は仮焼体繊維を適当な長さに切断した後に行っ
てもよいが、紡糸され、仮焼炉を出た仮焼体繊維を連続
的にイットリウム化合物の溶液又はスラリ−中を通過さ
せる方法が効率的である。イットリウム化合物の添加量
は、金属の種類あるいは成形体に要求される特性により
任意に定めることができる。大まかな目安としては、焼
成後の状態で、酸化物基準で5〜65重量%の範囲とな
るような量とする。5重量%未満では効果が小さく、ま
た、65重量%を超えるとアルミナ質繊維としての特性
が小さくなるので好ましくない。
【0011】このようにして得られたイットリウム化合
物を含浸させた仮焼体繊維を、仮焼時よりも高い100
0〜1950°Cの温度で焼成することにより、イット
リウム化合物により改質されたアルミナ質繊維を得るこ
とができる。1000℃未満では焼結が不充分であり、
1900℃を超えると繊維の形状保持に問題を生ずる虞
がある。焼成温度及び焼成時間は、仮焼体繊維及び含浸
させるイットリウム化合物の性状、アルミナ質繊維に要
求される特性等により適宜設定する。この焼成の間に、
イットリウム化合物は繊維の内部へ浸透していき、アル
ミナ質繊維が改質される。本発明の方法では、未だ完全
に焼結していない仮焼体繊維の段階でイットリウム化合
物を含浸させ、焼成しているので、イットリウム化合物
が繊維内部に浸透しやすく、また、反応性も高いので、
繊維は均質に改質されている。通常は内部まで均質に改
質するのが望ましいが、必要により、繊維の表面近傍の
みが改質されたド−ナツ構造あるいは傾斜構造の状態で
止めてもよい。
【0012】本発明の方法は、綿状の短繊維あるいは連
続長繊維のいずれにも適用できるが、特に紡糸条件の難
しい連続長繊維の製造に適している。本発明の特に好ま
しい態様は、アルミナ長繊維の連続的に製造する方法に
おいて、仮焼工程と焼成工程の間に金属化合物の溶液又
はスラリ−に浸漬する工程を設け、紡糸−仮焼−浸漬−
焼成の工程を連続して行う方法である。本発明のイット
リウム改質アルミナ質繊維は、短繊維、長繊維、チョッ
プドファイバ−、紐状、織物など任意の形状で使用する
ことができるが、適宜成形助剤、バインダ−成分等を用
いて成形した多孔質成形体も有用である。従来、アルミ
ナ質繊維等の無機繊維の成形体を製造する場合には、無
機繊維のチョップドファイバ−を各種バインダ−成分を
用いて焼結させ、成形する方法がとられているが、本発
明のイットリウム改質アルミナ質繊維の製造過程で得ら
れる仮焼体繊維を使用することにより、より簡単なプロ
セスにより良好な品質の成形体を得ることができる。
【0013】すなわち、前記のようにして得られた仮焼
体繊維を0.1〜100mmの長さに調整したのち、成
形し、仮焼体繊維成形体とする。繊維の長さは目的とす
る用途に応じて適宜設定すればよい。仮焼体繊維の長さ
の調整は仮焼体繊維の状態で切断してもよいが、前駆体
繊維の状態で長さを調整したのち仮焼してもよい。この
ように長さを調整した仮焼体繊維を必要により成形助剤
を添加した溶媒中に分散させてスラリ−とし、これを抄
造、濾過、蒸発などの方法により成形し、過剰の溶媒を
除去し、更に必要により加圧処理などの手段を施すこと
により仮焼体繊維成形体とする。仮焼体繊維成形体の形
状は、適当な型枠中で溶媒除去を行うか、成形体の段階
で切削加工を行う等の方法によりシ−ト状、ボ−ド状、
柱状、筒状あるいはハニカム状など任意の形状とするこ
とができる。
【0014】ここで使用する溶媒としては、取扱の容易
さから水が最適であるが、使用するアルミナ繊維前駆体
の種類に応じて分散性や揮発性等を勘案し、メタノ−
ル、エタノ−ル、ジエチレングリコ−ルなどのアルコ−
ル系溶媒、ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒ある
いはアセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒
などの有機溶媒又はこれらの混合溶媒あるいはこれらの
有機溶媒と水との混合溶媒を使用することができる。ま
た、成形工程において必要により使用する成形助剤は、
成形性及び成形体の物性を改良する効果があり、例えば
ポリビニルアルコ−ル、ポリビニルメチルエ−テル、ポ
リアクリル酸アミド、ポリエチレングリコ−ル、ポリビ
ニルピロリドン、グリセリン、酢酸セルロ−ス、メチル
セルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス、アルギン酸
等が挙げられる。
【0015】このようにして得られた仮焼体繊維成形体
に、イットリウム化合物の溶液又はスラリ−を含浸させ
たのち、乾燥して仮焼体繊維にイットリウム化合物を均
一に浸透、付着させる。イットリウム化合物としては焼
成により酸化物に変化するものであれば特に制限なく使
用できるが、水溶液の形で使用できるYCl3、Y(NO3)3、Y
Br3などが好適である。この含浸操作は成形体を乾燥後
に行ってもよいが、乾燥する前の湿潤状態の仮焼体繊維
成形体について行うのが溶液又はスラリ−の親和性が良
好であり好ましい。なお、成形助剤やイットリウム化合
物は、仮焼体繊維の分散時に添加することもできるが、
添加効率(歩留り)及び分散性の点から、成形後に含浸
させるのが有利である。ここで使用する溶媒としては、
前の成形工程と同じ溶媒が挙げられるが、ここでも、水
が最適である。イットリウム化合物の添加量は、成形体
に要求される特性により任意に定めることができるが、
大まかな目安としては、焼成後の状態で、酸化物基準で
5〜65重量%の範囲となるような量とする。5重量%
未満では効果が小さく、また、65重量%を超えるとア
ルミナ質繊維としての特性が小さくなるので好ましくな
い。
【0016】このようにして得られたイットリウム化合
物を含浸させた仮焼体繊維成形体を、仮焼時よりも高い
1000〜1950°Cの温度で焼成することにより、
イットリウム化合物により改質されたアルミナ質繊維成
形体を得ることができる。1000℃未満では焼結が不
充分であり、1900℃を超えると成形体の形状保持に
問題を生ずる虞がある。焼成温度及び焼成時間は、仮焼
体繊維及び含浸させるイットリウム化合物の性状、成形
体の大きさ及び形状、アルミナ質繊維成形体に要求され
る特性等により適宜設定する。
【0017】本発明の方法によって得られるイットリウ
ム改質アルミナ質繊維成形体は、仮焼体繊維の段階で成
形し、金属化合物を含浸させたのち焼成しているので、
繊維間の接着が強固で5〜80kg/cm2の圧縮強度
を有しており、嵩密度が0.05〜1.0g/cm3
軽量で、微細な気孔が均一に分布した気孔率70〜98
%の多孔体であり、任意の形状に切削加工が可能であ
る。本発明におけるイットリウム改質アルミナ質繊維及
びその成形体は、各種金属化合物に対する耐蝕性が著し
く良好であり、各種金属強化金属の補強材、金属処理用
セッタ−材などに好適な材料である。また、特にチタ
ン、チタン系合金あるいはチタン化合物に対してすぐれ
た耐蝕性を有しており、これらをマトリックス成分とす
る繊維強化金属材料の補強材として使用した場合に、理
論値に近い補強効果を得ることができる。
【0018】
【実施例】以下実施例により本発明の方法を更に具体的
に説明する。 (実施例1)塩化アルミニウム4.2重量部、無水塩基
性塩化アルミニウム46.7重量部、平均粒径0.02
μmのγ- アルミナ微粉末10.2重量部及び塩化マグ
ネシウム0.43重量部を水34重量部に溶解、分散さ
せ、このスラリ−にポリエチレンオキシド(平均分子量
約100万)4.5重量部を添加し充分混合して紡糸原
液とした。この原液を紡糸し、繊維径20μmの前駆体
繊維を得た。この前駆体繊維を最高温度が900°Cの
電気炉内を滞留時間1分間で通過させて仮焼体繊維とし
た。この仮焼体繊維を、巻取ることなく4mol/lの
濃度の Y(NO3)3水溶液中を通過させて含浸させ、乾燥帯
域を通して乾燥後、更に1450℃に調整した焼成炉中
を滞留時間1分間で通過させてアルミナ質繊維を得た。
得られたアルミナ質繊維は、酸化物基準で約43重量%
の Al2O3及び約57重量%の Y2O3を含有する Y3Al5O12
(YAG)タイプの繊維であった。
【0019】(実施例2)4mol/lの濃度の Y(N
O3)3水溶液の代りに3mol/lの濃度の YCl3水溶液
に3重量%のポリビニルアルコ−ルを添加した水溶液を
使用し、焼成条件を1500℃で2分間としたほかは実
施例1と同様に操作し、アルミナ質繊維を得た。得られ
たアルミナ質繊維は、酸化物基準で80重量%の Al2O3
及び20重量%の Y2O3を含有する Al2O3-Y4Al2O9(YAM)
タイプの複合酸化物繊維であった。
【0020】(比較例1)実施例1と同様にして得られ
た仮焼体繊維を1500℃で1分間加熱焼成してAl2O3
分99.7重量%のアルミナ質繊維を得た。実施例1、
2及び比較例1で得た繊維をそれぞれ長さ3mmにカッ
トし、この繊維とTi粉末(325メッシュ)とを体積
比で3:7の割合で均一に混合した。この混合物をCI
Pにより成形し、窒素雰囲気中で1450℃で6時間保
持し焼結させた。この焼結体を押出し比7、800℃の
条件で熱間押出ししTi複合材を得た。これらの試料の
引張強度はそれぞれ36、33及び5kg/mm2であ
った。この結果から(材料強度)/(理論強度)×10
0(%)で表される強化効率を計算するとそれぞれ、8
0%、70%及び10%であり、本発明のイットリウム
改質アルミナ質繊維はTi合金との反応が抑制されてお
り、比較例1の純アルミナ繊維に比較して、著しく高い
強化効率が得られていることがわかる。
【0021】(実施例3)実施例1で作製したのと同じ
前駆体繊維を長さ5.5mmに切断したもの700gを
電気炉内に入れ、最高温度700℃で2時間保持し仮焼
体繊維とした。この仮焼体繊維150gを、水30リッ
トルに分散させたのち、濾過、抄造した。抄造後、水5
00ミリリットルに塩化イットリウム97g、ポリビニ
ルアルコ−ル25gを溶解させた水溶液を十分含浸させ
たのち、乾燥させ、100×100×70mmの塩化イ
ットリウムを含浸させた仮焼体繊維成形体を得た。これ
を1450℃で8時間加熱し、焼結させた。得られた成
形体は、 Y4Al2O9(YAM) : Y3Al5O12(YAG)=1:3の組
成の複合酸化物で、嵩密度0.4g/cm3、気孔率9
1%の多孔体であった。
【0022】(比較例2)市販のアルミナ繊維(綿状、
アルミナ純度97%)を長さ5mmに切断したもの41
0gを水15リットルに分散し、ポリビニルアルコ−ル
210g、アルミナゾル3kgを添加したのち、濾過、
抄造して250×250×20mmの成形体を得た。こ
れを100℃/hrの昇温速度で1500℃まで昇温
し、4時間保持して焼成した。得られた焼結体は、アル
ミナ96.5%でかさ密度0.35g/cm3、気孔率
91%の多孔体であった。
【0023】実施例3及び比較例2で製造したアルミナ
質繊維成形体を用いて溶湯温度1750℃で真空鋳造し
てTi複合材を得た。これらの試料の引張強度はそれぞ
れ19及び3kg/mm2であった。この結果から(材
料強度)/(理論強度)×100(%)で表される強化
効率を計算するとそれぞれ、80%び10%であり、本
発明のイットリウム改質アルミナ質繊維成形体はTi合
金との反応が抑制されており、比較例2の純アルミナ繊
維成形体に比較して、著しく高い強化効率が得られてい
ることがわかる。
【0024】
【発明の効果】本発明のイットリウム改質アルミナ質繊
維及びその成形体は、各種金属化合物に対する耐蝕性が
著しく良好であり、各種金属強化金属の補強材、金属処
理用セッタ−材などに好適な材料である。また、特にチ
タン、チタン系合金あるいはチタン化合物に対してすぐ
れた耐蝕性を有しており、これらをマトリックス成分と
する繊維強化金属材料の補強材として使用した場合に、
理論値に近い補強効果を得ることができる。本発明の繊
維製造方法によれば、イットリウム化合物を任意の割合
で添加して改質したアルミナ質繊維で構成され、しかも
繊維どうしが強固に焼結したアルミナ質繊維成形体を、
簡単なプロセスにより得ることができる。更に、本発明
の成形体製造方法では、仮焼体繊維の段階で成形し、イ
ットリウム化合物を含浸させたのち焼成しているので、
繊維間の接着は強固である。また、仮焼体繊維は従来法
における前駆体繊維に比較して保存性や溶液中での分散
性が良好で、成形時の取扱いも容易な上、得られた仮焼
体繊維成形体の焼成時の収縮率も小さく形状保持性がよ
いため、前駆体繊維を使用する場合よりも大型あるいは
複雑な形状の成形体を得ることができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化物基準で35〜95重量%の Al2O3
    及び5〜65重量%の Y2O3を含有するイットリウム改
    質アルミナ質繊維。
  2. 【請求項2】 高純度アルミナ繊維前駆体を主成分とす
    る紡糸液を紡糸して前駆体繊維とし、その前駆体繊維を
    400〜1000℃で仮焼して得られる仮焼体繊維に、
    イットリウム化合物の溶液又はスラリ−を含浸させたの
    ち、焼成することを特徴とするイットリウム改質アルミ
    ナ質繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】 高純度アルミナ繊維前駆体を主成分とす
    る紡糸液を紡糸して前駆体繊維とし、その前駆体繊維を
    400〜1000℃で仮焼して得られる仮焼体繊維を、
    イットリウム化合物の溶液又はスラリ−中に通してイッ
    トリウム化合物を含浸させたのち、焼成することを特徴
    とするイットリウム改質アルミナ質繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 高純度アルミナ繊維前駆体を主成分とす
    る紡糸液が、塩基性アルミニウム塩を水又は水系溶媒に
    溶解させた溶液に、アルミナあるいは焼成によりアルミ
    ナとなるアルミニウム化合物の粉末を添加し、更に必要
    により焼結助剤あるいは紡糸助剤を添加したスラリ−で
    ある請求項2又は3に記載のイットリウム改質アルミナ
    質繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 高純度のアルミナ繊維前駆体を主成分と
    する紡糸液を紡糸して前駆体繊維とし、その前駆体繊維
    を400〜1000℃で仮焼して得られる仮焼体繊維
    を、必要により成形助剤を用いて成形し、得られた仮焼
    体繊維成形体にイットリウム化合物の溶液又はスラリ−
    を含浸させたのち、焼成することを特徴とするアルミナ
    質繊維成形体の製造方法。
  6. 【請求項6】 高純度アルミナ繊維前駆体を主成分とす
    る紡糸液が、塩基性アルミニウム塩を水又は水系溶媒に
    溶解させた溶液に、アルミナあるいは焼成によりアルミ
    ナとなるアルミニウム化合物の粉末を添加し、更に必要
    により焼結助剤あるいは紡糸助剤を添加したスラリ−で
    ある請求項5に記載のアルミナ質繊維成形体の製造方
    法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105418165A (zh) * 2015-11-09 2016-03-23 东莞华晶粉末冶金有限公司 一种氧化铝复合晶须及其制备方法、复合材料
CN108315838A (zh) * 2018-02-06 2018-07-24 山东大学 一种钇聚合物前驱体制备氧化钇纳米纤维的方法
US11572314B2 (en) * 2017-04-10 2023-02-07 Shandong University Preparation method for yttrium aluminum garnet continuous fiber

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