JPH0641710Y2 - ガス抜き機構を備えた金型装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案はガス抜き機構を備えた金型装置に関し、一層詳
細には、真空鋳造装置において、鋳造製品を得るための
キャビテイの周囲にガス抜き用通路を周回させ且つ前記
ガス抜き用通路とキャビテイとを湯溜まり部を画成した
複数のガス排出路で連通すると共に、このガス排出路の
断面積を真空吸引源に遠いものほど大きくなるように画
成し、これによってガス排出効率、溶湯湯溜まり性およ
び溶湯の充填性を一層向上させ、その結果、鋳造品質の
優れた製品を得ることが可能となるガス抜き機構を備え
た金型装置に関する。

［考案の背景］ 鋳造製品を得るために金型内に画成されたキャビテイを
真空吸引源に連通し、溶湯注湯時に当該キャビテイを負
圧にして、すなわち、真空吸引源を付勢してキャビテイ
内のガスを排出することを可能とした真空鋳造装置が広
範に用いられている。そこで、この真空鋳造装置に用い
られているガス排出機構としては、キャビテイの溶湯
最終充填部に複雑な形状のガス抜き溝を設け、このガス
抜き溝を介して排出すべきガスを通過させる一方、溶湯
がこのガス抜き溝に到達する時、溝内で凝固させるよう
に構成したもの、あるいは、キャビテイの最終充填部
にガス抜き溝を設け、このガス抜き溝に対応して弁機構
を配設し、溶湯がガス抜き溝に到達した時前記弁機構を
付勢して弁本体を閉成するように構成したものがある。

然しながら、のガス抜き溝を複雑に画成する構成にお
いては、その溝形状に起因してキャビテイ内において十
分な減圧度を得ることが出来ない。一方、の構造のも
のでは溶湯が射出スリーブから最終充填部のガス抜き溝
に到達するまでの間、キャビテイ内のガスを排出するこ
とは可能であるが溶湯の充填経路とガス抜き溝との配置
がキャビテイの形状によっては整合させることが困難と
なり、これによってもキャビテイ内のガスを十分に排気
することが出来ない。しかも、弁機構を別途設けなけれ
ばならず、構造が複雑化するという欠点も指摘されてい
る。

従って、以上のような構成のガス抜き機構にあっては、
結局、射出スリーブから送られてくる溶湯がランナ、キ
ャビテイ等の内部に存在するガスを巻き込み、その結
果、製品にガスに起因する欠陥、湯回り不良等が惹起し
十分な品質の鋳造製品を得ることが困難である。しか
も、真空鋳造装置では、強制的にキャビテイの内部を負
圧にしてガスを排出するよう構成されているために、金
型の合わせ面からも空気がキャビテイの内部に浸入し、
金型内のガス抜きを行ってもキャビテイに十分な減圧度
を確保することは困難である。また、この空気もガスに
よる欠陥、湯回り不良等の原因となっている。

［考案の目的］ 本考案は前記の種々の不都合を克服するためになされた
ものであって、金型内に画成されたキャビテイの外周部
分にこのキャビテイの全周を囲繞するガス抜き用通路を
画成し、このガス抜き用通路とキャビテイとを湯溜まり
部を有するガス排出路で連通し、このガス排出路の断面
積を徐々に真空吸引源から遠のくにつれてその近傍のガ
ス排出路の断面積よりも大きくなるように画成し、これ
によってキャビテイ内のガスをキャビテイ全周から均一
に外部に排出するよう構成し、しかも、金型の合わせ面
からキャビテイに浸入しようとする空気をキャビテイを
囲繞するガス抜き用通路から強制的且つ容易に排気し、
それによってガス欠陥のない、また、湯回り不良も生じ
ることのない、従って、品質に優れた鋳造品を得ること
が可能なガス抜き機構を備えた金型装置を提供すること
を目的とする。

［目的を達成するための手段］ 前記の目的を達成するために、本考案は、ホイール形状
を有するとともに、該ホイールのハブ部の中心に対応し
て注湯口が設けられたキャビテイと、 前記ホイールのリム部外周両側に対応して設けられ、前
記キャビテイの全周を囲繞するガス抜き用通路と、 前記ガス抜き用通路に連通接続されるガス排出系と、 前記ガス抜き用通路と前記キャビテイとの間に相互に所
定間隔離間して設けられる複数の湯溜まり部と、 夫々の湯溜まり部を前記ガス抜き用通路と前記キャビテ
イとに連通する複数のゲートと、 を備え、 前記ガス排出系から離間する位置に設けられたゲート
は、該ガス排出系に近接する位置に設けられたゲートよ
りも大きな断面積に設定されることを特徴とする。

［実施態様］ 次に、本考案に係るガス抜き機構を備えた金型装置につ
いて好適な実施態様を挙げ、添付の図面を参照しながら
以下詳細に説明する。

第１図において、参照符号10は本考案に係る金型装置を
示し、この金型装置10は固定金型12と、可動金型14と、
前記固定金型12並びに可動金型14の間に変位自在に設け
られる摺動型16とから基本的に構成されている。固定金
型12には溶湯を注湯するための注湯口18を画成した射出
スリーブ20が固着され、この射出スリーブ20の内部を図
示しないシリンダによって変位するプランジャチップ22
が設けられている。固定金型12にはさらに前記プランジ
ャチップ22によって射出される溶湯をキャビテイに導く
ための通路24が画成されると共に、この通路24はさらに
ゲート26と連通している。ゲート26の先端部は固定金型
12、可動金型14および摺動型16によって画成されるキャ
ビテイ30に臨む。

第１図に示す実施態様においては、このキャビテイ30は
自動二輪車用ホイールの形状を示しており、その中央部
分にこのホイールのハブ部に対応するハブ部位31aを有
し、その外周部に該ホイールのリム部に対応するリム部
位31bを有している。

そこで、このキャビテイ30の端部外周部にはさらに周回
するように第１のガス抜き用通路32と第２のガス抜き用
通路34とが夫々設けられる。第１ガス抜き用通路32は固
定金型12と摺動型16との間に設けられ、一方、第２ガス
抜き用通路34は可動金型14と摺動型16との間に画成され
ている。前記第１ガス抜き用通路32は第１の排気通路36
を介して、また、第２ガス抜き用通路34は第２の排気通
路38を介して真空ポンプからなる吸引源40に連通してい
る。

そこで、第２図並びに第３図に第１ガス抜き用通路32に
ついてその詳細を示す。なお、第２ガス抜き用通路34も
この第１ガス抜き用通路32と実質的に同一の構成である
ためにその詳細な説明は省略する。

第２図から容易に諒解されるように、円形状のキャビテ
イ30の周囲には第１ガス抜き用通路32が周回すると共
に、その両端部は第１排気通路36に連通する分岐路50
a、50bと連通状態にある。キャビテイ30と第１ガス抜き
用通路32との間には夫々等間隔に複数の湯溜まり部52a
乃至52eが画成され、湯溜まり部52aは第１のゲート54a
と第２のゲート56aを介して夫々第１ガス抜き用通路32
とキャビテイ30とに連通している。この場合、第４図か
ら諒解されるように、湯溜まり部52aの断面積を第１ゲ
ート54a、第２ゲート56aよりも大きく選択している。

第５図は第２の湯溜まり部とゲートとの関係を示す。す
なわち、第２湯溜まり部52bは前記と同様に第１ガス抜
き用通路32と連通するゲート54bとキャビテイ30と連通
するゲート56bとを有し、湯溜まり部52bはゲート54b、5
6bよりもその断面積を大きくなるように選択されてい
る。然しながら、ゲート54a、56aとゲート54b、56bとを
比較すれば容易に諒解されるように、寧ろ、このゲート
54b、56bは夫々ゲート54a、56aよりもその断面積が大き
く形成されている。

さらに、第６図は湯溜まり部52cとゲート54c、ゲート56
cの縦断面を示している。この場合においても、湯溜ま
り部52cは前記湯溜まり部52a、52bと実質的に同一の断
面積を有するが、ゲート54c、56cはゲート54a、56aより
もその断面積において大きく、実質的にゲート54cはゲ
ート54aの２倍の断面積を有する。同様に、ゲート56cは
ゲート56aよりもその断面積において大きく、ゲート56c
はゲート56aの２倍の断面積を有する。湯溜まり部52d
は、実質的に、湯溜まり部52bと同一の形状であり、ま
た、ゲート54dはゲート54bと同一の断面積である。一
方、ゲート56dはゲート56bと実質的に同一の断面積を有
し、さらに、湯溜まり部52eは湯溜まり部52aと同一の形
状を有し、ゲート54eはゲート54aと同一の断面積であ
り、また、ゲート56eはゲート56aと同一の断面積であ
る。

以上の構成から容易に諒解されるように、第１排気通路
36、すなわち、実質的には、吸引源40から遠のくにつれ
てゲートの断面積を吸引源40の近傍のものより大きくな
るように形成している。これが本考案の特徴事項の１つ
である。

なお、可動型14についても同様の構成が採用されること
は勿論である。

本考案に係るガス抜き機構を備えた金型装置は基本的に
は以上のように構成されるものであり、次にその作用並
びに効果について説明する。

固定金型12、可動金型14、摺動型16を夫々所定温度に予
め加温しておき、射出スリーブ20の注湯口18からアルミ
ニウム合金からなる溶湯を注入する。そして、プランジ
ャチップ22を図示しないシリンダの付勢作用下に変位さ
せて当該アルミニウム合金を通路24、ゲート26を介して
キャビテイ30内に射出する。その際、吸引源40を付勢し
てキャビテイ30内の空気あるいはガスを外部へと排出す
る。すなわち、キャビテイ30内に存在する空気若しくは
ガスはゲート56a乃至56eを介して、一旦、湯溜まり部52
a乃至52eに到達し、さらに、ゲート54a乃至54eを介して
第１ガス抜き用通路32に到達する。吸引源40の吸引作用
下にさらにこの第１ガス抜き用通路32に到達した空気若
しくはガスは分岐路50a、50bを介して第１排気通路36に
到達し、第２排気通路38から排出される空気若しくはガ
スと共に吸引源40を介して外部へと導出される。

その際、吸引源40よりも遠方にある程湯溜まり部と連通
するゲートの断面積は大きく選択されている。従って、
空気抵抗はその分少なくて済むためにキャビテイ30内の
ガス若しくは空気は均一且つ容易に第１ガス抜き用通路
32に到達することが可能である。一方、吸引源40に近い
湯溜まり部ではゲートの断面積がたとえ遠方のものより
も小さくとも吸引源40の吸引力がより一層強力に作用す
るために同様にして容易にキャビテイ30のガス若しくは
空気を第１ガス抜き用通路32、第２ガス抜き用通路34に
到達させることが出来る。

このようにして吸引源40からガス若しくは空気が排出さ
れれば、キャビテイ30に射出される溶湯にはガス若しく
は空気の巻き込みもなく良好な品質の鋳造品を得ること
が可能となる。すなわち、第１図並びに第３図に示すよ
うに、射出スリーブ20のプランジャチップ22の押動作用
下に射出された溶湯は通路24、ゲート26を介してキャビ
テイ30に到達し、次いで、ゲート56a乃至56eを通過して
湯溜まり部52a乃至52eに到達する。これによって、キャ
ビテイ30内に十分な溶湯が確保される。

なお、前記のように、吸引源40を付勢して強制的にキャ
ビテイ30からガス若しくは空気を外部へと排出させよう
とする時、固定金型12と可動金型14の金型合わせ面から
空気がこのキャビテイ30内に浸入しようとする。然しな
がら、このキャビテイ30の周囲には周回するようにガス
抜き用通路32、34が配設されており、従って、この第１
ガス抜き用通路32、第２ガス抜き用通路34に先ず外部か
らの空気が浸入することになる。従って、この空気は第
１ガス抜き用通路32、第２ガス抜き用通路34を介して吸
引源40に吸引され外部へ排出される。すなわち、実質的
にキャビテイ30内に空気が到達することは阻止される。
なお、実験によれば、ゲート54a、56aの断面積をゲート
54c、56cの断面積よりも約1/2にすることによってキャ
ビテイ30内のガスがより一層効果的に排出されることが
確認された。

［考案の効果］ 以上のように、本考案によれば、キャビテイの周囲にガ
ス抜き用通路を配設し、且つこのガス抜き用通路とキャ
ビテイとを連通するゲートを吸引源から遠のくにつれて
近傍のそれよりもその断面積を大きくするように選択し
ている。そして、溶湯の射出時に予めキャビテイ内のガ
ス若しくは空気をこのガス抜き用通路を介して外部へと
強制的に排出するように構成している。すなわち、キャ
ビテイの周囲から均一にキャビテイ内のガス若しくは空
気を外部へ排出することが可能となるために、たとえ、
複雑な形状のキャビテイであってもその内部に空気溜ま
り等を生ずることがなく、しかも、空気若しくはガスの
巻き込みのない鋳造品を得ることが出来る。実質的に、
これは鋳造品質の優れた製品を得ることが可能となるこ
とを意味する。さらにまた、強制的にガス若しくは空気
をキャビテイの外部に排出する構成のものにあって必然
的に懸念されてくる外部の空気のキャビテイへの浸入を
前記周回するガス抜き用通路を介して同様に強制的に外
部に排出することが可能となる。これによって鋳造品質
の一層優れた製品を得ることが可能となる効果が得られ
る。

以上、本考案について好適な実施態様を挙げて説明した
が、本考案はこの実施態様に限定されるものではなく、
本考案の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良並び
に設計の変更が可能なことは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る金型装置の縦断概略説明図、 第２図は本考案に係る金型装置におけるキャビテイとガ
ス抜き用通路と湯溜まり部とゲートとの相関関係を示す
正面概略説明図、 第３図は本考案に係るガス抜き用通路とキャビテイの相
関関係を示す縦断説明図、 第４図乃至第６図は本考案に係るガス抜き用通路とキャ
ビテイと湯溜まり部とゲートの相関関係、特に、吸引源
から遠のくにつれてゲートの断面積が大きくなる構成を
示す説明図である。 10……金型装置、12……固定金型 14……可動金型、16……摺動型 30……キャビテイ、32、34……ガス抜き用通路 40……吸引源、52a〜52e……湯溜まり部 54a〜54e、56a〜56e……ゲート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 白石 武三 埼玉県狭山市新狭山１―10―１ ホンダエ ンジニアリング株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−104659（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−250867（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ホイール形状を有するとともに、該ホイー
   ルのハブ部の中心に対応して注湯口が設けられたキャビ
   テイと、 前記ホイールのリム部外周両側に対応して設けられ、前
   記キャビテイの全周を囲繞するガス抜き用通路と、 前記ガス抜き用通路に連通接続されるガス排出系と、 前記ガス抜き用通路と前記キャビテイとの間に相互に所
   定間隔離間して設けられる複数の湯溜まり部と、 夫々の湯溜まり部を前記ガス抜き用通路と前記キャビテ
   イとに連通する複数のゲートと、 を備え、 前記ガス排出系から離間する位置に設けられたゲート
   は、該ガス排出系に近接する位置に設けられたゲートよ
   りも大きな断面積に設定されることを特徴とするガス抜
   き機構を備えた金型装置。