JPH0641425B2 - う蝕予防剤 - Google Patents

う蝕予防剤

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JPH0641425B2
JPH0641425B2 JP59232353A JP23235384A JPH0641425B2 JP H0641425 B2 JPH0641425 B2 JP H0641425B2 JP 59232353 A JP59232353 A JP 59232353A JP 23235384 A JP23235384 A JP 23235384A JP H0641425 B2 JPH0641425 B2 JP H0641425B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はストレプトコッカス・ミュータンス菌の全菌体
又は菌体成分を動物に免疫して得られる抗体を配合する
ことにより、歯垢の形成を抑制してう蝕を予防すること
ができるう蝕予防剤に関し、更に詳述すれば抗体を長期
間安定に保持し、それ故抗体の効果を長期に亘って確実
に発揮させることができるう蝕予防剤に関する。
従来技術及びその問題点 歯の表面に付着する歯垢は、約70%が細菌、約20%
が細菌により形成された多糖及び約10%が食物残渣で
あり、固く歯面にこびりついている。そして、その内部
に貯えられた酸がエナメル質を脱灰し、う蝕を引き起す
といわれており、歯垢はう蝕の原因として注目されてい
る。
この歯垢は主にストレプトコッカス・ミュータンスを中
心とする口腔内細菌がショ糖から多糖を合成することに
よって形成が促進される。即ち、ストレプトコッカス・
ミュータンスはGTF(グルコシルトランスフェレース
・デキストラン合成酵素)を産生し、これによりショ糖
からデキストラン、ムタン等の粘着性多糖を合成する。
そして、この合成された多糖はストレプトコッカス・ミ
ュータンスをはじめ、他の菌(病原菌)を巻き込み、一
定の菌叢を有する歯垢を形成する。また、ストレプトコ
ッカス・ミュータンス等の菌は種々の糖を利用して酸を
産生し、この酸は多糖及び菌の壁の中に滞留することに
より、エナメル表面を脱灰していく。
従って、う蝕を予防するためには、その大きな原因とさ
れているストレプトコッカス・ミュータンス数の抑制、
歯垢の形成を抑制、阻害することが望まれる。
従来、ストレプトコッカス・ミュータンスの口腔内への
定着を抑制する方法として、ストレプトコッカス・ミュ
ータンス全菌体を牛に免疫することによって得られる母
乳を使用する方法が知られている(英国特許第1505
513号明細書)。
本発明者らもストレプトコッカス・ミュータンスに由来
する各種の抗原に対する抗体の中でストレプトコッカス
・ミュータンス菌の口腔内の定着を阻害する抗体の検討
を行なった。その結果、ストレプトコッカス・ミュータ
ンス菌、該菌の細胞壁画分、該菌の線維状構造物画分、
該菌の線毛成分画分、該菌のグルコシルトランスフェレ
ース画分、該菌のプロテイン抗原画分等を哺乳動物に免
疫することによって得られる抗血清及び乳中の抗体が歯
垢形成抑制効果を有することを見出したが、これらの抗
体はう蝕予防剤中に必ずしも十分安定に保持されず、特
にラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤の
存在により失活し易い問題がある。このため、前記抗体
の効果を長期に亘り良好に発揮させるためにはこれらの
抗体をう蝕予防剤中に安定配合する必要がある。
発明の概要 本発明者らは、上記事情に鑑み、ストレプトコッカス・
ミュータンス菌の全菌体又は菌体成分で動物を免役する
ことによって得られる抗体をう蝕予防剤中に安定配合す
ることについて鋭意研究を行なった結果、これら抗体を
ゼラチン、ペプトン、カゼイン、コラーゲン及びアルブ
ミンから選ばれる蛋白質と併用した場合、抗体をう蝕予
防剤中に長期間に亘り安定に保持させることができ、特
に抗体を失活させ易いラウリル硫酸ナトリウム等のアニ
オン系界面活性剤が配合されていてもゼラチン、ペプト
ン、カゼイン、コラーゲン及びアルブミンから選ばれる
蛋白質の存在で前記抗体の失活が可及的に防止され、長
期間保存した後でも抗体の効果を有効に発揮させること
ができることを知見し、本発明をなすに至ったものであ
る。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
発明の構成 本発明のう蝕予防剤は、上述したように、ストレプトコ
ッカス・ミュータンス菌の全菌体又は菌体成分を抗原と
し、この抗原で動物を免疫することによって得られる抗
体が配合されているものである。
ここで、抗原として用いるストレプトコッカス・ミュー
タンス菌は、例えばBHI培地の透析外液を培地として
使用し、生育した菌を洗浄後ホルマリン処理するなど、
公知の培養、前処理を行なったものが使用し得る。この
場合、ストレプトコッカス・ミュータンス菌としては、
人の口腔内より分離されるヒト型ストレプトコッカス・
ミュータンス菌で血清型がc,d,e,fもしくはg型
の菌株又は突然変異株が望ましく、特に人の口腔内に多
在する血清型分類cに属するものが好ましい。このよう
なストレプトコッカス・ミュータンス菌としては、NC
TC10449、Ingbritt,OMZ70,JC−2等が
挙げられ、また突然変異株としてK−Dp株(FERM
−BP317)、KH2株(FERM−P7166)、
K−III株(微工研菌寄第6314号)等が好適に用い
られる。
本発明に用いられる抗体を得るための抗原としては、上
述したストレプトコッカス・ミュータンス菌の全菌体又
は菌体成分、特にストレプトコッカス・ミュータンス菌
の細胞壁画分、線維状構造画分、線毛成分画分、グルコ
シルトランスフェレース(GTF)画分、プロテイン抗
原画分が使用される。
この場合、ストレプトコッカス・ミュータンス菌の細胞
壁画分はブリーワイズ<Bleiweis>らの方法(ジャーナ
ル・オブ・バクテリオロジー<J.Bacteriol.>,
,1198−1200,1964)に従い、ブラウン
の細胞破砕機を使用し、直径0.17〜0.18mmのガ
ラスビーズを用いて破砕処理を行ない、得られた細胞壁
をトリプシンで処理して細胞壁に混在するタンパク質を
除去し、蒸溜水で洗浄後凍結乾燥を行なうという方法等
により調製したものなどが使用できる。線維状(pili状
又はfimbrial状)構造物画分はジェイ・バン ホーテ<
J.Van Hoate>らの方法(アーカイブス・オブ・オー
ラルバイオロジー<Arch.Oral.Bio.>,16,11
31−1141,1971)に従い、BHI透析培地に
5%ショ糖を加え、嫌気的条件下で培養し、培養液の遠
心分離上清に3倍量のエタノールを加えて沈殿を集める
という方法等により調製したものなどが使用できる。ま
た、線毛成分画分として、鶴水らの方法(日本細菌学雑
誌,38(1)471,1983)に従い、1Mの食塩
を含んだリン酸緩衝溶液のような溶媒を用いて培養バク
テリアから通常の細胞壁抽出法により調製されたその純
粋な構造物画分が用いられる。具体的には、例えばスト
レプトコッカス・ミュータンス変異株K−Dp株の線毛
成分画分として、該菌株を液体培養した後、この培養液
に硫酸アンモニウムを加えて33%飽和とし、上清を除
去したのちに沈降物に1M塩化ナトリウム添加リン酸緩
衝液(pH7.0)を加えて4℃で3日間攪拌し、次いで
遠心分離により菌体を除去し、上清に硫酸アンモニウム
を加えて60%飽和とし、沈降部分をリン酸緩衝液で透
析した後、ショ糖密度勾配超遠心分画法によってショ糖
密度8〜15%付近の分画を得、リン酸緩衝液で再び透
析を行なって得られる線毛成分画分が用いられる。更
に、GTF画分は井上らの方法(マイクロバイアル・ア
スペクト・オブ・デンタル・カリエス<Microbial Aspe
cts of dental caries>Vol.III,665−682,1
976[インフォメーション・レトリアバル・インコー
ポレーション<Information Retrieval Inc.>])に従
い、BHI透析培地にストレプトコッカス・ミュータン
スを植菌し、生育後遠心分離により菌体を除去し、上清
に硫酸アンモニウムを加え40%硫酸アンモニウム画分
の沈殿を50mMのリン酸緩衝液で透析し、濃縮した液
を用いるという方法等により調製したものなどが使用で
きる。また、プロテイン抗原画分はレーナー<Lehner>
らの方法(ジャーナル・オブ・ジェネラル・マイクロバ
イオロジー<J.General Microbiology>,122,2
17−225,1981)に従い、BHI透析培地で培
養し、遠心して得られた上清を75%の硫酸アンモニウ
ムを用いて分画し、沈殿を採取し、この沈殿を6M尿素
存在下でDE−52カラムクロマトグラフィーを行な
い、更にプロテイン抗原画分を生理食塩水に溶かし、透
析後セフアロースCL6Bにてゲル過を行なって画分
を得るという方法等により調製したものなどが使用し得
る。
前記抗原を動物に免疫する方法は通常の方法が採用でき
る。また、免疫される動物としてはヤギ、ヒツジ、ウ
マ、ウシ、ウサギ等の哺乳動物が有効に用いられる。
本発明は上述したように前記抗原を哺乳動物に免疫する
ことによって得られる抗血清、乳中の抗体を有効成分と
して使用するものであるが、本発明においてはこの抗体
を含む抗血清及び乳を用いてもよく、また抗血清及び乳
から分離精製された抗体を用いてもよい。更に、これら
の1種を単独で使用しても2種以上を混合して使用して
もよい。
なお、抗体(抗血清や乳中のプロテイン画分)は通常の
抗体精製法に従い、抗血清や乳から分離することができ
る。抗体精製法としては塩析法、ゲル過法、イオン交
換クロマトグラフィー、アフイニテイクロマトグラフイ
ーなどを挙げることができ、このなかで硫酸アンモニウ
ムを用いた塩析法が好ましい。塩析法は、抗血清と乳を
好ましくは40%より多くない濃度において硫酸アンモ
ニウムで飽和し、沈殿を精製し、引続き沈殿を生理食塩
水で塩析し、抗体として精製沈殿を得るものである。好
ましい抗体はウマ抗血清、ウシ抗血清及び乳から得られ
るものである。
抗体の投与量は、0.0001〜50g/kg/日とする
ことが好ましく、この場合抗体はこれを含む剤型全体の
0.0002〜10%(重量%、以下同じ)、特に0.
002〜5%の配合量とし、上記投与量において使用す
ることが好ましい。
本発明のう蝕予防剤は、上記抗体に加えてこの抗体の安
定化剤としてゼラチン、ペプトン、カゼイン、コラーゲ
ン及びアルブミンから選ばれる蛋白質を配合するもので
あり、これにより抗体の失活を効果的に防止することが
でき、特に抗体を失活させ易いアニオン活性剤等が配合
されていても抗体を長期間に亘り安定して保持できる。
これらの蛋白質の配合量は、う蝕予防剤全体の0.00
1〜10%、特に0.05〜5%とすることが好まし
い。
本発明のう蝕予防剤にあっては、前記抗体に加えてフッ
素化合物、クロルヘキシジン類、溶菌酵素、バクテリオ
シン、グルコシルトランスフェレースインヒビター、プ
ロテアーゼ及びデキストラナーゼから選ばれる1種以上
のシネルギストを組合せて用いることができ、これによ
り更にストレプトコッカス・ミュータンスの定着が抑制
されて歯垢形成抑制効果が著しく高まり、う蝕予防効果
を向上させることができる。
この場合、フッ素化合物としては、モノフルオルリン酸
ナトリウム、モノフルオルリン酸カリウム、モノフルオ
ルリン酸水素ナトリウム、モノフルオルリン酸アンモニ
ウム等のモノフルオルリン酸塩、フッ化ナトリウム、フ
ッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化アンモニウム等
のアルカリ金属フッ化物、ヘキサフルオルジルコン酸カ
リウム、ヘキサフルオルチタン酸カリウム、フッ化セシ
ウム、フッ化ニッケル、フッ化ジルコニウム、フッ化
銀、ヘキシルアミンハイドロフルオライド、ラウリルア
ミンハイドロフルオライド、セチルアミンハイドロフル
オライド、グリシンハイドロフルオライド、リシンハイ
ドロフルオライド、アラニンハイドロフルオライド等が
用いられる。これらの中で、モノフルオルリン酸ナトリ
ウム、モノフルオルリン酸カリウムのようなモノフルオ
ルリン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ
化アンモニウムのようなアルカリ金属フッ化物、フッ化
第1錫、フッ化塩化第1錫等の第1錫含有フッ化物が好
ましく使用し得るが、特にモノフルオルリン酸ナトリウ
ム、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫が好適に用いられ
る。
クロルヘキシジン類としては、塩酸クロルヘキシジン、
グルコン酸クロルヘキシジン等が使用される。
溶菌酵素としては、ストレプトマイセス・グリシュース
<Streptomyces griseus>,ストレプトマイセス・ディ
アスタートクロマジェン<Streptomyces diastatochrom
agenes>,ストレプトマイセス・ファリノーザス<Stre
ptomyces farinosus>,キャラロプシィス属<Chalarop
sis>,フラボバクテリウム属<Flavobacterium>,ミ
キソバクター属<Myxobacter>,スタフィロコッカス・
エピデルミーディス<Staphylococcus epidermidis>,
ミクロコッカス属<Micrococcus>,シュードモナス・
アルギノサ<Pseudomonas aetuginosa>,エロモナス属
<Aeromonas>,ストレプトマイセス・アルブス<Strep
tomyces albus>,ストレプトマイセス・グロビスポラ
ス<Streptomyces globisporus>等に由来するものが使
用でき、バクテリオシンとしてはエンテロバクター・ク
ロアセ<Enterobactor cloacae>,エッシュリシア・コ
リ<Escherichia coli>,プロテウス・ミアビリス<Pr
oteus miabilis>,シュードモナス・アルギノサ<Pseu
domonas aeruginosa>,ストレプトコッカス・ミュータ
ンス<Streptococcus mutans>,スタフィロコッカス・
スタフィロリティカス<Staphylococcus staphylolytic
us>等に由来するものが使用できる。
GTFインヒビターとしては、エリスリナム属<Arthri
num sp.>,フザリウム属<Fusarinum sp.>,ミクロフ
ォミナ属<Macrophomina sp.>,ミクロモノスポラ属<
Micromonospora sp.>,ノモニラ属<Gnomoniella sp.
>,ノテュリスポリウム属<Nodulisporium sp.>,ア
スペルギルス属<Aspergillus sp.>等に由来するもの
が好適に使用でき、具体的には特開昭56−10319
3号公報、同57−28097号公報、同57−982
15号公報、同57−146587号公報記載のもの等
が使用できる。
プロテアーゼとしては、アスペルギルス属<Aspergillu
s sp.>,バチルス属<Bacillus sp.>等に由来するも
のが好適に使用でき、デキストラナーゼとしてはケトミ
ウム属<Chaetomium sp.>,ストレプトマイセス属<St
reptomyces sp.>,バチルス属<Bacillus sp.>,コリ
ネバクテリウム属<Corynebacterium>等に由来するも
のが好適に使用できる。
なお、本発明においては、これらシネルギスト成分の1
種を単独で用いてもよく、2種以上を併用するようにし
てもよい。また、前記の抗体とシネルギスト成分とは一
緒に混合して所定の剤型に調製してもよく、或いは抗体
とシネルギスト成分とをそれぞれ別個の剤型に調製し、
使用時に両者を併用するようにしてもよい。
これらシネルギスト成分の投与量は、フッ素化合物の場
合はフッ素換算で0.0001〜1g/kg/日、クロル
ヘキシジン類の場合はクロルヘキシジンとして0.00
01〜1g/kg/日、溶菌酵素及びバクテリオシンの場
合は0.0001〜10g/kg/日、グルコシルトラン
スフェレースインヒビターの場合は0.0001〜10
g/kg/日、プロテアーゼ、デキストラナーゼの場合は
それぞれ0.0001〜5g/kg/日とすることができ
る。これらシネルギスト成分はこれを含む剤型全体に対
しフッ素化合物の場合はフッ素換算で0.0001〜
0.1%、特に0.0001〜0.001%、クロルヘ
キシジン類の場合はクロルヘキシジンとして0.1〜1
000ppm、特に10〜100ppm、溶菌酵素及びバクテ
リオシンの場合はそれぞれ0.0001〜10%、特に
0.001〜5%、グルコシルトランスフェレースイン
ヒビターの場合は0.0001〜10%、特に0.00
1〜5%、プロテアーゼの場合は0.0001〜10
%、特に0.001〜5%、デキストラナーゼの場合は
0.0001〜10%、特に0.001〜5%の配合量
とし、上記投与量において口腔内適用することができ
る。
本発明に係るう蝕予防剤は、練歯磨、粉歯磨、液状歯磨
等の歯磨類、マウスウォッシュ、口腔用パスタ、歯肉マ
ッサージクリーム、うがい用発泡錠剤等の錠剤、トロー
チ、チューインガム、アイスクリーム、ホイップクリー
ムなど、口腔内に適用される種々の態様に調製され、使
用されるが、本発明のう蝕予防剤の他の成分としては、
使用目的、使用態様等に応じた適宜な成分が用いられ
る。
例えば、歯磨の調製には、第2リン酸カルシウム・2水
和物、第2リン酸カルシウム・無水物、第1リン酸カル
シウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロ
リン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、非晶
質シリカ、結晶質シリカ、アルミノシリケート、酸化ア
ルミニウム、水酸化アルミニウム、第3リン酸マグネシ
ウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化チタ
ン及びレジン等の研磨剤が通常5〜95%、好ましくは
15〜60%の量で配合される。
練歯磨のようなペースト状組成物の調製には、粘結剤が
配合され得るが、粘結剤としてはカラギーナンを用いる
ことが好ましい。この場合、カラギーナンに加えて他の
粘結剤を併用してもよく、或いはカラギーナンの代りに
他の粘結剤を用いることもできる。ここで、他の粘結剤
としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メ
チルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセ
ルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ア
ルギン酸ナトリウム、アラビアガム、キサンタンガム、
トラガカントガム、カラヤガム、ポリビニルアルコー
ル、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリ
マー及びポリビニルピロリドン等が挙げられる。なお、
粘結剤の配合量は通常0.3〜5%とすることができ
る。
練歯磨及びマウスウォッシュのようなペースト状及び液
状口腔用組成物の調製には、ポリエチレングリコール、
エチレングリコール、ソルビトール、グリセリン、プロ
ピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、キシ
リット、マルチット及びラクチット等の粘稠剤が通常1
0〜70%の量で配合される。
また、本発明う蝕予防剤には、アニオン系,ノニオン
系,カチオン系,両性イオン系の界面活性剤を0.1〜
6%、特に0.3〜3%配合することができる。この場
合、本発明においては、上述したようにゼラチン、ペプ
トン、カゼイン、コラーゲン及びアルブミンから選ばれ
る蛋白質の配合により、抗体を失活させ易いアニオン系
界面活性剤が配合されていても抗体の失活を効果的に防
止し得るため、アニオン系界面活性剤、例えばラウリル
硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等の炭素数
が8〜18のアルキル硫酸エステルの水溶性塩、ラウリ
ルモノグリセリド硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸モノグ
リセリド硫酸ナトリウム、高級脂肪酸モノグリセリドモ
ノ硫酸ナトリウム等の脂肪酸基の炭素数が10〜18で
ある水溶性の高級脂肪酸モノグリセリド硫酸塩、α−オ
レフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、N−
メチル−N−パルミトイルタウライドのナトリウム塩、
N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ラウロイ
ル−β−アラニンナトリウム塩等、なかでもアルキル硫
酸エステルの水溶性塩を有効に配合することができる。
また、ノニオン活性剤としては、ラウリン酸ジエタノー
ルアミド等の脂肪酸アルカノールアミド、ショ糖モノ及
びジラウレート等のショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシ
エチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ
ン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘
導体、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸
エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ポリオキシエ
チレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙
げられ、これらの1種又は2種以上が使用され、これら
ノニオン活性剤の配合により前記抗体の安定性を更に高
めることができる。
更に、本発明う蝕予防剤には、必要に応じてペパーミン
ト、スペアミント等の精油、l−メントール、カルボ
ン、オイゲノール、アネトール等の香料素材などの香
料、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘス
ペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラル
チン、p−メトキシシンナミックアルデヒドなどの甘味
剤、防腐剤などが適宜配合される。なお、本発明におい
ては、ムタナーゼ、ソルビン酸、アレキシジン、ヒノキ
チオール、セチルピリジニウムクロライド、アルキルグ
リシン、アルキルジアミノエチルグリシン塩、アラント
イン、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、アズレ
ン、ビタミンE、水溶性第一もしくは第二リン酸塩、第
四級アンモニウム化合物、塩化ナトリウム、生薬抽出物
などの有効成分を配合することもできる。
また、他のタイプの組成物の場合も通常用いられている
適宜な成分を選び、通常の方法でそれらを混合して調製
される。
ここで、本発明う蝕予防剤を液状又はペースト状に形成
する場合、そのpHは必ずしも制限されないが、pH4〜1
0、より望ましくは5〜9、特に5.5〜7.5とする
ことが好ましい。
本発明のう蝕予防剤は、適宜な容器に収容されて保存さ
れ、使用に供せられる。例えば、練歯磨の場合には、プ
ラスチックチューブやアルミニウム箔ラミネートプラス
チックチューブ等のプラスチック容器、アルミニウムチ
ューブ等の金属容器に収容され得る。この場合、前記抗
体は金属容器中で比較的失活し易いが、ゼラチン、ペプ
トン、カゼイン、コラーゲン及びアルブミンから選ばれ
る蛋白質を配合することにより、抗体の金属容器中での
失活を良好に防止し得るため、本発明う蝕予防剤におい
ては、アルミニウムチューブ等の金属容器を有効に使用
し得る。
発明の効果 本発明のう蝕予防剤は、その剤型等に応じた適宜な態様
で口腔内に適用するものであり、ストレプトコッカス・
ミュータンス菌の全菌体又は菌体成分で動物を免疫する
ことによって得られる抗体がストレプトコッカス・ミュ
ータンス菌の口腔内の定着を阻害し、歯垢の形成を抑制
することにより、う蝕を予防するものであるが、本発明
によればこの抗体にゼラチン、ペプトン、カゼイン、コ
ラーゲン及びアルブミンから選ばれる蛋白質を併用して
いることにより、アニオン系界面活性剤が配合されてい
るにも拘らず、抗体の失活が防止され、長期間保存され
た後でも抗体の効果を有効に発揮し得るものである。
以下、実験例及び実施例を示し、本発明を具体的に説明
する。
なお、下記実験例及び実施例に使用した抗血清、母乳及
び抗体の製造例を次に示す。
[製造例] 下記抗原を使用し、下記の方法によりその抗血清及び母
乳を得た。
(1)抗原 ストレプトコッカス・ミュータンス BHI培地の透析外液を培地として使用し、生育した菌
を洗浄した後、ホルマリン処理したものを使用。
ストレプトコッカス・ミュータンスの細胞壁画分 ブリーワイズ<Bleiweis>らの方法(ジャーナル・オブ
・バクテリオロジー<J.Bacteriol.>,88,119
8−1200,1964)に従って調製したものを使
用。
ストレプトコッカス・ミュータンスの線維状構造物画分 ジェイ・バンホーテ<J.Van Hoate>らの方法(アー
カイブス・オブ・オーラルバイオロジー<Arch.Oral.Bi
o.>,16,1131−1141,1971)に準じて
調製したものを使用。
ストレプトコッカス・ミュータンスのグルコシルトラン
スフェレース画分 井上らの方法(マイクロバイアル・アスペクト・オブ・
デンタル・カリエス<Microbial Aspects of dental ca
ries>Vol.III,665−682,1976[インフォ
メーション・レトリアバル・インコーポレーション<In
formation Retrieval Inc.>])に従って調製したもの
を使用。
ストレプトコッカス・ミュータンスのプロテイン抗原画
分 レーナー<Lehner>らの方法(ジャーナル・オブ・ジェ
ネラル・マイクロバイオロジー<J.General Microbio
logy>,122,217−225,1981)に従って
調製したものを使用。
ストレプトコッカス・ミュータンスの線毛成分画分 鶴水らの方法(日本細菌学雑誌,38(1),471,
1983)に従って調製したものを使用。
(2)抗血清、母乳及び抗体の調製法 50〜100μg/mの抗原を等量のフロイント完全
アジュバントと混合し、妊娠ヤギ、ウマ、ウシ又はウサ
ギの背部皮下に体重1kg当り0.3mを注射して免疫
し、その後2〜4週間おきに抗原とフロイント不完全ア
ジュバントとを混合したもので3回免疫し、出産後に初
乳を採取した。また、抗血清については上記と同様に4
回免疫後採血し、凝固させ、その遠心上清をサンプルと
した。
次に、上記初乳サンプルに等量の0.9%食塩水を加
え、15000rpmで60分間遠心分離した後、上層の
脂肪と沈降物を除いて中間の液成分を採取し、これに濃
塩酸を加えてpH4に調整した。更に、5000rpmで3
0分間遠心分離し、その上清をトリスハイドロキシアミ
ノメタンで中和した後、硫酸アンモニウムを加えて75
%飽和にし、得られた沈降物を採取し、これをリン酸緩
衝液で透析して、母乳の抗体成分(内液)を得た。
また、上記抗血清に硫酸アンモニウムを加えて50%飽
和とし、得られた沈降物をリン酸緩衝液で透析して、抗
血清の抗体(内液)を得た。
[実験例1] 下記処方の練歯磨を調製した。
水酸化アルミニウム 43% 60%ソルビット液 35 プロピレングリコール 3.0 カラギーナン 1.0 蛋白質 0.3 サッカリンナトリウム 0.1 香料 1.0 モノフルオルリン酸ナトリウム 0.76 メチルパラベン 0.2 ブチルパラベン 0.01 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 ラウリン酸ジエタノールアミド 1.0 馬抗S.ミュータンス10449株 線毛成分血清 0.5水 残 合計 100.0% 次に、上記練歯磨を40℃で2週間保存した後、その抗
体活性を下記方法により測定し、抗体残存率を調べた。
更に、比較のため、上記組成の練歯磨において、蛋白質
及びラウリル硫酸ナトリウムを配合しない組成の練歯
磨、並びに蛋白質としてペプトンを配合したが、ラウリ
ル硫酸ナトリウムを配合しない組成の練歯磨きについ
て、同様に抗体残存率を調べた。結果を第1表に示す。
なお、結果は蛋白質としてペプトンを用いた練歯磨を4
0℃で2週間保存した後の抗体活性を100とした場合
の相対活性度で示した。
抗体活性測定法 歯磨1gに対して4mのリン酸緩衝液(0.1M,pH
7)を加え、歯磨中の可溶成分をリン酸緩衝液に溶解し
た後、遠心分離し、その上清液を採取する。この上清液
中の抗体成分の活性をストレプトコッカス・ミュータン
ス変異株K−Dp株の菌体を抗原としてELISA法
(イング バル イー.等,ジャーナル・オブ・イムノ
ロジー<Eng vall E. et al,J. Immunol.>,
109:129−135,1972)で測定する。
抗体成分の活性は405nmでの吸光度を指標とした場
合に最大の吸光度を示したペプトン配合歯磨を100%
とした。
[実験例2] 実験例1の練歯磨をそれぞれアルミニウム箔ラミネート
プラスチックチューブ(ラミネートチューブ)及びアル
ミニウムチューブ(Alチューブ)に充填し、40℃で2
週間保存した後、実験例1と同様にして抗体活性を測定
した。
結果を第2表に示す。なお、結果はラミネートチューブ
に充填したゼラチン配合歯磨の抗体活性を100とした
場合の相対活性度で示した。
以下、実施例を示す。
[実施例1] 歯磨 プロピレングリコール 3.0% アルギン酸ソーダ 0.9 メチルパラベン 0.1 ブチルパラベン 0.01 安息香酸ナトリウム 0.2 60%ソルビット液 15.0 85%グリセリン液 10.0 サッカリンナトリウム 0.15 モノフルオルリン酸ナトリウム 0.76 デキストラナーゼ(200万単位/g) 0.1 ゼラチン 0.3 ラウリル硫酸ナトリウム 1.0 ラウリン酸ジエタールアミド 1.0 香料 0.6 水酸化アルミニウム 45.0 馬抗S.ミュータンスK−Dp株 0.5 線毛成分抗体 トラネキサム酸 0.05精製水 残 合計 100.0% [実施例2] 歯磨 プロピレングリコール 3.0% カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.2 メチルパラベン 0.1 ブチルパラベン 0.01 安息香酸ナトリウム 0.2 60%ソルビット液 35.0 サッカリンナトリウム 0.15 フッ化第1錫 0.41 塩酸クロルヘキシジン 0.01 ペプトン 0.2 カゼイン 0.1 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 ショ糖モノパルミチン酸エステル 1.0 香料 0.6 水酸化アルミニウム 45.0 牛抗S.ミュータンス10449株 0.5 線毛成分抗体 シクロデキストリン 0.03 イプシロンアミノカプロン酸 0.01精製水 残 合計 100.0% [実施例3] 歯磨 プロピレングリコール 2.5% カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.8 メチルパラベン 0.1 ブチルパラベン 0.01 安息香酸ナトリウム 0.2 85%グリセリン液 21.0 サッカリンナトリウム 0.15 フッ化ナトリウム 0.21 コラーゲン 0.2 アルブミン 0.2 ラウリル硫酸ナトリウム 0.8 ポリオキシエチレン(20モル) 0.8 ソルビタンモノラウレート 香料 0.6 第2リン酸カルシウム 40.0 ウサギ抗S.ミュータンス6715 0.4 株GTF抗体 食塩 5.0精製水 残 合計 100.0% [実施例4]洗口剤 ラウリル硫酸ナトリウム 1.5% ラウリン酸ジエタノールアミド 1.5 ペプトン 1.0 リン酸1カリウム 0.082 リン酸2ナトリウム 0.5 グルコン酸クロルヘキシジン 0.01 牛抗S.ミュータンスK−III 0.1 線毛成分抗体 グリセリン 12.0 香料 0.8 サッカリンナトリウム 0.2精製水 残 合計 100.0%

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ストレプトコッカス・ミュータンス菌の全
    菌体又は菌体成分で動物を免疫することによって得られ
    る抗体が配合され、かつアニオン系界面活性剤が0.1
    〜3重量%配合されたう蝕予防剤に更にゼラチン、ペプ
    トン、カゼイン、コラーゲン及びアルブミンから選ばれ
    る蛋白質の1種又は2種以上を配合したことを特徴とす
    るう蝕予防剤。
  2. 【請求項2】ストレプトコッカス・ミュータンス菌がヒ
    ト型ストレプトコッカス・ミュータンス菌で血清型が
    c,d,e,fもしくはg型の菌株又は突然変異株であ
    る特許請求の範囲第1項記載のう蝕予防剤。
  3. 【請求項3】突然変異株がストレプトコッカス・ミュー
    タンス変異株K−Dp株,KH2株又はK−III株であ
    る特許請求の範囲第2項記載のう蝕予防剤。
  4. 【請求項4】菌体成分がストレプトコッカス・ミュータ
    ンス菌の細胞壁画分,線維状構造画分,線毛成分画分,
    グルコシルトランスフェレース画分又はプロテイン抗原
    画分である特許請求の範囲第1項乃至第3項いずれか記
    載のう蝕予防剤。
  5. 【請求項5】抗体としてこの抗体を含む抗血清又は乳を
    配合した特許請求の範囲第1項乃至第4項いずれか記載
    のう蝕予防剤。
  6. 【請求項6】抗体としてこの抗体を含む抗血清又は乳か
    ら分離したものを配合した特許請求の範囲第1項乃至第
    4項いずれか記載のう蝕予防剤。
  7. 【請求項7】抗体の配合量がう蝕予防剤全体の0.00
    02〜10重量%である特許請求の範囲第1項乃至第6
    項いずれか記載のう蝕予防剤。
  8. 【請求項8】蛋白質の配合量がう蝕予防剤全体の0.0
    01〜10重量%である特許請求の範囲第1項乃至第7
    項いずれか記載のう蝕予防剤。
  9. 【請求項9】う蝕予防剤のpHを4〜10の範囲とした特
    許請求の範囲第1項乃至第8項いずれか記載のう蝕予防
    剤。
  10. 【請求項10】う蝕予防剤のpHを5〜9の範囲とした特
    許請求の範囲第9項記載のう蝕予防剤。
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