JPH0640989Y2 - ダンパーディスク - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は１つのトーションばね配置用窓孔内に、トーシ
ョンばねを直列に２個配置したダンパーディスクに関す
る。

（従来技術及びその課題） この種ダンパーディスクは、広い捩り各範囲を確保する
ためにトーションばねを１つの窓孔内に２個直列に配置
しており、トーションばね間に円周方向移動自在にフロ
ート体を配置している。ところがフロート体の移動で窓
孔の周縁とフロート体とが擦れることにより、本来必要
なヒステリシストルクに加え、フレッテイング等により
不安定なヒステリシストルクが不規則に加わることにな
り、走行時の異音防止の妨げとなる。

このような異音を解消するために本願出願人は、各フロ
ート体を環状連結体に一体に連結してフロート体の半径
方向外方への移動を阻止するようにしたダンパーディス
クを開発し、既に出願している（実願昭63-38836）。

ところがフロート体と環状体とをリベットにより一体的
に結合しているため、例えばばね荷重のアンバランス等
がある場合にはそれをうまく吸収できず、ばねの圧縮動
作が不安定になることがあるう。また上記アンバランス
により環状連結体、特に環状連結体とフロート体との接
続部分（ネック部）に無理な荷重がかかるため、環状体
の耐久性の点でまだ改良の必要性がある。

（考案の目的） 本考案の目的は、広い捩り角を確保し、かつフロート体
と窓孔とが擦れないようにすることにより、走行時の異
音を防止すると共に、ばねの圧縮動作を円滑にし、環状
連結体及び耐久性を向上させることである。

（目的を達成するための技術的手段） 上記目的を達成するために本考案は、１対の入力側サイ
ドプレートと該サイドプレート間の出力側プレートにそ
れぞれ複数のトーションばね配置用窓孔を形成し、出力
側プレートの各窓孔にトーションばねを少なくともそれ
ぞれ２個ずつ直列に配置し、該トーションばねによりサ
イドプレートと出力側プレートとをトルク伝達可能に連
結し、各窓孔内の直列な２個のトーションばね間には円
周方向に移動可能なフロート体を介在させ、各フロート
体を、フロート体よりも半径方向内方側に配置した環状
連結体にそれぞれピンを介して揺動可能に連結してい
る。

（作用） 走行時に入力側サイドプレートが出力側プレートに対し
て捩れることにより、同一の窓孔内に配置されている直
列の２個のトーションばねは圧縮される。これと同時に
トーションばね間のフロート体は円周方向に移動する
が、各フロート体は環状連結体により内周側端部が一体
に連結されているので、遠心力により半径方向外方にせ
り出して窓孔周縁に擦れることはない。従ってフロート
体と窓孔周縁との間でフレッティング等は起こらず、フ
ロート体の移動によって必要以上に不安定なヒステリシ
ストルクが増加することはない。

各フロート体はピンを介して揺動可能に環状連結体に連
結されているので、ばね荷重のアンバランスが合っても
それに合わせてフロート体がピン回りに揺動し、アンバ
ランスを吸収する。従ってばねの圧縮動作が安定し、か
つ環状連結体に無理な荷重がかからず、特に環状体とフ
ロート体との接続部分の耐久性が向上する。

また環状体とフロート体との連結部分に無理な荷重がか
からないことにより、その箇所を狭くして充分に広い捩
り角範囲を取ることができる。

（実施例） 第１図〜第３図は分離ハブ型のダンパーディスクに本考
案を適用した例を示しており、第３図において、１対の
入力側サイドプレート１は互いに軸方向に一定の間隔を
隔てて配置されると共に外周端部同志がリベット２によ
り結合されている。クッショニングプレート４は上記リ
ベット２によりサイドプレート外周端部に固着され、ク
ッショニングプレート４の両側に入力フェーシング３が
固着されている。入力フェーシング３は例えばフライホ
イールと、プレッシャープレートの間に挾持され、回転
力が入力される。

両サイドプレート１間には１対の環状中間プレート（出
力側プレートの一例）６が配置されており、中間プレー
ト６は厚肉に形成されると共に互いに重ね合わされ、リ
ベット７により一体的に結合されている。中間プレート
６の内周端部分には軸方向に開く拡開部6aが複数箇所形
成されている。拡開部6a内には出力側ハブ10のフランジ
11が配置され、出力側ハブ10は例えば出力軸にスプライ
ン嵌合している。

中間プレート６の内周側部分とサイドプレート１の内周
側部分の間には摩擦係数の大きい２段目摩擦部材13が配
置され、中間プレート６の内周側部分とフランジ11の間
には摩擦係数の小さい１段目摩擦部材12が配置されてい
る。

フランジ11には１段目ばね用の窓孔（切欠き）16が形成
され、これに対応して中間プレート６の拡開部6aには第
１窓孔17が形成されており、窓孔16、17内にばね定数の
小さい１段目トーションばね21が円周方向圧縮自在に配
置されている。即ち１段目トーションばね21は両端部が
ばね受け22を介してフランジ11の窓孔16の円周方向端縁
に当接すると共に、ばね受け22は軸方向両方に延び、中
間プレート６の第１窓孔17の円周方向端縁に当接してい
る。

第２図は第３図とは別の部分の断面図（第１図のII-II
断面図）であり、この第２図において、中間プレート６
の外周側部分には第２窓孔18が形成されており、該第２
窓孔18に対応してサイドプレート１には窓孔19が形成さ
れ、該窓孔18、19内に２段目トーションばね23が円周方
向圧縮自在に配置されている。

第１図において、第２窓孔18は円周方向に等間隔を隔て
て３個形成されており、１個の窓孔18内には２個の２段
目トーションばね23が円周方向に直列に配置されてお
り、１個の窓孔18内の両２段目トーションばね23間には
フロート体25が円周方向移動自在に介在している。また
２段目トーションばね23は親子ばね形式になっており、
内側に子コイルばね27を有している。

フランジ11の窓孔16も円周方向に間隔を隔てて３か所形
成されており、またフランジ11の窓孔間部分には凹部30
が形成され、一方中間プレート６には上記凹部30内に突
出する凸部32が形成され、凹部30と凸部32との円周方向
の隙間によって１段目の捩り角範囲を規制している。即
ち前記凹部30と凸部32によりトルク直結用ストッパー機
構を構成している。

フロート体25はポリアミド樹脂等の低摩擦係数の硬質樹
脂でできており、重量は軽く、クラッチ中心側に行くに
従い細くなるような扇形状に形成され、第２窓孔18内に
円周方向移動可能に配置されている。フロート体25の半
径方向外周端縁は第２窓孔18の半径方向外周端縁に対し
て僅かに隙間を隔て、かつ第２窓孔18の外周端縁よりも
小さな半径の円弧形に形成されている。フロート体25の
軸方向両側面にはサポートプレート35がリベット36によ
り固着されており、サポートプレート35の半径方向外方
端部は中間プレート６の両側面部分まで延び、これによ
りフロート体25の軸方向の脱落を防止している。サポー
トプレート35は概ね扇形状に形成されており、トーショ
ンばねが当接するばね受け面（円周方向両端面）はフロ
ート体25のばね受け面（円周方向両端面）と同一面に揃
えられている。またサポートプレート35の半径方向外方
側端部には円周方向両方に延びる延出部35aがそれぞれ
形成されている。サポートプレート35の材料としては例
えば鉄板が使用さており、これによりばね圧に対する強
度を向上させている。

上記３つのフロート体25及びサポートプレート35は環状
連結体37にピン38を介して揺動可能に連結されている。
即ち環状連結体37はフロート体25よりも半径方向内方側
に配置されると共に３カ所にそれぞれ外方に突出する突
出片37aを一体に有しており、一方フロート体25及びサ
ポートプレート35の半径方向内方端部には第２図の下半
部に示すようにピン孔39が形成されている。ピン38は半
径方向のがたを有するようにフロート体25等のピン孔39
に挿通され、両端部が環状体37の突出片37aに固着され
ている。環状連結体37は例えば鉄板製である。

次に作動を説明する。アイドリング時には、第１図のフ
ランジ11に対して中間プレート６及びサイドプレート１
が一体的に例えば回転方向Ｒと同方向に捩じれ、１段目
トーションばね21を圧縮する。この時第２図の中間プレ
ート６とフランジ11の間の１段目摩擦部材12が擦れるこ
とにより、小さなヒステリシストルクが発生する。

アイドリングから低速走行に入ると、捩りトルクが増加
することにより、まず第１図のフランジ11の凹部30と中
間プレート６の凸部32が当接して、フランジ11と中間プ
レート６が一体化し、これらに対してサイドプレート１
がＲ方向に捩じれ始め、２段目トーションばね23を圧縮
する。この時第２図のサイドプレート１と中間プレート
６の間の２段目摩擦部材13が擦れることにより、比較的
大きいヒステリシストルクが発生する。

２段目トーション23の圧縮により第１図のフロート体25
も円周方向に移動する。しかるに３つのフロート体25は
環状連結体37により連結されているので、フロート体25
が半径方向外方にせり出すことはない。従ってフロート
体25の半径方向外方端縁と窓孔18の周縁18aが擦れるこ
とによる不安定なヒステリシストルクが増加する心配は
ない。

第１図の２段目トーションばね23を１個の窓孔18内に直
列に２個配置していることにより、２段目捩り角範囲が
広くなり、これにより低速走行時のこもり音を効果的に
減少させることができる。

２段目トーションばね23のばね荷重にアンバランスがあ
っても、フロート体25はそのアンバランスに合せてピン
38回りに揺動し、アンバランスを吸収する。従って各２
段目トーションばね23の圧縮動作は安定し、円滑な捩り
動作が得られる。

また上記アンバランス等を吸収できることにより、サポ
ートプレート35等の内周端部（ネック部）35bの円周方
向幅を狭くしても耐久性を確保できる。またそれにより
ねじり角範囲を狭くすることなく、中間プレート６のネ
ック部6bを充分な幅に確保して中間プレートの耐久性を
維持することができる。

（考案の効果） 以上説明したように本考案によると： （１）１対の入力側サイドプレート１と該サイドプレー
ト間の出力側プレート（中間プレート６）にそれぞれト
ーションばね配置用窓孔19、18を形成し、同一の窓孔に
トーションばね23を少なくとも２個直列に配置している
ので、比較的小さな剛性で広い捩り角特性を得ることが
でき、低速走行時のこもり音等の異音防止効果がある。

（２）２個のトーションばね23間に介在させるフロート
体25を、環状連結体37により連結し、それにより遠心力
による半径方向外方へのせり出しを防いでいるので、ト
ーションばね圧縮時にフロート体25が窓孔18の端縁と擦
れることはない。従ってフロート体25の移動に起因する
不安定なヒステリシストルクが増加する心配はなくな
り、異音防止効果を良好に保つことができる。

（３）フロート体25を環状連結体37にピン38を介して揺
動可能に連結しているので、トーションばね23のばね荷
重のアンバランスが合ってもそれに合せてフロート体25
が揺動することにより、ばね23の圧縮動作が安定し、一
層円滑な捩り性能を発揮できる。

（４）フロート体25のピン38回りの揺動でばね荷重のア
ンバランスを吸収できるので、環状連結体37とフロート
体25との接続部の耐久性を確保しながらも上記接続部の
幅を細くでき、それによりばね23の収納空間を広く確保
して、十分広い捩り角範囲を保つことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案は適用したダンパーディスクを一部切り
欠いて示す側面図、第２図は第１図のII-II断面図、第
３図は第１図のIII-III断面図である。 １…サイドプレート、６…中間プレート（出力側プレー
ト）、10…ハブ、11…フランジ、18…窓孔、19…窓孔、
23…２段目トーションばね、25…フロート体、35…サポ
ートプレート、37…環状連結体、38…ピン

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】１対の入力側サイドプレートと該サイドプ
   レート間の出力側プレートにそれぞれ複数のトーション
   ばね配置用窓孔を形成し、出力側プレートの各窓孔にト
   ーションばねを少なくともそれぞれ２個ずつ直列に配置
   し、該トーションばねによりサイドプレートと出力側プ
   レートとをトルク伝達可能に連結し、各窓孔内の直列な
   ２個のトーションばね間には円周方向に移動可能なフロ
   ート体を介在させ、各フロート体を、フロート体よりも
   半径方向内方側に配置した環状連結体にそれぞれピンを
   介して揺動可能に連結したダンパーディスク。