JPH0639871Y2 - 工具格納用チェーン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、NC工作機械等に付帯して多種多様の工具を供
給及び収納するマシニングセンタ用工具格納チェーンに
関するものである。

従来の技術及びその問題点 従来、知られている連結ピン自体を工具ポットとしたマ
シニングセンタ用工具格納チェーンとしては、例えば、
実開昭48-29488号公報等に記載されたものがある。そこ
で、このような従来のマシニングセンタ用工具格納チェ
ーンは、リンクプレートと連結ピンとが共にスチール製
であるため、耐摩耗対策としてリンクプレートと連結ピ
ンの双方に焼入・焼戻等の熱処理を施したものが用いら
れていた。しかしながら、このような従来のマシニング
センタ用工具格納チェーンは、チェーン全体がスチール
製であるため、チェーン重量が大であり、チェーン駆動
力も大にしなければならないばかりでなく、稼動時にチ
ェーンとスプロケットとの噛合衝突騒音が発生し、作業
環境を著しく悪化させる欠点を有し、更に、稼動時にス
チール製連結ピンと該連結ピンに嵌合するスチール製リ
ンクプレートの孔とが摺動摩耗するため、チェーン全体
が伸長し、工具を供給及び収納する位置にズレを生じて
工具の円滑な供給及び収納操作に支障をきたすことがあ
り、このため、チェーンの摩耗が予測される部分、特
に、スチール製リンクプレートの孔と該孔に嵌合するス
チール製連結ピンとの間隙に、潤滑油等の給油を定期的
に実施しなければならないという面倒な点を有してい
た。

考案が解決しようとする問題点 本考案が解決しようとする問題点、即ち、本考案の目的
は、従来技術の欠点を解消するものであって、チェーン
重量を軽量化してチェーン駆動力を節減するとともに、
無給油でも耐摩耗性を有して騒音の発生を抑止すること
ができ、しかも製作コストが安価であるマシニングセン
タ用工具格納チェーンを提供するものである。

問題点を解決するための手段及び作用 本考案は、前記の如き目的を達成するために次の如き構
造を有するものである。即ち、本考案は、焼入・焼戻を
施していないスチール製リンクプレートを相互に連結す
るフェノール樹脂製連結ピンがそれ自体で工具ポットを
構成していることを特徴とするものである。

また、上記のリンクプレートの硬さは、連結ピンの素材
であるフェノール樹脂との関係で、ロックウェル硬度が
Ｂスケールで105以下であることが望ましい。

更に、連結ピンの素材をフェノール樹脂としたのは、フ
ェノール樹脂が熱硬化性樹脂の一種であって、上記のフ
ェノール樹脂からなる連結ピンは、そのピン強度を向上
せしめるために、紙基材、綿布基材、ナイロン布基材、
ガラス布基材、石綿基材等のいずれかを基材としてフェ
ノール樹脂で成形したものである。

実施例 第１〜２図は、本考案のマシニングセンタ用工具格納チ
ェーンの一実施例を示したものであって、第１図はその
一部正面図であり、第２図はその一部断面平面図であ
る。

まず、第１〜２図に示す如き本実施例のマシニングセン
タ用工具格納チェーンは、焼入、焼戻等の熱処理を施し
ていないスチール製の外側リンクプレート１と内側リン
クプレート１′をフェノール樹脂製の連結ピン２で連結
したものであって、内側リンクプレート１′側面は該連
結ピン２の外周面の両端近傍に夫々形成した段付部３に
当接させると共に、外側リンクプレート１は内側リンク
プレート１′に外接させて配置する。次に、連結ピン２
の工具ホルダ着脱口４の近傍に配置した外側リンクプレ
ート１と内側リンクプレート１′は、外側リンクプレー
ト１に隣接して連結ピン２に形成した溝５にスナップリ
ング６を装着することによって摺動自在に固定され、ま
た一方連結ピン２の工具ホルダ係止部７の近傍に配置し
た外側リンクプレート１と内側リンクプレート１′は、
外側リンクプレート１に一端が当接する工具ホルダ係止
部７に設けたカラー８の他端に隣接して連結ピン２に形
成した溝５′にスナップリング６′を装着することによ
って摺動自在に固定されている。更に、上記の連結ピン
２に設けられた工具ホルダ着脱口４と工具ホルダ係止部
７からなる工具ポットについて詳述すると、該工具ホル
ダ係止部７は、連結ピン２の端部近傍の４ケ所に穿設し
た４つの孔９と、該孔９に沿って摺動するキャップ部材
10と、該キャップ部材10を弾性力を付与するためのバネ
11と、該バネ11を固定するための前記カラー８から構成
されている。

以上のようにして得られた本考案のマシニングセンタ用
工具格納チェーンは、連結ピンをポリアミド樹脂及びポ
リアセタール樹脂からなるものと比較検討すると、以下
のような優れた利点を有していた。

（ｉ）フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であり、充填剤を
入れること等により熱可塑性樹脂となるポリアミド樹脂
及びポリアセタール樹脂に比較して成形時の収縮率が小
さいので、連結ピン製作時の寸法精度が優れており、チ
ェーン組立が容易になし得る。

（ii）フェノール樹脂は、ポリアミド樹脂及びポリアセ
タール樹脂に比較してスチールとの摺動摩擦係数が相対
的に小であるため、チェーン駆動時のリンクプレートと
連結ピンとの摺動が円滑に行われ、チェーンの摩耗によ
る破損を抑制することができるばかりでなく、チェーン
を駆動するスプロケットとの衝突音を軽減して作業環境
を低騒音状態にすることができる。

次に、本考案のマシニングセンタ用工具格納チェーンの
耐摩耗性について実験を行った結果は、別紙（表１）の
通りである。第３図は、表１に示す本考案の実施例と従
来例におけるチェーンの使用時間とチェーンの伸びとの
関係を示したものである。すなわち、第３図において曲
線１は表１の実施例１によるチェーンの耐摩耗特性であ
り、同様に曲線２は表１の実施例２、曲線３は表１の従
来例１、曲線４は表１の従来例２に夫々対応する耐摩耗
特性を示す実験曲線である。

そして、実験に試用したリンクプレートの材質は炭素0.
2〜0.5％含有する炭素鋼であって、連結ピンの材質はJI
SK6915の機械用フェノール樹脂であり、実験条件は、チ
ェーンのリンクプレート数が28リンク、該チェーンに噛
合するスプロケットの回転速度は9rpm、チェーン速度14
m/min、チェーンの引張荷重は800kgfである。第３図か
ら明らかなように、本考案のマシニングセンタ用工具格
納チェーンは、従来例に比べて著しく優れた耐摩耗性を
有している。即ち、従来例のチェーンは、チェーン使用
時間が増加するとチェーン伸びが経時的に増加、もしく
は油切れの時点から急激に増加するのに対して本実施例
のチェーンは、長時間使用した場合にもチェーンの伸び
が殆ど無く、油切れを発生することも無かった。

上述の如く、本考案の実施例であるマシニングセンタ用
工具格納チェーンは、チェーン重量は軽量化してチェー
ン駆動力を節減できるばかりでなく、優れた耐摩耗性を
発揮することができ、しかも騒音の発生を著しく抑制す
ることができるものであり、その効果は著大であった。

考案の効果 本考案は、上述した構成を有しているので、以下の如き
効果を奏する。

（ａ）焼入、焼戻を施していないスチール製リンクプレ
ートとフェノール樹脂製連結ピンとでチェーンを構成し
たため、該リンクプレートと連結ピンとの摺動部が焼
入、焼戻を施していないスチールとフェノール樹脂との
接触関係となってフェノール樹脂に特有の自己潤滑作用
が生じるので、定期的な給油が必要とすることなく、両
者の摺動を円滑に行うことができ、従来のスチールのみ
で作られたマシニングセンタ用工具格納チェーンに比較
して著しく耐摩耗性を向上することができるばかりでな
く、摩耗によるチェーンの伸びも抑制されてNC工作機械
等との間で行なわれる工具の供給及び収納を正確に行な
うことができる。更に、チェーン全体の耐摩耗を向上せ
しめるに際して、チェーン組立時にフェノール樹脂製連
結ピンの外周にグリースを塗布した場合には、従来のス
チール製連結ピンにグリースを塗布した場合に比較する
と、フェノール樹脂がグリースの優れた保着力を発揮し
て、グリースによる円滑性を長期に亘って保持すること
ができる。

（ｂ）連結ピンをフェノール樹脂としたため、マシニン
グセンタ用工具格納チェーンを駆動するためのスプロケ
ットと連結ピンとの噛合いの際に生じる騒音の発生を抑
止できるばかりでなく、従来から施されているスプロケ
ットの歯先に対する硬化処理も不要となる。更に、連結
ピン自体を工具ポットとしたマシニングセンタ用工具格
納チェーンの場合は、他のチェーンに比較するとチェー
ン重量に対する連結ピンの重量が大であるため、この連
結ピンをフェノール樹脂製としたことによって、チェー
ンの全重量が大巾に軽量化されてチェーンの取扱いが容
易になると共に、該チェーンの駆動力を著しく節減する
ことができる。

（ｃ）フェノール樹脂製連結ピン自体を工具ポットとし
たため、工具ホルダに適合する工具ポットの内壁形状を
少ない製作工程で容易に成形することができ、チェーン
全体のコストを著しく軽減することができる。

【図面の簡単な説明】

第１〜２図は本考案の一実施例を示し、第１図はマシニ
ングセンタ用工具格納チェーンの正面図であり、第２図
は第１図Ａ−Ａ線の一部断面を示した平面図であり、第
３図は本考案の実施例と比較例におけるチェーンの耐摩
耗特性を示したものである。 1,1′……リンクプレート ２……連結ピン、３……段付部 ４……工具ホルダ着脱口 5,5′……溝 6,6′……スナップリング ７……工具ホルダ係止部、８……カラー ９……孔、10……キャップ部材 11……バネ

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】焼入、焼戻を施していないスチール製リン
   クプレートを相互に連結するフェノール樹脂製連結ピン
   がそれ自体で工具ポットを構成していることを特徴とす
   る、工具格納用チェーン。
2. 【請求項２】フェノール樹脂製連結ピンが、フェノール
   樹脂中に補強材を充填されたものからなる実用新案登録
   請求の範囲第１項記載の工具格納用チェーン。