JPH0636715B2 - 食品素材を均一に含有するパスタフィラタチーズの製造法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、各種の食品素材を効率的に、高歩留りで均一
に分散して含有させたパスタフィラタチーズの製造法に
関する。

従来技術 従来、食品に対する嗜好の多様化に対応して、ナチュラ
ルチーズにおいても半硬質チーズであるゴーダチーズや
ソフトチーズに分類されるものに種々の食品素材を添加
した製品が市販されている。

しかし、パスタフィラタチーズにおいては、未だに食品
素材を添加した製品はみられていない。その理由は、パ
スタフィラタチーズはその製造工程中でカードを熱水中
において練圧して可塑性に富んだカードを形成させるた
め、食品素材を添加、混合しても食品素材が流出した
り、また、この混合時にカードが可塑性に富むプラスチ
ック状のカードになるため、均一な混合状態にすること
が困難であることに因る。

最近、このような問題を解決する目的で、食品素材をパ
スタフィラタチーズに均一に分散させるための方法が提
案されている（特開平1-148147号）。

しかし、この方法では、熱水中での練圧工程前の原料カ
ード或いは未熟成チーズに乾燥状態下で食品素材を均一
に混合するため、ホットプレート、マイクロ波加熱装
置、赤外線加熱装置等の乾熱用の加熱装置が必要とな
り、装置が膨大となる難点がある。

発明が解決しようとする課題 本発明は、如上の状況に鑑みなされたものであって、原
料カードまたは熟成前のチーズを特定の状態とし、これ
に種々の食品素材を添加混合することによってカードあ
るいは熟成前のチーズ中に均一に分散させて種々の食品
素材を含有させたパスタフィラタチーズを効率よく製造
する方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段 本発明において用いるチーズは、従来のチーズ製造に用
いられる原料であればよく、例えば全乳、脱脂乳及びこ
れらに一部還元乳を加えたもの等が用いられる。

本発明では、これらの乳を原料として、従来のパスタフ
ィラタチーズの製造法に従ってpH5.0〜5.8のカードを作
り、次いでこのカードを細断し、熱水中で練圧して品温
が45〜75℃の可塑性に富んだカード（プラスチックカー
ド）を形成する。この場合上記カードに代えて熟成前の
チーズを用いて上記と同様にして熱水中で練圧してもよ
い。

なお、pH5.0〜5.8のカードを作るのは、この範囲外のpH
のカードでは、熱水中の練圧により所望の可塑性に富ん
だものが得られないことに因る。また、練圧したカード
の品温を45〜75℃にするのは、可塑性に富んだカードを
形成するためであって、この範囲外の温度では所望の可
塑性は得られない。

上述の練圧により得られた可塑性に富んだプラスチック
カードから熱水を分離した後、該カードを混練機で混練
してプラスチックカードの薄膜を形成させ、このプラス
チックカードの薄膜に食品素材を添加、混合する。ここ
で用いる混練機は、上記プラスチックカードを薄膜にし
得る機能を有するものであればよく、ニーダーまたはパ
スタフィラタチーズ混練機を例示し得る。

上述のようにして得られた、内部に食品素材を均一に分
散含有するカードを、目的とする製品に応じて成形する
か、もしくは押出して一定の大きさに切断し、次いでこ
の成形品もしくは押出し品を必要に応じ、飽和食塩水中
に浸漬して加温を行い、その後乾燥するか、またはその
まま燻煙を行って製品とする。

なお、混練中のプラスチックカードの薄膜に添加、混合
する食品素材としては、広範囲な種類のものが包含さ
れ、畜肉類、魚肉類、野菜類、海藻類、調味料、香辛料
等を例示し得る。これらの食品素材は、プラスチックカ
ードの薄膜に直接添加、混合する。

発明の効果 上述したとおり、本発明に従って、pH5.0〜5.8のチーズ
カードまたは熟成前のチーズを熱水中で練圧して脱水
後、さらに混練りを行って可塑性に富んだプラスチック
カードの薄膜を作成し、該プラスチックカードの薄膜に
食品素材を直接添加、混合することにより、食品素材を
均一に分散した状態で含有するパスタフィラタチーズを
得ることが可能となる。

すなわち、前記提案された方法のように、食品素材を、
原料チーズカードの熱水中での練圧工程前に乾熱状態で
添加、混合する必要がないので、本発明は、作業及び装
置を簡易化し得る利点がある。さらにカード中に添加混
合する食品素材の歩留りを向上することができる。

以下実施例を示して本発明を具体的に説明する。

実施例１ カレーパウダーを含有するストリングチーズの製造 原料乳100kg（配乳脂肪率3.0％）を低温殺菌した後、こ
れに塩化カルシウム0.01kgと乳酸菌スターター1.5kgを
添加し、30℃の温度に１時間静置した後、凝乳酵素0.35
g添加して原料乳を凝固させた。

得られたチーズカードを５mm立方体に切断し、カードを
破砕しないように15分間カードブリーカーで攪拌した。

次いで、カードを品温38℃に加温してホエーを分離、排
除し、さらにカードをマット状に積重ね（マッティン
グ）pHを5.5とした。

このpH5.5のカードを２cm立方体に細断し、70℃の熱水
中で８分間練圧して53℃の品温の可塑性に富んだカード
（プラスチックカード）に形成し、次いで熱水を分離排
除した後、該プラスチックカード10kgを混練機（関東混
練機株式会社製ミキサー型式ＣＳ型２８Ｅ）に入れて混
練し、プラスチックカードの薄膜を形成した。この混練
において、プラスチックカードの薄膜中にカレーパウダ
ー0.25kgと食塩0.2kgを添加し混合した。

次に、このようにして得られたカレーパウダーを均一に
分散含有したカード10.44kgを、エクストルーダーで押
出し、切断し、乾燥して製品（長さ10cm、重さ40g）を
得た。製品中のカレーパウダーの混合歩留りは97％であ
り、その分散状態は均一であり、かつストリングチーズ
の繊維性も良好であった。

実施例２ サラミソーセージ、マッシュルーム、小えび及びピザソ
ースを含有するピザ用モザレラチーズの製造 実施例１に記載したと同様の手順に従って、pH5.8のチ
ーズカードを作り、このカードを２cm立方体に細断し、
48℃の温水中でゆっくり加温してpH5.0とした後、さら
に50℃の熱水中で15分間練圧して45℃の品温のプラスチ
ックカードを作成した。次いで、熱水を充分分離排除し
て得られたこのプラスチックカード11kgを混練機（梶原
工業社製KH-015型）に入れ、混練してプラスチックカー
ドの薄膜を形成するとともに、この薄膜にあらかじめ準
備しておいた３mm角のサラミソーセージ0.2kg、ゆでた
薄切りマッシュルーム0.2kg、ゆでた小えび0.1kg及びピ
ザソース0.2kgを添加、混合した。このようにして、ピ
ザ用素材を均一に分散含有したカード11.68kgを得た。

このカードを直方体（10cm×10cm×20cm）に成形し、冷
水で品温を10℃まで冷却後、飽和食塩水に16時間浸漬し
て塩分含量2.0％とした。次いで、チーズの表面を乾燥
させた後、真空包装して製品とした。

得られたチーズ製品中のピザ用素材の混合歩留りは、9
7.1％であり、該素材の分散状態は良好であり、また、
本製品をスライスし、食パンの上に乗せトーストにした
ものは、調和のとれた風味を糸引き性を有する新しいタ
イプのモザレラチーズとして供給できる。

実施例３ 紫蘇の葉を含有するプロボローネチーズの製造 実施例１に記載したと同様の手順に従って、pH5.1のチ
ーズカードを作成し、このチーズカードを５mm立方体に
細断し、75℃の熱水中で10分間練圧して品温が75℃の可
塑性に富んだカード（プラスチックカード）を得た。次
いで、この熱水を分離排除して得られたプラスチックカ
ード10kgを混練機（Dima社製パスタフィラタチーズ混練
機）に入れ、混練機中でプラスチックカードの薄膜を形
成し、この薄膜にあらかじめ準備しておいた紫蘇の葉0.
2kg添加、混合した。このようにして紫蘇の葉を均一に
分散含有したカード10.196kg得た。

このカードを円柱状、円錐状及び球状にそれぞれ成形
し、冷水で品温10℃まで冷却後、飽和食塩水に10〜48時
間浸漬して塩分含量2.5％の製品を得た。

次に、この加温カードを紐で吊し、一部はそのまま熟成
させ、残りは燻煙を施した後３〜12ケ月熟成させ、真空
包装し、製品とした。

得られたプロボローネチーズ中の紫蘇の葉の混合歩留り
は98％と高く、その分散状態も良好であった。また、本
製品は紫蘇の香りを持つ風味豊かなプロボローネチーズ
として提供される。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】pH5.0〜5.8のチーズカードまたは熟成前の
   チーズを熱水中で練圧して品温45〜75℃の可塑性に富ん
   だカードとし、次いで該カードから熱水を分離し、薄膜
   にすることのできる機能をもつ混練機を用いてこれを混
   練して薄膜を形成させ、これに食品素材を添加して混合
   し、成形または押出しすることを特徴とするパスタフィ
   ラタチーズの製造法。
2. 【請求項２】薄膜にすることのできる機能をもつ混練機
   としてニーダーまたはパスタフィラタチーズ混練機を用
   いる請求項(1)記載の製造法。