JP3171514B2 - 繊維状肉およびその製造方法 - Google Patents

繊維状肉およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は繊維状肉、繊維状乾燥
肉およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維状の乾燥肉としては、いわゆるビー
フジャーキーが知られている。これは牛肉を筋繊維にそ
って切断した後、乾燥した製品で、繊維性の方向は必ず
しも一定していない。また、一種以上の肉小片に植物タ
ンパク質、結着剤、香料等を混合したペースト状のミッ
クス物をスライス状に加工し乾燥したジャーキー風のも
のが市販されているが、これは繊維性がなく、単に板状
にしただけのものである。このような天然の繊維状の乾
燥肉は肉が元来有する繊維性を破壊しないように加工し
なければならず、また繊維状肉に適した肉の部位も限ら
れているので、容易にしかも大量に造ることはできな
い。そして乾燥肉は繊維性の方向も一定しておらず、引
き裂くときや食べるときにも、斜めに裂けたり、途中で
切れたりするので食べにくい等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
課題を解決するためになされたものであって、繊維性を
有する肉か否かにかかわらず、肉に繊維性を付与した繊
維状肉もしくは繊維状乾燥肉およびそれを製造する方法
を提供することを課題とする。本発明によれば、所定形
状にした肉を容易にそのまま配向し繊維化することがで
きるとともに、これまで挽き肉や再加工肉として利用さ
れていた肉小片を極めて有効に利用することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、肉小片を糸状
等の繊維状に切断し、得られた繊維状の肉をチーズ類と
ともに一定方向に配向させる。肉小片を繊維状に切断す
るまえに、肉小片を板状に結着加工して繊維状に切断し
てもよい。本発明の特徴は、繊維状に加工した肉と配向
性を有するチーズ類を混合することにより、肉を一定方
向に配向させることにある。すなわち、繊維状に加工し
た肉と配向性を有する未熟なグーリンチーズ、ヤングチ
ーズ等のチーズ類を混合し、加熱し押し出すことによ
り、チーズ類の配向方向に沿って繊維状の肉も同時に配
向させ繊維化することにある。本発明で、「繊維状」と
は肉を細長状に切断して(直径方向の形状は問わな
い)、細い糸状にしたものをいい、直径方向の大きさ
は、特に限定する必要はない。しかし、食品としては常
識的に、おおむね3mm以下のものをさすことが多い。
適宜の長さに切断するものであるから長さは特に問わな
い。したがって、通常いわれている糸状のものであり、
コンビーフ状の肉も含む。また、このようなものから構
成されている繊維状の肉製品をも意味することは、いう
までもない。
【0005】繊維状にした肉を単に押し出し孔を通して
押し出し成形しても、肉が不規則に破砕するので繊維状
に加工した肉を一定方向に配向させることはできない。
本発明はチーズ類が有する配向特性を利用して肉を配向
させることを基本とするものである。すなわち繊維状に
加工した肉とあまり熟成の進んでいないチーズ類を混合
して一定範囲の温度に加熱し、押し出すかもしくは練圧
して押し出すことによりチーズ類が配向する特性を利用
して繊維状の肉を破砕することなく配向させるものであ
る。このようにすると繊維状の肉が得られる。また、チ
ーズ類は得られた製品を保形する作用効果、さらには繊
維化状態をそのままに固定する作用効果をも有する。し
たがって、肉の配向特性がきわめて良いという特徴があ
る。次いで必要に応じて、ビーフジャーキー用の調味液
に浸漬して、ジャーキー風味を強化してもよい。そし
て、さらにこれを乾燥することによって、保存性の良好
な繊維状乾燥肉を得るものである。
【0006】本発明において原料とする肉は、牛肉、豚
肉、馬肉、鶏肉、羊肉等の各種の食用肉から少なくとも
一種が選択される。これらの肉や肉の小片を繊維状に加
工する。繊維状に加工する方法は、細長状に切断する
か、小片肉を板状に結着加工して細長状に切断してもよ
い。切断の大きさは、とくに限定する必要はないが、食
品として常識的には3mm程度以下になることが多い。
切断長も、限定されない。混合や押し出しに支障ない程
度に、適宜切断すればよい。したがって、切断の大きさ
や切断長さを種々変更することによって、バラエティに
富んだ製品が得られる。
【0007】このようにして得られた繊維状の肉をチー
ズ類と混合する。チーズ類と肉の混合比率は、両者を含
有していればよいが、チーズ類と肉の総量に対して、チ
ーズ類の量が20重量%程度からとくに良好な配向性を
示すようになる。したがって、チーズ類が全量の場合
は、肉を含まないジャーキ風の製品を製造することも可
能である。このため、チーズ類を含有していればよく、
混合比率の範囲をとくに限定しなければならない理由は
ない。得られた製品の硬さや食感、チーズ風味を呈した
ものにするか、また肉風味を強調するかによって、チー
ズ類と肉の量比を適宜設定する。チーズ類の量が多くな
ると、より、肉が配向し易くなるし、またチーズの風味
が豊かになる。また反対に、肉の量が多くなると肉の食
感や風味に近いものとなる。
【0008】本発明で用いるチーズ類は、配向性を有す
るチーズ類であればいずれでも使用できる。配向性を有
するチーズ類とは、加熱し一定方向に押し出すことによ
り、押し出し方向に層状化するチーズ類をいい、いわゆ
るチーズと称されないものであっても、このような性質
を有するカゼイン蛋白等の乳蛋白、脂肪および水分を含
有する組成をもつものであれば、本発明のチーズ類に含
まれる。このようなチーズ類としては、熟成があまり進
んでいないナチュラルチーズもしくは、これに、クエン
酸ナトリウムやモノリン酸ナトリウムを加えて加熱溶融
したプロセスチーズ、合成チーズ、チーズ様食品等を例
示できる。熟成があまり進んでいないチーズとしては、
カッテージ、ヌーシャテル、カマンベール等の軟質チー
ズ、ゴーダ、エダム、サンポーラン、ブルー等の半硬質
チーズ、チェダー、エメンタール、グリュイエール、パ
ルメザン等の硬質チーズ、プロボロン、カシオカバロ、
モザレラ等のパスタフィラタチーズ等の各種のナチュラ
ルチーズであまり熟成の進んでいないものがあげられ
る。なかでもゴーダ系チーズ、チェダー系チーズがよ
い。以上のようなチーズで熟成期間が約一ヵ月以下のチ
ーズであって、約一ヵ月程度のヤングチーズ(熟度指標
が、おおむね13%以下である)ないし熟成期間が二週
間程度のグリーンチーズ〔熟度指標が、おおむね8%以
下である。なお熟度指標は、熟度指標(%)=(可溶性
窒素/全窒素)×100とする。〕が好ましい。またい
わゆるチーズと称されないものとしては、カゼイン等の
乳蛋白製品、もしくはこれらと乳脂肪、動植物由来の脂
肪、水等を加えて製造したいわゆる合成チーズ、チーズ
様食品等をあげることができる。とくに好適なチーズ
は、例えば、熟成約二週間までのグリーンチーズであ
る。以上のようなチーズ類を単独もしくは併用して用い
る。
【0009】混合に際してあらかじめチーズ類を粉砕し
ておくとよい。繊維状にした肉とチーズ類を一緒にして
チーズ類を粉砕すると繊維状にした肉を破砕することに
なり、配向性が低下する。チーズ類を粉砕するときや、
チーズ類と肉を混合するとき、または加熱時やそれ以前
にカゼインやホエー等の乳タンパク質、大豆や小麦等か
ら得られる植物タンパク質、結着剤、調味料、香辛料、
合成や天然の着色料、香料等を必要に応じて必要量添加
することができる。とくにオイルオフ(油分分離)や離
水を防止する必要があるときは、チーズ類と肉を混合す
る際に、溶融塩や安定剤を加える。そうでないときは、
溶融塩や安定剤は加えない。本発明で用いる溶融塩は、
クリーミング作用の少ないものを用いる。この理由は、
配向特性を保持させるためである。このような溶融塩と
しては、クエン酸ナトリウム、モノリン酸ナトリウム等
を例示でき、使用量はチーズ類の量に対し、0〜1.0
重量%用いる。この範囲超えると、配向性が低下する。
また、安定剤としては、ローカストビーンガム、キサン
タンガム、グアーガム、結晶セルローズ等を用い、その
量は、チーズ類の重量に対し、0〜0.6重量%であ
る。この場合も使用量が多すぎると粘度が上昇したりし
て、食感が悪くなる。溶融塩や安定剤は、それぞれ一種
以上を併用して用いてもよい。
【0010】次いで、チーズ類と肉を混合した混合物を
加熱して、押し出す。練圧して押し出してもよい。この
ようにすると延伸し配向させることがきる。加熱温度は
45〜95℃である。加熱温度が45℃より低いと可塑
性に富んだプラスチックカードになりにくく、また、9
5℃以上をこえるとチーズ類中のタンパク質が変性して
配向特性が劣るようになる。したがって、より好ましい
温度としては52〜65℃である。延伸し配向させる方
法は、温湯中でもよいが、本発明では特にエクストルー
ダーを用いると良好な結果が得られる。エクストルーダ
ーを使用すると水分の変動がなく、制御しやすく、一定
の品質のものが得られ、特に延伸、配向特性の優れた繊
維性の良好なものになる。エクストルーダーによる押し
出し配向条件は、加熱温度50〜78℃で、回転数は2
0〜40r.p.m.である。このような条件でエクス
トルーダーを使用し、延伸して配向させ、繊維状肉を得
る。
【0011】この状態の乾燥する前の繊維状肉を保存す
るには、真空包装や、炭酸ガスや窒素ガス等のガス置換
包装、脱酸素剤等の酸素吸収剤を封入した包装等を行っ
て、ほぼ20℃以下の低温で保存する。包装材として
は、無論、ガス遮断性のアルミ箔や合成樹脂フィルムか
らなるもので密封する。瓶や缶に密封してもよい。
【0012】必要な場合は、さらにこれを乾燥させて繊
維状乾燥肉とする。乾燥は水分蒸発法を用いるが、本願
発明では冷風乾燥がよく、このような乾燥装置として
は、除湿機能を備えた流動乾燥機が好ましい。乾燥条件
の冷風温度は、5〜40℃で、好ましい範囲としては、
10〜30℃である。そして相対湿度は、0〜40%、
好ましくは5〜25%にするが、この相対湿度は低けれ
ば低いほど水分蒸発は早く、乾燥時間も短縮することが
できる。このように乾燥する理由は、より良好な繊維性
の保持、微生物活性の抑制、脂肪の溶出の防止を行うた
めである。ちなみに水分40〜45%の繊維状肉を10
〜20℃の除湿した冷風を通気した乾燥機で、24〜4
8時間乾燥すると水分が18〜25%の低いものが得ら
れる。このようにして得られた繊維状乾燥肉の水分活性
値は0.82〜0.87で、これは微生物の生育域以下
である。このようにして得たものは、通常の包装で充分
な保存性を有する。
【0013】なお、チーズ類が配向し繊維性を有するよ
うになるのは、チーズの製造過程において、チーズカー
ドのpHは、通常5.0〜5.5の範囲にある。この時
のチーズカード中のカゼインの状態はパラカゼインカル
シウムとなっている。この状態のカードを40〜90℃
の温度に加熱すると可塑性を有するプラスチックカード
と称される形態に変化する。この形態のカードを温湯も
しくは間接的に加熱して混合もしくは練圧し押し出して
延伸するとチーズ類の伸びに応じてチーズ類中に含まれ
ている微細な気泡や微小な水滴、あるいは脂肪球が微細
な管状化もしくは層状化状態になり、チーズ類が方向性
をもつようになるからである。この現象が配向である。
チーズ類を用いて肉を配向し繊維化させると、繊維化さ
れた肉がチーズ類により固定化されるので、肉の繊維性
が低下することがない。以下に実施例を示して具体的に
説明する。
【0014】
【実施例】
(実施例1)牛肉を糸状に細く切断したもの10kg
に、粉砕した未熟成のゴーダ系グリーンチーズ10kg
を混合し、これに溶融塩としてクエン酸ナトリウム50
gおよび安定剤としてローカストビーンガムとキサンタ
ンガム(1:1)の混合物30gを添加し、エクストル
ーダーに投入した。次いでエクストルーダーの攪拌回転
数を35r.p.m.(処理量として50kg/h)に
し、加熱はジャケットに付属の電熱ヒーターで70℃ま
で加温して練圧し、厚さ5mm、幅30mmの成形ノズ
ルから押し出すとともに、ベルトで延伸して、冷却水で
冷却、固化させた。次いで150mmの長さに切断し、
食塩5%、砂糖3%、粉末水飴3%、醤油5%、リン酸
塩1%、ブラックペッパー0.8%および水82.2%
(いずれも重量%)からなるビーフジャーキー用の調味
液に2時間浸漬した後、冷風乾燥して繊維状肉を得た。
さらに冷風乾燥機の雰囲気を15℃にして30時間乾燥
して、包装し、水分20%のビーフジャーキー風の繊維
状乾燥肉を得た。得られた製品は風味も好ましく、肉の
繊維が一定方向に配向し、裂きやすく、しかもまっすぐ
に裂けて、分割しやすいものであった。常温で4カ月間
保存したが、微生物的にも、物性的にも異常がなかっ
た。
【0015】(実施例2)馬肉を繊維状に細く切断した
もの14kgに粉砕した未熟成のチェダー系グリーンチ
ーズ6kgを混合し、これに溶融塩としてクエン酸ナト
リウム30gおよび安定剤としてローカストビーンガム
とキサンタンガムの等量混合物18gを添加し、エクス
トルーダーに投入した。次いでエクストルーダーの攪拌
回転数を30r.p.m.(処理量として40kg/
h)にし、加熱はジャケットに付属の電熱ヒーターで6
0℃まで加温して練圧し、厚さ10mm、幅50mmの
成形ノズルから押し出すとともに、ベルトで延伸して、
冷却水で冷却、固化させた。次いで200mmの長さに
切断し、実施例1と同様のビーフジャーキー用の調味液
に1時間浸漬した後、冷風乾燥して繊維状肉を得た。冷
風乾燥機の雰囲気を10℃にして35時間乾燥して、水
分18%のビーフジャーキー風の繊維状乾燥肉を得た。
得られた製品は風味が良好で、肉の繊維も同じ方向に配
向し、まっすぐに裂け、分割しやすいものであった。
【0016】(実施例3)豚肉を繊維状に細く切断した
もの16kgに、粉砕したカゼイン蛋白21.7重量
%、植物脂肪28.1重量%、水分44重量%および灰
分・糖質6.2重量%からなるチーズ様食品4kgを混
合し、これに安定剤としてグアーガムおよび結晶セルロ
ーズ(3:1)の混合物10gを添加し、エクストルー
ダーに投入した。次いでエクストルーダーの攪拌回転数
を25r.p.m.(処理量として30kg/h)に
し、加熱はジャケットに付属の電熱ヒーターで65℃ま
で加温して練圧し、厚さ 5mm、幅40mmの成形ノ
ズルから押し出すとともに、ベルトで延伸して、冷却水
で冷却、固化させた。次いで250mmの長さに切断
し、実施例1と同様のビーフジャーキー用の調味液に
1.5時間浸漬した後、冷風乾燥して繊維状肉を得た。
得られた繊維状肉を合成樹脂アルミ箔積層フィルムから
なる包装袋(ポリエチレンテレフタレート12μ/アル
ミ箔9μ/ポリエチレン50μ)に充填し、炭酸ガスと
窒素ガス(1:1)の混合ガスで、ガス置換包装して1
0℃に1カ月間保存した。一方、さらに繊維状肉を、冷
風乾燥機の雰囲気を20℃にし42時間乾燥して、水分
22%のビーフジャーキー風の繊維状乾燥肉を得た。ガ
ス置換包装し保存した製品を食したところ、風味が良好
で、肉の繊維も一定方向に配向し、まっすぐに引裂くこ
とができ、分割しやすく、途中で切れることもなく、ソ
フトで食べやすいものであった。また、得られた繊維状
乾燥肉製品は、肉の繊維も一定方向に配向し、まっすぐ
に引き裂くことができ、分割しやすく、途中で切れるこ
となく、風味は良好で食べやすいものであった。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、所定形状に加工した肉
をチーズ類と混合し加熱し押し出すことにより、繊維性
の良好な繊維状肉を簡単に製造することができる。
【0018】さらにこれを乾燥することによって、微生
物的にも、繊維性等の物性的にも保存性に優れた良好な
繊維状の乾燥肉を得ることができる。
【0019】原料となる肉の種類や部位、大きさ、形
状、肉本来の繊維性等に制約されることがないので、原
料肉の調達が容易である。
【0020】これまで挽き肉や再加工肉として利用され
ていた肉小片や砕片肉、断片肉をきわめて有効に利用す
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−87043(JP,A) 特開 昭60−241873(JP,A) 特開 平1−281070(JP,A) 特開 平2−138957(JP,A) 特開 昭62−205737(JP,A) 特開 平1−108959(JP,A) 特開 昭52−66661(JP,A) 特開 昭62−262980(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/31

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維状の肉をチーズ類とともに配向して
    なる繊維状肉。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の繊維状肉が乾燥された
    ものである繊維状乾燥肉。
  3. 【請求項3】 肉を繊維状に切断しチーズ類と混合し、
    得られた混合物を加熱し押し出すことを特徴とする繊維
    状肉の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3により得られた繊維状肉を乾燥
    することを特徴とする繊維状乾燥肉の製造方法。
  5. 【請求項5】 エクストルーダーを用いて、加熱し押し
    出すことを特徴とする請求項3に記載の繊維状肉の製造
    方法。
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