JPH0634031A - 自動変速機のセレクトショック軽減装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 走行レンジへの切り換えに際し締結される摩
擦要素の作動圧を低下させてセレクトショックを軽減す
る装置で、動力源の負荷が大きくなった時に作動圧を上
昇させるに当り、摩擦要素がジャダーを生ずることのな
いようにする。 【構成】 セレクトショック軽減装置は、非走行レンジ
から走行レンジへの切り換え時締結される自動変速機に
おける摩擦要素の作動圧を所定時間中低下させてセレク
トショックを軽減する。この所定時間中に、動力源負荷
状態検出手段により検出された動力源の負荷が設定値を
越える時、昇圧手段は摩擦要素の締結作動圧を上昇させ
るに当り、これを通常決定される値よりも高くする。よ
ってこの時、摩擦要素がジャダーを生じて異音を発生す
るようなことがなくなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動変速機のマニュア
ルバルブを非走行レンジから走行レンジに切り換えると
き締結されることとなった摩擦要素の作動圧を、当該レ
ンジ切り換えに伴うセレクトショックの軽減上、好適に
制御する装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】自動変速機は各種摩擦要素（摩擦クラッ
チや摩擦ブレーキ等）の選択的油圧作動により対応変速
段を選択し、作動する摩擦要素の変更により他の変速段
への変速が可能である。従って、運転者が停車状態から
走行を希望してマニュアルバルブを非走行レンジから走
行レンジに切り換えるときに締結される摩擦要素も存在
し、この摩擦要素が締結されるとき、自動変速機は動力
伝達不能状態から動力伝達可能状態に切り換わる。この
時、車両の駆動輪には、自動変速機の前段に設けたトル
クコンバータの引き摺りトルクが伝達されるようにな
り、所謂セレクトショックを生ずる。

【０００３】このセレクトショックを軽減するために従
来、図４に示す如く、非走行レンジ（Ｎレンジ）から走
行レンジ（Ｄレンジ）に切り換えるとき（瞬時ｔ₀ ）締
結される摩擦要素の締結を司るライン圧Ｐを、通常決定
される値ＰｏからＰｓへと低下させ、設定時間Ｔｓの後
より徐々に通常値Ｐｏに戻すようにした装置が提案され
ている。

【０００４】しかして、かかるセレクトショック軽減装
置では、ライン圧Ｐが通常値Ｐｏより低い期間中にエン
ジンのアクセルペダルを踏み込むとき、これによるエン
ジン出力トルクの増大もあって摩擦要素の締結容量が不
足気味となり、該摩擦要素の激しいスリップを惹起し
て、これを早期摩耗させると言った問題を免れない。そ
こで従来、特開平２ー１９０６６２号公報に記載の如
く、また図５に示すように、アクセルペダルを踏み込む
瞬時ｔ₁ にセレクトショック軽減用ライン圧低下制御を
中止して、ライン圧Ｐを通常値Ｐｏに戻すようにした技
術も提案されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかして、かかる従来
のセレクトショック軽減技術のように、アクセルペダル
の踏み込み時ライン圧Ｐを通常値Ｐｏに戻すのみでは、
アクセルペダルの踏み込みでエンジン出力トルクが増大
しているのに加え、摩擦要素が停止中の車輪を回転し始
める必要があって大きな締結容量を要求する状態にある
ため、エンジンの比較的大きな負荷状態の基で摩擦要素
がジャダーと称される異音を伴ったスリップを発生する
のを避けられず、これが自動変速機の商品価値を低下さ
せる懸念がある。

【０００６】本発明は、上記のジャダーを生ずる比較的
大きな負荷状態の場合、摩擦要素の締結圧を通常値より
も高くすることにより、上述のジャダー及びこれに伴う
異音の問題を解消することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この目的のため本発明の
セレクトショック軽減装置は図１に概念を示す如く、マ
ニュアルバルブを非走行レンジから走行レンジに切り換
えるとき所定時間中、自動変速機を動力伝達可能状態に
する摩擦要素の締結を司る圧力を低下させて、上記レン
ジ切り換え時のセレクトショックを軽減するセレクトシ
ョック軽減装置を具えた自動変速機において、自動変速
機へ動力を入力する動力源の負荷を検出する動力源負荷
状態検出手段と、該手段からの信号に応答して前記所定
時間中、動力源の負荷が設定値を越えるとき、前記圧力
を、通常決定する値よりも高くする昇圧手段とを設けて
構成したものである。

【０００８】

【作用】走行を希望してマニュアルバルブを非走行レン
ジから走行レンジに切り換えると、自動変速機は、摩擦
要素を作動圧により締結されて動力伝達可能状態にな
る。このレンジ切り換え時セレクトショック軽減装置
は、所定時間中摩擦要素の締結作動圧を低下させて、動
力伝達可能状態になる時のセレクトショックを軽減す
る。

【０００９】この所定時間中に、動力源負荷状態検出手
段により検出された動力源の負荷が設定値を越える時、
昇圧手段は摩擦要素の締結作動圧を通常決定される値よ
りも高くする。よって、セレクトショック軽減作用中に
動力源の負荷が設定値以上に大きくされても、摩擦要素
がスリップして早期摩耗することはないし、また摩擦要
素がジャダーを生じて異音を発生することもない。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に
説明する。図２は本発明セレクトショック軽減装置の一
実施例を示し、１は動力源としてのエンジン、２は自動
変速機で、自動変速機２はエンジン１からの回転動力を
選択変速段に応じた回転にして図示せざる車輪に伝達す
る。

【００１１】自動変速機２の変速制御及び本発明が狙い
とするセレクトショック軽減作用はコントロールバルブ
３によりこれらを行い、コントロールバルブ３はシフト
ソレノイド４，５及びライン圧デューティソレノイド６
を具える。コントロールバルブ３はその他に図示せざる
マニュアルバルブを具え、これをセレクトレバー７によ
り運転者が手動で駐車（Ｐ）レンジ、後退走行（Ｒ）レ
ンジ、中立（Ｎ）レンジ、前進自動変速走行（Ｄ）レン
ジ、２速エンジンブレーキ走行（ＩＩ）レンジ、または
１速エンジンブレーキ走行（Ｉ）レンジへ切り換え得る
ものとする。

【００１２】Ｐレンジ及びＮレンジはそれぞれ、自動変
速機の全ての摩擦要素を解放して自動変速機を動力伝達
不能状態に保ち、もって車両の駐停車を可能にするレン
ジである。またＲレンジは、エンジン１の動力を逆転し
て出力し得るような動力伝達可能状態を達成すべく自動
変速機の摩擦要素を組み合わせて締結するレンジであ
る。更にＤレンジは、シフトソレノイド４，５のＯＮ，
ＯＦＦの組合せにより、自動変速機２を例えば前進４段
のうちの任意の変速段に投入した動力伝達可能状態にす
べく摩擦要素を組み合わせて締結するレンジである。な
お、ＩＩレンジ及びＩレンジも、最高変速段をエンジン
ブレーキが得られるよう選択レンジに応じた変速段以下
に制限する以外、Ｄレンジと同じようなものである。

【００１３】自動変速機２はライン圧で全ての作動を制
御され、上記摩擦要素の締結もライン圧でこれを行うも
のとする。このライン圧はデューティソレノイド６の駆
動デューティに応じて制御することとする。

【００１４】上記ソレノイド４及び５のＯＮ，ＯＦＦ制
御並びにソレノイド６のデューティ制御はコントローラ
８によりこれらを行い、このためコントローラ８にはエ
ンジン１のスロットル開度ＴＶＯ（エンジン負荷状態）
を検出するスロットル開度センサ（動力源負荷状態検出
手段）９からの信号、自動変速機２の出力回転数（車
速）ＶＳＰを検出する車速センサ１０からの信号、及び
セレクトレバー７（マニュアルバルブ）の選択レンジを
を検出するレンジセンサ１１からの信号ＲＮＧを夫々入
力する。

【００１５】コントローラ８はこれら入力情報を基に図
示せざる変速制御を行うと共に、図３の制御プログラム
を実行して本発明が狙いとするセレクトショック軽減用
のライン圧制御を行う。

【００１６】変速制御の概略を先ず説明するとコントロ
ーラ８は、センサ９，１０で検出したスロットル開度Ｔ
ＶＯ及び車速ＶＳＰから現在の運転状態に最適な変速段
を、予め設定した変速パターンに基づき決定し、現在選
択中の変速段がこの最適変速段と違う時シフトソレノイ
ド４，５のＯＮ，ＯＦＦを最適変速段に対応するよう切
り換えて自動変速機２をこの最適変速段へと変速させ
る。

【００１７】次に図３のセレクトショック軽減用のライ
ン圧制御を、図４乃至図６に基づき説明するに、この制
御プログラムはセレクトレバー７を非走行レンジＰ，Ｎ
から走行レンジＲ，Ｄ，ＩＩ，Ｉに切り換えた都度実行
される。

【００１８】先ずステップ２１で、当該レンジ切り換え
以後の経過時間を計測するためにタイマＴを０にリセッ
トする。次いでステップ２２において、スロットル開度
ＴＶＯが微少設定値１／１６未満か否かを、つまりエン
ジン１のアクセルペダルが踏み込まれていないか否かを
チェックする。アクセルペダルが踏み込まれていないエ
ンジン無負荷状態の基では、図４に示すようにライン圧
Ｐ、即ちセレクトレバー７を非走行レンジから走行レン
ジに切り換えた時締結されることとなった摩擦要素の締
結作動圧を、ステップ２２乃至２７において以下の如く
に制御する。

【００１９】ステップ２３，２４では、上記レンジ切り
換えの瞬時ｔ₀ からタイマＴが設定時間Ｔｓを計時する
迄の間、ライン圧Ｐを通常値Ｐｏから設定値Ｐｓに低下
させるようデューティソレノイド６に指令する。その後
はステップ２５，２７で、ライン圧ＰがＰｓから通常値
Ｐｏに戻るまでの間、このライン圧Ｐを例えば図４のよ
うな時間勾配をもって徐々に上昇させるライン圧漸増制
御を実行するようデューティソレノイド６に指令を発す
る。かかるライン圧制御によれば、上記レンジ切り換え
の瞬時ｔ₀ においてライン圧Ｐにより締結される摩擦要
素の締結容量が十分に小さく、セレクトショクが生ずる
のを防止することができるし、その後においてもライン
圧Ｐが徐々に通常値Ｐｏに戻るため、摩擦要素の締結シ
ョックを生ずることはない。

【００２０】ところで、上記のライン圧制御中に、例え
ば図５及び図６の瞬時ｔ₁ においてアクセルペダルの踏
み込みによりスロットル開度ＴＶＯが設定値１／１６を
越えると、ステップ２２または２６が制御をステップ２
８へ進めることから、以下のライン圧制御が実行され
る。

【００２１】つまり、ステップ２８でスロットル開度Ｔ
ＶＯが第２設定値の３／１６未満と判別する間は、ステ
ップ２９の実行により図５に示す如く、ライン圧Ｐを通
常値Ｐｏに戻すようデューティソレノイド６に指令を発
する。これにより摩擦要素の締結容量は、アクセルペダ
ルの踏み込みによりエンジン負荷が大きくなっても、こ
れに見合った十分に大きなものとなり、摩擦要素が激し
くスリップして早期摩耗するような事態を解消すること
ができる。なお、この程度のスロットル開度（エンジン
負荷）の基では摩擦要素がジャダーを生ずるようなこと
はなく、これに基づく異音の発生もない。

【００２２】一方、ライン圧Ｐを通常値Ｐｏに戻す程度
では摩擦要素がジャダーを生じて異音を発生するような
比較的大きなエンジン負荷（スロットル開度ＴＶＯが３
／１６以上）の基では、ステップ３０の実行により図６
に示す如く、ライン圧Ｐを通常値Ｐｏよりも所定値αだ
け高い値にするようデューティソレノイド６に指令を発
する。これにより、当該大きなエンジン負荷の基でも、
摩擦要素がジャダーを生じて異音を発生するのを防止す
ることができる。

【００２３】

【発明の効果】かくして本発明のセレクトショック軽減
装置は請求項１に記載の如く、動力源の負荷が比較的大
きな状態の基では、走行レンジへの切り換え時に締結さ
れるべき摩擦要素の作動圧をセレクトショック軽減用に
低下させていた状態から上昇させるに当り、通常決定さ
れる値よりも高い値まで高める構成としたから、当該負
荷状態でも摩擦要素がジャダーを生ずることがなく、ジ
ャダーに伴う異音の発生を防止して自動変速機の商品価
値を大いに高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明セレクトショック軽減装置を示す概念図
である。

【図２】本発明セレクトショック軽減装置の一実施例を
示すシステム図である。

【図３】同例のコントローラが実行するセレクトショッ
ク軽減用ライン圧制御プログラムを示すフローチャート
である。

【図４】同制御プログラムによるライン圧制御態様を、
アクセルペダルが釈放されている場合について示すタイ
ムチャートである。

【図５】図３の制御プログラムによるライン圧制御態様
を、アクセルペダルが僅かに踏み込まれた場合について
示すタイムチャートである。

【図６】図３の制御プログラムによるライン圧制御態様
を、アクセルペダルが大きく踏み込まれた場合について
示すタイムチャートである。

【符号の説明】

１ エンジン（動力源） ２ 自動変速機 ３ コントロールバルブ ４ シフトソレノイド ５ シフトソレノイド ６ ライン圧デューティソレノイド ７ セレクトレバー ８ コントローラ ９ スロットル開度センサ（動力源負荷状態検出手段） 10 車速センサ 11 レンジセンサ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 マニュアルバルブを非走行レンジから走
   行レンジに切り換えるとき所定時間中、自動変速機を動
   力伝達可能状態にする摩擦要素の締結を司る圧力を低下
   させて、上記レンジ切り換え時のセレクトショックを軽
   減するセレクトショック軽減装置を具えた自動変速機に
   おいて、 自動変速機へ動力を入力する動力源の負荷を検出する動
   力源負荷状態検出手段と、 該手段からの信号に応答して前記所定時間中、動力源の
   負荷が設定値を越えるとき、前記圧力を、通常決定する
   値よりも高くする昇圧手段とを設けて構成したことを特
   徴とする自動変速機のセレクトショック軽減装置。