JPH06336655A - 黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合金薄板 - Google Patents

黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合金薄板

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JPH06336655A
JPH06336655A JP15288693A JP15288693A JPH06336655A JP H06336655 A JPH06336655 A JP H06336655A JP 15288693 A JP15288693 A JP 15288693A JP 15288693 A JP15288693 A JP 15288693A JP H06336655 A JPH06336655 A JP H06336655A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 黒化処理性が優れ、且つ黒化膜を従来よりも
短時間の黒化処理で形成することが可能なシャドウマス
ク用Fe−Ni系およびFe−Ni−Co系合金薄板を
得ること 【構成】 低熱膨張係数が得られる所定量のNi、Co
を含有し、H≦1.9ppm、Mn≦0.35wt%、
Al≦0.020wt%、Si≦0.09wt%、Cr
≦:0.06wt%、Ti≦:0.03wt%、Mo
≦:0.06wt%、W≦:0.04wt%、Nb≦:
0.03wt%、V≦:0.02wt%、Cu≦:0.
03wt%を含有し、Ti+Cr+Al+Si≦0.1
0wt%であり、残部Feおよび不可避不純物からな
り、黒化処理直前における板表面での{210}結晶面
の集積度が16%以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、黒化処理性に優れた
シャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板およびFe−N
i−Co系合金薄板に関するものである。
【従来の技術】近年、カラーテレビの高品位化に伴い、
色ずれの問題に対処できるシャドウマスク用合金とし
て、34〜38wt%のNiを含有するFe−Ni系合
金が使用されている。このFe−Ni系合金は、シャド
ウマスク用材料として従来から使用されてきた低炭素鋼
に較べ、熱膨張率が著しく小さい。このためFe−Ni
系合金によって作られたシャドウマスクは、電子ビーム
により加熱されても熱膨張による色ずれの問題は生じに
くい。
【0002】通常、シャドウマスク用合金薄板は、連続
鋳造法または造塊法によって得られた合金塊に、分塊圧
延、熱間圧延および冷間圧延・焼鈍を施すことにより製
造される。また、このようにして製造されたシャドウマ
スク用合金薄板は、通常、以下のような工程によってシ
ャドウマスクに加工される。すなわち、シャドウマスク
用合金薄板にフォトエッチングによって電子ビームの通
過孔を形成し(以下、このエッチングによって穿孔され
たままのシャドウマスク用合金薄板を「フラットマス
ク」という)、このフラットマスクに焼鈍を施した後、
ブラウン管の形状に合うように曲面形状にプレス成形
し、しかる後、それをシャドウマスクに組立て、その表
面上に黒化処理を施す。
【0003】しかし、このような従来のFe−Ni系合
金のシャドウマスク用材料は、従来から使用されている
低炭素鋼のシャドウマスク用材料に較べて黒化処理性に
劣るという大きな問題を有している。すなわち、Fe−
Ni系合金のシャドウマスク用材料は、黒化処理により
形成される酸化膜(以下、黒化膜という)の黒色度、黒
色度の均一性および密着性が低炭素鋼のシャドウマスク
用材料に較べて劣っている。従来、このようなFe−N
i系合金の黒化処理性の問題を解決するために、以下の
ような技術が知られている。
【0004】従来技術1: 特開昭61−194059
号公報には、Fe−Ni系インバー合金に黒色度が良好
で且つ緻密で密着性の高い黒化膜を形成させるために、
黒化処理雰囲気中の水蒸気量を適正に制御し、且つ前段
は酸化力の弱い雰囲気中で、また後段は酸化力の強い雰
囲気中でそれぞれ処理を行う方法が提案されている。 従来技術2: 特開平3−199384号公報では、F
e−Ni系インバー合金の表面に緻密で密着性の高い黒
化膜を形成させるために、黒化処理条件を適正化(大気
中400〜800℃での処理)することに加え、その処
理前に露点0℃以上の雰囲気中で400〜800℃の焼
鈍処理を行うことが提案されている。 従来技術3: 特開昭61−42838号公報では、F
e−Ni系インバー合金の黒化膜の熱輻射率を向上させ
るために、合金中にMnを0.8〜10wt%添加し、
黒化膜をFe、Ni、Mn、Oからなるスピネル構造と
することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来技
術には以下のような問題がある。まず、従来技術1は、
黒化処理を特別な雰囲気で行うために従来用いられてい
る黒化処理炉が使用できず、このため工業上の実用性に
乏しいという根本的な問題がある。また、この技術では
素材の成分によっては黒色度が必ずしも均一にならず、
優れた熱輻射性能を均一に発揮することができないとい
う欠点もある。また、従来技術2は、黒化処理前の焼鈍
処理を特別な条件(雰囲気、温度)で行う必要があるた
め工業上の実用性に乏しく、また、黒色度が必ずしも均
一にならず、優れた熱輻射性能を均一に発揮することが
できないという欠点がある。さらに、従来技術3は、酸
化し易いMnを多量に含むため合金板の製造工程中の熱
処理時に強固な酸化膜が形成され、この酸化膜のために
エッチング性が劣るという欠点がある。また、固溶強化
元素であるMnを多量に含んでいるため強度が上昇し、
プレス成形性も劣っている。
【0006】また、最近ではブラウン管製造の生産性向
上、コスト低減化のために、黒化処理の低温化、短時間
化に対する要望が高まりつつある。従来行われている黒
色化処理は、例えば、先に述べた従来技術1では500
〜700℃で10分以上の処理の後、550〜750℃
で10分以上の処理が行われ、従来技術2では450℃
で180分、550℃で100分、600℃で60分の
処理が行われ、また、従来技術3では620℃で30分
の処理が行われているように、少なくとも450℃では
180分、500℃以上でも10分以上という長時間の
処理が必要であり、これよりも低温度、短時間で処理し
た場合、黒化膜の所望の黒色度、黒色度の均一性および
密着性が得られないという問題がある。
【0007】本発明はこのような従来の問題に鑑みなさ
れたもので、黒色度、黒色度の均一性および密着性が優
れ、且つ高い熱輻射能を有する黒化膜を有し、しかも、
このような黒化膜を従来よりも短時間の黒化処理で形成
することが可能なシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄
板およびFe−Ni−Co系合金薄板の提供を目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、黒化処理
性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板およ
びFe−Ni−Co系合金薄板を開発すべく鋭意研究を
重ねた結果、合金薄板の成分組成と特定の結晶面の集積
度を所定の範囲に規制することにより、優れた黒化処理
性が得られ、所望の性能を有する黒化膜を従来よりも短
時間の黒化処理で形成できることを見出した。本発明は
このような知見に基づきなされたもので、その特徴とす
る構成は以下の通りである。
【0009】(1) Ni:34〜38wt%、H:
1.9ppm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:
0.020wt%以下、Si:0.09wt%以下、C
r:0.06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、
Mo:0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、
Nb:0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、
Cu:0.03wt%以下を含有し、Ti+Cr+Al
+Si≦0.10wt%であり、残部Feおよび不可避
不純物からなり、黒化処理直前における板表面での{2
10}結晶面の集積度が16%以下である黒化処理性に
優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板。
【00010】(2) Ni:34〜38wt%、H:
1.9ppm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:
0.020wt%以下、Si:0.09wt%以下、C
r:0.06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、
Mo:0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、
Nb:0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、
Cu:0.03wt%以下、Co:1wt%以下を含有
し、Ti+Cr+Al+Si≦0.10wt%であり、
残部Feおよび不可避不純物からなり、黒化処理直前に
おける板表面での{210}結晶面の集積度が16%以
下である黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−N
i系合金薄板。
【00011】(3) Ni:28〜38wt%、H:
1.9ppm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:
0.020wt%以下、Si:0.09wt%以下、C
r:0.06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、
Mo:0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、
Nb:0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、
Cu:0.03wt%以下、Co:1wt%超〜7wt
%以下を含有し、Ti+Cr+Al+Si≦0.10w
t%であり、残部Feおよび不可避不純物からなり、黒
化処理直前における板表面での{210}結晶面の集積
度が16%以下である黒化処理性に優れたシャドウマス
ク用Fe−Ni−Co系合金薄板。
【00012】
【作用】以下、本発明の詳細をその限定理由とともに説
明する。まず、成分組成の限定理由は以下の通りであ
る。色ずれの発生を防止するためにシャドウマスク用F
e−Ni系合金薄板に要求される30〜100℃の温度
域における平均熱膨張係数の上限値は、2.0×(1/
106)/℃である。熱膨張係数は合金のNi量に依存
し、上記の平均熱膨張係数の条件を満足するためのNi
量は34〜38wt%である。このためNiは34〜3
8wt%の範囲とする。また、より低い平均熱膨張係数
を得るためには、Niを35〜37wt%、さらに好ま
しくは35.5〜36.0wt%とすることが望まし
い。通常、CoはFe−Ni系合金中に不可避不純物と
してある程度含まれており、Coが1wt%以下では特
性にほとんど影響を与えず、Ni量も上記範囲でよい。
一方、Coを1wt%超〜7wt%含有する場合には、
上記の平均熱膨張係数の条件を満足するためのNiの範
囲は28〜38wt%である。このためCoを1wt%
超〜7wt%含有する場合には、Niは28〜38wt
%の範囲とする。また、Coを3〜6wt%、Niを3
0〜33wt%とすることにより、さらに優れた特性が
得られる。また、Coが7wt%を超えると逆に熱膨張
係数が劣化するため、Coの上限は7wt%とする。
【00013】Hは、Fe−Ni系合金の溶製時に不可
避的に混入する元素である。特に、従来のFe−34〜
38%Niのインバー合金では精錬工程で水分を吸収し
易いCaO系スラグを用いているため、このCaO系ス
ラグがメタル側へのHの供給源となり、不可避的に1.
9ppmを超える量(場合によっては4〜5ppm程
度)のHが含まれている。合金中に含まれるHは、黒化
膜の形成時にHガスとして合金内から放出されるため、
合金中のH量が多いと黒化膜が多孔質となり、この結
果、黒化膜の剛性が小さくなり、黒化膜の密着性が劣化
してしまう。また、このようなHによる黒化膜の密着性
の劣化は、比較的低温、短時間の黒化処理で形成される
黒化膜において特に著しい。Hが1.9ppmを超える
と黒化膜の密着性の劣化が著しくなるため、Hは1.9
ppmを上限する。
【0014】黒化膜の黒色度を高めることで高い熱輻射
率を得るためには、合金中のMn、Cr、Al、Ti、
Siの各含有量を以下のように規制する必要がある。M
nは高い黒色度を有する黒化膜を形成させるためには有
害な元素であり、できるだけ低減することが好ましい。
Mnが0.35wt%を超えるとMnを含むスピネル酸
化物が生成し、本発明が前提とする黒化処理条件の下で
は黒色度の優れた黒化膜を形成することができない。こ
のためMnは0.35wt%を上限とする。Crは合金
の溶製時に不可避的に混入する元素であり、Crが多い
と黒化膜中にCrの酸化物が形成され、本発明が前提と
する黒化処理条件の下では黒色度の優れた黒化膜を形成
することができない。Crが0.06wt%を超えると
黒化膜の黒色度が劣化するため、0.06wt%を上限
とする。
【0015】Alは合金の溶製時に脱酸元素として用い
られるが、0.020wt%を超えるとAlの酸化物が
形成され、本発明が前提とする黒化処理条件の下では黒
色度の優れた黒化膜を形成することができない。このた
めAlは0.020wt%を上限とする。Tiは合金の
溶製時に不可避的に混入する元素であり、0.03wt
%を超えるとTiの酸化物が形成され、本発明が前提と
する黒化処理条件の下では黒色度の優れた黒化膜を形成
することができない。このためTiは0.03wt%を
上限とする。Siは合金の溶製時に脱酸元素として用い
られるが、0.09wt%を超えるとSiの酸化物が形
成され、本発明が前提とする黒化処理条件の下では黒色
度の優れた黒化膜を形成することができない。このため
Siは0.09wt%を上限とする。なお、以上のM
n、Cr、Al、Ti、Siの範囲において、その含有
量をできるだけ低減すれば、より優れたレベルの黒色度
を有する黒化膜を得ることができる。
【0016】また、黒化膜の優れた黒色度を得るために
は、Ti、Cr、Al、Siの総量を規制することが重
要である。図1は、Ni、Co、H、Cr、Al、T
i、Si、Mo、W、Nb、V、Cuの各含有量が上述
した本発明範囲内にあるFe−Ni系合金薄板およびF
e−Ni−Co系合金薄板について、Mn量およびTi
+Cr+Al+Si量と黒化膜の黒色度および熱輻射率
との関係を示したものである。これによれば、Mn量が
0.35wt%以下で、しかもTi+Cr+Al+Si
量が0.10wt%以下の場合に、本発明が目的とする
優れた黒色度および熱輻射率(0.50以上)の黒化膜
が得られている。このため本発明では、Ti+Cr+A
l+Siの上限を0.10wt%と規定する。
【0017】黒化膜の熱輻射率を高めるためには、上記
のように黒化膜の黒色度を高めることに加えて、黒化膜
を所定の膜厚まで成長させる必要があり、このためには
本発明が前提とする黒化処理条件の下で黒化膜の成長速
度を高める必要がある。ここで、黒化膜の成長速度を高
めるにはMo、W、Nb、V、Cuの各元素の含有量を
低減させることが必要である。これらの元素は、合金を
電気炉で溶製、精錬する際に混入する元素であるが、M
o:0.06wt%、W:0.04wt%、Nb:0.
03wt%、V:0.02wt%、Cu:0.03wt
%の各含有量を超えると黒化膜の成長速度が小さくな
り、本発明が前提とする比較的低温、短時間の黒化処理
の下では、十分な膜厚の黒化膜が形成できない。このた
めMo:0.06wt%以下、W:0.04wt%以
下、Nb:0.03wt%以下、V:0.02wt%以
下、Cu:0.03wt%以下と規定する。
【0018】Mo、W、Nb、V、Cuの各元素が黒化
膜の成長速度を低下させる理由は必ずしも明らかではな
いが、これら元素の含有量が上記上限を超えた合金薄板
は、黒化膜と合金板との界面に上記元素の濃化が認めら
れることから、これら元素の界面での濃化により鉄が外
部に拡散しにくくなり、この結果、黒化膜の成長速度が
小さくなるものと考えられる。なお、本発明においては
特に限定しないが、C、N、O、S、P、Bの各元素の
含有量を低減することにより、黒化膜の密着性をより向
上させることができる。具体的には、C:0.0050
wt%以下、N:0.0015wt%以下、O:0.0
030wt%以下、S:0.0020wt%以下、P:
0.0040wt%以下、B:0.0030wt%以下
とすることにより、黒化膜の密着性をより優れたものと
することができる。また、本発明においては希土類元素
は黒化膜の黒色度向上には有害であり、希土類元素はそ
の合計の含有量で0.0002wt%以下とすることが
好ましい。
【0019】以上のような成分組成の規定により、目的
とする膜厚と黒色度を有する黒化膜を形成させることが
できるが、TV用フラットマスクのサイズで見ると依然
として黒化膜の黒色度にムラが生じるという問題が残さ
れている。このような問題に対し、本発明者らは本発明
が規定する成分組成の合金を用いて、板表面の結晶方位
を様々に変えた合金薄板を作成し、板表面の結晶方位と
黒色度のムラの発生との関係を調べた。その結果、黒化
膜の黒色度のムラを抑制するには、黒化処理直前の板表
面での{210}結晶面の集積度を特定値以下に抑える
ことが有効であることを見出した。
【0020】図2は、本発明が規定する成分条件を満足
するFe−Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合
金薄板について、黒化処理直前の板表面での{210}
結晶面の集積度が黒化膜の黒色度のムラ発生に及ぼす影
響を調べたものである。これによれば、板表面での{2
10}結晶面の集積度を16%以下とすることにより、
黒色度のムラの発生が極めて少なくなることが判る。こ
のため本発明では合金薄板の板表面での{210}結晶
面の集積度を16%以下と規定する。このように{21
0}結晶面の集積度が特定の値を超えると黒色度のムラ
が著しくなる理由は必ずしも明らかではないが、黒色度
にムラが生じる部分の結晶方位が{210}結晶面であ
る頻度が高いことから、この結晶面での酸化速度や酸化
物の性状が他の方位に比べて著しく異なることによるも
のと考えられる。
【0021】{210}結晶面の集積度は、黒化処理直
前の合金板表面の(420)回折面の相対X線回折強度
比を(111)、(200)、(220)、(31
1)、(331)および(420)の各回折面の相対X
線強度比の和で割ることにより求めることができる。こ
こで、相対X線回折強度比とは各回折面で測定されたX
線回折強度を、その回折面の理論X線回折強度で割った
ものである。例えば、(111)回折面の相対X線回折
強度比は(111)回折面のX線回折強度を(111)
回折面のX線回折理論強度で割ったものである。なお、
{210}結晶面の集積度の測定は、{211}面と方
位でみて等価な(420)回折面のX線回折強度の測定
により行った。
【0022】本発明が規定する{210}結晶面の集積
度を得るために、合金薄板の製造工程では極力{21
0}結晶面を形成させない製造条件が採られる。例え
ば、本発明の合金薄板を、分塊圧延スラブまたは連続鋳
造スラブを熱間圧延して得られた熱延板、または合金を
直接鋳造して得られた薄鋳板若しくはこれを熱間圧延し
て得られた熱延板を素材として製造する場合には、熱間
圧延後に熱延板焼鈍を実施し、且つその焼鈍温度を81
0〜890℃の範囲内で適切な温度に制御することが
{210}結晶面の形成を抑制するために有効である。
【0023】なお、本発明が規定する{210}結晶面
の集積度を得るには、製造工程において分塊圧延後のス
ラブまたは連続鋳造スラブを均一化熱処理することは好
ましくない。例えば、この均一化熱処理が1200℃以
上、10時間以上の条件で行われた場合、{210}結
晶面の集積度が本発明が規定する条件から外れてしまう
ので、このような処理は避けなければならない。また、
本発明が規定する{210}結晶面の集積度は、上記し
た方法以外にも急冷凝固法の採用、熱間加工での再結晶
のコントロールによる集合組織制御等により得ることが
できる。
【0024】
【実施例】取鍋精錬によって表1〜表4に示す化学成分
を有する合金No.1〜32を調整し、合金No.1〜
No.26についてはインゴットに鋳造し、これらのイ
ンゴットを手入れ後、分塊圧延、表面疵取り、熱間圧延
(加熱条件:1100℃×3時間)、疵取して熱延板を
得た。また、合金No.27〜32については薄鋳板に
直接鋳造し、この薄鋳板を1200〜950℃の温度で
圧下率25%で熱間圧延した後700℃で巻取り、熱延
板を得た。これら熱延板に対して表5に示す条件で熱延
板焼鈍を行った後、冷間圧延−焼鈍−仕上冷間圧延を行
い、板厚0.25mmの合金板を得た。なお、これらの
合金板は熱間圧延後の段階で十分に再結晶していた。
【0025】これらの合金板をエッチングによりフラッ
トマスクに加工した後、810℃でプレス前焼鈍を施
し、プレス成形後560℃×8分の条件で黒化処理を施
した。黒化処理直前の合金板表面の{210}結晶面の
集積度は、先に述べたX線回折による方法により求め
た。{210}結晶面の集積度、黒化膜の密着性、黒色
度、膜厚、黒色度のムラ発生状況および熱輻射率を表6
および表7に示す。なお、黒化膜の密着性は、黒化膜の
上に接着テープを貼り、180℃密着曲げ後にテープを
剥がし、テープの接着面への黒化膜の付着状況により評
価した。
【0026】表6および表7によれば、本発明条件を満
足する成分組成と{210}結晶面の集積度を有する合
金No.1〜No.13、No.27〜No.31は黒
化膜の密着性、黒色度、黒色度のムラ発生状況および熱
輻射率ともに本発明が目的とする優れたレベルを示して
いる。特に、合金No.1およびNo.13はMn、A
l、Si、Cr、Tiが特に好ましいレベルまで低減さ
れているため、黒化膜の黒色度および熱輻射率は本発明
例である合金No.2〜No.12よりも優れている。
また、合金No.1、No.4〜No.10、No.2
7、No.28、No.30、No.31は{210}
結晶面の集積度が特に好ましいレベルまで低減されてい
るため、本発明例である合金No.2、No.3、N
o.11〜No.13に較べ黒色度のムラの発生もより
少ない。
【0027】これに対して、合金No.14は本発明の
上限を超えるHを含有した比較例であり、黒化膜の密着
性が劣っている。合金No.15〜No.20はそれぞ
れ本発明の上限を超えるMn、Al、Siおよび〔Ti
+Cr+Al+Si〕、Cr、Ti、〔Ti+Cr+A
l+Si〕を含有した比較例であり、黒化膜の黒色度お
よび熱輻射率が本発明例に比べて劣っている。また、合
金No.21〜No.25はそれぞれ本発明の上限を超
えるMo、W、Nb、V、Cuを含有した比較例であ
り、黒化膜の黒色度は本発明が目標とするレベルに達し
ているものの、黒化膜の膜厚が本発明例に較べて薄いた
め、熱輻射率は本発明例に比べて小さい。
【0028】合金No.17、No.18、No.2
1、No.22、No.26およびNo.32は{21
0}結晶面の集積度が本発明の上限を超えた比較例であ
り、いずれも黒化膜の黒色度にムラが生じている。以上
の実施例から明らかなように、本発明条件を満足する成
分組成および{210}結晶面の集積度とすることによ
り、黒化膜の密着性、黒色度および熱輻射率が優れ、黒
色度のムラもないシャドウマスク用Fe−Ni系合金薄
板およびFe−Ni−Co系合金薄板が得られることが
判る。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【発明の効果】以上述べたように本発明のシャドウマス
ク用Fe−Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合
金薄板によれば、従来よりも比較的低温且つ短時間の黒
化処理により、優れた黒色度および密着性と高い熱輻射
率を示し、且つ黒色度のムラも少ない黒化膜を形成させ
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mn量およびTi+Cr+Al+Si量と黒化
膜の黒色度および熱輻射率との関係を示したグラフ
【図2】板表面の{210}結晶面の集積度と黒化膜の
黒色度のムラ発生状況との関係を示したグラフ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:34〜38wt%、H:1.9p
    pm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:0.02
    0wt%以下、Si:0.09wt%以下、Cr:0.
    06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、Mo:
    0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、Nb:
    0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、Cu:
    0.03wt%以下を含有し、Ti+Cr+Al+Si
    ≦0.10wt%であり、残部Feおよび不可避不純物
    からなり、黒化処理直前における板表面での{210}
    結晶面の集積度が16%以下である黒化処理性に優れた
    シャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板。
  2. 【請求項2】 Ni:34〜38wt%、H:1.9p
    pm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:0.02
    0wt%以下、Si:0.09wt%以下、Cr:0.
    06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、Mo:
    0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、Nb:
    0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、Cu:
    0.03wt%以下、Co:1wt%以下を含有し、T
    i+Cr+Al+Si≦0.10wt%であり、残部F
    eおよび不可避不純物からなり、黒化処理直前における
    板表面での{210}結晶面の集積度が16%以下であ
    る黒化処理性に優れたシャドウマスク用Fe−Ni系合
    金薄板。
  3. 【請求項3】 Ni:28〜38wt%、H:1.9p
    pm以下、Mn:0.35wt%以下、Al:0.02
    0wt%以下、Si:0.09wt%以下、Cr:0.
    06wt%以下、Ti:0.03wt%以下、Mo:
    0.06wt%以下、W:0.04wt%以下、Nb:
    0.03wt%以下、V:0.02wt%以下、Cu:
    0.03wt%以下、Co:1wt%超〜7wt%以下
    を含有し、Ti+Cr+Al+Si≦0.10wt%で
    あり、残部Feおよび不可避不純物からなり、黒化処理
    直前における板表面での{210}結晶面の集積度が1
    6%以下である黒化処理性に優れたシャドウマスク用F
    e−Ni−Co系合金薄板。
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KR100418813B1 (ko) * 1996-11-08 2004-04-29 엘지마이크론 주식회사 섀도우마스크용원소재제조방법

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CN1110576C (zh) * 1999-05-03 2003-06-04 蒂森克鲁普德国联合金属制造有限公司 铁镍合金

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