JPH06317700A - 電子線照射装置 - Google Patents
電子線照射装置Info
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- JPH06317700A JPH06317700A JP5127889A JP12788993A JPH06317700A JP H06317700 A JPH06317700 A JP H06317700A JP 5127889 A JP5127889 A JP 5127889A JP 12788993 A JP12788993 A JP 12788993A JP H06317700 A JPH06317700 A JP H06317700A
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- foil
- irradiation
- irradiation apparatus
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 低エネルギー電子線を用いて表面処理を効率
良く行うことができる電子線照射装置を提供する。 【構成】 電子線照射装置をたとえば表面殺菌等に使用
する場合には、加速電圧を90〜150kV、電流密度
を0.01〜0.4mA/cmの範囲内の値に設定す
る。加速電圧を90kV以上とすれば、電子線を効率良
く照射室20内に取り出し、被処理物の表面層において
十分な線量を得ることができる。しかも、電流密度を
0.40mA/cm以下とすれば、窓箔32の温度をそ
の耐熱温度以下に抑えることができる。
良く行うことができる電子線照射装置を提供する。 【構成】 電子線照射装置をたとえば表面殺菌等に使用
する場合には、加速電圧を90〜150kV、電流密度
を0.01〜0.4mA/cmの範囲内の値に設定す
る。加速電圧を90kV以上とすれば、電子線を効率良
く照射室20内に取り出し、被処理物の表面層において
十分な線量を得ることができる。しかも、電流密度を
0.40mA/cm以下とすれば、窓箔32の温度をそ
の耐熱温度以下に抑えることができる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面処理に利用される
ものであって、特に、たとえば食品・薬品等を包装する
包装材等の表面殺菌に利用される電子線照射装置に関す
るものである。
ものであって、特に、たとえば食品・薬品等を包装する
包装材等の表面殺菌に利用される電子線照射装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、食品・薬品等を包装する包装材等
は、健康衛生面等を考慮して病原菌及びその他の微生物
を滅菌レベルで殺菌する必要がある。また、食品・薬品
等を包装する包装材等の表面殺菌を行う場合には、内容
物への影響を考慮し、その包装材だけを殺菌することが
要求される。このため、従来より、かかる包装材の殺菌
には、化学的殺菌剤、或いは紫外線や高エネルギー電子
線等の放射線が用いられていた。
は、健康衛生面等を考慮して病原菌及びその他の微生物
を滅菌レベルで殺菌する必要がある。また、食品・薬品
等を包装する包装材等の表面殺菌を行う場合には、内容
物への影響を考慮し、その包装材だけを殺菌することが
要求される。このため、従来より、かかる包装材の殺菌
には、化学的殺菌剤、或いは紫外線や高エネルギー電子
線等の放射線が用いられていた。
【0003】しかし、化学的殺菌剤を用いた表面殺菌で
は以下に述べる問題がある。たとえば、内容物をフィル
ムで無菌包装する無菌充填包装装置では、まず、過酸化
水素の薬液にフィルムをどぶ付けした後、熱風により乾
燥することによってフィルムを殺菌し、内容物をフィル
ムで密封包装した後、一個の製品毎にフィルムを切断す
る構成になっている。ところで、過酸化水素は発ガン性
の物質であるため、内容物が食品等である場合には、最
終製品から過酸化水素が検出されないようにすることが
法的に要求されている。このため、使用した過酸化水素
が最終製品に残留しないように十分注意を払う必要があ
り、抜き取り検査の実施が必要となるだけでなく、作業
者には精神的不安が残る。また、過酸化水素の処理のた
めの熱風を起こすのに大きなエネルギーを必要とし、さ
らに、装置の殺菌を行う部分のスペースをかなり大きく
しなければならない等の問題がある。
は以下に述べる問題がある。たとえば、内容物をフィル
ムで無菌包装する無菌充填包装装置では、まず、過酸化
水素の薬液にフィルムをどぶ付けした後、熱風により乾
燥することによってフィルムを殺菌し、内容物をフィル
ムで密封包装した後、一個の製品毎にフィルムを切断す
る構成になっている。ところで、過酸化水素は発ガン性
の物質であるため、内容物が食品等である場合には、最
終製品から過酸化水素が検出されないようにすることが
法的に要求されている。このため、使用した過酸化水素
が最終製品に残留しないように十分注意を払う必要があ
り、抜き取り検査の実施が必要となるだけでなく、作業
者には精神的不安が残る。また、過酸化水素の処理のた
めの熱風を起こすのに大きなエネルギーを必要とし、さ
らに、装置の殺菌を行う部分のスペースをかなり大きく
しなければならない等の問題がある。
【0004】また、紫外線殺菌装置では、シャドウ効果
により影となる部分が殺菌できないため、この部分の塵
や埃等の殺菌ができず、滅菌レベルの殺菌が行えないと
いう問題がある。
により影となる部分が殺菌できないため、この部分の塵
や埃等の殺菌ができず、滅菌レベルの殺菌が行えないと
いう問題がある。
【0005】さらに、γ線や高エネルギー電子線により
殺菌を行う場合には、装置が大型となり、γ線やX線が
発生するので、装置をシールドする必要がある。このた
め、製品を製造する場合、殺菌工程については滅菌専門
の別工場で一括してバッチ処理方式で処理しなければな
らず、殺菌工程を製品の製造ラインに組み込むことが困
難であるという問題がある。
殺菌を行う場合には、装置が大型となり、γ線やX線が
発生するので、装置をシールドする必要がある。このた
め、製品を製造する場合、殺菌工程については滅菌専門
の別工場で一括してバッチ処理方式で処理しなければな
らず、殺菌工程を製品の製造ラインに組み込むことが困
難であるという問題がある。
【0006】このため、食品・薬品等が包装された包装
材等の表面殺菌を行う場合には、加速電圧が低く、装置
の小型化を図ることができる低エネルギー電子線を利用
することが検討されている。
材等の表面殺菌を行う場合には、加速電圧が低く、装置
の小型化を図ることができる低エネルギー電子線を利用
することが検討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現在の
低エネルギータイプの電子線照射装置では、加速電圧の
最小設定値は150kVであると認識されている。これ
は、加速電圧が150kVより小さいと、電子線の透過
力が極めて弱く、電子線を発生する電子線発生部と電子
線を被処理物に照射する処理室とを仕切る窓箔に大部分
の電子線が吸収されるため、照射室内に効率よく電子線
を取り出すことができず、しかも窓箔の温度がその耐熱
温度以上に上昇するおそれがあるからである。このた
め、低エネルギー電子線を用いて表面処理を効率良く行
うことができる電子線照射装置の実現が望まれている。
低エネルギータイプの電子線照射装置では、加速電圧の
最小設定値は150kVであると認識されている。これ
は、加速電圧が150kVより小さいと、電子線の透過
力が極めて弱く、電子線を発生する電子線発生部と電子
線を被処理物に照射する処理室とを仕切る窓箔に大部分
の電子線が吸収されるため、照射室内に効率よく電子線
を取り出すことができず、しかも窓箔の温度がその耐熱
温度以上に上昇するおそれがあるからである。このた
め、低エネルギー電子線を用いて表面処理を効率良く行
うことができる電子線照射装置の実現が望まれている。
【0008】本発明は上記事情に基づいてなされたもの
であり、低エネルギー電子線を用いて表面処理を効率良
く行うことができる電子線照射装置を提供することを目
的とするものである。
であり、低エネルギー電子線を用いて表面処理を効率良
く行うことができる電子線照射装置を提供することを目
的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明は、線状の陰極から放出された熱電子を電子
線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部
と、被処理物に前記電子線を照射する照射室と、前記電
子線発生部内の真空雰囲気と前記照射室内の照射雰囲気
とを仕切ると共に前記電子線を透過させる金属箔とを備
える電子線照射装置において、前記電子線発生部で前記
電子線を加速する加速電圧を90kV〜150kVの範
囲内の値とし、且つビーム電流を電子線有効照射幅で割
った値である電流密度を0.01mA/cm〜0.40
mA/cmの範囲内の値としたことを特徴とするもので
ある。
めの本発明は、線状の陰極から放出された熱電子を電子
線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部
と、被処理物に前記電子線を照射する照射室と、前記電
子線発生部内の真空雰囲気と前記照射室内の照射雰囲気
とを仕切ると共に前記電子線を透過させる金属箔とを備
える電子線照射装置において、前記電子線発生部で前記
電子線を加速する加速電圧を90kV〜150kVの範
囲内の値とし、且つビーム電流を電子線有効照射幅で割
った値である電流密度を0.01mA/cm〜0.40
mA/cmの範囲内の値としたことを特徴とするもので
ある。
【0010】また、前記金属箔は厚さ10μm〜13μ
mのチタン箔であることが望ましい。
mのチタン箔であることが望ましい。
【0011】また、前記金属箔は厚さ20μm〜30μ
mのアルミニウム箔であってもよい。
mのアルミニウム箔であってもよい。
【0012】
【作用】本発明は上記の構成により、加速電圧を90k
V〜150kVの範囲内の値とし、且つ電流密度を0.
01mA/cm〜0.40mA/cmの範囲内の値とす
ることにより、金属箔の温度をその耐熱温度以下に抑え
て、電子線を効率良く照射室内に取り出し、被処理物の
表面層において十分な線量を得ることができる。ここ
で、加速電圧が90kVより低いと電子線を照射室内に
効率良く取り出すことができなくなり、加速電圧が15
0kVより高いと装置が大型になってしまう。また、電
流密度が0.01mA/cmより小さいと実用的な処理
能力を得ることができず、電流密度が0.40mA/c
mより大きいと金属箔の温度がその耐熱温度より上昇し
てしまう。
V〜150kVの範囲内の値とし、且つ電流密度を0.
01mA/cm〜0.40mA/cmの範囲内の値とす
ることにより、金属箔の温度をその耐熱温度以下に抑え
て、電子線を効率良く照射室内に取り出し、被処理物の
表面層において十分な線量を得ることができる。ここ
で、加速電圧が90kVより低いと電子線を照射室内に
効率良く取り出すことができなくなり、加速電圧が15
0kVより高いと装置が大型になってしまう。また、電
流密度が0.01mA/cmより小さいと実用的な処理
能力を得ることができず、電流密度が0.40mA/c
mより大きいと金属箔の温度がその耐熱温度より上昇し
てしまう。
【0013】また、金属箔として厚さ10μm〜13μ
mのチタン箔、或いは厚さ20μm〜30μmのアルミ
ニウム箔を用いることにより、電子線発生部内の真空雰
囲気を十分維持でき、また、電子線を照射室内に容易に
透過させることができる。
mのチタン箔、或いは厚さ20μm〜30μmのアルミ
ニウム箔を用いることにより、電子線発生部内の真空雰
囲気を十分維持でき、また、電子線を照射室内に容易に
透過させることができる。
【0014】
【実施例】以下に、本発明の一実施例について図面を参
照して説明する。図1は本発明の一実施例である電子線
照射装置の概略構成図、図2はその電子線照射装置の電
子線発生部の概略回路図である。
照して説明する。図1は本発明の一実施例である電子線
照射装置の概略構成図、図2はその電子線照射装置の電
子線発生部の概略回路図である。
【0015】本実施例の電子線照射装置は、表面処理、
特に表面殺菌に利用されるものであり、図1に示すよう
に、電子線発生部10と、照射室20と、照射窓部30
とを備えるものである。
特に表面殺菌に利用されるものであり、図1に示すよう
に、電子線発生部10と、照射室20と、照射窓部30
とを備えるものである。
【0016】電子線発生部10は、電子線を発生するタ
ーミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を真
空空間(加速空間)で加速する加速管14とを有するも
のである。また、電子線発生部10の内部は、電子が気
体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図
示しない拡散ポンプ等により10-6〜10-7Torrの真空
に保たれている。ターミナル12は、熱電子を放出する
線状のフィラメント12aと、フィラメント12aを支
持するガン構造体12bと、フィラメント12aで発生
した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有す
る。
ーミナル12と、ターミナル12で発生した電子線を真
空空間(加速空間)で加速する加速管14とを有するも
のである。また、電子線発生部10の内部は、電子が気
体分子と衝突してエネルギーを失うことを防ぐため、図
示しない拡散ポンプ等により10-6〜10-7Torrの真空
に保たれている。ターミナル12は、熱電子を放出する
線状のフィラメント12aと、フィラメント12aを支
持するガン構造体12bと、フィラメント12aで発生
した熱電子をコントロールするグリッド12cとを有す
る。
【0017】また、図2に示すように、電子線発生部1
0には、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生さ
せるための加熱用電源16aと、フィラメント12aと
グリッド12cとの間に電圧を印加する制御用直流電源
16bと、グリッド12cと照射窓部30に設けられた
窓箔32との間に電圧を印加する加速用直流電源16c
とが設けられている。
0には、フィラメント12aを加熱して熱電子を発生さ
せるための加熱用電源16aと、フィラメント12aと
グリッド12cとの間に電圧を印加する制御用直流電源
16bと、グリッド12cと照射窓部30に設けられた
窓箔32との間に電圧を印加する加速用直流電源16c
とが設けられている。
【0018】照射室20は、被処理物に電子線を照射す
る照射空間22を含むものである。本実施例のように、
殺菌処理を行う場合には、殺菌の際の酸素効果を利用す
るため、照射室20の内部は空気雰囲気としている。ま
た、被処理物は照射室20内をコンベア等の搬送手段
(不図示)により、図1において左側から右側に移動す
る。尚、電子線発生部10及び照射室20の周囲は電子
線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないよ
うに、鉛遮蔽が施されている。
る照射空間22を含むものである。本実施例のように、
殺菌処理を行う場合には、殺菌の際の酸素効果を利用す
るため、照射室20の内部は空気雰囲気としている。ま
た、被処理物は照射室20内をコンベア等の搬送手段
(不図示)により、図1において左側から右側に移動す
る。尚、電子線発生部10及び照射室20の周囲は電子
線照射時に二次的に発生するX線が外部へ漏出しないよ
うに、鉛遮蔽が施されている。
【0019】照射窓部30は、金属箔からなる窓箔32
と、窓箔32を冷却すると共に窓箔32を支持する窓枠
構造体34とを有するものである。窓箔32は、電子線
発生部10内の真空雰囲気と照射室20内の空気雰囲気
とを仕切るものであり、また窓箔32を介して照射室2
0内に電子線を取り出すものである。殺菌処理等に電子
線を応用する場合には、被処理物が電子線を照射される
照射室20の内部は空気雰囲気であるので、電子線発生
部10と照射室20との境界に設ける窓箔32には、ピ
ンホールがなく、電子線発生部10内の真空雰囲気を十
分維持できる機械的強度があり、しかも、電子線が透過
しやすいように比重が小さく肉厚の薄い金属が望まし
い。たとえば、窓箔32に使用される金属として厚さ約
10μm程度のTiがある。通常は、窓箔32として、
機械的な取扱いやすさから、厚さ約13μmのTi箔が
最もよく使用されている。
と、窓箔32を冷却すると共に窓箔32を支持する窓枠
構造体34とを有するものである。窓箔32は、電子線
発生部10内の真空雰囲気と照射室20内の空気雰囲気
とを仕切るものであり、また窓箔32を介して照射室2
0内に電子線を取り出すものである。殺菌処理等に電子
線を応用する場合には、被処理物が電子線を照射される
照射室20の内部は空気雰囲気であるので、電子線発生
部10と照射室20との境界に設ける窓箔32には、ピ
ンホールがなく、電子線発生部10内の真空雰囲気を十
分維持できる機械的強度があり、しかも、電子線が透過
しやすいように比重が小さく肉厚の薄い金属が望まし
い。たとえば、窓箔32に使用される金属として厚さ約
10μm程度のTiがある。通常は、窓箔32として、
機械的な取扱いやすさから、厚さ約13μmのTi箔が
最もよく使用されている。
【0020】加熱用電源16aによりフィラメント12
aに電流を通じて加熱するとフィラメント12aは熱電
子を放出し、この熱電子は、フィラメント12aとグリ
ッド12cとの間に印加された制御用直流電源16bの
制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、
グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効
に取り出される。そして、このグリッド12cから取り
出された電子線は、グリッド12cと窓箔32との間に
印加された加速用直流電源16cの加速電圧により加速
管14内の加速空間で加速された後、窓箔32を突き抜
け、照射窓部30の下方の照射室20内を搬送される被
処理物に照射される。尚、通常は、加熱用電源16aと
加速用直流電源16cとを所定の値に設定し、制御用直
流電源16bを可変にすることにより、ビーム電流の調
整を行っている。
aに電流を通じて加熱するとフィラメント12aは熱電
子を放出し、この熱電子は、フィラメント12aとグリ
ッド12cとの間に印加された制御用直流電源16bの
制御電圧により四方八方に引き寄せられる。このうち、
グリッド12cを通過したものだけが電子線として有効
に取り出される。そして、このグリッド12cから取り
出された電子線は、グリッド12cと窓箔32との間に
印加された加速用直流電源16cの加速電圧により加速
管14内の加速空間で加速された後、窓箔32を突き抜
け、照射窓部30の下方の照射室20内を搬送される被
処理物に照射される。尚、通常は、加熱用電源16aと
加速用直流電源16cとを所定の値に設定し、制御用直
流電源16bを可変にすることにより、ビーム電流の調
整を行っている。
【0021】本実施例の電子線照射装置は、最大加速電
圧が175kV、電子線有効照射幅、すなわち窓箔32
を介して電子線発生部10から照射室20内に取り出
し、被処理物に照射できる電子線の照射幅が15cm、
最大ビーム電流が10mA、被処理物の移動速度が3〜
65m/min、最大照射量が60Mradであるもの
である。特に、本実施例の電子線照射装置は、加速電圧
を90〜150kVの範囲内でも設定可能であって、加
速電圧をこの低い範囲内の値に設定したときには、ビー
ム電流を電子線有効照射幅で割った値である電流密度を
0.01〜0.40mA/cmの範囲内で設定できるよ
うに構成されている。尚、電流密度(mA/cm)は、
ビーム電流(mA)÷電子線有効照射幅(cm)で与え
られる。
圧が175kV、電子線有効照射幅、すなわち窓箔32
を介して電子線発生部10から照射室20内に取り出
し、被処理物に照射できる電子線の照射幅が15cm、
最大ビーム電流が10mA、被処理物の移動速度が3〜
65m/min、最大照射量が60Mradであるもの
である。特に、本実施例の電子線照射装置は、加速電圧
を90〜150kVの範囲内でも設定可能であって、加
速電圧をこの低い範囲内の値に設定したときには、ビー
ム電流を電子線有効照射幅で割った値である電流密度を
0.01〜0.40mA/cmの範囲内で設定できるよ
うに構成されている。尚、電流密度(mA/cm)は、
ビーム電流(mA)÷電子線有効照射幅(cm)で与え
られる。
【0022】ところで、従来の低エネルギータイプの電
子線照射装置では、設定できる加速電圧の最小値は15
0kVであると認識されていた。これは、150kV以
下の加速電圧で加速した電子線は透過力が弱いため、大
部分のものが窓箔に吸収され、照射室内に効率よく電子
線を取り出すことができず、しかも窓箔の温度がその耐
熱温度以上に上がってしまうと考えられていたからであ
る。したがって、従来の低エネルギータイプの電子線照
射装置には、150kVより小さい加速電圧を設定でき
ないように、ロック機構等が設けられていた。
子線照射装置では、設定できる加速電圧の最小値は15
0kVであると認識されていた。これは、150kV以
下の加速電圧で加速した電子線は透過力が弱いため、大
部分のものが窓箔に吸収され、照射室内に効率よく電子
線を取り出すことができず、しかも窓箔の温度がその耐
熱温度以上に上がってしまうと考えられていたからであ
る。したがって、従来の低エネルギータイプの電子線照
射装置には、150kVより小さい加速電圧を設定でき
ないように、ロック機構等が設けられていた。
【0023】ここで、加速電圧の最小設定値が150k
Vであるという制限がどのようにして得られたかを説明
する。一般に、電子線照射装置では、被処理物が吸収す
る線量は、 線量(Mrad)=K×ビーム電流(mA)÷コンベア
スピード(m/min) で与えられる。ここで、電子の発生効率Kは、装置個々
の効率を表す定数であって、装置の性能の指標となる。
たとえば本実施例の電子線照射装置では、K=18以上
とする必要がある。したがって、一定のビーム電流とコ
ンベアスピードに対して、加速電圧を変えて吸収線量を
測定し、これから得られる電子の発生効率Kが所定の値
以上になるような加速電圧を求めることより、加速電圧
についての制限が得られる。また、電子線の吸収線量を
測定するには、たとえばFWT社製ナイロンフィルム、
富士写真フィルム(株)製CTAフィルム等のフィルム
線量計が用いられる。図9は、フィルム線量計として市
販されているものの中で一番肉厚の薄い50μm厚のナ
イロンフィルムを用いて測定した場合の加速電圧と電子
の発生効率Kとの関係を示す図である。この測定では、
ビーム電流を6mA、コンベアスピードを30m/mi
nに設定し、また、窓箔32には12.7μm厚のTi
箔を用い、窓箔32からフィルム線量計までの距離(ク
リアランス)を18mmとした。
Vであるという制限がどのようにして得られたかを説明
する。一般に、電子線照射装置では、被処理物が吸収す
る線量は、 線量(Mrad)=K×ビーム電流(mA)÷コンベア
スピード(m/min) で与えられる。ここで、電子の発生効率Kは、装置個々
の効率を表す定数であって、装置の性能の指標となる。
たとえば本実施例の電子線照射装置では、K=18以上
とする必要がある。したがって、一定のビーム電流とコ
ンベアスピードに対して、加速電圧を変えて吸収線量を
測定し、これから得られる電子の発生効率Kが所定の値
以上になるような加速電圧を求めることより、加速電圧
についての制限が得られる。また、電子線の吸収線量を
測定するには、たとえばFWT社製ナイロンフィルム、
富士写真フィルム(株)製CTAフィルム等のフィルム
線量計が用いられる。図9は、フィルム線量計として市
販されているものの中で一番肉厚の薄い50μm厚のナ
イロンフィルムを用いて測定した場合の加速電圧と電子
の発生効率Kとの関係を示す図である。この測定では、
ビーム電流を6mA、コンベアスピードを30m/mi
nに設定し、また、窓箔32には12.7μm厚のTi
箔を用い、窓箔32からフィルム線量計までの距離(ク
リアランス)を18mmとした。
【0024】図9から、加速電圧が低くなるに従って、
電子の発生効率Kが小さくなり、電子線を照射室20内
に取り出す効率が悪くなることがわかる。そして、電子
の発生効率Kを18以上にするためには、加速電圧を約
120kV以上に設定する必要がある。この結果と、た
とえばクリアランス等の条件を変えた場合の同様の測定
結果とから、加速電圧の最小設定値は約150kVであ
ると考えられていた。
電子の発生効率Kが小さくなり、電子線を照射室20内
に取り出す効率が悪くなることがわかる。そして、電子
の発生効率Kを18以上にするためには、加速電圧を約
120kV以上に設定する必要がある。この結果と、た
とえばクリアランス等の条件を変えた場合の同様の測定
結果とから、加速電圧の最小設定値は約150kVであ
ると考えられていた。
【0025】しかしながら、電子線照射装置を表面処理
に適用する場合には、被処理物の表面層での処理が問題
となる。かかる場合には、フィルム線量計として、市販
されているものの中で一番薄い50μm厚のナイロンフ
ィルムを用いたとしても、加速電圧が低いときには、上
記実験で得られた吸収線量を被処理物の表面層での吸収
線量とすることに問題があると考えた。そこで、本発明
者等は、表面層における正確な吸収線量を調べるため、
フィルム線量計として8μm厚のナイロンフィルムを用
いて、上記実験と同様の条件の下で加速電圧と電子の発
生効率Kとの関係の測定を行った。この測定結果を図3
に示す。また、図3には、本発明者等が電子の発生効率
Kを実際に理論的に計算した結果も示している。図3か
ら、加速電圧が150kV以下でも、90kV以上であ
れば、電子の発生効率Kが標準値18を十分満足してお
り、被処理物の表面層において十分な線量が得られるこ
とがわかる。
に適用する場合には、被処理物の表面層での処理が問題
となる。かかる場合には、フィルム線量計として、市販
されているものの中で一番薄い50μm厚のナイロンフ
ィルムを用いたとしても、加速電圧が低いときには、上
記実験で得られた吸収線量を被処理物の表面層での吸収
線量とすることに問題があると考えた。そこで、本発明
者等は、表面層における正確な吸収線量を調べるため、
フィルム線量計として8μm厚のナイロンフィルムを用
いて、上記実験と同様の条件の下で加速電圧と電子の発
生効率Kとの関係の測定を行った。この測定結果を図3
に示す。また、図3には、本発明者等が電子の発生効率
Kを実際に理論的に計算した結果も示している。図3か
ら、加速電圧が150kV以下でも、90kV以上であ
れば、電子の発生効率Kが標準値18を十分満足してお
り、被処理物の表面層において十分な線量が得られるこ
とがわかる。
【0026】また、本発明者等は、100kVと150
kVの加速電圧に対して電流密度と窓箔32の温度との
関係を測定した。ここで、窓箔32として12.7μm
厚のTi箔を用いた。この測定結果を図4に示す。加速
電圧が100kVである場合には、加速電圧が150k
Vである場合に比べて、電流密度に対するTi箔の温度
上昇率が大きい。これは、加速電圧により電子線の得る
エネルギーが異なり、エネルギーの低い電子線ほど窓箔
を透過できないので、加速電圧が低いときに窓箔温度が
上昇しやすいためである。また、ビーム電流が大きいほ
ど電子線の量が多いためである。
kVの加速電圧に対して電流密度と窓箔32の温度との
関係を測定した。ここで、窓箔32として12.7μm
厚のTi箔を用いた。この測定結果を図4に示す。加速
電圧が100kVである場合には、加速電圧が150k
Vである場合に比べて、電流密度に対するTi箔の温度
上昇率が大きい。これは、加速電圧により電子線の得る
エネルギーが異なり、エネルギーの低い電子線ほど窓箔
を透過できないので、加速電圧が低いときに窓箔温度が
上昇しやすいためである。また、ビーム電流が大きいほ
ど電子線の量が多いためである。
【0027】本発明者等は経験的に、電子線照射装置に
使用されるTi箔の耐熱温度が約500°Cであると把
握している。一般に、電子線照射装置を用いて行う処理
に、樹脂の硬化、改質、架橋等があるが、これらの処理
を行う場合には、3Mrad以上の線量を必要とし、コ
ンベアスピードを50m/min以上、電流密度を0.
7mA/cm以上に設定している。このため、かかる場
合には、図4から、加速電圧を100kVとすると、T
i箔の温度がその耐熱温度以上に上がってしまうので、
12.7μm厚のTi箔を使用できない。しかし、電子
線照射装置を表面処理等に使用する場合には、加速電圧
を100kVとしても、電流密度はあまり大きくする必
要がないので、電流密度を0.4mA/cm以下の範囲
で設定すれば、Ti箔の温度をその耐熱温度以下に抑え
ることができることがわかる。
使用されるTi箔の耐熱温度が約500°Cであると把
握している。一般に、電子線照射装置を用いて行う処理
に、樹脂の硬化、改質、架橋等があるが、これらの処理
を行う場合には、3Mrad以上の線量を必要とし、コ
ンベアスピードを50m/min以上、電流密度を0.
7mA/cm以上に設定している。このため、かかる場
合には、図4から、加速電圧を100kVとすると、T
i箔の温度がその耐熱温度以上に上がってしまうので、
12.7μm厚のTi箔を使用できない。しかし、電子
線照射装置を表面処理等に使用する場合には、加速電圧
を100kVとしても、電流密度はあまり大きくする必
要がないので、電流密度を0.4mA/cm以下の範囲
で設定すれば、Ti箔の温度をその耐熱温度以下に抑え
ることができることがわかる。
【0028】したがって、電子線照射装置を、加速電圧
が90〜150kV、電流密度が0.01〜0.4mA
/cmであるように設定すれば、電子線を照射室20に
効率良く取り出すことができ、しかもTi箔の温度をそ
の耐熱温度以下に抑えることができるので、本実施例の
電子線照射装置を用いると、表面処理を効率良く行うこ
とができる。ここで、電流密度が0.01mA/cmよ
り小さいと、コンベアスピードをあまりにも遅く調整し
なければならず、実用的な処理能力を得ることができな
い。このことから、上記電流密度の下限値0.01mA
/cmが定められた。
が90〜150kV、電流密度が0.01〜0.4mA
/cmであるように設定すれば、電子線を照射室20に
効率良く取り出すことができ、しかもTi箔の温度をそ
の耐熱温度以下に抑えることができるので、本実施例の
電子線照射装置を用いると、表面処理を効率良く行うこ
とができる。ここで、電流密度が0.01mA/cmよ
り小さいと、コンベアスピードをあまりにも遅く調整し
なければならず、実用的な処理能力を得ることができな
い。このことから、上記電流密度の下限値0.01mA
/cmが定められた。
【0029】次に、本発明者等は、本実施例の電子線照
射装置を、表面殺菌に利用することができるかどうかを
詳細に検討した。
射装置を、表面殺菌に利用することができるかどうかを
詳細に検討した。
【0030】電子線照射装置を表面殺菌に利用すること
ができるためには、まず、被処理物の内部に与える影響
が少ないことが要求されるため、被処理物に対する電子
線の浸透深さは小さくなければならない。これを確認す
るため、100kVの加速電圧に対する電子線の浸透深
さと吸収線量との関係を測定した。この測定結果を図5
に示す。ここで、図5の縦軸は電子線を照射された被処
理物の表面で受けた線量を100%とした場合の、深さ
で受ける線量の割合を表し、また、同図の横軸は被処理
物の単位面積当たりの質量(面密度g/m2 )を表す。
この浸透深さと吸収線量との関係から、被処理物の比重
と所定の深さとが与えられれば、その深さにおける電子
線の透過率を知ることができる。この測定では、ビーム
電流を2mA、コンベアスピードを5m/min、表面
線量を2.1Mradとしている。その他の条件は図3
の測定と同様である。したがって、図5によれば、加速
電圧が100kVのとき、被処理物に対する電子線の浸
透深さは確かに小さく、被処理物の内部に与える影響が
少ないことがわかる。
ができるためには、まず、被処理物の内部に与える影響
が少ないことが要求されるため、被処理物に対する電子
線の浸透深さは小さくなければならない。これを確認す
るため、100kVの加速電圧に対する電子線の浸透深
さと吸収線量との関係を測定した。この測定結果を図5
に示す。ここで、図5の縦軸は電子線を照射された被処
理物の表面で受けた線量を100%とした場合の、深さ
で受ける線量の割合を表し、また、同図の横軸は被処理
物の単位面積当たりの質量(面密度g/m2 )を表す。
この浸透深さと吸収線量との関係から、被処理物の比重
と所定の深さとが与えられれば、その深さにおける電子
線の透過率を知ることができる。この測定では、ビーム
電流を2mA、コンベアスピードを5m/min、表面
線量を2.1Mradとしている。その他の条件は図3
の測定と同様である。したがって、図5によれば、加速
電圧が100kVのとき、被処理物に対する電子線の浸
透深さは確かに小さく、被処理物の内部に与える影響が
少ないことがわかる。
【0031】ところで、図6に示すように、ある数の菌
を滅菌処理して、もとの数の90%殺すのに必要な線量
(D値)は、放射線殺菌で指標となるB.pumilus(spore
s) E-601 で約0.2Mradである。通常のフィル
ム、紙等には、1cm2 当たり約数個の菌が付着してい
ると考えられるが、ここでは安全をみて102 オーダー
の生菌がいると仮定する。また、初発菌数が約102 個
の場合、一般に滅菌保証レベル(SAL)は生存率10
-6%といわれている。したがって、8Dの線量、つまり
8×0.2=1.6Mradを照射すれば、滅菌グレー
ドの殺菌が行えることになる。このように、滅菌グレー
ドの殺菌を行うには少ない吸収線量でよいので、本実施
例の電子線照射装置を表面殺菌に使用する場合には、加
速電圧を90〜150kVの範囲内の値に設定し、しか
も電流密度を0.4mA/cm以下の値に設定しても、
コンベアスピードを遅く調整することにより、吸収線量
として十分な量を得ることができることがわかる。
を滅菌処理して、もとの数の90%殺すのに必要な線量
(D値)は、放射線殺菌で指標となるB.pumilus(spore
s) E-601 で約0.2Mradである。通常のフィル
ム、紙等には、1cm2 当たり約数個の菌が付着してい
ると考えられるが、ここでは安全をみて102 オーダー
の生菌がいると仮定する。また、初発菌数が約102 個
の場合、一般に滅菌保証レベル(SAL)は生存率10
-6%といわれている。したがって、8Dの線量、つまり
8×0.2=1.6Mradを照射すれば、滅菌グレー
ドの殺菌が行えることになる。このように、滅菌グレー
ドの殺菌を行うには少ない吸収線量でよいので、本実施
例の電子線照射装置を表面殺菌に使用する場合には、加
速電圧を90〜150kVの範囲内の値に設定し、しか
も電流密度を0.4mA/cm以下の値に設定しても、
コンベアスピードを遅く調整することにより、吸収線量
として十分な量を得ることができることがわかる。
【0032】そこで、本発明者等は、本実施例の電子線
照射装置を用いて実際に殺菌効果の確認実験を行った。
この実験では、指標菌として一般的な指標菌であるB.Pu
milus(spores) E-601を、また、試験サンプルとして5
0μm厚のLDPEフィルムを用いた。そして、クリー
ンブース(クラス100)内で以下の手順により、実験
を行った。
照射装置を用いて実際に殺菌効果の確認実験を行った。
この実験では、指標菌として一般的な指標菌であるB.Pu
milus(spores) E-601を、また、試験サンプルとして5
0μm厚のLDPEフィルムを用いた。そして、クリー
ンブース(クラス100)内で以下の手順により、実験
を行った。
【0033】まず、試験サンプルを5cm×5cmに切
り出し、メタノールで殺菌し乾燥した後、滅菌済みシャ
ーレに入れておく。菌液は無菌水(TWEEN80
0.1%溶液)で希釈し、最終の菌液をエタノール80
%溶液になるように調整する。そして、試験サンプルに
滅菌した綿棒で菌液を塗抹した後、放置乾燥する。その
後、シャーレの蓋を取り、シャーレに入れた試験サンプ
ルを電子線照射装置のコンベアに載せ、照射室20内で
電子線を照射する。電子線を照射した後、試験サンプル
はトリプトソイ寒天培地上で温度31°Cの環境で、2
4時間培養し、平板塗抹法及び混釈培養法により生菌数
を確認する。
り出し、メタノールで殺菌し乾燥した後、滅菌済みシャ
ーレに入れておく。菌液は無菌水(TWEEN80
0.1%溶液)で希釈し、最終の菌液をエタノール80
%溶液になるように調整する。そして、試験サンプルに
滅菌した綿棒で菌液を塗抹した後、放置乾燥する。その
後、シャーレの蓋を取り、シャーレに入れた試験サンプ
ルを電子線照射装置のコンベアに載せ、照射室20内で
電子線を照射する。電子線を照射した後、試験サンプル
はトリプトソイ寒天培地上で温度31°Cの環境で、2
4時間培養し、平板塗抹法及び混釈培養法により生菌数
を確認する。
【0034】また、電子線の照射条件としては、ビーム
電流を1mAに固定し、加速電圧を100kV、175
kVとしている。そして、窓箔32として厚さ12.5
μmのTi箔を用い、クリアランスを19.1mmとし
た。
電流を1mAに固定し、加速電圧を100kV、175
kVとしている。そして、窓箔32として厚さ12.5
μmのTi箔を用い、クリアランスを19.1mmとし
た。
【0035】この実験では、コンベアスピードを変える
ことによって、吸収線量を変化させ、その殺菌効果を確
認した。この実験の測定結果を図7、図8に示す。ここ
で、図8は図7の測定結果をグラフ化したもので、縦軸
に生菌数を、横軸にコンベアスピードの逆数を取ってい
る。したがって、図7、図8から、殺菌効果は加速電圧
が100kVと175kVの場合で同等であり、効果的
な殺菌処理を行うことができることがわかる。
ことによって、吸収線量を変化させ、その殺菌効果を確
認した。この実験の測定結果を図7、図8に示す。ここ
で、図8は図7の測定結果をグラフ化したもので、縦軸
に生菌数を、横軸にコンベアスピードの逆数を取ってい
る。したがって、図7、図8から、殺菌効果は加速電圧
が100kVと175kVの場合で同等であり、効果的
な殺菌処理を行うことができることがわかる。
【0036】本実施例の電子線照射装置では、加速電圧
を90〜150kVの範囲内で設定することにより、電
子線を効率良く照射室内に取り出し、被処理物の表面層
において十分な線量を得ることができ、しかも、電流密
度を0.01〜0.4mA/cmの範囲内で設定するこ
とにより、窓箔の温度をその耐熱温度以下に抑えること
ができるので、表面処理を効率良く行うことができる。
また、滅菌レベルの殺菌処理を行うことができるので、
本実施例の電子線照射装置は、表面殺菌に利用するのに
特に好適である。
を90〜150kVの範囲内で設定することにより、電
子線を効率良く照射室内に取り出し、被処理物の表面層
において十分な線量を得ることができ、しかも、電流密
度を0.01〜0.4mA/cmの範囲内で設定するこ
とにより、窓箔の温度をその耐熱温度以下に抑えること
ができるので、表面処理を効率良く行うことができる。
また、滅菌レベルの殺菌処理を行うことができるので、
本実施例の電子線照射装置は、表面殺菌に利用するのに
特に好適である。
【0037】また、本実施例の電子線照射装置では、表
面処理を行う場合には90〜150kVの加速電圧で電
子線を加速するので、制動X線の発生が少なく、自己遮
蔽を簡素化することができる。このため、本装置の製造
コストを低くすることができ、しかも、装置のコンパク
ト化を図ることができるので、たとえば製品を包装する
包装材等に殺菌処理を施す必要がある場合に、その製品
の製造ラインに、本実施例の電子線照射装置を使用した
殺菌工程を組み込むことが可能となる。
面処理を行う場合には90〜150kVの加速電圧で電
子線を加速するので、制動X線の発生が少なく、自己遮
蔽を簡素化することができる。このため、本装置の製造
コストを低くすることができ、しかも、装置のコンパク
ト化を図ることができるので、たとえば製品を包装する
包装材等に殺菌処理を施す必要がある場合に、その製品
の製造ラインに、本実施例の電子線照射装置を使用した
殺菌工程を組み込むことが可能となる。
【0038】尚、本発明は、上記の実施例に限定される
ものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が
可能である。たとえば、上記の実施例では、窓箔として
10〜13μm厚のTi箔を用いた場合について説明し
たが、たとえば、窓箔として20〜30μm厚のAl箔
を用いてもよい。
ものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が
可能である。たとえば、上記の実施例では、窓箔として
10〜13μm厚のTi箔を用いた場合について説明し
たが、たとえば、窓箔として20〜30μm厚のAl箔
を用いてもよい。
【0039】この場合、Alは熱伝導率が良いため、加
速電圧が100kVである場合でも、Al箔の温度上昇
率は、加速電圧を150kVのときの13μm厚のTi
箔の温度上昇率と同程度と考えられる。このため、電流
密度を約1mA/cm程度まで上げることができ、吸収
線量を多く取れるという利点がある。しかし、Al箔は
耐蝕性がないので、腐食防止のために不活性ガス(たと
えば、N2 ガス)を照射室内に流す等の対策が必要であ
り、そのランニングコストは非常に高いものとなる。ま
た、本発明者等が、窓箔としてAl箔を用い、照射室内
を酸素濃度が100ppmのN2 雰囲気とした場合と、
窓箔としてTi箔を用い、照射室内を空気雰囲気とした
場合とで、殺菌効果をB.pumilus(spores) E-601 を用い
て確認したところ、D値はそれぞれ0.28Mrad、
0.17Mradであり、約6割の効果差が確認され
た。これは、電子線殺菌の場合、酸素効果により空気中
の方が殺菌効果が高いためである。したがって、かかる
観点からTi箔を使用する方がAl箔を使用するより有
利であると考えられる。
速電圧が100kVである場合でも、Al箔の温度上昇
率は、加速電圧を150kVのときの13μm厚のTi
箔の温度上昇率と同程度と考えられる。このため、電流
密度を約1mA/cm程度まで上げることができ、吸収
線量を多く取れるという利点がある。しかし、Al箔は
耐蝕性がないので、腐食防止のために不活性ガス(たと
えば、N2 ガス)を照射室内に流す等の対策が必要であ
り、そのランニングコストは非常に高いものとなる。ま
た、本発明者等が、窓箔としてAl箔を用い、照射室内
を酸素濃度が100ppmのN2 雰囲気とした場合と、
窓箔としてTi箔を用い、照射室内を空気雰囲気とした
場合とで、殺菌効果をB.pumilus(spores) E-601 を用い
て確認したところ、D値はそれぞれ0.28Mrad、
0.17Mradであり、約6割の効果差が確認され
た。これは、電子線殺菌の場合、酸素効果により空気中
の方が殺菌効果が高いためである。したがって、かかる
観点からTi箔を使用する方がAl箔を使用するより有
利であると考えられる。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、加
速電圧を90kV〜150kVの範囲内の値とし、且つ
電流密度を0.01mA/cm〜0.40mA/cmの
範囲内の値としたことにより、電子線を効率良く照射室
内に取り出し、被処理物の表面層において十分な線量を
得ることができると共に、金属箔の温度をその耐熱温度
以下に抑えることができるので、表面処理を効率良く行
うことができ、しかも、滅菌レベルの殺菌処理が可能で
あるので、特に表面殺菌に好適な電子線照射装置を提供
することができる。
速電圧を90kV〜150kVの範囲内の値とし、且つ
電流密度を0.01mA/cm〜0.40mA/cmの
範囲内の値としたことにより、電子線を効率良く照射室
内に取り出し、被処理物の表面層において十分な線量を
得ることができると共に、金属箔の温度をその耐熱温度
以下に抑えることができるので、表面処理を効率良く行
うことができ、しかも、滅菌レベルの殺菌処理が可能で
あるので、特に表面殺菌に好適な電子線照射装置を提供
することができる。
【0041】また、金属箔として厚さ10μm〜13μ
mのチタン箔、或いは厚さ20μm〜30μmのアルミ
ニウム箔を用いることにより、電子線発生部内の真空雰
囲気を十分維持でき、また、電子線を照射室内に容易に
透過させることができる電子線照射装置を提供すること
ができる。
mのチタン箔、或いは厚さ20μm〜30μmのアルミ
ニウム箔を用いることにより、電子線発生部内の真空雰
囲気を十分維持でき、また、電子線を照射室内に容易に
透過させることができる電子線照射装置を提供すること
ができる。
【図1】本発明の一実施例である電子線照射装置の概略
構成図である。
構成図である。
【図2】その電子線照射装置の電子線発生部の概略回路
図である。
図である。
【図3】8μm厚のナイロンフィルムを用いて測定した
場合の加速電圧と電子の発生効率との関係を示す図であ
る。
場合の加速電圧と電子の発生効率との関係を示す図であ
る。
【図4】100kVと150kVの加速電圧に対する電
流密度と窓箔の温度との関係を示す図である。
流密度と窓箔の温度との関係を示す図である。
【図5】100kVの加速電圧に対する電子線の透過深
さと吸収線量との関係を示す図である。
さと吸収線量との関係を示す図である。
【図6】放射線殺菌で指標となる各種微生物の放射線抵
抗性を示す図である。
抗性を示す図である。
【図7】指標菌の殺菌効果の確認実験の結果を示す図で
ある。
ある。
【図8】その指標菌の殺菌効果の確認実験の結果であ
る、100kVと175kVの加速電圧に対するコンベ
アスピードの逆数と生菌数との関係を示す図である。
る、100kVと175kVの加速電圧に対するコンベ
アスピードの逆数と生菌数との関係を示す図である。
【図9】50μm厚のナイロンフィルムを用いて測定し
た場合の加速電圧と電子の発生効率との関係を示す図で
ある。
た場合の加速電圧と電子の発生効率との関係を示す図で
ある。
10 電子線発生部 12 ターミナル 12a フィラメント 12b ガン構造体 12c グリッド 14 加速管 16a 加熱用電源 16b 制御用直流電源 16c 加速用直流電源 20 照射室 22 照射空間 30 照射窓部 32 窓箔 34 窓枠構造体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤盛 良治 埼玉県行田市壱里山町1丁目1番地 岩崎 電気株式会社埼玉製作所内 (72)発明者 福田 未紀子 埼玉県行田市壱里山町1丁目1番地 岩崎 電気株式会社埼玉製作所内
Claims (3)
- 【請求項1】 線状の陰極から放出された熱電子を電子
線として取り出し、前記電子線を加速する電子線発生部
と、被処理物に前記電子線を照射する照射室と、前記電
子線発生部内の真空雰囲気と前記照射室内の照射雰囲気
とを仕切ると共に前記電子線を透過させる金属箔とを備
える電子線照射装置において、 前記電子線発生部で前記電子線を加速する加速電圧を9
0kV〜150kVの範囲内の値とし、且つビーム電流
を電子線有効照射幅で割った値である電流密度を0.0
1mA/cm〜0.40mA/cmの範囲内の値とした
ことを特徴とする電子線照射装置。 - 【請求項2】 前記金属箔は厚さ10μm〜13μmの
チタン箔である請求項1記載の電子線照射装置。 - 【請求項3】 前記金属箔は厚さ20μm〜30μmの
アルミニウム箔である請求項1記載の電子線照射装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5127889A JPH06317700A (ja) | 1993-04-30 | 1993-04-30 | 電子線照射装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5127889A JPH06317700A (ja) | 1993-04-30 | 1993-04-30 | 電子線照射装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06317700A true JPH06317700A (ja) | 1994-11-15 |
Family
ID=14971171
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5127889A Pending JPH06317700A (ja) | 1993-04-30 | 1993-04-30 | 電子線照射装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06317700A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003514241A (ja) * | 1999-11-05 | 2003-04-15 | エナジー サイエンシーズ,インコーポレイティド | 粒子ビーム処理装置 |
US6870174B2 (en) | 2003-06-13 | 2005-03-22 | Ushio Denki Kabushiki Kaisha | Electron beam tube and window for electron beam extraction |
JP2005177734A (ja) * | 2003-11-25 | 2005-07-07 | Matsushita Electric Works Ltd | 改質方法および改質装置 |
JP2009259848A (ja) * | 1997-01-02 | 2009-11-05 | Advanced Electron Beams Inc | 電子ビーム加速器 |
CN104395983A (zh) * | 2012-04-20 | 2015-03-04 | 布鲁克Axs手持设备公司 | 用于保护辐射窗口的设备 |
JP2018021205A (ja) * | 2010-04-13 | 2018-02-08 | エナジー サイエンシーズ,インコーポレイティド | 架橋膜表面 |
WO2021240920A1 (ja) * | 2020-05-29 | 2021-12-02 | 浜松ホトニクス株式会社 | 電子線照射装置及び電子線照射装置の製造方法 |
-
1993
- 1993-04-30 JP JP5127889A patent/JPH06317700A/ja active Pending
Cited By (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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JP4684342B2 (ja) * | 1997-01-02 | 2011-05-18 | アドバンスト・エレクトロン・ビームズ・インコーポレーテッド | 電子加速方法 |
EP0950256B2 (en) † | 1997-01-02 | 2014-07-23 | Hitachi Zosen Corporation | Electron beam accelerator |
JP2003514241A (ja) * | 1999-11-05 | 2003-04-15 | エナジー サイエンシーズ,インコーポレイティド | 粒子ビーム処理装置 |
JP2010048823A (ja) * | 1999-11-05 | 2010-03-04 | Energy Sciences Inc | 粒子ビーム処理装置 |
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WO2021240920A1 (ja) * | 2020-05-29 | 2021-12-02 | 浜松ホトニクス株式会社 | 電子線照射装置及び電子線照射装置の製造方法 |
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