JPH06306610A - 硬質炭素膜被覆部材およびその製法 - Google Patents
硬質炭素膜被覆部材およびその製法Info
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- JPH06306610A JPH06306610A JP9958893A JP9958893A JPH06306610A JP H06306610 A JPH06306610 A JP H06306610A JP 9958893 A JP9958893 A JP 9958893A JP 9958893 A JP9958893 A JP 9958893A JP H06306610 A JPH06306610 A JP H06306610A
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Abstract
(57)【要約】
【構成】少なくとも炭素源ガスと、例えば基体1中に含
まれる金属元素を含有するガスと含む原料ガスを反応室
内に導入し、その原料ガスを励起して基板1に接触さ
せ、基板1上に硬質炭素3と金属元素と炭素との化合物
2を同時に析出させることにより、膜中に金属元素と炭
素との化合物2を含有する硬質炭素膜被覆部材を得る。 【効果】ダイヤモンドなどの硬質炭素膜自体の強度を高
めるとともに、基体との密着性を高めることができる。
しかも、基体を特に制限することなく、同様な効果を得
ることができる。また、製法上も硬質膜形成工程以外に
格別な中間層形成工程を必要としない。
まれる金属元素を含有するガスと含む原料ガスを反応室
内に導入し、その原料ガスを励起して基板1に接触さ
せ、基板1上に硬質炭素3と金属元素と炭素との化合物
2を同時に析出させることにより、膜中に金属元素と炭
素との化合物2を含有する硬質炭素膜被覆部材を得る。 【効果】ダイヤモンドなどの硬質炭素膜自体の強度を高
めるとともに、基体との密着性を高めることができる。
しかも、基体を特に制限することなく、同様な効果を得
ることができる。また、製法上も硬質膜形成工程以外に
格別な中間層形成工程を必要としない。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高強度で基体との密着性
に優れた、例えばダイヤモンド膜またはダイヤモンド状
炭素膜などの硬質炭素膜を被覆した部材およびその製法
に関するものである。
に優れた、例えばダイヤモンド膜またはダイヤモンド状
炭素膜などの硬質炭素膜を被覆した部材およびその製法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドからなる薄膜は、硬度、耐
摩耗性、固体潤滑性、電気絶縁性、熱伝導性などに優れ
ていることから、例えば切削工具類、研磨材、耐摩耗性
機械部品、光学部品などの各種部材のハードコート材や
電気、電子材料に利用されつつある。
摩耗性、固体潤滑性、電気絶縁性、熱伝導性などに優れ
ていることから、例えば切削工具類、研磨材、耐摩耗性
機械部品、光学部品などの各種部材のハードコート材や
電気、電子材料に利用されつつある。
【0003】また近年、低圧下での気相成長法によるダ
イヤモンド等の硬質炭素膜の合成が可能となり、このよ
うな硬質炭素膜は、例えば切削工具類、研磨材、耐摩耗
性部材などあらゆる分野に利用されつつある。
イヤモンド等の硬質炭素膜の合成が可能となり、このよ
うな硬質炭素膜は、例えば切削工具類、研磨材、耐摩耗
性部材などあらゆる分野に利用されつつある。
【0004】一方、これらダイヤモンド膜等の硬質炭素
膜の特性を発揮させるためには膜と基体との密着性が優
れていなければならない。しかしながら、これらの気相
合成法において形成した硬質炭素膜は基体との密着性の
点で必ずしも充分なものが得られないという問題があっ
た。
膜の特性を発揮させるためには膜と基体との密着性が優
れていなければならない。しかしながら、これらの気相
合成法において形成した硬質炭素膜は基体との密着性の
点で必ずしも充分なものが得られないという問題があっ
た。
【0005】このような炭素膜と基体との密着性は両者
の熱膨張係数差によりある程度評価でき、その差が小さ
いほど密着性が強いと考えられている。これは膜と基板
との熱膨張の差により生じる応力により膜が基板から剥
離するためである。したがって、膜と基体との密着性を
高める手段の一つとして膜と基板の熱膨張係数の差を小
さくするという方法がある。
の熱膨張係数差によりある程度評価でき、その差が小さ
いほど密着性が強いと考えられている。これは膜と基板
との熱膨張の差により生じる応力により膜が基板から剥
離するためである。したがって、膜と基体との密着性を
高める手段の一つとして膜と基板の熱膨張係数の差を小
さくするという方法がある。
【0006】この考えに基づき、従来より、例えば基体
にSiCからなる中間膜を形成し、次いでダイヤモンド
膜を形成する方法が例えば特開昭63−286576号
にて提案されている。
にSiCからなる中間膜を形成し、次いでダイヤモンド
膜を形成する方法が例えば特開昭63−286576号
にて提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ダイヤモンド膜などの
硬質炭素膜は、それ自体高硬度であることから耐摩耗性
に対しては非常に優れた特性を有するものの、非常に脆
いため、外部からの衝撃的応力が加わると膜自体にクラ
ックが発生したり、膜剥離を生じるなどの問題があっ
た。
硬質炭素膜は、それ自体高硬度であることから耐摩耗性
に対しては非常に優れた特性を有するものの、非常に脆
いため、外部からの衝撃的応力が加わると膜自体にクラ
ックが発生したり、膜剥離を生じるなどの問題があっ
た。
【0008】また、基体との密着性に関し、基体と炭素
膜との間にSiCの中間層を形成する方法により、中間
層を形成しない場合よりは、熱膨張差が小さくなり、密
着性をある程度高めることができるが、この場合、Si
C層と基体との熱膨張係数の差が大きくなっては、中間
層を形成する効果が生かされない。そのため、SiC層
の熱膨張係数と同様な熱膨張を有する基体を選択するこ
とが必要となり、用いる基体が限定されてしまう。しか
も、かかる方法では、硬質炭素膜を形成する工程前に、
中間膜を形成する作業工程が必要となるため、工程数が
増え、生産性が低い。
膜との間にSiCの中間層を形成する方法により、中間
層を形成しない場合よりは、熱膨張差が小さくなり、密
着性をある程度高めることができるが、この場合、Si
C層と基体との熱膨張係数の差が大きくなっては、中間
層を形成する効果が生かされない。そのため、SiC層
の熱膨張係数と同様な熱膨張を有する基体を選択するこ
とが必要となり、用いる基体が限定されてしまう。しか
も、かかる方法では、硬質炭素膜を形成する工程前に、
中間膜を形成する作業工程が必要となるため、工程数が
増え、生産性が低い。
【0009】よって、本発明は上記問題点を解決し、基
体の選択を制限することなく、しかも炭素膜との密着性
に優れ、高強度を有する硬質炭素膜、例えばダイヤモン
ド膜またはダイヤモンド状炭素膜を被覆した部材および
その製法を提供することを目的とするものである。
体の選択を制限することなく、しかも炭素膜との密着性
に優れ、高強度を有する硬質炭素膜、例えばダイヤモン
ド膜またはダイヤモンド状炭素膜を被覆した部材および
その製法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、上記問題
点に対して検討を重ねた結果、硬質炭素膜中に金属元素
と炭素との化合物を存在させることにより、硬質膜自体
の強度が向上するとともに、用いる金属を基体を構成す
る金属元素と同一の金属元素を選択すると基体との密着
性も飛躍的に向上することを突き止めた。
点に対して検討を重ねた結果、硬質炭素膜中に金属元素
と炭素との化合物を存在させることにより、硬質膜自体
の強度が向上するとともに、用いる金属を基体を構成す
る金属元素と同一の金属元素を選択すると基体との密着
性も飛躍的に向上することを突き止めた。
【0011】即ち、本発明の製法によれば、硬質炭素膜
を形成するための炭素源ガスの他に金属元素を含有する
ガスを混合して供給し、これを励起して基板に接触させ
ることにより、硬質炭素と前記金属元素と炭素との化合
物を同時に析出させることを特徴とするもので、かかる
製法に基づき、所定の基体表面に硬質炭素膜を被覆して
なる硬質炭素膜被覆部材において、前記硬質炭素膜中に
前記基体中に含有される少なくとも1種の金属元素と炭
素との化合物を含有することを特徴とする硬質炭素膜被
覆部材を得るもので、前記化合物が硬質炭素膜全体にわ
たり存在するか、基体側近傍にのみ存在するか、あるい
は硬質炭素膜の表面側より基体側に多く存在するように
制御するものである。
を形成するための炭素源ガスの他に金属元素を含有する
ガスを混合して供給し、これを励起して基板に接触させ
ることにより、硬質炭素と前記金属元素と炭素との化合
物を同時に析出させることを特徴とするもので、かかる
製法に基づき、所定の基体表面に硬質炭素膜を被覆して
なる硬質炭素膜被覆部材において、前記硬質炭素膜中に
前記基体中に含有される少なくとも1種の金属元素と炭
素との化合物を含有することを特徴とする硬質炭素膜被
覆部材を得るもので、前記化合物が硬質炭素膜全体にわ
たり存在するか、基体側近傍にのみ存在するか、あるい
は硬質炭素膜の表面側より基体側に多く存在するように
制御するものである。
【0012】以下、本発明を詳述する。本発明のおける
硬質炭素膜は、気相成長法に基づき成膜されるものであ
るが、かかる方法による一般的な手法としては、硬質炭
素膜を構成する炭素を含有する炭素源ガスを原料ガスと
して用いて、これをマイクロ波や高周波等により励起さ
せて基体に接触させることにより、基体表面に硬質炭素
膜を析出させるものである。
硬質炭素膜は、気相成長法に基づき成膜されるものであ
るが、かかる方法による一般的な手法としては、硬質炭
素膜を構成する炭素を含有する炭素源ガスを原料ガスと
して用いて、これをマイクロ波や高周波等により励起さ
せて基体に接触させることにより、基体表面に硬質炭素
膜を析出させるものである。
【0013】本発明は、上記の方法において、原料ガス
として前記炭素源ガス以外に金属元素を含有するガスを
混合することを大きな特徴とするもので、これにより、
ダイヤモンド等の硬質炭素成分とともに、金属元素と炭
素との化合物を同時に析出させるものである。
として前記炭素源ガス以外に金属元素を含有するガスを
混合することを大きな特徴とするもので、これにより、
ダイヤモンド等の硬質炭素成分とともに、金属元素と炭
素との化合物を同時に析出させるものである。
【0014】この時に原料ガス中に混合される金属元素
含有ガスは、その量が炭素源ガスに対して0.5乃至1
0%、特に0.5乃至5%の割合で混合されることが望
ましい。これは、0.5%より少ないと本発明の効果が
顕著でなく、10%を越えると、化合物相が多く形成さ
れ、硬質炭素膜としての性能を低下させてしまうためで
ある。
含有ガスは、その量が炭素源ガスに対して0.5乃至1
0%、特に0.5乃至5%の割合で混合されることが望
ましい。これは、0.5%より少ないと本発明の効果が
顕著でなく、10%を越えると、化合物相が多く形成さ
れ、硬質炭素膜としての性能を低下させてしまうためで
ある。
【0015】かかる製法において、用いられる炭素源ガ
スとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタ
ン、ペンタン、ヘキサンなどのアルカン類、エチレン、
プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエンなどのアル
ケン類、アセチレンなどのアルキン類、ベンゼン、トル
エン、キシレン、インデン、ナフタリン、フェナントレ
ンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパン、シクロヘ
キサンなどのシクロパラフィン類、シクロペンテン、シ
クロヘキセンなどのシクロオレフィン類などが挙げられ
る。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、
エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、
モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチ
ルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとし
て使用することができる。これらの中でも好ましいの
は、メタン、エタン、プロパンなどのパラフィン系炭化
水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、ア
セトンなどの含酸素炭素化合物、及びトリメチルアミン
などの含窒素炭素化合物である。これらは一種単独で用
いることもできるし、二種以上で併用することもでき
る。
スとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタ
ン、ペンタン、ヘキサンなどのアルカン類、エチレン、
プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエンなどのアル
ケン類、アセチレンなどのアルキン類、ベンゼン、トル
エン、キシレン、インデン、ナフタリン、フェナントレ
ンなどの芳香族炭化水素類、シクロプロパン、シクロヘ
キサンなどのシクロパラフィン類、シクロペンテン、シ
クロヘキセンなどのシクロオレフィン類などが挙げられ
る。また一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、
エチルアルコール、アセトンなどの含酸素炭素化合物、
モノ(ジ、トリ)メチルアミン、モノ(ジ、トリ)エチ
ルアミンなどの含窒素炭素化合物なども炭素源ガスとし
て使用することができる。これらの中でも好ましいの
は、メタン、エタン、プロパンなどのパラフィン系炭化
水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、ア
セトンなどの含酸素炭素化合物、及びトリメチルアミン
などの含窒素炭素化合物である。これらは一種単独で用
いることもできるし、二種以上で併用することもでき
る。
【0016】また、用いる金属元素として、Si、T
i、Al、Zr、Mo、W、Feが挙げられ、これらの
金属元素を含有するガスとしては、これらの金属を含有
するものであれば良いが、例えばSiCl4 、TiCl
4 などの塩化物、SiF4 、WF6 などのフッ化物など
のハロゲン化物、該当元素の酸化物、Al(CH3 )3
などのアルキル化合物、Si(OC2 H5 )4 、Ti
(OC2 H5 )4 、Ti(OC3 H7 )4 などのアルコ
キシド化合物などが挙げられる。これらは単独で用いる
こともできるし、2種以上で併用することもできる。例
えば、Si含有ガスとしては、四フッ化ケイ素、四塩化
ケイ素、四臭化ケイ素等のハロゲン化物、二酸化ケイ素
などの酸化物の他に、モノ(ジ、トリ、テトラ、ペン
タ)シラン、モノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシラン、
メチルクロルシラン、フェニルクロルシランなどのシラ
ン化合物、トリメチルシラノール、トリエチルシラノー
ル、トリフェニルシラノールなどのシラノール化合物な
ども挙げられ、この場合好ましいのは、モノシラン、モ
ノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシランである。
i、Al、Zr、Mo、W、Feが挙げられ、これらの
金属元素を含有するガスとしては、これらの金属を含有
するものであれば良いが、例えばSiCl4 、TiCl
4 などの塩化物、SiF4 、WF6 などのフッ化物など
のハロゲン化物、該当元素の酸化物、Al(CH3 )3
などのアルキル化合物、Si(OC2 H5 )4 、Ti
(OC2 H5 )4 、Ti(OC3 H7 )4 などのアルコ
キシド化合物などが挙げられる。これらは単独で用いる
こともできるし、2種以上で併用することもできる。例
えば、Si含有ガスとしては、四フッ化ケイ素、四塩化
ケイ素、四臭化ケイ素等のハロゲン化物、二酸化ケイ素
などの酸化物の他に、モノ(ジ、トリ、テトラ、ペン
タ)シラン、モノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシラン、
メチルクロルシラン、フェニルクロルシランなどのシラ
ン化合物、トリメチルシラノール、トリエチルシラノー
ル、トリフェニルシラノールなどのシラノール化合物な
ども挙げられ、この場合好ましいのは、モノシラン、モ
ノ(ジ、トリ、テトラ)メチルシランである。
【0017】また原料ガスとして、上記以外に水素ガス
や希釈用ガス、例えばアルゴンガス、ヘリウムガスなど
を含んでも良い。
や希釈用ガス、例えばアルゴンガス、ヘリウムガスなど
を含んでも良い。
【0018】一方、硬質炭素膜を形成する基体として
は、WC基超硬合金、TiC、TiN、TiCNを主成
分とするサーメット、Si3 N4 、SiC、Al
2 O3 、ZrO2 、AlN等を主成分とするセラミック
ス等を用いることができる。その他、Mo、W、Al、
Si、Ti、Fe、Niなどの金属およびこれらの合金
を用いることができる。
は、WC基超硬合金、TiC、TiN、TiCNを主成
分とするサーメット、Si3 N4 、SiC、Al
2 O3 、ZrO2 、AlN等を主成分とするセラミック
ス等を用いることができる。その他、Mo、W、Al、
Si、Ti、Fe、Niなどの金属およびこれらの合金
を用いることができる。
【0019】本発明によれば、上記製法において、原料
ガスとして混合する金属元素含有ガスの金属元素とし
て、基体中に含有される金属元素、特に基体の主成分を
構成する金属元素を選択することが望ましい。例えば、
基体としてSi3 N4 やSiCを主成分とする焼結体表
面に炭素膜を形成する場合には、前記金属元素含有ガス
としてSi含有ガスを用いればよく、TiCN基サーメ
ットを用いる場合には、Ti含有ガスを用いればよい。
このように基体を構成する金属元素に合わせて、金属含
有ガスを選択することにより硬質炭素膜と基体との密着
性を高めることができる。
ガスとして混合する金属元素含有ガスの金属元素とし
て、基体中に含有される金属元素、特に基体の主成分を
構成する金属元素を選択することが望ましい。例えば、
基体としてSi3 N4 やSiCを主成分とする焼結体表
面に炭素膜を形成する場合には、前記金属元素含有ガス
としてSi含有ガスを用いればよく、TiCN基サーメ
ットを用いる場合には、Ti含有ガスを用いればよい。
このように基体を構成する金属元素に合わせて、金属含
有ガスを選択することにより硬質炭素膜と基体との密着
性を高めることができる。
【0020】また、本発明によれば、原料ガスとして金
属元素含有ガスの導入時期を適宜制御することもでき
る。即ち、金属元素含有ガスを成膜初期から成膜終了ま
で導入することにより、図1の(a)に示すように基体
1表面に金属元素と炭素との化合物2を硬質炭素膜3中
全体にわたり存在させることができる。また、金属元素
含有ガスを初期のみに導入すれば、図1の(b)に示す
ように前記化合物2を硬質炭素膜3中の基体1側の近傍
のみに存在させることができる。さらに、金属元素含有
ガスを成膜初期から徐々にその量を減じることにより、
図1の(c)に示すように前記化合物2が炭素膜3中の
基体1側から膜表面にわたり、徐々に少なくなるように
濃度を傾斜させることができる。
属元素含有ガスの導入時期を適宜制御することもでき
る。即ち、金属元素含有ガスを成膜初期から成膜終了ま
で導入することにより、図1の(a)に示すように基体
1表面に金属元素と炭素との化合物2を硬質炭素膜3中
全体にわたり存在させることができる。また、金属元素
含有ガスを初期のみに導入すれば、図1の(b)に示す
ように前記化合物2を硬質炭素膜3中の基体1側の近傍
のみに存在させることができる。さらに、金属元素含有
ガスを成膜初期から徐々にその量を減じることにより、
図1の(c)に示すように前記化合物2が炭素膜3中の
基体1側から膜表面にわたり、徐々に少なくなるように
濃度を傾斜させることができる。
【0021】上記各種の態様において、基体と硬質炭素
膜との熱膨張係数差を考慮すれば、図1(c)に示した
ように金属化合物量が基体側で多くなるようにすること
が望ましく、かかる場合、膜表面は硬質炭素膜単体と同
様な特性が発揮される。
膜との熱膨張係数差を考慮すれば、図1(c)に示した
ように金属化合物量が基体側で多くなるようにすること
が望ましく、かかる場合、膜表面は硬質炭素膜単体と同
様な特性が発揮される。
【0022】
【作用】本発明によれば、硬質炭素膜中に金属元素と炭
素との化合物を含有させることにより、硬質炭素膜自体
の強度を高めることができる。この理由は定かではない
が、硬質炭素成分の析出時の粒成長を抑制し、微細な結
晶構造の膜を形成することができるためと考えられる。
しかも、硬質炭素膜中に存在させる化合物自体も硬度は
硬質炭素膜には劣るものの、硬度以外の機械的特性に優
れることから、これらの複合化により、優れた特性が発
揮されると考えられる。
素との化合物を含有させることにより、硬質炭素膜自体
の強度を高めることができる。この理由は定かではない
が、硬質炭素成分の析出時の粒成長を抑制し、微細な結
晶構造の膜を形成することができるためと考えられる。
しかも、硬質炭素膜中に存在させる化合物自体も硬度は
硬質炭素膜には劣るものの、硬度以外の機械的特性に優
れることから、これらの複合化により、優れた特性が発
揮されると考えられる。
【0023】また、硬質炭素膜中に存在させる金属元素
を基体を構成する金属元素と同一となるように選択する
ことにより、基体との密着性を高めることができる。か
かる方法によれば、基体の種類を制限することがなく、
あらゆる基体に硬質炭素膜を形成することができる。し
かも、従来のように硬質炭素膜以外に中間層を形成した
場合、中間層形成工程を別途必要とし、しかも硬質炭素
膜、中間層、基体の三つの層間の熱膨張係数や密着性を
考慮する必要があるが、本発明ではその必要ない。
を基体を構成する金属元素と同一となるように選択する
ことにより、基体との密着性を高めることができる。か
かる方法によれば、基体の種類を制限することがなく、
あらゆる基体に硬質炭素膜を形成することができる。し
かも、従来のように硬質炭素膜以外に中間層を形成した
場合、中間層形成工程を別途必要とし、しかも硬質炭素
膜、中間層、基体の三つの層間の熱膨張係数や密着性を
考慮する必要があるが、本発明ではその必要ない。
【0024】さらに、金属元素と炭素との化合物を図1
に示したように膜中の任意の位置に、また所望の濃度で
存在させることができる。
に示したように膜中の任意の位置に、また所望の濃度で
存在させることができる。
【0025】
実施例1 反応室内に金属元素含有ガス成分として、Si(C
H3 )4 濃度100ppmのSi(CH3 )4 −H2 混
合ガスを20SCCMの流量で、炭素源ガス成分として
CH4 ガスを0.4SCCM、H2 ガスを180SCC
Mの混合ガスをそれぞれ導入し(炭素源ガスに対する金
属含有ガスの比率0.5%)、反応室内圧力を0.30
kPaに設定した。次いで、2450MHzのマイクロ
波電源から出力350Wを投入し、マイクロ波プラズマ
CVD法によりSi3 N4 を主成分としY2 O3 を2重
量%、Al2 O3 を5重量%含有する焼結体からなる基
板に膜厚7μmのSiC相を含むダイヤモンド膜を得
た。(本発明試料1)得られた硬質膜被覆部材に対し
て、硬質炭素膜と基板との密着性を評価するのに圧痕法
を用いた。これは炭素膜に荷重を加え、膜にクラックが
発生した際のクラック部の面積とビッカース圧子荷重と
の関係から評価する方法である。この方法では同じ荷重
でクラックの面積が小さいほど膜と基板との密着性及び
/または膜強度が高いと評価できる。測定結果を図2に
示す。
H3 )4 濃度100ppmのSi(CH3 )4 −H2 混
合ガスを20SCCMの流量で、炭素源ガス成分として
CH4 ガスを0.4SCCM、H2 ガスを180SCC
Mの混合ガスをそれぞれ導入し(炭素源ガスに対する金
属含有ガスの比率0.5%)、反応室内圧力を0.30
kPaに設定した。次いで、2450MHzのマイクロ
波電源から出力350Wを投入し、マイクロ波プラズマ
CVD法によりSi3 N4 を主成分としY2 O3 を2重
量%、Al2 O3 を5重量%含有する焼結体からなる基
板に膜厚7μmのSiC相を含むダイヤモンド膜を得
た。(本発明試料1)得られた硬質膜被覆部材に対し
て、硬質炭素膜と基板との密着性を評価するのに圧痕法
を用いた。これは炭素膜に荷重を加え、膜にクラックが
発生した際のクラック部の面積とビッカース圧子荷重と
の関係から評価する方法である。この方法では同じ荷重
でクラックの面積が小さいほど膜と基板との密着性及び
/または膜強度が高いと評価できる。測定結果を図2に
示す。
【0026】また比較のため上記と同じ条件下で原料ガ
スとして、水素ガスにCH4 ガスをCH4 濃度0.2%
(比較試料1)及び1.0%(比較試料2)とし、成膜
したダイヤモンド膜に対して前記と同様な方法で密着性
を評価した。その結果を図2に示す。なお、膜厚はすべ
て同じ膜厚に制御した。さらに、硬質炭素膜を形成する
前にCH4 及びSiH4 のガスを用いて、SiC単独層
を3μmの厚みで形成した後、水素ガスにCH4 ガスを
CH4 濃度1.0%(比較試料3)の流量で厚み4μm
のダイヤモンド膜を形成し、同様に評価した。
スとして、水素ガスにCH4 ガスをCH4 濃度0.2%
(比較試料1)及び1.0%(比較試料2)とし、成膜
したダイヤモンド膜に対して前記と同様な方法で密着性
を評価した。その結果を図2に示す。なお、膜厚はすべ
て同じ膜厚に制御した。さらに、硬質炭素膜を形成する
前にCH4 及びSiH4 のガスを用いて、SiC単独層
を3μmの厚みで形成した後、水素ガスにCH4 ガスを
CH4 濃度1.0%(比較試料3)の流量で厚み4μm
のダイヤモンド膜を形成し、同様に評価した。
【0027】図2から明らかなように、本発明試料は比
較試料よりも同一荷重におけるクラック部面積が小さ
く、基体との密着性および膜強度に優れることがわか
る。
較試料よりも同一荷重におけるクラック部面積が小さ
く、基体との密着性および膜強度に優れることがわか
る。
【0028】実施例2 実施例1と同様の条件下で金属元素含有ガス成分のガス
流量を変化させてSiCを含むダイヤモンド膜を形成し
た。成膜初期にSi(CH3 )4 濃度100ppmのS
i(CH3 )4 −H2 混合ガス80sccm、CH4 ガ
ス0.4sccm、H2 120sccmで25時間成膜
した後、50時間経過後の流量がSi(CH3 )4 −H
2 混合ガスなし、CH4 0.4sccm、H2 200s
ccmとなるように徐々に変化させて成膜を行ったとこ
ろ、膜内のSiC成分が基体との界面付近から膜表面に
かけて少なくなる硬質炭素膜被覆部材を作製した(本発
明試料2)。
流量を変化させてSiCを含むダイヤモンド膜を形成し
た。成膜初期にSi(CH3 )4 濃度100ppmのS
i(CH3 )4 −H2 混合ガス80sccm、CH4 ガ
ス0.4sccm、H2 120sccmで25時間成膜
した後、50時間経過後の流量がSi(CH3 )4 −H
2 混合ガスなし、CH4 0.4sccm、H2 200s
ccmとなるように徐々に変化させて成膜を行ったとこ
ろ、膜内のSiC成分が基体との界面付近から膜表面に
かけて少なくなる硬質炭素膜被覆部材を作製した(本発
明試料2)。
【0029】得られた試料に対して、実施例1と同様に
圧子荷重とクラック面積との関係を測定した。その結果
を図2に示した。図2から明らかなように、実施例1の
試料1と同様に優れた特性を示し、特に本発明試料1に
比較してさらに優れた特性を示し、金属元素と炭素との
化合物濃度を基体側に富化させることが特に優れている
ことがわかる。
圧子荷重とクラック面積との関係を測定した。その結果
を図2に示した。図2から明らかなように、実施例1の
試料1と同様に優れた特性を示し、特に本発明試料1に
比較してさらに優れた特性を示し、金属元素と炭素との
化合物濃度を基体側に富化させることが特に優れている
ことがわかる。
【0030】実施例3 基体として、TiCN−NbC−Mo2 C−WC−Ni
系サーメットおよびWC−TiC−Co系超硬合金を用
いて、金属元素含有ガスとして表1に示すガスを用い
て、炭素源ガスとしてCH4 ガスを用い、これらを表1
の流量で反応室内に導入する以外は、実施例1および実
施例2と同様な方法でダイヤモンド膜を成膜した。
系サーメットおよびWC−TiC−Co系超硬合金を用
いて、金属元素含有ガスとして表1に示すガスを用い
て、炭素源ガスとしてCH4 ガスを用い、これらを表1
の流量で反応室内に導入する以外は、実施例1および実
施例2と同様な方法でダイヤモンド膜を成膜した。
【0031】得られた被覆部材に対して、実施例1と同
様な方法で膜強度と基体との密着性を評価し、ビッカー
ス圧子荷重30kgfにおけるクラック部面積を表1に
示した。
様な方法で膜強度と基体との密着性を評価し、ビッカー
ス圧子荷重30kgfにおけるクラック部面積を表1に
示した。
【0032】なお、比較のため、金属元素含有ガスを全
く導入せずに、硬質炭素膜を形成し同様に評価した。結
果は表1に示した。
く導入せずに、硬質炭素膜を形成し同様に評価した。結
果は表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】表1から明らかなように、比較品(試料N
o.6、9)に比較して本発明の試料No.4、5、7、8
は膜の強度および密着性が向上したことがわかる。
o.6、9)に比較して本発明の試料No.4、5、7、8
は膜の強度および密着性が向上したことがわかる。
【0035】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明によれ
ば、ダイヤモンドなどの硬質炭素膜の強度を高めるとと
もに、基体との密着性を高めることができる。しかも、
基体を特に制限することなく、同様な効果を得ることが
できる。また、製法上も硬質膜形成工程以外に格別な中
間層形成工程を必要としないために生産性も優れる。
ば、ダイヤモンドなどの硬質炭素膜の強度を高めるとと
もに、基体との密着性を高めることができる。しかも、
基体を特に制限することなく、同様な効果を得ることが
できる。また、製法上も硬質膜形成工程以外に格別な中
間層形成工程を必要としないために生産性も優れる。
【図1】(a)は、本発明の硬質炭素膜被覆部材の膜の
構造の一実施例を示し、(b)(c)はその他の態様を
示す図である。
構造の一実施例を示し、(b)(c)はその他の態様を
示す図である。
【図2】硬質炭素膜のビッカース圧子荷重とクラック部
面積との関係を示した図である。
面積との関係を示した図である。
1 基体 2 金属と炭素との化合物 3 硬質炭素
Claims (7)
- 【請求項1】所定の基体表面に硬質炭素膜を被覆してな
る硬質炭素膜被覆部材において、前記硬質炭素膜中に金
属元素と炭素との化合物を含有することを特徴とする硬
質炭素膜被覆部材。 - 【請求項2】前記金属元素が基体中に含有される少なく
とも1種の金属元素である請求項1記載の硬質炭素膜被
覆部材。 - 【請求項3】前記化合物が硬質炭素膜全体にわたり存在
する請求項1記載の硬質炭素膜被覆部材。 - 【請求項4】前記化合物が硬質炭素膜中の基体側近傍に
のみ存在する請求項1記載の硬質炭素膜被覆部材。 - 【請求項5】前記化合物が硬質炭素膜の表面側より基体
側に多く存在する請求項1記載の硬質炭素膜被覆部材。 - 【請求項6】少なくとも炭素源ガスと、金属元素を含有
するガスとを含む原料ガスを反応室内に導入し、該原料
ガスを励起して基板に接触させ、該基板上に硬質炭素と
前記金属元素と炭素との化合物を同時に析出させる工程
を具備することを特徴とする硬質炭素膜被覆部材の製
法。 - 【請求項7】前記金属元素が基体中に含有される少なく
とも1種の金属元素である請求項6記載の硬質炭素膜被
覆部材の製法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9958893A JPH06306610A (ja) | 1993-04-26 | 1993-04-26 | 硬質炭素膜被覆部材およびその製法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9958893A JPH06306610A (ja) | 1993-04-26 | 1993-04-26 | 硬質炭素膜被覆部材およびその製法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06306610A true JPH06306610A (ja) | 1994-11-01 |
Family
ID=14251259
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP9958893A Pending JPH06306610A (ja) | 1993-04-26 | 1993-04-26 | 硬質炭素膜被覆部材およびその製法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06306610A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09124394A (ja) * | 1995-10-31 | 1997-05-13 | Kyocera Corp | 耐摩耗性部材 |
-
1993
- 1993-04-26 JP JP9958893A patent/JPH06306610A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH09124394A (ja) * | 1995-10-31 | 1997-05-13 | Kyocera Corp | 耐摩耗性部材 |
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