JPH06299813A - 内燃機関の弁動作タイミング調整装置 - Google Patents

内燃機関の弁動作タイミング調整装置

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JPH06299813A
JPH06299813A JP5086321A JP8632193A JPH06299813A JP H06299813 A JPH06299813 A JP H06299813A JP 5086321 A JP5086321 A JP 5086321A JP 8632193 A JP8632193 A JP 8632193A JP H06299813 A JPH06299813 A JP H06299813A
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Hiroshi Ikeda
広 池田
Katsuhiko Kawai
勝彦 川合
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  • Valve-Gear Or Valve Arrangements (AREA)
  • Valve Device For Special Equipments (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 内燃機関における吸気弁等の動作時期を変え
るための弁動作タイミング調整装置に関し、この制御に
学習操作を取り入れて制御環境の変動による影響を補償
する際、その学習時間を短縮することを目的とする。 【構成】 クランク軸からカム軸に至る回転伝達系内に
設けられ、両軸間の回転位相差を変えるための機構1
と、この機構を駆動するための駆動手段2と、機関の運
転状態を表す複数の状態量を検知する各種センサ3と、
上記両軸間の実位相差角を算出する手段4と、回転位相
差の目標値を決定する手段5と、制御値を生成して駆動
手段に出力する制御手段6とを備えた弁動作タイミング
調整装置において、制御手段が、積分器を含まないコン
トローラ7と、上記目標値が所定時間一定のときにコン
トローラから出力される操作値を記憶する学習手段8と
を備えて、学習手段に記憶された操作値を学習値として
制御値生成に反映する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関における吸気
弁,排気弁の動作時期を変えるための弁動作タイミング
調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】弁動作タイミング調整装置は、吸気弁,
排気弁の動作時期を早くしたり遅くしたりする進角制御
のために用いられている。係る装置は、例えば特開平1
−134010号公報に示されている。この装置はクラ
ンク軸とカム軸との間に位相調整部材を嵌合させて、こ
の位相調整部材を油圧で摺動させることにより両軸間の
回転位相を変化させ、カム軸上のロータで駆動される吸
気弁,排気弁の動作時期を変化させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし上記装置は、位
相調整部材を摺動させるために2つの油圧系を必要とす
るので構造が複雑であり、また電磁弁の単なる開閉制御
によりクランク軸,カム軸間の位相角を変化させるだけ
なので微小角度の進角制御が難しいという問題があっ
た。
【0004】そこで本出願人は、上記問題を解決するた
めに、先行例として係る装置の油圧系を1つにして構造
を簡略化し、またその電磁弁の開度を連続的に制御する
と共に、電磁弁の開度制御にフィードバック学習制御を
採用することにより、微小角度の進角制御を高い精度で
実現できる弁動作タイミング調整装置を提案した。しか
し当該先行例においては、その学習制御の過程で学習値
を生成するのに学習操作を繰り返し行う必要があったの
で、学習値を算出するのに時間がかかるという改良点が
あった。そこで本発明は、上記先行例の改良点を解消す
るためになされたものであり、弁動作タイミング調整制
御においてフィードバック学習制御を行う際、その学習
値を短時間で算出することができる弁動作タイミング調
整装置の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、制御対象が積
分要素を含むときの閉ループ制御系の性質に着目し、定
常状態のコントローラ出力を学習することにより上記目
的を達成するものであり、その手段として図1に示すよ
うな形態を採用する。本発明によれば、内燃機関内のク
ランク軸からカム軸に至る回転伝達系内に設けられ、両
軸間の回転位相差を変えるための位相調整機構1と、位
相調整機構を駆動するための駆動手段2と、内燃機関各
部に設けられ、機関の運転状態を表す複数の状態量を検
知する各種センサ3と、センサによって検出された運転
状態量に基づいて上記両軸間の実位相差角を算出する回
転位相差検出手段4と、センサによって検出された運転
状態量に基づいて回転位相差の目標値を決定する目標値
決定手段5と、実位相差角を回転位相差の目標値に一致
させるための制御値を生成して駆動手段に出力する制御
手段6とを具備する弁動作タイミング調整装置におい
て、上記制御手段が、積分器を含まないコントローラ7
と、上記目標値が所定時間一定値にあるときにコントロ
ーラから出力される操作値を記憶する学習手段8とを備
え、上記制御値を生成する際に、学習手段に記憶された
操作値を学習値として用いる弁動作タイミング調整装置
が提供される。
【0006】
【作用】ここでまず図2を用いて上記閉ループ制御系の
性質を説明する。図2は、電磁弁の開度を調節して回転
位相角、すなわちカム軸進角値をフィードバック制御す
るための制御系ブロック線図の例を示している。図2
(a)の106は、例えば積分動作を含まないPD動作
コントローラ、107は制御対象として例えば電磁弁の
製造公差,経時変化等により特性が変動するような油圧
装置を示している。図2(a)における電磁弁の静特性
は、以下の説明を簡単に行えるようにu1 =0近傍の特
性がリニアなものを用いている。またrは目標進角値、
uはコントローラから出力される操作値、u1 は上記静
特性により決定される操作値、yは制御による現在のカ
ム軸進角値である。ここで制御対象107は積分要素を
含み、電磁弁における操作量uとカム軸進角速度との間
の静特性は、製造公差,経時変化等により変動するもの
とする。よって図2(a)中のdの値(u1 =0となる
uの値)は変動するが、その変動速度は遅く、その値は
未知であるとする。
【0007】上記制御対象の静特性を傾きKで近似する
と、この制御系は図2(b)のように表わすことがで
き、以下のような関係式が得られる。このとき、上記d
は制御対象の入力部に加えられる外乱と見なすことがで
きる。 Y(s) = [ K/s ]・G(s)・[ U(s) + D(s) ] (1) U(s) = Gc(s)・E(s) (2) E(s) = R(s) - Y(s) (3) そして式(3)における目標値rを一定とすると、上記
各式より式(4)が導かれる。 E(s) = [-K・G(s)] ・D(s) / [ s + K・ Gc(s)・G(s)] (4) ここで外乱dを大きさd0 のステップ入力とすると「 D
(s) = d0/s」で表わされ、これを式(4)に代入してラ
プラス変換の最終値の定理を適用すると、式(5)が導
かれる。 E(∞) = -d0 / Gc(0) (5)
【0008】例えばコントローラ106が「比例+微分
動作」であれば、その伝達関数は式(6)で与えられ
る。コントローラのゲインは Gc(0)=Kcとなり上記式
(5)は式(7)のようになる。 Gc(s) = Kc・( 1 + TD s ) (6) e(∞) = -d0 / Kc (7) 従って目標値rが一定であるとすると、偏差eは一定値
に収束することになる。ここで進角値yの定常時には
「 u1 = 0 」であることが成立しているので、このとき
のコントローラの操作値は「 u = d0 」となる。つまり
コントローラの出力が外乱dの大きさを表していること
になり、この出力値を学習して以後の制御に用いること
ができる。
【0009】そこで上記図1の形態によれば、制御手段
6のコントローラ7は積分器を含んでおらず、また制御
対象である油圧アクチュエータは積分要素を含んでい
る。したがって上記閉ループ制御系の性質で説明したよ
うに、アクチュエータに外乱要素dが存在する場合、目
標値rが所定時間一定値にあり且つ実位相差角yが一定
値に収束しているときにコントローラから出力された操
作値uを以て外乱要素dを補償することができる。すな
わち弁動作タイミング調整制御中、回転位相角の目標値
が所定時間一定にあり且つ実位相差角が一定値に収束し
たと推測された時点において、コントローラから出力さ
れる操作値が学習手段8によって記憶されて、制御手段
6内で制御値を生成する際に反映されるので、制御手段
6で生成される制御値は外乱要素dが補償されたものと
なる。そして上記操作値は、目標値が上記所定時間継続
される毎に更新されて学習され得るので、学習操作が容
易であり、且つ学習操作が短時間に行われ得る。
【0010】
【実施例】以下、本弁動作タイミング調整装置の一実施
例を図面とともに説明する。図3は本装置をDOHCエ
ンジンに適用した場合の構成図である。図3において、
10はエンジン本体、20はエンジン10内に設けた位
相調整機構(斜線部分)、50は位相調整機構20を駆
動するための油圧装置、70はエンジン10等に設けた
各種センサの信号からエンジン運転状態を把握し、油圧
装置50に制御信号を出力する制御部を示している。
【0011】エンジン10のクランクシャフト11,排
気弁用スプロケット12及び吸気弁用スプロケット13
にはタイミングチェーン14が架けられており、クラン
クシャフト11の回転が各カムシャフト15,16に伝
達されている。本実施例は、このスプロケット13−カ
ムシャフト16間に調整機構20を設けてスプロケット
13をカムシャフト回転軸方向に摺動させ、スプロケッ
ト13−カムシャフト16間の回転位相を変化させるこ
とにより、吸気弁の進角制御を行う場合を示している。
勿論、上記調整機構20を排気弁側、あるいはこれら両
方に設けて同様な制御を行うことも可能である。
【0012】クランクシャフト11近傍にはクランク位
置検出センサ17、カムシャフト16近傍にはカムシャ
フト位置検出センサ18が設けられており、これらは例
えば電磁ピックアップ型のセンサが用いられている。各
センサ17,18は、それぞれ各シャフト11,16の
回転に従って制御部70にパルス状の検出信号を出力す
る。位置検出センサ17は、クランクシャフト1回転あ
たりN個の信号を発生し、位置検出センサ18は、カム
シャフト1回転あたり2N個の信号を発生する。制御部
70は、これら検出信号を基にクランクシャフト11−
カムシャフト16間の回転位相θを計測する。尚、上記
Nは、回転位相角θの最大値をθMAX としたとき、「N
<360/θMAX 」となるように設定される。
【0013】制御部70は、例えば空燃費制御及びアイ
ドル回転制御等を行う電子制御装置(通称「ECU」)
と組合わされており、CPU,RAM,ROM,入出力
回路及び電流制御回路を備えて構成されている。制御部
70は上記検出信号の他に、エンジンの冷却水温信号,
スロットル開度信号等を取り込み、後に詳細する制御演
算により制御値を算出して油圧装置50に出力する。
【0014】次に、図4は位相調整機構20,スプロケ
ット13,及びカムシャフト16との間の結合状態を断
面図で示したものである。調整機構20は、エンジン1
0のシリンダヘッド21に固定されたハウジング22内
に構成されている。図面右側から延びたカムシャフト1
6の端部には、略円筒状のカムシャフトスリーブ23が
ピン24及びボルト25によって固定されている。スリ
ーブ23がカムシャフト16を支持している部分にはス
プロケット13が嵌合されており、スプロケット13は
その回転軸方向の動きが阻止されているが、回転方向に
は摺動できるようされている。一方、スプロケット13
には略円筒状のスプロケットスリーブ26がピン27及
びボルト28によって固定されており、スリーブ26の
他端にはエンドプレート29が固定されている。このよ
うにスリーブ23とカムシャフト16,及びスリーブ2
6とスプロケット13は各々一体となり、ハウジング2
2にノックピン30で固定されたリングプレート31内
で回動可能とされている。
【0015】また、カムシャフトスリーブ23外周側の
一部には外歯ヘリカルスプライン32aが形成されてお
り、一方のスプロケットスリーブ26内周側の一部には
内歯ヘリカルスプライン33aが形成されている。各ス
リーブ23,26間にはシリンダ34が嵌合されてお
り、上記各スリーブ23,26のヘリカルスプライン3
2a,33aは、シリンダ34の内周側に形成された内
歯ヘリカルスプライン32b、同じくその外周側に形成
された外歯ヘリカルスプライン33bと各々噛合してい
る。これによりスリーブ23,26及びシリンダ34は
一体となって回転してスプロケット13の回転がカムシ
ャフト16に伝達される。そしてこれらはヘリカルスプ
ライン噛合していることにより、シリンダ34が回転軸
方向に摺動したときには上記噛合部にスラストが発生さ
れ、カムシャフト16が回転方向に摺動され得るように
なっている。つまりスプロケット13−カムシャフト1
6間の回転位相が変化され得るようにされている。
【0016】本実施例ではシリンダ34を摺動させるた
めに油圧装置50を用いており、そのために調整機構2
0内部には2つの油圧室35,36が形成されている。
図4において左側が進角動作用の油圧室35、右側が遅
角動作用の油圧室36であり、シリンダ34は各油圧室
に供給される作動油量に応じて軸方向に摺動され得る。
尚、各油圧室35,36を形成する領域各部には適宜オ
イルシールが施されている。
【0017】油圧装置50は、作動油を蓄えているオイ
ルパン51(図3参照),エンジン動力で駆動される油
圧ポンプ52,油圧ポンプ52から圧送される作動油を
各油圧室に分配するスプール弁53,及びこれらの各間
を連通する油圧路とを備えている。図4において37は
油圧ポンプ52−スプール弁53間の油圧路、38はス
プール弁53−オイルパン間の油圧路、39はスプール
弁53−油圧室35間の油圧路、40はスプール弁53
−油圧室36間の油圧路を示している。尚、油圧路40
の経路は、リングプレート31をハウジング22に固定
するボルト41内に形成されたT字型の連通路40aか
ら、ボルト41とカムシャフトスリーブ23とで囲まれ
た領域40bを経由し、カムシャフトスリーブ23内に
形成された油圧路40cを通して油圧室36に至ってい
る。
【0018】次に、図5を用いてスプール弁53の動作
について説明する。図5において54はシリンダ、55
はシリンダ54内を摺動するスプール、56は上記制御
部70からの制御信号に従ってスプール55を摺動させ
るリニアソレノイド、57はリニアソレノイド56によ
る駆動方向と反対にスプール55を付勢するスプリング
である。シリンダ54には、油圧ポンプ52と連通され
た作動油供給ポート58,オイルパンと連通された作動
油排出ポート59,油圧室35と連通された油圧ポート
60,及び油圧室36と連通された油圧ポート61が形
成されている。
【0019】上記各油圧室35,36の作動油量は、ス
プール55が摺動して各油圧ポートの開度が連続的に変
えられることにより増減され、その開度はリニアソレノ
イド56に供給される電流値で決定される。そのために
上記制御部70は、制御信号をデューティー値で生成し
て電流制御回路に出力し、電流制御回路からリニアソレ
ノイド56に上記デューティー値に対応する電流を供給
している。
【0020】以下、図5にスプール弁53の代表的な状
態例を示す。図5(a)は、制御部70における制御信
号のデューティー値が約100%のときの例であり、ス
プール55がリニアソレノイド56によりシリンダ右端
に駆動され、供給ポート58−油圧ポート60間、及び
油圧ポート61−排出ポート59間が連通した状態を示
している。このとき上記油圧室35には油圧路39を通
して作動油が供給される一方、油圧室36からは作動油
が排出される。これにより図4のシリンダ34が図面右
方向に動き、スプロケット13に対するカムシャフト1
6の位相が進んで進角制御となる。
【0021】図5(b)は、同デューティー値が約50
%のときの例であり、相対するリニアソレノイド55と
スプリング57との力が釣り合い、スプール55が両方
の油圧ポート60,61を閉鎖する位置に維持され、油
圧室35,36の作動油の供給及び排出が行われていな
い状態を示している。このとき油圧室35,36から作
動油の漏れがない場合には上記シリンダ34は現在位置
に保持され、スプロケット13,カムシャフト16間の
位相は現状に維持される。
【0022】図5(c)は、デューティー値が約0%の
ときの例であり、スプール55がスプリング57により
シリンダ左端に付勢され、供給ポート58−油圧ポート
61間、及び油圧ポート60−排出ポート59間とが連
通した状態を示している。このとき油圧室36には作動
油が供給される一方、油圧室35からは作動油が排出さ
れるのでシリンダ34は図面左方向に動き、スプロケッ
ト13に対するカムシャフト16の位相が遅れて遅角制
御となる。
【0023】次に図6を用いて制御部70の制御動作に
ついて説明する。図6(a)は制御部70で実行される
制御系を表している。コントローラ72はPD動作のコ
ントローラで構成されており、エンジンの運転状態に基
づいて決定された目標カム軸進角値rと、現在のカム軸
進角値yと、RAMを備えて構成された学習回路73か
らの学習値d’とが入力される。コントローラ72は、
後述するフローチャートに基づいて操作量uをデューテ
ィー値で決定し、油圧装置及び位相調整機構からなる制
御対象74に出力する。操作量uはパルス幅変調信号で
生成され、上記電流制御回路を経由してリニアソレノイ
ドに供給される。これにより上記油圧室の作動油が調節
され、作動油量に応じてカムシャフトがその回転方向に
変位される。このときのカム軸進角値yが制御対象74
から検出される。このように制御対象74は油圧機構を
備えているので積分要素を含んでおり、更に実験により
「むだ時間」を含んでいることが判明した。よって制御
対象74の動特性は「積分+むだ時間」で表わすことが
でき、操作量uとカム軸進角速度間の静特性は図6
(b)のように表され得る。
【0024】図6(b)の静特性は不感帯75をもち、
その右肩部分を保持デューティー値da、一方の左肩部
分を遅角デューティー値drと呼ぶ。前者はカム軸進角
速度が「0」となるときのデューティー値であり、言い
換えると現状のカム軸進角値を維持するための値であ
る。また後者は上記シリンダ34が摺動したとき実際に
遅角動作を開始させるときの値である。上記各デューテ
ィー値da,drは、いずれも実験等により予め設定さ
れ、後述する操作値uの決定の際に用いられるが、例え
ばスプール弁の製造公差又は経時変化,あるいは油圧値
又は油圧温度等によりその値が変動し得るものである。
尚、上記デューティー値daと,drとの間のデューテ
ィー値は、油圧室35,36における作動油の漏れ,ま
たはカムシヤフト上のカムプーリが吸気弁を駆動すると
きの摩擦力等に起因してカム軸進角速度が完全に「0」
となるものではなく、長い時間で見ると、カム軸進角値
を遅方向に少しずつ推移させる。
【0025】このように上記デューティー値da,dr
は、上記スプール弁の製造公差又は経時変化等の外乱要
素により変動し得るので、係る弁動作タイミング調整制
御においてはda,drを補償しながら制御を行う必要
がある。そこで本実施例では保持デューティー値daを
学習しながら補償して弁動作タイミング調整制御を行う
場合を説明する。
【0026】図7はその学習制御フローチャートを示し
ている。まずステップ100からステップ120では、
上述の各種のセンサからエンジン内の各状態信号を取込
み、エンジン運転状態及び現在のカム軸進角値 y(k) を
把握して(ステップ110)、当該運転状態に基づいて
目標進角値 r(k) を決定する。そしてステップ130で
は目標進角値 r(k) 及びカム軸進角値 y(k) から偏差 e
(k) を算出する。更にステップ140では、上記目標進
角値 r(k) と過去の目標進角値 ra とを比較して、その
差が所定範囲Δr内、例えば±1度以内であれば、今回
の目標進角値 r(k) と以前の目標進角値 ra との間には
変化がなく一定であると判別する。
【0027】ステップ140にて目標値 r(k) に変化が
あると判別された場合には、ステップ150において当
該目標進角値 r(k) が目標進角値 ra に設定される。そ
してステップ160において現在の偏差 e(k) の量が判
別され、「 e(k) ≧0」の場合には現在のカム軸進角値
を進角するために、式(8)に従って操作量 u(k) を決
定し(ステップ170)、一方「 e(k) <0」の場合に
は現在のカム軸進角値を遅角するために、式(9)に従
って操作量 u(k) を決定する(ステップ180)。 u(k) = K P ・ e(k) + KD ・[ e(k) - e(k-1) ] + da (8) u(k) = K P ・ e(k) + KD ・[ e(k) - e(k-1) ] + dr (9) ここでKP ,KD はフィードバックゲインである。本例
では両式に同じゲイン値KP ,KD を用いているが、弁
動作タイミング調整に要する負荷に応じて各々別個の値
で設定されても構わない。
【0028】このように目標値 r(k) に変化があるとき
には保持デューティー値daの学習は行わず、上記各ス
テップにて偏差 e(k) の量に応じた操作値 u(k) が決定
される。すなわち進角側に制御する場合には、進角させ
るためのデューティー値に保持デューティー値daが重
畳されて操作値 u(k) が決定され、一方、遅角させる場
合には、遅角させるためのデューティー値に遅角デュー
ティー値drが重畳されて操作値 u(k) が決定される。
そして決定された操作値 u(k) は制御信号として上記電
流制御回路を経由してリニアソレノイドに出力される。
【0029】一方、ステップ140において目標値 r
(k) に変化がないと判別されたきには、以下のステップ
に従って保持デューティー値daの学習を実行する。本
装置は、制御対象に外乱要素が存在すると一定量の定常
偏差が発生するという閉ループ制御系の性質を保持デュ
ーティー値daの学習に適応させており、弁動作タイミ
ング調整制御の際に目標進角値 r(k) または偏差 e(k)
の値を監視して、その値が所定時間一定であるとき、そ
のときのコントローラ出力 u(k) を新しい保持デューテ
ィー値daとして学習する。
【0030】上記ステップ140にて目標値 r(k) が所
定範囲Δr内にあると判別したとき、ステップ190に
て目標値 r(k) が所定範囲Δr内にある継続時間Mを計
測し、ステップ200で当該継続時間Mを所定時間t1
と比較する。そして継続時間Mが所定時間t1 に到達し
ている場合にのみ学習操作を開始する。一方、継続時間
Mが所定時間t1 に達していない場合には学習操作を行
わずに上記一連の操作を実行する
【0031】次にステップ210にて、上記カム軸進角
値を進角させる際に用いた計算式(8)に従って操作値
u(k) を算出する。つまり目標進角値 r(k) が一定で且
つその値 r(k) が所定時間t1 以上継続しているとき、
偏差 e(k) の符号に関係なく、現在の保持デューティー
値daを基に操作量 u(k) を算出し、これを制御信号と
して制御を開始する。続いてステップ220では、ステ
ップ210に従って弁動作タイミング制御を行った時間
2 を判別する。すなわち目標進角値 r(k) が継続的に
一定であるなかで、現在の保持デューティー値daを基
に生成した制御信号で弁動作タイミング制御を開始した
とき、上記目標進角値 r(k) が一定であると判別された
時からの継続時間が所定時間t2 となる時点を検出す
る。そしてステップ220にて所定時間t2 を検出した
とき、ステップ230ではそのときの操作値 u(k) を新
しい保持デューティー値daとして更新した後、ステッ
プ240にてカウンタMをリセットする。更新された保
持デューティー値daは、以後上記ステップ170及び
210に反映される。
【0032】このように制御部70では、目標進角値 r
(k) が所定時間一定値にあるとき、偏差 e(k) が一定値
に収束したと推定される時点t2 に現在の保持デューテ
ィー値daを当該操作値 u(k) に更新して保持デューテ
ィー値daの学習を行う。
【0033】本弁動作タイミング調整装置を用いてカム
軸進角値を目標値にする実験を行った例を図8乃至図1
1に示す。各図はいずれも保持デューティー値daがそ
の真値から外れた状態を模擬的に形成させた例であり、
図8,図9は真値より下に外れた場合、図10,図11
は真値より上に外れた場合である。そして図8,図10
は保持デューティー値daを学習せずに制御した場合、
図9,図11は上記保持デューティー値daを学習しな
がら制御する場合を示している。尚、各図において
(a)は係る制御によるカム軸進角値の推移を示してお
り、(b)は係る制御におけるデューティー値の推移を
示している。
【0034】図8及び図9において、スプール弁の実際
の保持デューティー値daは約51%であるが、実験に
際し当初模擬的に約48%に設定してある。図8(a)
において学習操作を行わずに制御すると、カム軸進角値
つまりカム軸進角位置 y(k) は時間とともに目標値 r
(k) に近づくが定常偏差e1 を残して一定値に収束して
いる。一方、図9(a)に示すように学習操作を行いな
がら制御した場合では、当初は学習操作を行わないとき
と同様、カム軸進角位置 y(k)は定常偏差e1 を残して
一定値に収束されるが、目標値 r(k) が所定時間t1
えば600ms継続した時点で学習操作が開始され、そ
の後、例えば目標値 r(k) が一定になってから1200
ms継続したt2 において進角デューティー値daが更
新されることにより、カム軸進角位置 y(k) は速やかに
目標値 r(k) に到達している。
【0035】また、図10及び図11においては、スプ
ール弁の実際の保持デューティー値da約51%に対し
て当初模擬的に約54%に外してある。図10(a)で
はステップ状の目標値 r(k) 入力に対してオーバーシュ
ートが発生しており、上記図8(a)のように保持デュ
ーティー値daが下に外れた場合と比べて収束するまで
の時間が長い。一方、図11(a)のように学習操作を
実行する場合、当初は図10(a)と同様にオーバーシ
ュートが発生するが、上記図9と同様にt1 の時点で学
習操作が開始され、その後、上記進角側の操作値算出式
(8)を以て制御される。このとき当該保持デューティ
ー値daは当初約3%外されているため、カム軸進角値
y(k) は当初に外されたデューティー値3%分だけ定常
偏差e2 を発生して収束しているが、図11(b)のデ
ューティー値は定常偏差e2 に相応して減少している。
したがって上記図9と同様にt2 の時点で進角デューテ
ィー値daが更新されると、カム軸進角位置 y(k) は速
やかに目標値 r(k) に収束される。
【0036】尚、上記弁動作タイミング制御は、積分動
作を含むコントローラ(例えばPIDコントローラ)を
用いて行うことも可能であるが、積分要素を含む制御対
象に積分動作を備えたコントローラを組合わせて制御系
を構成すると、例えば目標値がステップ状に変化する場
合、保持デューティー値が正しく設定されていてもカム
軸進角値にオーバーシュートが発生し、結果的に目標値
への収束が遅れる等、当該進角制御には好ましい結果と
ならない。本弁動作タイミング調整装置は、以上のよう
に積分動作を含まないコントローラを用いることによ
り、当該コントローラの出力から保持デューティー値を
速やかに得ることができ、これによりスプール弁の動作
変動による外乱を速やかに補償し、以後の制御において
定常偏差をなくすことができるものである。
【0037】このように本発明の具体例を上記に示した
が、係る原理に基づいて保持デューティー値等の基準値
を学習するという願発明の精神は種々の応用が可能であ
り、例えば上記制御部を最適レギュレータで構成した場
合、最適値のズレを補償するためにも応用が可能であ
る。
【0038】
【発明の効果】本発明によれば、例えば油圧装置等の積
分要素を含む制御対象をフィードバック学習制御して吸
気弁,排気弁の動作タイミングを調節する際、閉ループ
系の性質を適応させることにより、スプール弁等の変動
による影響を迅速に解決し、弁動作タイミング調整にお
ける制御性を向上させることができる。これによりエン
ジンの運転状態に応じて適切な吸気,排気が行われ、エ
ンジンの運転性能が向上される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る弁動作タイミング調整装置の一形
態を示すブロック図である。
【図2】本発明に用いる閉ループ系の性質を説明するた
めのブロック線図であり、(a)は制御系のブロック線
図、(b)は(a)を近似したブロック線図である。
【図3】本発明に係る弁動作タイミング調整装置の一実
施例を示す構成図である。
【図4】図3の調整装置の位相調整機構を示す断面図で
ある。
【図5】図3の調整装置におけるスプール弁53の各状
態例を示す断面図であり、(a)はデューティー値10
0%、(b)は同50%、(c)は同0%の状態であ
る。
【図6】図3の調整装置の制御系を表す図であり、
(a)はブロック線図、(b)はデューティー値とカム
軸進角速度の静特性である。
【図7】図3の調整装置の制御部で実行される学習制御
フローチャートである。
【図8】図3の調整装置において学習制御を行わずに弁
動作タイミングを調整したときの一タイムチャートであ
り、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)は
デューティー値と時間との関係を示す。
【図9】図3の調整装置において学習制御を行いながら
弁動作タイミングを調整したときの一タイムチャートで
あり、(a)はカム軸進角位置と時間との関係、(b)
はデューティー値と時間との関係を示す。
【図10】図3の調整装置において学習制御を行わずに
弁動作タイミングを調整したときのもう1つのタイムチ
ャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関
係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【図11】図3の調整装置において学習制御を行いなが
ら弁動作タイミングを調整したときのもう1つのタイム
チャートであり、(a)はカム軸進角位置と時間との関
係、(b)はデューティー値と時間との関係を示す。
【符号の説明】
10…エンジン 11…クランクシャフト 13…吸気弁用スプロケット 16…吸気弁用カムシャフト 17…クランク位置検出センサ 18…カムシャフト位置検出センサ 20…位相調整機構 23…カムシャフトスリーブ 26…スプロケットスリーブ 32a…カムシャフトスリーブの外歯ヘリカルスプライ
ン 32b…シリンダの内歯ヘリカルスプライン 33a…スプロケットスリーブの内歯ヘリカルスプライ
ン 33b…シリンダの外歯ヘリカルスプライン 34…シリンダ 35,36…油圧室 37,38,39,40…油圧路 50…油圧装置 52…油圧ポンプ 53…スプール弁 54…シリンダ 55…スプール 56…リニアソレノイド 57…スプリング 70…制御部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃機関内のクランク軸からカム軸に至
    る回転伝達系内に設けられ、両軸間の回転位相差を変え
    るための位相調整機構(1)と、前記位相調整機構を駆
    動するための駆動手段(2)と、内燃機関各部に設けら
    れ、機関の運転状態を表す複数の状態量を検知する各種
    センサ(3)と、前記センサによって検出された運転状
    態量に基づいて前記両軸間の実位相差角を算出する回転
    位相差検出手段(4)と、前記センサによって検出され
    た運転状態量に基づいて回転位相差の目標値を決定する
    目標値決定手段(5)と、前記実位相差角を回転位相差
    の目標値に一致させるための制御値を生成して前記駆動
    手段に出力する制御手段(6)とを具備する弁動作タイ
    ミング調整装置において、 前記制御手段は、積分器を含まないコントローラ(7)
    と、前記目標値が所定時間一定値にあるときに当該コン
    トローラから出力される操作値を記憶する学習手段
    (8)とを備え、前記制御値を生成する際に、前記学習
    手段に記憶された操作値を学習値として用いることを特
    徴とする弁動作タイミング制御装置。
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