JPH06293905A - 低燐低硫鋳物銑の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 型銑の表面および内部性状を改善した低燐低
硫鋳物銑の製造方法を提供する。 【構成】 低燐低硫鋳物溶銑を鋳銑機に鋳込み型銑にす
るに際して、出銑口に耐火物製のスラグストッパー３を
設けた溶銑受け容器から鋳銑樋２に溶銑４を注入し、鋳
銑樋内で溶銑に脱酸剤６を添加し、その後鋳銑機10に鋳
込む低燐低硫鋳物銑の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、低燐低硫処理された低
燐低硫鋳物溶銑を脱酸して、鋳銑機に鋳込み型銑にする
低燐低硫鋳物銑の製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】低燐低硫鋳物銑は、高炉から出銑された
溶銑を溶銑処理して製造されている。すなわち、高炉か
ら出銑された溶銑は酸化物系の脱珪剤あるいは酸素ガス
の吹き込みによって脱珪処理され、その後、酸化鉄、石
灰系の脱燐剤を酸素ガスと同時に吹き込み脱燐される。
したがって、処理後の溶銑中には数十から数百ppm の酸
素が含有されている。溶銑中の酸素の含有量は溶銑温度
に比例するため、溶銑温度の低下とともに、酸素は溶銑
外に放出される。

【０００３】したがって、酸素を含有している低燐低硫
鋳物溶銑を鋳銑機に鋳込むと、温度の低下とともにモー
ルド内の溶銑は凝固するまで酸素ガスを放出し、沸騰現
象が生じる。その結果、図３に示すように、型銑の表面
には窪みが生じ、内部には気泡巣を生じる。このような
型銑は小割れし易く、歩留りを低下させ、また、鋳物工
場での溶解時、窪みや気泡巣内に付着残留している水が
水蒸気爆発を起こす等の安全上の問題も含んでいる。

【０００４】また、溶銑の温度低下とともに、放出され
る酸素ガスは溶銑中のC や鉄と反応し、CO₂ ガスや酸化
鉄の赤いフュームを多量に発生させる。したがって、脱
酸処理を行わない場合には鋳銑中に多量の赤煙が発生し
作業環境を悪化させる。このような問題を回避するため
に、低燐低硫鋳物溶銑を鋳銑機に鋳込むまえに脱酸処理
が行われている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】脱燐処理された溶銑の
脱酸は、溶銑鍋またはトーピードカー内で直接処理され
る。この場合、下記のような問題点がある。 (1) 溶銑鍋内には脱燐スラグがあるため復燐が生じる。 (2) 復燐防止のため、溶銑鍋内の脱燐スラグを除去する
ことは工程が増え生産能力が低下することになる。 (3) 大型のトーピードカー内での処理は、全体が均一に
脱酸されない。 (4) 脱燐スラグは酸化性であるため、脱酸剤の添加効率
が悪い。

【０００６】本発明は上記の問題点を解決するためにな
されたもので、低燐低硫鋳物溶銑を鋳銑機に鋳込むに際
して、溶銑を鋳銑樋に注入する時に脱燐スラグを除去
し、その後脱酸剤を鋳銑樋内の溶銑に添加し、脱酸して
鋳込むことによって、酸素を含有した溶銑の脱酸による
復燐を防止し、かつ生産能力を低下させず、さらに脱酸
剤の添加効率を良くし、型銑の表面および内部性状を改
善した低燐低硫鋳物銑の製造方法を提供することを目的
とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】第１発明は、低燐低硫鋳
物溶銑を鋳銑機に鋳込み型銑にするに際して、出銑口に
耐火物製のスラグストッパーを設けた溶銑受け容器から
鋳銑樋に溶銑を注入し、鋳銑樋内で溶銑に脱酸剤を添加
し、その後鋳銑機に鋳込む低燐低硫鋳物銑の製造方法で
ある。

【０００８】第２発明は、脱酸剤として、Alを溶銑に、
溶銑重量の0.01〜0.05％添加する請求項１記載の低燐低
硫鋳物銑の製造方法である。

【０００９】

【作用】溶銑受け容器の出銑口に耐火物製のスラグスト
ッパーを設けることによって、溶銑を鋳銑樋に注入する
ときの、溶銑受け容器内に残存する脱燐スラグの鋳銑樋
への流入を防止しすることができる。これによって、鋳
銑樋内の溶銑に添加される脱酸剤は、脱燐スラグと反応
することもなく添加効率が良くなり、溶銑への復燐も防
止することができる。このため、溶銑の脱酸が十分に行
われ、型銑の表面および内部性状が改善される。

【００１０】Alで脱酸する場合、溶銑重量の0.01％未満
の添加では脱酸効果が少なく、型銑表面の窪み、内部の
気泡巣を完全になくすことができない。一方、Alはダク
タイル鋳鉄製造時の黒鉛球状化阻害元素であり、添加量
の上限を0.05％とする。したがって、Alの添加量は溶銑
重量の0.01〜0.05％とする。

【００１１】

【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。
実施例に使用した設備を図１に示す。図中１はトーピー
ドカーで、トーピードカー１の出銑口には耐火物製のス
ラグストッパー３が設けてある。トーピードカー１内の
溶銑４を鋳銑樋２に注入するとき、トーピードカー１内
に残存する脱燐スラグ５は、スラグストッパー３で堰止
められ、溶銑４のみが鋳銑樋２に注入される。脱酸剤６
は貯蔵ホッパ７から添加シュート８を通って鋳銑樋２内
の溶銑注入位置に添加される。脱酸剤６を溶銑の注入位
置に添加することによって、脱酸剤６は溶銑とよく混ざ
り合い、溶銑との反応を促進することができる。

【００１２】このようにして、脱酸剤を添加された溶銑
は鋳銑樋２から分配樋９を経由して鋳銑機10のモールド
11に鋳込まれ型銑になる。添加された脱酸剤は直ちに溶
解して溶銑を脱酸するが、この時点ではまだ脱酸は均一
化されておらず、分配樋９を経由してモールド11に鋳込
まれる間に脱酸は均一化して、酸素含有量の少ない溶銑
が得られる。その結果、型銑の表面および内部性状が改
善される。

【００１３】脱酸剤の添加速度の調整は、トーピードカ
ーからの溶銑注入速度に連動して、脱酸剤の切り出し量
を自動的に調整して行った。また、これ以外に、トーピ
ードカーからの溶銑注入速度を一定にし、これに対応す
る一定量の脱酸剤を連続的に切り出してもよい。

【００１４】上記の脱酸設備を使用して、表１に示す化
学成分の低燐低硫鋳物溶銑の脱酸を行った。粒状のAlを
溶銑重量に対して0.02％添加したもので、脱酸によって
溶銑の酸素量は30〜40ppm から5ppm以下まで低下してい
る。この時の型銑の表面および内部の性状を図２に示
す。

【００１５】

【表１】

【００１６】型銑の表面および内部の性状は図２に示す
ように、脱酸が十分にされているため、表面には窪みは
認められず、また、内部にも気泡巣は認められない。

【００１７】なお、実施例では粒状のAlを使用したが、
Alの形状は鋳銑速度に合わせて連続的に溶銑に添加する
ことができる形状であればよく、例えば、棒状、ワイヤ
ー状でもよい。

【００１８】

【発明の効果】本発明は、低燐低硫鋳物溶銑を鋳銑機に
鋳込み型銑にするに際して、出銑口に耐火物製のスラグ
ストッパーを設けた溶銑受け容器から鋳銑樋に溶銑を注
入し、鋳銑樋内で溶銑に脱酸剤を添加し、その後鋳銑機
に鋳込む低燐低硫鋳物銑の製造方法であって、本発明に
よれば、酸素を含有した溶銑の脱酸による復燐を防止
し、かつ生産能力を低下させず、さらに脱酸剤の添加効
率を良くし、均一な脱酸を行うことができる。その結
果、型銑の表面および内部性状がよくなり、小割れがな
くなり、歩留りが向上する。また、溶解時、窪みや気泡
巣内に付着残留している水による水蒸気爆発も防止で
き、安全上の問題もなくなり、さらに鋳銑作業環境も改
善される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例に使用した設備の概念図であ
る。

【図２】本発明法による型銑の表面および内部性状を示
す図である。

【図３】脱酸不十分な型銑の表面および内部性状を示す
図である。

【符号の説明】

１…トーピードカー、２…鋳銑樋、３…スラグストッパ
ー、４…溶銑、５…脱燐スラグ、６…脱酸剤、７…貯蔵
ホッパ、８…添加シュート、９…分配樋、10…鋳銑機、
11…モールド、12…ダンパー。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 勝田 順一郎 兵庫県加古川市金沢町１番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 低燐低硫鋳物溶銑を鋳銑機に鋳込み型銑
   にするに際して、出銑口に耐火物製のスラグストッパー
   を設けた溶銑受け容器から鋳銑樋に溶銑を注入し、鋳銑
   樋内で溶銑に脱酸剤を添加し、その後鋳銑機に鋳込むこ
   とを特徴とする低燐低硫鋳物銑の製造方法。
2. 【請求項２】 脱酸剤として、Alを溶銑に、溶銑重量の
   0.01〜0.05％添加する請求項１記載の低燐低硫鋳物銑の
   製造方法。