JP2842248B2 - 溶銑の脱硫方法 - Google Patents

溶銑の脱硫方法

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JP2842248B2 JP24138194A JP24138194A JP2842248B2 JP 2842248 B2 JP2842248 B2 JP 2842248B2 JP 24138194 A JP24138194 A JP 24138194A JP 24138194 A JP24138194 A JP 24138194A JP 2842248 B2 JP2842248 B2 JP 2842248B2
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健司 坂
博文 安田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶銑の脱硫方法、特
に、上下両吹き機能を有した2基の転炉形式の炉のうち
の一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として、脱燐炉で得られ
た脱燐溶銑を脱炭炉にて精錬する製鋼法において、新た
なプロセスに供することなく、脱硫することができる方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、脱硫技術には溶銑段階での脱硫、
と溶鋼段階での脱硫の2つに大別され、溶銑の脱硫法と
してはKRインペラー脱硫法やフラックスインジェクシ
ョン法等が既に実用化されている。
【0003】しかしながら、従来の方法で脱硫するため
には、新たな設備の設置が必要である上、かつ脱硫実施
時には、耐火物溶損、並びに温度降下が大きく、経済的
な損失が大きかった。
【0004】例えば、特開平1−222015号公報で、高炭
素鋼を製造する際、転炉出鋼後の取鍋内で脱硫を行う方
法が提案されているが、高炭素鋼に限定されている上、
出鋼後にインジェクション等、何等かの設備設置を前提
としており、高価な方法と言える。
【0005】ところで、上下両吹き機能を有した2基の
転炉形式の炉のうちの一方を脱燐炉、他方を脱炭炉とし
て、脱燐炉で得られた脱燐溶銑を脱炭炉にて精錬すると
いう製鋼法が、特開昭62−290815号公報や、特開平1−
147012号公報に提案されている。
【0006】そしてこのような製鋼法における脱硫法と
しては、特開平1−147012号公報においてはスラグ塩基
度を調整することにより、脱硫することを提案してい
る。確かに溶鋼の脱硫より効果的かつ安価に実施できる
が、脱硫効率の点で十分とは云えなかった。S≦50ppm
とするには溶鋼脱硫を実施する必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の一般的目的
は、これらの従来技術の問題を解決する手段を開発する
ことである。本発明の具体的な目的は、上下両吹き機能
を有した2基の転炉形式の炉のうちの一方を脱燐炉、他
方を脱炭炉として用い、脱燐炉で得られた脱燐溶銑を脱
炭炉にて精錬するという製鋼法において、脱硫設備の新
設が不要で、かつ余分な耐火物の溶損や温度降下なく50
ppm 以下、好ましくは10ppm 以下にまで脱硫できる経済
的な脱硫方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、出湯中に
脱硫することに着目し、脱燐炉精錬後取鍋への出湯時、
脱燐剤を取鍋内へ添加することにより、出湯完了までに
脱硫を行い、その後、排滓を行い脱炭炉に注銑して脱炭
吹錬することにより、復硫もしない効果的な脱硫が可能
になることを知り、本発明を完成した。
【0009】ここに、本発明の要旨とするところは、上
下両吹き機能を有した2基の転炉形式の炉のうちの一方
を脱燐炉、他方を脱炭炉として使用し、脱燐炉で得られ
た脱燐溶銑を脱炭炉にて精錬する製鋼法において、脱燐
炉精錬終了後に脱燐炉から取鍋を経て脱炭炉に溶銑を注
入する際に、脱燐炉から取鍋への溶銑出湯中にCaO-Al2O
3 系、CaO-CaF2系、およびNa2CO3から成る群から選ばれ
た少なくとも1種の脱硫剤を添加して脱硫を行うことを
特徴とする溶銑の脱硫方法である。
【0010】本発明の好適態様によれば、前記脱燐炉に
おけるスラグ組成を塩基度 (CaO/SiO2) が、1.5 以上で
あるように調整する。
【0011】本発明の実施に際しては、脱硫剤の添加操
作としては出湯中に取鍋上方から脱硫剤を投入してもよ
く、あるいは取鍋内に予め脱硫剤を入れ置きしておいて
もよい。
【0012】
【作用】次に、本発明の作用について添付図面を参照し
ながらその具体的操作に基づいて説明する。図1ないし
図3は、本発明にかかる方法の各処理工程を示す概略説
明図であって、図中、参照符合1は脱燐炉、2は出湯
流、3は溶銑、4は取鍋、5はスラグ、6はスラグ排滓
機、そして7は脱炭炉をそれぞれ示す。
【0013】ここに、本発明によれば、上下両吹き機能
を有した転炉形式の脱燐炉1において装入された溶銑に
酸素吹き込みにより脱燐処理を行う。この脱燐炉1の操
業条件はすでによく知られており、本発明においてもそ
のような公知の条件で脱燐処理を行えばよい。
【0014】脱燐処理終了後には、図1に示すように、
溶銑3は取鍋4に出湯される。このとき炉内のスラグは
そのままとし溶銑3だけが出湯流2として取鍋4に投入
される。このとき、本発明によれば、脱硫剤が溶鋼に添
加される。図2は脱硫剤の添加後に取鍋4で除滓を行う
様子を示すもので、溶湯表面に形成された脱硫スラグ5
はスラグ排滓機6によって除去される。
【0015】スラグを除去したあと、図3に示すよう
に、取鍋内溶銑3は同じく上下両吹き機能を有した転炉
形式の脱炭炉7に注湯され、脱炭処理が行われる。この
ときの脱炭処理条件もすでに公知であり、本発明にあっ
てもその公知の処理条件で脱炭処理を行えばよい。
【0016】本発明によれば、脱燐炉精錬終了後に脱燐
炉から取鍋を経て脱炭炉に溶銑を注入する際に、脱燐炉
から取鍋への溶銑出湯中に脱硫剤を添加することを特徴
とするが、このとき使用する脱硫剤としてはCaO-Al2O3
系、CaO-CaF2系、およびNa2CO3から成る群から選ばれた
少なくとも1種の脱硫剤を用いればよい。
【0017】脱硫剤の添加量は、目的とする脱硫の程
度、脱燐銑の性状によって変わるが、一般には、1〜10
kg/溶銑1トン、好ましくは2〜6kg/溶銑トンであ
る。本発明では、従来の出湯段階において脱硫剤を添加
するのみでその効果が期待できるため、設備の新設は不
要であり、また、時間も余分に増えるわけではないので
脱硫に伴い温度降下や耐火物溶損が大きくなることもな
い。
【0018】本発明によれば脱硫反応が進む理由は、必
ずしも明確ではないが、次のように考えられる。出湯中
に脱硫剤を添加するため、脱硫剤が溶銑内へ懸濁し、脱
硫剤がスラグに浮上するまでに反応するトランジトリー
反応により脱硫が進行する。反応式は次式の通りであ
る。
【0019】CaO系フラックスの場合: CaO +=CaS + ソーダ灰の場合: Na2CO3 = Na2S +CO2 出湯流攪拌による取鍋内溶銑流動は非常に不規則である
ため、一度懸濁した脱硫剤はなかなかスラグ中に浮上す
ることなく、溶鉄内での浮遊時間を長時間確保できるこ
とも脱硫が促進する一因となっている。
【0020】また、脱燐吹錬後の[C] は約4%程度であ
り、[O] が10ppm 以下と低酸素濃度であるため、脱硫に
適している。脱硫をより促進させるためには、溶鉄中の
酸素濃度がさらに低レベルであることが望ましいため、
溶鉄の脱酸剤 (Al、Si等) を出湯時、脱硫剤と同時に投
入すると効果的である。
【0021】脱硫剤としては、CaO 単体では融点が高
く、溶湯との反応性が悪いので脱硫しないが、CaO がベ
ースにCaF2またはAl2O3 を混合し、低融点組成にするこ
とにより、脱硫剤界面での物質移動が速くなり、脱硫反
応がよく進行する。あるいはソーダ灰系脱硫剤としてNa
2CO3を用い、これを投入してもよい。
【0022】しかも、脱燐炉での低O2使用量 (脱炭不
要) で、出湯時の温度降下が少ない時(1300℃以上ある)
、さらに鋼中、O2量が少ないため、反応が右に進み易
く、復硫、つまり上記反応が左へ進むこともない。
【0023】本発明によれば脱燐銑の段階で10〜25ppm
の[S] のとき [S]≦10ppm にまで脱硫が可能となる。し
かも、これは単に脱硫剤の添加だけで実現するのであっ
て、全く予想外と云わねばならない。
【0024】
【実施例】
(実施例1)本例では表1に示す条件で脱燐→脱炭を行っ
た。溶銑段階で [S]=20ppm まで脱硫した溶銑を脱燐炉
で吹錬し、出湯時脱硫した。
【0025】出湯時の[C] は約4%であり、媒溶剤とし
ては、CaO 70%−Al2O3 30%の脱硫剤を、4K/T とにし
た。この結果出湯前後で[S] は20ppm →6ppm まで脱硫
できた。スラグ排滓後脱炭吹錬することにより、復硫も
することなく、その後の溶鋼脱硫プロセスなしで極低硫
鋼の溶製ができた。結果は表2にまとめて示す。比較例
として脱硫剤を添加しなかった例も併せて示す。
【0026】(実施例2)溶銑段階で[S] =50ppm まで脱
硫した溶銑を脱燐炉で吹錬し、出湯時脱硫した。出湯時
の[C] は約3%であり、媒溶剤および合金としては溶鉄
脱酸用のAlを1K/T 、CaO 75%−CaF225%の脱硫剤を4
K/T 投入した。この結果、出湯前後で[S] は50ppm →30
ppm まで脱硫できた。スラグ排滓後脱炭吹錬することに
より、復硫〔(CaO) +[S] ← (Cas)+[O] 〕もせず、
[S] =30ppm の成品を作ることができた。
【0027】結果は表3にまとめて示す。比較例として
脱硫剤を添加しなかった例も併せて示す。この出湯脱硫
法の導入により溶銑脱硫での負荷が大幅に低減すること
ができた。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】本発明により、プロセスの増加がなく、
また、耐火物溶損や温度降下もなしに脱硫ができるよう
になった。従来、溶鋼脱硫プロセスを行なわなければ、
[S] ≦10ppm の極低硫鋼を安定して製造することは困難
であったが、本発明の出湯脱硫法を用いることにより、
溶銑脱硫との組み合わせにより溶鋼脱硫プロセスなしで
[S] ≦10ppm の極低硫鋼を製造することが可能となっ
た。
【0032】また、[S] ≦200 ppm 程度の低硫鋼を製造
する際も、出湯脱硫法を用いることにより、溶銑脱硫の
負荷を大幅に低減することが可能となった。このように
本発明によれば脱P、脱Cを区分した2炉形式での低P
鋼溶製時、プロセスの増加なしに、低S鋼溶製が可能と
なったのであり、その実用上の意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる脱硫法における脱硫剤の添加の
様子の説明図である。
【図2】本発明にかかる脱硫法における除滓の様子の説
明図である。
【図3】本発明にかかる製鋼法おいて脱硫済の溶鋼を取
鍋から脱炭炉に注湯するときの説明図である。
【符号の説明】
1:脱燐炉、 2:出湯流、 3:溶銑、 4:取鍋、
5:スラグ、 6:スラグ排滓機、 7:脱炭炉
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21C 1/02 106 C21C 1/02 103 C21C 1/02 105 C21C 1/02 110 C21C 5/28

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上下両吹き機能を有した2基の転炉形式
    の炉のうちの一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として使用
    し、脱燐炉で得られた脱燐溶銑を脱炭炉にて精錬する製
    鋼法において、脱燐炉精錬終了後に脱燐炉から取鍋を経
    て脱炭炉に溶銑を注入する際に、脱燐炉から取鍋への溶
    銑出湯中にCaO-Al2O3 系、CaO-CaF2系、およびNa2CO3
    ら成る群から選ばれた少なくとも1種の脱硫剤を添加し
    て脱硫を行うことを特徴とする溶銑の脱硫方法。
  2. 【請求項2】 前記脱燐炉におけるスラグ組成を塩基度
    (CaO/SiO2) が1.5以上であるように調整する請求項1
    記載の方法。
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