JPH062896U - スピーカ用磁気回路 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 センターポール内の磁束分布を基にして、磁
束分布を乱さずに貫通孔を穿設することで空隙磁束密度
を低下させること無く、又、スピーカ性能も劣化させる
ことの無い外磁型磁気回路を提供すること。 【構成】 センターポール２に貫通孔５が穿設されてい
る外磁型磁気回路の、前記貫通孔５がフロントからバッ
クに向かって直径が減少する円錐面部5aと、該円錐面部
5aに繋がり且つ磁気回路のバック寄りに偏って位置する
肉厚部5bと、該肉厚部5bと繋がり且つバックに向かって
直径が増大する円錐面部5cとからなる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、外磁型のスピーカ用磁気回路に於て、振動板の背圧上昇を防ぐ目的 でセンターポールに貫通孔が穿設されている構造の磁気回路に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来におけるスピーカ用磁気回路の代表的な構造は、例えば図６に示す如く、 バックプレート11と、当該バックプレート11の中央に凸設され且つ中心に貫通孔 15が穿設されているセンターポール12と、前記バックプレート11の上に載置され たリング状のマグネット13と、当該マグネット13の上に載置されたリング状のフ ロントプレート14からなり、前記センターポール12の側面とフロントプレー14の 内周面とで磁気空隙17が形成された構造、又は図７に示し、且つ実開昭55-16559 1 号公報に記載の如く、貫通孔の共鳴を減少させ且つ振動系のＱを制御する目的 で、前記貫通孔15の内壁に孔の断面積を部分的に小さくする突出部16が形成され た構造の磁気回路が存在する。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

この様な構造を有する従来の外磁型磁気回路は、貫通孔15を穿設するに際し、 断面形状を実験的に試行錯誤により決定していたので、例えば振動板背面の圧力 を緩和する目的で貫通孔15の直径を大きくすると、磁気回路の磁気抵抗が増大し て空隙磁束密度が低くなり、反対に空隙磁束密度の低下を防止する目的で貫通孔 15を小さくすると振動系のスティフネスが全体として大きくなってスピーカの性 能が悪くなるという欠点があった。

【０００４】 又、図６に示す構造では、突出部16の部位で段部を形成し、音響インピーダン スが不連続となっているので、貫通孔部分の共鳴は単に周波数が高くなるだけで 完全な抑制は困難であるという解決すべき課題があった。

【０００５】 そこで本考案は、上記従来例に付する欠点を解消し、センターポール内の磁束 分布を基にして、磁束分布を乱さずに貫通孔を穿設することで空隙磁束密度を低 下させること無く、又、スピーカ性能も劣化させることの無い外磁型磁気回路を 提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するための本考案に係るスピーカ用磁気回路を、実施例を示す 図１〜図３を用いて説明すると、本考案は、バックプレート１と、当該バックプ レート１の中央に凸設され且つ中心に貫通孔５が穿設されているセンターポール ２と、前記バックプレート１の上に載置されたリング状のマグネット３と、当該 マグネット３の上に載置されたリング状のフロントプレート４からなり、前記セ ンターポール２の側面とフロントプレート４の内周面とで磁気空隙が形成されて いるスピーカ用磁気回路に於て、前記センターポール２に穿設された貫通孔５が フロントからバックに向かって直径が減少する円錐面部5aと、当該円錐面部5aに 繋がり且つ磁気回路のバック寄りに偏って位置する肉厚部5bと、当該肉厚部5bと 繋がり且つバックに向かって直径が増大する円錐面部5cとから成る事を特徴とす るスピーカ用磁気回路である。

【０００７】

【作用】

一般に、外磁型のスピーカ用磁気回路では、センターポールが充実している場 合、有限要素法による磁場解析の結果によると図４の様な磁束分布を示すが、本 願の磁気回路のセンターポールは磁束分布が極めて疎な部分に貫通孔を設けてい るので、貫通孔穿設後の磁束分布は図５の様になり、穿設前後の磁束分布の変化 がそれ程大きくないので空隙磁束密度の低下は実験結果によると０．１８％程度 である。

【０００８】 更に、センターポールのフロント面並びにバック面に於て貫通孔の直径が大き く、円錐面部によって肉厚部に連続しているので、振動板背面の空気の流体抵抗 は低く、振動系背面のスティフネスは大きくならないのでスピーカの性能の劣化 はない。更に貫通孔が錐面を主体とした形状であるから、貫通孔の部位で著しい 共鳴が生じて再生音質を劣化させることはない。

【０００９】

【実施例】

図１〜図３により、本考案の実施例を詳述すると、図１は本願実施例の断面を 示し、バックプレート１の中央に、中心に貫通孔５が穿設されているセンターポ ール２が凸設され、前記バックプレート１の上にリング状のマグネット３が載置 され、更に当該マグネット３の上にリング状のフロントプレート４が載置され、 前記センターポール２の側面とフロントプレート４の内周面とで磁気空隙が形成 されている。

【００１０】 前記センターポールの貫通孔５は、フロントからバックに向かって直径が減少 する円錐面部5aと、当該円錐面部5aに繋がり且つ磁気回路のバック寄りに偏って 位置する肉厚部5bと、当該肉厚部5bと繋がり且つバックに向かって直径が増大す る円錐面部5cとから成る。

【００１１】 円錐面部5aのフロント面の開口部直径をDf、センターポール２の直径をDp、前 後方向の長さをLp、フロントプレート４の厚さをTfp 、円錐面部5cのバック面の 開口部直径をDb、バックプレート１の厚さをTbp 、肉厚部5bの直径をDm、長さを Lm、マグネット３の内径をDmg とすると（図２を参照）、これ等各部位の寸法関 係は実験結果によると、数式(1) 、数式(2) 、数式(3) のいずれかを満たすこと が望ましい。

【００１２】

【数１】

【００１３】

【数２】

【００１４】

【数３】 上記数式(1) 〜数式(3) を全て満たし、且つセンターポール２の肉厚が小さい 場合、急激に空隙磁束密度が低下することがあるので注意が必要である。

【００１５】 又、貫通孔の内部での肉厚部5bの位置は、センターポール２の全高をLpとする と、肉厚部5bの中心位置ｏ′（＝Lm／２）、センターポールの前後方向の中間位 置をＯ（＝Lp／２）とすると、ｏ′はＯよりも磁気回路のバック面よりに位置す るように形成される。

【００１６】 図３に断面を示す磁気回路は本実施例の変形例であって、貫通孔５の内壁面を 各部の主要寸法を上記関係を保持したまま、円錐面部5a、肉厚部5b、円錐面部5c を相互に滑らかな曲面で連結せしめた構造である。この変形例は実施例と比較し て 、振動板の振動に伴う貫通孔５内部の空気の流れが滑らかとなり、気流雑音が 減少するという特徴を有している。

【００１７】 上記実施例のポール内部の磁束分布を有限要素法により解析した結果を図５に 示す。図４に示す貫通孔が無い場合と比較すると、空隙部分の磁束分布はほとん ど変化が無く、肉厚部5bの部分で僅かにセンターポール外周寄りに引寄せられて いる。これはセンターポールの断面積の減少によって実質的にセンターポール部 の磁気抵抗が増加したことを意味し、前記した空隙磁束密度の僅かな減少がこの 磁気抵抗増加に対応していると思われる。

【００１８】 以上、本考案に係るスピーカ用磁気回路について代表的と思われる実施例を基 に詳述したが、本考案による磁気回路の実施態様は、上記実施例の構造に限定さ れるものではなく、前記した実用新案登録請求の範囲に記載の構成要件を具備し 、本考案にいう作用を呈し、以下に述べる効果を有する限りにおいて、適宜改変 して実施しうるものである。

【００１９】

【効果】

本考案に係るスピーカ用磁気回路は、以下に述べる効果を有する。 (1) 本願の磁気回路のセンターポールは磁束分布が極めて疎な部分に貫通孔を設 けているので、貫通孔穿設前後の空隙磁束密度は殆ど変化しない。 (2) センターポールのフロント面並びにバック面に於て貫通孔の直径が大きく、 円錐面によって肉厚部に連続しているので、振動板背面の空気の流体抵抗は低く 、背面の圧力上昇に起因する非直線歪み等によるスピーカの性能の劣化はない。 (3) 貫通孔が錐面を主体とした形状であるから、貫通孔の部位で著しい共鳴が生 じて再生音質を劣化させることはない。 (4) 磁気回路の組立て時、固定、位置出しに治工具を使用するが、貫通孔が錐面 であるため確実な位置出しが可能である。更に、固定用治工具の寸法的な自由度 が高い。

【図面の簡単な説明】

【図１】本願考案実施例の断面図。

【図２】本願実施例の部品相互の寸法関係を説明するた
めの説明図。

【図３】本願実施例の変形例の断面図。

【図４】充実したセンターポール内部の磁束密度分布
図。

【図５】本願実施例のセンターポール内部の磁束密度分
布図。

【図６】従来例の磁気回路の断面図。

【図７】他の従来例の磁気回路の断面図。

【符号の説明】

１ バックプレート ２ センターポール ３ マグネット ４ フロントプレート ５ 貫通孔

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 バックプレート（１）と、当該バックプ
   レート（１）の中央に凸設され且つ中心に貫通孔（５）
   が穿設されているセンターポール（２）と、前記バック
   プレート（１）の上に載置されたリング状のマグネット
   （３）と、当該マグネット（３）の上に載置されたリン
   グ状のフロントプレート（４）からなり、前記センター
   ポール（２）の側面とフロントプレート（４）の内周面
   とで磁気空隙が形成されているスピーカ用磁気回路に於
   て、前記センターポール（２）に穿設された貫通孔
   （５）がフロントからバックに向かって直径が減少する
   円錐面部(5a)と、当該円錐面部(5a)に繋がり且つ磁気回
   路のバック寄りに偏って位置する肉厚部(5b)と、当該肉
   厚部(5b)と繋がり且つバックに向かって直径が増大する
   円錐面部(5c)とから成る事を特徴とするスピーカ用の磁
   気回路。