JPH06287639A - 全周磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

全周磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法

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JPH06287639A
JPH06287639A JP7477893A JP7477893A JPH06287639A JP H06287639 A JPH06287639 A JP H06287639A JP 7477893 A JP7477893 A JP 7477893A JP 7477893 A JP7477893 A JP 7477893A JP H06287639 A JPH06287639 A JP H06287639A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた全周磁束密度を有する無方向性電磁鋼
板を1回冷延法で製造する方法を提供する。 【構成】 C≦0.0050% 、(Si+2Al)≦1.8%、Mn:0.05
〜1.5%、 P≦0.12% 、 S≦0.010%、 N≦0.003%を含有
し、残部実質的にFeよりなるスラブを温度1000〜1200℃
で加熱後、仕上温度を(Ar3 −10〜Ar3 −80)℃に制御
して、厚みを1.0 〜2.0mm にした後、 400〜700 ℃で巻
取、酸洗、冷延、焼鈍の工程を順次行うこと、および
C≦0.0024% 、(Si+2Al)≦1.8%、Mn:0.05〜1.5%、 P≦
0.08% 、 S≦0.004%、 N≦0.003%を含有し、残部実質的
にFeよりなるスラブを温度1000〜1300℃で加熱後、仕上
温度を(Ar3 −10〜Ar3 −150)℃に制御して、厚みを
1.0〜2.0mm にした後、 400〜700 ℃で巻取、酸洗、冷
延、焼鈍の工程を順次行うことを特徴とする全周磁気特
性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は無方向性電磁鋼板の製造
に関するものであり、詳しくは電気産業分野でのモータ
のコアに利用される、全周磁気特性、特に全周磁束密度
の優れた無方向性電磁鋼板に係るものである。
【0002】
【従来の技術】モータコアは鋼板面内でランダムな方向
に磁化される。このため磁気特性としては360°のい
ろいろな方向に均一な特性が要求され、鉄損および磁束
密度の測定はリング状試料で実施した方が精度的には優
れている。本リング試料での測定値を全周磁気特性と称
する。また、モータコアの分野での鉄損を重視する比較
的小型のモータにおいては、磁束密度が重要である。こ
の磁束密度を向上させるために、従来、幾つかの技術が
開示されている。例えば、冷延の前に焼鈍を施して、ヒ
ステリシス損失、即ち、結晶配向を向上せしめる方法と
して特公大15−9348号(特許第69787号)公
報がある。しかしながら、冷延前に熱処理することはコ
スト的に問題が大きい。
【0003】このため、冷延前の熱処理、即ち、熱延板
焼鈍を省略する技術が、幾つか検討されて来た。特公昭
62−61644号公報で我々は、(Si+2Al)≧
1.8%の成分系で熱延仕上温度を少なくとも1000
℃以上とすることによって熱延板焼鈍を省略する技術を
開示した。しかし、磁束密度が特に求められる低Si鋼
の領域では変態による集合組織変化の問題があって、単
に熱延仕上温度を高めても効果はない。また、特開平4
−63228号公報で低Si鋼を対象に熱延仕上温度を
フェライト相の上限ぎりぎりにすることによって、熱延
板焼鈍を省略した。しかしながら、実施例に記載されて
いる如く、熱延板の厚みが2.3〜2.5mm程度では得
られる磁束密度に限界があった。
【0004】また、冷延率に着目した研究も行われてお
り、低冷延率のものとしては特公昭49−26415号
公報があり、ここでは冷延率を64〜84%とすること
によって、高磁束密度を得ている。冷延率64〜84%
は、製品厚を0.5mmとして熱延板厚が約1.39〜
3.13mmに相当する。しかしながら、鋼中の成分や熱
延での仕上スタンドでの温度に着目されてなく、得られ
る磁気特性に限界があった。さらに、特開昭63−21
0238号公報では冷延率を40〜60%とすることに
よって磁気特性を改善している。この時の熱延板厚は、
該公報に記載されている如く0.8〜1.3mmである。
しかしながら、この方法でも成分や熱延条件が制御され
ていないため、得られる磁束密度に限界があった。ま
た、特開平2−310316号公報では熱延板の結晶粒
径を50μm以上とし、且つ冷延率を50〜80%とす
る{100}〈uvw〉の発達した無方向性電磁鋼板の
製造技術が示されている。しかしながら、熱延板焼鈍し
ないで熱延板の結晶粒径を50μm以上にすることは工
業的には非常に困難であったし、50μm以上にするた
めに実施例に示されている如く、熱延巻取温度を700
℃以上にすると、次工程の酸洗で著しくスケール落ちが
悪くなり生産性が低下する重大な問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の点に鑑
み、熱延板焼鈍をしない単純1回冷延法で優れた磁束密
度を有する無方向性電磁鋼板の製造方法を提供すること
を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は、 重量%で、C≦0.0050%、(Si+2Al)≦
1.8%、Mn:0.05〜1.5%、P≦0.12
%、S≦0.010%、N≦0.003%とし、残部F
eおよび不可避的成分を含有するスラブを温度1000
〜1200℃で加熱後、仕上温度を(Ar3 −10〜A
3 −80)℃に制御して、厚みを1.0〜2.0mmに
した後、400〜700℃で巻取、酸洗、冷延、焼鈍の
工程を順次行うことを特徴とする全周磁気特性の優れた
無方向性電磁鋼板の製造方法。および 重量%で、C≦0.0024%、(Si+2Al)≦
1.8%、Mn:0.05〜1.5%、P≦0.08
%、S≦0.004%、N≦0.003%とし、残部F
eおよび不可避的成分を含有するスラブを温度1000
〜1300℃で加熱後、仕上温度を(Ar3 −10〜A
3 −150)℃に制御して、厚みを1.0〜2.0mm
にした後、400〜700℃で巻取、酸洗、冷延、焼鈍
の工程を順次行うことを特徴とする全周磁気特性の優れ
た無方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0007】本発明のポイントは3点ある。1つは、熱
延仕上スタンドを鋼板が抜けた後、ホットランテーブル
上で急冷されるまでの間に結晶粒成長を積極的に行わせ
るべく、鋼中の不純物と熱延条件を組み合わせて制御す
ることである。2点目は、熱延板厚みを薄くすることに
よって、より上記の粒成長効果を引き出すと同時に冷延
後の再結晶集合組織を改善、即ち{111}方位粒を少
なくすること。そして、3点目はこの技術は工業的に安
定して生産可能なものである。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。まず本発
明の限定理由について説明する。C量を0.0050%
以下と0.0024%以下に限定したのは、これを超え
るC量では、それぞれ熱延の条件を請求項1,2に規制
しても熱延板組織が細粒となり、目的の磁束密度の向上
が得られないからである。(Si+2Al)量を1.8
%以下としたのは、本発明はオーステナイト相を生ずる
成分系に対して、熱延の仕上温度を制御するためであ
る。また、SiとAl量をこれ以上に増やすと、飽和磁
束密度が低下して問題である。
【0009】Mn量を0.05〜1.5%とするのは、
熱延での耳あれ対策として析出物FeSを抑制してMn
SとするためにMn量は0.05%以上必要であるが、
あまり多いと添加コストの問題があるので1.5%以下
とする。P量は0.12%以下と0.08%以下に制限
する。Pは客先でのモータコアへの打ち抜き時のカエリ
やダレを少なくするために有用であるが、熱延での結晶
粒成長を阻害するため、それぞれ請求項1,2の熱延条
件に対応して、0.12%以下、0.07%以下でなけ
ればならない。
【0010】S量を0.010%以下と0.004%以
下に制限する。Sは硫化物を形成して熱延での粒成長を
阻害するため、それぞれ請求項1,2の熱延条件に対応
して0.010%以下、0.004%以下である必要が
ある。N量は0.003%以下とする。Nは窒化物を形
成して熱延での粒成長を阻害するため極力少ない方が好
ましく、0.003%以下に制限する。その他の成分、
即ち、{100}方位粒を増加させるSn,Cu,C
r,Niなどを単独もしくは複合添加してもよいが、多
量添加はコスト的に問題なため、それぞれ0.2%以下
が好ましい。
【0011】これらの成分組成を含有する溶鋼は通常の
連続鋳造によりスラブとする。スラブ加熱の温度を請求
項1では1000〜1200℃に制限する。低温でのス
ラブ加熱では熱延での圧下変形の抵抗が大きくなるので
難しく、熱延の操業としては1000℃以上とする。ま
た、高温スラブ加熱すると、鋼中の析出物が固溶して熱
間圧延中に微細析出して結晶粒成長性が損なわれるため
避けるべきである。このため、1200℃以下に制限す
る。スラブ加熱の温度を、請求項2では1000〜13
00℃に制限する。請求項2のスラブでは不純物が比較
的少ないため、析出物がかなり固溶したとしても、析出
物合計量が少なくて済む。このため、スラブ加熱温度の
上限を請求項1よりも高めに緩和することが可能となり
1300℃にできる。1300℃を超えると炉の耐火物
などの炉修コストが大きくなるので避ける。
【0012】スラブ加熱の後は、粗圧延、仕上圧延、巻
取と続くが、仕上圧延の最終仕上スタンドを鋼板が抜け
た直後の鋼板温度、即ち、仕上温度と巻取温度が特に重
要である。仕上温度を請求項1では(Ar3 −10〜A
3 −80)℃に制限する。仕上温度はフェライト相の
上限Ar3 が、粒成長の面から理想である。しかし、仕
上最終スタンドでα+γ→αの変態が生じると破断や形
状不良となるので、安全を見て、仕上温度の下限を(A
3 −10)℃とする。また、仕上温度が(Ar3−8
0)℃より低温では、結晶粒成長が不十分で狙いの製品
磁束密度が得られない。仕上温度を請求項2では(Ar
3 −10〜Ar3 −150)℃に制限する。請求項2の
鋼板では微細な硫化物、窒化物や酸化物が少なく、結晶
粒成長し易い。このため、仕上温度の下限を請求項1よ
りも低めに緩和することが可能となり、制御範囲を(A
3 −10〜Ar3 −150)℃とする。ここでのAr
3 (℃)は下記の式で計算できる。成分は重量比でwt%
である。
【数1】
【0013】熱延板の板厚は1.0〜2.0mmとする。
1.0mm未満では熱延形状に問題が出、また2.0mm超
では、冷延率が不適切で磁束密度が不満である。
【0014】熱延巻取温度は400〜700℃に制限す
る。400℃未満では巻取時のコイル形状に問題が出、
また、700℃超では鋼板のスケールが厚く生成するた
め、次工程の酸洗で生産性が著しく低下するため、避け
なければならない。なお、仕上温度をフェライト相の上
限近くとし、且つ熱延板の厚みを薄くする手段として
は、特開平4−180522号公報に開示されている仕
上圧延中に変態させる方法や仕上圧延前に溶接して連続
しながら仕上圧延することによって、仕上温度を鋼板の
頭、尻尾で高位安定させる方法など、必要あれば採用す
る。
【0015】熱延板は酸洗の後、通常の冷延を行う。次
いで、焼鈍を通常の600〜1000℃で行って、絶縁
皮膜を塗布・乾燥して製品となす。
【0016】次に、実験例を示す。成分が2水準のスラ
ブを準備した。成分Aは重量%で、C:0.0037
%、Si:1.0%、Mn:0.15%、P:0.10
%、S:0.007%、Al:0.2%、N:0.00
21%、残部をFeとし、成分Bは、C:0.0013
%、Si:1.0%、Mn:0.16%、P:0.02
%、S:0.002%、Al:0.2%、N:0.00
22%、残部がFeである。スラブ加熱温度を1100
℃、均熱時間を30分とった。仕上温度を870℃と
し、巻取温度を660℃とし、熱延板の板厚を変更し
た。酸洗後、0.5mmまで冷延し、脱脂後、水素中で7
00℃で30秒均熱した。これを内径120×外径14
0mmのリング試料に打抜き、磁気特性を測定した。得ら
れた特性を図1に示す。図1に示す如く、熱延板の厚み
が1.1〜1.4mmで最も高い磁束密度が得られる。ま
た、高純度な成分Bの方が、より磁束密度が優れている
ことが分かる。なお、同様な実験を製品厚0.35mmで
も実施したが、同じ傾向の結果が得られた。以下に、本
発明の実施例について具体的に説明する。
【0017】
【実施例】表1−1に示す各種成分のスラブに対して、
各種の熱延条件で熱延板となし、630℃で巻取った。
次いで酸洗、冷延して0.5mmの鋼板とした。さらに連
続焼鈍で30%H2 +70%N2 の雰囲気気流中で75
0℃で30秒の均熱を実施してから、リング試料で磁気
特性を測定した。結果を表1−2に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】実験No.1〜4は本発明範囲外の成分のた
め、得られる磁束密度が悪い。実験No.5,6は本発明
範囲の成分のため、優れた磁気特性が得られた。実験N
o.7はスラブ加熱温度が高めに外れているので磁気特
性が劣化しており不満であるが、実験No.8は本発明範
囲のため良好な磁気特性である。実験No.9と10は、
仕上げをγ相で完了しているため磁束密度が劣化してい
る。実験No.11と12は仕上温度も本発明範囲である
ので優れた磁気特性が得られる。実験No.13は仕上温
度が本発明範囲の低めに外れであり、磁束密度が不満で
ある。実験No.14は仕上げをγ相で完了しているため
磁束密度が悪い。実験No.15は本発明範囲であるので
優れた磁気特性が得られる。実験No.16は仕上温度が
本発明範囲の低めに外れであり、磁束密度が不満であ
る。なお、実験No.7〜13成分のAr3 =893.2
℃であり、実験No.14〜18成分のAr3 =894.
2℃である。実験No.17と18は熱延板厚を比較した
が、本発明範囲の17の磁束密度が優れている。
【0021】
【発明の効果】以上の如く、成分系と熱延の条件を厳密
に制御することにより、優れた全周磁束密度を有する無
方向性電磁鋼板を造る技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼中成分、熱延板の厚みと製品磁気特性の関係
を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C ≦0.0050%、 (Si+2Al)≦1.
    8%、 Mn:0.05〜1.5%、 P≦0.12%、 S ≦0.010%、 N≦0.003% とし、残部Feおよび不可避的成分を含有するスラブを
    温度1000〜1200℃で加熱後、仕上温度を(Ar
    3 −10〜Ar3 −80)℃に制御して、厚みを1.0
    〜2.0mmにした後、400〜700℃で巻取、酸洗、
    冷延、焼鈍の工程を順次行うことを特徴とする全周磁気
    特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C ≦0.0024%、 (Si+2Al)≦1.
    8%、 Mn:0.05〜1.5%、 P≦0.08%、 S ≦0.004%、 N≦0.003% とし、残部Feおよび不可避的成分を含有するスラブを
    温度1000〜1300℃で加熱後、仕上温度を(Ar
    3 −10〜Ar3 −150)℃に制御して、厚みを1.
    0〜2.0mmにした後、400〜700℃で巻取、酸
    洗、冷延、焼鈍の工程を順次行うことを特徴とする全周
    磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法。
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