JPH06286633A - 車両操舵制御装置 - Google Patents

車両操舵制御装置

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JPH06286633A
JPH06286633A JP9708993A JP9708993A JPH06286633A JP H06286633 A JPH06286633 A JP H06286633A JP 9708993 A JP9708993 A JP 9708993A JP 9708993 A JP9708993 A JP 9708993A JP H06286633 A JPH06286633 A JP H06286633A
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JP
Japan
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steering
front wheel
wheel
cornering force
slip angle
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Pending
Application number
JP9708993A
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English (en)
Inventor
Hideki Sakai
英樹 酒井
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
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  • Steering Control In Accordance With Driving Conditions (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 前輪と後輪との一方のコーナリングフォース
が限界に達したとき、他方のコーナリングフォースを抑
制して前輪側モーメントと後輪側モーメントとを釣り合
わせ、スピン傾向やドリフトアウト傾向の発生を防止す
る。 【構成】 後輪コーナリングフォースが最大値に達し、
前輪側モーメントが最大の後輪側モーメントより大きい
場合には(S401)、前輪側モーメントが後輪側モー
メントと等しくなるように前輪操舵装置の目標前輪制御
舵角δF * が決定される(S403〜S407)。ま
た、前輪コーナリングフォースが最大値に達し、後輪側
モーメントが最大の前輪側モーメントより大きい場合に
は(S402)、後輪側モーメントが前輪側モーメント
と等しくなるように後輪操舵装置の目標後輪制御舵角δ
R * が決定される(S409〜S413)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は車両操舵制御装置に関す
るものであり、特に、車両の旋回特性の向上に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】車両を旋回させるべく車輪が操舵される
とき、車輪の進行方向に対して直角な方向にコーナリン
グフォースが発生し、車両が旋回させられる。コーナリ
ングフォースは車輪のスリップ角が小さい間はスリップ
角に比例して増大するが、スリップ角が限界を超えて増
大すればコーナリングフォースが減少し、車両の旋回特
性が悪くなる。そのため、特開昭62−116355号
公報に記載の操舵制御装置においては、車輪のサイドフ
ォースの時間微分値とセルフアライニングトルクの時間
微分値とが互に異符号となるとき、車輪がコーナリング
限界に達したとの判断のもとに予め設定した量だけ車輪
を操舵し、車輪がコーナリング限界を超えることのない
ようにしている。
【0003】しかしながら、車輪のコーナリング限界
は、本来的にはスリップ角の増加に対してコーナリング
フォースが減少し始める車輪の状態として定義されるも
のであり、上記従来の装置においては車輪のスリップ角
とは無関係に車輪のコーナリング限界を決定しているた
め、正確に車輪のコーナリング限界を判定することがで
きない。例えば、車輪を中立位置に戻す場合には、車輪
がコーナリング限界に達していなくても、サイドフォー
スが減少し、かつセルフアライニングトルクは増加する
場合があり、この場合には車輪がコーナリング限界にあ
ると誤判定される。また、上記従来の装置においては、
車輪がコーナリング限界を超えていれば、どの程度超え
ているかとは無関係に、車輪が常に一定量だけ補正操舵
されるのみであって、車輪が適量だけ操舵されるわけで
はない。
【0004】そのため、本発明の出願人は先に、特願平
4−123634号の出願においてこの問題を解決する
ことができる車両の操舵制御装置を提案した。この装置
においては、コーナリングフォースをスリップ角で偏微
分した値が負になるときのスリップ角と、偏微分値が0
になるときの限界スリップ角との差を求め、スリップ角
が限界スリップ角になるように上記差分、車輪を操舵す
るようにした。このようにすれば、車輪のスリップ角に
基づいて車輪のコーナリング限界が決定されるため、コ
ーナリング限界の誤判定がなくなり、また、車輪はちょ
うど最大のコーナリングフォースを得ることができる状
態となるように適量操舵される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この操
舵制御装置においては、前輪側モーメントと後輪側モー
メントとの不釣り合いにより、車両の旋回特性が悪くな
る可能性がある。前輪側モーメントは、前輪に作用する
コーナリングフォースに前輪車軸と車両重心との距離を
掛けることにより求められ、前輪のコーナリングフォー
スに基づく車両の重心まわりのモーメントである。後輪
側モーメントは、後輪に作用するコーナリングフォース
に後輪車軸と車両重心との距離を掛けることにより求め
られ、後輪のコーナリングフォースに基づく車両の重心
まわりのモーメントである。上記本出願人に係る操舵制
御装置によれば、車輪にコーナリングフォースを限界ま
で作用させることができるのであるが、コーナリングフ
ォースが限界である車輪のモーメントはそれ以上増大し
ないのに対し、コーナリングフォースが限界ではない他
方の車輪のモーメントが増大すれば、前輪側モーメント
と後輪側モーメントとの釣り合いが崩れ、旋回特性が悪
くなる可能性があるのである。本発明は、上記の事情を
背景とし、前輪側モーメントと後輪側モーメントとを釣
り合わせることができる車両操舵制御装置を提供するこ
とを課題として為されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために、図1に示すように、前輪と後輪との少
なくとも一方のコーナリングフォースが限界に達したこ
とを検出するコーナリングフォース限界検出手段1と、
そのコーナリングフォース限界検出手段1により前記前
輪と後輪との一方についてコーナリングフォースの限界
が検出されたとき、他方の車輪のコーナリングフォース
を車両重心まわりの前輪側モーメントと後輪側モーメン
トとが釣り合う大きさに抑制するコーナリングフォース
制御手段2とを含むように構成される。なお、「コーナ
リングフォースの限界」は、真の限界のみならず、真の
限界に対して適正な余裕を持たせた許容限界をも含むも
のとする。
【0007】
【作用】車輪のコーナリングフォースは、例えば、車輪
の操舵角の絶対値を小さくすることにより、あるいは車
両の走行速度を減少させることにより抑制することがで
き、前輪と後輪との一方についてコーナリングフォース
の限界が検出されたとき、前輪側モーメントと後輪側モ
ーメントとが釣り合うように他方の車輪のコーナリング
フォースを抑制すれば、一方のモーメントが他方より増
大することがなく、旋回特性の悪化が回避される。
【0008】
【発明の効果】このように本発明によれば、車両の旋回
特性の悪化を確実に防止することができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。図2は本発明の一実施例である操舵制御
装置を備えた車両を概略的に示す図である。この車両
は、左前輪10および右前輪12を操舵する前輪操舵装
置14と、左後輪16および右後輪18を操舵する後輪
操舵装置20と、これら前輪操舵装置14および後輪操
舵装置20を制御する制御装置22とを備えている。
【0010】前輪操舵装置14は、円筒状を成し、図示
しない車体により軸方向に移動可能に支持されたハウジ
ング26を備えており、ハウジング26内にはラックバ
ー28が軸方向に移動可能に支持されている。ラックバ
ー28の両端部はそれぞれ、タイロッド30,32およ
びナックルアーム34,36を介して左右前輪10,1
2に連結されている。ラックバー28にはまた、ピニオ
ン38が噛み合わされており、ピニオン38が中間軸4
0および操舵軸42を介して操舵ハンドル44によって
回転させられるとき、左右前輪10,12が操舵ハンド
ル44の回転操作方向と同じ方向に回動させられる。な
お、中間軸40は、操舵軸42の多少の屈曲を許容する
ものとされている。
【0011】ハウジング26内にはパワーシリンダ50
が一体的に構成されている。パワーシリンダ50のパワ
ーピストン51はラックバー28に固定され、パワーピ
ストン51により画定された左右の液室はハウジング2
6に組み付けられた制御弁52にそれぞれ接続されてい
る。制御弁52は操舵軸42に作用する操舵トルクに応
じて、ポンプ54からパワーシリンダ50の一方の液室
への作動液の供給および他方の液室からリザーバ56へ
の作動液の排出を制御し、それによりパワーピストン5
1が移動させられて操舵が助勢される。
【0012】ハウジング26には、ブラケット58を介
して液圧シリンダ60のピストンロッド62が接続され
ており、液圧シリンダ60の左右の液室への作動液の供
給,排出によりハウジング26が軸方向に移動させられ
る。液圧シリンダ60の左右の液室は電磁方向切換弁6
4を介してポンプ54およびリザーバ56にそれぞれ接
続されている。電磁方向切換弁64はソレノイド66を
備えており、ソレノイド66への電圧の非印加時に第一
位置(中央の位置)にあり、2個の液室をポンプ54お
よびリザーバ56のいずれからも遮断する。また、電磁
方向切換弁64は、ソレノイド66への正電圧の印加に
より第二位置(左側の位置)に切り換えられて、ポンプ
54から液圧シリンダ60の左液室への作動液の供給お
よび右液室からリザーバ56への作動液の排出を許容
し、さらに、ソレノイド66への負電圧の印加時に第三
位置(右側の位置)に切り換えられてポンプ54から液
圧シリンダ60の右液室への作動液の供給および左液室
からリザーバ56への作動液の排出を許容する。
【0013】後輪操舵装置20は、円筒状を成し、車体
に支持されたハウジング70を備えており、ハウジング
70内にはリレーロッド72が軸方向に移動可能に支持
されている。リレーロッド72の両端部は、タイロッド
74,76およびナックルアーム78,80を介して左
右後輪16,18に連結されている。ハウジング70内
にはパワーシリンダ82が一体的に構成されており、パ
ワーシリンダ82のパワーピストン83はリレーロッド
72に固定されている。パワーピストン83の左右の液
室は、電磁方向切換弁84を介してポンプ54およびリ
ザーバ56にそれぞれ接続されている。
【0014】電磁方向切換弁84はソレノイド86を備
えており、ソレノイド86への電圧の非印加時に第一位
置(中央の位置)にあってポンプ54およびリザーバ5
6とパワーシリンダ82の左右の液室との連通を遮断す
る。また、電磁方向切換弁84はソレノイド86への正
電圧の印加により第二位置(右側の位置)に切り換えら
れ、ポンプ54からパワーシリンダ82の右液室への作
動液の供給およびパワーシリンダ82の左液室からリザ
ーバ56への作動液の排出を許容し、さらに、負電圧の
印加により第三位置(左側の位置)に切り換えられ、ポ
ンプ54からパワーシリンダ82の左液室への作動液の
供給およびパワーシリンダ82の右液室からリザーバ5
6への作動液の排出を許容する。
【0015】制御装置22は、CPU90,ROM9
2,RAM94およびそれらを接続するバス96を有す
るマイクロコンピュータを主体とするものである。バス
96に接続されたI/O(入出力)インタフェース98
には、車両の横加速度GY を検出する横加速度センサ1
00,車両のヨーレートγを検出するヨーレートセンサ
102,車速Vを検出する車速センサ104およびハン
ドル舵角θH を検出するハンドル舵角センサ106,前
輪制御舵角センサ108および後輪制御舵角センサ11
0の各検出信号が供給される。前輪制御舵角センサ10
8は、液圧シリンダ60のピストンロッド62の基準位
置からの変位量を検出することにより、左右前輪10,
12の制御舵角δF を検出するものである。また、後輪
制御舵角センサ110は、リレーロッド72の基準位置
からの変位量を検出することにより、左右後輪16,1
8の制御舵角δR を検出するものである。なお、これら
の検出値GY ,γ,θH ,δF ,δR はそれぞれ、左方
向が正で表され、右方向が負で表される。
【0016】ROM92には、図3〜図6にフローチャ
ートで示すプログラムが記憶され、CPU90はそれら
プログラムを実行し、RAM94にはプログラムの実行
に必要な変数が一時的に記憶される。また、RAM94
の一部は不揮発性に構成されており、その不揮発性部分
には、図9にグラフで示すα−H特性を規定するデータ
を記憶したテーブルが記憶されている。αは、前輪操舵
装置14および後輪操舵装置20による制御操舵が行わ
れた状態における車輪のスリップ角、Hは車輪のコーナ
リングフォースをスリップ角によって偏微分した値、ε
は上記車輪において操舵制御が行われなかったとした場
合のスリップ角である。このテーブルは左右前輪用α,
ε−H特性テーブルと、左右後輪用α,ε−H特性テー
ブルとに別々に設けられている。これらテーブルは、後
述するように補正舵角Δδを算出するために用いられ
る。
【0017】I/Oインタフェース98にはまた、警告
器114および差動増幅器116,118が接続されて
いる。警告器114はブザーおよびランプを備え、車輪
がスリップ限界を超えたときに運転者に警告するもので
ある。差動増幅器116の正側入力(+)には、I/O
インタフェース98に内蔵されたD/A変換器からの前
輪制御舵角δF の目標値を表すアナログ制御信号が入力
され、負側入力(−)には、前輪制御舵角センサ108
による前輪制御舵角δF の検出値が入力されて左右の前
輪10,12の操舵がフィードバック制御される。ま
た、差動増幅器118の正側入力(+)には、I/Oイ
ンタフェース98に内蔵されたD/A変換器からの後輪
制御舵角δR の目標値を表すアナログ制御信号が入力さ
れ、負側入力(−)には、後輪制御舵角センサ110に
より検出された後輪制御舵角δR の検出値が入力されて
左右後輪16,18の操舵がフィードバック制御され
る。
【0018】次に、作動を説明する。イグニッションス
イッチがONにされると、CPU90により図3に示す
プログラムの実行が開始され、ステップS101(以
下、S101と略記する。他のステップについても同
じ。)において初期設定が行われた後、S102〜S1
09が繰り返し実行される。
【0019】S102においては、センサ100〜11
0から横加速度GY ,ヨーレートγ,車速V,ハンドル
舵角θH ,前輪制御舵角δF および後輪制御舵角δR
それぞれ読み込まれ、S103において横加速度GY
ヨーレートγおよび車速Vを用いた(1)式の演算によ
り車両のスリップ角βが算出される。 β=∫(GY /V−γ)dt・・・・・(1)
【0020】なお、車両のスリップ角βは、積分演算の
実行により求めることに代えて、一次遅れ擬似積分演算
により求めてもよく、あるいは実測してもよい。
【0021】次に、S104において車両のスリップ角
β,ヨーレートγ,車速V,ハンドル舵角θH ,前輪制
御舵角δF および後輪制御舵角δR を用いて、(2),
(3)式の演算により左右前輪10,12のスリップ角
αF および左右後輪16,18のスリップ角αR が算出
される。 αF =β+aγ/V−NθH −δF ・・・・・(2) αR =β−bγ/V−δR ・・・・・(3)
【0022】ただし、 a:前輪車軸と車両重心との距離 b:後輪車軸と車両重心との距離 N:ステアリングギヤ比
【0023】次に、S105においてヨーレートγの時
間微分値dγ/dtが算出されるともに、この時間微分
値dγ/dtと横加速度GY とを用いた(4),(5)
式の演算により、左右前輪10,12のコーナリングフ
ォースFF および左右後輪16,18のコーナリングフ
ォースFR が算出される。 FF =−{b/(a+b)}MGY −{1/(a+b)}Idγ/dt・・・・ ・・(4) FR =−{a/(a+b)}MGY +{1/(a+b)}Idγ/dt・・・・ ・・(5)
【0024】ただし、 M:車両質量 I:車両のヨー慣性モーメント
【0025】S104,S105が実行される毎に、ス
リップ角αF ,αR およびコーナリングフォースFF
R の今回の値αF (n),αR (n),FF (n),
R(n)がRAM94に記憶されるとともに、同じく
RAM94に記憶されている前回の値αF (n−1),
αR (n−1),FF (n−1),FR (n−1)が更
新される。そして、S106において前回の値αF (n
−1),αR (n−1),FF (n−1),FR (n−
1)と、今回の値αF (n),αR (n),F
F (n),FR (n)とを用いて(6),(7)式の演
算により、コーナリングフォースFF ,FR をスリップ
角αF ,αR でそれぞれ偏微分した偏微分値H
F(αF ),HR (αR )が算出される。 HF (αF )=∂FF /∂αF ={FF (n)−FF (n−1)}/{αF (n )−αF (n−1)}・・・・・(6) HR (αF )=∂FR /∂αR ={FR (n)−FR (n−1)}/{αR (n )−αR (n−1)}・・・・・(7)
【0026】なお、上記のように算出されたスリップ角
αF ,αR ,偏微分値HF (αF ),HR (αR )に基
づいて、図9に示すα−H特性を規定するテーブル内の
データが補正される。この補正は別のコンピュータにお
いて行われる。また、スリップ角αF ,αR およびコー
ナリングフォースFF ,FR に基づいて、スリップ角α
F ,αR の絶対値とコーナリングフォースFF ,FR
の関係を図10および図11に示すα−F特性を規定す
るテーブル内のデータが補正される。このテーブルの補
正も別のコンピュータにおいて行われ、例えば、テーブ
ルは、予め作成されている基準α−F特性テーブルを補
正することにより作成され、あるいは基準α−F特性テ
ーブルは設けられず、S104,S105において算出
された値のみに基づいて作成され、あるいは算出された
値と、その値に基づく推定とによって作成されるなど、
種々の態様で作成されるようにすることができる。
【0027】いずれの場合でも、1組ずつのα
F (n),αF (n−1),FF (n),FF (n−
1)あるいはαR (n),・・・・・,FR (n−1)
が得られる毎に、それらのみに基づいてα−H特性テー
ブルおよびα−F特性テーブルが補正されるようにする
と、誤差に対して過敏となるため、複数組ずつのデータ
に基づいてテーブルの補正が行われるようにすることが
望ましい。このようにすると、テーブルの補正に遅れが
生じるが、この遅れの程度が、実際にコーナリングフォ
ースを最大値に保つための制御操舵が必要となり、さら
にモーメント制御が必要になる時期には両テーブル内の
値が殆ど変化しない状態になっているようにすれば差し
支えはない。
【0028】上記図10,図11のテーブル作成時には
最大コーナリングフォースFFmax,FRmaxが演算される
が、これらの値がS109のモーメント制御実行のため
にRAM94の前輪最大コーナリングフォースメモリお
よび後輪最大コーナリングフォースメモリに格納され
る。
【0029】(4)〜(7)式の物理的意味について説
明する。車輪においては、図8に示すように、スリップ
角αの絶対値|α|が限界スリップ角α01に達するまで
は、コーナリングフォースFは前記絶対値|α|の増加
に従って増加する。そして、前記絶対値|α|が限界ス
リップ角α01を超えると、コーナリングフォースFは絶
対値|α|の増加に従って減少する。なお、前記絶対値
|α|が限界スリップ角α01に等しいときが車輪のコー
ナリング限界である。
【0030】そして、コーナリングフォースFをスリッ
プ角αで偏微分することにより、偏微分値H(α)は、
図9に示すように、スリップ角αの絶対値|α|が限界
スリップ角α01より小さい範囲内では正の値となり、同
絶対値|α|が限界スリップ角α01より大きな範囲内で
は負の値となる。これにより、絶対値|α|が限界スリ
ップ角α01を超えた場合には、この超えた分だけ車輪を
操舵してスリップ角αの絶対値|α|が限界スリップ角
α01になるようにしてやれば、車輪は最大のコーナリン
グフォースFmax を発生することになる。以下、この理
論を用いたS107,S108における前輪最大コーナ
リングフォース取得制御ルーチンおよび後輪最大コーナ
リングフォース取得制御ルーチンについて説明する。
【0031】前輪最大コーナリングフォース取得制御ル
ーチンを図4に示す。S201においてS106におい
て先に算出された偏微分値HF (αF )が「0」以上で
あるか否かが判定される。偏微分値HF (αF )が
「0」以上であれば、S201の判定結果がYESとな
り、S202において先に算出されたスリップ角αF
先に入力された前輪制御舵角δF とを用いて、(8)式
の演算により前輪制御操舵が行われなかったとした場合
の左右前輪10,12のスリップ角εF が計算される。 εF =αF +δF ・・・・・(8)
【0032】この(8)式を説明する。左右前輪10,
12を図7に示すように左方向(正方向)に操舵したと
すれば、左右前輪10,12のスリップ角αF は負の値
となる。一方、この場合、左右前輪10,12がコーナ
リング限界に達しているならば、左右前輪10,12は
スリップ角αF の絶対値|αF |を減少させるために、
右方向に操舵制御されているはずであるから、このとき
の前輪制御舵角δF は負の値となる。その結果、スリッ
プ角εF は、その絶対値|εF |がスリップ角αF の絶
対値|αF |よりも前輪制御舵角δF の絶対値|δF
分大きな負の値となり、スリップ角εF は左右前輪1
0,12を制御操舵をしなかったとした場合における左
右前輪10,12のスリップ角を示すことになる。当然
ながら、前輪制御舵角δF が「0」であれば、両スリッ
プ角εF ,αF は等しい値である。また、左右前輪1
0,12が右方向(負方向)に操舵された場合には、ス
リップ角αF および前輪制御舵角δF は共に「0」以上
の値となり、スリップ角εF は左右前輪10,12を制
御操舵をしなかったとした場合における左右前輪10,
12のスリップ角を示す。
【0033】前記S202の実行後、S203におい
て、スリップ角εF の絶対値|εF |に基づいてRAM
94内の左右前輪用α,ε−H特性テーブルを参照する
ことにより、偏微分値HF (εF )を算出し、S204
において偏微分値HF (εF )が「0」以上であるか否
かが判定される。通常走行時には、車輪はコーナリング
限界を超えておらず、偏微分値HF (εF )は「0」以
上であり、S204の判定結果はYESとなり、S20
5以下が実行される。S205においては、警告器11
4の非作動を表す制御信号が出力され、警告器114内
のブザーおよびランプは作動しない。S205において
はまた、前輪制御操舵が実行されているか否かを表すた
めにRAM94に設けられた前輪制御操舵実行フラグが
OFFにされ、前輪制御操舵が実行されないことが記憶
される。次に、S206において目標前輪制御舵角δF
* が「0」に設定され、S207において目標前輪制御
舵角δF * を表す制御信号がI/Oインタフェース98
を介して作動増幅器116に出力され、前輪最大コーナ
リングフォース制御ルーチンの実行が終了する。
【0034】作動増幅器116は出力された目標前輪制
御舵角δF * と、前輪制御舵角センサ108により検出
された実前輪制御舵角δF とを比較し、この比較結果に
基づいて電磁方向切換弁64を制御することにより左右
前輪10,12を制御操舵する。この場合、目標前輪制
御舵角δF * と実前輪制御舵角δF とが等しければ、作
動増幅器116はソレノイド66への電圧の印加を解除
することにより、電磁方向切換弁64を第一位置に保
ち、液圧シリンダ60に対する作動液の供給,排出が停
止されてハウジング26は駆動されない。目標前輪制御
舵角δF * が実前輪制御舵角δF より大きければ、作動
増幅器116はソレノイド66へ正電圧を印加すること
により電磁方向切換弁64を第二位置に切り換え、液圧
シリンダ60の左液室へポンプ54からの作動液が供給
されるとともに右液室から作動液がリザーバ56へ排出
されてハウジング26が右方向に移動させられる。これ
により、ラックバー28がハウジング26と共に右方向
へ移動して左右の前輪10,12の制御操舵が左方向
(正方向)に補正される。
【0035】また、目標前輪制御舵角δF * が実前輪制
御舵角δF より小さければ、作動増幅器116はソレノ
イド66へ負電圧を印加することにより電磁方向切換弁
64を第三位置に切り換え、液圧シリンダ60の右液室
へポンプ54からの作動液が供給されるとともに、左液
室から作動液がリザーバ56へ排出されてハウジング2
6が左方向に移動させられる。これによりラックバー2
8がハウジング26と共に左方向へ移動し、左右の前輪
10,12の制御操舵が右方向(負方向)に補正され
る。このようにして左右の前輪10,12は目標前輪制
御舵角δF * (ここでは0度)に制御操舵される。
【0036】操舵ハンドル44が大きく回されることに
より、左右前輪10,12がコーナリング限界を超える
と、S106の実行により計算された偏微分値HF (α
F )が「0」より小さくなる。したがって、S201の
判定結果がNOとなり、S208が実行される。S20
8においては、警告器114を作動させるための制御信
号が出力されるとともに、前輪制御操舵実行フラグがO
Nにされる。これにより、警告器114内のブザーおよ
びランプが作動し、運転者は車輪がコーナリング限界に
達していることを認識できる。S208においてはま
た、前輪制御操舵実行フラグがONにされ、前輪制御操
舵の実行が記憶される。次に、S209においてスリッ
プ角αF と限界スリップ角α01とを用いた(9)式の演
算により、補正舵角ΔδF が計算される。 ΔδF =|αF |−α01・・・・・(9)
【0037】この補正舵角ΔδF は、図9に示すよう
に、スリップ角αF の絶対値|αF |が限界スリップ角
α01を超えている量を示す(図9は前輪用と後輪用とに
兼用されているため、添字Fは付されていない)。次
に、S210においてスリップ角αF が正であるか否か
が判定される。この場合、スリップ角αF が正であれ
ば、S210の判定結果がYESとなり、S211にお
いて実前輪制御舵角δF に補正舵角ΔδF を加算する
(10)式の演算により、目標前輪制御舵角δF * が算
出される。 δF * =δF +ΔδF ・・・・・(10)
【0038】また、スリップ角αF が正でなければS2
10の判定結果がNOとなり、S212において実前輪
制御舵角δF から補正舵角ΔδF を減算する(11)式
の演により、目標前輪制御舵角δF * が算出される。 δF * =δF −ΔδF ・・・・・(11)
【0039】これらS211,212の実行後、S20
7において目標前輪制御舵角δF *を表す制御信号を作
動増幅器116に出力し、前輪操舵制御ルーチンの実行
を終了する。これにより、左右前輪10,12が右方向
(負方向)に操舵されていて、スリップ角αF が正であ
れば、左右前輪10,12はスリップ角αF の絶対値|
αF |を減少させる左方向(正方向)に限界スリップ角
α01まで制御操舵される。左右前輪10,12が左方向
(正方向)に操舵されていて、スリップ角αFが負であ
れば、左右の前輪10,12はスリップ角αF の絶対値
|αF |を減少させる方向(負方向)に限界スリップ角
α01まで制御操舵される。その結果、左右前輪10,1
2は最大コーナリングフォースが発生する角度まで制御
操舵されることになる。
【0040】さらに、左右前輪10,12が制御操舵さ
れている状態で操舵ハンドル44による前輪10,12
の操舵角の絶対値が大きくされたり、走行路面の状態が
悪化したりして、偏微分値HF (αF )が再び「0」よ
り小さくなると、前述のように、S201の判定結果が
NOとなり、S208〜212およびS207が実行さ
れる。この場合にも、S209の実行により補正舵角Δ
δF がスリップ角αFが限界スリップ角α01を超えてい
る量に設定され、S211,212,207の実行によ
り、左右の前輪10,12の制御操舵が最大コーナリン
グフォースが発生する角度まで更に追加して補正され
る。
【0041】一方、左右前輪10,12が制御操舵され
ている状態で操舵ハンドル44による左右前輪10,1
2の操舵角が小さくされたり、走行路面の状態が良好に
なったりして、偏微分値HF (αF )が「0」以上にな
れば、前述のように、S201の判定結果がYESとな
り、S202〜204が実行される。この場合、S20
2,203の実行により計算された左右前輪10,12
を制御操舵しなかったとした場合におけるスリップ角ε
F に対応した偏微分値HF (εF )が「0」以上になれ
ば、S204がYESになるため、S205〜207が
実行され、警告器114が非作動制御されるとともに、
左右前輪10,12の制御操舵が解除される。
【0042】また、偏微分値HF (αF )が「0」以上
であっても、スリップ角εF に対応した偏微分値H
F (εF )が「0」より小さくなれば、S201の判定
結果がYES,S204の判定結果がNOになることか
ら、S209〜212,207が実行される。この場
合、警告器114は作動状態に保たれたまま、S209
の実行により補正舵角ΔδF が計算されるとともに、S
210〜212の実行により目標前輪制御舵角δF *
計算され、S207の実行により左右前輪10,12が
目標前輪制御舵角δF * に制御操舵される。
【0043】上記S209の補正舵角ΔδF の計算にお
いては、スリップ角αF の絶対値|αF |が限界スリッ
プ角α01より小さくなるため、補正舵角ΔδF が負とな
る。その結果、左右前輪10,12が右方向(負方向)
に操舵されていて、スリップ角αF が正であれば、左右
前輪10,12の制御操舵がスリップ角αF の絶対値|
αF |を増加させる右方向(負方向)に限界スリップ角
α01まで補正される。左右前輪10,12が左方向(正
方向)に操舵されていて、スリップ角αF が負であれ
ば、左右前輪10,12の制御操舵が限界スリップ角α
01まで補正される。その結果、この場合も、左右前輪1
0,12は最大コーナリングフォースが発生する角度ま
で制御操舵されることになる。
【0044】次に、後輪最大コーナリングフォース取得
制御ルーチンについて説明する。この後輪最大コーナリ
ングフォース取得制御ルーチンにおいては、左右後輪1
6,18が上述した左右前輪10,12の場合と同様に
制御操舵される。上記前輪制御操舵に関する説明中の前
輪を後輪、差動増幅器116を差動増幅器118、油圧
シリンダ60をパワーシリンダ70、電磁方向切換弁6
0を電磁方向切換弁84,ラックバー28をリレーロッ
ド72と読み換え、添字FをRに変えれば、殆どの説明
が後輪の制御操舵にも当てはまる。ただし、ここでは左
右前輪用α,ε−H特性テーブルの代わりに、左右後輪
用α,ε−H特性テーブルが使用される。
【0045】このように本実施例においては、左右の前
輪10,12および後輪16,18の各スリップ角
αF ,αR の絶対値|αF |,|αR |が限界スリップ
角α01を超えた場合には、この超えた量|αF |−
α01,|αR |−α01を補正舵角ΔδF ,ΔδR とし
て、その補正舵角ΔδF ,ΔδR だけ左右の前輪10,
12および後輪16,18の制御操舵を補正し、左右の
前輪10,12および後輪16,18が最大コーナリン
グフォースを発生するようにされているのであり、車両
の旋回性能が良好になる。
【0046】次いでS109が実行され、図6にフロー
チャートで示すモーメント制御ルーチンが実行される。
まず、S401において車両がスピン傾向にあるか否か
の判定が行われる。この判定は後輪のコーナリングフォ
ースが最大値FRmaxに達して制御操舵が開始されてお
り、かつ、前輪のコーナリングフォースに基づく車両重
心まわりのモーメント(前輪側モーメントと称する)
が、後輪のコーナリングフォースに基づく車両重心まわ
りのモーメント(後輪側モーメントと称する)の最大値
より大きいか否かにより行われる。後輪のコーナリング
フォースが最大値FRmaxに達して制御操舵が開始されて
いるか否かは、RAM94に設けられた後輪制御操舵実
行フラグがONであるか否かにより判定される。
【0047】前輪側モーメントは、前輪コーナリングフ
ォースFF に車両重心と前輪車軸との距離aを掛けるこ
とにより求められ、後輪側最大モーメントは、後輪最大
コーナリングフォースFRmaxに、車両重心と後輪車軸と
の距離bを掛けることにより求められる。後輪最大コー
ナリングフォースFRmaxは、S101の初期設定におい
て設定され、以後、前述のようにS104,S105に
おいてスリップ角,コーナリングフォースが算出され、
α−F特性テーブルが補正されるのに伴って更新され
る。
【0048】S401の判定結果がYESであればS4
02が実行され、車両がドリフトアウト傾向にあるか否
かの判定が行われる。この判定は、前輪制御操舵実行フ
ラグがONであるか否かに基づいて前輪のコーナリング
フォースが最大値FFmaxに達して制御操舵が開始されて
いるか否かが判定されるとともに、後輪側モーメントが
前輪側モーメントの最大値より大きいか否かが判定され
ることにより行われる。S401,S402のいずれの
判定もNOであればモーメント制御ルーチンの実行は終
了し、モーメント制御は行われない。
【0049】初期設定において前輪および後輪の各最大
コーナリングフォースが設定されるが、これら最大コー
ナリングフォースは実際に得られる値より大きい値に設
定され、モーメント制御が最大コーナリングフォース取
得制御より先に実行されることがないようにされている
のである。
【0050】後輪16,18について最大コーナリング
フォースが得られている状態では、後輪側モーメントは
最大の状態にあるが、前輪10,12にまだコーナリン
グフォースが増大する余裕がある場合がある。そのた
め、前輪コーナリングフォースの増大により前輪側モー
メントが増大すれば、前輪と後輪とのモーメントのバラ
ンスが崩れて車両にスピン傾向が生じる可能性がある。
前輪のコーナリングフォースが増大するのは、車輪の操
舵角が増大した場合や操舵角は一定で車体速度が増大し
た場合等であるが、スリップ角の絶対値の増大を抑えて
前輪コーナリングフォースの増大を抑制することによ
り、スピン傾向の発生を回避することができる。
【0051】そのため、S401の判定結果がYESに
なればS403が実行され、スピン発生を回避すること
ができる目標前輪スリップ角αFTの絶対値が算出され
る。まず、前輪側モーメントaFF と後輪側最大モーメ
ントbFRmaxとが等しくなる目標前輪コーナリングフォ
ースFFTが算出され、図10に示す前輪コーナリングフ
ォースとスリップ角との関係を規定するα−F特性テー
ブルに基づいて、目標前輪コーナリングフォースFFT
得られるときの前輪スリップ角が目標前輪スリップ角α
FTとして算出される。
【0052】次いでS404が実行され、補正舵角Δδ
F が(12)式の演算により算出される。 ΔδF =|αF |−|αFT|・・・・・(12)
【0053】αF はS401の判定結果がYESになっ
たときの前輪スリップ角であり、この前輪スリップ角α
F の絶対値は前輪側モーメントと後輪側最大モーメント
とが等しくなるときの前輪スリップ角の絶対値より大き
い。したがって、それらの差を前輪操舵装置14の補正
舵角ΔδF として前輪10,12の制御操舵を補正し、
スリップ角αFTになるようにすれば、前輪側モーメント
を後輪側最大モーメントと等しくし、スピン傾向の発生
を回避することができる。
【0054】続いてS405が実行され、前輪スリップ
角αF が0より大きいか否かの判定が行われ、0より大
きければS405の判定結果はYESとなり、S406
が実行されて目標前輪制御舵角δF * が(13)式の演
算により算出される。 δF * =δF +ΔδF ・・・・・(13)
【0055】前輪スリップ角αF が0より大きいのは、
前輪10,12が右方向(負方向)に操舵されている場
合であり、この場合には前輪操舵装置14は前輪10,
12を右方向に操舵している。そのため、ここでは正の
値であるΔδF がδF に加算されることにより、目標前
輪制御舵角δF * はハンドル44による操舵角の絶対値
を減少させる値に設定され、S408において出力され
る。前輪操舵装置14は設定された目標前輪制御舵角δ
F * に基づいて前輪10,12を左方向に操舵し、前輪
10,12のスリップ角の絶対値の増大が打ち消され、
前輪側モーメントが後輪側最大モーメントと等しい大き
さとされてスピン傾向の発生が回避される。
【0056】また、前輪スリップ角αF が0以下の場合
にはS405の判定結果がNOとなり、S407におい
て目標前輪制御舵角δF * が(14)式の演算により算
出される。 δF * =δF −ΔδF ・・・・・(14)
【0057】前輪スリップ角αF が0以下になるのは、
前輪10,12が左方向(正方向)に操舵されている場
合であり、この場合には前輪操舵装置14は前輪10,
12を左方向に操舵している。そのため、ここではΔδ
F がδF から引かれ、目標前輪制御舵角δF * はハンド
ル44による操舵角の絶対値が減少する値に設定され、
S408において出力される。それにより前輪10,1
2は右方向に操舵されてスリップ角の絶対値の増大が打
ち消され、前輪側モーメントが後輪側最大モーメントと
等しい大きさとされてスピン傾向の発生が回避される。
【0058】それに対し、後輪側モーメントが、前輪コ
ーナリングフォースが最大の場合の前輪側最大モーメン
トより大きく、車両がドリフトアウト傾向にある場合に
は、S402の判定結果がYESとなり、S409以降
が実行される。左右前輪10,12のモーメントが最大
の状態から更に車体速度が増大させられ、あるいは左右
前輪10,12が操舵される等により後輪側モーメント
が増大させられれば、後輪側モーメントが前輪側モーメ
ントより大きくなり、ドリフトアウト傾向が生ずる。そ
のため、この場合には左右後輪16,18のスリップ角
の絶対値の増大を抑え、後輪側モーメントの増大を抑制
することによりドリフトアウトの発生が回避されるので
ある。
【0059】S402の判定結果がYESになった場合
にはS409が実行され、後輪側モーメントを前輪側最
大モーメントと等しくするために必要な目標後輪スリッ
プ角αRTが算出される。この算出は目標前輪スリップ角
αFTの算出と同様に、後輪スリップ角と後輪コーナリン
グフォースとの関係を規定するα−F特性テーブルに基
づいて行われる。算出後、S410が実行され、補正舵
角ΔδR が(15)式の演算により算出される。 ΔδR =|αR |−|αRT|・・・・・(15)
【0060】次いでS411において後輪スリップ角α
R が0より大きいか否か、すなわち車両が右方向に旋回
しているか左方向に旋回しているかによって、S41
2,S413において(16),(17)式の演算が実
行され、目標後輪制御舵角δR * が算出されてS414
において出力される。 δR * =δR +ΔδR ・・・・・(16) δR * =δR −ΔδR ・・・・・(17)
【0061】このように目標後輪制御舵角δR * が算出
されることにより、左右後輪16,18が右方向と左方
向とのいずれに旋回させられていても、スリップ角の絶
対値が減少する向きに操舵され、後輪側モーメントが前
輪側最大モーメントと等しい大きさに抑えられてドリフ
トアウト傾向の発生が回避される。
【0062】この場合、左右後輪16,18がスリップ
角の絶対値を減少させる向きに制御操舵されれば、逆に
左右前輪10,12のスリップ角が増大させられる。し
かし、左右前輪10,12についてはS107の実行に
より最大コーナリングフォースが得られるように制御さ
れるため、前輪コーナリングフォースの減少によりドリ
フトアウト傾向が生ずることはなく、車両は安定に旋回
させられる。
【0063】以上の説明から明らかなように、本実施例
においては、コンピュータのROM92のS102〜S
108,S401,S402を記憶する部分およびCP
U90のそれらステップを実行する部分がコーナリング
フォース限界検出手段1を構成し、ROM92のS40
3〜S414を記憶する部分およびCPU90のそれら
ステップを実行する部分がコーナリングフォース制御手
段2を構成しているのである。
【0064】なお、上記実施例において左右の前輪1
0,12あるいは後輪16,18のコーナリングフォー
スに基づいてモーメントは、それら車輪の舵角を抑制す
ることにより釣り合うようにされていたが、車速を低減
させることによりコーナリングフォースを減少させ、モ
ーメントが釣り合うようにしてもよい。
【0065】また、上記実施例において左右後輪16,
18は、最大コーナリングフォースが得られるように操
舵制御される場合および後輪側モーメントを抑制する場
合に後輪操舵装置20により操舵されるようになってい
たが、左右後輪が運転者の操舵ハンドルの操舵に伴って
後輪操舵装置により操舵されるようにしてもよい。左右
後輪の制御舵角および方向は、操舵ハンドルの操舵角,
操舵方向および走行速度等に基づいて決定され、低速走
行時には左右前輪の操舵方向とは逆向きに左右後輪を操
舵して車両の旋回半径を小さくし、中速走行時や高速走
行時には左右前輪の操舵方向と同じ向きに操舵して車両
の旋回がアンダステア気味になるようにするのである
が、この場合、最大コーナリングフォースを取得するた
めの後輪の制御操舵および前輪側モーメントと後輪側モ
ーメントとを釣り合わせるための後輪の制御操舵をハン
ドルの操舵に基づく後輪の操舵より優先して実行し、車
両が安定して旋回するようにする。
【0066】さらに、上記実施例においては、前輪と後
輪との両方において、コーナリング限界を超えることが
防止されるとともに、コーナリング限界まで余裕のある
例においてコーナリングフォースの増大が抑制されるよ
うになっていたが、前輪と後輪との予め定められた一方
においてコーナリング限界を超えることが防止され、他
方においてコーナリングフォースの増大が抑制されるの
みとすることも可能である。
【0067】また、上記実施例においては、左右の前輪
10,12および後輪16,18についてそれぞれ、最
大コーナリングフォースが得られるように制御されると
ともに、コーナリングフォースに余裕のある側の車輪の
コーナリングフォースが抑えられることによりスピン傾
向やドリフトアウト傾向の発生が回避されるようになっ
ていたが、最大コーナリングフォースが得られるように
制御することは不可欠ではなく、モーメントが釣り合う
ようにのみ制御されるようにしてもよい。
【0068】例えば、前輪のコーナリングフォースが最
大値に達しているか否かとは無関係に、常に前輪側のモ
ーメントと後輪側のモーメントとが互に等しくなるよう
に後輪の舵角が制御されるようにしてもよい。この場合
には、もし、コーナリング限界を超える場合には、前輪
と後輪とで同様に超えることとなり、スピン傾向および
ドリフトアウト傾向が発生し難くなる効果が得られる。
【0069】さらに、上記実施例において車輪のスリッ
プ角とコーナリングフォースとを規定するテーブルは、
スリップ角を絶対値とし、右旋回および左旋回に共通の
テーブルとされていたが、右旋回時と左旋回時とに分け
て作成してもよい。
【0070】その他、特許請求の範囲を逸脱することな
く、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した
態様で本発明を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構成を概念的に示す図である。
【図2】本発明の一実施例である車両操舵制御装置を備
えた車両の操舵系統図である。
【図3】上記車両操舵制御装置の主体を成すコンピュー
タのROMに格納されたメインルーチンを示すフローチ
ャートである。
【図4】上記ROMに格納された前輪最大コーナリング
フォース取得制御ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図5】上記ROMに格納された後輪最大コーナリング
フォース取得制御ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図6】上記ROMに格納されたモーメント制御ルーチ
ンを示すフローチャートである。
【図7】上記車両における前輪舵角,後輪舵角,ヨーレ
ートおよびスリップ角の方向を説明する図である。
【図8】上記車両の前輪および後輪におけるスリップ角
とコーナリングフォースとの関係をグラフにして示す図
である。
【図9】上記車両におけるスリップ角とコーナリングフ
ォースをスリップ角によって偏微分した値との関係をグ
ラフにして示す図である。
【図10】上記車両における前輪のスリップ角とコーナ
リングフォースとの関係をグラフにして示す図であっ
て、モーメント制御時の目標前輪スリップ角の設定を説
明する図である。
【図11】上記車両における後輪のスリップ角とコーナ
リングフォースとの関係をグラフにして示す図であっ
て、モーメント制御時の目標後輪スリップ角の設定を説
明する図である。
【符号の説明】
10 左前輪 12 右前輪 14 前輪操舵装置 16 左後輪 18 右後輪 20 後輪操舵装置 22 制御装置
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B62D 137:00

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 前輪と後輪との少なくとも一方のコーナ
    リングフォースが限界に達したことを検出するコーナリ
    ングフォース限界検出手段と、 そのコーナリングフォース限界検出手段により前記前輪
    と後輪との一方についてコーナリングフォースの限界が
    検出されたとき、他方の車輪のコーナリングフォースを
    車両重心まわりの前輪側モーメントと後輪側モーメント
    とが釣り合う大きさに抑制するコーナリングフォース制
    御手段とを含むことを特徴とする車両操舵制御装置。
JP9708993A 1993-03-30 1993-03-30 車両操舵制御装置 Pending JPH06286633A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004237931A (ja) * 2003-02-07 2004-08-26 Nissan Motor Co Ltd 車両運動制御装置
US20120022745A1 (en) * 2010-07-26 2012-01-26 Dr. Ing. H.C. F. Porsche Aktiengesellschaft Method for operating a steering system

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