JPH06286333A - 熱転写記録媒体再生用トナー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 熱溶融転写記録方式に使用する熱転写記録媒
体を再生するためのトナーとして、融点又は軟化点が５
０〜９０℃のワックスを主成分とするものを使用した場
合でも、摩擦によりトナーを帯電させる際にトナー粒子
が互いに融着しないようにし、これにより再生した転写
記録媒体を繰返し使用しても転写感度を低下させずに安
定した印字品質で転写記録ができるようにする。 【構成】 基材１ａ及びその上に積層された熱溶融性イ
ンキ層１ｂからなる熱転写記録媒体の熱溶融性インキ層
１ｂを被転写体に転写させた後に、熱転写記録媒体を帯
電器２で帯電させ、更に熱溶融性インキ層１ｂが抜けた
部分にトナー３を付着させ、その付着させたトナー３を
熱定着することにより熱転写記録媒体を再生する方法に
使用するトナー３として、５０〜９０℃の融点又は軟化
点を有するワックスを主成分とする熱溶融性インキと、
１００μｍ以下の粒子径を有するシリカとを含有するも
のを使用する。この場合、シリカの含有量を０．１〜１
０重量％とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、熱転写に使用した熱
転写記録媒体を再生する際に使用する熱転写記録媒体再
生用トナーに関する。

【０００２】

【従来の技術】現在、ワードプロセッサーをはじめコン
ピューターの端末のプリンター、ファクシミリ、複写機
等の記録装置において、サーマルヘッド等の発熱素子を
用いた熱転写記録方式が、音が小さいこと、装置が比較
的廉価でコンパクトであること、操作が容易で信頼性が
高いこと等の点から広く用いられており、中でも熱溶融
転写記録方式が広く用いられている。

【０００３】この熱溶融転写記録方式においては、熱溶
融性物質と顔料等の着色材とからなる熱溶融性インキ層
をプラスチックフィルム等の基材上に設けたものを熱転
写記録媒体として使用し、その熱溶融性インキ層を、サ
ーマルヘッド等の発熱素子を用いて加熱溶融させ、記録
紙上に移行させて転写画像を形成する。

【０００４】しかしながら、この場合に使用する熱転写
記録媒体は、一度転写記録を行うと記録画像部分の熱溶
融性インキ層がそれから抜けるので、繰返して転写記録
に使用することができない。そのために、記録コストを
大きく低下させることができないという問題があった。

【０００５】そこで、熱転写記録媒体を多数回繰返して
転写記録に使用できるようにするために、熱転写記録媒
体に対して種々の構成が提案されており、熱溶融性イン
キ層を複数のインキ層から構成し、転写記録時に少しず
つインキ層が剥れていくようにしたものなどが実用化さ
れている。しかし、このような熱転写記録媒体は、イン
キ層が剥れていくに従って印字品質が低下し、また、印
字回数もインキ層の積層数に限られているという問題が
あった。

【０００６】このような問題を解決するために、本出願
人は、熱転写後に熱転写記録媒体の熱溶融性インキ層の
抜けた部分を帯電させ、その部分に、それと逆極性に帯
電させたトナーを静電作用を利用して付着させ、次いで
ヒートローラーなどにより熱定着することにより熱転写
記録媒体を再生することを提案した（特願平４−１０１
８０１号）。この再生方法は、まず、図１（ａ）に示す
ような、基材１ａ上に熱溶融性インキ層１ｂが形成され
た熱転写記録媒体１を用意する。

【０００７】次に熱溶融性インキ層１ｂが熱転写される
ことにより形成された熱転写記録媒体１の領域Ａ（同図
（ｂ））を、基材１ａの熱溶融生インキ層１ｂ側表面が
正に帯電するように帯電器２で帯電処理する（同図
（ｃ））。

【０００８】この熱転写記録媒体の領域Ａに、負にわず
かに帯電させた熱溶融性の再生用トナー３を静電作用に
より付着させる（同図（ｄ））。この場合、熱溶融性の
再生用トナーを負に帯電させる方法としては、トナーを
撹拌してトナー粒子同士の摩擦によりトナーを負に帯電
させることが行われている。

【０００９】最後に、再生用トナー３が供給された熱転
写記録媒体１の領域Ａをヒートロール４などにより加熱
加圧することによりトナーを定着する（同図（ｅ））。
これにより熱転写記録媒体が再生される。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特願平
４−１０１８０１号で提案した再生方法では、再生した
熱転写記録媒体の印字品位と転写感度を向上させるため
にトナーとして、融点又は軟化点が５０〜９０℃のワッ
クスを主体とするものを使用した場合、トナーを撹拌し
て摩擦により帯電させようとすると、トナー粒子同士で
融着して帯電できないという問題があった。また、トナ
ー帯電時の熱融着を防止するために融点又は軟化点が９
０℃を超えるワックスを主体とするものを使用した場合
には、再生した熱転写記録媒体の印字品位と転写感度と
が低下するという問題があった。その結果、再生して熱
転写記録媒体を繰返し使用した場合に転写感度が低下
し、安定した印字品質で転写記録ができないという問題
があった。

【００１１】この発明は、このような従来技術の課題を
解決しようとするものであり、熱溶融転写記録方式に使
用する熱転写記録媒体を再生するためのトナーとして、
融点又は軟化点が５０〜９０℃のワックスを主体とする
ものを使用した場合でも、摩擦によりトナーを帯電させ
る際にトナー粒子が互いに融着しないようにし、これに
より再生した転写記録媒体を繰返し使用しても転写感度
を低下させずに安定した印字品質で転写記録ができるよ
うにすることを目的とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】この発明者は、熱転写記
録媒体再生用トナーを、特定範囲の融点又は軟化点を有
するワックスを主成分とする熱溶融性インキを微粒子化
し、それに特定粒子径範囲のシリカを添加することによ
り上述の目的が達成できることを見出し、この発明を完
成させるに至った。

【００１３】即ち、この発明は、基材及びその上に積層
された熱溶融性インキ層からなる熱転写記録媒体の熱溶
融性インキ層を被転写体に転写させた後に、熱転写記録
媒体を帯電させ、更に熱溶融性インキ層が抜けた部分に
トナーを付着させ、その付着させたトナーを熱定着する
ことにより熱転写記録媒体を再生する方法に使用するト
ナーであって、５０〜９０℃の融点又は軟化点を有する
ワックスを主成分とする熱溶融性インキと、１００ｎｍ
以下の粒子径を有するシリカとを含有することを特徴と
する熱転写記録媒体再生用トナーを提供する。

【００１４】以下、この発明の熱転写記録媒体再生用ト
ナーを詳細に説明する。

【００１５】この発明の熱転写記録媒体再生用トナー
は、熱溶融性インキとシリカとを含有するが、熱溶融性
インキとしては、その主成分が融点又は軟化点が５０〜
９０℃のワックス及び着色材からなるものを使用する。
これにより再生した熱転写記録媒体の印字品位と転写感
度を高いものとすることができる。熱溶融性インキの主
成分をなすワックスの融点又は軟化点がこの範囲を下回
ると、摩擦によりトナーを帯電させる際に熱溶融性イン
キの粒子同士が熱融着しはじめ、この範囲を超えると再
生した熱転写記録媒体の転写感度が低下する。

【００１６】このようなワックスとしては、トナーにお
いて従来から用いられているワックス類、例えば、カル
ナバワックス、キャンデリラワックス、ラノリンワック
ス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ポリエチ
レンワックス、石油樹脂ワックス、ライスワックス、エ
ステルワックス、酸化ワックスなどの中から、前述の融
点又は軟化点の範囲にあるものを適宜選択することがで
きる。

【００１７】熱溶融性インキ中の融点又は軟化点が５０
〜９０℃のワックスの含有量は、ワックスの種類等によ
り異なるが、一般的には５０〜８０重量％、好ましくは
６０〜７０重量％とする。ワックスの含有量がこの範囲
を下回ると、再生した熱転写記録媒体の転写感度が低下
し、この範囲を超えるとトナー帯電時に融着するように
なる。

【００１８】着色材としては、トナーにおいて従来から
用いられている着色材を使用することができ、カーボン
ブラック、ベンジジンイエロー、キナクリドン、フタロ
シアニンブルーなどを例示することができる。熱溶融性
インキ中の着色材の含有量は、特に限定されないが、一
般的には１０〜３０重量％とすることが好ましい。

【００１９】この発明で使用する熱溶融性インキは、更
に結着剤として熱可塑性樹脂を含有することが好まし
い。このような熱可塑性樹脂としては、トナーにおいて
従来から用いられている熱可塑性樹脂類を使用すること
ができ、ポリメチル（メタ）アクリレートなどの（メ
タ）アクリル系樹脂、ポリスチレンなどのスチレン系樹
脂、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体な
どのビニル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、
ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボ
ネート樹脂、セルロース系樹脂、ブチラール樹脂などを
例示することができる。

【００２０】このような熱可塑性樹脂の熱溶融性インキ
中の含有量は、使用する熱可塑性樹脂の種類などにより
異なるが、一般的には５〜２０重量％とすることが好ま
しい。

【００２１】なお、この熱溶融性インキの成分を、再生
すべき熱転写記録媒体のインキ層の成分と同一とするこ
とが再生効率を向上させるので好ましい。

【００２２】また、熱溶融性インキは、２０μｍ以下、
好ましくは５〜１５μｍの粒子径となるように微粒子化
しておくことが好ましい。熱溶融性インキの粒子径が２
０μｍを超える場合には、トナーが熱転写記録媒体に付
着しにくくなる。なお、微粒子化する方法は、公知の方
法により行うことができる。

【００２３】この発明において使用するシリカは、トナ
ーの流動性を向上させて、トナーを摩擦により帯電させ
る際に熱溶融性インキの粒子が熱融着しないようにする
ためのものである。このようなシリカとしては、その粒
子径が１００ｎｍ以下、好ましくは１０〜３０μｍ以下
のものを使用する。シリカの粒子径がこの範囲を超える
とトナーの流動性が十分に向上しない。

【００２４】この発明においてシリカは、分子内にＳｉ
Ｏ_２単位を含む化合物であり、例えば、二酸化ケイ素、
ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウ
ム、ケイ酸マグネシウムなどを例示できるが、このよう
なシリカとしては、ＳｉＯ_２含有量が８５重量％以上の
ものを使用することが好ましい。また、シリカとして、
その表面をシリコーン系カップリング剤で処理したもの
を使用してもよい。

【００２５】この発明の熱転写記録媒体再生用トナー中
のシリカの含有量は、一般的には０．１〜１０重量％、
好ましくは１〜５重量％とする。シリカの含有量がこの
範囲を下回るとトナー帯電時にトナーが融着するように
なり、この範囲を超えると印字品位が低下する。

【００２６】この発明の熱転写記録媒体再生用トナーは
常法により製造することができ、例えば、ワックスと熱
可塑性樹脂と着色剤とを溶融して均一に混練し、冷却後
に粉砕することにより微粒子状の熱溶融性インキとし、
このインキを溶融させることなく、このインキとシリカ
とを均一に混合することにより製造できる。

【００２７】なお、この発明の熱転写記録媒体再生用ト
ナーにより再生できる熱転写記録媒体としては、従来よ
り熱溶融転写記録方式で使用されている熱転写記録媒体
を例示することができる。すなわち、基材フィルムとそ
の上に形成された熱溶融性インキ層からなるものを再生
することができる。この場合、熱溶融性インキ層が抜け
た基材上に選択的にトナーを付着させるために、基材フ
ィルムの絶縁性が熱溶融性インキ層の絶縁性よりも高い
ものが好ましい。

【００２８】

【作用】この発明の熱転写記録媒体再生用トナーにおい
ては、融点又は軟化点が５０〜９０℃の熱溶融性インキ
を使用するので、再生した熱転写記録媒体の印字品位と
と転写感度を高いものとすることができる。また、粒子
径が１００ｎｍのシリカが含有されているので、摩擦に
よりトナーを帯電させる際にトナーの流動性を向上させ
ることができる。従って、トナー粒子同士の融着を防止
することが可能となる。

【００２９】

【実施例】以下、この発明を実施例により具体的に説明
する。

【００３０】実施例１ 以下の配合組成の熱溶融性インキ用組成物を、１１０℃
で溶融させて均一に混練し、冷却した後に、低温粉砕機
を用いて粉砕して平均粒子径１０μｍの熱溶融性インキ
を製造した。

【００３１】熱溶融性インキ用組成物 成分名 配合量（重量部） エチレン−酢酸ビニル共重合体 １ （東洋インキ製造株式会社製） パラフィンワックス（融点６７℃） ４ カルナバワックス （融点８０℃） ４ カーボンブラック ２ （東洋インキ製造株式会社製） 得られた微粒子状の熱溶融性インキを１００重量部に対
して、平均粒子径１６ｎｍのシリカ（アエロジル、アエ
ロジル株式会社製）を１重量部を添加し、均一に混合す
ることにより、熱転写記録媒体再生用トナーを製造し
た。

【００３２】これとは別に、１２μｍ厚のポリエステル
フィルム上に上述の熱溶融性インキ用組成物からなる４
μｍ厚のインキ層が形成された熱転写記録媒体を製造し
た。この熱転写記録媒体を使用して、サーマルヘッドを
備えたプリンター（Ｕ１ＰＲＯ６０５Ａｉ、松下電器産
業株式会社製）で上質紙に熱転写を行ったところ、通常
の印字を行うことができた。

【００３３】また、使用済みのこの熱転写記録媒体を、
この熱転写記録媒体再生用トナーを用いて、図２に示す
ような熱転写記録媒体再生装置で再生し、評価した。即
ち、使用済みの熱転写記録媒体１のインキ層が剥がれた
部分を、ローラー５を経て帯電器２で正に帯電させ、そ
の部分に、負に帯電させた熱転写記録媒体再生用トナー
３で覆われたローラー６をフィルムギャップが３００μ
ｍとなるように近接させ、トナー３を熱転写記録媒体１
のインキ層が剥がれた部分に静電作用により供給し、そ
れをヒートローラー４で加熱定着させて、ローラー７を
経て巻取ローラー８に巻き取り、熱転写記録媒体を再生
した。

【００３４】ここで、熱転写記録媒体再生用トナーを負
に帯電させる際の、トナーの流動性と融着状態とをオリ
フィス径測定器により評価した。また、トナーの帯電量
をブローオフ粉体帯電量測定装置（東芝ケミカル株式会
社製）で測定した。更に、熱転写記録媒体にトナーが付
着するか否かを目視により観察した。得られた結果を表
１に示す。表から明らかなように、この実施例の熱転写
記録媒体再生用トナーは、摩擦による帯電処理時に良好
な流動性を示し、融着せずに十分に帯電させることがで
き、更に、熱転写記録媒体に静電作用により十分に付着
させることができた。

【００３５】更に、再生された熱転写記録媒体につい
て、再度、熱転写を行ったところ、再生前の熱転写記録
媒体で得られる印字品位と同様の品位の印字を行うこと
ができた。

【００３６】

【表１】 流動性 融着 帯電量（μｃ／ｇ） トナー付着 実施例１ 良好 なし −８．６７ 良好 ２ 非常に良好 なし −１１．５ 良好 比較例１ 不良 あり 測定せず 付着せず 実施例２ 熱溶融性インキ１００重量部に対してシリカを５重量部
使用する以外は実施例１と同様に、熱転写記録媒体用再
生トナーを製造し、評価した。その結果を表１に示す。
表１から明らかなように、この実施例の熱転写記録媒体
再生用トナーは、摩擦による帯電処理時に良好な流動性
を示し、また、融着せずに十分に帯電させることがで
き、更に、熱転写記録媒体に静電作用により十分に付着
させることができた。

【００３７】更に、再生された熱転写記録媒体につい
て、再度、熱転写を行ったところ、再生前の熱転写記録
媒体で得られる印字品位と同様の品位の印字を行うこと
ができた。

【００３８】比較例１ シリカを使用しない以外は実施例１と同様に熱転写記録
媒体再生用トナーを製造し、評価した。その結果を表１
に示す。表１から明らかなように、この比較例の熱転写
記録媒体再生用トナーは、摩擦による帯電処理時に流動
性が不足し、トナー同士が融着してしまい、そのため帯
電測定が実施できなかった。従って、熱転写記録媒体の
再生も行うことができなかった。

【００３９】

【発明の効果】この発明の熱転写記録媒体再生用トナー
によれば、転写感度を低下させずに安定した印字品質で
繰返し転写記録ができるように、使用済みの熱転写記録
媒体を再生することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】熱転写記録媒体の再生原理の説明図である。

【図２】熱転写記録媒体の再生装置の概略図である。

【符号の説明】

１ 熱転写記録媒体 １ａ 基材フィルム １ｂ 熱溶融性インキ層 ２ 帯電器 ３ トナー粒子 ４ ヒートロール

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基材及びその上に積層された熱溶融性イ
   ンキ層からなる熱転写記録媒体の熱溶融性インキ層を被
   転写体に転写させた後に、熱転写記録媒体を帯電させ、
   更に熱溶融性インキ層が抜けた部分にトナーを付着さ
   せ、その付着させたトナーを熱定着することにより熱転
   写記録媒体を再生する方法に使用するトナーであって、
   ５０〜９０℃の融点又は軟化点を有するワックスを主成
   分とする熱溶融性インキと、１００ｎｍ以下の粒子径を
   有するシリカとを含有することを特徴とする熱転写記録
   媒体再生用トナー。
2. 【請求項２】 シリカの含有量が０．１〜１０重量％で
   ある請求項１記載の熱転写記録媒体再生用トナー。