JPH06277517A - ハロゲン化銅触媒の再生方法及び炭酸ジエステルの製造方法 - Google Patents

ハロゲン化銅触媒の再生方法及び炭酸ジエステルの製造方法

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JPH06277517A
JPH06277517A JP5166453A JP16645393A JPH06277517A JP H06277517 A JPH06277517 A JP H06277517A JP 5166453 A JP5166453 A JP 5166453A JP 16645393 A JP16645393 A JP 16645393A JP H06277517 A JPH06277517 A JP H06277517A
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catalyst
reaction
copper
halide
halogen
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JP5166453A
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Hiroto Miyake
弘人 三宅
Yasutaka Tanaka
康隆 田中
Keisuke Fujiwara
啓介 藤原
Shingo Oda
慎吾 小田
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Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 触媒活性の低下したハロゲン化銅触媒を、簡
便に且つ効率よく再生する。 【構成】 酸化カルボニル化反応に供した塩化第一銅な
どのハロゲン化銅触媒を、一酸化炭素分圧1〜50気圧
程度、温度50〜200℃程度の条件下、一酸化炭素で
処理する。触媒反応中に生成したヒドロキシハロゲン化
銅が、一酸化炭素により速やかにハロゲン化銅に転化さ
れる。ハロゲン又はハロゲン化水素の共存下に一酸化炭
素処理すると再生効率がさらに向上する。ハロゲン化銅
触媒の存在下、メタノールなどのアルコールと一酸化炭
素と酸素とを反応させて炭酸ジエステルを製造する際、
ハロゲン又はハロゲン化水素を共存させると、触媒活性
の低下が抑制され、高い選択率で炭酸ジエステルを収率
よく製造できる。ハロゲン又はハロゲン化水素には、塩
化水素などが含まれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化カルボニル化反応
などの触媒反応に使用されるハロゲン化銅触媒の再生方
法、及びアルコールと一酸化炭素と酸素との反応により
炭酸ジエステルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ハロゲン化銅は、酸化カルボニル化反応
の触媒として広く用いられている。例えば、ハロゲン化
銅は酸化還元電位が小さく、酸素により容易に1価から
2価に酸化されることから、パラジウム触媒を用いたワ
ッカー型のレドックス反応において助触媒として用いら
れている。このワッカー反応においては、触媒活性種で
ある2価のパラジウムが反応により0価に還元され、こ
の0価のパラジウムがハロゲン化銅によって酸化される
ことにより触媒反応が進行する。しかし、この反応で
は、例えば塩化銅を助触媒として用いた場合には、反応
中にヒドロキシ塩化銅、特にCu2 (OH)3 Clの組
成を有する不溶性のアタカマ石が生成し、触媒が劣化す
る。
【0003】また、ハロゲン化銅は、アルコール、一酸
化炭素及び酸素から炭酸ジエステルを製造する際の触媒
としても用いられている。炭酸ジメチルなどの炭酸ジエ
ステルは、ガソリンの添加剤、有機溶剤として使用され
ていると共に、各種カーボネート類、カーバメート類、
ウレタン類、医薬・農薬等の精密化学品の製造における
ホスゲンに代わる反応剤として有用な化合物である。
【0004】炭酸ジエステルの製造方法として、アルコ
ールにホスゲンを反応させる方法が工業的に採用されて
いる。しかし、この方法は、毒性の強いホスゲンを使用
する必要がある。また、アルコールとホスゲンとの反応
により腐蝕性の強い塩酸が多量に副生する。
【0005】そこで、ホスゲンを使用することなく、触
媒の存在下、アルコールと一酸化炭素と酸素とを液相で
反応させ、炭酸ジエステルを製造する方法が提案されて
いる。前記触媒は、パラジウム化合物を主触媒として含
むパラジウム系触媒と銅化合物を主触媒とする銅系触媒
とに大別される。
【0006】パラジウム系触媒を用いた反応について
は、特公昭61−8816号公報、特公昭61−433
38号公報、特開平1−287062号公報に開示され
ている。これらの方法では、パラジウム化合物を主触媒
とし、銅化合物とアルカリ金属化合物とが組合せて使用
される。助触媒としては、通常、ハロゲン化銅が使用さ
れる。前記パラジウム化合物は活性が高く、低い一酸化
炭素分圧の条件下でも速やかに反応が進行する利点を有
する。しかし、パラジウム化合物を用いて炭酸ジメチル
を製造すると、シュウ酸が副生するという欠点がある。
【0007】一方、銅系触媒を用いた反応については、
特公昭45−11129号公報、特公昭56−8020
号公報、特公昭60−58739号公報に開示されてい
る。この反応では、通常、ハロゲン化銅が触媒として用
いられる。銅系触媒は、触媒組成が単純で、シュウ酸の
副生がない。しかし、銅系触媒は、パラジウム系触媒に
比べて活性が低く、実用的な反応速度を得るためには、
触媒を多量に、例えば数モル/L(重量%換算で数十
%)という高濃度で使用する必要があるだけでなく、高
い一酸化炭素分圧を必要とする。
【0008】また、前記先行文献に記載されている方法
は、主に加圧下での液相反応である。しかし、パラジウ
ム系、銅系のいずれの触媒系においても、触媒を溶解し
た反応粗液は強い腐蝕性を示す。そのため、ガラスライ
ニング、ホーローライニングなどの耐蝕保護膜を施した
耐圧容器を使用する必要がある。また、耐蝕ライニング
を施した耐圧容器の大きさには作製上限界がある。その
ため、前記触媒を用いて、液相で炭酸ジエステルを工業
的に多量に製造することは困難である。
【0009】炭酸ジエステルの液相反応方式として、
(1)触媒と反応基質とを反応器に連続的に導入すると
ともに、反応液を連続的に抜取る液相連続法、(2)触
媒を反応器内に封じ込め、反応基質だけを反応器へ導入
すると共に、反応生成物と未反応の反応基質とをガスに
同伴させて、ガス状で連続的に抜取る気相連続抜取り法
が知られている。
【0010】前記気相連続抜取り法は、液相連続法に比
べて、腐蝕性の大きな触媒系を用いても、反応器だけを
耐蝕性のある高級材質で構成すればよいため、工業的に
有用である。このような気相連続抜き取り法は、特開平
2−164853号公報、特開平3−99041号公
報、ヨーロッパ特許公開公報第134668号、ヨーロ
ッパ特許公開公報第460732号に開示されている。
【0011】しかし、これらの反応では、副生する水
が、触媒として用いられるハロゲン化銅などの銅触媒と
反応して、水酸化銅やヒドロキシハロゲン化銅、特にC
2 (OH)3 Clの組成を有する不溶性のアタカマイ
トが生成する。そのため、触媒活性が低下するととも
に、反応の選択性が低下する。
【0012】気相連続抜き取り法に関する前記先行文献
には、触媒の劣化を防止するため、反応液中の水濃度を
抑制する方法が記載されている。しかし、この方法は、
触媒の劣化の最も大きな原因であるヒドロキシハロゲン
化銅の結晶化防止には効果がない。また、触媒に含まれ
るハロゲンの一部がアルキルハライドとして反応系外に
排出されるため、触媒活性がさらに低下する。そのた
め、ハロゲンの脱離に起因して生じる触媒活性の劣化の
防止にも効果がない。
【0013】前記特公昭45−11129号公報の実施
例には、ハロゲン化銅触媒の再生法として、塩化第一銅
に塩酸及び酸素を作用させて塩化第二銅を再生する方法
が開示されている。しかし、この方法は、反応を一旦中
断して、触媒を再生するので、炭酸ジエステルを工業的
に製造する上で大きな障害となる。
【0014】液相反応に付随する問題を回避するため、
特表昭63−503460号公報(WO87/0760
1)には、担体に金属ハライド類を含浸法によって担持
した固体触媒を用い、アルコールと一酸化炭素と酸素と
を気相で反応させて炭酸ジエステルを製造する方法が提
案されている。この方法は、腐蝕性が少なく、大量生産
に適した方法と考えられる。
【0015】一方、特に気相反応では、反応に伴なって
触媒に含まれるハロゲンが容易に脱離し易く、触媒が短
時間で劣化するという大きな問題がある。
【0016】前記気相法に関する先行文献には、活性が
低下した固体触媒を加熱して水分を除去し、次いでハロ
ゲン化水素を含む不活性ガス流と100℃以上の温度で
十分に接触させて触媒を再生させる方法が記載されてい
る。しかし、この方法においても、固体結晶のアタカマ
イトを触媒であるハロゲン化銅に転化させるためには、
少なくとも1時間程度の時間が必要である。また、運転
を一時中断して触媒を再生する必要があるので、炭酸ジ
エステルを連続的に多量に生産する場合には工業的に大
きな障害となる。
【0017】さらには、触媒の再生処理により、塩化水
素などのハロゲン化水素が残存すると、ハロゲン化アル
キルが副生したり、製品である炭酸ジエステルが加水分
解する。そのため、再生処理後に不活性ガスを長時間パ
ージして残存する塩化水素などのハロゲン化水素を除去
する必要がある。なお、触媒から脱離したハロゲンは、
殆ど定量的にハロゲン化アルキルとなる。そのため、ア
ルコールの共存下、すなわち反応条件下では、ハロゲン
化水素により処理するのが困難であると一般に考えられ
ている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、酸化カルボニル化反応に供したハロゲン化銅触媒
を、腐蝕性物質を用いなくても、簡便に且つ効率よく再
生する方法を提供することにある。
【0019】本発明の他の目的は、高い触媒活性および
高い選択率を維持しつつ、炭酸ジエステルを収率よく製
造できる方法を提供することにある。
【0020】本発明のさらに他の目的は、反応を中断し
て触媒を再生させることなく、炭酸ジエステルを長時間
安定に製造できる方法を提供することにある。
【0021】本発明のさらに他の目的は、副反応を抑制
しつつ、炭酸ジエステルを効率よく製造できる炭酸ジエ
ステルの製造方法を提供することにある。
【0022】
【発明の構成】本発明者らは、前記目的を達成するため
鋭意検討した結果、酸化カルボニル化反応に供して触媒
活性の低下したハロゲン化銅触媒に、一酸化炭素を作用
させると、速やかに触媒活性が回復すること、及び、ハ
ロゲンと銅とを含む触媒を用いた炭酸ジエステルの製造
に際して、ハロゲン又はハロゲン化水素を反応系に共存
させると、触媒の劣化が著しく抑制されることを見出だ
し本発明を完成した。
【0023】すなわち、本発明は、酸化カルボニル化反
応に供したハロゲン化銅触媒を一酸化炭素で処理するハ
ロゲン化銅触媒の再生方法を提供する。この方法によ
り、劣化したハロゲン化銅触媒を簡便に且つ効率よく再
生することができる。好ましい再生方法には、ハロゲ
ン、ハロゲン化水素又は金属ハライドの共存下で一酸化
炭素処理する方法が含まれる。
【0024】本発明は、また、ハロゲンと銅とを含む触
媒成分の存在下、アルコールと一酸化炭素と酸素とを反
応させて炭酸ジエステルを製造する方法であって、ハロ
ゲン又はハロゲン化水素の共存下で反応させる炭酸ジエ
ステルの製造方法を提供する。この方法により、触媒の
劣化を著しく抑制でき、高い触媒活性及び選択率を維持
しつつ、炭酸ジエステルを長期間に亘り安定に製造でき
る。
【0025】本発明の再生方法について、以下に説明す
る。
【0026】前記酸化カルボニル化反応には、ワッカー
反応、及びアルコールと一酸化炭素と酸素とから炭酸ジ
エステルが生成する反応等が含まれる。本発明は、特
に、アルコールと一酸化炭素と酸素とから炭酸ジエステ
ルが生成する反応に好適に適用される。
【0027】ハロゲン化銅触媒には、フッ化第一銅、塩
化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅のハロゲン化第一
銅触媒及びフッ化第二銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨ
ウ化第二銅のハロゲン化第二銅触媒が含まれる。前記触
媒は単一触媒でもよく、また他のハロゲン化銅若しくは
その他の触媒成分を含む混合触媒であってもよい。好ま
しいハロゲン化銅触媒はハロゲン化第一銅触媒であり、
特に塩化第一銅が繁用される。
【0028】触媒は、ハロゲン化銅の粉末等をそのまま
用いた触媒であってもよく、ハロゲン化銅を適当なバイ
ンダーを用いて、打錠成形、押し出し成形等により成形
した触媒、或いはハロゲン化銅を活性炭、アルミナ、シ
リカ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグ
ネシア、炭化ケイ素、ケイソウ土、軽石、アランダム等
の担体に、含浸法、コーティング法、吸着法などの方法
によって担持した固体触媒の何れであってもよい。
【0029】ハロゲン化銅触媒を酸化カルボニル化反応
に供すると、通常、ハロゲン化銅の一部又は全部が水酸
化銅、ヒドロキシハロゲン化銅、炭酸銅などの他の銅化
合物に変化し、そのため触媒活性が徐々に低下する。な
かでも、ヒドロキシハロゲン化銅の生成は、触媒活性を
著しく低下させる要因となる。
【0030】本発明は、このように触媒が劣化し、活性
の低下したハロゲン化銅触媒に適用され、特に、反応に
供されてヒドロキシハロゲン化銅に変化したハロゲン化
銅触媒に好適に適用される。
【0031】ヒドロキシハロゲン化銅とは、少なくとも
1以上のヒドロキシル基及びハロゲン原子を有する銅化
合物をいう。前記ハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭
素及びヨウ素が含まれる。
【0032】ヒドロキシハロゲン化銅としては、例え
ば、Cu2 (OH)3 X、CuX2 ・Cu(OH)2
CuX2 ・3Cu(OH)2 [Xは、塩素原子又は臭素
原子等のハロゲン原子を意味する]などが挙げられる。
【0033】本発明の再生方法の主たる特徴は、前記ハ
ロゲン化銅触媒を一酸化炭素で処理することにある。一
酸化炭素で処理すると、酸化カルボニル化反応中にハロ
ゲン化銅から変化したヒドロキシハロゲン化銅が、速や
かにハロゲン化銅、特にハロゲン化第一銅に転化され、
ハロゲン化銅触媒が再生される。そしてその結果、触媒
活性が回復する。
【0034】一酸化炭素による処理は、例えば以下のよ
うにして行うことができる。すなわち、反応に使用した
ハロゲン化銅触媒をそのまま又は溶媒に溶解若しくは懸
濁し、一酸化炭素を作用させる。
【0035】前記溶媒としては、ハロゲン化銅触媒の再
生に悪影響を与えない溶媒であればよく、例えば、メタ
ノールなどのアルコール;アセトンなどのケトン;ジエ
チルエーテルなどのエーテル;酢酸などのカルボン酸;
酢酸エチルなどのカルボン酸エステル;ヘキサンなどの
脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水
素;トルエンなどの芳香族炭化水素;ジクロロエタンな
どのハロゲン化炭化水素;炭酸ジメチル等の炭酸ジエス
テル等を用いることができる。これらの溶媒は一種又は
二種以上混合して使用できる。
【0036】また、酸化カルボニル化反応に供したハロ
ゲン化銅触媒を単離することなく、触媒を含む反応液、
その濃縮液若しくは蒸発乾固した固形物、触媒層等に一
酸化炭素を作用させてもよい。
【0037】特に、液相法において、目的化合物を気相
抜き取り法で連続的に製造するプロセスでは、触媒を抜
き取ることなく、一酸化炭素を反応器の液相に供給する
だけで触媒が再生されるため、本発明は、本プロセスの
工業化に大きく寄与する。
【0038】また、気相反応においては、固定床、流動
床の何れの反応形式でも、原料ガスに代えて、一酸化炭
素を反応器に供給することにより、簡便に触媒を再生す
ることができる。特に、固定床反応形式の場合は触媒が
固定されているので、再生操作が容易である。
【0039】さらに、触媒反応に用いる反応器を複数系
列とし、一方で触媒反応を行い、他方で触媒の再生を行
うこともできる。これにより、反応と触媒の再生とを効
率的に実施することができる。
【0040】一酸化炭素は高純度ガスである必要はな
く、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの反応
に不活性なガスにより希釈して用いてもよい。また、ハ
ロゲン化銅触媒の再生が損われない範囲で、酸素を含ん
でいてもよい。酸素の含量は、一酸化炭素1モルに対し
て、例えば0.05モル以下、好ましくは0.02モル
以下である。酸素量が0.05モルを越えると、ハロゲ
ン化銅の再生速度が遅くなる。また、一酸化炭素として
酸化カルボニル化反応のオフガスを用いることにより、
オフガスの有効利用を図ることもできる。
【0041】一酸化炭素で処理する際の一酸化炭素分圧
は特に限定されないが、例えば0.1〜100気圧、好
ましくは1〜50気圧程度である。また、処理温度は、
通常、0℃以上であるが、処理時間を短縮するため、好
ましくは50〜200℃、さらに好ましくは100〜2
00℃程度である。
【0042】本発明の再生方法において、前記一酸化炭
素による処理を、ハロゲン、ハロゲン化水素又は金属ハ
ライドの共存下に行うこともできる。
【0043】前記ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素及
びヨウ素が含まれる。ハロゲン化水素には、フッ化水
素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が含まれる。ま
た、前記金属ハライドには、銅、鉄、ニッケル、コバル
トなどの遷移金属等のハライドが含まれる。金属ハライ
ドのなかでは、2価以上の金属のハライド、特に塩化第
二銅などのハロゲン化第二銅が好ましい。
【0044】一酸化炭素による触媒再生処理の際に共存
させる好ましい物質は、ハロゲン化銅触媒の種類に応じ
て、ハロゲン化銅のハロゲンと同種のハロゲン又はハロ
ゲン化水素である。好ましいハロゲン及びハロゲン化水
素は、塩素及び塩化水素である。特に好ましくは塩化水
素が使用される。また、活性炭等の担体にハロゲン化銅
を担持した触媒に対しては、塩素などのハロゲン等がと
りわけ有効である。ハロゲン、ハロゲン化水素及び金属
ハライドは併用してもよい。
【0045】前記ハロゲン等の共存下での一酸化炭素処
理は、例えば以下の方法により行うことができる。すな
わち、反応に供したハロゲン化銅触媒を溶液又は懸濁液
中で処理する場合には、前記ハロゲン等を前記溶液又は
懸濁液中に添加し、これに一酸化炭素を供給することに
よって行うことができる。用いるハロゲン等が気体の場
合は、一酸化炭素と共に混合ガスとして供給してもよ
い。
【0046】また、ハロゲン化銅触媒を固体状のまま処
理する場合には、前記ハロゲン等と一酸化炭素との混合
ガスを供給することにより行うことができる。
【0047】前記ハロゲン等の使用量は、ハロゲン化銅
触媒の劣化の程度により異なるが、反応に供したハロゲ
ン化銅1モルに対して、通常0.01〜1モル、好まし
くは0.02〜0.5モル程度である。また、用いるハ
ロゲン等が気体であって、一酸化炭素と共に供給する場
合の前記ハロゲン等の供給量は、一酸化炭素供給量に対
して、例えば5容量%以下、好ましくは0.001〜1
容量%、さらに好ましくは0.01〜0.2容量%程度
である。
【0048】ハロゲン、ハロゲン化水素又は金属ハライ
ドの共存下に一酸化炭素処理を行うと、反応に使用して
活性の低下したハロゲン化銅触媒の再生効率がさらに向
上する。これは、次のような理由によるものと考えられ
る。
【0049】酸化カルボニル化反応において、ハロゲン
化銅触媒がヒドロキシハロゲン化銅、特にアタカマ石
[Cu2 (OH)3 Cl]に変化する際、それに伴って
触媒から離脱したハロゲン成分が反応基質と反応し、ハ
ロゲン化物、ハロゲン、ハロゲン化水素等として反応系
外へロスすることがある。このような場合、一酸化炭素
による触媒の再生処理を行うに際して前記ハロゲン等、
特にハロゲン又はハロゲン化水素を共存させると、ロス
したハロゲン成分が補充され、その結果、触媒の再生効
率が向上するものと考えられる。特に塩化第一銅などの
ハロゲン化第一銅触媒の場合には、上記ハロゲン成分の
ロスに起因して触媒の再生効率が低下することがあるた
め、前記ハロゲン等の共存下での一酸化炭素処理が非常
に有効である。従って、ハロゲン化銅を触媒とし一酸化
炭素を反応成分とする反応、例えば、アルコールと一酸
化炭素と酸素とから炭酸ジエステルを生成させる反応等
においては、反応系に前記ハロゲンやハロゲン化水素を
共存させて反応を実施しながら触媒を再生することがで
きる。この場合には、反応中に触媒の再生が速やかにな
されるため、触媒再生と共に反応を円滑に進行させるこ
とができる。
【0050】以下、本発明の炭酸ジエステルの製造方法
について説明する。
【0051】この発明は、アルコールと一酸化炭素と酸
素とから炭酸ジエステルを生成させる反応の反応解析の
結果得られた知見に基づく。すなわち、本反応において
は、銅触媒のハロゲンがアルコールと反応して、アルキ
ルハライドとして反応系外に排出されることが触媒劣化
の原因となっている。より詳細には、反応により副生し
た水がハロゲン化銅と反応して、例えばCu2 (OH)
3 Clの組成を有するアタカマイトに変質する過程で、
過剰のハロゲンがアルコールと反応してアルキルハライ
ドが生成する。このことは、反応系から排出されるハロ
ゲン量に基いて触媒中に残存するハロゲン量を算出し、
残存ハロゲン量と炭酸ジエステルの生成速度との相関を
調べると、良い直線関係が認められることからも支持さ
れる。
【0052】そこで、単位時間当りに反応系から排出さ
れるハロゲン量を推定し、排出されるハロゲン量と当量
またはそれ以上のハロゲン又はハロゲン化水素を反応系
に共存させると、炭酸ジエステルの製造に際して、触媒
の劣化が著しく抑制されることを見出だした。
【0053】本発明の製造方法において反応成分として
用いるアルコールには、分子中に1個以上のヒドロキシ
ル基を有する化合物、例えば、メタノール、エタノー
ル、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノ
ールなどの飽和脂肪族アルコール;アリルアルコールな
どの不飽和脂肪族アルコール;シクロヘキサノールなど
の脂環式アルコール;ベンジルアルコール、フェノール
などの芳香族アルコール;エチレングリコール、ポリエ
チレングリコール、プロピレングリコールなどの多価ア
ルコールなどが含まれる。なお、芳香族アルコールと
は、フェノール性ヒドロキシル基を有するフェノール類
も含む意味に用いる。
【0054】好ましいアルコールは、一価の飽和又は不
飽和アルコール、例えば、炭素数1〜6程度のアルコー
ルである。特に好ましいアルコールには、メタノール、
エタノールなどが含まれ、なかでもメタノールが繁用さ
れる。
【0055】触媒成分は、ハロゲンと銅とを含む触媒で
あればよい。ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素及びヨ
ウ素が含まれる。また、銅の価数は、一価又は二価のい
ずれであってもよい。
【0056】前記ハロゲン及び銅を含む触媒成分として
は、前記ハロゲン化第一銅;前記ハロゲン化第二銅;銅
メトキシクロリド、銅メトキシブロミド、銅エトキシク
ロリドなどの銅アルコキシハライド;銅カルボニルクロ
リドなどの銅カルボニルハライド;銅メトキシカルボニ
ルクロリドなどの銅アルコキシカルボニルハライドなど
が例示される。
【0057】好ましい触媒成分には、ハロゲン化第一
銅、ハロゲン化第二銅が含まれる。触媒成分に含まれる
ハロゲンは、塩素であるのが好ましい。特に塩化第一銅
や塩化第二銅が好適に用いられる。
【0058】また、前記ハロゲン及び銅を含む触媒成分
は、ハロゲンを含む化合物と銅を含む化合物とを組合せ
ることによっても構成できる。
【0059】前記ハロゲンを含む化合物としては、鉄、
ニッケル、コバルトなどの遷移金属のハライド;前記遷
移金属のメトキシクロリドなどのアルコキシハライド;
リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の
ハライド;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウ
ム、バリウムなどのアルカリ土類金属のハライドなどが
挙げられる。
【0060】前記銅を含む化合物には、銅原子を含む無
機化合物、有機化合物及び錯体が含まれる。銅原子を含
む無機化合物としては、硝酸銅、硫酸銅、炭酸銅、リン
酸銅などが例示される。銅原子を含む有機化合物として
は、ギ酸銅、酢酸銅、ピバリン酸銅、安息香酸銅などの
カルボン酸塩;銅フェノキシドなどのフェノール類の塩
などが挙げられる。銅原子を含む錯体としては、例えば
塩化第一銅や酢酸銅などの銅の無機又は有機化合物と、
エチレンジアミンなどのアミン類、ピリジンなどの含窒
素複素環化合物、トリフェニルホスフィンなどの有機リ
ン化合物、ベンゾニトリルなどのニトリル類などの配位
性化合物との錯体が挙げられる。銅の価数は、一価又は
二価のいずれであってもよい。
【0061】前記ハロゲン及び銅を含む触媒成分は、一
種又は二種以上組合せて用いることができる。また、ハ
ロゲン及び銅を含む触媒成分は、ハロゲンや銅を含まな
い他の触媒、例えば、銅以外の遷移金属の化合物、アル
カリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などと共存さ
せてもよい。
【0062】好ましい触媒成分において、ハロゲンと銅
との割合は、ハロゲン/銅=1.0〜2.0、好ましく
は1.2〜2.0、さらに好ましくは1.4〜1.8程
度である。
【0063】触媒成分は、固体触媒としても使用でき
る。固体触媒は、触媒成分を、前記例示の担体に担持さ
せた触媒であってもよく、触媒成分を適当なバインダー
を用いて成形した触媒であってもよい。
【0064】触媒成分を担体に担持した固体触媒を用い
る場合、触媒成分の担持量は、触媒成分や担体の種類に
よって異なるが、通常、担体に対して、0.1〜50重
量%、好ましくは0.5〜20重量%程度である。ま
た、触媒成分を成形した触媒を用いる場合、触媒成分の
含有量は、通常1〜99重量%程度である。
【0065】本発明の製造方法の主たる特徴は、前記触
媒成分を含む反応系にハロゲン源を共存させることにあ
る。ハロゲン源を共存させることにより、触媒成分の活
性低下を著しく抑制でき、長期間に亘り炭酸ジエステル
を安定して製造できる。そのため、反応を中断して触媒
を再生する必要がなく、炭酸ジエステルを連続的に製造
することができる。さらに、反応系にアルコールが存在
するにも拘らず、ハロゲン源を共存させても、アルキル
ハライドの副生を著しく抑制できる。
【0066】ハロゲン源の共存下で反応させることによ
り、触媒成分の失活が抑制される理由をより詳細に説明
すると、次のように考えられる。なお、触媒成分として
塩化第1銅を用いた場合を例にとって説明する。
【0067】アルコール、一酸化炭素および酸素を反応
させると、炭酸ジエステルとともに水が副生する。この
水と塩化第1銅と酸素との反応により生成するヒドロキ
シ塩化銅は不安定である。そして、下記反応式(1)示
されるように、不安定な3分子のヒドロキシ塩化銅が、
不均化縮合反応により、塩化第2銅とアタカマイト(C
2 (OH)3 Cl)になると考えられる。
【0068】
【化1】 前記式(1)で表される反応は、平衡反応であるが、ア
タカマイトが結晶固化するため、右に大きく傾いてい
る。このことは、塩化銅を用いた液相反応において、反
応時間とは関係なく、溶存する塩素/銅の比率が一定で
あることからも示唆される。
【0069】そのため、アタカマイトを主成分とする劣
化した触媒を塩化銅に再生させるためには、過剰の塩素
や塩化水素を必要とする。しかし、過剰の塩素や塩化水
素を用いると、再生された塩化銅と、塩化アルキルを生
成させる触媒である[CuCl2+n n-(式中、n≧
1、以下同じ)とが生成すると考えられる。
【0070】従って、塩化水素などで処理した後、不活
性ガス中で[CuCl2+n n-から過剰の塩素を除き、
CuCl2 とする必要がある。そのため、再生処理のた
めには、反応を停止しアルコールの供給を停止すると共
に、塩化水素で処理した後も不活性ガス雰囲気下で十分
な時間をかけて再生処理する必要がある。
【0071】一方、反応系内に塩素または塩化水素を共
存させると、前記反応式(1)で表される平衡反応以外
に、下記反応式(2)で表される、ヒドロキシ塩化銅を
塩化第1銅に転換させる反応が生じる。
【0072】 2Cu(OH)Cl+CO → 2CuCl+CO2 +H2 O (2) 従って、反応条件下又は一酸化炭素雰囲気下で、塩素又
は塩化水素で処理することにより、容易に前記平衡反応
(1)を左に傾けることが可能となるだけでなく、過剰
の塩素や塩化水素を必要としないため、[CuC
2+n n-の濃度を高めることなく、アルコールの共存
下であっても、塩化アルキルの副生を抑制することがで
きる。
【0073】このように、塩化銅を触媒として用い、特
に塩化水素又は塩素で触媒再生を行なう場合には、一酸
化炭素雰囲気下で行なうのが有利である。従って、一酸
化炭素を反応成分とする反応条件下、塩素及び/又はハ
ロゲン化水素を共存させればよいことになる。また、触
媒による反応条件下であっても、特に問題を生じる事な
く触媒再生とともに反応を円滑に進行させることができ
る。
【0074】そのため、反応条件下に、塩化水素及び/
又は塩素を共存させることにより、触媒の劣化を防止で
きる。しかも、触媒が劣化したとしても、反応を中断す
ることなく、触媒の再生を効率よく行なうことができ
る。特に、炭酸ジエステルの工業的製造においては、後
者の方法は、大きな利点をもたらす。
【0075】なお、前記の例では、塩素又は塩化水素を
共存させる場合について説明したが、本発明において
は、ハロゲン源として、ハロゲン及び/又はハロゲン化
水素を共存させればよい。ハロゲンおよびハロゲン化水
素には、前記例示のものが含まれる。
【0076】好ましいハロゲン源は、触媒成分の種類に
応じて、触媒成分のハロゲンと同種のハロゲン又はハロ
ゲン化水素である。好ましいハロゲン及びハロゲン化水
素は、塩素及び塩化水素である。特に好ましくは塩化水
素が使用される。ハロゲンとハロゲン化水素は併用して
もよい。
【0077】ハロゲン及び/又はハロゲン化水素は、ア
ルコールに溶解して反応系に供給してもよく、ガスとし
て原料ガスと混合して供給してもよい。また、アルコー
ル中に塩酸などのハロゲン化水素酸の形態でハロゲン化
水素を添加してもよい。
【0078】反応系に供給するハロゲン及び/又はハロ
ゲン化水素の量は、反応系外に排出されるハロゲン量に
応じて適当に選択でき、前記ハロゲン量を越えてもよい
が、反応系外に排出されるハロゲン量と同程度であるの
が好ましい。
【0079】気相連続抜取り法などの液相法では、初期
に導入した触媒に含まれるハロゲン量に対して、例え
ば、ハロゲン化水素換算で0.01〜20重量%/hr
程度のハロゲン及び/又はハロゲン化水素が供給され
る。
【0080】ハロゲン及び/又はハロゲン化水素は、反
応初期から導入してもよく、反応開始後、任意の段階で
導入してもよい。より具体的には、アルコールとともに
導入する場合、液相法では、ハロゲン化水素換算で0.
001〜5重量%、好ましくは0.001〜1重量%、
さらに好ましくは0.005〜0.1重量%程度のハロ
ゲン及び/又はハロゲン化水素を含むアルコールを反応
初期から導入すればよい。また、反応の途中で供給し、
触媒を再生させる場合には、液相法では、触媒から脱離
したハロゲン量に応じて適当な濃度、例えば、ハロゲン
化水素換算で0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜
20重量%程度のハロゲン及び/又はハロゲン化水素を
含むアルコールを一回又は複数回導入すればよい。
【0081】気相法では、ハロゲン及び/又はハロゲン
化水素をガス中の濃度0.001〜1%、好ましくは
0.001〜0.5%程度にコントロールするのが好ま
しい。
【0082】このような条件で少量のハロゲン又はハロ
ゲン化水素を反応系に共存させると、アルキルハライド
の副生も著しく抑制できる。
【0083】一酸化炭素及び酸素は高純度ガスである必
要はなく、前記例示の反応に不活性なガスを用いて希釈
して用いてもよい。爆発混合気の形成を防止するため、
原料ガスは、通常、不活性ガスで希釈される。
【0084】実際の製造設備では、未反応の一酸化炭素
を循環させて反応するのが一般的であるが、一酸化炭素
の酸化反応により生成する二酸化炭素を完全に除去せず
に、不活性ガスとして利用してもよい。好ましい方法に
おいて、反応系から排出される未反応の一酸化炭素は、
副生する二酸化炭素と共に反応系にリサイクルされる。
この場合、連続式反応においては、循環ガス中の二酸化
炭素濃度が高くなるので、二酸化炭素の排出に伴なって
生じる未反応の一酸化炭素の損失を低減でき、一酸化炭
素を有効に利用できる。
【0085】酸素は高純度酸素として反応系に導入して
もよく、空気中の酸素を利用してもよい。空気を酸素源
として導入する場合には、空気中の窒素を循環ガス中に
不活性ガスとして存在させることができる。
【0086】反応条件は反応形式などに応じて適当に選
択することができる。反応温度は、例えば、20〜20
0℃、好ましくは80〜150℃程度である。また、反
応圧力は、反応効率が損われない限り特に制限されない
が、適当な一酸化炭素分圧を保ち、反応速度を高めるた
め、大気圧〜60Kg/cm2 G、好ましくは大気圧〜
50Kg/cm2 G程度である。なお、前記圧力よりも
高い圧力下でも実施できるが、反応器を高圧設計にする
必要があるため、設備費用が増大する。そのため、経済
的な観点からは、低い圧力で反応させるのが好ましい。
【0087】一酸化炭素の使用量は、通常、アルコール
1モルに対して、0.1〜1000モル、好ましくは
0.2〜100モル、さらに好ましくは0.5〜20モ
ル程度である。酸素の使用量は、通常、アルコール1モ
ルに対して、0.001〜2モル、好ましくは0.01
〜1.5モル程度である。
【0088】液相反応は、連続式又はバッチ式のいずれ
の方式でも行うこともできる。また、液相連続反応は、
触媒を含むアルコールと原料ガスとを連続的に供給しな
がら反応させ、反応系から反応液を連続的に取出す連続
反応方式であってもよいが、反応系に触媒を封じ込め、
反応系の液面をコントロールしながらアルコールを供給
し、反応系の気相部のガスまたは蒸気を連続的に抜取る
気相連続抜取り法が好ましい。この気相連続抜取り法に
おいて、気相部から抜取られたガスまたは蒸気は気液分
離に供され、非凝縮性ガスは、反応系の液相部に連続的
にリサイクルされる場合が多い。液相反応において、触
媒は、通常、アルコールとともに反応系に供給される場
合が多い。
【0089】本発明は気相で反応させる気相反応にも適
用できる。気相反応では、固定床、流動床を利用した反
応方式などの慣用の方法が採用できる。供給ガスの反応
条件下での空間速度は、例えば10〜50000h-1
好ましくは100〜5000h-1程度である。気相反応
は、触媒寿命を延ばす上で特に有用である。また、触媒
が劣化したとしても、少量のハロゲン及び/又はハロゲ
ン化水素を導入するだけで、触媒反応を中断することな
く、触媒を簡便に再生させることができる。
【0090】反応生成物は、蒸留、溶媒抽出などの慣用
の分離工程に供され、炭酸エステルが製造される。
【0091】なお、本発明の再生方法を応用して、別途
製造したヒドロキシハロゲン化銅に一酸化炭素を作用さ
せることによって、ハロゲン化銅を製造することができ
る。
【0092】この場合、ヒドロキシハロゲン化銅として
は前記したものが使用できる。ヒドロキシハロゲン化銅
は単一化合物である必要はなく、2以上のヒドロキシハ
ロゲン化銅の混合物や、他の銅化合物又はその他の無機
若しくは有機化合物との混合物であってもよい。
【0093】ヒドロキシハロゲン化銅に一酸化炭素を作
用させる際の諸条件については、前記ハロゲン化銅触媒
の再生方法において記載したのと同様である。
【0094】ヒドロキシハロゲン化銅に一酸化炭素を作
用させると、速やかに反応して、主として対応するハロ
ゲン化第一銅、二酸化炭素及び水が生成する。得られた
ハロゲン化第一銅は、そのまま又は常法により精製し、
酸化カルボニル化反応の触媒などに好適に使用すること
ができる。
【0095】
【発明の効果】本発明の再生方法によれば、酸化カルボ
ニル化反応に供して触媒活性の低下したハロゲン化銅触
媒を一酸化炭素で処理するため、腐蝕性物質を用いなく
ても、極めて簡便且つ効率的にハロゲン化銅触媒を再生
することができる。従って、前記カルボニル化反応を工
業的規模において円滑に遂行することができる。
【0096】本発明の製造方法によれば、反応系に、ハ
ロゲンおよび銅を含む触媒成分とともに、ハロゲン又は
ハロゲン化水素を共存させるので、高い触媒活性および
高い選択率を維持しつつ、炭酸ジエステルを収率よく製
造できる。
【0097】また、ハロゲン又はハロゲン化水素により
触媒を再生できるので、反応を中断することなく、炭酸
ジエステルを長時間安定に製造できる。
【0098】さらに、アルコールの共存下であってもア
ルキルハライドの生成を抑制しつつ、炭酸ジエステルを
効率よく製造できる。
【0099】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。
【0100】実施例1 内容積300mlのグラスライニングした耐圧容器に、
ヒドロキシ塩化銅[Cu2 (OH)3 Cl]200ミリ
モル/L及び塩化第二銅[CuCl2 ]200ミリモル
/Lを懸濁させたメタノール懸濁液を100ml仕込ん
だ。
【0101】次いで、一酸化炭素で12Kg/cm2
で昇圧した後、135℃まで昇温し、30分間攪拌し
た。放冷後、不溶の固体を酸に溶解させ、原子吸光分
析、塩素滴定及び銅の1価2価滴定により分析した結
果、前記固体はすべて塩化第一銅であった。
【0102】実施例2 二段ディスクタービン翼を備えた内容積300mlのグ
ラスライニングした耐圧反応器に、塩化第一銅600ミ
リモル/Lを懸濁させたメタノール懸濁液を120ml
仕込んだ。
【0103】次いで、反応器に、一酸化炭素を30ノル
マルリットル/hr、酸素を3ノルマルリットル/hr
の流量で供給しながら、30Kg/cm2 、135℃で
3時間反応させた。3時間後のメタノールの転化率は3
1%、生成した炭酸ジメチルの一酸化炭素基準の選択率
は75%であった。ガスの吸収速度から、触媒活性が経
時的に低下していることが認められた。
【0104】反応混合液を放冷した後、不溶の固体をX
線回折、原子吸光分析、塩素滴定、及び銅の1価2価滴
定の分析結果より、前記固体はすべてヒドロキシ塩化銅
[Cu2 (OH)3 Cl]であることが分った。
【0105】前記反応混合液を全量、減圧下に蒸発乾固
した後、メタノール120mlに懸濁させ、一酸化炭素
雰囲気下、30Kg/cm2 、135℃で30分攪拌し
た。
【0106】次いで、上記と同様の一酸化炭素及び酸素
供給速度、反応圧力及び反応温度で3時間反応させた。
3時間後のメタノールの転化率は30%、生成した炭酸
ジメチルの一酸化炭素基準の選択率は75%であり、触
媒活性は、最初に塩化第一銅を用いて反応した場合とほ
ぼ同一であった。
【0107】比較例1 実施例2と同様の条件で、メタノールと一酸化炭素と酸
素とを3時間反応させた。次いで、反応混合液を全量、
減圧下に蒸発乾固した後、メタノール120mlに懸濁
させ、一酸化炭素処理を行うことなく、再度上記と同様
の条件で3時間反応させた。
【0108】その結果、メタノールの転化率は7%、生
成した炭酸ジメチルの一酸化炭素基準の選択率は45%
であり、実施例2と比べて著しく低い反応成績を示し
た。
【0109】実施例3 二段ディスクタービン翼を備えた内容積300mlのグ
ラスライニングした耐圧反応器に、塩化第一銅600ミ
リモル/Lを懸濁させたメタノール懸濁液を150ml
仕込んだ。
【0110】反応器に一酸化炭素を180ノルマルリッ
トル/hrの流量で供給しながら、30Kg/cm2
135℃まで昇温した後、同圧力、同温度の条件下、一
酸化炭素を180ノルマルリットル/hr、酸素をオフ
ガス中の酸素濃度が4容積%となるような流量で反応器
に供給した。また、反応器内の液面を一定に保つため、
ガスに同伴して留出する液量と等しい量のメタノールを
反応器に供給した。反応は、15時間連続的に行った。
【0111】反応開始後5時間目までは、留出液から得
られる炭酸ジメチルの生成速度は1.5モル/L・h
r、炭酸ジメチルの一酸化炭素基準の選択率は80%で
あったが、15時間後には、生成速度は0.8モル/L
・hr、前記選択率は65%まで低下した。
【0112】反応開始して15時間後、酸素の供給を停
止し、一酸化炭素を10ノルマルリットル/hrの流量
で反応器に仕込み、反応器内を一酸化炭素で置換した。
一酸化炭素雰囲気下、30Kg/cm2 、135℃で3
0分攪拌して、触媒の再生処理を行った。
【0113】ガス供給量を所定値に戻し、反応を再開し
た。その結果、生成速度は1.5モル/L・hr、前記
選択率は80%と、何れも反応開始した初期の値にまで
回復した。
【0114】実施例4 二段ディスクタービン翼を備えた内容積300mlのグ
ラスライニングした耐圧容器に、塩化第2銅を2400
ミリモル/Lの濃度で溶解したメタノール溶液120m
lを供給した。一酸化炭素を170ノルマルリットル/
hrで流通すると共に、130℃まで昇温した。次い
で、オフガスの酸素濃度を4%以下に保ちながら酸素を
供給し、圧力30Kg/cm2 Gで反応させた。なお、
反応器内の液面は液容積120mlに保ちながら、塩化
水素300ppm含むメタノールを反応器に供給した。
反応は、オフガスと共に反応生成物をガス状で反応器か
ら抜取る気相連続抜取り法で50時間行なった。
【0115】その結果、反応開始から50時間後、炭酸
ジメチルを基準とするメタノール転化率は45%であっ
た。メタノールの転化率は反応開始後3時間で50%で
あったが、10時間後に45%にまで低下した後、50
時間まで触媒の劣化が全く認められなかった。
【0116】比較例2 塩化水素を含まないメタノールを反応器に供給する以
外、実施例4と同様にして50時間反応させたところ、
炭酸ジメチルを基準とするメタノールの転化率は、反応
開始から3時間後で50%であったが、反応の進行とと
もに、徐々にメタノールの転化率が経時的に低下し、5
0時間後には22%に低下した。
【0117】実施例5 比較例2の反応を50時間行なった後、反応条件を変え
ることなく、塩化水素を10%含むメタノールを約1時
間導入し、その後、塩化水素を含まないメタノールを導
入した。
【0118】その結果、反応開始から2時間後にメタノ
ールの転化率が45%にまで回復した。また、塩化メチ
ルの副生率は反応初期と同様の2%であった。
【0119】比較例3 比較例2と同様の反応を50時間行なった後、反応を停
止し、反応器から反応液を取出し、常温常圧下で、塩酸
を用いて触媒を再生処理した。触媒の再生は、反応液中
の固体成分が溶解するまで塩酸を添加することにより行
なった。触媒を再生させた後、そのまま反応器に戻し、
比較例2と同様の方法で反応させた。
【0120】その結果、反応開始から5時間後にメタノ
ールの転化率が41%にまで回復した。しかし、塩化メ
チルの副生率は8%であり、反応初期の2%に比べて著
しく増大した。
【0121】実施例6 実施例4と同じ反応器に、塩化第二銅1200ミリモル
/Lのメタノール溶液120mlを入れ、一酸化炭素で
圧力30Kg/cm2 Gに昇圧し、反応温度135℃に
設定した後、酸素と一酸化炭素と塩酸3000ppmを
含むメタノールを供給して反応させた。また、反応生成
物は蒸発させ、オフガスと共に反応器の外部に留出させ
た。
【0122】なお、実施例4と異なり、メタノールの供
給量を90ml/hrに保つとともに、反応器内の液容
量を120mlに保つため、一酸化炭素/酸素の供給量
を調節した。また、爆発混合気の形成を防ぐため、反応
状態の変化に応じて、オフガス中の酸素濃度が3%にな
るように、酸素の供給量を調節した。
【0123】そして、反応開始後、4時間後には、炭酸
ジメチルを基準とするメタノール転化率は30モル%で
あった。その後、徐々に触媒活性が低下したものの、反
応開始後15時間後にはメタノールの転化率が18モル
%となり、その後50時間目まで18モル%の安定な活
性を示した。
【0124】比較例4 塩酸を含まないメタノールを反応器に供給する以外、実
施例6と同様にして反応を50時間行った。その結果、
反応開始後、4時間後には、メタノール転化率が29モ
ル%であったが、触媒活性の低下が続き、50時間後に
はメタノール転化率が5モル%に低下し、50時間後
も、触媒活性の低下傾向は継続した。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化カルボニル化反応に供したハロゲン
    化銅触媒を一酸化炭素で処理するハロゲン化銅触媒の再
    生方法。
  2. 【請求項2】 ヒドロキシハロゲン化銅に変化したハロ
    ゲン化銅触媒を処理する請求項1記載のハロゲン化銅触
    媒の再生方法。
  3. 【請求項3】 酸化カルボニル化反応が、アルコールと
    一酸化炭素と酸素とから炭酸ジエステルが生成する反応
    である請求項1記載のハロゲン化銅触媒の再生方法。
  4. 【請求項4】 ハロゲン、ハロゲン化水素又は金属ハラ
    イドの共存下、一酸化炭素で処理する請求項1〜3の何
    れかの項に記載のハロゲン化銅触媒の再生方法。
  5. 【請求項5】 ハロゲンと銅とを含む触媒成分の存在
    下、アルコールと一酸化炭素と酸素とを反応させて炭酸
    ジエステルを製造する方法であって、ハロゲン又はハロ
    ゲン化水素の共存下で反応させる炭酸ジエステルの製造
    方法。
  6. 【請求項6】 触媒成分と同種のハロゲン又はハロゲン
    化水素の共存下で反応させる請求項5記載の炭酸ジエス
    テルの製造方法。
  7. 【請求項7】 触媒成分に含まれるハロゲンが塩素であ
    る請求項5記載の炭酸ジエステルの製造方法。
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