JPH06276873A - 植物体の育成・再生用支持体およびこれを用いる植物体の育成・再生方法 - Google Patents

植物体の育成・再生用支持体およびこれを用いる植物体の育成・再生方法

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JPH06276873A
JPH06276873A JP7430993A JP7430993A JPH06276873A JP H06276873 A JPH06276873 A JP H06276873A JP 7430993 A JP7430993 A JP 7430993A JP 7430993 A JP7430993 A JP 7430993A JP H06276873 A JPH06276873 A JP H06276873A
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Hiroshi Tanzawa
宏 丹沢
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 乾燥時の大きさが0.1μm〜1cmの範囲
にあり、且つ架橋構造を有するハイドロゲル粒子からな
る植物体の育成又は再生用支持体。 【効果】 上記支持体を含むゲル中への植物体の包埋お
よびゲルからの植物体の回収等が、水または培地に対す
る該支持体の容積比の調整によって、簡便に且つ植物体
に全く損傷を与えることなく実施することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物体の育成あるいは
再生に好適な支持体に関し、より具体的には、植物体の
育成あるいは再生を促進すると同時に、育成あるいは再
生した植物体に損傷を与えることなく、該植物体を簡便
に回収あるいは継代することが可能な植物体育成あるい
は再生用の支持体、およびこれを利用する植物体の育成
あるいは再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、植物体の育成あるいは再生法
としては、液体培地を用いる方法(液体培養法)と寒
天、ゲルライトなどによってゲル状にした培地を用いる
方法(固体培養法)とが行われてきた。
【0003】液体培養法は植物体を懸濁状態で育成ある
いは再生するために、大量生産に適した方法であると同
時に、育成あるいは再生した植物体を容易に回収、継代
することが可能であり、また植物体の分泌物生産を目的
としたバイオリアクターに適しているなどの利点を有し
ている。しかしながら、液体培養法は、ある種の育成あ
るいは再生工程には利用が非常に困難な場合がある。特
に、土壌移植のための順化過程に先駆けて行われるシュ
ート(新芽)の発根過程では、シュートが水没し良好な
発根が得られない。したがって、現状では上述した寒天
などを支持体として用いた固体培養法が利用されてい
る。
【0004】しかしながら、現状の寒天等を用いた植物
体の育成あるいは再生法(固体培養法)に関しては、以
下に記すような重大な問題点が指摘されている。
【0005】即ち、寒天を用いた植物体の育成あるいは
再生法においては、育成あるいは再生した植物体を、ゲ
ル状の寒天などから寒天フリーの状態で回収することが
非常に困難である。シュートの発根過程でゲル状の寒天
中に再生した根を、寒天から分離することは特に困難が
伴う。通常、発根過程に用いられる寒天培地中には栄養
素としてグルコースが含まれているため、該発根植物体
に寒天が付着したまま順化工程あるいは土壌移植を行う
と、寒天中のグルコースが細菌繁殖の原因となり生着率
が著しく損なわれる。現状では、発根植物体から寒天を
除去する方法として、機械的に寒天を除去し水洗すると
いう方法がとられているが、この操作では、脆弱な根が
損傷を受けるばかりでなく強固に付着した微少な寒天ゲ
ルを完全に除去することが難しいため、生着率が低下す
る。更に、この寒天除去工程は労働集約的であり、コス
トアップの要因となる。
【0006】上記した問題点は、従来の固体培養に用い
られる寒天等のゲルの物性に起因している。即ち、寒天
はゾルーゲル転移温度を有していて、該転移温度より高
い温度では溶解状態即ちゾル状態を示し、該転移温度よ
り低い温度でゲル状態に変化する性質を有している。こ
の性質を利用して、ゾルーゲル転移温度以上のゾル状態
で植物体を寒天等に埋没し、温度を下げることによって
ゲル状に変化させたり、あるいは該転移温度より低い温
度でゲルを形成させ、該ゲルに植物体を挿入するなどの
方法によって固体培養が実施させてきた。
【0007】しかしながら、寒天のゲルの融解温度は非
常に高く、約90℃近辺である(山内愛造ら、高分子
One Point “機能性ゲル”P.29,共立出版)ため
に、植物体を溶解状態の寒天に埋没する際に、該植物体
は熱的損傷を受ける。また、育成あるいは再生した植物
体を寒天培地から回収する際には、温度をゾルーゲル転
移温度より高い温度に上げ、寒天をゾル状態に変化させ
る必要があるが、その際にも植物体は高温にさらされ非
常に大きな損傷を受ける。従って、従来の固体培養で
は、温度変化によって寒天フリーの状態で回収すること
は極めて困難であるため、上述したように機械的に寒天
を取り除く方法が実施されてきた。しかしながら、上述
したように、機械的な寒天除去方法においては、重大な
問題点が未解決のまま残されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、育成
あるいは再生した植物体を容易にかつ損傷なく回収する
ことが可能な植物体の育成あるいは再生用の支持体、お
よびこれを用いる植物体の育成あるいは再生方法を提供
することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は鋭意研究の結
果、乾燥時に特定範囲の大きさを有し、且つ架橋構造を
有するハイドロゲル粒子を植物体の育成あるいは再生用
の支持体として用いることが、上述した問題点の解消に
極めて効果的なことを見出した。
【0010】本発明の植物体の育成あるいは再生用支持
体は上記知見に基くものであり、より詳しくは、乾燥時
の大きさが0.1μm〜1cmの範囲にあり、且つ架橋
構造を有するハイドロゲル粒子からなることを特徴とす
るものである。
【0011】本発明によれば、更に、架橋したハイドロ
ゲル粒子の内部に、植物体の育成あるいは再生組織が侵
入しない程度の架橋構造を有する植物体の育成あるいは
再生用支持体が提供される。
【0012】本発明によれば、更に、マイクロビーズ
状、繊維状、フレーク状、スポンジ状、膜状、又は板状
(不定形)の形状を有するハイドロゲル粒子、あるいは
それらの混合物からなる植物体の育成あるいは再生用支
持体が提供される。
【0013】本発明によれば、更に、乾燥時の大きさが
0.1μm〜1cmの範囲にあり、且つ架橋構造を有す
るハイドロゲル粒子からなる支持体を、培養器内で所定
の培地で膨潤させ、流動性を減じゲル状態として植物体
を支持し、該植物体を育成又は再生する方法が提供され
る。
【0014】本発明によれば、更に、前記支持体を用い
て植物体を育成あるいは再生した後、該支持体に過剰の
水を加えて支持体の流動性を高め、前記植物体を回収す
る植物体の育成・再生方法が提供される。
【0015】上述した本発明の支持体は、乾燥時の大き
さが0.1μm〜1cmの範囲で架橋構造を有するハイ
ドロゲルの粒子が、水または培地中で膨潤し可逆的に体
積が増加する性質を利用したものである。ここに、「ハ
イドロゲル(ないしヒドロゲル)」とは、架橋された水
溶性または親水性の高分子化合物と、該高分子により支
持された分散液体たる水(または水を主成分とする液
体)とを少なくとも含むゲルをいう。
【0016】上述した本発明の支持体は、水溶性または
親水性の高分子化合物を架橋することにより、水溶液中
で吸水し膨潤はするものの溶解しないようにしたもので
あり、水溶性または親水性高分子化合物の種類、および
/又は架橋率等を変化させることによって上記支持体の
膨潤率を変えることができる。本発明においては、植物
体の育成あるいは再生組織は本発明のハイドロゲル粒子
の架橋網目構造中には侵入することができず、該組織が
上記ハイドロゲル粒子間の間隙に沿って生ずるように架
橋率を調整することが好ましい。本発明の支持体の育成
あるいは再生中の植物体の支持能力は、上記の膨潤率、
培養器(培養系)中の上記支持体と培地との容積比、上
記支持体の形状および大きさ等によって調整することが
可能である。
【0017】一方、上記支持体を用いて育成および再生
した植物体を該支持体から回収する場合には、例えば、
培養器内に過剰の水または培地を加えることによって、
培養器中の該支持体を希釈する(培地に対する支持体の
容積比を減少させる)ことにより、該支持体の植物体支
持能力を減少させ、植物体を支持体から容易に分離する
ことができる。
【0018】以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0019】(水溶性または親水性高分子化合物)本発
明の支持体を構成するハイドロゲルを与えるべき水溶性
または親水性高分子化合物としては、メチルセルロー
ス、デキストラン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロ
ピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビ
ニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルア
ミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリ
ルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリア
クリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、
ポリスチレンスルホン酸およびそれらの塩、ポリN,N
−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−
ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジ
メチルアミノプロピルアクリルアミドおよびそれらの塩
などがあげられる。
【0020】(架橋構造)上記高分子に架橋構造を付与
する方法としては、単量体を重合する際に架橋構造を導
入する方法と、単量体の重合終了後に架橋構造を導入す
る方法とがあるが、本発明ではいずれの方法も採用する
ことができる。
【0021】前者の方法は、上記水溶性または親水性高
分子化合物を与えるべき単量体と、二官能性単量体(又
は2つ以上の官能基を有する多官能性単量体)とを共重
合することによって行うことが好ましい。このような二
官能性単量体としては、例えば、N,N−メチレンビス
アクリルアミド、ヒドロキシエチルジメタクリレート、
ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0022】後者の方法においては、光、電子線、γ線
照射などのエネルギー供与により、分子間に架橋を形成
することが一般的である。
【0023】また、後者の方法は、水溶性又は親水性高
分子化合物中の官能基(例えば、アミノ基)と結合し得
る官能基(例えば、イソシアネート基)を分子内に複数
個有する多官能性分子を架橋剤として用いて、上記水溶
性又は親水性高分子化合物を架橋させることにより行う
ことも可能である。
【0024】(膨潤率)上述した本発明の支持体の膨潤
率は、常温(25℃)で、乾燥時の体積を1とした場合
に、該支持体の水又は培地中での平衡膨潤体積が1.1
〜1000、更には5〜100となることが好ましい。
ここで「平衡膨潤体積」とは、本発明支持体を過剰量の
水中で少なくとも3日以上浸し、支持体の膨潤が平衡に
達した後の該支持体の体積をいう(これについては、例
えば文献 .Tanaka 、et al.,Phys.Rev.Lett.,55,2455
(1985)を参照することができる)。
【0025】上述したように本発明支持体の膨潤率は、
その架橋構造、特に架橋密度に依存し、架橋密度が低い
方が膨潤率が大きくなる。その架橋密度は、前者の方法
(単量体の重合の際に架橋構造を導入)では、例えば二
官能性単量体の共重合比を変えることで、後者の方法
(単量体の重合終了後に架橋構造を導入)では、例えば
光、電子線、γ線などの照射量を変えることで、任意に
制御できる。
【0026】本発明において好ましい架橋密度の範囲
は、全単量体に対する分岐点のモル比で、約0.2mo
l%〜約10mol%、より好ましくは.0.5mol
%〜4mol%である。あるいは前者の方法で架橋構造
を導入する場合、好ましい架橋密度の範囲は、二官能性
単量体の全単量体(該二官能性単量体自体を含む)に対
する共重合重量比で、約0.3wt%〜約3wt%(更
には約0.5wt%〜約2wt%)の範囲である。上記
した「好ましい架橋密度」の範囲を上回る場合には、本
発明の支持体の膨潤率が小さくなるため、植物体を支持
するために多量の支持体が必要となり、植物体を育成あ
るいは再生する際に必要な培地量が充分に補給されにく
くなる。一方、上記「好ましい架橋密度」の範囲を下回
る場合には、本発明支持体の機械的強度が弱くなり、該
支持体の分散液が、ゲル状態において植物体を支持する
ための充分な強度を維持できにくくなる。
【0027】上述したような架橋密度(全単量体に対す
る分岐点のモル比)は、例えば、13C−NMR(核磁気
共鳴吸収)測定またはIR(赤外吸収スペクトル)測定
または元素分析によって定量することが可能である。
【0028】本発明の支持体を構成する粒子の形状は特
に限定されず、育成・再生する植物体の種類、大きさに
応じて適宜、選択することが可能である。より具体的に
は、例えば、上記粒子の形状は、マイクロビーズ状、繊
維状、フレーク状、スポンジ状、膜状、板状(不定形)
など種々の形状でありうる。
【0029】本発明の支持体を構成するハイドロゲル粒
子の大きさ(乾燥時の大きさ)は、0.1μm〜1cm
の範囲内で、育成・再生する植物体の種類、大きさによ
って適宜、選択することが可能であるが、乾燥時の大き
さが1μm〜1mm(更には10μm〜200μm)の
範囲であることが好ましい。
【0030】本発明の支持体において、上記「乾燥時の
大きさ」とは、該支持体を構成する各ハイドロゲル粒子
の最大径(最大寸法)の平均値(少なくとも10個以上
計測した値の平均値)をいう。より具体的には、例え
ば、上記ハイドロゲル粒子の各形状に対応して、以下の
サイズを「乾燥時の大きさ」として用いることができ
る。
【0031】マイクロビーズ状:粒径(平均粒径) 繊維状:各繊維状片の長さの平均値 フレーク状、スポンジ状、膜状、板状:各片の最大寸法
の平均値 本発明においては、上記「最大径の平均値」に代えて、
各片の体積の平均値(少なくとも10個以上計測した値
の平均値)と等しい体積を有する「球」の直径を、ハイ
ドロゲル粒子の「乾燥時の大きさ」として用いてもよ
い。
【0032】(成型方法)本発明の支持体を成型する方
法としては、通常の高分子化合物の成型法を用いること
ができる。
【0033】ハイドロゲル粒子の形状がマイクロビーズ
状あるいは粒子状の場合には、乳化重合法、懸濁重合
法、沈殿重合法などの重合法が好ましく用いられる。ハ
イドロゲル粒子に架橋構造を付与する方法としては、上
記したように、単量体を重合する際に二官能性単量体を
用いて架橋する方法、および重合が終了し、形状が付与
された後に光、電子線、γ線照射などにより架橋する方
法等を適宜用いることができる。
【0034】特に、マイクロビーズ状の架橋された水溶
性または親水性高分子化合物を、水溶性単量体および水
溶性二官能性単量体から合成する場合、逆相懸濁重合法
が好適に用いられる。
【0035】このような逆相懸濁重合法においては、分
散媒として、単量体及び生成高分子を溶解しない有機溶
媒が好ましく、例えば、ヘキサン等の飽和炭化水素が好
ましく用いられる。また、懸濁助剤として界面活性剤
(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル等の非イオン性界
面活性剤)を上記有機溶媒と共に用いてもよい。得られ
るマイクロビーズの粒径は、添加する界面活性剤の種
類、量、あるいは撹拌速度などにより制御することが可
能である。重合開始剤としては、水溶性開始剤、非水溶
性開始剤のいずれも使用し得る。
【0036】本発明の支持体を繊維状、フレーク状、ス
ポンジ状、粒子状などに成型する場合は、例えば、水溶
性高分子化合物の水溶液を、口金を用いて水を混合しな
い有機溶媒中に押し出すことによって実施できる。この
ような成型方法を用いる場合には、架橋構造の付与は、
成型終了時に光、電子線、γ線照射等を用いることによ
り実施できる。
【0037】本発明の支持体を板状、又は膜状に成型す
る場合には、例えば、上記水溶性高分子化合物を有機溶
媒あるいは水に溶解し、ソルベントキャスティング法に
より実施することができる。このような成型方法を用い
る場合も、架橋構造の付与は光、電子線、γ線照射等を
用いることによって実施できる。
【0038】更には、上述した種々の成型方法によって
得られた各種の形状の成型物を機械的な方法などで破砕
し、所望の大きさの支持体に成型することも可能であ
る。
【0039】(培地)本発明においては、上述したよう
な高分子化合物を含む支持体と組み合わせて用いるべき
培地ないし培養液として、寒天を実質的に含まない公知
の(植物体の育成及び/又は再生用)培地ないし培養液
を特に制限なく使用することができる。
【0040】本発明において、上記架橋構造を有する水
溶性または親水性高分子化合物からなる支持体の植物体
培養用培地中の分散濃度は、該植物体の種類および形状
によって適宜選択することが可能であるが、通常、0.
1〜30wt%、更には1〜10wt%の濃度が好まし
く用いられる。
【0041】(植物体の育成・再生方法)上記した高分
子化合物支持体を用いて植物体を育成あるいは再生する
方法の好ましい一例を以下に記載する。
【0042】先ず、上述したような高分子化合物支持体
を所望の培地中に均一に分散する。次に、該高分子化合
物支持体の培地分散液中に、葉、茎、根、花弁、葯(花
粉)、幼植物などからなる植物体、あるいは上記植物体
から再生したカルス、毛状根あるいはプロトプラストな
どからなる植物体を混合分散させる。該支持体は培地を
吸収し、体積が増加して流動性が著しく低下しゲル状態
に変化するため、上記植物体をゲル中に保持し、該植物
体の育成あるいは再生を行うことができる。
【0043】一方、該ゲル中で育成あるいは再生した植
物体の回収あるいは継代は、該支持体のゲル上に過剰の
水または培地(好ましくは、膨潤ゲル重量に対して重量
比で1.1〜100倍、より好ましくは1.5〜10倍
の水または培地)を添加し、該支持体を再び分散し液化
することによって、容易に実施することができる。
【0044】本発明の高分子化合物支持体の植物体の育
成・再生方法への応用のうち特に効果的なものは、植物
体の発根過程への応用である。
【0045】より具体的には、例えば、本発明の高分子
化合物支持体を所望の培地中に均一に分散させた後、架
橋高分子の吸水・膨潤に基づき均一にゲル化させる。該
ゲル上に、葉、茎、根、花弁、葯(花粉)、幼植物など
からなる植物体をのせ、あるいは差し込み、該ゲル状態
を維持した状態で培養し、ゲル中に発根させる。発根し
た植物体を上記ゲルから回収あるいは継代する際には、
該ゲル上に過剰の水または培地を添加し、該支持体を再
び分散状態にして上記ゲルを液化することにより、得ら
れた支持体の分散液から容易にかつ無傷で発根植物を分
離することができる。ここに、本発明の高分子化合物支
持体においては、上述したように液体−ゲル転移を適宜
にコントロール可能なことが、上記した従来の寒天ゲル
に比較して重要な特徴となる。
【0046】従来、発根過程終了後の植物体を寒天ゲル
から分離する際の操作が、その後の植物体の育成率の著
しい低下の大きな原因であったが、上述したように、本
発明の高分子化合物支持体はこのような問題点を完全に
解消することができる。
【0047】また、上記ゲル培地中に不足した栄養素の
補給、あるいは育成あるいは再生を妨害するような老廃
物の除去も、上記した方法により古いゲルを液化し、除
去した後、植物体を新しい培地に移植することにより実
施可能である。本発明においては、このようにして容易
にゲル培養を続行することができる。
【0048】また、本発明の高分子化合物支持体は、植
物体を上記の方法で育成・再生し、回収または継代した
後に、支持体の分散液体から支持体を(遠心分離などの
方法によって)容易に回収し、洗浄し再使用することも
可能である。
【0049】以下に実施例を示し、本発明を更に具体的
に説明するが、本発明の範囲は特許請求の範囲の項の記
載により定まるものであり、以下の実施例により制限を
受けるものではない。
【0050】
【実施例】実施例1 (マイクロビーズ状支持体の合成)アクリルアミド7.
5g、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.1
g、および過硫酸アンモニウム.0.1gを蒸留水10
0ml(ミリリットル)に溶解した。この水溶液を、ヘ
キサン1000mlにソルビタンモノオレエート(SP
AN80、関東化学(株)製)10gを溶解した溶液中
に加え、窒素気流下で激しく撹拌して、懸濁させた後、
N,N,N´,N´−テトラメチルエチレンジアミン3
mlを加えて、室温で4時間重合させた。反応生成物か
ら水相を分離した後、重合生成物をヘキサン500ml
で3回洗浄した。次いで、この重合生成物に蒸留水10
00mlを加えて撹拌した後、静置してマイクロビーズ
状担体を沈降させ、上清を捨てた。この水洗操作を3回
繰り返した後、真空乾燥して本発明のマイクロビーズ状
支持体7gを得た。
【0051】蒸留水中における上記支持体を光学顕微鏡
下で観察したところ、直径約20〜200μmの球形微
粒子が観察された。
【0052】実施例2 カーネーションの側芽組織を切り出し、洗剤と水道水で
洗浄した後、70%エタノール水溶液に30秒間浸漬
し、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に7分間浸漬する
ことによって減菌した後、減菌蒸留水によって数回洗浄
した。このようにして得られた側芽組織を外植体とし
て、寒天0.8%含有のMS培地(ムラシゲ−スクーグ
植物培地、コスモバイオ社製)上に植え、25℃で2週
間培養してシュートを形成させた後、該シュートを節ご
とに切断した。
【0053】次いで、実施例1で作製した本発明のマイ
クロビーズ状支持体(A)0.5gを、1−ナフタリン
酢酸を0.1mg/l、シュクロースを10g/lの濃
度で含有する10mlのMS培地に分散させ、内径2c
m、長さ10cmのガラス製チューブ(培養容器)に注
入し、オートクレーブ処理(121℃、20分間)する
ことにより減菌すると同時に、該支持体を上記MS培地
によって膨潤、ゲル化させた。
【0054】このようにして得られたゲル上に、上記の
節ごとに切断されたカーネーションのシュートを挿芽し
たところ、該シュートは上記ゲル中で良好に支持され
た。更に、この状態で3週間培養したところ、該ゲル内
に発根が認められた。
【0055】次に、上記のように発根した植物体を順化
のため培養器から回収するに際し、該発根植物体の培養
器中に15mlの水を添加したところ、直ちに上記マイ
クロビーズ状の支持体は分散して、分散培地はゲル状態
から液体に変化したため、該発根植物体を容易に培養器
外に取り出すことができた。上記の回収工程に於て、根
に付着した支持体(A)は容易に水洗いによって除去す
ることが可能であり、また根などの損傷は全く認められ
ず、作業も非常に容易であった。
【0056】比較例1 通常の方法で、寒天を8g/l、1−ナフタリン酢酸を
0.1mg/l、およびシュクロースを10g/lの濃
度で含有するMS培地を作製し、オートクレーブ処理に
より減菌を行った。次いで、該培地を約23℃に冷却し
ゲル化させた後、該ゲル上に、実施例2で用いた節ごと
に切断されたカーネーションのシュートを挿芽し、実施
例2と同様の方法で3週間培養した。培養3週間後にゲ
ル内に発根が認められた。
【0057】上記発根植物体をゲルから分離するため
に、ゲルが付着した状態で該植物体を培養器から取り出
し、常法に従って水中で機械的に振盪したが、毛状の根
に付着したゲルは除去することが困難であり、手によっ
て該ゲルを除去する操作で毛状の根がちぎれてしまっ
た。また手による洗浄は、非常に繁雑であった。
【0058】
【発明の効果】上述したように本発明によれば、乾燥時
の大きさが0.1μm〜1cmの範囲にあり、且つ架橋
構造を有するハイドロゲル粒子からなる植物体の育成又
は再生用支持体が提供される。上記した特定の大きさの
架橋ハイドロゲルの粒子は、水または培地中で膨潤し可
逆的に体積が増加してゲルを形成する性質を有するた
め、該ゲル中で種々の植物体を支持し、育成ないし再生
することができる。一方、該ゲルに過剰の水または培地
を加え、培地に対する支持体の容積比を減少させること
により、該支持体の植物体支持能力を減少させ、上記植
物体を支持体から容易に分離することができる。
【0059】上述したように、本発明の植物体の育成・
再生用支持体を用いれば、ゲル中への植物体の包埋およ
びゲルからの植物体の回収等が、水または培地に対する
該支持体の容積比の調整によって、簡便に且つ植物体に
全く損傷を与えることなく実施することができる。した
がって本発明によれば、従来の寒天などを用いたゲル培
養法の問題点を完全に解消することができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 乾燥時の大きさが0.1μm〜1cmの
    範囲にあり、且つ架橋構造を有するハイドロゲル粒子か
    らなることを特徴とする植物体の育成又は再生用支持
    体。
  2. 【請求項2】 架橋構造を有するハイドロゲル粒子の内
    部に植物体の育成あるいは再生組織が侵入しない請求項
    1記載の植物体の育成又は再生用支持体。
  3. 【請求項3】 前記ハイドロゲル粒子が、マイクロビー
    ズ状、繊維状、フレーク状、スポンジ状、膜状、又は板
    状(不定形)の形状を有する請求項1記載の植物体の育
    成又は再生用支持体。
  4. 【請求項4】 乾燥時の大きさが0.1μm〜1cmの
    範囲にあり、且つ架橋構造を有するハイドロゲル粒子か
    らなる支持体を、培養器内で所定の培地で膨潤させ、流
    動性を減じゲル状態として植物体を支持し、該植物体を
    育成又は再生する方法。
  5. 【請求項5】 前記支持体を用いて植物体を育成あるい
    は再生した後、該支持体に過剰の水を加えて支持体の流
    動性を高め、前記植物体を回収する請求項4記載の植物
    体の育成・再生方法。
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