JPH06264204A - ゴルフドライバーヘッド用チタン合金板の製造方法 - Google Patents

ゴルフドライバーヘッド用チタン合金板の製造方法

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JPH06264204A
JPH06264204A JP5077508A JP7750893A JPH06264204A JP H06264204 A JPH06264204 A JP H06264204A JP 5077508 A JP5077508 A JP 5077508A JP 7750893 A JP7750893 A JP 7750893A JP H06264204 A JPH06264204 A JP H06264204A
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titanium
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哲馬 倉智
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伊勢男 中村
Sukehiro Mitsuyoshi
裕広 光吉
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ゴルフドライバーヘッド用の特定組成のチタ
ン合金薄板の製造に際して、巻き癖問題を生じることな
く、平坦性を維持しそして脱水素を行うことのできる方
法の確立。 【構成】 10重量%から25重量%未満のバナジウム
を含み、随意的に2〜5重量%アルミニウム、2〜5重
量%クロム及び2〜4重量%錫の内から選択される1種
又は2種以上を更に含みそして残部チタンおよび不可避
的不純物からなるゴルフドライバーヘッド用チタン合金
の冷間圧延コイルを製造し、該チタン合金冷間圧延コイ
ルをチタン合金板に切断した後、板の状態で溶体化及び
脱水素のための熱処理をチタン合金の変態点以上で85
0℃以下の温度で行う。130ppm以下まで脱水素す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン合金系ゴルフド
ライバーヘッドを安価に製造するために必要とされる特
定組成範囲のチタン合金板を製造する方法に関するもの
である。製造されたチタン合金板からプレス成形および
溶接により優れた性能のゴルフドライバーヘッドを作製
することができる。
【0002】
【従来の技術】ゴルフドライバーヘッドは、当初パーシ
モン(柿の木)等で作られていたが、近年は、中空ヘッ
ドが主流となり、ステンレス鋼などを用いた金属ヘッド
が注目されてきた。この金属ヘッドは、パーシモンに比
べ、耐久性があり、しかも、飛距離もでることから、将
来さらに需要が伸びてゆくと考えられる。現在の所、金
属ヘッドの素材は、やはりステンレス鋼が主流である
が、最近チタンやチタン合金を素材とするヘッドが登場
してきた。チタン合金は、ステンレス鋼に比べ軽くしか
も強度が高いため、設計の自由度が上がり、一般にはス
テンレス鋼製ヘッドに比べて一層大きなヘッドを作製す
ることが可能である。これにより、スイートスポットが
広がり、安定した打球が得られるようになる。
【0003】現在までのところ、チタン合金の中でドラ
イバーヘッド用材料として使用されているものは、Ti
−6Al−4V合金(以下、64ATと呼ぶ)およびT
i−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金である。6
4ATは、チタン合金の中で様々の分野で最も多く使用
されており、特に航空機用材料としての実績が高い。し
かしながら、この合金は、冷間加工ができないため、ヘ
ッド用材料として一般に要求される1〜5mmの板を製
造するには、非常に多くの労力を要し、多大のコストを
必要とする。そのため、現実には、例えば特開平3−2
30845に記載されているように、鋳造により64A
T製ヘッドを作製している。しかしこれも、チタンは酸
化し易いため大気中で鋳造を行うことができず、さらに
鋳型と反応しやすいため、非常に高度な技術を必要と
し、結果的にコスト高となる。また、鋳造品は、圧延上
がり材に比べ組織コントロールができないため、強度的
にも弱くなる欠点を有する。これに対し、Ti−4.5
Al−3V−2Fe−2Mo合金は、超塑性加工ができ
るため、鋳造品より高強度が得られ易い。しかしなが
ら、これとても、超塑性加工用に特殊な装置を必要と
し、さらに超塑性加工するのに多くの時間を要するため
大量生産には不向きである。
【0004】チタン系材料製中空ヘッドを効率よく大量
に生産するためには、ステンレス鋼製ヘッドを生産する
場合と同様に、冷間圧延されそして目的の板厚および組
織を持った板またはコイルを冷間または温間プレスによ
り目的形状に打ち抜き加工し、その後加工した部品同士
を溶接にて組み立てるのが最適である。このような工程
に供しうるチタン材料は、残念ながら純チタンを除き今
まで見いだされていなかった。純チタンは、冷間圧延が
可能で、しかも冷間プレスも容易なため、中空ヘッド用
材料としては製造面では問題なかったが、その耐力があ
まり高くないため、ヘッド組立後の強度に重大な問題が
あった。
【0005】こうした中で、本件出願人は、新しいゴル
フドライバーヘッド用チタン合金として、10重量%か
ら25重量%未満のバナジウムを含み、随意的に2〜5
重量%アルミニウム、2〜5重量%クロムおよび2〜4
重量%錫の内から選択される1種又は2種以上を更に含
み、そして残部チタンおよび不可避的不純物からなるチ
タン合金の開発に成功した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ゴルフドライバーヘッ
ドを安価に製造するためには、上述したように、従来の
ステンレス鋼のヘッドの製造と同様に、1〜4mm厚み
の薄板をプレスで打ち抜き形状を出し、これを溶接でつ
なぎ合わせる方法が最も適切と考えられる。こうした冷
間圧延可能なニアベータチタン合金もしくはベータチタ
ン合金の薄板の量産での製造方法はあまり明らかにされ
ていないが、例えば1983年出版の「Beta Titanium
Alloys in the 80's」には、次のようなこの系のチタン
合金の薄板の製造方法が記載されている: (1)公称10.2〜15.2cm(4〜6インチ)厚
さのスラブに鍛造しそして必要に応じコンディショニン
グする。 (2)スラブを公称3.0〜4.6mm(0.12〜
0.18インチ)厚さの熱延バンドに熱間圧延する。 (3)必要に応じて冷間圧延矯正、大気焼鈍、およびブ
ラスティング、酸洗い、グライディング並びにトリミン
グを行う。 (4)所望のゲージ厚さに冷間圧延する(これは最終ゲ
ージ厚さに依存して中間連続真空焼鈍を組込むことがで
きる。60〜70%範囲における冷間圧延による減厚が
可能である。)、 (5)1.8mm(0.070インチ)未満のゲージ厚
さのものに対しては連続真空焼鈍を行う。もっと厚いゲ
ージ厚さのものに対しては、水素を減じるためにバッチ
式での真空焼鈍と、続いての大気溶体化焼鈍、グライデ
ィングおよび酸洗いが必要である。 (6)所定寸法に切断し、検査しそして出荷する。 要するに、チタン合金薄板は、所定の組成のインゴット
を作製後、鍛造および熱間圧延によって3〜4.6mm
のコイルを製造し、このコイルを所定の厚さまで冷間圧
延し、コイルを連続真空焼鈍或いはバッチ式での真空焼
鈍と続いての大気溶体化焼鈍を実施し、その後板に切断
することにより製造される。
【0007】このような従来から知られる冷間圧延可能
なニアベータチタン合金もしくはベータチタン合金の薄
板製造方法を本発明で使用する上記のチタン合金(以
下、単に本合金という)に適用すると、重大な問題が生
じることが判明した。まず第1に、本チタン合金をコイ
ル状態で溶体化処理すると、非常に強い巻き癖(コイル
癖)が発生することが判明した。純チタンの場合にも巻
き癖は発生するが、これはレベラーやスキンパスのよう
な軽い加工を加えることにより無くすことができる。し
かし、本発明で使用する合金は耐力が高く、しかもヤン
グ率が比較的低いためにスプリングバックが非常に強
く、レベラーやスキンパスのような軽い加工では巻き癖
を取ることは不可能であることがわかった。強加工を加
えれば、巻き癖を少なくすることは可能となるが、加工
硬化によりプレス成形性が悪くなり、ゴルフドライバー
ヘッド用の板材には不適当となる。
【0008】溶体化処理をコイルに巻かない連続ライン
で行うと、上記の巻き癖の問題は解決されるが、新たな
問題が生じることが判明した。本合金は水素吸収を起こ
し易く、特に酸洗い時に著しい水素吸収を起こすことが
認められた。純チタンなどの水素吸収は脆化をもたらす
ために問題となるが、本チタン合金では水素脆化がほと
んど起きないため、水素吸収は特に問題にならないと当
初考えられていた。ところが、実際には、吸収された水
素はプレスした板材を継ぎ合わせる溶接時に材料から放
出され、小さな水素爆発を生じ、溶接を不可能とするこ
とが判明した。ゴルフドライバーのヘッドは打撃時に非
常に大きな力が加わると同時に、これが何千回と繰り返
されるために、特に溶接部には高い信頼性が要求され
る。そのためには、水素濃度は130ppm以下とする
必要がある。本合金は、必ず熱間圧延工程を経由し、そ
の際生じる酸化スケールやアルファーケースを削除する
ために酸洗いラインに通板する必要がある。この際、本
合金の水素濃度は数百ppmまで増加し、それ故130
ppm以下の目標水素濃度達成するためには脱水素工程
を組み込むことが必須となる。本合金の場合、脱水素は
真空中もしくはアルゴン減圧下で加熱処理することによ
ってのみ行うことができる。しかし、連続ラインの場合
には、十分な脱水素が行えないことが明らかとなった。
まず、大気中での連続焼鈍は、脱水素が行い得ないばか
りか、新たに酸化スケールが形成され、再び酸洗いライ
ンに通板しなければならず、まったく採用の余地はな
い。アルゴン雰囲気中では、減圧化すれば水素を抜くこ
とはできるが、その速度は遅く、連続焼鈍のような短時
間ではここで希望する130ppm以下の水素濃度まで
脱水素することは難しい。上記従来法に提唱された連続
真空焼鈍ラインを使用する方法も考えられるが、このラ
インで高真空を得ることは難しく、本合金の変態点以上
の高温で処理すると一般には変色(軽い酸化)を生じて
しまい、そのため再度酸洗いをする必要が生じる上に、
連続真空焼鈍ラインは設備および運転コストが莫大なも
のとなり、実際上実用価値はない。
【0009】本発明の課題は、ゴルフドライバーヘッド
用の本チタン合金薄板の製造に際して、巻き癖問題を生
じることなく、平坦性を維持しそして充分低い水準まで
脱水素を行うことのできる方法を確立することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するべく、製造工程の全面的検討の結果、冷間圧
延後熱処理は行わず、すべて板切断し、そして板の状態
で溶体化焼鈍と脱水素を兼用する最終熱処理を行うこと
により、ゴルフドライバーヘッド用チタン合金薄板に特
に要求される(1)溶体化が行われていること、(2)
平坦度があることそして(3)130ppm以下にまで
脱水素がなされていることという要件を満足する薄板を
製造することができることを確認するに至った。
【0011】この知見に基づいて、本発明は、10重量
%から25重量%未満のバナジウムを含み、随意的に2
〜5重量%アルミニウム、2〜5重量%クロムおよび2
〜4重量%錫の内から選択される1種又は2種以上を更
に含みそして残部チタンおよび不可避的不純物からなる
ゴルフドライバーヘッド用チタン合金の冷間圧延コイル
を製造し、該チタン合金冷間圧延コイルをチタン合金板
に切断した後、板の状態で溶体化および脱水素のための
熱処理を行うことを特徴とするゴルフドライバーヘッド
用チタン合金板の製造方法を提供する。脱水素は、水素
濃度が130ppm以下となるよう行うことが好まし
い。熱処理は前記チタン合金の変態点以上で850℃以
下の温度で行うことが好ましい。
【0012】冷間圧延に際して付着した油を除去するた
めに、チタン合金板の熱処理のための昇温途中で該チタ
ン合金板を200〜400℃の温度範囲で30分以上保
持して冷間圧延に際して付着した油を除去することがで
きる。また、熱処理に際しての板同志の密着化を防止す
るために、チタン合金板の熱処理に際して板と板との間
にスペーサをを挿入することが推奨される。
【0013】
【作用】本合金の基礎となる、10重量%から25重量
%未満のVを含むTi合金は冷間圧延可能なチタン合金
である。ここで、バナジウム添加量の下限を10重量%
としたのは、10重量%未満では、良好な冷間圧延性が
得られないためである。さらに、バナジウム添加量の上
限を25重量%未満としたのは、これ以上添加しても冷
間圧延性の改善は見られず、逆に、強度が低下する傾向
が見受けられるためである。また、バナジウムの価格は
チタンよりかなり高いため、コスト面からバナジウムの
添加量は出来るだけ抑えるのが好ましい。好ましいバナ
ジウム含有量は13〜20重量%である。
【0014】バナジウムの冷間加工性を調査した試験結
果を示しておく。チタンにバナジウムを種々の量添加
し、アーク溶解にてインゴットを作製後、900℃で熱
間圧延し、スケール除去後、830℃(不活性雰囲気
中)に加熱後水焼入れした供試材(酸素濃度は0.1〜
0.15重量%の範囲内であり、不純物としてFe、
H、N、C等を多少含む)の冷間加工性を調べた結果を
表1に示す。
【0015】
【表1】
【0016】V濃度が低いチタン合金は、冷間圧延性が
悪く、かなりの耳割れが発生する。V濃度が10重量%
を超えた当たりから、冷間圧延性が良くなるが、V添加
量を25重量%以上に多くしてもその傾向は変わらなく
なる。
【0017】酸素が0.25重量%を超えると伸びが極
端に低下し始め、冷間圧延性、冷間プレス性が非常に悪
くなる。
【0018】以上の合金でもヘッド用材料として十分使
用できるが、クロム、アルミニウム或いは錫の1種又は
2種以上を添加することにより、さらに幾つかの点で改
善を図ることができる。
【0019】Ti−V合金にクロムを添加すると、伸び
がさらに増すことが確認された。これにより特に冷間プ
レス性が著しく良くなる。ただし、その効果を得るため
にはクロムを2重量%以上添加する必要があり、また5
重量%より多く添加すると脆化する傾向が現れるため、
上限を5重量%とする必要がある。
【0020】例えば、Ti−18%Vに種々の濃度のC
rを添加し、アーク溶解にてインゴットを作製後、90
0℃で熱間圧延し、スケール除去後、800℃(不活性
雰囲気中)に加熱後水焼入れした供試材の引張試験によ
る伸び(全伸び)の変化を図1に示す。明らかに、Cr
を添加することにより伸びが増していることが確認され
る。その効果は、特にCr濃度が2%以上から確認さ
れ、5%付近まで、顕著に伸びが上昇している。5%を
超えると伸びはあまり上昇せず、逆に熱間、冷間での変
形抵抗が増し、また耳割れも多くなってくる。以上か
ら、Crの添加量の下限は2重量%としそしてその上限
を5重量%とする。このCr添加により冷間プレス性が
著しく良くなる。
【0021】さらに、アルミニウムをTi−V系合金に
添加するのは主として経済的効果による。つまり、バナ
ジウムの単体金属はその価格が非常に高く、これを添加
材として使用すると、合金価格は非常に高くなってしま
う。一方、Al−V母合金を添加材として使用できる場
合には、この母合金がバナジウム単体金属よりかなり安
価であるため、結果的にTi−V−Al合金はより安価
な原料代ですむことになる。また、Ti−V系合金はあ
る温度領域で時効硬化する現象を示すが、これにアルミ
ニウムを添加すると時効硬化を促し、強度上昇に寄与す
る。ここで、アルミニウム添加量の下限を2重量%とし
たのは、これ以下では、現在入手可能な80%V−20
%Al母合金を使用しても、非常に多くのV金属単体を
添加せねばならずコストメリットが消えてしまうためで
ある。また、アルミニウム添加量の上限を5重量%とし
たのは、これより上では、冷間加工性が難しくなるため
である。
【0022】一例として、Ti−17%V−3%Crに
種々の濃度のAlを添加し、アーク溶解にてインゴット
を作製後、900℃で熱間圧延し、スケール除去後、8
00℃(不活性雰囲気中)に加熱後水焼入れした供試材
(溶体化上がり材)の引張試験による機械的特性の変化
を図2に示す。また、この供試材を時効処理(500℃
×8時間)した後の時効硬化材の機械的特性の変化を図
3に示す。
【0023】溶体化上がり材の場合の図2においては、
Alの添加は伸びの向上に若干寄与しているだけであ
る。顕著なのは、時効硬化材についての図3におけるA
lの効果である。明らかに、Alを添加することにより
強度の上昇が起きている。ゴルフ用ヘッドでは、強度が
要求されるため、時効処理を行う場合があるが、Alの
添加量を適切にコントロールすることにより、延性があ
りしかも高い強度が得られる材料が得られる。
【0024】最後に、Snを添加する効果を述べる。S
nは機械的特性には影響をあまり与えないが、Ti−V
系合金を時効処理するときにでき易い脆いω相の析出を
抑える効果がある。この効果を得るためには、2重量%
以上のSnを添加する必要があり、他方4重量%より多
く添加しても、脆いω相の析出を抑える効果は変わら
ず、比重が増す分比強度が落ち、ドライバーヘッド用材
料として不適当となる傾向があるため、上限を4重量%
とした。
【0025】前記したように、ドライバーヘッドを効率
よく作製するためには、冷間または温間プレスにより目
的形状に加工し、その部品を溶接にて組み立てるのが最
適である。この工程では、必ず溶接が含まれるが、ここ
で合金中に多量の水素を含んでいると、溶接の際、水素
が小爆発し、良好な溶接ができないことが判明した。既
に述べたように、本願発明合金は、純チタン以上に水素
を吸収し易く、特に酸洗工程で多量の水素を吸収する。
そこで、水素濃度を変化させ溶接に与える影響を調査し
たところ、130ppm以下であれば溶接が可能である
ことが判明した。一方、水素濃度の変化は、ゴルフドラ
イバーヘッドの特性に微妙な影響を与える。これは、水
素濃度が低下するに従いヤング率が若干下がることや、
時効温度に影響を与えているものと考えられる。いずれ
にしても、水素濃度は下限を0.002重量%そして上
限を0.013重量%とするのがよく、好ましくは0.
003〜0.009重量%の範囲において良好な溶接部
が得られ一定レベルの打球感が体感できる。
【0026】例えば、Ti−15%V−4%Cr−3A
l−3Sn合金の水素濃度を変化させた材料を用い、A
r雰囲気中でTIG溶接を実施した結果を表2に示す。
水素濃度が低い間はTIG溶接は問題なく実施できた
が、水素濃度が0.013%から水素の反応と思われる
小さな火花が観察され始め、0.05%以上では、水素
の小爆発により溶接部分が不完全となった。水素濃度が
0.1%を超えると、ほとんど溶接できないことが判明
した。これら結果より、水素濃度の上限を0.013%
とする。
【0027】
【表2】
【0028】以上、組成範囲を中心に述べてきたが、組
織もまた重要な因子である。本合金をゴルフドライバー
ヘッド用材料として用いる場合、最初に冷間プレスが行
われるため、β単一相でしかも等軸な組織を有していな
いと、割れが発生する。一般には、本材料をβ変態点以
上に保持した後、水冷もしくは空冷することにより加工
性の良いβ単一相でしかも等軸な組織を得ることができ
る。例えば、Ti−15%V−4%Cr−3%Al−3
%Sn−0.15%O合金を溶体化処理した板(結晶粒
径100μm)とそれを時効処理(500℃×8時間)
した板を冷間プレスしたところ、時効処理した板は全部
割れが発生した。これよりヘッド用材料としては、β単
一相を有しそして等軸な組織であることが好ましいこと
がわかる。但し、適切な組成のものを時効処理をすれ
ば、割れを生じることなく強度上昇等の利益を得ること
ができる。
【0029】本発明のゴルフドライバーヘッド用薄板の
製造に際しては、所要組成の合金原料をアーク溶解にて
インゴットを作製後、鍛造および熱間圧延によって3〜
5mmのコイルを製造し、このコイルを酸洗いし、冷間
圧延により1〜4mmの厚さの冷間圧延コイルが製造さ
れる。脱脂後、コイルは板切断され、板の状態で溶体化
および脱水素のための最終熱処理が真空炉或いはアルゴ
ン減圧下の炉において実施される。
【0030】熱処理は、変態点以上の温度で行われる
が、850℃以下とすることが好ましい。熱処理温度を
850℃を超える高い温度で行うと、材料が変色した
り、結晶粒径が大きくなり過ぎたり、平坦度が悪くなり
やすいからである。
【0031】本合金は冷間圧延の際に油が焼きつきやす
く、これは通常の脱脂では取り除くことができない。油
のついたまま、上記のような熱処理を行うと、焼きつい
た油が材料表面から滲み出し、チタン表面を変色させる
ことがある。詳細に観察した結果、油は200℃以上で
放出され始め、400℃以下ならばチタン表面を変色さ
せないことが確認された。そこで、熱処理温度への昇温
途中でチタン合金板温度を200〜400℃の範囲の温
度で保持し、付着した油を揮発化させて除去する工程を
組み込むのが有益である。付着した油を揮発除去するに
は、少なくとも30分、好ましくは1時間以上保持する
ことが必要である。
【0032】熱処理は、通例、炉内に板同志を重ねてを
山積みした状態で行われる。接触部に荷重が加わった場
合、板同志が密着しやすい。これを防止するために、板
と板との間に、スペーサーを挿入することが推奨され
る。スペーサーとしては、例えばステンレス鋼製の金網
の使用が好ましい。金網の代わりに板材を挿入すると、
通気性が悪くなり、変色の原因となったりまた溶体化、
脱水素が充分に行われない事態が生じることがある。
【0033】熱処理後、チタン合金板は、空冷、水焼き
入れ、アルゴンガス急冷等により溶体化を終了する。そ
の後、時効処理を行うこともできる。冷間もしくは温間
プレスにより必要な形状を備えた部品を作製し、それら
を溶接により接合させてヘッドが作製される。本発明に
より、こうした作業は容易にそして信頼性をもって実施
することができる。ゴルフドライバーは、得られたヘッ
ドをシャフトに組みつけてゴルフドライバーに組立てる
ことにより作製される。
【0034】試作品を使用してヘッドの最大の特徴であ
るゴルフボールの打球特性について試験した。Ti−1
5%V−3.1%Cr−3.6%Al−3Sn−0.1
1%O合金(不純物として0.1%Fe,0.007%
C,0.011%N,0.004%Hを含む)をアーク
溶解にて製造後、熱間および冷間圧延および切断を行い
1〜3mmの板を作製した。これを800℃に加熱後、
空冷にて冷却した板を用い、冷間プレスおよび溶接によ
りヘッドを作製後、ゴルフドライバーに組立て試打し
た。その結果、従来のチタン合金製ゴルフドライバーよ
り約1割飛距離が伸びた。また、スイートスポットも格
段に広くなった。
【0035】このように非常によい特性が得られたの
は、高い比強度および溶接組立により理想に近いヘッド
形状ができたこと、およびヤング率が8000〜900
0Kgf/mm2 (溶体化上がりで)というステンレス
鋼や他のチタン合金に比べて低い値であるにもかかわら
ず耐力はかなり高い値である、つまりスプリングバック
性が非常に強いという点等から来ているものと推測され
る。
【0036】
【実施例】チタン原料に15%のバナジウム、3%のク
ロム、3%のアルミニウムおよび3%の錫を添加し、ア
ーク溶解にてインゴットを作製後、鍛造および900℃
での熱間圧延を実施し、4mm厚さのコイルを得た。こ
の時、材料表面には、酸化スケールおよび数十μの厚さ
のアルファケースが存在していた。これを弗酸+硫酸水
溶液を用いての酸洗いにより除去した結果、材料中の水
素濃度は500ppm以上となった。これから、冷間圧
延により、1mm、2mmおよび3mm厚さの3種類の
コイルを製造した。脱脂後、材料の水素濃度を測定した
がほとんど変化がなかった。
【0037】これらコイルを板切断し、真空炉中で板を
並べて熱処理を実施した。熱処理は800℃で30分間
保持したあと、アルゴンガスによる急冷を行うことによ
り実施した。得られた材料組織はアルファケースはまっ
たく観察されず、ベータ単一相であった。水素濃度を分
析したところ、50ppmと問題のない水準まで脱水素
がなされていた。一部の材料を除いて、材料は金属光沢
を保っており、変色は起こっていなかった。
【0038】一部の材料に油の焼き付けによる変色が起
こったので、熱処理条件を材料温度が200℃に到達後
400℃になるのに3時間かかるように調節し、その後
材料温度を800℃に昇温するよう変更した。その結
果、材料はすべて金属光沢を保ち、変色は起こらなかっ
た。
【0039】次に、炉内に合金板を重ねて山積み状態で
熱処理を実施するために、板間にステンレス鋼製金網を
挿入した。板同志の密着化を回避することができた。
【0040】得られた材料のプレス成形性は良好であ
り、溶接時の水素爆発も起こらず、冷間プレスおよび溶
接によりヘッドを容易に作製することができた。
【0041】
【発明の効果】以上、本発明方法により、ゴルフドライ
バーヘッド用チタン合金薄板に要求される(1)溶体化
が行われていること、(2)平坦度があること、(3)
130ppm以下にまで脱水素がなされていること、
(4)表面が清浄であることという要件を満足する薄板
を安価に製造することができ、従来からのステンレス鋼
ヘッドの製造方法と同様な方法でヘッドが比較的安価に
量産化でき、その合金材質特性とあいまって、従来販売
されているチタン合金ドライバーを上回る性能のドライ
バーを比較的安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−18V−Cr合金のCr濃度と伸びの関
係を示すグラフである。
【図2】Ti−17%V−3%CrにAlを添加した溶
体化上がり材のAl濃度と機械的性質の関係を示すグラ
フである。
【図3】Ti−17%V−3%CrにAlを添加した時
効硬化材のAl濃度と機械的性質の関係を示すグラフで
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 光吉 裕広 神奈川県高座郡寒川町倉見三番地日鉱金属 株式会社倉見工場内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 10重量%から25重量%未満のバナジ
    ウムを含み、随意的に2〜5重量%アルミニウム、2〜
    5重量%クロム及び2〜4重量%錫の内から選択される
    1種又は2種以上を更に含みそして残部チタンおよび不
    可避的不純物からなるゴルフドライバーヘッド用チタン
    合金の冷間圧延コイルを製造し、該チタン合金冷間圧延
    コイルをチタン合金板に切断した後、板の状態で溶体化
    および脱水素のための熱処理を行うことを特徴とするゴ
    ルフドライバーヘッド用チタン合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】 熱処理を前記チタン合金の変態点以上で
    850℃以下の温度で行うことを特徴とする請求項1の
    ゴルフドライバーヘッド用チタン合金板の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記チタン合金板の熱処理のための昇温
    途中で該チタン合金板を200〜400℃の温度範囲で
    30分以上保持して冷間圧延に際して付着した油を除去
    することを特徴とする請求項1乃至2のゴルフドライバ
    ーヘッド用チタン合金板の製造方法。
  4. 【請求項4】 チタン合金板の熱処理に際して板と板と
    の間にスペーサを挿入する請求項1乃至2乃至3のゴル
    フドライバーヘッド用チタン合金板の製造方法。
  5. 【請求項5】 脱水素を水素濃度が0.002〜0.0
    13重量%となるよう行う請求項1のゴルフドライバー
    ヘッド用チタン合金板の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003104506A1 (ja) * 2002-06-11 2003-12-18 住友金属工業株式会社 β型チタン合金およびその製造方法
CN104561652A (zh) * 2013-10-11 2015-04-29 东港市东方高新金属材料有限公司 一种钛合金dfgx-2#轧制管及其制备方法
CN113584345A (zh) * 2021-08-06 2021-11-02 东莞亿诚精密模具有限公司 一种高尔夫球头材料及其制备工艺和球头打击面

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