JPH06262340A - 中子砂の砂落し方法および装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 鋳造品を放熱させる必要がなく、鋳造品の中
空部内の中子を騒音や粉塵の発生なく速やかに崩壊させ
て、中空部から中子砂を迅速且つ容易に除去することの
できる中子砂の砂落し方法を提供する。 【構成】 シェルモールド中子２を用いて鋳造したの
ち、金型から取出した高温状態の鋳造品３を通水性カバ
ー１６ａを備えたクランプケージ１６で把持した状態で
有蓋水槽１４中に浸漬し、鋳造品３の中空部表面と中子
とのあいだに生じる爆発的沸騰によって中子を破砕し、
中子砂を除去する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、中空鋳物を製造するに
際して、鋳型から取り出された鋳造品の中空部から中子
砂を除去するのに利用される中子砂の砂落し方法と当該
砂落し方法を実施するに適した中子砂の砂落し装置に関
するものである。

【０００２】

【従来の技術】中空部を有する鋳物の製造に際しては、
例えばシェルモールド法によって造型した中子を鋳型内
の所定の位置にあらかじめセットしたうえで注湯し、凝
固・放熱後の鋳造品から前記シェルモールド中子を除去
するようにしている。

【０００３】従来、例えばインテークマニホールドの鋳
造ラインにおいては、シェル中子造型機により造型した
中空中子をロータリー式金型鋳造機の金型にセットし、
型締め，注湯，冷却，凝固ののち、鋳型より取出した鋳
造品をまずオーバーヘッド式クーリングコンベアに積み
込み、このクーリングコンベアによって約２００ｍの距
離を約１時間かけて搬送される間に１００℃以下に冷却
された前記鋳造品をノックアウト砂出し装置に掛け、ノ
ックアウト砂出し装置のバイブレータによる激しい振動
と衝撃によって鋳造品の中空部に嵌合している中子を破
砕し、中子砂を鋳造品の中空部から排出するようにして
いた。 また、前記ノックアウト砂出し装置によっても
なお中子砂が残存しているような場合には、作業員のハ
ンマリング作業によって手直しを行っていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来の砂落し方法においては、鋳造品がクーリングコ
ンベアによって空冷されているので、長い搬送距離と時
間がかかり、工場内の占有面積が大きく、工程間在庫が
多いという問題点と共に、工場建屋内に放熱されるため
作業環境上の問題点がある。 また、ノックアウト砂出
し装置に起因する問題点として、当該ノックアウト砂出
し装置から発生する騒音，振動，粉塵による工場建屋内
の環境劣化、あるいは製品への打痕の問題、さらには、
砂落しが不完全な場合のハンマーなどによる手直し作業
は作業者の肉体的負担が大きく作業者に歓迎されないと
いう問題などがあって、これら問題点の解消が鋳造工場
の作業環境を改善し、工程を合理化して生産性を向上さ
せるうえでの課題となっていた。

【０００５】

【発明の目的】本発明は、従来の砂落し方法における上
記課題に着目してなされたもので、鋳型から取出した鋳
造品を空冷する必要がなく、鋳造品の中空部内の中子を
速やかに破砕して、該中空部から中子砂を迅速且つ容易
に除去することができ、もって鋳造ラインの合理化と作
業環境の改善、さらには製品打痕の解消が可能な中子砂
の砂落し方法および装置を提供することを目的としてい
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明に係わる中子砂の
砂落し方法は、中空のシェル砂製中子を用いて鋳造した
高温状態の鋳造品を網状の通水性カバーで覆った状態で
有蓋水槽中に浸漬し、このときの沸騰により爆発的に生
ずる水蒸気によって前記中子を崩壊させ、中子砂を除去
する構成としたことを特徴としており、本発明に係わる
中子砂の砂落し装置は、網状の通水性カバーを備え、鋳
型から取出された高温の鋳造品を前記通水性カバーで覆
った状態に把持するクランプケージを備えた浸水ヘッド
と、前記浸水ヘッドを昇降駆動する昇降手段と、前記昇
降手段を浸水ヘッドと共に水平方向に移動させる横行手
段と、前記昇降手段の作動によりクランプケージに把持
された前記鋳造品を浸漬するための水槽を具備すると共
に、前記浸水ヘッドには該クランプケージに把持された
前記鋳造品の一部が前記水槽中の水に触れる以前に当該
水槽の開口部を閉塞する蓋体を設けてなる構成とし、当
該砂落し装置の実施態様としては前記水槽に崩壊して前
記鋳造品から除去された中子の中子砂を当該水槽から排
出するベルトコンベアを設けた構成としたことを特徴と
しており、中子砂の砂落し方法および装置における上記
構成を前述した従来の課題を解決するための手段として
いる。

【０００７】

【発明の作用】本発明に係わる中子砂の砂落し方法にお
いては、中空のシェル砂製中子を用いて鋳造された鋳造
品の温度が低下しないうちに水槽中に浸漬するようにし
ており、中空中子の内面から浸入した水が鋳造品に触
れ、瞬間的に気化することによって、鋳造品の中空部と
中子とのあいだで爆発的な沸騰が生じ、このとき発生す
る水蒸気によって前記中子が破砕され、中子砂が当該鋳
造品の中空部から排出されることとなる。 このとき、
前記鋳造品は網状の通水性カバーで覆った状態で浸漬さ
れているので、万一鋳造品が破損したとしてもその破片
が飛散することがなく、前記水槽には蓋がしてあるの
で、水や中子砂が飛散することもない。

【０００８】また、本発明に係わる中子砂の砂落し装置
は、金型から取出した高温の鋳造品を網状の通水性カバ
ーを備えたクランプケージによってつかみ、昇降手段を
作動させることによって当該水槽の開口部を蓋体で閉鎖
しながら、通水性カバーに覆われた鋳造品を水槽中に浸
漬し、これによって中子を破砕して鋳造品の中空部から
除去し、砂落し終了後の鋳造品を横行手段によって次工
程に搬出するようになっており、本発明に係わる中子砂
の砂落し方法を円滑かつ合理的に実施するための構成を
備えたものとなっている。

【０００９】

【実施例】以下、本発明を図面に基づいて具体的に説明
する。

【００１０】図１ないし図７は、本発明に係わる中子砂
の砂落し方法の一実施例を示すものであって、この実施
例では、アルミニウム合金の金型鋳造により、図１に示
す形状のインテークマニホールド１を鋳造したのち、該
インテークマニホールド１の中空部１ａから中子砂を除
去する要領について順を追って説明する。

【００１１】まず、図２に示す手順によって、インテー
クマニホールド１の中空部１ａを形成するための中子２
を制作する。

【００１２】すなわち、図２に示すように、あらかじめ
約２８０℃に加熱しておいた中子用金型３１，３２によ
って形成される金型空間３３内に、けい砂に熱硬化性フ
ェノール樹脂を被覆したシェル砂３０（コーテッドサン
ド）をブローマガジン３４を介して吹き込み、数１０秒
間保持し、前記シェル砂３０のフェノール樹脂を硬化さ
せることによって金型３１，３２と接触していた部分の
シェル砂３０を数ｍｍ厚さに結合させる。

【００１３】そして、図２（ｂ）に示すように前記金型
３１，３２を反転させ、バイブレータ３５によって振動
を与えながら未結合のシェル砂３０を排出したのち、離
型することによって、図２（ｃ）に示すように中空部２
ａを有するシェルモールド中子２が得られる。

【００１４】ついで、図３（ａ）に示すように、インテ
ークマニホールド鋳造用金型の下型３６の所定の位置に
前記中子２の幅木部２ｂ，２ｂを載置することにより当
該中子２の位置決めを行い、左右のサイド型３７，３８
をセットすることによって、型を閉じ、図３（ｂ）に示
す状態においてアルミニウム合金を注湯し、溶湯が凝固
したのち、図３（ｃ）に示すようにサイド型３７，３８
を開き、前記下型３６の押出しピン３６ａを上昇させる
ことによって、前記中子２と一体になった鋳造品３を鋳
造用金型から取出す。

【００１５】このようにして得られた鋳造品３は、図４
に示す砂落し装置１０により、同図に示す手順によって
中子２が破砕され、中子砂の砂落しがなされる。

【００１６】すなわち、図に示す砂出し装置１０は、図
５および図６にも示すように、図示しないレールに支持
されて該レール上を図中の左右方向に横行する横行装置
１１（横行手段）と、該横行装置１１に設けたシリンダ
１２（昇降手段）のシリンダロッド１２ａに連結され、
該シリンダ１２の引込みおよび押出し作動によって昇降
する浸水ヘッド１３と、後述するクランプケージ１６に
把持され、カバー１６ａに覆われた状態の鋳造品３を浸
漬するための水槽１４とを具備している。 また、前記
浸水ヘッド１３は弾性材１３ａを介して前記シリンダ１
２のシリンダロッド１２ａに接続されて鋳造品３が水槽
１４内に浸漬されるときに当該水槽１４の開口部を閉塞
する蓋体１５と、当該蓋体１５の下面側に取付けられた
クランプケージ１６からなるものであって、前記クラン
プケージ１６は、図７にも示すように、周囲に金網，エ
キスパンドメタルあるいはパンチングメタルなどからな
る通水性のカバー１６ａを張った二つ割りのかご状のも
のであって、クランプシリンダ１６ｂの作動によって開
閉され、高温状態の鋳造品３をクランプするようになっ
ており、クランプ状態において前記鋳造品３のクランプ
部分を除いた大部分がクランプケージ１６のカバー１６
ａ内に収納されるようになっている。

【００１７】さらに、水槽１４の底部には、図７に示す
ように、スクレーパ付きのベルトコンベア１７が設けて
あり、鋳造品３の中空部から除去された中子２の中子砂
は、当該ベルトコンベア１７によって水槽１４の背後に
設けた排出筒１８を経て、水槽１４内から排出され、回
収箱１９に回収されるようになっている。

【００１８】金型から取出された鋳造品３を図示しない
アイドルステーション上にを数分間放置して所定の温度
に放熱させたのち、鋳造品搬入コンベア２１によって砂
落し工程の受入れテーブル２２上に搬送し、さらにクラ
ンプテーブル２３上に移動させる。

【００１９】次に、横行装置１１によって前記クランプ
テーブル２３の上方に移動させておいた砂出し装置１０
の浸水ヘッド１３をシリンダ１２を押出し作動すること
によって下降させ、クランプケージ１６の前記カバー１
６ａを鋳造品３で覆い、クランプシリンダ１６ｂを作動
させて前記鋳造品３をカバー１６ａ内に収納した状態に
クランプする。

【００２０】そして、前記シリンダ１２を引込み作動に
より浸水ヘッド１３を上昇させると共に、横行装置１１
によって当該浸水ヘッド１３を水槽１４の真上位置まで
移動する。

【００２１】次いで、再びシリンダ１２を押出し作動す
ることによって浸水ヘッド１３を下降させ、図５ないし
図７に示すように、クランプケージ１６にクランプされ
た鋳造品３を水中に浸漬する。 これにより、中子２の
中空部２ａから浸入した水が中子２を浸透して鋳造品３
の中空部表面に触れ、瞬間的に気化することによって、
鋳造品３の中空部と中子２とのあいだで爆発的な沸騰が
生じ、この水蒸気によって前記中子２が破砕され、破片
となって鋳造品３の中空部から排出される。

【００２２】このときの鋳造品３の温度としては、３５
０〜５００℃が望ましい。 これは、鋳造品３の温度が
３５０℃未満の場合には、中子２の中空部２ａから浸入
した水が鋳造品３に触れて気化したとしても爆発的な沸
騰とはなりにくいので中子２を破砕するに十分なエネル
ギーが得られず、鋳造品３の温度が５００℃を超えた時
には、鋳造品の強度がまだ低いことと相俟って過大な沸
騰エネルギーによって鋳造品３が変形したり、破損した
りすることがあり得ることによる。

【００２３】また、このときの前記シリンダ１２による
浸水ヘッド１３の下降速度については、鋳造品３の各中
空部に温度むらが生じて沸騰のタイミングがずれ、完全
に破砕されない中子２が残存するのを防止するために、
２０ｍ／ｍｉｎ以上とすることが望ましい。

【００２４】なお、水中への浸漬に際して前記鋳造品３
は、前記クランプケージ１６のカバー１６ａによって覆
われているので、浸漬時の温度が高過ぎたり、鋳造品３
にたまたま欠陥があったりして鋳造品３が破損するよう
なことがあったとしても、その破片の飛散が防止され、
作業の安全性が確保される。 また、沸騰時の激しい衝
撃は浸水ヘッド１３の弾性材１３ａによって吸収され
る。

【００２５】また、図５に示すように、鋳造品３の下端
部が水面に接する水没開始位置において、浸水ヘッド１
３の蓋体１５が水槽１４の開口部を閉塞するようになっ
ており、激しい沸騰によって熱湯や中子２の破片が飛散
しないようになっている。

【００２６】そして、激しい沸騰がおさまり、沸騰音が
ほとんど聞こえなった時点で、シリンダ１２を引込み作
動させて浸水ヘッド１３を上昇させ、鋳造品３を水槽１
４から引上げる。 このときのタイミングとしては鋳造
品３の温度が１００℃以下に低下する以前が望ましい。
これは、鋳造品３の温度が１００℃より低下した時点
で水中より引出したときには、鋳造品３に付着した水分
によって崩壊した中子２の中子砂が鋳造品３に固着して
しまうことによる。

【００２７】最後に、横行装置１１によって当該浸水ヘ
ッド１３を搬出位置に移動し、搬出コンベア２４上に中
子２が除去された鋳造品３を載置し、クランプシリンダ
１６ｂをアンクランプ方向に作動して、鋳造品３を次工
程に搬出する。

【００２８】前記水槽１４の底部に滞積する中子砂は、
図７に示すように、スクレーパ付きのベルトコンベア１
７によって水槽１４の背後に設けた排出筒１８を経て、
水槽１４内から排出され、回収箱１９に回収される。

【００２９】このベルトコンベア１７のスクレーパと排
出筒１８との隙間については、５０ｍｍ以下が望まし
く、ベルトコンベア１７の送り速度は２０ｍ／ｍｉｎ以
下が適当である。 すなわち、スクレーパと排出筒１８
との隙間が５０ｍｍを超えると、鋳造品３の浸漬時の沸
騰によって中子砂の排出口２０から水が吹出しやすくな
るため前記排出口２０と水面との差を大きく取る必要が
生じ、装置が大型化することによる。 また、ベルトコ
ンベア１７の送り速度が２０ｍ／ｍｉｎを超えると中子
砂と共に水をも排出してしまうことによる。

【００３０】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる中
子砂の砂落し方法においては、高温状態の鋳造品を通水
性のカバーで覆った状態で有蓋水槽中に浸漬し、このと
きの沸騰によって生ずる水蒸気によって中子を崩壊さ
せ、中子砂を除去するようにしているので、万一鋳造品
が破損したとしてもその破片が飛散することがなく、沸
騰による熱湯や中子の破片の飛散も防止することができ
ると共に、鋳造品の放熱のための時間やスペースが不要
となって生産性が向上するとともに、騒音や粉塵の発生
源であるノックアウト砂出し装置やハンマー等による砂
落とし作業の廃止によって作業環境が改善され、作業員
の負担も軽減されるという非常に優れた効果がもたらさ
れる。

【００３１】さらに、本発明に係わる中子砂の砂落し装
置は、上記構成としたことにより、本発明に係わる中子
砂の砂落し方法を円滑に実施することができ、鋳造品の
受入れから搬出までの自動操業が可能であって、当該砂
落し装置を鋳造ラインの鋳造機の直後に配置することに
よって、従来のクーリングコンベアやノックアウト砂出
し装置を撤去することができ、ラインの合理化，作業環
境の改善、さらには製品の打痕解消など、極めて優れた
効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）および（ｂ）は本発明に係わる中子砂の
砂落し方法の実施例において鋳造するインテークマニホ
ールドの形状を示す上面図および側面図である。

【図２】（ａ），（ｂ）および（ｃ）は図１に示したイ
ンテークマニホールドの鋳造に用いる中子の製作手順を
示す工程図である。

【図３】（ａ），（ｂ）および（ｃ）は図２に示した手
順により造型した中子を用いて図１に示したインテーク
マニホールドを鋳造する手順をしめす工程図である。

【図４】本発明に係わる中子砂の砂落し装置によって鋳
造品から中子を除去する過程を順次示す説明図である。

【図５】図４に示した中子除去過程における鋳造品の水
槽への浸漬時の状況を示す拡大図である。

【図６】図４に示した中子除去過程における鋳造品の水
槽への浸漬状況を示す拡大図である。

【図７】図６に示した中子砂の砂落し装置の側面図であ
る。

【符号の説明】

２ 中子 ２ａ 中空部 ３ 鋳造品 １０ 砂落し装置 １１ 横行装置（横行手段） １２ シリンダ（昇降手段） １３ 浸水ヘッド １４ 水槽 １５ 蓋体 １６ クランプケージ １６ａ カバー １７ ベルトコンベア

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中空のシェル砂製中子を用いて鋳造した
   高温状態の鋳造品を網状の通水性カバーで覆った状態で
   有蓋水槽中に浸漬し、このときの沸騰により爆発的に生
   ずる水蒸気によって前記中子を崩壊させ、中子砂を除去
   することを特徴とする中子砂の砂落し方法。
2. 【請求項２】 中空のシェル砂製中子を用いて鋳造した
   鋳造品から前記中子を除去する中子砂の砂落し装置であ
   って、 網状の通水性カバーを備え、鋳型から取出された高温の
   鋳造品を前記通水性カバーで覆った状態に把持するクラ
   ンプケージを備えた浸水ヘッドと、 前記浸水ヘッドを昇降駆動する昇降手段と、 前記昇降手段を浸水ヘッドと共に水平方向に移動させる
   横行手段と、 前記昇降手段の作動によりクランプケージに把持された
   前記鋳造品を浸漬するための水槽を具備すると共に、 前記浸水ヘッドには該クランプケージに把持された前記
   鋳造品の一部が前記水槽中の水に触れる以前に当該水槽
   の開口部を閉塞する蓋体を設けてなることを特徴とする
   中子砂の砂落し装置。
3. 【請求項３】 前記水槽は、崩壊して前記鋳造品から除
   去された中子の中子砂を当該水槽から排出するベルトコ
   ンベアを有することを特徴とする請求項２記載の中子砂
   の砂落し装置。