JPH0623732Y2 - エンジンの補強構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、シリンダブロックと変速機ケースとの結合部
分を補強するエンジンの補強構造に関するものである。

（従来の技術） 通常、エンジンのシリンダブロックの下部にはオイルパ
ンが装着され、このシリンダブロックに変速機ケースが
連接されている。そして、上記の構造においては、エン
ジンの運転に伴う起振力による振動に対してシリンダブ
ロックと変速機ケースとの結合部分に大きな曲げ振動が
作用する。

そこで、従来の技術として、シリンダブロックの後部下
方において変速機ケースとの結合部を補強する補強部材
を設置する構造は、例えば、実開昭61-70543号公報に見
られるように公知である。

上記先行例の補強部材は、変速機ケースのシリンダブロ
ック側の開口部を覆うフランジ状部材とこのフランジ状
部材からシリンダブロックの下部両側に延びる取付け部
材とからなり、フランジ状部材を変速機ケースに固定し
取付け部材をシリンダブロックに固定して、シリンダブ
ロックと変速機ケースとの結合部の補強を行うようにし
ている。

（考案が解決しようとする問題点） しかして、上記のような補強部材では、この補強部材を
製造が容易な金属板のプレス成形で得ようとした場合
に、プレス成形可能な形状との関係から前記シリンダブ
ロックと変速機ケースとの間の曲げ振動に対して、単に
フランジ部材と取付け部材との突き合わせ接合部の局部
的な剛性に依存して補強しているだけで、さらに大きな
剛性の向上効果を得ることが望まれている。

特に、前記取付け部材による補強効果を高めようとした
場合に、変速機ケース側のフランジ部材に対してはでき
るだけ低い位置からシリンダブロックの底面に対してで
きるだけ遠い位置に連結するように設けることが好まし
いが、フランジ部材に対する低い位置は変速機ケースよ
り大きくすることはできず、この位置からシリンダブロ
ックの重心に近く前方に延ばして接続すると、その傾斜
角度が小さくなり、取付け部材の固定部に加わる剪断力
が大きくなって、スポット溶接の剥離等を生起する恐れ
がある。

そこで、本考案は上記事情に鑑み、プレス成形品によっ
てシリンダブロックと変速機ケースとの結合部の曲げ振
動に対する十分な剛性向上による補強を行うようにした
エンジンの補強構造を提供することを目的とするもので
ある。

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するため本考案の補強構造は、シリンダ
ブロック後部でオイルパンにまたがってエンジンの両側
部に固定するオイルパン下部部材と、該オイルパン下部
部材と変速機ケース前端とに固定する変速機側部材とか
らなる補強部材を設け、上記変速機側部材は、その下面
中央に傾斜基部から略水平前方へ延びる水平延長部と、
該水平延長部の前端から上方へ曲がって延びる補強傾斜
部と、オイルパン下部部材に連結される先端の円弧状固
定部とを有するように構成したものである。

（作用） 上記のようなエンジンの補強構造では、オイルパン下部
部材と変速機側部材とからなる補強部材によってシリン
ダブロックと変速機ケースとの結合部の補強を行うにつ
いて、上記変速機側部材はその傾斜基部の途中に略水平
前方へ延びる水平延長部を設け、さらに、水平延長部の
先端に補強傾斜部と、オイルパン下部部材に固着する円
弧状固定部とを設けて、補強傾斜部の傾斜角度を大きく
して固定部へ加わる剪断力を低減し、高い補強効果を得
ると共に、円弧状固定部によりさらに高い曲げ振動に対
する剛性の向上を図るようにして、プレス成形品であっ
ても良好な補強性能を得るようにしている。

（実施例） 以下、図面に沿って本考案の実施例を説明する。

第１図はエンジンの全体側面図であり、エンジン本体１
はシリンダブロック２とシリンダヘッド３とを備え、こ
のシリンダブロック２の下部にオイルパン４が締結され
ている。また、シリンダブロック２の後端部に、クラッ
チ、変速機（図示せず）等を収納する変速機ケース５が
締結されている。そして、前記シリンダブロック２後部
のオイルパン４にまたがって、シリンダブロック２と変
速機ケース５の前端部５ａとに固定される補強部材６が
配設されて、曲げ振動に対する補強を行うものである。

上記補強部材６は、詳細構造を第２図ないし第５図に示
すように、オイルパン４側のオイルパン下部部材１１
と、変速機ケース５側の変速機側部材１２とで構成さ
れ、両者はプレス成形品で、スポット溶接で一体に接合
されてなる。

上記オイルパン下部部材１１は、略チャンネル形状でシ
リンダブロック２後部のオイルパン４に下方からまたが
り、底板１１ａと両側板１１ｂ，１１ｂと上端両側の取
付けフランジ部１１ｃ，１１ｃとを有し、取付けフラン
ジ部１１ｃ，１１ｃが両側オイルパンレール４ａ部に固
定される。

一方、変速機側部材１２は、上記オイルパン下部部材１
１の後部と変速機ケース５前端とに固定されるもので、
後端の円弧状フランジ部１２ａが変速機ケース５の前端
部５ａに締結固定される。この円弧状フランジ部１２ａ
の内周側に、下方から前方のオイルパン下部部材１１の
底板１１ａに向けて斜め上方に延びる傾斜基部１２ｂ
と、この傾斜基部１２ｂの先端側でその下面中央に略水
平前方へ延びる水平延長部１２ｃと、該水平延長部１２
ｃの先端にさらに斜め上方に延びる補強傾斜部１２ｄ
と、オイルパン下部部材１１の底板１１ａにスポット溶
接される円弧状固定部１２ｅとが連接されている。

なお、上記傾斜基部１２ｂと補強傾斜部１２ｄとは湾曲
して形成され、補強傾斜部１２ｄの両側には同様に底板
１１ａに固着される固定部１２ｆ，１２ｆが、さらに、
水平延長部１２ｃ両側の傾斜基部１２ｂには同様に底板
１１ａに固着される固定部１２ｇ，１２ｇが連接されて
いる。

一方、円弧状フランジ部１２ａの内周側の両側方から、
前方にオイルパン下部部材１１の両側板１１ｂ，１１ｂ
に向けて斜めに延びる両側方傾斜部１２ｈ，１２ｈと、
この両側方傾斜部１２ｈ，１２ｈの先端側にオイルパン
下部部材１１の両側板１１ｂにスポット溶接される固定
部１２ｉ，１２ｉとが連接されている。また、両側方傾
斜部１２ｈ，１２ｈは前記傾斜基部１２ｂと共に全体と
して円錐状に湾曲して形成され、先端固定部１２ｉ，１
２ｉは側方から見て前方に傾斜して形成され、さらに、
この両側方傾斜部１２ｈ，１２ｈの上端には水平方向に
屈曲した上端固定部１２ｊ，１２ｊが連接されている。

なお、オイルパン下部部材１１の底板１１ａから両側板
１１ｂおよびフランジ部１１ｃに屈曲する部分に対する
変速機側部材１２は一部切り欠かれて切欠き部１２ｋが
設けられ、製作誤差を吸収して各固定部がオイルパン下
部部材１１の各部に確実に当接するように設けられてい
る。

上記補強部材６の構造により、オイルパン下部部材１１
の下面中央の底壁１１ａに対する変速機側部材１２の連
結構造で、オイルパン下部部材１１の底板１１ａにスポ
ット溶接される円弧状固定部１２ｅと補強傾斜部１２ｄ
との角度が、水平延長部１２ｃを形成した分だけ大きく
なり、連続的な傾斜部で構成したものより作用する剪断
力が軽減する。すなわち、下方に向う力が補強傾斜部１
２ｄに作用した際に、この補強傾斜部１２ｄの角度が大
きいことから、円弧状固定部１２ｅに水平方向に作用す
る分力としての剪断力が小さくなる。また、このように
すると、傾斜基部１２ｂに上方から偶力が生じるが、こ
れに対して傾斜基部１２ｂの両側に別途に固定部１２ｇ
を設けて荷重を受けるようにしている。

この補強部材６を、そのオイルパン下部部材１１をオイ
ルパン４と共にシリンダブロック２の底面に取り付け、
変速機側部材１２を変速機ケース５の前端部５ａに取り
付けると、上下方向の曲げ振動に対しては前記底部側の
円弧状固定部１２ｅで結合した補強傾斜部１２ｄを含む
連結構造で剛性の向上が有効に作用し、横方向の曲げ振
動に対しては前記両側方傾斜部１２ｈ，１２ｈの結合に
よる剛性の向上が有効に作用し、さらに、ねじり方向の
曲げ振動に対しては両者の剛性向上が有効に作用し、全
体として高い補強効果が得られる。特に、下面の結合に
おける固定が円弧状固定部１２ｅによって湾曲してスポ
ット溶接されていることとから、この部分の剛性が高く
できるものである。

なお、前記実施例においてはオイルパン下部部材をオイ
ルパンレール部に固定するようにしているが、シリンダ
ブロックの両側壁などに固定するようにしてもよい。

（考案の効果） 上記のような本考案によれば、オイルパンにまたがって
シリンダブロックに固定するオイルパン下部部材と、該
オイルパン下部部材と変速機ケース前端とに固定する変
速機側部材とからなる補強部材によってシリンダブロッ
クと変速機ケースとの結合部の補強を行うについて、オ
イルパン下部部材と変速機側部材との結合構造が、下面
中央に傾斜基部から略水平前方へ延びる水平延長部の先
端に補強傾斜部とオイルパン下部部材に対する円弧状固
定部とを設けるようにしたことにより、補強傾斜部の傾
斜角度を大きくして固定部へ加わる剪断力を低減し、ス
ポット溶接の剥離等を伴うことなく高い補強効果を得る
と共に、円弧状固定部によりさらに高い剛性を得て、エ
ンジンの曲げ振動に対するシリンダブロックと変速機ケ
ースとの結合部の剛性が向上し、プレス成形品であって
も良好な補強性能を得ることができ、補強部材の長寿命
化が図れるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例における補強構造を備えたエ
ンジンの概略側面図、 第２図は補強部材の平面図、 第３図は第２図の中央縦断面図、 第４図は補強部材の背面図、 第５図は変速機側部材の斜視図である。 １……エンジン本体、２……シリンダブロック、４……
オイルパン、５……変速機ケース、６……補強部材、１
１……オイルパン下部部材、１２……変速機側部材、１
２ｂ……傾斜基部、１２ｃ……水平延長部、１２ｄ……
補強傾斜部、１２ｅ……円弧状固定部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シリンダブロック後部でオイルパンにまた
   がってエンジンの両側部に固定されるオイルパン下部部
   材と、該オイルパン下部部材と変速機ケース前端とに固
   定され、両固定部間に傾斜基部が形成される変速機側部
   材とからなる補強部材を設けたエンジンの補強構造にお
   いて、上記変速機側部材は、上記傾斜基部の少なくとも
   一部から略水平前方へ延びる水平延長部と、該水平延長
   部の前端から曲がって上方へ延びる補強傾斜部と、該補
   強傾斜部の上端に形成されるオイルパン下部部材に対す
   る円弧状固定部とを有することを特徴とするエンジンの
   補強構造。