JPH06237193A - 海底ケーブル通信システムの海中機器および障害点標定方法 - Google Patents

海底ケーブル通信システムの海中機器および障害点標定方法

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JPH06237193A
JPH06237193A JP2154293A JP2154293A JPH06237193A JP H06237193 A JPH06237193 A JP H06237193A JP 2154293 A JP2154293 A JP 2154293A JP 2154293 A JP2154293 A JP 2154293A JP H06237193 A JPH06237193 A JP H06237193A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】複数の中継器や分岐装置等の海中機器が海底ケ
ーブルの途中に直列に接続され、該ケーブル内の給電線
を介して直列給電を受ける光海底ケーブルなどの通信シ
ステムにおける障害位置標定方法とそれに適した海中機
器に関し、障害点のケーブル端末が電気的に開放障害に
なった場合に、障害点までのケーブルの静電容量を測定
してその障害位置を迅速かつ精度良く標定できるように
することを目的とする。 【構成】海底ケーブルを介する通信を行わしめる主信号
回路32と、入力端に給電線51からの直列給電電流を受
け、該給電電流を整流して出力するダイオードブリッジ
33と、該ダイオードブリッジの出力端に接続されて前記
主信号回路32に動作電力を供給する電源部31とを備えた
海中機器において、該ダイオードブリッジ33の入力端間
をシャントする充放電抵抗RSを設けて、電荷測定法によ
りケーブルの静電容量を測定するための陸揚局からの充
電、放電の際して海中機器内の順方向ダイオードの高抵
抗による充放電時間の延長を除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複数の中継器や分岐装
置等の海中機器が海底ケーブルの途中に直列に接続さ
れ、該ケーブル内の給電線を介して直列給電を受ける光
海底ケーブルなどの通信システムにおける障害位置標定
方法に関し、特に障害点のケーブル端末が電気的に開放
障害になった場合にその障害位置を迅速かつ精度良く標
定するケーブル障害標定方法およびそのための海中機器
に関する。
【0002】
【従来の技術】光ファイバを通信媒体とする光海底ケー
ブル通信方式においては、光ファイバが細径・軽量であ
ることから、一本のケーブルに多芯の光ファイバが収容
される。
【0003】この場合、ケーブル内伝播による光信号の
減衰を補強するために,ケーブルの途中に複数の海底中
継器が所定の間隔で挿入される。また、多局間の相互通
信を可能とするために、多芯の光ファイバの一部を分岐
させる分岐接続装置を配置して多局相互間をそれぞれの
光ファイバ芯線によって結ぶ。
【0004】このように、光海底ケーブルには、光信号
を再生中継するための中継器や、光ファイバの分岐を行
う分岐装置等の海中機器がケーブル途中に複数挿入され
ている。これらの海中機器に所定の動作を行わせるため
には電力を供給する必要があり、このために、海底ケー
ブル中に給電線を収容し、ケーブル陸揚局から給電を行
う。
【0005】2局間を結ぶ海底ケーブルシステムにおい
ては、各中継器の電源部を上記給電線によって直列に接
続し、給電線の両端を両陸揚局において極性の異なる定
電流源に接続し、両定電流源の反対側をアースに接続し
て、給電線とアースとで給電ループを構成する両端定電
流直列給電方式が用いられる。多局間を結ぶ海底ケーブ
ルシステムにおいては、主となる二つの陸揚局間を結ぶ
主海底ケーブルに挿入された海中機器に対しては上記両
端定電流直列給電を行い、主海底ケーブルから分岐した
ケーブルに挿入された海中機器に対しては、該分岐ケー
ブルの陸揚局の定電流源から給電し、海中分岐装置にお
いて海中に接地して陸揚局に戻す片端定電流直列給電を
行う。
【0006】図4は、本発明が対象とする光海底ケーブ
ル通信システムの一例を示す構成図である。図4に示す
ように、陸揚局1-1,〜1-4 と海中分岐装置2-1,2-2 間、
および海中分岐装置2-1,2-2 間をそれぞれ海底ケーブル
5-1 〜5-5 によって結ぶ。海底ケーブル5-1 〜5-5 は例
えば複数本の光ファイバおよび一本の給電線を有し、そ
れぞれの海底ケーブルの途中には複数の海底中継器3が
挿入されている。主となる二つの陸揚局1-1,1-2 間に挿
入された海底中継器3は、二つの陸揚局1-1 、1-2 間の
海底ケーブル5-1,5-5,5-2 の給電線によって直列に接続
され、両陸揚局に設置された定電流源10から給電され
る。一方、分岐した海底ケーブル5-3 、5-4 にそれぞれ
複数挿入された海底中継器3は、それぞれの海底ケーブ
ル5-3 、5-4 の給電線を介して陸揚局1-3,1-4 の定電流
電源10から給電され、海中分岐装置2-1,2-2 において海
中に接地され海中帰路により定電流電源に戻る。
【0007】この直列給電方式には、海中機器に対する
給電電流の方向を必要に応じて逆転させる双方向給電方
式と、予め電流方向が1方向に決まっている単方向給電
方式とがある。
【0008】双方向給電方式は、特開平4-243330号、特
開平4-256225号、特開願4-64103 号に記載されているよ
うに、ケーブル障害時等に複数の分岐装置における給電
路切替えを良好に行わせるための方式であり、給電線の
途中に挿入される海中機器は、給電電流が何方の方向か
ら流れ込んでも、同一極性の電源電圧が機器の動作電源
電圧として電源部に供給できるように、その給電回路が
構成されている。
【0009】なおこの双方向給電は、図4に示す陸揚局
の定電流電源10の極性を反転させることによって給電電
流の方向を反転させるものである。図5に直列双方向給
電を受ける従来の海中機器の構成が示されている。
【0010】図において、ARRはアレスタ、33はダイ
オードD1〜D4からなるダイオードブリッジ、L1,
L2はチョークコイル、R1,R2は抵抗、31は電源
部、32は主信号回路、51は海中機器に出入りする海底ケ
ーブルの給電線である。
【0011】電源部31は、ツエナーダイオードD5と該
ツエナーダイオードに並列に接続された抵抗R3からな
り、ツエナー電圧を電源電圧として主信号回路32に供給
する。主信号回路32はこの電源電圧を受けて光信号の再
生中継等を行い海底ケーブルを介した通信を可能ならし
める。
【0012】抵抗R3は、給電路に流れる全電流中から
主信号回路に必要な電流とツエナーダイオードD5に所
定の定電圧を発生させるための電流とを除いた残りの電
流を分流させるためのもので、抵抗値0〜100Ωから
適宜選択される。
【0013】海中機器内での給電線は、両側とも高速サ
ージに対して高インピーダンスとなるチョークコイルL
1、電流制限用の抵抗R1およびチョークコイルL2、
抵抗R2の直列回路を介して、ダイオードD1〜D4を
ブリッジ状に接続したダイオードブリッジ33の入力点に
接続されている。そして、ツエナーダイオードD5の両
端に発生するツエナー電圧が、主信号回路の電源電圧と
して供給される。ダイオードD1〜D4はツエナー電圧
14Vのダイオードが用いられ、ツエナーダイオードD
5はそれより低い12Vのツエナー電圧を有するものが
用いられる。アレスタARRは給電線51の端部A,B間
に上記ダイオードブリッジ33とチョークコイルL1,L
2、抵抗R1,R2の直列接続に並列に接続されて、何
れの給電線側からサージ電圧が印加されてもそのサージ
エネルギを吸収するようになっている。
【0014】また主信号回路が複数あり、これに対応し
て電源部の数が多い場合には、該複数に対応するダイオ
ードブリッジ回路を設けて、それぞれの出力に電源部を
接続するとともに該複数のダイオードブリッジ回路を直
列接続し、ダイオードブリッジの直列接続の外側にチョ
ークコイルと抵抗の直列接続されたものを設け、全体に
並列にアレスタを設ける。
【0015】このような構成とすることにより、ダイオ
ードブリッジが両波整流回路を構成するので、給電電流
の方向がA→B、B→Aの何れの方向であっても、電源
部31からはツエナーダイオードD5のツエナー電圧の1
2Vが、図示した如き同一極性で出力され、主信号回路
32は給電電流の方向とは無関係に正常に動作する。
【0016】つぎに、給電線上を侵入するサージ電流に
対する耐性を説明する。ダイオードブッリジを構成する
ダイオートD1〜D4は、そのツエナー電圧が14Vで
あるため、逆方向に14V以上の電圧が加わると導通す
る。従って、例えば、A→B向きに14V以上のサージ
電圧が加わると、これによるサージ電流は順方向ダイオ
ードD1→逆方向ダイオードD2の経路と、逆方向ダイ
オードD4→順方向ダイオードD2の経路を通って流れ
ることができるので、電源部のツエナーダイオードD5
の両端、即ち機器の電源部はダイオードD3,D4のツ
エナー電圧にクランプされ、14V以上のサージ電圧が
加わることがない。同様に、B→A向きのサージ電圧が
加わると、サージ電流は順方向ダイオードD3→逆方向
ダイオードD1の経路と、逆方向ダイオードD2→順方
向ダイオードD4の経路を通って流れる。このように、
何れの方向からのサージ電流に対しても電源部を保護す
ることができる。
【0017】一方、単方向直列給電方式に関しては、特
開昭59-122324 号において、給電方向と逆方向に流れる
サージ電流を効果的に吸収できるような海底中継器の給
電回路が開示されている。
【0018】図6に、単方向給電を受ける上記従来技術
による海中機器が示されている。図において、ARRは
アレスタ、D6はダイオード、D7はツエナーダイオー
ド、L1,L2はチョークコイル、R1,R2は抵抗、
31は電源部、32は主信号回路である。電源部31はツエナ
ーダイオードD8と、該ツエナーダイオードに並列に接
続された抵抗R3とからなり、ツエナーダイオードD7
のツエナー電圧は、ツエナーダイオードD8のそれより
も所定に大きく設定しておく。
【0019】図において、海中機器に対する給電は、給
電線51の端部A,B間に端部Aは正、端部Bは負の極性
で加えられ、給電電流は端部A,チョークコイルL1,
抵抗R1,ダイオードD6、ツエナーダイオードD8、
抵抗R2、チョークコイルL2、端部Bの順序に流れ
る。そして、このときのツエナーダイオードD8の端子
電圧を電源電圧として主信号回路32に供給する。
【0020】給電線にサージ電圧が発生した場合、チョ
ークコイルL1,L2がサージ電圧を阻止し、端部A,
B間に接続されているアレスタARRの働きによりサー
ジ電圧が短絡され、中継器の主信号回路32にサージ電圧
が印加されることを防止する。
【0021】そして、特に、逆方向のサージ電圧に対し
ては、ダイオードD6が逆方向にバイアスされ、見掛け
上高インピーダンスとなる。一方ツエナーダイオードD
7は逆方向から侵入してくるサージに対しては順方向に
バイアスされ、低インピーダンスとなる。従って、ダイ
オードD6およびツエナーダイオードD7の働きにより
逆方向から侵入してくるサージをツエナーダイオードD
9でバイパスする形となり、電源部31への逆方向サージ
の侵入を順方向サージに比べて一層効果的に阻止するこ
とができ、逆方向サージ耐圧が弱いモノリシックIC回
路を用いた主信号回路32を有効に保護することができ
る。
【0022】このように、単方向給電を受ける海中機器
においても、電源部の給電方向に対して順方向にダイオ
ードを直列接続しその外側をツエナーダイオードでシャ
ントすることにより、逆方向のサージの影響から中継器
を護るようにしている。
【0023】さて、以上の如き給電方式によって、海底
ケーブルの途中に設けられた中継器や分岐装置に動作電
力を給電する通信システムにおいては、給電路に障害が
起こると正常に給電が行われなくなるため、内蔵する故
障通知装置が動作しなくなる。そこで、陸揚局からその
障害位置を標定することによりケーブルの故障箇所を迅
速に発見して修理する必要がある。そのために、陸揚局
から障害点の標定が行われる。
【0024】給電路障害時に、障害位置を標定する方式
には、地絡障害に対しては抵抗法、開放障害に対しては
静電容量法、パルスエコー法等がある。抵抗法は、異常
地点までの給電線とアース帰路とのループ抵抗を精密に
測定して、既知の単位長あたりの給電線抵抗を用いて障
害位置までの距離を求めるものである。
【0025】給電路に開放障害が発生した時に、障害位
置を標定する方式には、静電容量法、パルスエコー法等
がある。パルスエコー法は、主として開放障害の標定に
用いる方法で、光ケーブルを給電導体を内部導体、海水
を外部導体とする固有の特性インピーダンスを持つ同軸
ケーブルと見做し、特定の波形のパルスを給電路に送出
して、障害点における特性インピスーダンスの不整合に
よって起こる反射波を観測し、送出波と反射波の観測時
間差から距離を求める方法である。パルス波としては、
数kHz正弦波の1周期分を用いる。給電線を通るパル
ス波は中継器による減衰が大きいので陸揚局に近い数中
継区間の開放障害標定に適用されるが、この区間ではケ
ーブル敷設深度が浅くてケーブル破断障害が多発するの
で有効に使用される。
【0026】静電容量法は、開放障害時に障害位置を標
定するのに用いられるもので、光海底ケーブルは給電線
の周囲に誘電体物質があり海水に浸漬されると等価的に
コンデンサとなることを用いるものである。
【0027】即ち、ケーブル内の給電線と海水アースと
の間の分布静電容量から形成されるケーブルの静電容量
がケーブル長に比例することを利用して開放障害位置を
標定する。これには、開放障害点までのケーブルの静電
容量を正確に測定して、その単位長当たりの静電容量が
既知であることを用いて長さに換算するものである。
【0028】以下、図7を用いて本発明が対象とする上
記静電容量法による障害点の標定方法を説明する。図に
おいて、4は静電容量測定装置、41は観測位置(陸揚
局)から障害位置までの光海底ケーブルの給電線と海水
アースとの間で形成される静電容量C1の等価コンデン
サである。42は測定電圧V1の充電用直流電源、43は切
替スイッチ、44はオペアンプ、45は入力抵抗、46は静電
容量C2の基準コンデンサ、47は直流電圧計である。オ
ペアンプ44、入力抵抗45、基準コンデンサ46は積分回路
が形成される。
【0029】海底ケーブルの途中で開放障害が発生し、
給電電流が流れなくなることを検出したら、ケーブルの
静電容量に残留している電荷を全て放電させて、C1の
電荷を0にする。
【0030】次いで、切替スイッチ43を充電電源側に倒
すと、ケーブルの静電容量C1に測定電圧V1が印加さ
れ、充電電流I1 で容量C1が充電される。このとき、
C1に充電された電荷Q1は、 Q1=C1・V1 となる。次に、切替スイッチ43をオペアンプ側に倒す。
積分回路には、利得無限大、高入力インピースダンスの
オペアンプ44を有するため、オペアンプ44の−入力端子
はイマジナリーショートとなり、コンデンサ41は等価的
にアースに接続されたことになり、入力抵抗46を介して
放電電流I2 が流れる。
【0031】従って、C1にチャージされている電荷は
−端子に流れ込むが、オペアンプの入力インピーダンス
が無限大のため、その放電電流I2 はオペアンプ44には
流れ込まずに、基準コンデンサ46に流れてC2を充電す
る。つまり、電圧計47で測定されるオペアンプの出力電
圧V2は、C2の充電電圧となる。従って、充分長時間
経過後に、C2に充電されている電荷Q2は、 Q2=∫I2 dt=C2・V2 充放電される電荷は等しいので、V1とV2の関係は、 Q1=Q2=C1・V1=C2・V2 となり、充電電圧V1と、基準静電容量C2と、C2の
端子電圧V2とが判れば、ケーブルの静電容量C1は、 C1=C2・V2/V1 として求めることができ、ケーブルの単位長当たりの公
称静電容量をC0 とすれば、 L=C1/C0 により、観測位置から障害点までの距離Lを求めること
ができる。
【0032】以上の如く、測定電圧V1に充電されたコ
ンデンサの電荷を正確に測定することによって、障害点
までのケーブルの給電線と海水アースとで形成されるコ
ンデンサの静電容量を求めるものである。従って、この
静電容量が正確に測定されるためには,即ち開放障害の
標定を高精度に行うためのには、 ケーブルの全長にわたって、測定端で印加した充電電
圧V1で充電されること。
【0033】充電された電荷が全て測定用の基準静電
容量C2に放電されること。 の二つの条件が満足される必要がある。
【0034】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述の如
く、直列給電を受ける光海底ケーブル通信システムに用
いる中継器や分岐装置は、双方向給電を可能とするため
にダイオードブリッジを用いているか、または、単方向
給電の場合でも両方向のサージ電圧の機器電源部への妨
害を阻止するするために、1海中機器当たり一つ以上の
ダイオードが給電路中に給電方向と順方向に直列に接続
されている。
【0035】前記給電システムにおいて、海中機器に動
作電力を供給するための正常給電時には、海中機器が内
蔵する電源電圧発生用のツエナーダイオードで1電源当
たり数V〜10数Vの電圧降下が生じる。給電路に直列
接続される電源部の数は数100に達する場合があり、
このため陸揚局の給電用定電流電源は数1000Vの電
圧を印加するようになっている。
【0036】一方、ケーブルの静電容量測定時には、陸
揚局の測定装置が供給する測定電圧は通常の給電時と異
なり、100V程度であり、1電源部あたりの印加電圧
は定電圧発生用のツエナー電圧に達しないので、測定電
圧による充電電流は給電路に直列のツエナーダイオード
を通らずに、機器電源側の充放電抵抗成分R3を介して
流れる。
【0037】即ち、双方向給電用の機器では、図5の実
線矢印で示す如く、ダイオードブリッジの順方向のダ
イオードD1→電源部の並列抵抗R3→順方向ダイオー
ドD2の経路を通って機器内を通過する。また、単方向
給電用の機器の場合には、図5の実線矢印で示す如
く、逆サージ阻止用のダイオードD6→並列抵抗R3の
経路で機器を通過する。
【0038】放電時には機器を通過する電流の方向が充
電時とは逆になる。従って、双方向給電用の海中機器で
は、図5の点線矢印で示す如く、ダイオードD3→並
列抵抗R3→ダイオードD4の経路で放電電流が機器を
通過し、単方向給電用の海中機器では、図6の点線矢印
で示す如く、放電電流に対して順方向の逆サージ吸収用
のツエナーダイオードD7の経路で機器を通過する。
【0039】このような海底機器の複数個がケーブルに
適当な間隔で直列に設けられた光海底ケーブル通信シス
テムにおいて、陸揚局から第一中継器以遠でケーブル断
線等による開放障害が発生した場合に、静電容量法によ
る位置標定を行おうとすると給電路に直列に挿入されて
いるダイオードに起因して以下の問題が発生する。
【0040】一般にダイオードの順方向の電圧−電流特
性は非線形であり、端子電圧と電流とは比例せず、電圧
が0に近づくと等価抵抗値が急激に増加する。即ち、一
般にダイオードの電流ID と電圧VD との関係は、 ID =I0 [ exp(VD /VT ) −1] (ここで、I0 :逆方向飽和電流(A)、VT :熱電圧
(シリコンダイオードで約25mV)) で表されるので、端子電圧が0Vの時の動抵抗R0 は、 1/R0 =〔dId /dVD VD=0=I0 /VT0 =VT /I0 (Ω) ケーブル静電容量の充電や放電によって海中機器の前後
間の電位差が0に近づくにつれて、ダイオードの抵抗は
増大して上記R0 に近づく。海中機器に用いているダイ
オードのI0は極めて小さいので、R0 は高抵抗値とな
り、このR0 を介してのケーブル静電容量の充電、放電
には極めて長時間が必要となる。
【0041】即ち、各中継器の前後のケーブルの充電電
圧の差が減少するに伴って、各中継器内部で給電線に直
列接続されているダイオードの端子電圧が減少する。こ
のように、順方向ダイオードを介して局側の測定電圧に
等しい電圧までケーブルを充電しようとすると充電時間
が大きくなり、測定時間制限が在る場合には、ある時間
まで充電した時点で電荷測定側にスイッチを切替えざる
を得なかった。この場合にはスイッチ切替時点では、ケ
ーブルの全長が同一電圧に充電されず充電電荷量に誤差
が生じる。
【0042】また、充電電荷量を測定するためにケーブ
ル電荷を放電させる際には、前述の如く放電電流方向に
対して順方向のダイオードが放電路に直列に挿入される
ことになり、ケーブルにチャージされた全電荷を完全に
放電させるためには長時間を要する。
【0043】このように、従来の海底機器では、静電容
量法により開放障害点を標定する際に、測定時間がかか
り、或いは、測定時間を短縮しようとすると測定精度が
劣化するという問題があった。
【0044】本発明は上記問題に鑑み創出されたもの
て、光海底ケーブルの障害点を静電容量法により標定す
る際の測定時間の短縮、および測定精度の向上が可能
な、海中機器およびそれを用いた標定方法を提供するこ
とを目的とする。
【0045】
【課題を解決するための手段】図1に本発明の海中機器
の原理構成図が示されている。上記課題を解決するため
の本発明の海中機器は、複数の陸揚局1間を接続する海
底ケーブル5の陸揚局1から給電を受ける給電線51に挿
入される海中機器3であって、該海底ケーブル5を介し
た通信を行わしめる主信号回路31と、この給電線に直列
に接続されて主信号回路(32)を動作させる電力を該給電
線(51)から取り出す電源部(31)と、該電源部(31)と直列
に該給電線(51)に接続され、給電電流の減少とともに抵
抗値が増加する非線形素子(34)と、該非線形素子(34)に
並列に設けられた充放電抵抗(RS)とを有して構成され
る。さらにまた、前記充放電抵抗(RS)には並列にコンデ
ンサ(CS)が設けられている。
【0046】そして、開放障害点の標定時には、該非直
線素子に並列に接続された充放電抵抗と給電線とからな
る充電路を介して、陸揚局から障害点までの海底ケーブ
ルの給電線と海水アースとで形成されるコンデンサを所
定電圧に充電し、次に、該充放電抵抗と給電線とからな
る放電路を介して該コンデンサに充電された電荷を陸揚
局側へ放電させて、該コンデンサの静電容量を測定する
ことによって行われる。
【0047】
【作用】開放障害点までの海底ケーブルの静電容量を測
定する際の充電電流および放電電流は、海中機器内にお
いて、ダイオード等の非直線素子に充放電抵抗が並列に
接続されているので、ケーブルが形成する等価コンデン
サの充、放電の最終段階で各海中機器の端子間電位差が
小さくなっても、充・放電経路の直列抵抗は増大しな
い。このため、有限の時間内にケーブル全長にわたって
同一測定電位に充電することが可能となり、また電荷測
定時に、ケーブルの電荷が有限時間で放電するので、従
来に比べて短時間で高精度のケーブの静電容量測定が可
能でとなる。また、パルスエコーを共用する場合には、
抵抗に並列接続されたコンデンサを介してパルスエコー
が変形を受けずに伝達されるので、パルスエコーによる
標定も共用することができる。
【0048】
【実施例】以下添付図により本発明の実施例を説明す
る。図2は、本発明の海中機器の第一実施例構成図、図
3は本発明の第二実施例構成図である。
【0049】図2の第一実施例の海中機器は、図5で前
述したものに充放電抵抗とコンデンサを付加したもので
あり、20KΩの充放電抵抗RSと10μFのコンデンサ
CSとが、ダイオードD1〜D4からなるダイオードブリ
ッジ33の入力端間に並列に接続されている。その他は、
図5で前述した従来の双方向給電を受ける海中機器と同
一である。
【0050】また図3の第二実施例の海中機器は、図6
で前述した単方向給電を受ける従来の海中機器の逆サー
ジ阻止用ダイオードD6の電流流入側とツエナーダイオ
ードD8の電流流出側との間に、20KΩの充放電抵抗
Rsと、10μFのコンデンサCsとが、それぞれ並列
に接続されている。その他の構成は、図6と同一であ
る。
【0051】第一実施例、第二実施例とも、正常給電時
にこの充放電抵抗RSに一部の電流が分流するので、従来
よりその分だけ給電電流を増す必要があるが、正常給電
時には数Aの給電を行うのに対して、充放電抵抗による
増加分はmAオーダなので、局側の定電流電源の負荷増
は無視できる。その他の給電時の動作や、正、逆方向か
らのサージ阻止機能は、前述の従来技術と同一である。
【0052】次に、図7を共に用いて、何れかの海中区
間にケーブルの開放障害が発生した場合の、障害点標定
動作を説明する。 ステップ1:ケーブル破断障害が発生したら正常給電を
停止し、陸揚局側で給電線をアースと接続してケーブル
に残留している電荷を先ず放電する。この際に、海中機
器の両端の電圧差が比較的大きいので、最初は放電方向
に順方向接続されているダイオードを通って放電する。
即ち図2の双方向給電方式でA→Bの方向に正常給電さ
れていたとすると、放電当初はD3→R3→D4の経路
で、また図3ではD7を通って放電する。
【0053】放電が進み各中継区間のケーブルの電荷が
減少すると、海中機器の端子間の電圧が低下していくの
で、これらのダイオードの順方向電圧が減少して0に近
づく。これに伴い、ダイオードD3,D4、またはツエ
ナーダイオードD7に流れる電流は減少して高抵抗を呈
するようになる。このダイオードの抵抗が充放電抵抗RS
の抵抗値より大きくなる時点から、放電電流は主として
充放電抵抗RS( 図2、図3の点線)を介して陸揚局側
に放電する。この充放電抵抗RSの抵抗値は端子間電圧に
無関係に一定なので、所定の時定数により有限の時間内
に全放電が完了する。
【0054】ステップ2:図7の静電容量測定装置の切
替スイッチ43を測定電源42側に倒すと、測定電圧100
Vでケーブルの給電導体と海水アースとで形成される等
価コンデンサが陸揚局側の中継区間から順次、充電され
ていく。この際にも、当初は海中機器の両側の給電線間
の電位差が比較的大きいので、正常給電時の経路(図
2、図3の実線)と充放電抵抗RSを通る経路(図2、
図3の実線)とに充電電流が適宜分流して機器を通過
する。各中継区間の静電容量の充電の進行に伴って、各
海中機器の端子間電圧が減少していく。そして、中継器
や分岐装置内で給電路に直列に挿入されているダイオー
ドの端子間電圧が所定値以下になると、主として、充放
電抵抗RSを介して充電電荷が流れるようになり有限時間
内で全てのケーブル区間が所定の誤差範囲内の充電電圧
に充電される。
【0055】ステップ3:次に、静電容量測定装置の切
替スイッチ43をオペアンプ44側に切替えると、陸揚局の
給電線端部が等価的に接地されるので、充電された上記
電荷は、前述の放電経路を通って放電し、基準コンデン
サに充電電荷と等しい電荷が蓄えられる。この際にも、
放電の最終段階ではステップ1 と同様に、充放電抵抗RS
を介して放電するので放電路に直列挿入された順方向ダ
イオードの抵抗増大に起因して放電時間が長くなること
を防止でき、従来に比べて短時間で放電が終了する。
【0056】具体例としては、使用したケーブルの給電
線の対海水アースとの静電容量が1.8μF/KM、給
電線の直流抵抗が0.7Ω/kmの光海底ケーブルを用
いて、陸揚局から数千kmの開放障害点までに1台あた
り3電源を収容する数百台の海中機器が途中に挿入され
たシステムで所定の精度に充電や放電する時間は約10
分であり、実用上差し支えない測定時間内に正しい測定
値が得られる。
【0057】次に、ダイオードに並列接続したコンデン
サCSは、パルスエコー法を用いる場合に、パルス周波数
に対して充分に低インピーダスとなるように選定される
ことにより、給電路に接続される充放電抵抗RSをバイパ
スして給電線上で伝達されるので、発射パルスや反射パ
ルスの海中機器電源部における減衰や歪みを減少するこ
とが可能となり高精度の標定ができる。
【0058】
【発明の効果】以上説明した如く本発明によれば、給電
路に直列に順方向ダイオードを有する複数の海中機器が
途中に接続されてなる海底ケーブルの開放障害の障害位
置標定を静電容量法により行う際に、高い測定精度で迅
速に測定を行うことが可能となり、海底ケーブルの障害
位置標定性能を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の海中機器の原理構成図
【図2】 本発明の海中機器の第一実施例構成図
【図3】 本発明の海中機器の第二実施例構成図
【図4】 本発明が対象とする光海底ケーブル通信シス
テムの一例の構成図
【図5】 従来の双方向給電用海中機器の構成図
【図6】 従来の単方向給電用海中機器の構成図
【図7】 静電容量法による開放障害標定方法の説明図
【符号の説明】
1,1-1 〜1-4 …陸揚局、2-1,2-2 …海底分岐装置、3…
海底中継器、31…電源部、32…主信号回路、33…ダイオ
ードブリッジ、34…非線形素子, 4…静電容量測定装
置、5,5-1 〜5-5 …光海底ケーブル、51…給電線、RS…
充放電抵抗、CS…コンデンサ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の陸揚局(1) 間を接続する海底ケー
    ブル(5) の陸揚局(1) から給電を受ける給電線(51)に挿
    入される海中機器(3) において、 該海底ケーブル(5) を介した通信を行わしめる主信号回
    路(32)と、 該給電線に直列に接続されて主信号回路(32)を動作させ
    る電力を該給電線(51)から取り出す電源部(31)と、 該電源部(31)と直列に該給電線(51)に接続され、給電電
    流の減少とともに抵抗値が増加する非線形素子(34)と、 該非線形素子(34)に並列に設けられた充放電抵抗(RS)
    と、を有することを特徴とする海底ケーブル通信システ
    ムの海中機器。
  2. 【請求項2】 前記充放電抵抗(RS)に並列にコンデンサ
    (CS)を設けたことを特徴とする請求項1記載の海底ケー
    ブル通信システムの海中機器。
  3. 【請求項3】 複数の陸揚局を接続する海底ケーブルの
    双方向から給電を受けることが可能な給電線に挿入され
    る海中機器において、 該海底ケーブルを介した通信を行わしめる主信号回路
    と、 該給電線に直列に挿入されて主信号回路を動作させる電
    力を供給する電源部と、 給電方向に関係なく常に一定方向の電流を該給電線から
    取り出して該電源部に供給する整流回路と、 該整流回路と並列に設けられた充放電抵抗と、を有する
    ことを特徴とする海底ケーブル通信システムの海中機
    器。
  4. 【請求項4】 前記整流回路がダイオードブリッジであ
    ることを特徴とする請求項3記載の海底ケーブル通信シ
    ステムの海中機器。
  5. 【請求項5】 複数の陸揚局を接続する海底ケーブルの
    単方向から給電を受ける給電線に挿入される海中機器に
    おいて、 該海底ケーブルを介した通信を行わしめる主信号回路
    と、 給電線に直列に挿入され、前記主信号回路を動作させる
    電力を該給電線から取り出す電源部と、 前記電源部と直列に挿入され給電電流とは逆向きのサー
    ジ電流を阻止する第一の非線形素子と、 前記非線形素子と電源部との直列回路に並列に接続され
    前記サージ電流を通過させる第二の非線形素子と、 該第二の非線形素子に並列に設けられた充放電抵抗と、
    を有することを特徴とする海底ケーブル通信システムの
    海中機器。
  6. 【請求項6】 前記第一の非線形素子は給電電流に対し
    て順方向に接続されたダイオードであり、前記第二の非
    線形素子はツエナーダイオードであることを特徴とする
    請求項5記載の海底ケーブル通信システムの海中機器。
  7. 【請求項7】 複数の陸揚局と、該陸揚局間を接続する
    海底ケーブルと、該海底ケーブルの途中に挿入され、該
    海底ケーブルの給電線を介して陸揚局から直列給電を受
    けて陸揚局間の通信を行わしめる複数の海中機器とを備
    えた海底ケーブル通信システムの障害点標定方法であっ
    て、 海中機器の電源部に並列に接続された充放電抵抗と給電
    線とからなる充電路を介して、陸揚局から障害点までの
    海底ケーブルの給電線と海水アースとで形成されるコン
    デンサを所定電圧に充電するステップと、 海中機器の電源部に並列に接続された充放電抵抗と給電
    線とからなる放電路を介して該充放電路を介して、該コ
    ンデンサに充電された電荷を陸揚局側へ放電させて、該
    コンデンサの静電容量を測定するステップとを、有する
    とを特徴とする障害点標定方法。
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