JPH06235045A - 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた電縫鋼管 - Google Patents

耐硫化物応力腐食割れ性に優れた電縫鋼管

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JPH06235045A
JPH06235045A JP5044392A JP4439293A JPH06235045A JP H06235045 A JPH06235045 A JP H06235045A JP 5044392 A JP5044392 A JP 5044392A JP 4439293 A JP4439293 A JP 4439293A JP H06235045 A JPH06235045 A JP H06235045A
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JP
Japan
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electric resistance
less
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steel pipe
resistance welded
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JP5044392A
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Yasushi Yamamoto
康士 山本
Akihiro Miyasaka
明博 宮坂
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 pHが低く厳しい環境においてもSSC特性
を劣化することのない耐硫化物応力腐食割れ性に優れた
電縫鋼管を提供する。 【構成】 C:0.05〜0.35%、Si:0.02
〜0.50%、Mn:0.30〜2.00%、Ca:
0.0005〜0.0080%、Al:0.005〜
0.100%、P:0.030%以下、S:0.005
%以下を基本組成とし、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が(%Ca)/(%O)
≦0.55を満足する鋼で製造した電縫鋼管で、電縫衝
合面を中心として両側30mm以内での硬さ測定値がビ
ッカース硬さで250以下であり、かつ最大値と最小値
の差がビッカース硬さで30以内である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、湿潤な硫化水素を含む
環境によって引き起こされる硫化物応力腐食割れ(以下
SSCで表す)に対して高い抵抗性を有する耐硫化物応
力腐食割れ性に優れた電縫鋼管に関し、特に油井やガス
井で使用される構造部材、例えば油井管やラインパイプ
として好適な上記電縫鋼管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年における油田やガス田の開発におい
ては、急速に増大しつつある需要と、それに応える技術
の進歩によって、従来放置されていたかあるいは開発困
難であった、地中深く埋蔵され、かつ硫化水素などの硫
化物でかなり汚染された、いわゆるサワー環境下にある
油やガスにまで次第に開発の目が向けられて来ている。
したがって、石油および天然ガスの生産分野において
は、外圧(地層の圧力)や内圧(油やガスの圧力)、あ
るいは鋼材の自重による引っ張り荷重等に耐えるととも
に、サワー環境下で使用しても充分に所望性能を発揮で
きる、高強度にして耐硫化物応力腐食割れ特性(以後S
SC特性で示す)に優れた鋼の開発が、一段と要望され
ている。
【0003】鋼の耐硫化物応力腐食割れ性を向上させる
手段については、1950年来種々の検討が加えられ、
現在では例えばNACE Standard MR−0
1−75に示された硬度(強度)の上限以下に鋼の強度
を押えることがSSC特性向上に最も有効であるとさ
れ、使用者の要望にこたえるため、これに基ずくL−8
0がAPI規格に加えられている。
【0004】しかしながら、当然上記硬さの上限規制だ
けでSSC特性を向上できるわけではなく、他の要因が
いくつかあることがわかっている。このSSC特性向上
要因の1つとしてサワー特性の向上が考えられる。サワ
ー特性の向上は、硫化水素を含む環境中での水素ふくれ
割れを低減することであり、この破壊は外部からの負荷
応力がなくとも発生が認められるものである。サワー環
境中で応力がかかった場合、応力軸と平行にこの水素ふ
くれ割れが発生し、これらが連結することによって破壊
に到る場合があり、この水素ふくれ割れの発生を防止す
ることによってSSC特性を向上するという考え方であ
る。
【0005】ところで水素ふくれ割れは、環境中から侵
入した水素が母材中に存在する圧延方向に長く伸びたN
nS等のA系硫化物系介在物と地鉄の境界に集積してガ
ス化し、そのガス圧によって発生するもので、MnS等
のA系硫化物系介在物を割れの核として板面平行割れに
成長し、この板面平行割れが板厚方向に連結されるもの
である。MnSなどのA系硫化物系介在物は、圧延方向
に長く伸びた形状が鋭い切欠となるため割れの核となり
やすく、この種の破壊に最も有害であるとされている。
【0006】こうした水素ふくれ割れに対する抵抗の高
い鋼について、従来から様々な研究がなされ、種々の案
が提案されている。それらは例えば、特公昭57−17
065号公報あるいは特公昭57−16184号公報な
どにその代表例が見られるように、CaやCo添加によ
る割れ防止、極低S化によるMnSの減少、Caあるい
は希土類元素等の添加によるSの固定等を利用するもの
であって、これらの技術によって現在までにかなり厳し
い環境にまで耐え得る鋼が開発されている。また例えば
Caの添加量に関しては、特開昭59−76818号公
報に見られるように、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足させるようなCaの添加が知られている。さら
に、上記サワー特性を向上する種々の手段を用いること
によって、耐SSC特性を向上することが可能となって
いる。
【0007】ところで、電縫鋼管はホットコイル等の鋼
板を成形し電縫溶接するものであって、言うまでもなく
鋼板との決定的な相違は溶接部および溶接熱影響部が存
在することである。しかるに、電縫溶接部周辺部分の耐
SSC特性、それもC方向について検討された例は従来
ほとんど見あたらない。これは通常の製造工程において
MnS等のA系硫化物系介在物が多く存在するのは大型
鋼塊では逆偏析部およびV偏析部であり、連鋳片では中
心偏析部であって、鋼板のエッジ部には、非常にすくな
いこと、板面平行割れを助長するMn、Pのミクロ偏析
が激しいのもMnSなどのA系硫化物系介在物が多く存
在する部位と同様の部位であってエッジ部にはほとんど
存在しないことなどの理由から、鋼板のエッジ部同志を
電縫溶接して製造するいわゆる単幅材では、電縫溶接部
周辺部分の耐SSC特性は良好であると理解されてきた
からである。
【0008】また、1つのホットコイルを幅方向に2以
上に分割した上で製造するいわゆる多条取りの電縫鋼管
では、電縫溶接部の一方あるいは両方に逆V偏析部や中
心偏析部等のSSC感受性の高い部分が該当するため、
SSCに対する認識はあった。しかしこの場合にも対策
としては主としてMnS等のA系硫化物系介在物の減少
といった母材と同様の対策が施されてきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】これに対し、本発明者
は電縫鋼管の電縫溶接部C方向について耐SSC特性を
詳細に調査した結果、MnS等の硫化物系介在物が存在
しない場合でも電縫溶接部のSSC特性の劣化する場合
のあることを見いだした。ただし、電縫溶接部の場合に
は板面垂直型の水素ふくれ割れがSSCの起点となって
いることが母材部とは異なり、このため母材部に比較し
てよりSSCを起こしやすいことが懸念される。さら
に、この種の水素ふくれ割れを起点としたSSCは、本
質的に鋼板エッジ部にミクロ偏析の少ない単幅材であっ
ても発生することがわかった。この板面に垂直な水素ふ
くれ割れを起点とした電縫溶接部のSSCは従来知られ
ていないものであって、母材の板面平行の水素ふくれ割
れを起点とするSSC以上に重大な問題である。しかし
この割れは、従来の水素ふくれ割れに対する対策鋼を使
用した電縫鋼管でも発生し、従来技術では防止できない
ことがわかった。
【0010】本発明者らは、こうした全く新しいタイプ
の板面垂直型水素ふくれ割れを起点とするSSCに対す
る抵抗の高い鋼管を開発せんとして研究を続けた結果、
電縫溶接部のSSCの起点となる水素ふくれ割れの原因
は、電縫衝合部に存在する板状の酸化物系介在物である
ことを突き止めた。さらにこれら板状の酸化物系介在物
のうち、横断面で見た介在物の形状として板厚方向の長
さと円周方向の長さとの比が2以上でかつ長径10μm
以上の介在物が、水素ふくれ割れ発生の核となり、核発
生した水素ふくれ割れが相互に結合して巨視的な割れに
成長してSSCを引き起こすことを見いだした。
【0011】さらに、本発明者の研究によれば、これら
板状の酸化物系介在物は、母材中に予め存在した球状に
近い酸化物系介在物が電縫溶接時の熱影響によって鋼の
融点近くまで加熱されたうえ、スクイズロールによって
両側から加圧されるために板状に変形して生成すること
が明かとなった。またこの介在物の成分を分析した結
果、CaO・Al2 3 復合介在物であることがわかっ
た。
【0012】以上の問題点を解決するために、これまで
にも種々の方法が提案されている。例えば特開昭63−
137144号公報に見られるように、鋼中にZrを添
加して介在物ZrO2 ・Al2 3 の複合介在物に改質
してその融点を上げ、電縫溶接時に延伸させない方法が
ある。ところがこのZr添加は通常の製鋼作業では一般
的でなく、コストが高いうえに、作業に危険が伴う(発
火性が高い)。
【0013】そこで本発明は、特別な元素を使用するこ
となく、安価にかつ操業上安全にこの問題を解決しよう
とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題
を解決するためになされたもので、その要旨とするとこ
ろは、以下の通りである。
【0015】第1の本発明は、重量%で、C:0.05
〜0.35%、Si:0.02〜0.50%、Mn:
0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:
0.005%以下、Ca:0.0005〜0.0080
%、Al:0.005〜0.100%を含有し、S、
O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
食割れ性の優れた電縫鋼管である。
【0016】第2の本発明は、重量%で、C:0.05
〜0.35%、Si:0.02〜0.50%、Mn:
0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:
0.005%以下、Ca:0.0005〜0.0080
%、Al:0.005〜0.100%を含有し、さらに
Mo:0.1〜2.0%、Nb:0.01〜0.15
%、V:0.01〜0.30%、Ti:0.001〜
0.050%、B:0.0003〜0.0040%のう
ち1種または2種以上を含み、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
食割れ性の優れた電縫鋼管である。
【0017】第3の本発明は、重量%で、C:0.05
〜0.35%、Si:0.02〜0.50%、Mn:
0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:
0.005%以下、Ca:0.0005〜0.0080
%、Al:0.005〜0.100%を含有し、さらに
Cu:0.1〜2.0%、Ni:0.1〜9.5%、C
r:0.1〜3.0%のうち1種または2種以上を含
み、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
食割れ性の優れた電縫鋼管である。
【0018】第4の本発明は、重量%で、C:0.05
〜0.35%、Si:0.02〜0.50%、Mn:
0.30〜2.00%、P:0.030%以下、S:
0.005%以下、Ca:0.0005〜0.0080
%、Al:0.005〜0.100%を含有し、さらに
Mo:0.10〜2.0%、Nb:0.01〜0.15
%、V:0.01〜0.30%、Ti:0.001〜
0.050%、B:0.0003〜0.0040%のう
ち1種または2種以上およびCu:0.1〜2.0%、
Ni:0.1〜9.5%、Cr:0.1〜3.0%のう
ち1種または2種以上を含み、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
食割れ性の優れた電縫鋼管である。
【0019】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】本発明者らは、上記の問題点を解決するた
めにさらに調査をすすめた。まず、Caを添加したもの
の中でもSSC特性のレベルに差異のあることから、複
合介在物の成分を調べた。その結果、電縫溶接部で板状
となる介在物が、(CaO)m・(Al2 3 )nの分
子比でm/n≧1であることがわかった。つまり介在物
中Al2 3 よりもCaOが多く存在する状態である。
また、(CaO)m・(Al2 3 )nの分子比でm/
n<1の介在物では、板状になっておらず、そのためS
SC特性の劣化のないことを突き止めた。CaOとAl
2 3 の平衡状態図で見ると、(CaO)m・(Al2
3 )nの分子比でm/n≧1の場合、融点は約136
0℃であり、電縫溶接部近傍で延伸することが充分考え
られる。一方、(CaO)m・(Al2 3 )nの分子
比でm/n<1の場合は、その融点が1600℃以上と
なり、電縫溶接部近傍での延伸を回避することができる
と考えられる。
【0021】つまり、Ca添加により耐サワー性を向上
させて、かつ板状介在物を起点とした水素ふくれ割れ起
因によるSSC特性の劣化を回避するためには、脱酸生
成物の組成を(CaO)m・(Al2 3 )nの分子比
でm/n<1に制御すればよいことが判明した。
【0022】さらに本発明者らは、分子比m/n<1を
達成するための手段とメカニズムを詳細に検討した結
果、溶鋼中Al量にかかわらず溶鋼中O量とCa量のみ
で分子比m/nの決定ができることを見いだした。図1
にこれを示すが、図中ハッチングした部分を越えてCa
を添加するとm/n>1となることがわかった。これは
鋼中O量とCa量の関係が(%Ca)/(%O)≦0.
55を満足することにより達成することができる。
【0023】以上のように分子比m/nが溶鋼中Al量
によらずO量とCa量で決定されるという現象は、Al
よりもCaのほうが酸化物の生成自由エネルギーが小さ
い(より酸化されやすい)と考えればよい。つまり、O
がまずCaと結合し、余剰のOがAlと結合すると考え
ると、溶鋼中にある程度以上のAlが存在がすれば分子
比m/nはAl量によらないことがわかる。
【0024】ところで、耐サワー性を改善する手段とし
て本発明ではCa添加を採用している。それは水素ふく
れ割れの発生起点となるMnSを消滅させるためにS量
を極限まで低減させるよりも、Caを添加してMnSの
形態制御による無害化のほうが工業的規模の生産工程に
おいては有利であるとの考え方、および実験結果による
ものである。
【0025】つまり、S、O、Caの含有量を 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 に満足させるようなCaの添加である。これは、Caが
Sよりも酸素との親和力が強いことから、酸素と結合し
たCaを差し引いた残りのCa(有効Ca)がSと原子
量比で結合し、S量に見合うだけの有効Ca量があれば
MnSは完全に形態制御されていることを示すものであ
る。またこの式は、Caを過剰に添加するとクラスター
状介在物が多く生成し有害となり、目的を達成し得ない
ことも示している。
【0026】つまり上式で示される有効Ca量を、Mn
Sを形態制御させるための下限と、クラスター状介在物
を生成させないための上限の間にコントロールし、それ
によって耐サワー性を確保しようとするものである。
【0027】また本発明者らは、上記介在物起因による
水素ふくれ割れ以外にも電縫溶接部のSSC特性を劣化
する要因を詳細に検討した結果、電縫衝合面を中心とし
て両側30mm以内での硬さ測定値の最大値がビッカー
ス硬さで250以下で、かつ最大値と最小値の差がビッ
カース硬さで30以内である必要性を見いだした。硬さ
の最大値の規制は従来からの知見であるが、硬さ分布規
制の必要性に関しては、硬さ分布に差のある部位での応
力集中による割れの発生がSSC特性を劣化するためと
考えた。
【0028】次に本発明は、耐硫化物応力腐食特性に優
れた電縫鋼管全般を対象とするものであるが、上記成分
を規定する理由は以下の通りである。
【0029】Cは鋼材の強度を高める作用があり、0.
05%以上添加されるが、0.35%を越えて添加され
ると靱性を著しく劣化するため、その含有量を0.05
〜0.35%とした。
【0030】Siは固溶体強化作用並びに鋼材の強度お
よび延性を改善する作用があり、0.02%以上添加さ
れるが、0.50%を越えて添加されると鋼材の靱性を
劣化するため、その含有量を0.02〜0.50%とし
た。
【0031】MnもCと同様、鋼材の強度を高める作用
があり、0.30%以上添加されるが、その含有量が
2.00%を越えると製鋼作業を困難として経済的でな
いばかりでなく、溶接性を阻害することから、その含有
量を0.30〜2.00%とした。
【0032】Pは母材の水素ふくれ割れを伝播しやすく
なる元素であるため、その上限を0.03%とした。
【0033】SはMnと結合して母材部の水素ふくれ割
れの起点となるMnSをつくるため、その上限を0.0
05%とした。
【0034】Caは硫化物系介在物の形態制御により、
SSCの起点となる水素ふくれ割れを防止するのに有効
で0.0005%以上添加されるが、多くなると鋼中介
在物を形成し鋼の性質を悪化させるため、その含有量を
0.0005〜0.0080%とした。
【0035】Alは製鋼段階の脱酸のために必要であ
り、その下限を0.005%とした。また0.100%
を越えて添加されると介在物の量が増加して鋼の清浄性
が失われること、および製鋼作業に支障をきたすことな
どから、その範囲を0.005〜0.100%とした。
【0036】Moは強度上昇に有用で0.10%以上添
加されるが、多くなると溶接性を阻害するため、その範
囲を0.10〜2.0%とした。
【0037】Nbはオーステナイト粒の細粒化や強度上
昇に有用で0.01%以上添加されるが、多くなると溶
接性を阻害するため、その範囲を0.01〜0.15%
とした。
【0038】Vは析出強化に有用で0.01%以上添加
されるが、多くなると溶接性を阻害するため、その範囲
を0.01〜0.30%とした。
【0039】Tiはオーステナイト粒の細粒化に有用で
0.001%以上添加されるが、多くなると溶接性を阻
害するため、その範囲を0.001〜0.050%とし
た。
【0040】Bは微量の添加によって鋼の焼入れ性を著
しく高める効果を有する。この効果を有効に得るために
は少なくとも0.0003%のBが必要であるが、過多
に添加するとB化合物を形成して鋼の靱性を劣化させる
ので、その範囲を0.0003〜0.0040%とし
た。
【0041】Cuは強度上昇、耐食性向上に有効で0.
1%以上添加されるが、2.0%を越えて添加しても強
度の上昇代がほとんどなくなるので、その範囲を0.1
〜2.0%とした。
【0042】Niは低温靱性の改善に有効で0.1%以
上添加されるが、高価な元素であるために、その範囲を
0.1〜9.5%とした。
【0043】Crは強度上昇や耐食性向上に有効で0.
1%以上添加されるが、多くなると低温靱性、溶接性を
阻害するため、その範囲を0.1〜3.0%とした。
【0044】また、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
(%S)≦2.5 を満足させる必要がある。これは、酸素と結合したCa
を差し引いた残りのCa(有効Ca)がSと原子量比で
結合し、S量に見合うだけの有効Ca量があればMnS
は完全に形態制御されていることを示すものであり、こ
のためには1.0以上必要である。また、Caを過剰に
添加するとクラスター状介在物が多く生成して有害とな
り、目的を達成し得ないため、その上限を2.5とし
た。
【0045】また鋼中O量とCa量の関係が(%Ca)
/(%O)≦0.55を満足させる必要があり、これは
脱酸生成物の組成を(CaO)m・(Al2 3 )nの
分子比でm/n<1に制御するためである。詳細な検討
の結果、(%Ca)/(%O)>0.55の場合、脱酸
生成物の分子比m/n>1となるため、(%Ca)/
(%O)の上限を0.55とした。
【0046】本発明の鋼の製造工程としては、通常工程
にて電縫溶接後、電縫溶接部近傍のみあるいは鋼管全体
を焼準、焼準+焼戻し、焼戻し、焼入れ、焼入れ+焼戻
しする工程を適用しても良い。
【0047】その際前述のように、硬さ分布に差のある
部位での応力集中による割れ発生を防止するために、電
縫衝合面を中心として両側30mm以内での硬さ測定値
の最大値がビッカース硬さで250以下であり、かつ最
大値と最小値の差がビッカース硬さで30以内とする必
要がある。なお鋼管に熱処理を施すか否かは、上述の硬
さの要求以外に強度、靱性等他の機械的性質確保の必要
に応じて決定すればよい。
【0048】
【実施例】次に本発明の実施例について述べる。
【0049】表1及び表2に示す組成の鋼を13mm厚
の鋼板に熱間圧延後、通常の工程にて電縫鋼管とした。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】次にこれらの電縫鋼管の電縫溶接部C方向
から、図3に示す容量で電縫鋼管1の衝合部2近傍より
定荷重方式の硫化物応力腐食試験片4を採取した。その
際、電縫溶接部がサンプルの中央部を横切るようにし
た。3は溶接方向である。耐硫化物応力腐食特性を評価
する試験としては、NACE TM−01−77標準試
験法により試験し、電縫溶接部C方向の降状強度(σ
y)に対する限界応力(σth)の比で評価し、σth
/σy≧0.75であれば良好であるとした。
【0053】表3及び表4中に上記試験結果を示す。A
1、B1、C1、E1、F1の本発明鋼では、良好な電
縫溶接部SSC特性を示している。これに対して、比較
鋼では電縫溶接部SSC特性が劣化している。
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】上記表3及び表4において 注1)A値=(%Ca){1−72(%O)}/1.2
5(%S)。 注2)介在物構成比は、CaO:Al2 3 の分子構成
比を示す。 注3)Hvmax−Hvmin。 注4)及び注5)単位は、Kgf/mm2 。 注6)表中Qは、電縫溶接後電縫溶接部のみ焼入れ処理
したもの。QTは電縫溶接部のみ焼入れ焼戻し処理をし
たもの。Nは電縫溶接部のみノルマ処理したもの。また
FBNは、電縫溶接後管体をノルマ処理したもの。
【0057】表3及び表4に示すように、A2、B2、
C2は△Hvが30を越えているために電縫溶接部SS
C特性が劣化している。D1はA値が1以下のためCa
添加量が不足のため、MnSの形態制御が不十分なため
電縫溶接部SSC特性が劣化している。E2、F2は硬
さ測定値の最大値が250を越えているため電縫溶接部
SSC特性が劣化している。G1、H1、I1、J1、
K1は、O量とCa量の関係が(%Ca)/(%O)≦
0.55を満足しておらず、介在物の分子構成比m/n
が1を越えているため電縫溶接部SSC特性が劣化して
いる。
【0058】鋼中T−O量とCa量の関係については、
図1と図2に示す。図1はO量とCa量の関係の(%C
a)/(%O)≦0.55を図で示したものである。図
2は、A値と硬さ分布の良好なA1、B1、C1、E
1、F1、G1、H1、I1、J1、K1に関して、O
量とCa量の関係だけでSSC特性結果を整理したもの
である。
【0059】
【発明の効果】上記の試験結果からわかるとうり、本発
明はpHが低く厳しい環境においてもSSC特性を劣化
することのない電縫鋼管を提供することを可能にしたも
のであり、産業の発展に貢献するところ極めて大なるも
のがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】分子構成比を満足するためのO量とCa量の関
係を示す図である。
【図2】分子構成比を満足するためのO量とCa量の関
係を示す試験結果を示す図である。
【図3】実施例における試験片の採取要領を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 電縫鋼管 2 衝合面 3 溶接方向 4 試験片

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.02〜0.50%、 Mn:0.30〜2.00%、 P:0.030%以下、 S:0.005%以下、 Ca:0.0005〜0.0080%、 Al:0.005〜0.100% を含有し、S、O、Caの含有量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
    (%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
    造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
    m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
    0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
    さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
    食割れ性の優れた電縫鋼管。
  2. 【請求項2】 重量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.02〜0.50%、 Mn:0.30〜2.00%、 P:0.030%以下、 S:0.005%以下、 Ca:0.0005〜0.0080%、 Al:0.005〜0.100% を含有し、さらに Mo:0.1〜2.0%、 Nb:0.01〜0.15%、 V:0.01〜0.30%、 Ti:0.001〜0.050%、 B:0.0003〜0.0040% のうち1種または2種以上を含み、S、O、Caの含有
    量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
    (%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
    造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
    m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
    0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
    さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
    食割れ性の優れた電縫鋼管。
  3. 【請求項3】 重量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.02〜0.50%、 Mn:0.30〜2.00%、 P:0.030%以下、 S:0.005%以下、 Ca:0.0005〜0.0080%、 Al:0.005〜0.100% を含有し、さらに Cu:0.1〜2.0%、 Ni:0.1〜9.5%、 Cr:0.1〜3.0% のうち1種または2種以上を含み、S、O、Caの含有
    量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
    (%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
    造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
    m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
    0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
    さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
    食割れ性の優れた電縫鋼管。
  4. 【請求項4】 重量%で、 C:0.05〜0.35%、 Si:0.02〜0.50%、 Mn:0.30〜2.00%、 P:0.030%以下、 S:0.005%以下、 Ca:0.0005〜0.0080%、 Al:0.005〜0.100% を含有し、さらに Mo:0.10〜2.0%、 Nb:0.01〜0.15%、 V:0.01〜0.30%、 Ti:0.001〜0.050%、 B:0.0003〜0.0040% のうち1種または2種以上および Cu:0.1〜2.0%、 Ni:0.1〜9.5%、 Cr:0.1〜3.0% のうち1種または2種以上を含み、S、O、Caの含有
    量が 1.0≦(%Ca){1−72(%O)}/1.25
    (%S)≦2.5 を満足し、O量とCa量の関係が (%Ca)/(%O)≦0.55 を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなる鋼で製
    造した電縫鋼管で、電縫衝合面を中心として両側30m
    m以内での硬さ測定値の最大値がビッカース硬さで25
    0以下であり、かつ最大値と最小値の差がビッカース硬
    さで30以内であることを特徴とする、耐硫化物応力腐
    食割れ性の優れた電縫鋼管。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010150915A1 (ja) 2009-06-24 2010-12-29 Jfeスチール株式会社 耐硫化物応力割れ性に優れた油井用高強度継目無鋼管およびその製造方法
WO2021161366A1 (ja) 2020-02-10 2021-08-19 日本製鉄株式会社 ラインパイプ用電縫鋼管

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