JPH06228780A - ステンレスの水系伸線剤用洗浄剤組成物および洗浄方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 化１に示した一般式（Ｉ）または一般式（I
I）で表わされるジまたはトリホスホン酸誘導体、オル
トリン酸、縮合リン酸またはこれらの塩から選ばれる１
種以上、ノニオン等の界面活性剤を含有するステンレス
の水系伸線剤用洗浄剤組成物。 【効果】 伸線加工後のステンレス伸線に付着した水系
伸線剤および金属石鹸に対して優れた効果を発揮し、洗
浄時にステンレス伸線を腐食して錆を発生することもな
く、水性で安全である。 【化１】 （Ｒ₁，Ｒ₂：水素、ヒドロキシル基、ベンジル基、炭素
数１〜２１のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリ
ール基またはアリール基 Ｍ₁，Ｍ₂，Ｍ₃，Ｍ₄，Ｍ₅，Ｍ₆：水素または塩を形成す
る対イオン ｍ，ｎ，ｑ：１または２）

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ステンレスの伸線加工
時に用いる水系伸線剤用洗浄剤組成物、およびこの組成
物を利用した洗浄方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、ステンレスの伸線加工時には
伸線剤ないし潤滑剤として、炭化水素油、フッ素樹脂、
ステアリン酸カルシウム、二硫化モリブデンなどが用い
られている。そこで、伸線加工により得られたステンレ
ス伸線には、これら伸線剤、潤滑剤が付着していること
になり、この付着伸線剤を洗浄、除去することが必要と
なる。従来、伸線剤の洗浄法としては、トリクロロエチ
レン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤を用いて浸漬
洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、ブラッシング等を行なう
ことが知られている。また、ベンゼン、トルエン、キシ
レン等のＢＴＸ溶剤とノニオン界面活性剤等の界面活性
剤とを組み合わせた洗浄剤を用い、浸漬洗浄する方法も
知られている。

【０００３】しかし、このように有機溶剤を使用する方
法では、地球環境を汚染するばかりか、作業環境上の問
題も大きい。また、鉱酸の使用も知られているが、洗浄
後にステンレス伸線に錆が発生し、腐食性の点で問題が
ある。そこで、有機溶剤を全く用いない洗浄剤の開発が
求められており、炭化水素油を主体とした伸線加工油に
対しては、現在、水酸化カリウム等の強アルカリと両性
界面活性剤とを組み合わせた伸線加工油用洗浄剤が知ら
れている。

【０００４】一方、伸線加工時に用いる伸線剤の改良も
進み、これまでの炭化水素油を主体とした伸線加工油か
ら、水系の伸線剤へと移行しつつある。水系の伸線剤
は、消石灰、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、ポ
リアクリル酸ナトリウム等の無機塩または有機塩、ある
いはさらにステアリン酸、パルミチン酸のカルシウム、
マグネシウム、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチ
ウム塩等の金属石鹸などからなる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明はステンレス用
の水系伸線剤に対して優れた洗浄性能を示す洗浄剤組成
物および洗浄方法を提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明のステンレスの水
系伸線剤用洗浄剤組成物は、化３に示した一般式（Ｉ）
または一般式（II）で表わされるジまたはトリホスホン
酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン酸またはこれらの塩
から選ばれる１種以上を含有することを特徴とする。

【０００７】

【化３】 （Ｒ₁，Ｒ₂：水素、ヒドロキシル基、ベンジル基、炭素
数１〜２１のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリ
ール基またはアリール基 Ｍ₁，Ｍ₂，Ｍ₃，Ｍ₄，Ｍ₅，Ｍ₆：水素または塩を形成す
る対イオン ｍ，ｎ，ｑ：１または２）

【０００８】また、本発明のステンレス用水系伸線剤の
洗浄方法は、上記のジないしはトリスルホン酸誘導体、
またはオルトリン酸、縮合リン酸あるいはこれらの塩の
少なくとも１種を０．５〜２５重量％含み、さらに必要
に応じて界面活性剤を含む水性洗浄液を用い、ステンレ
ス用水系伸線剤が付着したステンレス伸線を洗浄するこ
とを特徴とする。

【０００９】

【発明の実施態様】本発明では主洗浄活性成分として上
記一般式（Ｉ）または（II）のジないしはトリホスホン
酸誘導体またはオルトリン酸、縮合リン酸あるいはこれ
らの塩が用いられる。

【００１０】ジホスホン酸誘導体としては、一般式
（Ｉ）でＲ₁，Ｒ₂が水素、ヒドロキシル基、ベンジル
基、炭素数１〜２１のアルキル基、アルケニル基、アル
キルアリール基またはアリール基であるものが用いられ
る。このようなジホスホン酸誘導体の具体例としては、
以下のもの、およびその塩が用いられ、塩としてはナト
リウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、アン
モニウム塩等が挙げられ、特に１−ヒドロキシエチリデ
ン−１，１−ジホスホン酸及びその塩が好ましい。

【００１１】１−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホ
スホン酸（一般式（Ｉ）でＲ₁ ＝メチル基、Ｒ₂ ＝ヒド
ロキシル基） １−ヒドロキシブチリデン−１，１−ジホスホン酸 １−ヒドロキシヘキシリデン−１，１−ジホスホン酸 １−ヒドロキシドデシリデン−１，１−ジホスホン酸 １−ヒドロキシヘキサデシリデン−１，１−ジホスホン
酸 １−ヒドロキシフェニルメチレン−１，１−ジホスホン
酸 エチリデン−１，１−ジホスホン酸 イソプロピリデン−１，１−ジホスホン酸 ベンジルメチレン−１，１−ジホスホン酸 ビスベンジルメチレン−１，１−ジホスホン酸

【００１２】一般式（II）のトリホスホン酸誘導体とし
ては、アミノトリ（メチレンホスホン酸）［一般式（I
I）でｍ，ｎ，ｑが共に１］、アミノトリ（エチレンホ
スホン酸）またはこれらの塩などが挙げられ、好ましく
はアミノトリ（メチレンホスホン酸）およびその塩であ
る。塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等の
アルカリ金属、アンモニウム塩等が挙げられる。

【００１３】縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポ
リリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、トリ
メタリン酸等が挙げられる。オルトリン酸または縮合リ
ン酸の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等
のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。ジ
またはトリホスホン酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン
酸あるいはこれらの塩は、合計量で本発明の洗浄剤組成
物中に０．５〜９０重量％配合することが好適であり、
好ましくは５〜５０重量％配合される。

【００１４】本発明の洗浄剤組成物中には、さらにアニ
オン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤
等の界面活性剤を配合することができる。アニオン界面
活性剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エス
テル類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンお
よび脂肪族アマイドの硫酸塩類、脂肪アルコールリン酸
エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン塩
類、アルキルアリールスルホン酸塩類、ホルマリン縮合
のナフタリンスルホン酸塩類等が例示される。

【００１５】ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシ
アルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンポ
リオキシプロピレンエーテル類、ポリオキシアルキレン
アルキルフェノールエーテル類、ポリオキシアルキレン
アルキルアミン類、化４（一般式III ）で示されるエス
テル型ノニオン界面活性剤（脂肪酸ポリオキシアルキレ
ンエステル低級アルキルエーテル）

【００１６】

【化４】Ｒ₁ＣＯ(ＯＡ)nＯＲ₂ …（III） （Ｒ₁ＣＯ ：長鎖脂肪酸残基 (ＯＡ)n ：エチレンオキシド、プロピレンオキシドまた
はブチレンオキシドがｎモル付加していることを示す Ｒ₂ ：低級アルキル基） ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシソルビタン
アルキルエステル類等が挙げられる。ここでポリオキシ
アルキレンとはエチレンオキサイド、プロピレンオキサ
イドまたはブチレンオキサイドが複数モル付加している
ことを示す。

【００１７】両性界面活性剤としては、アルキルベタイ
ン、アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられ
る。なお、上記界面活性剤の例示において、「アルキ
ル」とは二重結合を有するアルケニル基をも包含する概
念である。本発明の洗浄剤に界面活性剤を配合すること
により、水リンス性が向上し、さらに洗浄力の増大もし
くは二硫化モリブデンの分散性が向上する。二硫化モリ
ブデンの分散性が良好となると、二硫化モリブデンが付
着したステンレス伸線の洗浄に効果を発揮する。界面活
性剤を配合する場合は、洗浄剤組成物中に０．５〜５０
重量％配合することが好適であり、好ましくは１〜２５
重量％である。本発明の洗浄剤組成物中には、さらに必
要に応じ付加成分として、キレート剤、有機酸、低温安
定化剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤等を配合すること
ができる。

【００１８】本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄するに
際しては、一般式（Ｉ）または（II）のジまたはトリホ
スホン酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン酸あるいはそ
れらの塩の少なくとも１種以上を、合計量で０．５〜２
５重量％、好ましくは２〜１０重量％含む洗浄液を調製
し、この洗浄液により水系伸線剤付着ステンレス伸線を
洗浄することが、洗浄性、活性剤の残存量の低減性の点
から好ましい。洗浄方法としては、浸漬洗浄法、超音波
洗浄法、ブラッシング、電解洗浄法等の公知の洗浄方法
をすべて利用することができる。また、界面活性剤を使
用する場合は、洗浄液中に界面活性剤が０．０１〜１０
重量％含まれることが好ましく、より好ましくは０．５
〜５重量である。

【００１９】洗浄後は、温水による浸漬すすぎあるいは
スプレーリンスが効果的であり、洗浄液を能率的に除去
することができる。また、ノニオン界面活性剤を洗浄液
中に添加、配合した場合には、ノニオン界面活性剤の曇
点より１０〜１５℃程度低い温度ですすぐことにより、
ノニオン界面活性剤の残存量を低減できる。

【００２０】

【発明の効果】本発明によれば、伸線加工後のステンレ
ス伸線に付着した水系伸線剤および金属石鹸に対して優
れた効果を発揮し、また、洗浄時にステンレス伸線を腐
食して錆を発生することもなく、しかも水性で安全な洗
浄剤および洗浄方法が実現できる。

【００２１】

【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、それに先立って実施例で採用した評価方法
を説明する。

【００２２】（１） 洗浄力の評価方法 ホウ酸、ケイ酸、硫酸塩等の混合物／金属石鹸／二硫化
モリブデンを用いて伸線加工されたステンレス伸線を、
７０〜８０℃で３０秒間、撹拌しながら浸漬洗浄した
後、２０〜２５℃の水で３０秒間、撹拌すすぎによりリ
ンスした。洗浄後のステンレス伸線の外観を、目視によ
り以下の基準で評価し洗浄力とした。 ◎：伸線剤残着がなく非常に良好 ○：伸線剤残着がほとんどなく良好 △：伸線剤残着がわずかにあり、やや悪い ×：伸線剤が残着し悪い（未洗浄の状態）

【００２３】（２） 金属石鹸分の定量方法 洗浄後のステンレス伸線を、３％塩酸水溶液で４０℃、
３０分間超音波洗浄して金属石鹸を抽出した後、赤外線
吸収スペクトル測定を行ない、金属石鹸を定量した。

【００２４】（３） 二硫化モリブデン（ＭｏＳ₂ ）の
分散性の評価方法 各洗浄液に対して、二硫化モリブデンを含む金属石鹸を
０．５％添加し、その分散性を目視により以下の基準で
評価した。 ○：分散性良好 ×：分散せず

【００２５】（４） 腐食性の評価方法 ホウ酸、ケイ酸、硫酸塩等の混合物／金属石鹸／二硫化
モリブデンを用いて伸線加工されたステンレス伸線を、
７０℃で３０分間洗浄液に浸漬した後そのまま風乾し、
表面状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。 ○：錆の発生なし ×：錆の発生あり 実施例 後記表１および表２に示した組成の洗浄剤組成物を調製
した。ついで、水で所定倍率に希釈して洗浄液を調製
し、洗浄力、腐食性、二硫化モリブデン分散性を評価
し、また、金属石鹸分を定量した。以上の結果を表１お
よび表２に示した。

【００２６】

【表１】表１：洗浄剤（液）組成および評価方法の１ 実 施 例 １ ２ ３ ４ ５ ６ ７ ８ ９ 10 11 12 洗浄剤組成(wt％) 酸： オルトリン酸 40 − 40 − − 20 − − − − − − ジホスホン酸１*¹ − 40 − 50 50 30 10 − − − − − ジホスホン酸２*² − − − − − − 40 − − − − − トリホスホン酸*³ − − − − − − − 25 − − − − ピロリン酸 − − − − − − − − 20 − − − トリポリリン酸 − − − − − − − − − 40 − − ヘキサメタリン酸 − − − − − − − − − − 40 − テトラメタリン酸 − − − − − − − − − − − 4 ピロリン酸Ｋ − − − − − − − − 5 − − − 塩酸 − − − − − − − − − − − − 硫酸 − − − − − − − − − − − − 界面活性剤： ＮＰＥ*⁴ − − 10 − 5 5 5 − 5 5 − 1 ＥＯ／ＰＯ*⁵ − − 10 15 − − − − − − 10 − ＡＥＳ−Ｎａ*⁶ − − − − 5 5 5 − − 5 − − 水 60 60 40 35 40 40 40 75 70 50 50 95 使用時希釈倍率 10 10 10 10 10 10 10 5 5 10 10 1 洗浄液濃度(wt％) 4 4 6 6.5 6 6 6 5 6 5 5 5 評価： 洗浄力 ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 金属石鹸分(mg/m²) 202 83 54 58 50 77 61 63 74 69 75 73 ＭｏＳ₂分散性 × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 腐食性 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ *1) １−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホスホン酸 *2) １−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホスホン酸
３ナトリウム *3) アミノトリ(メチレンホスホン酸) *4) ポリオキシエチレン(10モル)ノニルフェニルエーテ
ル *5) ポリオキシエチレン(４モル)ポリオキシプロピレン
(30モル)エーテル *6) ポリオキシエチレン(３モル)ラウリルエーテル硫酸
エステルナトリウム塩

【００２７】

【表２】 *1) １−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホスホン酸 *2) １−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホスホン酸
３ナトリウム *3) アミノトリ(メチレンホスホン酸) *4) ポリオキシエチレン(10モル)ノニルフェニルエーテ
ル *5) ポリオキシエチレン(４モル)ポリオキシプロピレン
(30モル)エーテル *6) ポリオキシエチレン(３モル)ラウリルエーテル硫酸
エステルナトリウム塩

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【手続補正書】

【提出日】平成５年４月６日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１８

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１８】本発明の洗浄剤組成物を用いて洗浄するに
際しては、一般式（Ｉ）または（II）のジまたはトリホ
スホン酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン酸あるいはそ
れらの塩の少なくとも１種以上を、合計量で０．５〜２
５重量％、好ましくは２〜１０重量％含む洗浄液を調製
し、この洗浄液により水系伸線剤付着ステンレス伸線を
洗浄することが、洗浄性、活性剤の残存量の低減性の点
から好ましい。洗浄方法としては、浸漬洗浄法、超音波
洗浄法、ブラッシング、電解洗浄法等の公知の洗浄方法
をすべて利用することができる。また、界面活性剤を使
用する場合は、洗浄液中に界面活性剤が０．０１〜１０
重量％含まれることが好ましく、より好ましくは０．１
〜５重量％である。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 化１に示した一般式（Ｉ）または一般式
   （II） 【化１】 （Ｒ₁，Ｒ₂：水素、ヒドロキシル基、ベンジル基、炭素
   数１〜２１のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリ
   ール基またはアリール基 Ｍ₁，Ｍ₂，Ｍ₃，Ｍ₄，Ｍ₅，Ｍ₆：水素または塩を形成す
   る対イオン ｍ，ｎ，ｑ：１または２）で表わされるジまたはトリホ
   スホン酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン酸またはこれ
   らの塩から選ばれる１種以上を含有することを特徴とす
   るステンレスの水系伸線剤用洗浄剤組成物。
2. 【請求項２】 さらに界面活性剤を含有する請求項１に
   記載の洗浄剤組成物。
3. 【請求項３】 化２に示した一般式（Ｉ）または一般式
   （II） 【化２】 （Ｒ₁，Ｒ₂：水素、ヒドロキシル基、ベンジル基、炭素
   数１〜２１のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリ
   ール基またはアリール基 Ｍ₁，Ｍ₂，Ｍ₃，Ｍ₄，Ｍ₅，Ｍ₆：水素または塩を形成す
   る対イオン ｍ，ｎ，ｑ：１または２）で表わされるジまたはトリホ
   スホン酸誘導体、オルトリン酸、縮合リン酸またはこれ
   らの塩から選ばれる１種以上を０．５〜２５重量％含
   み、さらに必要に応じて界面活性剤を含む水性洗浄液を
   用い、ステンレス用水系伸線剤が付着したステンレス伸
   線を洗浄することを特徴とするステンレス用水系伸線剤
   の洗浄方法。