JPH10219283A - 伸線用洗浄剤組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑剤及び潤滑被膜の洗浄力を損なわず、金
属石鹸が蓄積した洗浄液での発泡性を抑えることがで
き、しかも液安定性に優れた伸線用アルカリ洗浄剤組成
物の開発を目的とする。 【解決手段】 （Ａ）アルカリ剤、（Ｂ）キレート型ビ
ルダー、（Ｃ）両性界面活性剤、（Ｄ）アセチレン系非
イオン性界面活性剤、（Ｅ）特定脂肪酸及び（Ｆ）水を
特定の割合で配合して伸線用洗浄剤組成物とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼をは
じめとする各種金属の伸線に適応できる伸線用洗浄剤組
成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、伸線加工時には、潤滑剤とし
てオイル（鉱物油）を表面に塗布したり、あるいは金属
石鹸（ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウ
ム）などの潤滑性粉末を、樹脂被膜剤や水溶性被膜剤を
介して金属表面に付着させて潤滑被膜を形成させてい
る。そのため、伸線加工後、これらの潤滑剤や潤滑被膜
を速やかに除去するために、洗浄工程が必要となる。

【０００３】従来の洗浄方法としては、トリクロロエチ
レン、パークロロエチレン等の塩素系溶剤を用いて浸漬
洗浄、超音波洗浄、蒸気洗浄、ブラッシング等を行うこ
とが知られている。また、トルエン、キシレン等のＢＴ
Ｘ溶剤とノニオン性界面活性剤などの界面活性剤とを組
み合わせた洗浄剤を用い、浸漬洗浄する方法も知られて
いる。しかし、このように有機溶剤を使用する方法で
は、地球環境を汚染するばかりか、作業環境上の問題も
大きい。

【０００４】また、鉱酸やリン酸の使用も知られている
が、伸線材又は洗浄設備への腐食性の点で問題がある。

【０００５】そこで、有機溶剤を全く用いない洗浄剤の
開発が求められており、現在、水酸化カリウムなどの強
アルカリと両性界面活性剤とを組み合わせた伸線用洗浄
剤が知られており、キレート剤としてエチレンジアミン
テトラ酢酸塩、グルコン酸塩を配合した例が記載されて
いる（特開平１−２８３３９４号公報）が、金属石鹸付
着伸線の洗浄後に蓄積する金属石鹸（ステアリン酸カル
シウム）と水酸化カリウム水溶液から生成する水溶性カ
リ石鹸による発泡を抑制できないために、消泡剤の別添
加が必要となり、作業性が悪い。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、潤
滑剤及び潤滑被膜の洗浄力を損なわず、金属石鹸が蓄積
した洗浄液での発泡性を抑えることができ、しかも液安
定性に優れた伸線用アルカリ洗浄剤組成物の開発を目的
とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するた
めに、本発明の伸線用洗浄剤組成物は、下記の（Ａ）、
（Ｂ）、（Ｃ）、（Ｄ）、（Ｅ）及び（Ｆ）成分を必須
成分として含有することを特徴とする。 （Ａ）アルカリ剤：５〜３０重量％ （Ｂ）キレート型ビルダー：１〜３０重量％ （Ｃ）両性界面活性剤：０.１〜３０重量％ （Ｄ）前記の式（化１）で表されるアセチレン系非イオ
ン性界面活性剤：０．１〜１０重量％ （Ｅ）前記の式（化２）で表される脂肪酸又はその塩：
１〜２０重量％ （Ｆ）水：残部

【０００８】

【発明の実施の形態】（Ａ）成分のアルカリ剤の具体例
としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルソ
珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムか
ら選ばれる１種以上が好ましい。

【０００９】（Ａ）成分の配合量は、本発明の洗浄剤組
成物中において５〜３０重量％配合することが好適であ
り、洗浄性の面から、１０〜３０重量％がより好まし
い。

【００１０】（Ｂ）成分のキレート型ビルダーの具体例
としては、ニトリロ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エ
チレンジアミン二酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸
等のアミノカルボン酸類や、リンゴ酸、クエン酸、グル
コン酸等のオキシカルボン酸類や、ポリアクリル酸、ポ
リマレイン酸、トリポリリン酸、オルソリン酸等や、あ
るいはこれらの塩としてナトリウム塩、カリウム塩、ア
ンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノール
アミン塩、トリエタノールアミン塩、ラウリルアミン塩
等が挙げられる。

【００１１】これら（Ｂ）成分の配合量は、本発明の洗
浄剤組成物中において１〜３０重量％配合することが好
適であり、洗浄性及び液安定性の面から、３〜２０重量
％がより好ましい。

【００１２】（Ｃ）成分の両性界面活性剤の具体例とし
ては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、オクチ
ルベタイン、ラウリルベタインアミン、ラウリン酸アミ
ドアルキルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロ
キシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。

【００１３】これら（Ｃ）成分の両性界面活性剤の配合
量は、本発明の洗浄剤組成物中において０．１〜３０重
量％配合することが好適であり、洗浄性、液安定性及び
は破泡性の面から、０．１〜１０重量％がより好まし
い。

【００１４】（Ｄ）成分のアセチレン系非イオン性界面
活性剤は、前記の式（化１）で表される化合物である。

【００１５】このアセチレン系非イオン性界面活性剤の
具体例を示すと下記の式（化３）で表される化合物や、
下記の式（化４）で表される化合物等が挙げられるが、
前記の式（化１）で表される化合物中における、ヒドロ
キシアルキル基又はヒドロキシアルケニル基の構造が、
これに限定されるものではない。

【００１６】

【化３】

【００１７】

【化４】

【００１８】（Ｄ）成分のアセチレン系非イオン性界面
活性剤は、本発明の洗浄剤組成物中において０．１〜１
０重量％配合することが好適であり、洗浄性、破泡性及
び液安定性の面から、好ましくは１〜８重量％である。

【００１９】（Ｅ）成分の脂肪酸又はその塩は、前記の
式（化２）で表される化合物である。

【００２０】脂肪酸の具体例としては、ｎ−酪酸、吉草
酸、ソルビン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン
酸、ラウリン酸、ミリチスン酸、ウンデカン酸等の炭素
数４〜１４の直鎖脂肪酸、あるいはイソ酪酸、２−エチ
ルヘキサン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等
の炭素数４〜１８の分岐鎖脂肪酸等が挙げられ、これら
の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウ
ム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン
塩、トリエタノールアミン塩、ラウリルアミン塩等が用
いられる。

【００２１】（Ｅ）成分の脂肪酸又はその塩は、本発明
の洗浄剤組成物中において１〜２０重量％配合するのが
好適であり、洗浄性、液安定性及び破泡性の面から、好
ましくは２〜１５重量％である。

【００２２】本発明においては、この（Ｅ）成分の脂肪
酸又はその塩と（Ｄ）成分のアセチレン系非イオン性界
面活性剤とを併用して配合することにより、洗浄性能の
向上効果とともに、特に泡の破泡性が相乗的に改善さ
れ、洗浄時の発泡によるトラブルが防止される。この
（Ｄ）成分と（Ｅ）成分とは重量比で（Ｄ）／（Ｅ）＝
１／１０〜１０／１の比率で本発明の洗浄剤組成物中に
配合することが好ましく、より好ましくは（Ｄ）／
（Ｅ）＝１／５〜５／１である。

【００２３】さらに、本発明の洗浄剤組成物には、
（Ｃ）〜（Ｅ）成分以外のアニオン性界面活性剤、非イ
オン性界面活性剤を配合することができる。

【００２４】アニオン性界面活性剤としては、高級アル
コール硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールア
ミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンス
ルフォン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン
酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナト
リウム等が例示される。

【００２５】非イオン性界面活性剤としては、ポリオキ
シエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレ
イルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリ
オキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチ
レンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキ
シエチレンアルキルアミン等が挙げられる。

【００２６】さらに、本発明の洗浄剤組成物中には、ア
ミン類、第４級アンモニウムハイドライド類を配合する
ことができる。

【００２７】ここでアミン類としては、モノエタノール
アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、
ジメチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン
等のアルキロールアミン；モルホリン、エチルモルホリ
ン等のモルホリン類；ピペラジン、トリエチルジアミ
ン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチル
プロピレンジアミン等が挙げられる。第４級アンモニウ
ムハイドライド類としては、下記の式（化５）で表され
る化合物が代表的である。

【００２８】

【化５】

【００２９】第４級アンモニウムハイドライド類の具体
例としては、テトラメチルアンモニウムハイドライド、
テトラブチルアンモニウムハイドライド、ヒドロキシエ
チルトリメチルアンモニウムハイドライド等が挙げられ
る。

【００３０】これらアミン類及び第４級アンモニウムハ
イドライドは、本発明の洗浄剤組成物中において１〜３
０重量％の範囲で配合することができる。

【００３１】また、さらに本発明の洗浄剤組成物中に
は、液安定性を保持するためのアルコール類、グリコー
ル類、ベンゼンスルホン酸類、又はベンゾトリアゾール
等の防錆剤、シリコン系消泡剤等を配合することができ
る。

【００３２】本発明の洗浄剤組成物は、組成物そのまま
の状態で使用することも可能であるが、通常、イオン交
換水や市水等で、５〜３０重量％に希釈して使用する。

【００３３】

【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。 実施例１〜８及び比較例１〜６ 表１に示す処方に従って、洗浄剤組成物を調製し、その
安定性、洗浄力及び破泡性を評価した。結果を表１に示
す。尚、安定性、洗浄力及び破泡性の評価方法は下記の
通りである。

【００３４】（１）安定性の評価方法 調製した洗浄剤組成物を５℃、４５℃で静置保存
し、洗浄剤の状態を目視により以下の基準で評価し、○
以上を合格とした。 ○：１週間以上安定（析出物、分離無し） ×：１週間以内に析出、分離あり

【００３５】（２）洗浄力の評価方法 調製した洗浄剤組成物を２０重量％になるよう市水で希
釈して試験液とする。次に、鉱物油を使用して伸線加
工されたステンレス伸線及びホウ酸、硅酸、硫酸塩等
の混合物と金属石鹸とを併用して伸線加工されたステン
レス伸線を、６０〜７０℃の試験液で１０秒間、浸漬洗
浄した後、７０〜８０℃のお湯で１０秒間、撹拌すすぎ
によりリンスした。洗浄後のステンレス伸線の外観を、
目視により以下の基準で評価し、○以上を合格とした。 ◎：潤滑剤及び潤滑被膜残着がなく、非常に良好 ○：潤滑剤及び潤滑被膜残着が殆どなく、良好 △：潤滑剤及び潤滑被膜残着がわずかにあり、やや悪い ×：潤滑剤及び潤滑被膜が残着し、悪い

【００３６】（３）破泡性評価方法 調製した洗浄剤組成物を２０重量％になるよう市水で希
釈して試験液とする。次に、試験液を１００ｍｌエプト
ン管に３０ｍｌ分取する。さらに金属石鹸であるステア
リン酸カルシウムを０．３ｇ添加し、７０℃の温浴にて
加温溶解する。ステアリン酸カルシウムが完全溶解を確
認した後、７０℃に保った状態で２０回上下に強力に振
とうし起泡させ、１分後の泡量（ｍｌ）を測定して、以
下の基準で破泡性を評価し、○以上を合格とした。 ◎：速やかに破泡する ○：破泡する △：破泡が遅い ×：破泡がかなり遅い

【００３７】

【表１】

【００３８】*1)ＴＥＡ：トリエタノールアミン *2)ラウリン酸アミドプロピルベタイン *3)２−ラウリル−Ｎ−カルボキシメチル−Ｎ−ヒドロ
キシエチルイミダゾリニウムベタイン *4)下記の式（化６）で表されるアセチレン系非イオン
性界面活性剤

【００３９】

【化６】

【００４０】*5)下記の式（化７）で表されるアセチレ
ン系非イオン性界面活性剤

【００４１】

【化７】

【００４２】*6)ＰＯＥはエチレンオキシドの平均付加
モル数

【００４３】

【発明の効果】本発明によれば、（Ａ）アルカリ剤、
（Ｂ）キレート型ビルダー、（Ｃ）両性界面活性剤、
（Ｄ）アセチレン系非イオン性界面活性剤、（Ｅ）特定
脂肪酸及び（Ｆ）水を特定の割合で配合して洗浄剤組成
物とすることにより、潤滑剤と潤滑被膜との双方に優れ
た洗浄性能を示し、しかも破泡性に優れていることか
ら、消泡剤を別添加する手間を省くことができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｃ１１Ｄ 3/16 Ｃ１１Ｄ 3/16 Ｃ２３Ｇ 1/19 Ｃ２３Ｇ 1/19

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下記の（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）、
   （Ｄ）、（Ｅ）及び（Ｆ）成分を必須成分として含有す
   る伸線用洗浄剤組成物。 （Ａ）アルカリ剤：５〜３０重量％ （Ｂ）キレート型ビルダー：１〜３０重量％ （Ｃ）両性界面活性剤：０.１〜３０重量％ （Ｄ）下記の式（化１）で表されるアセチレン系非イオ
   ン性界面活性剤：０．１〜１０重量％ （Ｅ）下記の式（化２）で表される脂肪酸又はその塩：
   １〜２０重量％ （Ｆ）水：残部 【化１】 【化２】