JPH06226311A - 異形断面帯板製造用溝付き成型ロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷間圧延によって幅方向に肉厚を異にさせる
段差部を有する形状の異形断面帯板を高い寸法精度で製
造する際に使用する経済的な異形断面帯板製造用溝付き
成型ロールを提供する。 【構成】 アーバ４ａとその両端をアーバ４ａに嵌合さ
れているスリーブ４ｂとの間に形成されている間隙であ
る圧力室４ｃに圧力媒体を供給してスリーブ４ｂを半径
方向に膨張させ、異形断面帯板に帯板材を冷間圧延する
部分である溝付きロール部分４ｆの内周面をスリーブ４
ｂの外周面に密着させて使用する異形断面帯板製造用溝
付き成型ロールにおいて、溝付きロール部分４ｆの内周
面がその軸方向に凹クラウン形状をなしており、溝付き
ロール部分４ｆの両側には保持スリーブ４ｅ，４ｅ’
が、更にその両側に固定部材４ｈ，４ｈ’がスリーブ４
ｂに位置決め固定されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、冷間圧延によって幅方
向に肉厚を異にさせる段差部を有する形状の異形断面帯
板を高い寸法精度で製造する際に使用する経済的な異形
断面帯板製造用溝付き成型ロールに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】異形断面帯板は軸受け用リテーナやパワ
ー系のトランジスターのリードフレームなどに使用さ
れ、その需要は増加傾向にある。このような用途に主と
して使用される異形断面帯板１は、図４に示すように厚
肉部１ａと薄肉部１ｂとが一体となった形状の帯板であ
る。従来このような異形断面帯板１を製造するには、断
面矩形の帯板材の長手方向表面の所定個所をバイトやフ
ライスにより切削して薄肉部１ｂを、厚肉部１ａとなる
部分は切削せずに又は僅かに切削して形成していた。と
ころが、この切削加工方法は材料の歩留まりが悪く、切
削屑が生じるので作業環境が悪化すると共に高い寸法精
度での切削加工を要求されるために加工コストが高価と
なるという欠点があった。そこで、特公昭５３−２７２
３４号公報に開示されているような、左右に転動して下
面に異形断面帯板の薄肉部の断面形状に対応する凹溝を
付けた固定の金型とフラットな成型ロールとの間に成型
ロールの軸方向に断面矩形の帯板材を供給し、帯板材を
幅方向に圧延して厚肉部と薄肉部を同時に形成する方法
が用いられている。

【０００３】しかしながらこの圧延加工方法では、成型
加工が断続的になると共に成型ロールが往復運動により
押圧力を起こすために加工速度を大きくすることができ
ず、生産性が極めて低いという問題があった。そこでこ
のような欠点を解消するために図５に示すような環状凸
型の溝付き成型ロール２とフラットなロール３との間に
断面矩形の帯板材を供給して圧延することにより異形断
面帯板１を製造する方法が、特公平１−５９０４１号公
報，特開平１−２９９７０１号公報，特開平１−１３３
６０２号公報等で紹介されている。

【０００４】このような方法により異形断面帯板を製造
すれば、前記従来技術の諸欠点を解消することができる
のであるが、この方法においては一種類の成型ロールで
は一種類の断面構成の異形断面帯板しか基本的には成型
することができない。即ち、フラットなロールとの間に
断面矩形の帯板材を供給して圧延することにより異形断
面帯板を製造するために従来から使用される異形断面帯
板製造用溝付き成型ロールは、通常中実の円柱状の胴部
を有するロールから環状凸型に胴部外周を切削して製作
されており、このようにして製作された異形断面帯板製
造用溝付き成型ロールはその環状凸型の溝形状が一義的
に決まってしまうので、同一ロールでは一種類の断面構
成を持つ異形断面帯板しか基本的には成型することがで
きないのである。従って、異形断面帯板の断面構成が変
わるごとにそれに見合った環状凸型の溝形状に再切削す
るか又は予めその断面構成に合った新たな異形断面帯板
製造用溝付き成型ロールを準備しておく必要があった。

【０００５】しかるに前述したような用途に使用される
異形断面帯板は小ロッド且つ多品種であるため、このよ
うな要求に対応するためには多種類の異形断面帯板製造
用溝付き成型ロールを準備するか、又はその都度一度使
用した異形断面帯板製造用溝付き成型ロールを再切削し
て所望の異形断面帯板製造用溝付き成型ロールを製作す
る必要があるため、ロールコストが増大し、その結果生
産コストが高くなるという問題があった。

【０００６】このような問題を解消できる手段として、
特公昭５９−３２２０４号公報において「アーバとスリ
ーブとの間に形成した間隙に圧力媒体を供給してスリー
ブを半径方向に膨張させる可変クラウン・ロールの外周
に、孔型を設けた孔型スリーブを装着した孔型圧延ロー
ル」が開示されている。このロールは、言わば一体構造
のアーバと外周面の直径が同一であるスリーブとより成
る可変クラウン・ロールと、圧延に直接使用する部分で
ある内周面の直径が同一である孔型スリーブとより成
り、この孔型スリーブを多数準備しておくことによって
ロールの常備本数を減少させようとするものである。し
かしながらこの発明に開示されているロールにおいて
は、可変クラウン・ロールの外周面を構成するスリーブ
の膨張に伴うロール軸方向の凸クラウン形状と可変クラ
ウン・ロールの外周面に装着される孔型スリーブの内周
面の軸方向における形状との関係に関しては何ら考慮が
払われておらず、その結果本発明が目的とする軸受け用
リテーナやパワー系のトランジスターのリードフレーム
などのように高い寸法精度を要求される異形断面帯板の
製造用のロールとしてこの特公昭５９−３２２０４号公
報において開示されているロールをそのまま使用したの
では可変クラウン・ロールのスリーブの膨張時に孔型ス
リーブに不均一な変形が生じ、圧延される帯板の寸法精
度が非常に悪くて使用不可能であることが判明した。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、前記
特公昭５９−３２２０４号公報において開示されている
ロールの構造とほぼ同様の構造を採用してロールの常備
本数を減少させるのであるが、軸受け用リテーナやパワ
ー系のトランジスターのリードフレームなどのように高
い寸法精度を要求される異形断面帯板の製造に適した構
造のロールを提供することを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく種々検討の結果、特公昭５９−３２２０４号
公報において開示されている形状及び構造のロールをそ
のまま使用したのでは圧延される帯板の寸法精度が非常
に悪くて使用不可能である理由は、特公昭５９−３２２
０４号公報において開示されている構造のロールにおい
てはアーバとスリーブとの間に形成した間隙である圧力
室に圧力媒体を供給してスリーブを半径方向に膨張させ
ると、アーバの軸心を通って且つその軸心と平行に切断
した断面で見るとアーバにその両端で固定された状態の
スリーブは言わば両端が支持又は固定された梁のように
変形して両端は膨張せず、圧力室のロール軸方向の長さ
の中央部が最も膨張した言わば「樽型状」になるので、
可変クラウン・ロールの外周に装着される孔型スリーブ
の内側に作用する圧力は圧力室のロール軸方向において
異なり、孔型スリーブの軸方向の中央部では確実に保持
されるが、圧力室のロール軸端部になるほど保持する圧
力が小さくなる。そのため分割した孔型スリーブの変形
は均一でなく、圧延時の孔型スリーブの表面形状が設計
時の表面形状と異なってしまうので、孔型スリーブの分
割が限定されることを究明した。

【０００９】そこで本発明者らはかかる状態が発生する
ことを防止し、且つ如何にして経済的に異形断面帯板製
造用溝付き成型ロールを構成することができるかについ
て更に検討を進め、アーバとスリーブとの間に形成した
間隙である圧力室に圧力媒体を供給した際にスリーブの
半径方向の膨張量がロールの軸心方向にどのように変化
するかについて研究した結果、スリーブはアーバとその
両端をアーバに嵌合されているスリーブとの間に形成さ
れている間隙である圧力室の端部位置近傍から図３に示
す如く徐々に樽型状に膨張することが判った。この樽型
状を示す膨張の形態は圧力室の外壁を構成するスリーブ
の材質，肉厚及びアーバへの取付方法と圧力室に供給さ
れる圧力媒体の圧力とによってほぼ決まり、供給圧力が
高くなるほど顕著である。そこで、この圧力室の外壁を
構成するスリーブの樽型状の膨張量の分布に孔型スリー
ブの内周面の軸方向の内径の分布を合わせることによ
り、孔型スリーブの内周面と圧力室の外壁を構成するス
リーブの外周面との圧力分布が均一になって孔型スリー
ブの不均一な変形をなくすことによって、孔型スリーブ
の分割数を多くしても孔型スリーブが圧力室の外壁を構
成するスリーブに確実に保持されることを究明すると共
に、孔型スリーブの両側に孔型スリーブが圧力室の外壁
を構成するスリーブの軸方向に移動しないように保持す
る保持スリーブを配置し、この保持スリーブをその両側
で固定部材により位置決め固定すれば良いことに着目し
て本発明を完成したのである。

【００１０】以下、図面により本発明に係る異形断面帯
板製造用溝付き成型ロールについて詳細に説明する。図
１は本発明に係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロール
の１実施例に圧力媒体供給系統を接続した状態を示す説
明図であり、異形断面帯板製造用溝付き成型ロールにお
いて上半分を断面で示したものである。図２は本発明に
係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロールにおける溝付
きロール部分の内周面形状と使用時に圧力室に供給され
る圧力媒体の圧力よりも低い圧力の圧力媒体が圧力室に
供給された際におけるスリーブの外周面形状との関係を
示す説明図である。

【００１１】図面中、４は本発明に係る異形断面帯板製
造用溝付き成型ロールであり、アーバ４ａと、このアー
バ４ａにその両端を嵌合されてこの嵌合部分を除いたア
ーバ４ａの中央部分の内面に設けられている凹状部分を
圧力室４ｃとなるように形成するスリーブ４ｂと、異形
断面帯板に帯板材を冷間圧延する部分である環状の溝部
が外周に設けられている溝付きロール部分４ｆと、少な
くともスリーブ４ｂが膨張せしめられていないときのス
リーブ４ｂの外径より大きな内径を有し溝付きロール部
分４ｆの両側に配置される保持スリーブ４ｅ，４ｅ’
と、この保持スリーブ４ｅ，４ｅ’をその両側で前記ス
リーブ４ｂに位置決め固定するための固定部材４ｈ，４
ｈ’とより主として成っている。前記溝付きロール部分
４ｆはその内周面の最小直径部分がスリーブ４ｂが膨張
せしめられていないときのスリーブ４ｂの外径より僅か
に大きな内径を有し且つその内周面がその軸方向に凹ク
ラウン形状をなしている。この溝付きロール部分４ｆの
内周面の凹クラウン形状は、図２に示す如く異形断面帯
板製造用溝付き成型ロールの使用時に圧力室４ｃに供給
される圧力媒体の圧力よりも低い圧力の圧力媒体が圧力
室４ｃに供給された際にその内周面全面が拡径したスリ
ーブ４ｂの外周面に密着する形状をなしていることが好
ましい。またアーバ４ａには一方の端部から前記圧力室
４ｃに油圧の如き圧力媒体を供給する圧力媒体供給路４
ｇが穿設されている。前記アーバ４ａとスリーブ４ｂの
両端との嵌合部分では、圧力室４ｃ内に供給された圧力
媒体が外部に流出しないようになっていることが必要で
あり、焼ばめなどの固着状態でも不充分なときや更に安
全性を確保したいときには、その嵌合部分間にパッキン
又はオイルシール４ｄ，４ｄ’を装着せしめれば良い。
なお、４ｉ，４ｉ’はスリーブ４ｂがアーバ４ａから抜
けることを防止するためにアーバ４ａに螺着されてスリ
ーブ４ｂの両端を保持するナットである。

【００１２】また、５は圧力室４ｃへ油圧などの圧力媒
体を送り出すためのポンプ、６はサーボアンプ７の増圧
信号に基づいてポンプ５から送り出された圧力媒体の圧
力を調整するためのサーボ弁でありこのサーボ弁６から
送り出されなかったポンプ５から供給された圧力媒体は
アキュムレータ１１に貯蔵される。８はサーボ弁６を経
て送り出された圧力媒体の圧力を更に増圧してアーバ４
ａの一方の端部に穿設されている圧力媒体供給路４ｇに
接続されているロータリージョイント１２に供給するた
めに増圧機、９は圧力室４ｃの油圧を減圧する際に使用
するパイロットチェック弁、１０は増圧機８とロータリ
ージョイント１２とを連結する圧力媒体路の圧力を検出
する圧力検出機であり、この圧力検出機１０で検出され
た圧力媒体の圧力が前記サーボアンプ７に伝達されてサ
ーボ弁６を作動させる増圧信号がサーボアンプ７から発
信される。

【００１３】

【作用】このような構成において、本発明に係る異形断
面帯板製造用溝付き成型ロールを使用するには、先ず製
造しようとする異形断面帯板に帯板材を冷間圧延するの
に適した溝付きロール部分４ｆを準備する。もし適した
溝付きロール部分４ｆが無い場合には、円筒状部材から
切削や研削によって製造するか、又は使用済みの溝付き
ロール部分４ｆを更に切削や研削によって加工して製造
することによって所望の溝付きロール部分４ｆを準備す
れば良い。このようにして溝付きロール部分４ｆを多数
準備しておくことにより、アーバ４ａとこのアーバ４ａ
に両端を嵌合されたスリーブ４ｂという大きな容積と重
量とを占め且つ高価でもあるロール本体といえる部分は
１個乃至数個だけ準備してあれば良いことになる。

【００１４】かくして製造しようとする異形断面帯板に
適した溝付きロール部分４ｆを準備できたら、アーバ４
ａに螺着されたナット４ｉ，４ｉ’によりその両端を保
持されており且つその両端部をアーバ４ａの外周に嵌合
されたスリーブ４ｂの外周にその一端にから、固定部材
４ｈ，保持スリーブ４ｅ，溝付きロール部分４ｆ，保持
スリーブ４ｅ’，固定部材４ｈ’の順に外嵌し、これら
の各部材がそれぞれその端面同士が当接した状態を成す
ように固定部材４ｈ，４ｈ’をスリーブ４ｂに位置決め
仮固定する。かかる状態において、アーバ４ａの外周と
スリーブ４ｂの内周との間に形成された圧力室４ｃに圧
力媒体供給路４ｇを経て異形断面帯板製造用溝付き成型
ロールの使用時に圧力室４ｃに供給される圧力媒体の圧
力よりも低い所定の圧力の圧力媒体が圧力室４ｃに供給
されると、スリーブ４ｂが拡径してスリーブ４ｂの外周
面に溝付きロール部分４ｆの内周面全面が密着すること
により溝付きロール部分４ｆがスリーブ４ｂに軽く保持
されることになる。この状態において、溝付きロール部
分４ｆ（溝付きロール部分４ｆが多数個使用される場合
には両端の溝付きロール部分４ｆ）の両側に配置される
保持スリーブ４ｅ，４ｅ’は、溝付きロール部分４ｆが
両端の固定部材４ｈ，４ｈ’から或る程度離れた位置で
ロールの軸方向即ちアーバ４ａの軸方向へ移動しないよ
うに保持するための部材であり、更にこの保持スリーブ
４ｅ，４ｅ’の両端にはナット４ｉ，４ｉ’が設置され
ており、溝付きロール部分４ｆの内周面全面に拡径して
スリーブ４ｂの外周面が密着する前記圧力で圧力媒体が
圧力室４ｃに供給された際に溝付きロール部分４ｆがロ
ールの軸方向即ちアーバ４ａの軸方向への移動を防ぐた
めにナット４ｉ，４ｉ’の仮締めを行う。その後、異形
断面帯板製造用溝付き成型ロールの使用時の圧力で圧力
媒体を圧力室４ｃに供給して更に溝付きロール部分４ｆ
を強力に保持させてナット４ｉ，４ｉ’の本締めを行
う。

【００１５】尚、溝付きロール部分４ｆは矩形状の帯板
に大きな力を作用させて異形断面帯板に冷間圧延するの
に使用される部分であるから、異形断面帯板製造時にス
リーブ４ｂの外周面と溝付きロール部分４ｆの内周面と
の間に作用する摩擦力だけでは溝付きロール部分４ｆが
スリーブ４ｂに対して回転することを防止できない場合
がある。このような場合にはスリーブ４ｂと溝付きロー
ル部分４ｆとが互いに回転できないようにキーなどで連
結する手段を採用すれば良い。また、溝付きロール部分
４ｆの両側に配置される保持スリーブ４ｅ，４ｅ’は必
ずしも溝付きロール部分４ｆと一体を成して回転する必
要はないから、前記キーを使用して溝付きロール部分４
ｆのスリーブ４ｂに対する回転を防止するような場合に
おいてこのキーでスリーブ４ｂに対して回転が防止され
るように連結するか否かは自由である。そしてこの保持
スリーブ４ｅ，４ｅ’の内周面は、アーバ４ａの外周と
スリーブ４ｂの内周との間に形成された圧力室４ｃに圧
力媒体供給路４ｇを経て圧力媒体が供給されてスリーブ
４ｂが膨張して拡径した際にスリーブ４ｂの外周面が当
接することは必ずしも必要ではなく、もしこの保持スリ
ーブ４ｅ，４ｅ’の剛性が大き過ぎて圧力室４ｃに所定
圧力の圧力媒体が供給されてもスリーブ４ｂの膨張を抑
制してスリーブ４ｂの外周面が溝付きロール部分４ｆの
内周面に密着しない状態が発生することは好ましくない
ので、圧力室４ｃに所定圧力の圧力媒体が供給されてス
リーブ４ｂが膨張してもスリーブ４ｂの外周面が当接し
ない程度にスリーブ４ｂの外径より大きな内径を有して
いることが好ましい。

【００１６】かくしてアーバ４ａに両端を嵌合されたス
リーブ４ｂの外周面に、中央部に溝付きロール部分４
ｆ、その両側に保持スリーブ４ｅ，４ｅ’、更にその両
側に固定部材４ｈ，４ｈ’がそれぞれその端面同士が密
着した状態に配置され且つ固定部材４ｈ，４ｈ’はスリ
ーブ４ｂに固定されるのであるが、本発明において最も
重要であるのは、アーバ４ａとその両端をアーバ４ａに
嵌合されているスリーブ４ｂとの間に形成されている間
隙である圧力室４ｃに圧力媒体を供給してスリーブ４ｂ
を半径方向に膨張させた際に幅方向に肉厚を異にさせる
段差部を有する形状の異形断面帯板に帯板材を冷間圧延
する部分である溝付きロール部分４ｆの内周面がスリー
ブ４ｂの外周面に密着するようにその軸方向に凹クラウ
ン形状をなしていることであり、好ましくは溝付きロー
ル部分４ｆの内周面の凹クラウン形状が、異形断面帯板
製造用溝付き成型ロールの使用時に圧力室４ｃに供給さ
れる圧力媒体の圧力よりも低い圧力の圧力媒体が圧力室
４ｃに供給された際にその内周面全面がスリーブ４ｂの
外周面に密着する形状をなしていることである。

【００１７】このように溝付きロール部分４ｆの内径に
その軸方向に分布を持たせて凹クラウン形状をなさしめ
ることにより、異形断面帯板製造用溝付き成型ロールの
使用時に圧力室４ｃに高圧の圧力媒体が供給された際の
スリーブ４ｂの外周面と溝付きロール部分４ｆの内周面
との間に発生する軸方向の圧力分布がほぼ均等になるこ
とから溝付きロール部分４ｆが不均一に変形することが
なくなって、溝付きロール部分４ｆの表面形状を設計時
の形状に維持でき、高い寸法精度で異形断面帯板を製造
することができるのである。

【００１８】このようにアーバ４ａの外周にその両端を
嵌合されたスリーブ４ｂの外周に、内周面がその軸方向
に凹クラウン形状をなしている溝付きロール部分４ｆが
中央部に、その両側に保持スリーブ４ｅ，４ｅ’が、更
にその両側に固定部材４ｈ，４ｈ’がそれぞれその端面
が当接した状態に配置され且つ固定部材４ｈ，４ｈ’が
スリーブ４ｂに固定されて本発明に係る異形断面帯板製
造用溝付き成型ロール４が構成されると、この本発明に
係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロール４を圧延機
（図示せず）にセットし、アーバ４ａの一方の端部から
穿設されている圧力媒体供給路４ｇにロータリージョイ
ント１２を接続すると共にこのロータリージョイント１
２に連結される圧力媒体路に図１に示す如く増圧機８，
パイロットチェック弁９，圧力検出機１０を、更に増圧
機８にはサーボ弁６を、サーボ弁６にはポンプ５及びア
キュムレータ１１をそれぞれ配管すると共に、更にサー
ボ弁６には圧力検出機１０で検出された圧力媒体の圧力
が伝達されて増圧信号が発信されるサーボアンプ７を配
線して接続する。

【００１９】かかる状態でポンプ５及びサーボ弁６を作
動させて油圧などの圧力媒体をロータリージョイント１
２に送り出すと、供給された圧力媒体はアーバ４ａ内に
穿設されている圧力媒体供給路４ｇを経て圧力室４ｃ内
に至り、圧力室４ｃの外壁を構成しているスリーブ４ｂ
を膨張させ拡径させてその外周面が溝付きロール部分４
ｆの内周面全面に密着するのである。このスリーブ４ｂ
の拡径した外周面が溝付きロール部分４ｆの内周面全面
に確実に密着した状態を維持するためには、スリーブ４
ｂの外面形状が言わば樽型に近い形状になった際に、溝
付きロール部分４ｆの両側に配置されている保持スリー
ブ４ｅ，４ｅ’の内周面がスリーブ４ｂの外周面に当接
しない寸法の内径を有しているものを使用することによ
り、保持スリーブ４ｅ，４ｅ’の剛性によりスリーブ４
ｂの外周面の樽型への変形が抑制されることを防止すれ
ば良いのである。

【００２０】

【発明の効果】以上に詳述したように、本発明に係る異
形断面帯板製造用溝付き成型ロールは、アーバとその両
端をアーバに嵌合されているスリーブとの間に形成され
ている間隙である圧力室に圧力媒体を供給してスリーブ
を半径方向に膨張させ、幅方向に肉厚を異にさせる段差
部を有する形状の異形断面帯板に帯板材を冷間圧延する
部分である溝付きロール部分の内周面をスリーブの外周
面に密着させて使用する異形断面帯板製造用溝付き成型
ロールであるので、異形断面帯板に帯板材を冷間圧延す
る部分である溝付きロール部分のみを多数準備しておく
だけで異形断面帯板製造用溝付き成型ロールを多数準備
したことと同様の効果を発揮するのでロールの常備本数
を減少させることができるばかりでなく、溝付きロール
部分の内周面がその軸方向に凹クラウン形状をなしてお
り、好ましくは溝付きロール部分の内周面の凹クラウン
形状が異形断面帯板製造用溝付き成型ロールの使用時に
圧力室に供給される圧力媒体の圧力よりも低い圧力の圧
力媒体が圧力室に供給された際にその内周面全面がスリ
ーブの外周面に密着する形状をなしており、溝付きロー
ル部分の両側には保持スリーブが、更にその両側に固定
部材がスリーブに位置決め固定される構造であるので異
形断面帯板に帯板材を冷間圧延するのに必要な溝付きロ
ール部分の内周面は圧力室に供給される圧力媒体の圧力
により膨張し拡径されるスリーブの外周面とその全面が
密着状態となってスリーブに支持されるため、溝付きロ
ール部分の不均一な変形がなく高い寸法精度の異形断面
帯板に帯板材を冷間圧延することができるのである。

【００２１】そして保持スリーブが、圧力室に圧力媒体
が供給されてスリーブの外周面に溝付きロール部分の内
周面が密着した際にもその内周面がスリーブの外周面に
当接しない寸法の内径を有していると、上記異形断面帯
板に帯板材を冷間圧延するのに必要な溝付きロール部分
の内周面と圧力室に供給される圧力媒体の圧力により膨
張し拡径されるスリーブの外周面との密着状態が保持ス
リーブによって妨げられることがなくなるために冷間圧
延された帯板材がそのエッジ部分近傍でその寸法精度が
非常に悪くなるという現象の発生が防止できるという効
果がより確実に発揮されるのである。

【００２２】またアーバとスリーブの両端との嵌合部分
間にパッキン又はオイルシールが装着されていると、圧
力室内に供給された圧力媒体がアーバとスリーブの両端
との嵌合部分間から洩れ出る畏れがなくなって異形断面
帯板製造用溝付き成型ロールとしての信頼性が向上し、
更にスリーブと溝付きロール部分とがキーにより互いに
回転できない状態に連結されていると高い冷間圧延率で
異形断面帯板の製造を行う場合に溝付きロール部分がス
リーブに対して勝手に回転して良好な異形断面帯板の製
造が不可能となるという現象の発生も防止できるのであ
る。このような種々の効果を有する本発明は、近年その
需要が急速に高まってきている異形断面帯板の製造を安
価且つ容易にしかも高い寸法精度で製造できることにな
るので、その工業的価値非常に大きなものがある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロ
ールの１実施例に圧力媒体供給系統を接続した状態を示
す説明図であり、異形断面帯板製造用溝付き成型ロール
において上半分を断面で示したものである。

【図２】本発明に係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロ
ールにおける溝付きロール部分の内周面形状と使用時に
圧力室に供給される圧力媒体の圧力よりも低い圧力の圧
力媒体が圧力室に供給された際におけるスリーブの外周
面形状との関係を示す説明図である。

【図３】中空ロール膨張量のロール幅方向の変化を示す
図である。

【図４】異形断面帯板の１形状を示す説明用斜視図であ
る。

【図５】異形断面帯板の冷間圧延による製造方法を示す
説明図である。

【符号の説明】

１ 異形断面帯板 １ａ 厚肉部 １ｂ 薄肉部 ２ 溝付き成型ロール ３ フラットなロール ４ 本発明に係る異形断面帯板製造用溝付き成型ロール ４ａ アーバ ４ｂ スリーブ ４ｃ 圧力室 ４ｄ，４ｄ’ パッキン又はオイルシール ４ｅ，４ｅ’ 保持スリーブ ４ｆ 溝付きロール部分 ４ｇ 圧力媒体供給路 ４ｈ，４ｈ’ 固定部材 ４ｉ，４ｉ’ ナット ５ ポンプ ６ サーボ弁 ７ サーボアンプ ８ 増圧機 ９ パイロットチェック弁 １０ 圧力検出機 １１ アキュームレータ １２ ロータリージョイント

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中本 一成 兵庫県尼崎市鶴町１番地 日新製鋼株式会 社加工技術研究所内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アーバ(４ａ)とその両端をアーバ(４ａ)
   に嵌合されているスリーブ(４ｂ)との間に形成されてい
   る間隙である圧力室(４ｃ)に圧力媒体を供給してスリー
   ブ(４ｂ)を半径方向に膨張させ、幅方向に肉厚を異にさ
   せる段差部を有する形状の異形断面帯板に帯板材を冷間
   圧延する部分である溝付きロール部分(４ｆ)の内周面を
   スリーブ(４ｂ)の外周面に密着させて使用する異形断面
   帯板製造用溝付き成型ロールにおいて、溝付きロール部
   分(４ｆ)の内周面がその軸方向に凹クラウン形状をなし
   ており、溝付きロール部分(４ｆ)の両側には保持スリー
   ブ(４ｅ，４ｅ’)が、更にその両側に固定部材(４ｈ，
   ４ｈ’)がスリーブ(４ｂ)に位置決め固定されているこ
   とを特徴とする異形断面帯板製造用溝付き成型ロール。
2. 【請求項２】 溝付きロール部分(４ｆ)の内周面の凹ク
   ラウン形状が、異形断面帯板製造用溝付き成型ロールの
   使用時に圧力室(４ｃ)に供給される圧力媒体の圧力より
   も低い圧力の圧力媒体が圧力室(４ｃ)に供給された際に
   その内周面全面がスリーブ(４ｂ)の外周面に密着する形
   状をなしている請求項１に記載の異形断面帯板製造用溝
   付き成型ロール。
3. 【請求項３】 保持スリーブ(４ｅ，４ｅ’)が、圧力室
   (４ｃ)に圧力媒体が供給されてスリーブ(４ｂ)の外周面
   に溝付きロール部分(４ｆ)の内周面が密着した際にも、
   その内周面がスリーブ(４ｂ)の外周面に当接しない寸法
   の内径を有している請求項１又は２に記載の異形断面帯
   板製造用溝付き成型ロール。
4. 【請求項４】 アーバ(４ａ)とスリーブ(４ｂ)の両端と
   の嵌合部分間に、パッキン又はオイルシール(４ｄ，４
   ｄ’)が装着されている請求項１から３までのいずれか
   １項に記載の異形断面帯板製造用溝付き成型ロール。
5. 【請求項５】 スリーブ(４ｂ)と溝付きロール部分(４
   ｆ)とがキーにより互いに回転できない状態に連結され
   ている請求項１から４までのいずれか１項に記載の異形
   断面帯板製造用溝付き成型ロール。