JPH06218500A - 傾斜双ベルト式連続鋳造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、注入部の湯溜り長さを確保して、
鋳片の品質および生産性の向上を図る傾斜双ベルト式の
連続鋳造装置を提供する。 【構成】 一対の金属ベルト１，２により斜上部に形成
される湯溜り長さＬが鋳片厚さｔの６〜３３倍となるよ
うに金属ベルトを傾斜させ、かつ上面金属ベルト１の斜
上方向への突出長Ａ〜Ｂを湯溜り長さＬの３０％以下と
し、湯溜り５には函体の底部に斜下方向に複数の注入孔
を設けた浸漬ノズル６を浸漬し、このノズルは湯溜り５
が上下面金属ベルトとなす交線Ｂ，Ｃよりも１００ｍｍ
以上の距離をおいて配置した傾斜双ベルト式連続鋳造装
置である。 【効果】 湯溜り部の注湯面積を広くとることにより、
波立ち等はなく注入流の均一化を図ることができ、組織
の整った割れのない鋳片の鋳造ができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、鋳片の品質および生産
性の向上を意図した傾斜双ベルト式の連続鋳造装置に関
する。

【０００２】

【従来の技術】従来鋼板等を対称にした双ベルト式の連
続鋳造装置としては、例えば特公平３−３０４５８号公
報に開示された垂直式の双ベルト式連続鋳造機がある。

【０００３】一般に垂直式の連続鋳造機は、注入した溶
鋼の静圧に起因する鋳片のバルジングが大きくなるた
め、高速鋳造を可能にするためには、鋳片支持ロールの
ロールピッチを極端に小さくする必要があり、そのため
にロール支持点を複数にする等設備費が高価になり、ま
た浸漬ノズルとベルトとの間隔が狭いために地金がベル
トに付着し、これが溶鋼に巻き込まれて鋳片の割れ原因
になるという欠点があった。

【０００４】この垂直式連続鋳造機に代わり、最近では
傾斜式または水平式のベルトによる連続鋳造装置が使用
されるようになっている。その特徴とするところは、設
備費はそれほど高価にはならず、そのうえに低温／半凝
固注入が可能等注入が容易となり、水平方向の鋳造であ
るために凝固過程において鋳片に無理な矯正力がかから
ず、またバルジングは無くなり、大型介在物の介入やマ
クロ偏析も軽微で良質の鋳片を得ることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】傾斜式連続鋳造装置と
しては、特公昭５７−６１５０２号公報にその装置の一
例が開示されている。この装置は、溶融金属は一対の可
撓性エンドレスベルトの間に形成される鋳造区域の入口
へ導入され、かつこの入口から下流へと移動する間に２
つの鋳造ベルトの正面の間で固化し、溶融金属からの熱
は２つの鋳造ベルトの裏面へ液体冷媒を供給するように
した連続鋳造装置である。

【０００６】しかしこの装置では、エンドレスベルトの
間に形成される鋳造区域が狭いために注入ノズルが挿入
しにくく、また注入した溶融金属の湯溜りの前後縁部が
激しく変動し、これが鋳片の表面疵になるという欠点が
あった。

【０００７】本発明は、傾斜双ベルト式連続鋳造装置に
おいて上記欠点を解消し、鋳片の品質および生産性の向
上を意図した連続鋳造装置を提供する。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、入側プーリー
と出側プーリーとの間に無端状に一対の金属ベルトを張
設し、該一対のベルトを斜下方向に得ようとする鋳片厚
さに相当する間隔を維持して平行に対峙させた傾斜双ベ
ルト式連続鋳造装置において、前記一対の金属ベルトに
より斜上部に形成される湯溜り長さが前記鋳片厚さの６
〜３３倍となるように金属ベルトを傾斜させ、かつ上面
金属ベルトの斜上方向への突出長を湯溜り長さの３０％
以下とし、前記湯溜りには函体の底部に斜下方向に向か
う複数の注入孔を設けた浸漬ノズルを浸漬し、該ノズル
は湯溜り表面が上下面金属ベルトとなす交線より１００
ｍｍ以上離れた位置に配置したことを特徴とする傾斜双
ベルト式連続鋳造装置である。

【０００９】

【作用】本発明は、傾斜双ベルト式連続鋳造装置の斜上
部に形成される湯溜り長さを長くし、かつ上面金属ベル
トの斜上方向への突出長を小さくして、注入量の均一化
が容易な底面の広い浸漬ノズルの配設を可能とするもの
である。

【００１０】この湯溜り長さを長くする手段として、金
属ベルトの傾斜角は小さい方が好ましいのであるが、あ
まり傾斜角を小さくすると溶湯の流れが悪くなって鋳造
が困難になり、適正な傾斜角を設定する必要がある。本
発明ではその適正範囲として、湯溜り長さが鋳片厚さ即
ち対峙する上下面金属ベルトの間隔の６〜３３倍となる
ように金属ベルトを傾斜させる。

【００１１】図１により、湯溜り長さがベルト間隔の６
〜３３倍となるように金属ベルトの傾斜角を設定する理
由について説明する。

【００１２】図１は溶湯が注入される湯溜り付近の各部
の関係を示す状態図であり、上下面金属ベルト１，２は
鋳片厚さ即ち所定のベルト間隔ｔを保ちながら、一定の
傾斜角θ（ｒａｄｉａｎ）にて設置されている。

【００１３】Ａは上面金属ベルト１の入側プ−リー３ａ
の下部における接線，Ｂは上面金属ベルト１と湯溜り５
との交線，Ｃは下面金属ベルト２と湯溜り５との交線、
またＬは湯溜り長さ，ｒは入側プ−リー３ａの半径であ
る。

【００１４】また湯溜り５に浸漬された浸漬ノズル６の
注入長さをｂとして、各部の水平方向の位置関係を、上
面金属ベルト１と浸漬ノズル６との隙間をａ，浸漬ノズ
ル６と交線Ｃとの距離をｃ，上面金属ベルト１と交線Ｂ
との距離をｄとして表す。即ち湯溜り長さＬは２ｒ，
ａ，ｂ，ｃ，ｄの和となる。

【００１５】先ず湯溜り長さＬの下限をベルト間隔の６
倍とした理由について、入側プ−リー３ａの半径ｒは最
小でも１５０ｍｍを、またＡ〜Ｂ間距離は最小でも２０
０ｍｍを必要とする。またここでａ_min ＝５０ｍｍ，ｂ
_min ＝ｃ_min ＝１００ｍｍとすれば、湯溜り長さの下限
Ｌ_min は下記（１）式で表される。

【００１６】

【数１】 Ｌ_min ＝（Ａ〜Ｂ距離）＋ｒ＋ａ_min ＋ｂ_min ＋ｃ_min ……（１） ＝ ２００＋１５０＋５０＋１００＋１００ ＝ ６００ （ｍｍ）

【００１７】ここで傾斜双ベルト式連鋳による薄板鋳造
における鋳片厚さｔとしては１００ｍｍ程度が限度であ
るので、本発明における湯溜り長さの下限Ｌ_min をベル
ト間隔ｔの６倍とし、（２）式のように条件を定めた。

【００１８】

【数２】 Ｌ＞６ｔ ……（２）

【００１９】傾斜双ベルト式連続鋳造における現行の湯
面レベル制御技術の精度では、最低条件下では±３ｍｍ
程度の湯面レベル変動が発生する。この場合湯溜り長の
両交線間距離Ｂ〜Ｃの水平方向の移動量は、注入長さｂ
と同程度またはそれ以下の±１００ｍｍ以内に抑える必
要がある。

【００２０】

【数３】

【００２１】

【数４】（３）式より

【００２２】上記（２）および（４）式より、本発明に
おける湯溜り長さＬの適正範囲を下記（５）式のように
定めた。

【００２３】

【数５】 ６ｔ＜Ｌ＜３３ｔ ……（５） （但し ｔは鋳片厚，Ｌは湯溜り長）

【００２４】ここで薄板を鋳造する場合には、この倍率
を大きく即ち傾斜角を小さくし、その逆に厚板を鋳造す
る場合には、倍率を小さくとり傾斜角を大きくすれば充
分に必要な湯溜り長さを確保することができる。

【００２５】なおここで間隔が３３倍を超えると殆ど水
平式連続鋳造と同じとなり、また６倍未満では金属ベル
トが立ち過ぎて、いずれも傾斜式連続鋳造装置としての
特徴を失うことになる。従ってこの倍率の範囲内で金属
ベルトの傾斜角度を適宜選択することにより、所望の板
厚の鋳片を得ることが出来る。

【００２６】湯溜りに浸漬する浸漬ノズルは、函体の底
部に斜下方向に複数の注入孔を設けて構成しており、こ
のようにすれば、タンディッシュ等の湯鍋から注入した
溶湯を函体内で一旦貯溜し、これを低落差として斜下方
向に複数の注入孔から広範囲に湯溜りに注入できるの
で、波立ち等はなく、また注入流の均一化を図ることが
でき、また浸漬ノズルは、金属ベルトとなす交線よりも
１００ｍｍ以上の距離をおいて配置する等湯溜りが広い
ので、地金が浸漬ノズルに付着することもなくなる。

【００２７】また上面金属ベルトの斜上方向への突出長
（上記図１のＡ〜Ｂ間距離），即ちオーバーハング長を
湯溜り長さの３０％以下と小さくすることにより、浸漬
ノズルの断面積を広くして注湯面積を広くとることがで
き、注入に際してさらに注入流の均一化を図ることがで
きる。

【００２８】

【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。

【００２９】図２は傾斜双ベルト式連続鋳造装置の略側
面図，図３は湯溜りに浸漬したノズルの注入孔付近の詳
細を示す断面図である。

【００３０】本鋳造装置は、入側プーリー３ａ，４ａと
出側プーリー３ｂ，４ｂとの間にそれぞれ無端状に金属
ベルト１，２を張設してこれを一対とし、斜方向に所定
の鋳片厚さｔを維持して平行に対峙させる。

【００３１】この一対の金属ベルト１，２によりベルト
の斜上部に形成される湯溜り５の長さＬが、前記の鋳片
厚さｔの６〜３３倍となるように金属ベルト１，２を傾
斜させ、かつ上面金属ベルト１の斜上方向への突出長
ｅ，即ちオーバーハング長（図１に示すＡ〜Ｂ）を、湯
溜り長さＬの３０％以下として金属ベルト１，２を設置
する。

【００３２】上記湯溜り５には、函体６ａの底部に斜下
方向に複数の注入孔６ｂを設けた浸漬ノズル６を浸漬す
る。この浸漬ノズル６の上部には、蛇腹７を介して溶湯
を供給するタンディッシュ等の湯鍋８を設置し、函体６
ａは湯溜り６が上下面金属ベルト１，２となす交線Ｂ，
Ｃよりも１００ｍｍ以上の距離をおいて湯溜り５に配置
する。

【００３３】ついで鋳造を行う場合、先ず湯鍋８から浸
漬ノズル６の函体６ａに注入された溶湯は函体内で一旦
貯溜され、函体６ａ内で低落差ａを保って注入孔６ｂか
ら斜下方向に向かって湯溜り５内に注入される。

【００３４】注入された溶湯は、金属ベルト１，２によ
り上下面より冷却され、表面に凝固シェルを形成しなが
ら所定厚さの鋳片９となって下流側から抽出される。

【００３５】ここで注入される溶湯は、低落差のうえに
複数の注入孔６ｂから広範囲に、かつ鋳造の下流側に向
かって沿うように斜下方向に注入されるので、注入流は
円滑となって湯溜り５における波立ち等はなく、注入流
の均一化を図ることができるので、凝固に際して組織の
整った割れのない鋳片９が鋳造できる。

【００３６】さらに傾斜式のため、また上面金属ベルト
２の斜上方向への突出長ｅを短くすることにより湯溜り
が広くとれ、その上に浸漬ノズル６は上下面それぞれの
金属ベルト１，２より相当の距離を隔てて配置している
ので、浸漬ノズル６に凝固した地金が付着することはな
く、異物巻き込みや表面疵のない美麗な表面の鋳片９が
得られる。

【００３７】また本装置は傾斜式のため、鋳片９に掛か
る溶湯静圧が小さいのでバルジングは小さく、従って高
速鋳造が可能となり、また鋳片９の支持機構等の負荷が
軽くなり、設備的に鋳片９の冷却区間を安価に長くする
ことができるので、鋳片９の生産性向上を図ることがで
きる。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように本発明の傾斜双ベル
ト式連続鋳造装置は、湯溜り長さが鋳片厚さの６〜３３
倍となるように金属ベルトを傾斜させ、また上面金属ベ
ルトの斜上方向への突出長を小さくして湯溜り部を広く
とり、この湯溜り部に注湯面積の広い浸漬ノズルを浸漬
して注入することにより、湯溜りにおける波立ち等はな
く、注入に際して注入流の均一化を図ることができ、凝
固に際して組織の整った割れのない鋳片の鋳造ができ
る。

【００３９】また浸漬ノズルは、それぞれの金属ベルト
より相当の距離を隔てて配置しているので、浸漬ノズル
に地金等が付着することはなく、異物巻き込みや表面疵
のない美麗な表面の鋳片が得られる。

【００４０】さらには本装置は傾斜式のため、鋳片に掛
かる溶湯静圧が小さいのでバルジングは小さく、従って
高速鋳造が可能となり、また鋳片の支持機構等の負荷が
軽くなり、設備的に鋳片の冷却区間を安価に長くするこ
とができるので、鋳片の生産性向上を図ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】溶湯が注入される湯溜り付近の各部の関係を示
す状態図である。

【図２】本発明の実施例の傾斜双ベルト式連続鋳造装置
を示す略側面図である。

【図３】湯溜りに浸漬したノズルの注入孔付近の詳細を
示す断面図である。

【符号の説明】

１，２ 金属ベルト ３ａ，４ａ 入側プ−リー ３ｂ，４ｂ 出側プーリー ５ 湯溜り ６ 浸漬ノズル ６ａ 函体 ６ｂ 注入孔 ７ 蛇腹 ８ 湯鍋 ９ 鋳片 Ａ プーリーと金属ベルトとの接線 Ｂ，Ｃ 金属ベルトと湯溜りとの交線

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 入側プーリーと出側プーリーとの間に無
   端状に一対の金属ベルトを張設し、該一対のベルトを斜
   下方向に得ようとする鋳片厚さに相当する間隔を維持し
   て平行に対峙させた傾斜双ベルト式連続鋳造装置におい
   て、前記一対の金属ベルトにより斜上部に形成される湯
   溜り長さが前記鋳片厚さの６〜３３倍となるように金属
   ベルトを傾斜させ、かつ上面金属ベルトの斜上方向への
   突出長を湯溜り長さの３０％以下とし、前記湯溜りには
   函体の底部に斜下方向に向かう複数の注入孔を設けた浸
   漬ノズルを浸漬し、該ノズルは湯溜り表面が上下面金属
   ベルトとなす交線より１００ｍｍ以上離れた位置に配置
   したことを特徴とする傾斜双ベルト式連続鋳造装置。