JPH06211530A - 光学素子の成形方法および成形装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ガラス光学素子を押圧成形する際、光学素子
に割れなどが生じるのを防ぐ。 【構成】 上型１の成形面近傍の外周面につば部４を一
体に設ける。一方、下型２の外周面にリング状部材５を
下型２の軸方向へ摺動自在に取り付ける。そして、胴型
リング３に保持したガラス素材６を上型１と下型２の成
形面で押圧して光学素子を成形する際に、胴型リング３
とつば部４およびリング状部材５を接触させる。これに
より、胴型リング３の熱を上型１および下型２に伝導
し、上型１、下型２とガラス素材６との温度差を少なく
し、光学素子に割れなどが生じるのを防ぎつつ、光学素
子を押圧成形する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、成形可能に加熱軟化し
たガラス素材を加圧して光学素子を成形する光学素子の
成形方法および成形装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、成形可能に加熱軟化したガラス素
材を所望の光学素子に加圧成形する装置は知られてお
り、例えば特開平１−２７０５２９号公報に開示されて
いる。この公報に記載された成形装置には、温度制御装
置により所定の温度に設定可能に構成された上型と下型
とよりなる一対の成形型が対向配置され、この一対の成
形型の少なくとも一方の成形型の成形面の比較的に近接
した外周部に円筒形状の断熱材が装着されるとともに、
ガラス素材を加熱炉、一対の成形型間等に搬送する搬送
用アームが設けられている。そして、光学素子を押圧成
形する際には、ガラス素材を保持した胴型キャリアを搬
送用アームに載置して加熱炉内に搬送し、所定温度に上
記ガラス素材を加熱軟化した後、上記上型と下型との間
に上記搬送用アームで搬送する。そして、上型と下型に
より押圧成形した後、成形した所望の光学素子を再び胴
型キャリアに載置し、搬送用アームにて外部に取り出す
ようになっている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載された成形装置および成形方法では、光学素子
の成形時に加熱軟化されたガラス素材の温度より成形型
の方の温度が低く保持されており、成形型がガラス素材
と接触すると、ガラス素材から成形型への急速な熱の伝
導が行われてガラス素材の温度が低下し、そのために表
面にワレが生じるという問題があった。また、ガラス素
材から成形型への急速な熱の伝導を緩和するために成形
型の温度を予め上げておくと、成形時にガラス素材が成
形型の成形面に焼き着くという問題があった。

【０００４】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて
なされたもので、ガラスを素材とした光学素子の成形時
に、加熱軟化されたガラス素材からガラス素材より温度
が低く保持された成形型への急速な熱の伝導を緩和し、
ワレや焼きつきなどの無い光学素子を得ることができる
光学素子の成形方法および成形装置を提供することを目
的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】図１は、本発明に係る光
学素子の成形装置の要部を示すもので、円柱形状で先端
面に成形する光学素子の光学面に対応した成形面を形成
した上型１、下型２からなる一対の成形型が、互いにそ
の成形面を対向して設けられている。上記上型１の基端
部は、図示されていないが装置の固定部材に固定装着さ
れ、また、下型２の基端部は、図示されていないが装置
の駆動手段と連設されて上下動自在に設けられている。

【０００６】上記上型１の成形面近傍の外周面には、光
学素子を押圧成形する際に、加熱軟化したガラス素材６
を保持した搬送部材（胴型キャリア）３と接触する接触
部であるつば部４が一体に形成されている。一方、下型
２の外周面には、胴型キャリア３より熱伝導率の大きい
材料で形成され、下型２の外径寸法と対応した内径に形
成した円筒形状のリング状部材５が摺動自在に嵌合着さ
れている。このリング状部材５の下端面と下型２の基端
部上面との間には、リング状部材５を常に上方に押し上
げるように付勢形成した弾性部材７が下型２に巻装して
設けられている。また、上型１および下型２のそれぞれ
の基端部外周には、それぞれ型を加熱する加熱手段８，
９がそれぞれに巻装着されている。

【０００７】上記胴型キャリア３は、図示を省略した搬
送アームの先端に載置され、加熱炉（図示省略）、上下
両型１，２間等にガラス素材６を内部に保持して搬送さ
れるもので、胴型キャリア３の外径は、搬送アームの先
端に設けた載置部と適合した寸法に形成されている。ま
た、胴型キャリア３の内部には、ガラス素材６を保持す
る段部が形成され、その内径は、上型１と下型２が挿入
可能な寸法に形成されるとともに、上記リング状部材５
と係合できるように形成されている。

【０００８】本発明に係る光学素子の成形方法は、ガラ
ス素材６を保持した胴型キャリア３を搬送アームの先端
に載置して加熱炉に搬送し、所定の温度に加熱した後、
胴型キャリア３とともにガラス素材６を搬送アームによ
り上型１と下型２との間に搬送する。そして、ガラス素
材６を上下両型１，２で押圧成形する際に、胴型キャリ
ア３をつば部４により上型１と直接接触させるととも
に、リング状部材５を介して下型２と接触させ、ガラス
素材６および胴型キャリア３、または胴型キャリア３の
熱を上下両型１，２に伝達させる。

【０００９】

【作用】上記構成によれば、胴型キャリア３に上型１の
つば部４およびリング状部材５が接触すると、胴型キャ
リア３、ガラス素材６の熱が上型１および下型２へ急速
に伝導して、上下両型１，２の成形面をそれぞれ昇温さ
せ、成形面とガラス素材６の温度差を減少する。これに
より、光学素子を押圧成形する際に、所望の温度に加熱
軟化したガラス素材６と、ガラス素材６より低い温度の
成形型１，２とが接触しても、ガラス素材６から上下両
型１，２への急速な移動が緩和される。また、上下両型
１，２の成形面の温度を成形開始前に必要以上に上げて
おかずに済む。このため、ワレや型への焼きつきなどを
生じさせることなく、高品質の光学素子が得られる。

【００１０】

【実施例１】図２は、本発明の実施例１を示す断面図
で、成形装置の要部を示している。なお、図中におい
て、図１と、同一部材、同一形状および同一構成ついて
は、同一符号を付し、その説明は省略する。

【００１１】同軸上に対向配置された上型１および下型
２は、熱伝導率７６（Ｗ／ｍｋ）のＳｉＣを素材に形成
され、その基端部外周に温度制御された加熱ヒータ８，
９が巻装着されている。上型１は、その基端部を装置２
０の上部に固設した上板１０に固着して設けられてい
る。この上型１の成形面近傍における外周面には、光学
素子を押圧成形する際に、加熱軟化したガラス素材６を
保持した搬送部材（胴型キャリア）３の上面と接触する
つば部４が一体に形成されている。

【００１２】一方、下型２は、その基端部が装置２０の
下部に固設した下板１１の中央部に穿設した孔を貫通し
て、駆動シリンダ１２に連結され上下動自在に設けられ
ている。下型２の成形面近傍の外周面には、熱伝導率７
０（Ｗ／ｍｋ）の超硬合金を素材とするリング状部材５
が嵌合装着されている。このリング状部材５は、ガラス
素材６の体積の誤差、および胴型キャリア３の厚さの誤
差を吸収するために、下型２の軸方へ摺動自在に嵌着さ
れている。上記下型２の上記リング状部材５の下方位置
には大径段部が形成され、その段部と上記リング状部材
５の下端部との間には、リング状部材５を常時上方向に
押し上げるよう弾性部材７が付勢配設されている。

【００１３】四方向を囲設した成形室１９の左右の壁面
には、成形するガラス素材６の搬入と成形した光学素子
の搬出とを行う搬入開口部２２と搬出開口部２３が形成
されている。その搬入開口部２２には、帯状に構成され
た搬送アーム１３が装置２０の外部から成形室２１内へ
入出自在に設けられている。また、搬入開口部２２の外
方向には素材搬送路１５が配置されており、素材搬送路
１５の内には、温度制御装置によって所定の温度に設定
し得るように構成されたヒータ１６を設けた加熱炉１７
が配設されている。すなわち、搬送アーム１３に載置さ
れ、加熱炉１７にて所定の温度に加熱されたガラス素材
６は、素材搬送路１５内を経て、成形室１９内の上型１
と下型２間に搬送されるようになっている。

【００１４】上記搬送アーム１３の先端部に載置される
ように、その外径が形成されたリング形状の胴型キャリ
ア３には、図に示すように成形するガラス素材６を内部
に収納するための貫通孔が形成され、この貫通孔の内周
面にガラス素材を保持する段部が設けられている。この
貫通孔の上部は、上記上型１の成形面が挿入し、ガラス
素材６を押圧成形可能に形成されるとともに、貫通孔の
下部は、上記下型２の成形面が挿入して、押圧成形可能
に形成されている。

【００１５】上記成形室１９の搬出開口部２３には、成
形した成形品（光学素子）を搬送する搬送路２４が設け
られている。この搬送路２４内には、帯形状に構成さ
れ、成形品を外部に搬送する搬送アーム１８が成形室１
９に設けられている。

【００１６】次に、光学素子の成形方法を作用とともに
説明する。まず、ガラス素材６を内部に保持した胴型キ
ャリア３を搬送用アーム１３の先端部に載置して搬送通
路１５内の加熱炉１７内に搬送し、上下にヒーター１６
を配設した加熱炉１７にて成形可能な状態になるまで加
熱軟化処理する。続いて、上記搬送アーム１３を成形室
１９方向に前進させて胴型キャリア３と共に、ガラス素
材６を上型１と下型２間に搬送する。その後、上記下型
２を上昇作動させて胴型キャリア３に当接し、ガラス素
材６を保持した胴型キャリア３を持ち上げると、弾性部
材７を介して下型２に装着されたリング状部材５により
胴型キャリア３が持ち上げられ、胴型キャリア３の上面
と上型１のつば部４とが当接し、胴型キャリア３は、つ
ば部４とリング状部材５により保持される。この時、上
下両型１，２より１０℃以上の高温に加熱されている胴
型キャリア３から、つば部４およびリング状部材５に熱
移動が行われ、ガラス素材６と上下両型１，２とが接触
しない状態で、上下両型１，２のそれぞれの成形面近傍
に熱が伝導される。これにより、上下両型１，２の成形
面とガラス素材６との温度差が少なくなり、上記両成形
面でガラス素材６を押圧成形する際、ガラス素材６から
両成形面への熱の移動が緩和される。

【００１７】その後、さらに上型２を上昇作動させる
と、下型２はリング状部材５内を摺動して、下型２の成
形面がガラス素材６を保持して上昇し、その直後、ガラ
ス素材６が上型１の成形面と当接し、光学ガラス素材６
の押圧成形が行われる。押圧成形した後、下型２を駆動
して下降させ、成形した光学素子を離型して胴型キャリ
ア３内に保持する。その後、上記加熱炉１７と反対側の
搬送炉２４に設けられた除冷炉（図示省略）内へ搬送ア
ーム１８により胴型キャリア３と共に光学素子を搬送し
て徐冷却する。そして、冷却後、搬送アーム１８により
装置２０の外部に搬送し、上記胴型キャリア３から光学
素子を外部に取り出して成形を終わる。

【００１８】本実施例によれば、押圧成形開始直後に成
形型１，２の成形面の温度を急速に上昇させることがで
きるので、加熱軟化された光学ガラス素材６より型への
急激な熱の伝導が緩和できるため、割れの無いガラス光
学素子を成形することができる。また、型の成形面の温
度を成形開始前に不必要に上げておかず済むため、型に
ガラスの焼きつきが生じないなどの利点がある。また、
つば部４と上型１と一体形成してあるので、胴型キャリ
ア３から成形用金型への熱伝導の効率がよくなる。さら
に、成形用金型の形状を変えることのみで、胴型キャリ
ア３より成形用金型への熱伝導が可能となるので、成形
装置の構成が簡単になる。

【００１９】

【実施例２】図３は、本発明の実施例２の成形装置要部
を示す断面図である。本実施例の成形装置の特徴は、実
施例１のリング状部材５に換えて、下型２の成形面近傍
の外周面につば部２５を、上型１と同様に一体形成した
点である。その他の構成は、実施例１の成形装置２０と
同様である。

【００２０】本実施例にあっては、ガラス素材６を押圧
成形する際において、胴型キャリア３がガラス素材６を
上下両型１，２間に搬送し、下型２の上昇により光学素
材６がキャリア３の高さとつば部４，２５の形成されて
いる成形面からの距離との関係から決定される上下両型
１，２の型間で挟持されると同時に、つば部４，２５を
介してキャリアより熱交換が行われる。その他の成形方
法および作用は、実施例１と同様である。

【００２１】上記本実施例によれば、上記実施例１と同
じ効果が得られる。また、光学素子の中肉を精度よく均
一に保つことができる。

【００２２】

【発明の効果】以上にように、本発明によれば、成形型
の外周面の成形面近傍に接触部を形成し、搬送部材から
熱伝導率を受けるようにしたので、成形型の成形面と光
学ガラス素材が接触する直前もしくは直後に、成形面の
温度を高温にすることができるので、ガラス素材より成
形金型への熱伝導をゆっくりと行わせることができるた
め、割れや焼きつき等を無くすことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の成形装置の要部を示す断面図である。

【図２】本発明の実施例１の成形装置の要部を示す断面
図である。

【図３】本発明の実施例２の成形装置の要部を示す断面
図である。

【符号の説明】

１ 上型 ２ 下型 ３ 搬送部材（胴型キャリア） ４ 接触部（つば部） ５ リング状部材 ６ ガラス素材

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 加熱軟化したガラス素材を搬送部材に保
   持して一対の成形用型間に搬送し、上記ガラス素材を一
   対の成形用金型にて押圧成形して光学素子を得る光学素
   子の成形方法において、上記ガラス素材を押圧成形する
   に際し、上記一対の成形用金型のうち、少なくとも一方
   の成形用金型と上記搬送部材とを直接接触させ、ガラス
   素材および搬送部材の熱、または搬送部材の熱を成形用
   金型に伝達することを特徴とする光学素子の成形方法。
2. 【請求項２】 加熱軟化したガラス素材を搬送部材に保
   持して一対の成形用金型間に搬送し、上記ガラス素材を
   一対の成形用金型にて押圧成形して光学素子を得る光学
   素子の成形装置において、上記搬送部材と接触させる接
   触部を、上記一対の成形用金型の少なくとも一方の成形
   用金型に一体に設けたことを特徴とする光学素子の成形
   装置。