JPH06211519A - 超電導体とその製造方法 - Google Patents
超電導体とその製造方法Info
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- JPH06211519A JPH06211519A JP5005624A JP562493A JPH06211519A JP H06211519 A JPH06211519 A JP H06211519A JP 5005624 A JP5005624 A JP 5005624A JP 562493 A JP562493 A JP 562493A JP H06211519 A JPH06211519 A JP H06211519A
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- JP
- Japan
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- superconducting
- superconductor
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- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E40/00—Technologies for an efficient electrical power generation, transmission or distribution
- Y02E40/60—Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment
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- Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)
- Shielding Devices Or Components To Electric Or Magnetic Fields (AREA)
- Superconductors And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【構成】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少なくと
も一つをその構成元素として含む結晶構造の超電導物質
からなる超電導体において、少なくとも一度は酸素分圧
が0.2 気圧以下の雰囲気下で液相が生成するような温
度領域で熱処理し、その後、少なくとも一度は酸素分圧
が0.2 より高い状態で液相が生成しない温度領域でア
ニールする工程を含むようなプロセスによって、超電導
体を作製し、40K以上の温度における1Tの超電導臨
界電流密度が、0Tの超電導臨界電流密度の10%以上
であるようにする。 【効果】液体ヘリウムまたは液体窒素を用いて運転され
る、高磁界中でも高い超電導臨界電流密度の酸化物超電
導物質を用いた超電導体,超電導線材,超電導マグネッ
トが得られる。
も一つをその構成元素として含む結晶構造の超電導物質
からなる超電導体において、少なくとも一度は酸素分圧
が0.2 気圧以下の雰囲気下で液相が生成するような温
度領域で熱処理し、その後、少なくとも一度は酸素分圧
が0.2 より高い状態で液相が生成しない温度領域でア
ニールする工程を含むようなプロセスによって、超電導
体を作製し、40K以上の温度における1Tの超電導臨
界電流密度が、0Tの超電導臨界電流密度の10%以上
であるようにする。 【効果】液体ヘリウムまたは液体窒素を用いて運転され
る、高磁界中でも高い超電導臨界電流密度の酸化物超電
導物質を用いた超電導体,超電導線材,超電導マグネッ
トが得られる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体ヘリウムまたは液
体窒素を冷媒とする酸化物系超電導物質を用いた超電導
体の構成及びそれを用いた超電導線材,超電導コイル,
磁気シールド材、及びそれらの製造方法に関する。
体窒素を冷媒とする酸化物系超電導物質を用いた超電導
体の構成及びそれを用いた超電導線材,超電導コイル,
磁気シールド材、及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のTl,Pb,Sr,Ca,Cu系
の超電導体は、フィジカC第183巻67〜72ページ
で報告されているように、120K級の高い超電導臨界
温度を有する上に、磁場中でも高臨界電流密度を保つた
めに必要なピニングセンタの導入に成功し、実用化に有
望な材料であるが、超電導線材を作製し、その臨界電流
密度を測定すると、輸送電流の臨界電流密度は低く、実
際の応用には問題があった。
の超電導体は、フィジカC第183巻67〜72ページ
で報告されているように、120K級の高い超電導臨界
温度を有する上に、磁場中でも高臨界電流密度を保つた
めに必要なピニングセンタの導入に成功し、実用化に有
望な材料であるが、超電導線材を作製し、その臨界電流
密度を測定すると、輸送電流の臨界電流密度は低く、実
際の応用には問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術は、ピニ
ングセンタが存在してバルク結晶粒内を大きな超電導電
流が流れても、線材などに適用していく上では、多結晶
体であることを避けられないため超電導結晶粒同士の電
気的接合が磁場に対して弱く、磁場中における超電導臨
界電流密度を充分大きな値として確保することについて
考慮がなされておらず、僅かな磁場が超電導体に印加さ
れただけで臨界電流密度が大きく低下するという問題が
あった。
ングセンタが存在してバルク結晶粒内を大きな超電導電
流が流れても、線材などに適用していく上では、多結晶
体であることを避けられないため超電導結晶粒同士の電
気的接合が磁場に対して弱く、磁場中における超電導臨
界電流密度を充分大きな値として確保することについて
考慮がなされておらず、僅かな磁場が超電導体に印加さ
れただけで臨界電流密度が大きく低下するという問題が
あった。
【0004】本発明の目的は、臨界磁場の高い酸化物系
超電導物質を用いて、超電導結晶粒界の超電導結合を磁
場に対して強くすることによって、磁場中においても高
い臨界電流密度を有する超電導体を提供することにあ
る。
超電導物質を用いて、超電導結晶粒界の超電導結合を磁
場に対して強くすることによって、磁場中においても高
い臨界電流密度を有する超電導体を提供することにあ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、少なくとも
一度は超電導物質が分解を開始し、超電導物質と液相成
分が共存する状態で熱処理する工程を経ることによって
達成される。
一度は超電導物質が分解を開始し、超電導物質と液相成
分が共存する状態で熱処理する工程を経ることによって
達成される。
【0006】超電導体をある温度以上で熱処理すると、
分解を開始し、液相が生成し始める。液相が共存する状
態であると原子の拡散が速くなるので、超電導結晶粒も
成長し、超電導体を構成する結晶粒界の結晶性が良くな
る。しかし、液相が分解生成した状態は、異相の生成を
同時に意味し、これらの異相が超電導結晶粒の粒界に残
存すると、弱接合の要因となる。このため、異相の残存
を最低限に抑え、かつ超電導結晶粒同士の接合性を向上
させるような溶融条件が必要である。これまでのTl系
超電導体の溶融法では、大気中において溶融,アニール
を行ってきたが、超電導結晶の粒界に多くの異相が存在
し、応用製品を考える上で問題となる超電導臨界電流密
度は、1Tの印加磁場によって0Tの5%の値になって
しまった。そこで、今回酸素分圧を変えて溶融法を行
い、大気中酸素分圧より低酸素分圧下で溶融せしめ、そ
の後大気中酸素分圧より高酸素分圧下でアニールするこ
とで、1Tの磁場中でも0Tの10%以上の臨界電流密
度値を有する粒界接合性のよい超電導体が得られること
を見出した。
分解を開始し、液相が生成し始める。液相が共存する状
態であると原子の拡散が速くなるので、超電導結晶粒も
成長し、超電導体を構成する結晶粒界の結晶性が良くな
る。しかし、液相が分解生成した状態は、異相の生成を
同時に意味し、これらの異相が超電導結晶粒の粒界に残
存すると、弱接合の要因となる。このため、異相の残存
を最低限に抑え、かつ超電導結晶粒同士の接合性を向上
させるような溶融条件が必要である。これまでのTl系
超電導体の溶融法では、大気中において溶融,アニール
を行ってきたが、超電導結晶の粒界に多くの異相が存在
し、応用製品を考える上で問題となる超電導臨界電流密
度は、1Tの印加磁場によって0Tの5%の値になって
しまった。そこで、今回酸素分圧を変えて溶融法を行
い、大気中酸素分圧より低酸素分圧下で溶融せしめ、そ
の後大気中酸素分圧より高酸素分圧下でアニールするこ
とで、1Tの磁場中でも0Tの10%以上の臨界電流密
度値を有する粒界接合性のよい超電導体が得られること
を見出した。
【0007】以下、(Tl/Pb)1Sr2Ca2Cu3O9
系超電導体を例に挙げて示す。この系において、大気中
で溶融させたのちに、アニールすると、初めに(Tl/
Pb)1Sr2Ca1Cu2O7と(Sr,Ca)2Cu1O3が
生成する。これらの2相はいずれも固相であるため、最
終目的の(Tl/Pb)1Sr2Ca2Cu3O9を生成させる
には、固相同士の反応となるため、反応速度が遅く、異
相の偏析が起こり、(Tl/Pb)1Sr2Ca1Cu2O7や
異相が超電導結晶の粒界に異相が残存しやすかった。し
かし、0.2atm.以下の低酸素分圧下において溶融させ
ると、(Tl/Pb)1Sr2Ca1Cu2O7が不安定であ
り、通常の合成条件下の酸素分圧0.2atm.以上でアニ
ールすることによって、液相−固相反応で(Tl/Pb)
1Sr2Ca2Cu3O9が直接合成され、(Tl/Pb)1Sr2Ca1C
u2O7は体積率で5%以下になることがわかった。発明者
らが実験を行った範囲では溶融は0.2atm.以下で86
0℃以下、アニールは0.2atm.以上で880℃以上の
時超電導体の臨界電流密度がとくに良かった。これらの
低酸素分圧下の平衡相の変化は、Tl/Pb−Sr/B
a−Ca−Cu系においても同様に認められた。又、液
相−固相反応によって超電導相が結晶化すると、固相−
固相反応と比較して反応速度が速く、板状の結晶粒が成
長する。板状結晶粒の最も長い部分と最も短い部分の比
が十分大きいとき、プレスによって結晶の方位が揃い
(配向化する)易くなる。我々は種々の検討の結果で
は、結晶粒の平均粒径が20μm以上に成長し、結晶粒
の最も短い部分と最も長い部分の比が1/5以上である
とき、特に臨界電流密度が向上した。
系超電導体を例に挙げて示す。この系において、大気中
で溶融させたのちに、アニールすると、初めに(Tl/
Pb)1Sr2Ca1Cu2O7と(Sr,Ca)2Cu1O3が
生成する。これらの2相はいずれも固相であるため、最
終目的の(Tl/Pb)1Sr2Ca2Cu3O9を生成させる
には、固相同士の反応となるため、反応速度が遅く、異
相の偏析が起こり、(Tl/Pb)1Sr2Ca1Cu2O7や
異相が超電導結晶の粒界に異相が残存しやすかった。し
かし、0.2atm.以下の低酸素分圧下において溶融させ
ると、(Tl/Pb)1Sr2Ca1Cu2O7が不安定であ
り、通常の合成条件下の酸素分圧0.2atm.以上でアニ
ールすることによって、液相−固相反応で(Tl/Pb)
1Sr2Ca2Cu3O9が直接合成され、(Tl/Pb)1Sr2Ca1C
u2O7は体積率で5%以下になることがわかった。発明者
らが実験を行った範囲では溶融は0.2atm.以下で86
0℃以下、アニールは0.2atm.以上で880℃以上の
時超電導体の臨界電流密度がとくに良かった。これらの
低酸素分圧下の平衡相の変化は、Tl/Pb−Sr/B
a−Ca−Cu系においても同様に認められた。又、液
相−固相反応によって超電導相が結晶化すると、固相−
固相反応と比較して反応速度が速く、板状の結晶粒が成
長する。板状結晶粒の最も長い部分と最も短い部分の比
が十分大きいとき、プレスによって結晶の方位が揃い
(配向化する)易くなる。我々は種々の検討の結果で
は、結晶粒の平均粒径が20μm以上に成長し、結晶粒
の最も短い部分と最も長い部分の比が1/5以上である
とき、特に臨界電流密度が向上した。
【0008】超電導物質より分解,生成する液相組成
は、超電導物質の組成比によって異なってくる。超電導
体の組成、及び熱処理条件を検討した結果、Ca,Pb
を主成分とする液相が生成するように制御すると、超電
導結晶粒の接合性が向上することを見出した。しかし分
解,生成した液相は、異相を形成する。Ca,Pbを主
成分とする液相からは、Ca2Pb1O4 が生成してくる
が、結晶粒界に残存し、弱接合の原因となるため制御し
なければならない。超電導結晶粒の接合性を向上させる
異相の析出形態、及びその生成量を検討した結果、超電
導体におけるCa2Pb1O4 が平均粒径が3μm以下
で、かつ体積率が3%以下が適当であった。
は、超電導物質の組成比によって異なってくる。超電導
体の組成、及び熱処理条件を検討した結果、Ca,Pb
を主成分とする液相が生成するように制御すると、超電
導結晶粒の接合性が向上することを見出した。しかし分
解,生成した液相は、異相を形成する。Ca,Pbを主
成分とする液相からは、Ca2Pb1O4 が生成してくる
が、結晶粒界に残存し、弱接合の原因となるため制御し
なければならない。超電導結晶粒の接合性を向上させる
異相の析出形態、及びその生成量を検討した結果、超電
導体におけるCa2Pb1O4 が平均粒径が3μm以下
で、かつ体積率が3%以下が適当であった。
【0009】
【作用】これまでTl系超電導体において溶融,分解状
態から超電導結晶が結晶化する温度領域では、異相が同
時に成長して超電導結晶の粒界に残存し、電流パスを遮
断していた。今回、酸素分圧が0〜0.2atm.の雰囲気
において溶融させることで変えることで大気中の場合と
安定平衡相が変わり、固相−液相反応によって目的とす
る超電導相を結晶化させることに成功し、結晶粒界にお
ける原子の接合性がとれるようになると同時に、結晶化
過程の反応速度が増し、偏析による異相の生成が抑制さ
れる。残存する異相は、0%であることが望ましいが、
非常に長い時間を必要とし実用的でない。しかし、例え
ば、残存するCa2Pb1O4 の平均粒径が3μm以下
で、かつ体積率が3%以下になるように超電導体マトリ
ックス中に分散,析出するようにすると、超電導電流パ
スをそれほど妨げることなく、十分な臨界電流密度を得
られる。また、結晶粒の成長によって結晶の数、即ち、
弱接合を形成する結晶粒界の数が減少する。これらによ
って結晶粒界の接合性が向上し、磁場中でも高い臨界電
流密度を得るに至った。
態から超電導結晶が結晶化する温度領域では、異相が同
時に成長して超電導結晶の粒界に残存し、電流パスを遮
断していた。今回、酸素分圧が0〜0.2atm.の雰囲気
において溶融させることで変えることで大気中の場合と
安定平衡相が変わり、固相−液相反応によって目的とす
る超電導相を結晶化させることに成功し、結晶粒界にお
ける原子の接合性がとれるようになると同時に、結晶化
過程の反応速度が増し、偏析による異相の生成が抑制さ
れる。残存する異相は、0%であることが望ましいが、
非常に長い時間を必要とし実用的でない。しかし、例え
ば、残存するCa2Pb1O4 の平均粒径が3μm以下
で、かつ体積率が3%以下になるように超電導体マトリ
ックス中に分散,析出するようにすると、超電導電流パ
スをそれほど妨げることなく、十分な臨界電流密度を得
られる。また、結晶粒の成長によって結晶の数、即ち、
弱接合を形成する結晶粒界の数が減少する。これらによ
って結晶粒界の接合性が向上し、磁場中でも高い臨界電
流密度を得るに至った。
【0010】本発明によって作製した超電導体を使用す
ることによって、液体窒素冷却で動作する、特性のよい
超電導マグネットの作成が可能になる。そしてこのマグ
ネットを使用することによって液体窒素冷却で動作する
超電導利用応用機器,理化学機器などの実用が可能とな
る。
ることによって、液体窒素冷却で動作する、特性のよい
超電導マグネットの作成が可能になる。そしてこのマグ
ネットを使用することによって液体窒素冷却で動作する
超電導利用応用機器,理化学機器などの実用が可能とな
る。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を示す。
【0012】(実施例1)出発原料として、純度99%
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体は、図1に示すような結晶構造を有す
る超電導物質が90%以上含まれていることが確認され
た。さらにこの焼結体を再び大気中で880℃に加熱
し、10時間保持して室温まで冷却した。次に、得られ
た超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパイ
プに充填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.1
mmまで圧延した。これを300mmの試料片として切り出
し、酸素分圧が0.2atm.の雰囲気中において、860
℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで冷却した。
次に、酸素分圧1atm. の雰囲気中で880℃まで加熱
し、50時間保持した後、室温まで冷却した。得られた
試料について線材内部の組織を観察したところ、図1に
示すような結晶構造を有するTl−(1223)相が9
5%以上含まれていることが確認された。また図2に示
すような結晶構造を有するTl−(1212)相は5%
以下であった。この試料の77K、0テスラの磁場中で
臨界電流密度を直流4端子法で測定したところ、Jc=
39000A/cm2 、1テスラの磁場中で21000A
/cm2 であった。
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体は、図1に示すような結晶構造を有す
る超電導物質が90%以上含まれていることが確認され
た。さらにこの焼結体を再び大気中で880℃に加熱
し、10時間保持して室温まで冷却した。次に、得られ
た超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパイ
プに充填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.1
mmまで圧延した。これを300mmの試料片として切り出
し、酸素分圧が0.2atm.の雰囲気中において、860
℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで冷却した。
次に、酸素分圧1atm. の雰囲気中で880℃まで加熱
し、50時間保持した後、室温まで冷却した。得られた
試料について線材内部の組織を観察したところ、図1に
示すような結晶構造を有するTl−(1223)相が9
5%以上含まれていることが確認された。また図2に示
すような結晶構造を有するTl−(1212)相は5%
以下であった。この試料の77K、0テスラの磁場中で
臨界電流密度を直流4端子法で測定したところ、Jc=
39000A/cm2 、1テスラの磁場中で21000A
/cm2 であった。
【0013】(比較例1)実施例1と同様にして、Ag
シースの超電導線材を作製し、酸素分圧が1atm.の雰囲
気中において950℃まで加熱して2時間保持した後、
室温まで冷却した。その後、再び、酸素分圧1atm.の雰
囲気中において880℃まで加熱し、50時間保持した
後、室温まで冷却した。得られた試料について線材内部
の組織を観察したところ、図1に示すような結晶構造を
有するTl−(1223)相が90%含まれていること
が確認された。また、図2に示すような結晶構造を有す
るTl−(1212)相は10%以下であった。この試
料の77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4
端子法で測定したところ、Jc=29000A/cm2、1
テスラの磁場中で500A/cm2 であった。
シースの超電導線材を作製し、酸素分圧が1atm.の雰囲
気中において950℃まで加熱して2時間保持した後、
室温まで冷却した。その後、再び、酸素分圧1atm.の雰
囲気中において880℃まで加熱し、50時間保持した
後、室温まで冷却した。得られた試料について線材内部
の組織を観察したところ、図1に示すような結晶構造を
有するTl−(1223)相が90%含まれていること
が確認された。また、図2に示すような結晶構造を有す
るTl−(1212)相は10%以下であった。この試
料の77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4
端子法で測定したところ、Jc=29000A/cm2、1
テスラの磁場中で500A/cm2 であった。
【0014】このことより、低酸素分圧下で超電導物質
を一度分解,溶融させた後に、より高酸素分圧下でアニ
ールを行うようなプロセスは超電導結晶同士の接合性を
高め、磁場中での高いJcを得るために非常に有効な手
段であることが分かる。
を一度分解,溶融させた後に、より高酸素分圧下でアニ
ールを行うようなプロセスは超電導結晶同士の接合性を
高め、磁場中での高いJcを得るために非常に有効な手
段であることが分かる。
【0015】(実施例2)出発原料として、純度99%
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体には、図1に示すような結晶構造を有
する超電導物質が90%以上含まれていることが確認さ
れた。この焼結体を再び大気中で880℃に加熱し、1
0時間保持して室温まで冷却した。次に、得られた超電
導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパイプに充
填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.1mm まで
圧延した。これを300mmの試料片として切り出し、酸
素分圧が0.05atm.の雰囲気中で、860℃ まで加熱して2
時間保持した後、室温まで冷却した。得られた試料につ
いて断面を研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内
部の組織を観察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O
9で表される超電導物質が主結晶相であり、Pb,Ca
が主成分でPb:Caがほぼ1:2である非超電導相が
生成していることが分かった。次に、酸素分圧1atm.の
雰囲気中において880℃まで加熱し、50時間保持し
た後、室温まで冷却した。得られた試料について断面を
研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を
観察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表され
る超電導物質が主結晶相でありその平均粒径は20μm
であった。この時、超電導物質の結晶粒の最も短い部分
は3〜4μm、最も長い部分は20μmであった。その
他、Ca2Pb1O4 相が、超電導結晶粒子の粒間に、1
%生成していることが分かった。得られた試料について
77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子
法で測定したところ、Jc=41000A/cm2 、1テ
スラの磁場中で23000A/cm2 であった。
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体には、図1に示すような結晶構造を有
する超電導物質が90%以上含まれていることが確認さ
れた。この焼結体を再び大気中で880℃に加熱し、1
0時間保持して室温まで冷却した。次に、得られた超電
導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパイプに充
填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.1mm まで
圧延した。これを300mmの試料片として切り出し、酸
素分圧が0.05atm.の雰囲気中で、860℃ まで加熱して2
時間保持した後、室温まで冷却した。得られた試料につ
いて断面を研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内
部の組織を観察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O
9で表される超電導物質が主結晶相であり、Pb,Ca
が主成分でPb:Caがほぼ1:2である非超電導相が
生成していることが分かった。次に、酸素分圧1atm.の
雰囲気中において880℃まで加熱し、50時間保持し
た後、室温まで冷却した。得られた試料について断面を
研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を
観察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表され
る超電導物質が主結晶相でありその平均粒径は20μm
であった。この時、超電導物質の結晶粒の最も短い部分
は3〜4μm、最も長い部分は20μmであった。その
他、Ca2Pb1O4 相が、超電導結晶粒子の粒間に、1
%生成していることが分かった。得られた試料について
77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子
法で測定したところ、Jc=41000A/cm2 、1テ
スラの磁場中で23000A/cm2 であった。
【0016】(比較例2)実施例1と同様にして、Ag
シースの超電導線材を作製し、酸素分圧が0.05atm.の雰
囲気中において、830℃まで加熱して2時間保持した
後、室温まで冷却した。得られた試料について断面を研
磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観
察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される
超電導物質が主結晶相であり、Pb,Caが主成分でP
b:Caがほぼ1:2である非超電導相の生成はみられ
なかった。次に、酸素分圧1atm.の雰囲気中において88
0℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される超電導物質が主結晶
相でありその平均粒径は10μmであった。この時、超
電導物質の結晶粒の最も短い部分は5μm以上、最も長
い部分は10μmであった。得られた試料について77
K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で
測定したところ、Jc=38000A/cm2 、1テスラ
の磁場中で3000A/cm2 であった。
シースの超電導線材を作製し、酸素分圧が0.05atm.の雰
囲気中において、830℃まで加熱して2時間保持した
後、室温まで冷却した。得られた試料について断面を研
磨し、走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観
察した。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される
超電導物質が主結晶相であり、Pb,Caが主成分でP
b:Caがほぼ1:2である非超電導相の生成はみられ
なかった。次に、酸素分圧1atm.の雰囲気中において88
0℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される超電導物質が主結晶
相でありその平均粒径は10μmであった。この時、超
電導物質の結晶粒の最も短い部分は5μm以上、最も長
い部分は10μmであった。得られた試料について77
K、0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で
測定したところ、Jc=38000A/cm2 、1テスラ
の磁場中で3000A/cm2 であった。
【0017】このことより、磁場中での高いJcを得る
ためには、超電導物質の結晶粒径は20μm以上で、結
晶粒の最も短い部分と長い部分の比は1/5以上にする
ことが好ましいことが分かる。そして、そのような結晶
粒の成長を起こすためにCaとPbを主成分とする液相
が非常に有効であることが分かる。
ためには、超電導物質の結晶粒径は20μm以上で、結
晶粒の最も短い部分と長い部分の比は1/5以上にする
ことが好ましいことが分かる。そして、そのような結晶
粒の成長を起こすためにCaとPbを主成分とする液相
が非常に有効であることが分かる。
【0018】(実施例3)出発原料として、純度99%
以上のTl2O3,PbO,BaO,SrO,CaO,Cu
Oを用いた。まず、BaO,SrO,CaO,CuOをそ
れぞれBa,Sr,Ca,Cuの原子比率が0.4:1.
6:2:3になるように混合し、880℃で20時間大
気中で焼成する。この粉末を粉砕し、得られた粉末にT
l:Pb:Ba:Sr:Ca:Cuの原子比率が0.
5:0.5:0.4:1.6:2:3となるようにTl2O
3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。粉末
を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋のつい
たアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中で焼成
する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行ったとこ
ろ、焼結体は、図1に示すような結晶構造を有する超電
導物質が90%以上含まれていることが確認された。次
に、得られた超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mm
のAgパイプに充填し、外径0.5mmまで線引きした
後、厚さ0.1mmまで圧延した。これを300mmの試料
片として切り出し、酸素分圧が0.03atm. の雰囲気中
で、840℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで
冷却した。次に、酸素分圧1atm.の雰囲気中において8
80℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却
した。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子
顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結
果、Tl0.5Pb0.5Sr1.6Ba0.4Ca2Cu3O9で表される超電導物
質が主結晶相でありその平均粒径は20μmであった。
また、超電導物質の結晶のC軸は、線材のテープ面に対
して5°以内であった。得られた試料について77K、
0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で測定
したところ、Jc=36000A/cm2、1テスラの磁
場中で16000A/cm2であった。
以上のTl2O3,PbO,BaO,SrO,CaO,Cu
Oを用いた。まず、BaO,SrO,CaO,CuOをそ
れぞれBa,Sr,Ca,Cuの原子比率が0.4:1.
6:2:3になるように混合し、880℃で20時間大
気中で焼成する。この粉末を粉砕し、得られた粉末にT
l:Pb:Ba:Sr:Ca:Cuの原子比率が0.
5:0.5:0.4:1.6:2:3となるようにTl2O
3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。粉末
を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋のつい
たアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中で焼成
する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行ったとこ
ろ、焼結体は、図1に示すような結晶構造を有する超電
導物質が90%以上含まれていることが確認された。次
に、得られた超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mm
のAgパイプに充填し、外径0.5mmまで線引きした
後、厚さ0.1mmまで圧延した。これを300mmの試料
片として切り出し、酸素分圧が0.03atm. の雰囲気中
で、840℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで
冷却した。次に、酸素分圧1atm.の雰囲気中において8
80℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却
した。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子
顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結
果、Tl0.5Pb0.5Sr1.6Ba0.4Ca2Cu3O9で表される超電導物
質が主結晶相でありその平均粒径は20μmであった。
また、超電導物質の結晶のC軸は、線材のテープ面に対
して5°以内であった。得られた試料について77K、
0テスラの磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で測定
したところ、Jc=36000A/cm2、1テスラの磁
場中で16000A/cm2であった。
【0019】(実施例4)出発原料として、純度99%
以上のTl2O3,PbO,BaO,SrO,CaO,Cu
Oを用いた。まず、BaO,SrO,CaO,CuOを
それぞれBa,Sr,Ca,Cuの原子比率が0.4:
1.6:2:3になるように混合し、880℃で20時間大
気中で焼成する。粉末を粉砕し、得られた粉末にTl:
Pb:Ba:Sr:Ca:Cuの原子比率が0.5:0.
5:0.4:1.6:2:3となるようにTl2O3とPb
Oを加え、らいかい機で30分混合する。粉末を直径3
0mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋のついたアルミ
ナるつぼ中で880℃,10時間大気中で焼成する。得
られた焼結体の粉末X線回折測定を行ったところ、焼結
体は、図1に示すような結晶構造を有する超電導物質が
90%以上含まれていることが確認された。次に、得ら
れた超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパ
イプに充填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.
1mmまで圧延した。これを300mmの試料片として切り
出し、酸素分圧が0.05atm.の雰囲気中において、8
60℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで冷却し
た。次に、酸素分圧0.3atm.の雰囲気中において87
0℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr1.6Ba0.4Ca2Cu3O9で表される超電導物質が
主結晶相であり、Ca2Pb1P4 相が、超電導結晶粒子
の粒間に、3%生成していることが分かった。得られた
試料について77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度
を直流4端子法で測定したところ、Jc=39000A
/cm2、1テスラの磁場中で22000A/cm2 であった。
以上のTl2O3,PbO,BaO,SrO,CaO,Cu
Oを用いた。まず、BaO,SrO,CaO,CuOを
それぞれBa,Sr,Ca,Cuの原子比率が0.4:
1.6:2:3になるように混合し、880℃で20時間大
気中で焼成する。粉末を粉砕し、得られた粉末にTl:
Pb:Ba:Sr:Ca:Cuの原子比率が0.5:0.
5:0.4:1.6:2:3となるようにTl2O3とPb
Oを加え、らいかい機で30分混合する。粉末を直径3
0mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋のついたアルミ
ナるつぼ中で880℃,10時間大気中で焼成する。得
られた焼結体の粉末X線回折測定を行ったところ、焼結
体は、図1に示すような結晶構造を有する超電導物質が
90%以上含まれていることが確認された。次に、得ら
れた超電導体を粉砕して、外形6mm,内径4mmのAgパ
イプに充填し、外径0.5mmまで線引きした後、厚さ0.
1mmまで圧延した。これを300mmの試料片として切り
出し、酸素分圧が0.05atm.の雰囲気中において、8
60℃まで加熱して2時間保持した後、室温まで冷却し
た。次に、酸素分圧0.3atm.の雰囲気中において87
0℃まで加熱し、50時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr1.6Ba0.4Ca2Cu3O9で表される超電導物質が
主結晶相であり、Ca2Pb1P4 相が、超電導結晶粒子
の粒間に、3%生成していることが分かった。得られた
試料について77K、0テスラの磁場中で臨界電流密度
を直流4端子法で測定したところ、Jc=39000A
/cm2、1テスラの磁場中で22000A/cm2 であった。
【0020】この酸素分圧0.3atm.の雰囲気中で87
0℃でのアニール時間を短くした場合は、超電導粒子間
Ca2Pb1O4 がもう少し多く残存し、Jcの値は高く
ならなかった。
0℃でのアニール時間を短くした場合は、超電導粒子間
Ca2Pb1O4 がもう少し多く残存し、Jcの値は高く
ならなかった。
【0021】(実施例5)出発原料として、純度99%
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体には、図1に示すような結晶構造を有
する超電導物質が90%以上含まれていることが確認さ
れた。次に、得られた超電導体を粉砕して、外形6mm,
内径4mmのAgパイプに充填し、外径0.5mmまで線
引きした後、厚さ0.1mm まで圧延した。これを30
0mmの試料片として切り出し、酸素分圧が0.05atm.の雰
囲気中で、830℃まで加熱して2時間保持した後、室
温まで冷却した。得られた試料について断面を研磨し、
走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観察し
た。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9で表される超電
導物質が主結晶相であり、平均粒径4μmのCa2Pb1
O4 相が、超電導結晶粒子の粒間に、5%生成している
ことが分かった。この試料について77K、0テスラの
磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で測定したとこ
ろ、Jc=16000A/cm2、1テスラの磁場中で1
500A/cm2であった。
以上のTl2O3,PbO,SrO,CaO,CuOを用い
た。まず、SrO,CaO,CuOをそれぞれSr,C
a,Cuの原子比率が2:2:3になるように混合し、
880℃で20時間大気中で焼成する。この粉末を粉砕
し、得られた粉末にTl:Pb:Sr:Ca:Cuの原
子比率が0.5:0.5:2:2:3となるようにTl2
O3とPbOを加え、らいかい機で30分混合する。こ
の粉末を直径30mm,厚さ3mmのペレットに成型し、蓋
のついたアルミナるつぼ中で880℃,10時間大気中
で焼成する。得られた焼結体の粉末X線回折測定を行っ
たところ、焼結体には、図1に示すような結晶構造を有
する超電導物質が90%以上含まれていることが確認さ
れた。次に、得られた超電導体を粉砕して、外形6mm,
内径4mmのAgパイプに充填し、外径0.5mmまで線
引きした後、厚さ0.1mm まで圧延した。これを30
0mmの試料片として切り出し、酸素分圧が0.05atm.の雰
囲気中で、830℃まで加熱して2時間保持した後、室
温まで冷却した。得られた試料について断面を研磨し、
走査型電子顕微鏡を用いて、線材内部の組織を観察し
た。その結果、Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9で表される超電
導物質が主結晶相であり、平均粒径4μmのCa2Pb1
O4 相が、超電導結晶粒子の粒間に、5%生成している
ことが分かった。この試料について77K、0テスラの
磁場中で臨界電流密度を直流4端子法で測定したとこ
ろ、Jc=16000A/cm2、1テスラの磁場中で1
500A/cm2であった。
【0022】次に、酸素分圧1atm.の雰囲気中で880
℃まで加熱し、10時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される超電導物質が主結晶
相であり、平均粒径3μmのCa2Pb1O4 相が超電導
結晶粒子の粒間に、3%生成していることが分かった。
得られた試料について77K、0テスラの磁場中で臨界
電流密度を直流4端子法で測定したところ、Jc=42
000A/cm2、1テスラの磁場中で24000A/cm2
であった。
℃まで加熱し、10時間保持した後、室温まで冷却し
た。得られた試料について断面を研磨し、走査型電子顕
微鏡を用いて、線材内部の組織を観察した。その結果、
Tl0.5Pb0.5Sr2Ca2Cu3O9 で表される超電導物質が主結晶
相であり、平均粒径3μmのCa2Pb1O4 相が超電導
結晶粒子の粒間に、3%生成していることが分かった。
得られた試料について77K、0テスラの磁場中で臨界
電流密度を直流4端子法で測定したところ、Jc=42
000A/cm2、1テスラの磁場中で24000A/cm2
であった。
【0023】このことより、超電導体の内部に残存が許
されるCa2Pb1O4 相は3%が上限であることが分か
る。
されるCa2Pb1O4 相は3%が上限であることが分か
る。
【0024】(実施例6)実施例1と同様にして、超電
導物質としてその組成がTl0.5Pb0.5Sr2CaCu2O7である
超電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料
のJcは77K、1Tにおいて15000A/cm2 であ
った。
導物質としてその組成がTl0.5Pb0.5Sr2CaCu2O7である
超電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料
のJcは77K、1Tにおいて15000A/cm2 であ
った。
【0025】(実施例7)実施例1と同様にして、超電
導物質としてその組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2CaCu2
O7である超電導物質を用いた線材試料を作製した。得ら
れた試料のJcは77K、1Tにおいて16000A/
cm2 であった。
導物質としてその組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2CaCu2
O7である超電導物質を用いた線材試料を作製した。得ら
れた試料のJcは77K、1Tにおいて16000A/
cm2 であった。
【0026】(実施例8)実施例1と同様にして、超電
導物質としてその組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2Ca2Cu
3O9 である超電導物質を用いた線材試料を作製した。得
られた試料のJcは77K、1Tにおいて20000A
/cm2 であった。 (実施例9)実施例1と同様にして、超電導物質として
その組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2Ca3Cu4O11である超
電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料の
Jcは77K、1Tにおいて19000A/cm2 であっ
た。 (実施例10)実施例1と同様にして、超電導物質とし
てその組成がTl0.9Pb0.1(Sr0.9Ba0.1)2Ca3Cu4O11である
超電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料
のJcは77K、1Tにおいて23000A/cm2 であ
った。
導物質としてその組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2Ca2Cu
3O9 である超電導物質を用いた線材試料を作製した。得
られた試料のJcは77K、1Tにおいて20000A
/cm2 であった。 (実施例9)実施例1と同様にして、超電導物質として
その組成がTl0.7Pb0.3(Sr0.5Ba0.5)2Ca3Cu4O11である超
電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料の
Jcは77K、1Tにおいて19000A/cm2 であっ
た。 (実施例10)実施例1と同様にして、超電導物質とし
てその組成がTl0.9Pb0.1(Sr0.9Ba0.1)2Ca3Cu4O11である
超電導物質を用いた線材試料を作製した。得られた試料
のJcは77K、1Tにおいて23000A/cm2 であ
った。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、液体ヘリウムによる冷
却は勿論、液体窒素による冷却によって運転される、高
磁界中においても高い超電導臨界電流密度を有する酸化
物超電導物質を用いた超電導体,超電導線材,超電導マ
グネットが得られる。
却は勿論、液体窒素による冷却によって運転される、高
磁界中においても高い超電導臨界電流密度を有する酸化
物超電導物質を用いた超電導体,超電導線材,超電導マ
グネットが得られる。
【図1】本発明の一実施例による超電導物質のT1−
(1223)結晶構造の説明図。
(1223)結晶構造の説明図。
【図2】本発明の一実施例による超電導物質のT1−
(1212)結晶構造の説明図。
(1212)結晶構造の説明図。
1…TlもしくはPb原子、2…BaもしくはSr原
子、3…Ca原子、4…Cu原子、5…酸素原子。
子、3…Ca原子、4…Cu原子、5…酸素原子。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加茂 友一 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内
Claims (15)
- 【請求項1】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少な
くとも一つを含む超電導物質において、40K以上の温
度における1Tの超電導臨界電流密度が、0Tの超電導
臨界電流密度の10%以上であることを特徴とする超電
導体。 - 【請求項2】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少な
くとも一つを含む超電導物質において、少なくとも一度
は酸素分圧が0〜0.2atm.において前記超電導物質が
分解を開始する温度以上で熱処理する工程と、酸素分圧
が0.2atm.以上の雰囲気において前記超電導物質が分
解を開始する温度以下で熱処理する工程を含む手法によ
って、40K以上の温度における1Tの超電導臨界電流
密度が、0Tの超電導臨界電流密度の10%以上である
ことを特徴とする超電導体の製造方法。 - 【請求項3】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少な
くとも一つを含む超電導物質において、少なくとも一度
は酸素分圧が0〜0.2atm.において860℃以下で熱
処理する工程と、酸素分圧が0.2atm.以上の雰囲気で
860℃以上で熱処理する工程を含む手法によって、4
0K以上の温度における1Tの超電導臨界電流密度が、
0Tの超電導臨界電流密度の10%以上であることを特
徴とする超電導体の製造方法。 - 【請求項4】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少な
くとも一つを含む超電導体において、少なくとも一度は
Ca,Pbを主成分とする液相が生成する温度以上で熱
処理することによって、40K以上の温度における1T
の超電導臨界電流密度が、0Tの超電導臨界電流密度の
10%以上であることを特徴とする超電導体及びその製
造方法。 - 【請求項5】超電導物質の化学物質の組成式が一般に 【化1】 (Tl1-xPbx)i(Sr1-yBay)jCakCulOz 0.8≦i≦1.6 1.6≦j≦2.4 0.8≦k≦3.6 1.6≦l≦4.6 0.05≦x≦0.9 0≦y≦0.5 6≦z≦12 で与えられる超電導体において、40K以上の温度にお
ける1Tの超電導臨界電流密度が、0Tの超電導臨界電
流密度の10%以上であることを特徴とする超電導体。 - 【請求項6】超電導物質の化学物質の組成式が一般に 【化2】 (Tl1-xPbx)i(Sr1-yBay)jCakCulOz 0.8≦i≦1.6 1.6≦j≦2.4 0.8≦k≦3.6 1.6≦l≦4.6 0.05≦x≦0.9 0≦y≦0.5 6≦z≦12 で与えられる超電導体において、少なくとも一度は酸素
分圧が0〜0〜0.2atm.で前記超電導物質が分解を開始
する温度以上で熱処理する工程と、酸素分圧が0.2at
m.以上の雰囲気において前記超電導物質が分解を開始
する温度以下で熱処理する工程を含むことによって、4
0K以上の温度における1Tの超電導臨界電流密度が、
0Tの超電導臨界電流密度の10%以上であることを特
徴とする超電導体の製造方法。 - 【請求項7】超電導物質の化学物質の組成式が一般に 【化3】 (Tl1-xPbx)i(Sr1-yBay)jCakCulOz 0.8≦i≦1.6 1.6≦j≦2.4 0.8≦k≦3.6 1.6≦l≦4.6 0.05≦x≦0.9 0≦y≦0.5 6≦z≦12 で与えられる超電導体において、少なくとも一度はC
a,Pbを主成分とする液相が生成する温度以上で熱処
理することによって、前記超電導物質からなる結晶の接
合性を向上させたことを特徴とする超電導体の製造方
法。 - 【請求項8】請求項1において、前記超電導物質からな
る結晶粒の最も短い部分と最も長い部分の比が1/5以
上である超電導体。 - 【請求項9】請求項1において、前記超電導物質からな
る超電導結晶粒の平均結晶粒径が20μm以上である超
電導体。 - 【請求項10】請求項4ないし7において、前記超電導
物質からなる結晶粒の粒間に、平均粒径3μm以下のC
a2Pb1O4 が体積率3%以下で分散している超電導
体。 - 【請求項11】請求項1において、前記超電導体が12
23構造と1212構造を含み、かつ1223構造の結
晶相が、1212構造の結晶相に対する体積率で95%
以上である超電導体。 - 【請求項12】Tl,Pb,Sr,Ca,Cuの中の少
なくとも一つを含む超電導物質において、少なくとも一
度は酸素分圧が0〜0.2atm.において前記超電導物質
が分解を開始する温度以上で熱処理する工程と、酸素分
圧が0.2atm.以上の雰囲気において前記超電導物質が
分解を開始する温度以下で熱処理する工程を含む手法に
よって前記超電導物質からなる結晶のC軸がテープ面に
垂直な方向に対して5°以内であり、40K以上の温度
における1Tの超電導臨界電流密度が、0Tの超電導臨
界電流密度の10%以上であることを特徴とする超電導
体の製造方法。 - 【請求項13】請求項1に記載の前記超電導体を構成要
素として含む超電導線材。 - 【請求項14】請求項1に記載の前記超電導体を構成要
素として含む超電導線材を用いた磁場発生用マグネッ
ト。 - 【請求項15】請求項1に記載の前記超電導体を構成要
素として含む超電導線材を用いた磁場発生用マグネット
を有する機器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5005624A JPH06211519A (ja) | 1993-01-18 | 1993-01-18 | 超電導体とその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5005624A JPH06211519A (ja) | 1993-01-18 | 1993-01-18 | 超電導体とその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06211519A true JPH06211519A (ja) | 1994-08-02 |
Family
ID=11616323
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5005624A Pending JPH06211519A (ja) | 1993-01-18 | 1993-01-18 | 超電導体とその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06211519A (ja) |
-
1993
- 1993-01-18 JP JP5005624A patent/JPH06211519A/ja active Pending
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