JPH06192839A - 堆積膜形成方法および堆積膜形成装置 - Google Patents

堆積膜形成方法および堆積膜形成装置

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JPH06192839A
JPH06192839A JP34773892A JP34773892A JPH06192839A JP H06192839 A JPH06192839 A JP H06192839A JP 34773892 A JP34773892 A JP 34773892A JP 34773892 A JP34773892 A JP 34773892A JP H06192839 A JPH06192839 A JP H06192839A
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直 芳里
Yutaka Echizen
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Hideichiro Sugiyama
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Abstract

(57)【要約】 【目的】大面積の基板上に、高品質の堆積膜を連続かつ
特性のばらつきなく形成できるようにする。 【構成】各マイクロ波アプリケータ109から導入さ
れるマイクロ波によって生ずるプラズマに接するように
複数のバイアス電極111を配置し、バイアス電流が一
定になるように、マイクロ波電力を制御する。バイア
ス電極の端部の誘電体窓に対向する部分に円盤を設け
る。成膜容器端部にバイアス電極を設ける。成膜容器
内に付着する堆積物の影響を受けることなくバイアス電
流が基板のみに流れ込むようにする。あるいは成膜空
間を壁によって複数の成膜空間に分割する、の少なくと
も1つのことを実施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラズマCVD法によ
る堆積膜形成方法および堆積膜形成装置に関し、特に、
各種の機能性堆積膜を大面積の基板上に連続的に形成す
る堆積膜形成方法および堆積膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、全世界的に電力需要が急激に増大
し、電力生産が活発になっているが、それにしたがい、
火力発電や原子力発電に伴う環境汚染や地球温暖化の問
題が顕在化してきている。こうした中で、太陽光を利用
する太陽電池発電は、環境汚染や地球温暖化の問題を引
き起こすことがなく、太陽光という資源の偏在も少ない
ので、今後のさらなる電力需要を満たすものとして注目
を集めている。
【0003】ところで、太陽電池発電を実用化するため
には、使用する太陽電池が、光電変換効率が十分に高
く、特性や安定性に優れ、かつ大量生産に適したもので
あることが要求される。また、発電規模からして、大面
積の太陽電池が必要となる。こうしたことから、容易に
入手できるシランなどの原料ガスをグロー放電により分
解することによって、ガラスや金属シートなどの比較的
安価な基板上に、アモルファスシリコンなどの半導体薄
膜を堆積させて形成されるアモルファスシリコン系太陽
電池が提案されている。このアモルファスシリコン系太
陽電池は、単結晶シリコンなどから作製された太陽電池
と比較して、量産性に優れ、低コストであると注目さ
れ、その製造方法についても各種の提案がなされてい
る。
【0004】太陽電池発電では、太陽電池の単位モジュ
ールを直列または並列に接続してユニット化し、所望の
電流、電圧を得るようにすることが多く、各単位モジュ
ールにおいては断線や短絡が生じないことが要求され、
さらに、単位モジュール間の出力電圧、出力電流のばら
つきが少ないことが要求される。そのため、少なくとも
単位モジュールを作製する段階で、その最大の特性決定
要因である半導体層そのものの特性の均一さが要求され
る。また、モジュールの設計を容易にし、モジュールの
組み立て工程を簡略なものとするため、大面積にわたっ
て特性の優れた半導体堆積膜が形成できるようにするこ
とが、太陽電池の量産性を高め、生産コストの大幅な低
減をもたらすこととなる。
【0005】太陽電池の重要な構成要素である半導体層
は、pn接合あるいはpin接合などの半導体接合を含
んでいるが、これら半導体接合は、導電型の異なる半導
体層を順次積層したり、ある導電型の半導体層に異なる
導電型のドーパントをイオン打ち込みあるいは熱拡散さ
せることにより形成される。上述のアモルファスシリコ
ン系太陽電池の作製においては、ホスフィン(PH3)や
ジボラン(B26)などのドーパントとなる元素を含む原
料ガスを、主たる原料ガスであるシランガスなどに混合
し、混合された原料ガスをグロー放電によって分解する
ことによって所望の導電型を有する半導体膜が得られ、
所望の基板上にこれらの半導体膜を順次積層させて形成
することにより、容易に半導体接合が得られることが知
られている。そこで、アモルファスシリコン系太陽電池
を作製するにあたっては、各々の半導体層に対応して独
立した成膜室を設け、この成膜室でそれぞれの半導体層
を形成することが一般的である。
【0006】このようなアモルファスシリコン系太陽電
池の作製に適したプラズマCVD法による堆積膜形成方
法として、米国特許第4400409号明細書には、ロール・
ツー・ロール(Roll to Roll)方式によるものが開示さ
れている。この堆積膜形成方法は、複数のグロー放電領
域を設け、長尺の帯状の基板を、その基板が各グロー放
電領域を順次貫通する経路に沿って配置し、必要とされ
る導電型の半導体層をそれぞれのグロー放電領域で堆積
形成しつつ、帯状の基板をその長手方向に連続的に搬送
させるものである。これによって所望の半導体接合を有
する太陽電池を連続的に形成することができるようにな
っている。なお、この堆積膜形成方法では、各グロー放
電領域で使われるドーパントガスが、他のグロー放電領
域へ拡散、混入することを防ぐため、それぞれのグロー
放電領域をガスゲートと呼ばれるスリット状の分離通路
によって相互に分離し、さらにこの分離通路に例えばA
r,H2などの掃気用ガスの流れを形成するようになって
いる。こうした構成とすることにより、ロール・ツー・
ロール方式による堆積膜形成方法は、太陽電池などの半
導体素子の製造に適するものとなっている。
【0007】一方、アモルファスシリコン系太陽電池の
光電変換効率を向上させるための試みとして、a−Si
Ge:H,a−SiGe:F,a−SiGe:H:F,a−S
iC:H,a−SiC:F,a−SiC:H:FなどのIV族合
金半導体をi型(真性)半導体層と使用する場合に、光
の入射側から、このi型半導体層の禁制体幅(バンドギ
ャップ:Eg opt)を膜厚方向に連続的に適宜変化させる
ことにより、太陽電池としての開放電圧(Voc)や曲線
因子(fill factor:FF)が大幅に改善されることが
見出されている(20th IEEE PVSC, 1988,"A Novel Desi
gn for Amorphous Silicon Solar Cells", S. Guha, J.
Yang, et al.)。
【0008】また、半導体デバイス、電子写真用感光デ
バイス、画像入力用ラインセンサ、撮像デバイスやその
他の各種のエレクトロニクス素子、あるいは光学素子に
対しても、アモルファス半導体、例えば水素および/ま
たはハロゲン(フッ素、塩素など)で補償されたアモル
ファスシリコンなどの堆積膜が提案され、このうちのい
くつかは実用に供されている。こうした堆積膜もプラズ
マCVD法で形成されるのが一般的である。すなわち、
直流、高周波あるいはマイクロ波グロー放電によって原
料ガスを分解し、ガラス、石英、耐熱性合成樹脂フィル
ム、ステンレス鋼、アルミニウムなどの材質である基板
上に薄膜状の堆積膜を形成する方法により形成されてい
る。
【0009】ここで、プラズマCVD法についてさらに
詳しく説明する。プラズマCVD法とは、電磁波などの
エネルギーを特定物質に加えて放電させることにより、
特定物質を化学的に活性なラジカルとし、さらに、ラジ
カルを基板あるいは基体に接触させることにより、基板
上へ堆積膜を形成させる方法をいう。そして、プラズマ
CVD装置とは、プラズマCVD法を実施するために設
計,製作された装置をいう。
【0010】従来、プラズマCVD装置は、成膜ガス導
入口および排気口を有する真空容器である成膜室と、成
膜室に成膜ガス導入口を介して成膜ガスを供給するガス
供給手段と、成膜室内の成膜ガスを成膜ガス排気口を介
して排出するガス排出手段と、成膜室に供給された成膜
ガスを解離させるための電磁波などのエネルギーを供給
するエネルギー供給手段と、堆積膜形成用の基板を成膜
室内へ搬送する基板搬送手段とから構成されている。
【0011】ところで、プラズマCVD法はラジカルの
強い活性に依拠するものであり、ラジカルの生成密度や
基板の温度などを適宜選択することにより所望の堆積膜
形成を行うものであるが、プラズマCVD法において処
理速度を高めたり、大面積に亘って均一な堆積膜形成を
する上で必要なことは、ラジカルを大面積に亘って均一
かつ大量に生成させるプラズマ条件の選択である。
【0012】従来、成膜ガスを解離させるためのエネル
ギーとしては、13.56MHzの高周波(RF)が使
用されていたが、近年、より波長の短い2.45GHz
のマイクロ波を用いることにより、高密度プラズマを効
率的に生成することができ、プラズマCVD法において
堆積膜形成速度の向上が図れる可能性があることから、
マイクロ波を用いたプラズマCVD法が注目され、その
ためのプラズマCVD装置が数多く提案されている。例
えば上述したような各種エレクトロニクス素子、光学素
子などに用いる素子材料としてのアモルファスシリコン
(以下、「a−Si」と記す。)を所望の基板上にマイ
クロ波プラズマCVD装置が各種提案されている。
【0013】例えば、特公昭58-49295、特公昭59-4399
1、実公昭62-36240の各公報などには、方形または同軸
導波管にガス管を貫入させるかあるいは接触させてプラ
ズマを正規させるものが示されている。この種の装置と
しては、図j1に示されるものを代表的なものとして挙
げることができる。この装置は、概略、真空系、排気
系、マイクロ波導入系で構成されるものである。
【0014】図46において、真空系は、反応容器98
1と、ガス輸送管982を介して接続した内径40mm
程度のマイクロ波透過性の管983(例えば石英管)あ
るいは窓とで構成されている。管983(あるいは窓)
は第1のガス導入管982と接続し、同時にマイクロ波
導波管984と直交している。そして反応容器981内
には、第2のガス導入管(不図示)が接続され、この第
2のガス導入管から導入されるガス(例えばシランガ
ス)は、排気管985とポンプ986とによって構成さ
れる排気系から排気されるようになっている。この装置
にあっては、第1のガス導入管982から導入されるガ
ス(酸素ガスあるいは窒素ガス)は、マイクロ波電源9
87から投入されたマイクロ波電力により解離する。マ
イクロ波電力による放電に際しては、摺動短絡板(プラ
ンジャー)988を動かしてマイクロ波の入力インピー
ダンスの整合をとり得るようになっている。かくして生
成するプラズマ中のラジカルが、前記第2のガス導入管
を介して導入されるシランガスなどと反応し、基板98
9上にSiO2やSiNなどの膜が形成されることとな
る。またこの装置により、光導電性材料や光起電力材料
も数十Å/秒という速い堆積速度で成膜することが可能
である。
【0015】また、米国特許第4517223号明細書や米国
特許第4504518号明細書には、低圧下でのマイクロ波グ
ロー放電プラズマ内で小面積の基板上に薄膜を堆積形成
させる方法が開示されている。この方法では、低圧下で
のプロセスであるため、膜特性の低下の原因となる活性
種のポリマリゼーションを防ぎ高品質の堆積膜が得られ
るだけではなく、プラズマ中でのポリシランなどの粉末
の発生を抑え、かつ、堆積速度の飛躍的向上が図れると
されている。一方、米国特許第4729341号明細書には、
一対の放射型導波管アプリケータを用いた高パワープロ
セスによって、大面積の円筒形基体上に光導電性半導体
薄膜を堆積形成させる低圧マイクロ波プラズマCVD法
及び装置が開示されている。
【0016】マイクロ波プラズマCVD法を用いて大面
積に均質な堆積なくを形成するためには、マイクロ波パ
ワーや原料ガスの空間的密度(濃度)分布を制御して、
均質なプラズマを生起、維持しなければならない。ま
た、ロール・ツー・ロール方式すなわち基板移動成膜方
式においては、堆積膜の膜厚方向に組成分布を持たせる
ためには、空間的組成分布を有するプラズマになるよう
制御する必要がある。
【0017】このようなプラズマを生起・維持するため
には、反応容器(堆積膜形成容器)に複数のマイクロ波
導入手段を設け、これらマイクロ波導入手段から反応容
器に放射伝播するマイクロ波のエネルギー分布を制御
し、あるいは、複数のガス供給手段を設けて反応容器内
の原料ガスの濃度分布を調整することが行なわれる。均
質なプラズマを長時間にわたって維持するためには、反
応容器に供給されるマイクロ波エネルギーを一定に維持
する必要がある。マイクロ波エネルギーを一定に維持す
る方法としては、マイクロ波の進行波エネルギーと反射
波エネルギーとをそれぞれモニターし、進行波エネルギ
ーから反射波エネルギーを減じることによって実効的な
供給エネルギーを求め、この供給エネルギーが一定にな
るように制御を行なう方法がある。しかし、進行波と反
射波のモニターはマイクロ波電源から反応容器に至る途
中の導波管上で行なわれるので、反応容器への実際の供
給エネルギーを正確に求めることができないという問題
点がある。一方、反応容器内のプラズマパラメータを探
針によってモニターし、各パラメータ値が一定となるよ
うにマイクロ波電源からのマイクロ波エネルギーを制御
する方法もある。しかし、複数のマイクロ波導入手段を
有する大面積のマイクロ波プラズマCVD装置では、マ
イクロ波相互の干渉があるため、大面積にわたってプラ
ズマをモニターして一様なプラズマを維持するのは困難
である。
【0018】以上の述べたような公知のプラズマCVD
法と基板を移動させながら成膜を行なう基板移動成膜法
とを組み合わせた、移動成膜式マイクロ波プラズマCV
D装置が各種提案されており、代表的には図47に示す
ようなものである。図47において、スリット状開口部
954,955を介して直列に接続された3個の成膜容
器951〜953は、それぞれ真空気密構造をなしてい
る。各スリット状開口部954,955には、成膜容器
951〜953間で互いに原料ガスの混入を抑えるため
に、不活性ガスを噴射するゲートガス導入手段(不図
示)がそれぞれ設けられている。スリット状開口部95
4,955の具体例としては、米国特許出願番号204,493
号などに記載されているガスゲートが挙げられる。これ
ら各成膜容器951〜953およびスリット状開口部9
54,955を貫通するようにして長尺の帯状の基板9
56が配置されている。基板956は、長手方向に連続
的に搬送可能なものであって、繰り出し室974内に設
けられた繰り出しローラ957から繰り出され、巻き取
り室975内に設けられた巻き取りローラ958に巻き
取られるようになっている。繰り出し室974と巻き取
り室975は、それぞれ排気装置976,977に連通
している。
【0019】各成膜容器951〜953は、それぞれ、
排気口968〜970を介して排気装置971〜973
に連通している。また、各成膜容器951〜953に
は、基板956を加熱するためのランプヒータ959〜
961と誘電体窓965〜967が設けられている。各
誘電体窓965〜967は、マイクロ波電力を成膜容器
内に効率よく透過しかつ真空気密を保持し得るような材
料、例えば石英ガラス、アルミナセラミックスなどで形
成されている。この誘電体窓965〜967の成膜容器
外側には、マイクロ波の伝送路であって主として金属製
である導波管(不図示)が接続され、整合アイソレータ
(不図示)を介してマイクロ波電源(不図示)に接続さ
れている。さらに、図示左右の2個の成膜容器951,
953には原料ガス供給管962,963が設けられ、
図示中央の成膜容器952には原料ガス供給管を兼ねバ
イアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加棒964
が設けられている。
【0020】こうした従来のマイクロ波プラズマCVD
装置による堆積膜形成は以下のようにして行なわれる。
すなわち排気装置971〜973により、それぞれ成膜
容器951〜953内を排気して所望の圧力に調整す
る。次いでランプヒータ959〜961に通電して、基
板956の温度を膜堆積に好適な温度に加熱保持する。
このとき基板956は、繰り出しローラ957から巻き
取りローラ958へと好適な速度で搬送されている。原
料ガス供給管962,963と原料ガス供給管を兼ねた
バイアス電圧印加棒964を介して、例えばpin構造
の光起電力素子を形成する場合であれば、それぞれ、シ
ラン(SiH4)ガスとジボラン(B26)ガスの混合
ガスなど、シランガスなど、シランガスとホスフィン
(PH3)ガスの混合ガスなどを成膜容器951〜95
3に導入し、またバイアス印加棒964により適当な直
流バイアス電圧を印加する。それと同時平行的にマイク
ロ波電源(不図示)を作動させて周波数500MHz以
上の好ましくは2.45GHzのマイクロ波を発生さ
せ、そのマイクロ波を導波管(不図示)を通じ誘電体窓
965〜967を介して成膜容器951〜953内にそ
れぞれ導入する。かくして成膜容器951〜953内の
原料ガスはマイクロ波のエネルギーにより励起されて解
離し、基板956の表面にp型半導体層、i型半導体
層、n型半導体層と順次堆積膜が形成されることにな
る。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した
従来の堆積膜形成方法では、例えば電子写真感光体や太
陽電池などのように大面積の基板上に堆積膜を大量に連
続して安定に形成することが難しく、かつコストも高い
ものとなっていた。また、膜厚方向に連続的に組成が変
化する大面積の堆積膜を均一に形成することが困難であ
るという問題点もある。
【0022】すなわち、上述したようにマイクロ波エネ
ルギーを一定に保つための制御方法が不十分であり、大
量の堆積膜を均一に形成することが難しい。また、1辺
の長さが300mmを越えるような大面積の部材を作成
する場合、反応容器(成膜容器)は概ね10リットル以
上の容量となる。この反応容器内にシランやゲルマン
(GeH4)などの原料ガスを導入して圧力を5〜20m
Torrとしグロー放電を生起させる場合、必要となるマイ
クロ波電力は2〜4kW程度であった。そこでグロー放
電の生起を容易にするため、点火用のアーク放電を起こ
す機構を反応容器内に設けるという提案がなされている
(特開昭59-158323)。しかしながらこの場合、アーク
放電用の電極がスパッタされて堆積膜中に不純物として
混入し、堆積膜の電気的特性を劣化させるという新たな
問題点を生じていた。グロー放電の生起を容易にする別
の方法として、磁場とマイクロ波との相互作用により電
子サイクロトロン共鳴(ECR)を起こさせる方法も一
般に知られているが(特公昭63-67332)、この場合も直
径150mm以上の大面積にわたって均一な磁場を形成
するには膨大な装置コストを必要とし、経済性において
甚だ不十分であった。
【0023】さらに、上述のロール・ツー・ロール方式
による堆積膜形成方法では、帯状の基板を連続的に移動
させながら堆積膜を形成するので、基板がグロー放電領
域を通過する間に成膜が行なわれる。したがって堆積膜
の膜厚は、堆積速度とグロー放電領域の通過速度とによ
って比較的容易に制御することができる。一方、膜厚方
向に組成分布を持たせるためには、基板が連続的に移動
しているので、グロー放電領域内の膜形成雰囲気につい
て、基板の移動方向に分布を持たせる必要がある。しか
し、原料ガスの組成、圧力あるいはグロー放電のエネル
ギー密度といった膜形成雰囲気について、再現性よくこ
のような分布を持たせることは困難である。基板を固定
させておく方式の堆積膜形成方法においても、堆積膜の
均一性が損なわれるという理由により、膜形成雰囲気に
分布を持たせることは行なわれていない。
【0024】a−Siなどのアモルファス系堆積膜を形
成する場合、マイクロ波電力のほかに基板にバイアス電
圧による電界を加えることで堆積膜の特性が向上する場
合があることが知られている。しかし、移動成膜式マイ
クロ波プラズマCVD装置における最適なバイアス印加
方法は見い出されていない。図48は、従来の装置にお
けるバイアス電界のかかり方を示す模式図である。ここ
では、成膜容器943のほぼ中央に、帯状の基板941
の表面に対して平行にかつ基板941の長手方向に対し
て垂直に延びるバイアス印加棒942が設けられてい
る。そして図中の矢印は電界を示している。この図から
明らかなように、成膜容器943の端部付近(図示区間
L)とそれ以外の場所とでは基板941に加わる電界の
大きさが変化し、このために基板941の搬送の過程で
印加される電界が変化することになる。特に、成膜容器
943に入った直後と出る直前にある基板(図示区間L
にあるとき)に対しては、成膜容器941のほぼ中央部
にある基板と比べ、直流バイアスのかかり方が極度に弱
まってしまう。このことにより、成膜容器941の端部
付近で形成される堆積膜の特性は、成膜容器941の中
央部で形成される堆積膜の特性よりも劣ることになる。
例えば、pin型光起電力素子の形成に当ってバイアス
電圧を印加しながらi層の成膜を行なう場合、p層とi
層との界面、あるいはi層とn層との界面で特性の悪い
i層が堆積されることになり、光起電力素子としての特
性を大きく低下させることになる。
【0025】さらにまたマイクロ波によって生起するプ
ラズマでは、プラズマにバイアス電圧を印加することに
よりプラズマ電位を制御することが可能であるが、長時
間の連続成膜において安定して高品質の堆積膜を形成す
るに当っては、解決しなければならない問題点が種々残
されている。具体的には、マイクロ波プラズマにバイア
ス電圧を印加することにより所望の品質の堆積膜を比較
的大面積にわたって成膜することができるが、バイアス
電圧を印加することによるバイアス電流は、その流れる
壁面の状態に非常に敏感であり、バイアス電流の安定性
が堆積膜の特性を大きく左右することになる。例えば、
マイクロ波プラズマを用いたロール・ツー・ロール方式
による堆積膜形成方法では、成膜容器の一面を構成する
帯状の基板を連続的に移動させながら、所望の膜厚の堆
積膜をこの基板上に形成させる一方、固定されている成
膜容器の内壁には堆積膜が大量に付着することになる。
その結果、例えばバイアス印加棒などによってバイアス
電圧を印加する場合、バイアス電流の流れ込む壁面の状
態すなわち導電性は、移動しつつある基板上では一定で
あるが、成膜容器を構成する壁面上では大きく変化して
くる。この状態で成膜容器内に供給されるマイクロ波エ
ネルギーとバイアス電圧とを一定とすると、見かけ上バ
イアス電流値は一定にはなるが、実際には基板に流れ込
むバイアス電流が増加し、成膜容器の壁面に流れ込むバ
イアス電流が減少することになる。したがって、基板上
に堆積される膜の膜質はバイアス電流の変化に伴い大き
く変化してしてしまい、連続して一定の特性を有する堆
積膜を再現性よく形成することは困難である。
【0026】また、上述のロール・ツー・ロール方式に
よる堆積膜形成方法では、マイクロ波プラズマ領域中に
帯状の基板を通過させるため、プラズマ領域を取り囲む
成膜容器にスリット状の穴を設け、この穴に基板を通す
ようになっている。このため、この穴の部分において基
板と成膜容器との間に隙間が生じ、マイクロ波プラズマ
や原料ガスそのものがこの隙間を通して漏れ易く、安定
して膜形成雰囲気を維持することが困難である。
【0027】本発明の目的は、高品質の堆積膜を大面積
の基板上に、連続かつ特性にばらつきなく、安定して再
現性よく形成することのできる堆積膜形成方法と堆積膜
形成装置とを提供することにある。膜厚方向に組成が変
化しない堆積膜のみならず、膜厚方向に組成の分布があ
る堆積膜も、連続かつ特性にばらつきなく、安定して再
現性よく形成することのできるようにすることも目的で
ある。
【0028】
【課題を解決するための手段】第1の発明の堆積膜形成
方法は、複数のマイクロ波導入手段を備え真空排気可能
な成膜容器を使用し、マイクロ波プラズマCVD法によ
り大面積の基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法に
おいて、前記各マイクロ波導入手段から前記成膜容器内
に放射伝播されるマイクロ波エネルギーによって生起す
るプラズマの内部に、または前記プラズマに接するよう
に、複数の電極を配置し、前記電極の各々にバイアス電
圧を印加し、前記電極を流れるバイアス電流の値が一定
値を維持するように、前記マイクロ波導入手段から前記
成膜容器内に放射伝播されるマイクロ波エネルギーの強
度を制御する。
【0029】第2の発明の堆積膜形成方法は、複数のマ
イクロ波導入手段を備え真空排気可能な成膜容器を使用
し、マイクロ波プラズマCVD法により大面積の基板上
に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、前記各マ
イクロ波導入手段から前記成膜容器内に放射伝播される
マイクロ波エネルギーによって生起するプラズマの内部
に、または前記プラズマに接するように、複数の探針を
配置し、前記各探針のフローティング電位を測定し、前
記フローティング電位の値が一定値を維持するように、
前記マイクロ波導入手段から前記成膜容器内に放射伝播
されるマイクロ波エネルギーの強度を制御する。
【0030】第3の発明の堆積膜形成方法は、マイクロ
波電源に接続する方形導波管と一端が前記方形導波路に
接続する円形導波管と前記円形導波管の他端に設けられ
た円形誘電体窓とから少なくともなるマイクロ波導入手
段と、基板に対向する開口部を備え前記マイクロ波導入
手段からマイクロ波が導入される放電容器とを有する堆
積膜形成装置を使用し、前記基板上に堆積膜を形成する
堆積膜形成方法において、前記円形誘電体窓の表面に垂
直であってかつ前記マイクロ波の進行方向および前記基
板の表面に平行な部分を有するT字形の棒状部と、前記
棒状部の先端部に設けられ前記誘電体窓の表面に平行で
ある円板部とからなるバイアス電極を前記放電容器内に
設け、前記マイクロ波の波長をλとするとき前記円板の
直径φが、λ/10≦φ≦λ/6を満たすようにする。
【0031】第4の発明の堆積膜形成装置は、基板に対
向する開口部を有する放電容器と、前記放電容器にマイ
クロ波を導入するマイクロ波導入手段とを有し、前記マ
イクロ波導入手段が、少なくとも、マイクロ波電源に接
続する方形導波管と、一端が前記方形導波路に接続する
円形導波管と、前記円形導波管の他端に設けられた円形
誘電体窓とからなる堆積膜形成装置において、前記円形
誘電体窓の表面に垂直であってかつ前記マイクロ波の進
行方向および前記基板の表面に平行な部分を有するT字
形の棒状部と、前記棒状部の先端部に設けられ前記誘電
体窓の表面に平行である円板部とからなるバイアス電極
が前記放電容器内に設けられ、前記マイクロ波の波長を
λとするとき、前記円板の直径φが、λ/10≦φ≦λ
/6を満たすことを特徴とする堆積膜形成装置。
【0032】第5の発明の堆積膜形成方法は、真空排気
可能な成膜容器と、前記成膜容器内に基板を連続的に通
過させるための基板搬送手段と、前記成膜容器の側壁両
側に設けられ前記基板を通過させるためのスリット状開
口部と、前記成膜容器内にマイクロ波を導入するマイク
ロ波導入手段と、前記成膜容器に取り付けられた複数の
バイアス電圧印加手段とを有する堆積膜形成装置を使用
し、マイクロ波プラズマCVD法により前記基板上に堆
積膜を形成する堆積膜形成方法において、前記バイアス
電圧印加手段のうち1つ以上を、前記スリット状開口部
から50mm以内の位置に設ける。
【0033】第6の発明の堆積膜形成装置は、真空排気
可能な成膜容器と、前記成膜容器内に基板を連続的に通
過させるための基板搬送手段と、前記成膜容器の側壁両
側に設けられ前記基板を通過させるためのスリット状開
口部と、前記成膜容器内にマイクロ波を導入するマイク
ロ波導入手段と、前記成膜容器に取り付けられた複数の
バイアス電圧印加手段とを有し、マイクロ波プラズマC
VD法により前記基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成
装置において、前記バイアス電圧印加手段のうち1つ以
上が、前記スリット状開口部から50mm以内の位置に
設けられている。
【0034】第7の発明の堆積膜形成方法は、プラズマ
CVD法により長尺の基板上に連続的に堆積膜を形成す
る堆積膜形成方法において、真空容器の内部に、前記基
板を立体の一面とし前記立体の他の面が電気絶縁体から
なる放電容器を形成し、前記放電容器の内部に、前記放
電容器とは電気的に絶縁されたバイアス印加手段を設置
し、前記真空容器内において前記基板の長手方向に前記
基板を連続的に搬送しながら、かつ前記バイアス印加手
段によって前記基板に対してバイアス電圧を印加しなが
ら、前記放電容器内に放電エネルギーと原料ガスとを導
入して前記放電容器内にプラズマを生成させ、前記基板
の表面に堆積膜を形成させる。
【0035】第8の発明の堆積膜形成装置は、真空排気
可能な成膜容器を有し、プラズマCVD法により長尺の
基板上に連続的に堆積膜を形成する堆積膜形成装置にお
いて、前記真空容器内に設けられ、実質的に内壁の一部
を構成しつつ前記基板がその長手方向に連続的に移動可
能に通過する放電容器と、前記放電容器の前記基板が貫
通する部分に前記基板に近接させて取り付けられた、放
電エネルギーとプラズマとの前記放電容器からの漏洩を
防止する接地されたガード電極と、前記放電容器内に設
けられ、前記放電容器とは電気的に絶縁されたバイアス
印加手段と、前記放電容器内に放電エネルギーを導入す
る放電手段とを有し、前記放電容器を構成する内壁であ
って前記プラズマに接する部分のうち、前記基板以外の
部分が電気絶縁体で構成されている。
【0036】第9の発明の堆積膜形成方法は、プラズマ
CVD法により長尺の基板上に連続的に堆積膜を形成す
る堆積膜形成方法において、真空容器の内部に、前記基
板を立体の一面とし前記立体の他の面が導電性部材から
なる放電容器を形成し、前記真空容器内において前記基
板の長手方向に前記基板を連続的に搬送しながら、かつ
前記真空容器とは電気的に絶縁された状態で前記導電性
部材にバイアス電圧を印加しながら、前記放電容器内に
放電エネルギーと原料ガスとを導入して前記放電容器内
にプラズマを生成させ、前記基板の表面に堆積膜を形成
させる。
【0037】第10の発明の堆積膜形成装置は、真空排
気可能な成膜容器を有し、プラズマCVD法により長尺
の基板上に連続的に堆積膜を形成する堆積膜形成装置に
おいて、前記真空容器内に設けられ、実質的に内壁の一
部を構成しつつ前記基板がその長手方向に連続的に移動
可能に通過する放電容器と、前記放電容器の前記基板が
貫通する部分に前記基板に近接させて取り付けられた、
放電エネルギーとプラズマとの前記放電容器からの漏洩
を防止する接地されたガード電極と、前記放電容器内に
放電エネルギーを導入する放電手段と、バイアス電源と
を有し、前記放電容器を構成する内壁であって前記プラ
ズマに接する部分のうち、前記基板以外の部分が全て導
電性部材で構成され、前記導電性部材は前記真空容器か
らは電気的に絶縁されかつ前記バイアス電源によってバ
イアス電圧を印加できる。
【0038】第11の発明の堆積膜形成方法では、帯状
の基板をその長手方向に連続的に移動させながら、前記
基板が側壁の一面となる柱状の成膜空間に堆積膜形成用
の原料ガスを導入し、同時に前記成膜空間へマイクロ波
エネルギーを導入させてマイクロ波プラズマを前記成膜
空間内に生起させ、前記基板の前記成膜空間側の表面上
に堆積膜を形成させる堆積膜形成方法において、前記成
膜空間が壁によって分離されて複数の小成膜空間によっ
て構成され、組成制御を行なって前記堆積膜を形成す
る。
【0039】
【作用】
《第1および第2の発明》第1および第2の発明では、
成膜容器内に形成されるマイクロ波プラズマをモニター
し、プラズマパラメータが一定になるように成膜容器内
に放射伝播されるマイクロ波パワーを制御するので、安
定したプラズマを長時間維持することができる。すなわ
ち第1の発明では、プラズマの内部あるいはプラズマに
接するように複数の電極を設け、各電極にバイアス電圧
を印加し、そのときのバイアス電流が一定の値を保つよ
うにマイクロ波パワーを制御することにより、プラズマ
を一定に状態に維持することができる。また第2の発明
では、プラズマの内部あるいはプラズマに接するように
複数の探針を設け、これら探針のフローティング電位が
一定の値を保つようにマイクロ波パワーを制御すること
により、プラズマを一定に状態に維持することができ
る。
【0040】複数のマイクロ波導入手段が設けられてい
る場合、各マイクロ波導入手段ごとにバイアス電極や探
針を設けることにより、各マイクロ波導入手段にそれぞ
れ対応して生起するプラズマを独立して制御することが
可能となり、大面積のプラズマを一定の状態に維持する
ことができる。この場合、これらバイアス電極や探針
は、成膜容器内においてマイクロ波導入手段の正面もし
くはマイクロ波の伝播方向と平行に設けることで、特定
のマイクロ波導入手段に対応したプラズマの状態を、他
のマイクロ波導入手段に対応したプラズマからの影響を
受けることなく、モニターすることができる。
【0041】《第3および第4の発明》第3および第4
の発明は、本出願人による特開平3-30419、特開平3-219
081の各公報に記載された発明をさらに発展させ、以下
の2つの知見をもとに完成させたものである。 [知見1]…マイクロ波の進行方向に対して、放電容器
内外のインタフェース部分となる誘電体窓の前後に反射
面を設け定在波を形成させれば、簡単で経済的な構造で
放電生起が容易になる。 [知見2]…放電生起後のマイクロ波の反射を抑制して
実効電力を上昇させ、同時にスパークの発生も抑制すれ
ば、高速度で安定な成膜が可能になる。
【0042】本発明者らがこれら知見を空洞共振器に適
用したものは、特開平1-100273、特開平1-100274、特開
平1-198467の各公報に開示されている。ここで本発明の
作用についてさらに詳しく説明する。ここで、「方形導
波管と円形導波管の変換部」を「変換面1」、「バイア
ス電極の円盤部」を「端面1」、「誘電体窓と放電容器
の境界面」を「境界面1」、「マイクロ波の反射波」を
「反射波」ということにする。すなわち、変換面1がマ
イクロ波の進行方向に関して誘電体窓の手前の反射面に
相当し、端面1と境界面1とが誘電体窓の先方の反射面
に相当する。
【0043】まず、[知見2]に関する放電生起後の反
射抑制について説明する。ここで放電生起後に生じた
「プラズマと誘電体窓との境界面」を「境界面2」とい
うことにする。放電生起後の状態では、マイクロ波電力
の多くがプラズマに吸収されるため、プラズマにそれぞ
れ接触している端面1および境界面1は、マイクロ波の
反射面としては機能しなくなる。したがって、マイクロ
波の反射を抑制するため、境界面2と変換面1とでそれ
ぞれ生じた2つの反射波が互いに打ち消し合うようにす
ることが望ましい。
【0044】ここで、この2つの反射波を互いに打ち消
し合う方法について説明する。境界面2で生ずる反射波
の強度は、プラズマ密度と誘電体窓の材質に依存する。
プラズマ密度は、ガス種・ガス流量・放電炉内圧力・投
入するマイクロ波電力で決まり、これら諸量は所望する
堆積膜の膜質・特性と深く関係しているため調節は事実
上できない。したがって、上記反射波を打ち消すために
は、変換面1の構造を調節することが必要である。境界
面2からの反射波が小さい場合は、変換面1を電磁ホー
ンいわゆるテーパー管にすればよい。境界面2からの反
射波が大きい場合には、構造上の工夫が必要であり、そ
の場合の反射波を抑制する方法について以下に説明す
る。
【0045】一般に、マグネトロンから放射されたマイ
クロ波は、方形導波管、円形導波路を介して放電容器に
給電される。方形導波管に接続される円形導波管の径
は、方形導波管の外接円より大きい方がマイクロ波の伝
送には好都合である。そして、変換面1からの反射波の
強度は、方形導波管・円形導波管の内寸を決めると一義
的に決まる。したがって、境界面2からの反射波に対し
て変換面1の反射波を同一振幅で位相がπだけずれるよ
うにすればよい。このように位相を調節するには、いわ
ゆるチューナーを設ければよい。
【0046】チューナーには、内部チューナーと外部チ
ューナーがある。外部チューナーはEHチューナー、ス
タブ・チューナーなどが例示でき、内部チューナーは絞
りやマッチング・ポストなどが知られている。これらの
チューナーのひとつを採用して、上記のような境界面2
からの反射面が大きい場合であっても、打ち消すことが
できる。換言すれば、プラズマ界面でインピーダンスの
整合が悪い場合であっても、変換面1近傍でインピーダ
ンスを整合させることができる。
【0047】次に、[知見2]に関する放電生起後のス
パーク抑制について説明する。本発明の装置は、バイア
ス電極に正のバイアス電圧を印加し、放電容器の壁面お
よび基板を接地することにより、プラズマ中のイオンが
基板に向かって加速されるように構成されている。そし
て、このバイアス電圧は、所望の堆積膜の膜質を得るよ
うに最適化されている。この最適化されたバイアス電圧
は、所望する堆積膜の種類や必要とされる機能(例え
ば、光起電力や光導電性、絶縁性など)に応じて異な
る。このバイアス電圧が高い場合、マイクロ波電力によ
るグロー放電生起後に間欠的なスパークが発生すること
が多い。本発明者らは、この種のスパークを抑制するに
は、バイアス電極端部の表面積を大きくすればよいこと
を見い出した。以下に、本発明者らがバイアス電極端部
の形状を変えながら行なった実験(比較実験例1〜7)
の結果について説明する。 [比較実験例1〜7]実験は後述の実施例2で図8を用
いて示した放電容器205を用いて行なった。ここで、
実験の共通条件は次の通りである。
【0048】
【表1】 実験の手順は、まず、340sccmのSiH4を放電
容器205内に流しながら定格出力3kWのマイクロ波
電源から一方のマイクロ波アプリケーター213に1.
3kW程度のマイクロ波電力を投入して、放電を開始さ
せる。そして他方のマイクロ波アプリケーター213に
も同様にマイクロ波電力を投入し、放電させる。次に、
バイアス電極206に80Vの直流バイアス電圧を印加
し、そのときのバイアス電流値をモニターして放電の安
定性を調べる。放電が安定した時点で、表1に示す条件
に設定する。この状態を30分間連続して、帯状の基板
201上にa−Si膜を成膜した場合のスパークの発生
状況とバイアス電流値を以下の表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】表2から明らかな通り、[バイアス電極両
端に円盤あり」で円盤の外径φが、λ/10≦φ≦λ/
6の場合にスパークが起こらないことが判明した。ここ
でλはマイクロ波の波長である。また、比較実験例2と
3の場合について、放電容器の内圧と放電維持電力との
関係を調べた。その結果を図49に示す。ここで放電容
器の内圧は、放電後の値であり、また放電維持電力と
は、対向する2つのマイクロ波アプリケーターから放電
容器内に投入されるマイクロ波電力を徐々に減少させた
場合の、放電の発光が不安定となる直前のマイクロ波電
力の総和である。なお、この関係は、バイアス電圧を印
加しない条件で測定した。この図49において、各比較
実験例に対応する曲線の右上に領域が、それぞれの比較
実験例での放電維持可能領域である。また図中の◎印は
堆積膜の膜質などから要求される典型的な成膜条件であ
る。
【0051】これら各曲線と◎印で示した成膜条件の位
置関係をみると、比較実験例1の曲線の境界ぎりぎりの
ところに成膜条件が位置していることがわかる。したが
って、所望とする成膜条件に対して、放電維持可能領域
の境界となる曲線が図の左下に位置するようバイアス電
極の形状を最適化すればよい。次に、[知見1]に関す
る定在波の形成による放電生起の容易さについて説明す
る。
【0052】前述の方形導波管・円形導波管・円形誘電
体窓を介して放電容器内にマイクロ波電力を投入する場
合、上記の変換面1、端面1、境界面1の間に定在波が
形成されることによって、マイクロ波電力によるグロー
放電が生起しやすい状況となる。このとき、端面1の反
射波の強度があるレベル以上でないと放電開始は困難と
なる。
【0053】本発明の装置においては、端面1の反射波
の強度を大きく維持するため、誘電体窓表面に平行な方
向のバイアス電極の断面積が、誘電体窓の最近接部分に
おいて比較的大きくなるよう設計されている。具体的に
は、棒状のバイアス電極の誘電体窓に近い端部に、誘電
体窓表面に平行になるよう円盤が設けられている。 《第5および第6の発明》第5および第6の発明では、
バイアス電圧印加手段のうちの1つ以上をスリット状開
口部から50mm以内の位置に設けてあるので、帯状の
基板に対し、成膜空間中央部と成膜空間端部近くとの両
方で好適なバイアス電圧を加えることが可能となる。そ
の結果、連続的に搬送される帯状の基板に対して、成膜
空間の入口付近から出口付近にわたって、良好な特性を
持つ堆積膜を形成することが可能となった。このことに
より、光起電力素子などのような多層構造の堆積膜を形
成する場合、その特性に重大な影響を与える界面での膜
質を低下させることがなくなり、良質の堆積膜を形成で
きるようになる。これにより、光起電力素子の場合であ
れば、特性が向上する。
【0054】さらに本発明においては、隣接する2つの
成膜空間を結ぶゲート部近辺に、あるいは成膜空間と基
板の繰り出し室または巻き取り室を結ぶゲート部近辺に
バイアス印加手段が設置されているので、ここに印加さ
れるバイアス電界の作用により、荷電粒子が一方の成膜
空間から他方の成膜空間に侵入したり、隣接する成膜空
間から不純物が混入したりすることを防ぐことができ
る。すなわち、バイアス印加手段はシールド効果を合わ
せ持っていることになる。
【0055】バイアス印加手段に加えられるバイアス電
圧は、直流であっても交流であってもよい。さらに交流
バイアスに場合には、正弦波であっても矩形波であって
も鋸歯状波であってもよく、その周波数は数Hzから数
十MHzまでのものを用いることができる。複数のバイ
アス印加手段を用いて発生させる電界強度は、使用する
原料ガスの種類などによっても異なるが、15V/cm
以上500Vcm以下が好ましく、30V/cm以上1
50V/cm以下がより好ましい。このような範囲の電
界強度であれば、成膜速度の向上および膜の電気的特性
の向上がより一層認められる。
【0056】次に、バイアス印加手段の設置位置を検討
するため、基板表面にアモルファスシリコン単層膜を形
成し、成膜容器端部の成膜容器側壁から基板表面に平行
で成膜容器中央方向に向けた距離に対するその単層膜の
暗導電率の分布を測定した。図50は、この測定に使用
した実験装置の構成を示す模式断面図である。まず、こ
のアモルファスシリコン単層膜の形成方法を説明する。
一面が開口した直方体形状の成膜容器994に対して、
帯状の基板991が成膜容器994の開口部を覆うよう
に延びている。成膜容器994のほぼ中央には、基板9
91の表面に対して平行かつ基板991の長手方向に対
して垂直に延び原料ガス導入管を兼ねたバイアス印加棒
995が設けられている。そして、基板991の長手方
向に沿って成膜容器994の両端部には、絶縁体993
を介してバイアス印加電極992が、基板991に近接
するように設けられている。また成膜容器994には図
示しないマイクロ波導入手段が設けられている。この装
置を用いて、マイクロ波プラズマCVD法により、直流
バイアスを印加して基板991上にアモルファスシリコ
ン単層膜を形成した。
【0057】図51は、形成したアモルファスシリコン
単層膜の暗導電率の測定結果を示す図である。横軸は成
膜容器の端部から基板に平行に成膜容器の中央部に向け
て測定した距離である。この図から明らかなように、バ
イアス印加手段は、成膜容器端部の成膜容器側壁から、
好ましくは0〜50mmの間、より好ましくは0〜30
mmの間、さらに好ましくは0〜20mmの間の位置に
設けることが望ましい。
【0058】本発明において、堆積膜形成時の基板の温
度はいずれの温度であって有効であるが、20℃以上5
00℃以下が好ましく、50℃以上450℃以下がさら
に好ましい。また本発明において、マグネトロンなどの
マイクロ波電源から成膜容器までのマイクロ波の伝送路
としては、導波管もしくは同軸ケーブルを用いることが
できる。また、成膜容器内への導入方法として、1ない
し複数の誘電体窓から導入する、あるいは成膜容器内に
アンテナを設ける方法がある。このとき誘電体窓の材質
としては、特に限定されるものではいが、例えば、アル
ミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸
化ケイ素、酸化ベリリウム、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリスチレンなどのマイクロ波の損失の少ない材料
が好適に用いられる。
【0059】《第7および第8の発明》第7および第8
の発明では、基板の立体の一面としこの立体の他の面が
電気絶縁体で構成された放電容器を形成し、この放電容
器とは電気的に絶縁されたバイアス印加手段によりバイ
アス電圧を印加するので、バイアス電流は基板のみに流
れ込み、放電容器の他の内壁面には流れ込まない。した
がって、基板以外の内壁面に大量の堆積膜が形成された
としても、バイアス電流に変化を生じることはなくな
り、絶えず安定して高品質の堆積膜を基板上に連続的に
形成することが可能となる。この場合、形成される堆積
膜の種類によらず最適のバイアス電圧を印加し、一定の
バイアス電流を流すことができる。
【0060】マイクロ波エネルギーにより放電を生起さ
せる場合、マイクロ波が電気絶縁体を透過し、導電体を
透過しないことにより、放電容器内にマイクロ波エネル
ギーの閉じ込めが可能となるよう、放電容器の壁面のプ
ラズマに接する部分は絶縁性部材で構成し、プラズマに
接しない外側は導電性部材で構成するのが好ましい。例
えば、絶縁性部材と導電性部材とを2枚重ね合わせもよ
く、あるいは、絶縁性部材の片面を導電化処理してもよ
く、また、導電性部材の片面を絶縁化処理してもよい。
【0061】絶縁性部材としては、具体的には、アルミ
ナ、石英、窒化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシ
ウム、酸化ジルコニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素など
のセラミックスまたはガラス、あるいは、ポリイミド、
ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹
脂などの耐熱性合成樹脂などが挙げられる。導電性部材
としては、具体的には、Al,Ag,Pt,Au,Ni,T
i,Mo,W,Fe,V,Cr,Cu,ステンレス鋼,真鍮,
ニクロム,SnO2,In23,ZnO,SnO2−In2
3(ITO)などのいわゆる金属単体または合金、およ
び導電性酸化物などが挙げられる。導電性部材の形状
は、マイクロ波が透過しないように、板状、パンチング
プレート状、メッシュ状、ハニカム状、薄膜状であるこ
とが望ましく、さらに、パンチングプレートなどで開口
がある場合にはその開口径は、用いるマイクロ波の波長
の好ましくは1/2以下、より好ましくは1/4以下で
あることが望ましい。
【0062】絶縁性部材の導電化処理、または導電性部
材の絶縁化処理の方法としては、スパッタリング法、蒸
着法、CVD法、メッキ法、塗布法などの表面コーティ
ング法が挙げられる。放電容器内でのマイクロ波エネル
ギーの伝送を効率よく行なうとともにマイクロ波プラズ
マを安定して生起、維持、制御するためには、マイクロ
波の伝搬モードは単一モードであることが望ましい。具
体的にはTE10,TE11,EH1,TM11,TM01の各モー
ドを挙げることができる。これらの伝搬モードは単一で
も、複数組み合わせて用いてもよい。
【0063】マイクロ波エネルギーは所望のマイクロ波
導入手段を介して放電容器内へ放射されるが、マイクロ
波導入手段の先端には、一般的に、気密性を有するマイ
クロ波透過性部材(誘電体窓)が設けられている。この
マイクロ波透過性部材としては、上述の絶縁性部材とし
て挙げられたものが好適に使用することができる。複数
のマイクロ波導入手段により放電容器内にマイクロ波エ
ネルギーを放射する場合には、マイクロ波導入手段が相
互にマイクロ波エネルギーを受信して干渉することがな
いように、各マイクロ波導入手段の配置を考慮する必要
がある。具体的には、それぞれのマイクロ波導入手段か
ら放射されるマイクロ波の電界方向が、互いに平行とな
らないようにすることが望ましい。
【0064】また、基板が放電容器を通過する部分から
放電エネルギーや生成したプラズマあるいは原料ガスが
漏洩しないように、この部分において、接地されたガー
ド電極を基板に近接させて設けるようにするとよい。ガ
ード電極と基板との間の距離は、例えば、放電エネルギ
ーが高周波(代表的には13.56MHz)の場合に
は、生成するプラズマ中のダークスペース(グロー放電
の暗部)の長さと同程度かそれ以下にするのが望まし
い。放電エネルギーがマイクロ波(代表的には2.45
GHz)の場合には、好ましくはマイクロ波の波長の1
/4以下、より好ましくは1/20以下とするとよい。
ガード電極の基板と対向する部分の、基板の移動方向に
沿った長さは、基板とガード電極との間の距離の5倍以
上とすることが好ましく、10倍以上とすることがより
好ましい。もちろん、ガード電極は、基板の横幅方向の
全幅に対応させて設けることが望ましい。
【0065】さらに第7および第8の発明では、形成さ
れる堆積膜の膜厚方向に組成分布を設けることが可能と
なる。この場合、堆積膜の原料となる物質を複数種類含
有する原料ガスの流れを、基板の移動方向と平行な方向
に形成し、基板の移動方向に複数個配置された放電手段
のそれぞれに放電エネルギーを印加してプラズマを生起
させる。このようにすれば、基板の移動方向に対して成
膜条件が変化していることになり、基板の移動方向に関
して異なる場所では、形成される堆積膜の組成が異なる
ことになる。一方、基板は連続的に移動していて、堆積
膜も連続的に形成、成長しているから、結果として、基
板上に形成される堆積膜は、膜厚方向に組成が変化する
ことになる。
【0066】堆積膜の原料となる物質を複数種類含有す
る原料ガスの流れを、基板の移動方向と平行な方向に形
成するには、基板に対向してこの基板の横幅方向に均一
に原料ガスを放出する原料ガス放出手段を設け、さらに
この原料ガスを基板の横幅方向に関し均一に排気する原
料ガス排気手段を設ければよい。原料ガス放出手段と原
料ガス排気手段とは、対で設けることが望ましいが、1
つの原料ガス放出手段に対し、基板の移動方向にそって
順方向側および逆方向側の2ヶ所に原料ガス排気手段を
設けるようにしてもよい。また、原料ガス放出手段と原
料ガス排気手段の対を多数設けることも可能である。こ
の場合、基板の移動方向に関し、ある部分ではこの移動
方向と同じ向きに原料ガスが流れ、またある部分ではこ
の移動方向と逆の向きに原料ガスが流れるようにされ、
すなわち原料ガスの流れが基板の移動方向に対して順方
向であるか逆方向であるかを適宜組み合わせるようにさ
れる。
【0067】原料ガス放出手段には、原料ガスを真空容
器内に放出するためのガス放出孔が設けられる。このガ
ス放出孔の形状は、スリット状、円形状、楕円状、スポ
ンジ状、メッシュ状などいずれの形状であってもよく、
またガス放出孔の個数はいくつであってもよいが、基板
の横幅方向に対して均一にガスが放出されるように工夫
される必要がある。この場合、真空容器の内圧や原料ガ
スの流量によってその程度は異なるが、基板の横幅方向
の端部付近に対応するガス放出孔から放出されるガスの
量を多くするようにガス放出孔の径を調整することが望
ましく、このようにすることにより、結果として、基板
の移動方向と平行な原料ガスの流れを達成することがで
きる。
【0068】一方、原料ガス排気手段には、原料ガスを
吸引するためのガス排気孔が設けられる。このガス排気
孔の形状は、スリット状、円形状、楕円状、スポンジ
状、メッシュ状などいずれの形状であってもよく、また
ガス排気孔の個数はいくつであってもよいが、基板の横
幅方向に対して均一にガスが排気されるように工夫され
る必要がある。この場合、真空容器の内圧や原料ガスの
流量によってその程度は異なるが、基板の横幅方向の端
部付近に対応するガス排気孔に吸引されるガスの量を多
くするようにガス排気孔の径を調整することが望まし
く、このようにすることにより、結果として、基板の移
動方向と平行な原料ガスの流れを達成することができ
る。
【0069】原料ガスは、堆積膜の原料となる物質を複
数種類含有するが、これら原料となる各物質のプラズマ
による分解、堆積効率は、それぞれ異なっていることが
望ましく、このようにすることによって、基板の移動方
向に沿った成膜条件の変化の度合が大きいものとなる。
また、この分解、堆積効率は、プラズマを発生させるた
めの放電エネルギーの種類や放電条件(例えば、放電電
力、放電周波数)や、真空容器内での原料ガスの流量、
流速、圧力、原料ガスを希釈するための希釈ガスの有無
などによって、種々に変化させることができる。
【0070】《第9および第10の発明》第9および第
10の発明では、基板の立体の一面としこの立体の他の
面が導電性部材で構成された放電容器を形成し、この導
電性部材にバイアス電圧を印加するので、バイアス電流
は放電容器から基板へと流れることになる。この場合、
バイアス電流の流れ込む先は基板だけであり、基板以外
の内壁面に大量の堆積膜が形成されたとしても、バイア
ス電流に変化を生じることはなくなり、絶えず安定して
高品質の堆積膜を基板上に連続的に形成することが可能
となる。この場合、形成される堆積膜の種類によらず最
適のバイアス電圧を印加し、一定のバイアス電流を流す
ことができる。
【0071】導電性部材としては、具体的には、Al,
Ag,Pt,Au,Ni,Ti,Mo,W,Fe,V,Cr,C
u,ステンレス鋼,真鍮,ニクロム,SnO2,In
23,ZnO,SnO2−In23(ITO)などのいわ
ゆる金属単体または合金、および導電性酸化物などが挙
げられる。導電性部材の形状は、マイクロ波が透過しな
いように、板状、パンチングプレート状、メッシュ状、
ハニカム状、薄膜状であることが望ましく、さらに、パ
ンチングプレートなどで開口がある場合にはその開口径
は、用いるマイクロ波の波長の好ましくは1/2以下、
より好ましくは1/4以下であることが望ましい。
【0072】放電容器内でのマイクロ波エネルギーの伝
送を効率よく行なうとともにマイクロ波プラズマを安定
して生起、維持、制御するためには、マイクロ波の伝搬
モードは単一モードであることが望ましい。具体的には
TE10,TE11,EH1,TM11,TM01の各モードを挙げ
ることができる。これらの伝搬モードは単一でも、複数
組み合わせて用いてもよい。
【0073】マイクロ波エネルギーは所望のマイクロ波
導入手段を介して放電容器内へ放射されるが、マイクロ
波導入手段の先端には、一般的に、気密性を有するマイ
クロ波透過性部材(誘電体窓)が設けられている。この
マイクロ波透過性部材としては、上述の絶縁性部材とし
て挙げられたものが好適に使用することができる。複数
のマイクロ波導入手段により放電容器内にマイクロ波エ
ネルギーを放射する場合には、マイクロ波導入手段が相
互にマイクロ波エネルギーを受信して干渉することがな
いように、各マイクロ波導入手段の配置を考慮する必要
がある。具体的には、それぞれのマイクロ波導入手段か
ら放射されるマイクロ波の電界方向が、互いに平行とな
らないようにすることが望ましい。
【0074】また、基板が放電容器を通過する部分から
放電エネルギーや生成したプラズマあるいは原料ガスが
漏洩しないように、この部分において、接地されたガー
ド電極を基板に近接させて設けるようにするとよい。ガ
ード電極と基板との間の距離は、例えば、放電エネルギ
ーが高周波(代表的には13.56MHz)の場合に
は、生成するプラズマ中のダークスペース(グロー放電
の暗部)の長さと同程度かそれ以下にするのが望まし
い。放電エネルギーがマイクロ波(代表的には2.45
GHz)の場合には、好ましくはマイクロ波の波長の1
/4以下、より好ましくは1/20以下とするとよい。
ガード電極の基板と対向する部分の、基板の移動方向に
沿った長さは、基板とガード電極との間の距離の5倍以
上とすることが好ましく、10倍以上とすることがより
好ましい。もちろん、ガード電極は、基板の横幅方向の
全幅に対応させて設けることが望ましい。
【0075】さらに第9および第10の発明では、形成
される堆積膜の膜厚方向に組成分布を設けることが可能
となる。この場合、第7および第8の発明と同様に、堆
積膜の原料となる物質を複数種類含有する原料ガスの流
れを、基板の移動方向と平行な方向に形成し、基板の移
動方向に複数個配置された放電手段のそれぞれに放電エ
ネルギーを印加してプラズマを生起させる。そしてこの
ような原料ガスの流れを形成するために使用される原料
ガス放出手段、原料ガス排気手段の構成も、上述の第7
および第8の発明の場合と同様である。
【0076】《第11の発明》第11の発明では、基板
上への堆積膜の形成が行なわれる成膜空間を複数の小成
膜空間に分割して構成するので、これら小成膜空間にそ
れぞれ独立して堆積膜の原料ガスおよびマイクロ波エネ
ルギーを導入してプラズマを生起できる。したがって、
小成膜空間ごとに、組成の異なった堆積膜を形成するた
めの良好な成膜条件を設定できる。帯状の基板の移動方
向に対して小成膜空間の成膜条件を堆積膜の組成が徐々
に変化するように設定すれば、基板が連続的に移動しか
つ堆積膜も連続的に形成、成長しているから、結果とし
て、基板上に形成される堆積膜は、膜厚方向に組成が階
段状に変化することになる。
【0077】隣接する小成膜空間を分離する壁に原料ガ
スの透過を許すような適当な開口を設けると、隣接する
小成膜空間の間で原料ガスおよびプラズマの相互拡散が
起こり、移動する帯状の基板上に形成される堆積膜の組
成は、前述した階段状の変化部分を滑らかに接続したも
のとなる。この壁に設けられる開口の開口率を大きくし
すぎると、相互拡散が激しくなり各小成膜空間での良好
な成膜条件を維持できなくなる。また、開口率を小さく
すると、相互拡散が少なくなって、膜厚方向の組成変化
がより明瞭な階段状変化を示すようになる。組成変化を
滑らかにする必要がある場合には、成膜空間を分割して
得られる小成膜空間の数を増やすことも有効である。
【0078】これら小成膜空間には、堆積膜形成用の原
料ガスを導入する原料ガス放出手段が設けられる。原料
ガス放出手段には、原料ガスを小成膜空間内に放出する
ためのガス放出孔が設けられている。このガス放出孔の
形状は、スリット状、円形状、楕円状、スポンジ状、メ
ッシュ状などいずれの形状であってもよく、またガス放
出孔の個数はいくつであってもよいが、この小成膜空間
内で基板の横幅方向および移動方向に対して堆積膜の形
成速度および膜質が均一となるように原料ガスが放出さ
れるように工夫される必要がある。
【0079】また、これら小成膜空間には、原料ガスを
排気する原料ガス排気手段が設けられる。原料ガス排気
手段には、原料ガスを吸引するためのガス排気孔が設け
られる。このガス排気孔の形状は、スリット状、円形
状、楕円状、スポンジ状、メッシュ状などいずれの形状
であってもよく、またガス排気孔の個数はいくつであっ
てもよいが、基板の横幅方向に対して均一にガスが排気
されるように工夫される必要がある。マイクロ波エネル
ギーがガス排気孔から外部に漏洩しないように、ガス排
気孔の開口面積は小さくするとよい。開口部の幅は、好
ましくはマイクロ波の波長の1/4以下、より好ましく
は1/20以下である。
【0080】さらに、小成膜空間には、それぞれマイク
ロ波エネルギーをその小成膜空間に導入するマイクロ波
導入手段が設けられる。マイクロ波エネルギーは、柱状
の小成膜空間の面であって基板表面とは垂直である面か
ら、帯状の基板に平行かつ基板の横幅方向に放射、伝搬
されるようにするの好ましい。このマイクロ波エネルギ
ーは、マイクロ波電源から導波管を介してマイクロ波導
入手段に伝達され、このマイクロ波導入手段の先端に設
けられたマイクロ波透過性部材(誘電体窓)を透過して
小成膜空間内に放射、伝搬される。マイクロ波透過性部
材は、大気圧下にある導波管内と減圧下にある成膜空間
とを気密分離するためのものである。
【0081】成膜空間が形成される真空容器内には、成
膜空間を通過する帯状の基板の温度を調整するために、
基板をはさんで成膜空間と対向するようにして、ヒータ
が設けられる。基板の温度を小成膜空間ごとに独立して
設定できるように、各小成膜空間のそれぞれに対応して
ヒータの発熱量を独立に調整できるようにするとよい。
また一般に、成膜空間を実質的に画定することになる成
膜容器が真空容器内に設けられるが、基板がこの成膜容
器を貫通することとなるスリット状の開口部から放電エ
ネルギーやプラズマが漏洩しないように、これらの部分
における開口面積は極力狭くするとよい。開口の狭い方
の幅は、好ましくはマイクロ波の波長の1/4以下、よ
り好ましくは1/20以下である。また、電磁シールド
材を用いてもよい。
【0082】《本発明の方法および装置によって形成さ
れる堆積膜の例》以上、第1〜第11の発明について説
明したが、ここで本発明の堆積膜形成方法および堆積膜
形成装置によって形成される堆積膜の例について説明す
る。このような堆積膜としては、Si,Ge,CなどのIV
族半導体薄膜およびこれに価電子制御元素を含有させた
ものが代表として挙げられる。このほか、SiGe,S
iC,GeC,SiSn,GeSn,SnCなどのIV族合金
半導体薄膜、GaAs,GaP,GaSb,InP,InA
sなどの III−V族化合物半導体薄膜、ZnSe,Zn
S,ZnTe,CdS,CdSe,CdTeなどのII−VI族
化合物半導体薄膜、CuAlS2,CuAlSe2,CuA
lTe2,CuInS2,CuInSe2,CuInTe2,C
uGaS2,CuGaSe2,CuGaTe,AgInS
2,AgInTe2などのI−III−VI族化合物半導体薄
膜、ZnSiP2,ZnGeAs2,CdSiAs2,CdS
nP2などのII−IV−V族化合物半導体薄膜、Cu2O,
TiO2,In23,SnO2,ZnO,CdO,Bi23,C
dSnO4などの酸化物半導体薄膜、およびこれらの半
導体薄膜に価電子を制御するための価電子制御元素を含
有させたものを挙げることが出来る。もちろん、これら
の薄膜半導体は、非晶質(アモルファス)、多結晶、微
結晶、単結晶のいずれの結晶性のものであってもよい。
また、膜厚方向に組成を変化させた堆積膜の例として、
もちろんa−Si:H、a−Si:H:Fなどの非晶質半
導体において、水素および/またはフッ素含有量を変化
させたものである。
【0083】前述の堆積膜を形成するために用いられる
堆積膜形成用の原料ガスは、所望の堆積膜の組成に応じ
て適宜その混合比を調製して成膜空間内に導入される。
上述のIV族半導体またはIV族合金半導体薄膜を形成する
ために好適に用いられる、周期律表第IV族元素を含む化
合物としては、Si原子、Ge原子、C原子、Sn原
子、Pb原子を含む化合物であって、具体的にはSiH
4,Si26,Si38,Si36,Si48,Si510
のシラン系化合物、SiF4,(SiF2)5,(SiF2)6,
(SiF2)4,Si26,Si38,SiHF3,SiH22,
Si224,Si233,SiCl4,(SiCl2)5,S
iBr4,(SiBr2)5,Si2Cl6,Si2Br6,SiH
Cl3,SiHBr3,SiHI3,Si2Cl33などのハ
ロゲン化シラン化合物、GeH4,Ge26などのゲルマ
ン化合物、GeF4,(GeF2)5,(GeF2)6,(Ge
2)4,Ge26,Ge38,GeHF3,GeH22,Ge2
24,Ge233,GeCl4,(GeCl2)5,GeBr
4,(GeBr2)5,Ge2Cl6,Ge2Br6,GeHCl3,
GeHBr3,GeHI3,Ge2Cl33などのハロゲン
化ゲルマニウム化合物、CH4,C26,C38などのメ
タン列炭化水素、C24,C 36などのエチレン列炭化
水素、C66などの環状炭化水素、CF4,(CF2)5,(C
2)6,(CF2)4,C26,C38,CHF3,CH22,CC
4,(CCl2)5,CBr4,(CBr2)5,C2Cl6,C2Br
6,CHCl3,CHI3,C2Cl33などのハロゲン化炭
素化合物、SnH4,Sn(CH3)4などのスズ化合物、P
b(CH3)4,Pb(C25)6などの鉛化合物などを挙げる
ことができる。これらの化合物は1種で用いても2種以
上混合して用いても良い。
【0084】また、上述のIV族半導体あるいはIV族合金
半導体を価電子制御するために用いられる価電子制御剤
としては、p型の不純物として、周期律表第III族の元
素、例えばB,Al,Ga,In,Tlなどが好適なものと
して挙げられ、n型不純物として、周期律表第V族の元
素、例えばN,P,As,Sb,Biなどが好適なものとし
て挙げられる。ことに、B,Ga,P,Sbなどが最適で
ある。ドーピングされる不純物の量は、要求される電気
的、光学的特性に応じて適宜決定される。このような不
純物導入用の原料物質としては、常温常圧でガス状態
の、または少なくとも膜形成条件下で容易にガス化し得
るものが採用される。そのような不純物導入用の出発物
質として具体的には、PH3,P24,PF3,PF5,PC
3,AsH3,AsF3,AsF5,AsCl3,SbH3,Sb
5,BiH3,BF3,BCl3,BBr3,B26,B410,
59,B511,B610,B612,AlCl3などを挙げ
ることが出来る。上記の不純物元素を含む化合物は、1
種用いても2種以上併用してもよい。
【0085】上述のII−VI族化合物半導体を形成するた
めに用いられる、周期律表第II族元素を含む化合物とし
ては、具体的には、Zn(CH3)2,Zn(C25)2,Zn
(OCH3)2,Zn(OC25)2,Cd(CH3)2,Cd(C2
5)2,Cd(C37)2,Cd(C49)2,Hg(CH3)2,Hg
(C25)2,Hg(C65)2,Hg[C≡(C65)]2などが
挙げられる。また周期律表第VI族元素を含む化合物とし
ては、具体的にはNO,N2O,CO2,CO,H2S,SCl
2,S2Cl2,SOCl2,SeH2,SeCl2,Se2Br2,
Se(CH3)2,Se(C25)2,TeH2,Te(CH3)2,T
e(C25)2などが挙げられる。もちろん、これらの原
料物質は1種のみならず2種以上混合して使用すること
も出来る。
【0086】このII−VI族化合物半導体を価電子制御す
るために用いられる価電子制御剤としては、周期律表
I,III,IV,V族の元素を含む化合物などを有効なものと
して挙げることができる。具体的にはI族元素を含む化
合物としては、LiC37,Li(sec-C49),Li2S,
Li3Nなどが好適なものとして挙げることができる。
また、III族元素を含む化合物としては、BX3,B26,
410,B59,B511,B610,B(CH3)3,B(C2
5)3,B612,AlX3,Al(CH3)2Cl,Al(CH3)3,
Al(OCH3)3,Al(CH3)Cl2,Al(C25)3,Al
(OC25)3,Al(CH3)3Cl3,Al(i-C49)3,A
l(i-C37)3,Al(C37)3,Al(OC49)3,Ga
3,Ga(OCH3)3,Ga(OC25)3,Ga(OC
37)3,Ga(OC49)3,Ga(CH3)3,Ga26,Ga
H(C25)2,Ga(OC25)(C25)2,In(CH3)3,
In(C37)3,In(C49)3、V族元素を含む化合物
としてはNH3,HN3,N253,N24,NH43,PX
3,P(OCH3)3,P(OC25)3,P(OC 37)3,P(OC
49)3,P(CH3)3,P(C25)3,P(C37)3,P(C4
9)3,P(SCN)3,P24,PH3,AsH3,AsX3,As
(OCH3)3,As(OC25)3,As(OC37)3,As(O
49)3,As(CH3)3,As(C25)3,As(C65)3,
SbX3,Sb(OCH3)3,Sb(OC25)3,Sb(OC3
7)3,Sb(OC49)3,Sb(CH3)3,Sb(C37)3,
Sb(C49)3などが挙げられる。なお、Xはハロゲン
元素(F,Cl,Br,I)を示す。もちろん、これらの
原料物質は1種であってもよいが、2種またはそれ以上
を併用してもよい。さらに、IV族元素を含む化合物とし
ては前述した化合物を用いることが出来る。
【0087】上述のIII−V族化合物半導体を形成する
ために用いられる、周期律表第III族元素を含む化合物
としては、II−VI族化合物半導体を価電子制御するため
に用いられるIII族元素を含む化合物として上述したも
のをそのまま使用することができ、また、周期律表第V
族元素を含む化合物としては、II−VI族化合物半導体を
価電子制御するために用いられるV族元素を含む化合物
として上述したものを同様にそのまま使用することがで
きる。もちろん、これらの原料物質は1種であってもよ
いが、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0088】このIII−V族化合物半導体を価電子制御
するために用いられる価電子制御剤としては、周期律表
II,IV,VI族の元素を含む化合物などを有効なものとして
挙げることができる。このような化合物としては、上述
したII族元素を含む化合物、上述したIV族元素を含む化
合物、上述したVI族元素を含む化合物をそれぞれ使用す
ることができる。
【0089】上述した各原料ガスは、He,Ne,Ar,
Kr,Xeなどの希ガス、あるいはH 2,HF,HClなど
の希釈ガスと混合して堆積膜形成装置に導入してもよ
い。また、これら希ガスや希釈ガスを原料ガスとは独立
に堆積膜形成装置に導入するようにしてもよい。また、
これら半導体薄膜の堆積膜を形成する場合、堆積膜のバ
ンドギャップ幅を変化させるなどの特性改善ガスとし
て、N2 ,NH3などの窒素原子を含む分子、O2,NO2
などの酸素原子を含む分子、CH4,C26,C24,C2
2,C38などの炭化水素、SiF4,Si26,GeF4
などのフッ化物、またはこれらの混合ガスが挙げられ
る。
【0090】本発明においては、堆積膜の膜厚方向に制
御された組成分布を形成することが可能であるが、上述
した半導体薄膜において組成制御を行うことにより、禁
制帯幅制御、価電子制御、屈折率制御、結晶制御などが
行われる。帯状の基板上に膜厚方向に組成制御された堆
積膜を形成させることにより、電気的、光学的、機械的
に優れた特性を有する大面積の薄膜半導体デバイスを作
製することが出来る。すなわち、堆積形成された半導体
層の膜厚方向に禁制帯幅及び/又は価電子密度を変化さ
せることによりキャリアの走行性を高めたり、半導体界
面でのキャリアの再結合を防止することで電気的特性が
向上する。また、屈折率を連続的に変化させることによ
り光学的無反射面とすることができ、半導体層中への光
透過率を向上させることができる。さらには、水素含有
量などを変化させることによって、構造的変化を与える
ことができ、内部応力が緩和されて、基板との密着性の
高い堆積膜を形成することができる。
【0091】本発明において堆積膜の形成される基板と
しては、特にその材質が限定されるものではないが、例
えば、Al,Cr,Mo,Au,In,Nb,Te,V,Ti,
Pt,Pdなどの金属、これらの合金やステンレス鋼、
表面を導電処理したポリカーボネートなどの合成樹脂、
ガラス、セラミックス、紙などが通常使用される。 《太陽電池の構成例》本発明の堆積膜形成方法および堆
積膜形成装置を用いて好適に製造される半導体デバイス
の一例として、光起電力素子すなわち太陽電池がある。
その層構成として典型的なものであるアモルファスシリ
コン系太陽電池について、図52(a)〜(d)を用いて説明
する。
【0092】図52(a)に示した太陽電池は、基板90
1の上に、下部電極902、n型半導体層903、i型
半導体層904、p型半導体層905、透明電極906
が順次積層され、さらに透明電極906の上に格子状の
集電電極907が形成された構造となっている。この太
陽電池は、透明電極906の側から光が入射されること
を前提としたものである。なお、下部電極902は、各
半導体層903〜905をはさんで透明電極906に対
向する電極のことである。
【0093】図52(b)に示した太陽電池は、基板90
1が透光性のものであって、この基板901の側から光
が入射するものであり、基板901の上に、透明電極9
06、p型半導体層905、i型半導体層904、n型
半導体層903、下部電極902が順次積層された構成
となっている。以上の各太陽電池は、pin接合を1組
のみ有するものであったが、入射光の利用効率を向上さ
せるため、2組のpin接合を積層させることが行なわ
れる。図52(c)は2組のpin接合を有する太陽電池
(いわゆるタンデム型太陽電池)の構成を示すものであ
り、この太陽電池は、基板901の上に、下部電極90
2、第1のpin接合911、第2のpin接合91
2、透明電極906、集電電極907が順次積層された
構成となっている。光は、透明電極906の側から入射
する。各pin接合911,912は、もちろん、n型
半導体層903、i型半導体層904、p型半導体層9
05が積層した構造であるが、i型半導体層904につ
いては、光電変換効率を向上させるために、第1および
第2のpin接合911,912のそれぞれによってバ
ンドギャップや膜厚を異ならせることが行なわれる。
【0094】さらに、光電変換効率を向上させるため、
3組のpin接合を積層させることが行なわれる。図5
2(d)は3組のpin接合を有する太陽電池(いわゆる
トリプル型太陽電池)の構成を示すものであり、この太
陽電池は、基板901の上に、下部電極902、第1の
pin接合911、第2のpin接合912、第3のp
in接合913、透明電極906、集電電極907が順
次積層された構成となっている。光は、透明電極906
の側から入射する。この太陽電池においても、光電変換
効率の向上のため、i型半導体層904のバンドギャッ
プや膜厚は、各pin接合911〜913のそれぞれに
おいて異なるようにされる。
【0095】次に、上述した太陽電池の各構成要素の詳
細について説明する。なお、図52(a)〜(d)に示した各
太陽電池においては、n型半導体層903とp型半導体
層905とを比較すると、p型半導体層905の方が光
入射側に位置するようになっているが、n型半導体層9
03の方が光の入射側に位置するような層構成とするこ
とも可能である。
【0096】まず、基板901について説明する。この
太陽電池において使用される基板901は、曲げやすく
湾曲形状を形成し得る材質のものが好適に用いられ、導
電性のものであっても、また電気絶縁性のものであって
もよい。基板901は透光性のものであっても、また非
透光性のものであってもよいが、基板901の側より光
入射が行われる場合には、もちろん透光性であることが
必要である。具体的には、本発明の各実施例で使用され
るような帯状の基板を挙げることができる。帯状の基板
を用いることにより、本発明の方法および装置によって
太陽電池を基板上に連続的に形成でき、太陽電池の軽量
化、強度向上、運搬スペースの低減などを図ることがで
きる。
【0097】次に、太陽電池から電力を取り出すための
電極について説明する。この太陽電池では、その構成形
態により適宜の電極が選択使用される。それらの電極と
しては、下部電極902、透明電極906、集電電極9
07を挙げることができる。(ただし、ここでいう透明
電極906とは光の入射側に設けられたものを示し、下
部電極902とは各半導体層903〜905をはさんで
透明電極906に対向して設けられたものを示すことと
する。)これらの電極について以下に詳しく説明する。 (i) 下部電極902 下部電極902としては、上述した基板901の材料が
透光性であるか否かによって、光起電力発生用の光を照
射する面が異なるので(たとえば基板901が金属など
の非透光性の材料である場合には、図52(a)で示した
ように、透明電極906側から光を照射する。)、その
設置される場所が異なる。
【0098】具体的には、図52(a),(c),(d)のような
層構成の場合には、電流取り出し用の電極として、基板
901とn型半導体層903との間に、下部電極902
が設けられる。なお、基板901が導電性である場合に
は、この基板901が下部電極902を兼ねることがで
きるので、下部電極902を省略することができる。た
だし、基板901が導電性であってもシート抵抗値が高
い場合には、電流取り出し用の低抵抗の電極として、あ
るいは支持体面での反射率を高め入射光の有効利用を図
る目的で、下部電極902を設置してもよい。
【0099】図52(b)の場合には、透光性の基板90
1が用いられており、基板901の側から光が入射され
るので、電流取り出しおよび光反射用の目的で、下部電
極902が、基板901と対向し各半導体層903〜9
05をはさんで設けられている。下部電極902の材料
としては、Ag,Au,Pt,Ni,Cr,Cu,Al,Ti,
Zn,Mo,Wなどの金属またはこれらの合金が挙げら
れ、これらの金属の薄膜を真空蒸着、電子ビーム蒸着、
スパッタリングなどで形成する。また、形成された金属
薄膜が太陽電池の出力に対して抵抗成分とならぬように
配慮されねばならず、下部電極902のシート抵抗値
は、好ましくは50Ω以下、より好ましくは10Ω以下
であることが望ましい。
【0100】下部電極902とn型半導体層903との
間に、導電性酸化亜鉛などの拡散防止層(不図示)を設
けてもよい。この拡散防止層の効果としては、下部電極
902を構成する金属元素がn型半導体層903中へ拡
散するのを防止するのみならず、若干の抵抗値をもたせ
ることで、各半導体層903〜905に生じたピンホー
ルなどの欠陥による、下部電極902と透明電極906
との間の短絡を防止すること、および薄膜による多重干
渉を発生させ入射された光を太陽電池内に閉じ込めるな
どのことを挙げることができる。 (ii) 透明電極906 透明電極906は、太陽や白色蛍光灯などからの光を各
半導体層903〜905内に効率良く吸収させるため
に、光の透過率が85%以上であることが望ましく、さ
らに、電気的には太陽電池の出力に対して抵抗成分とな
らぬようにシート抵抗値は100Ω以下であることが望
ましい。このような特性を備えた材料として、SnO2,
In23,ZnO,CdO,Cd2SnO4,ITO(In2
3+SnO2)などの金属酸化物や、Au,Al,Cuなど
の金属を極めて薄く半透明状に成膜した金属薄膜などが
挙げられる。透明電極は、図52(a),(c),(d)に示す太
陽電池においてはp型半導体層905の上に積層され、
図52(b)に示す太陽電池においては基板901の上に
積層されるものであるため、相互の密着性の良いものを
選ぶことが必要である。透明電極906の作製方法とし
ては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム加熱蒸着法、スパッ
タリング法、スプレー法などを用いることができ、所望
に応じて適宜選択される。 (iii) 集電電極907 集電電極907は、透明電極906の表面抵抗値を実効
的に低減させる目的で、透明電極906の上に格子状に
設けられる。集電電極907の材料としては、Ag,C
r,Ni,Al,Ag,Au,Ti,Pt,Cu,Mo,Wなど
の金属またはこれらの合金の薄膜が挙げられる。これら
の薄膜は積層させて用いることができる。また、各半導
体層903〜905へ入射する光量が十分に確保される
よう、その形状および面積は適宜設計される。
【0101】たとえば、その形状は太陽電池の受光面に
対して一様に広がり、かつ受光面積に対してその面積は
好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であ
ることが望ましい。また、シート抵抗値としては、好ま
しくは50Ω以下、より好ましくは10Ω以下であるこ
とが望ましい。次に、n型半導体層903、i型半導体
層904、p型半導体層905について説明する。 (i) i型半導体層904 i型半導体層904を構成する半導体材料としては、a
−Si:H,a−Si:F,a−Si:H:F,a−SiC:
H,a−SiC:F,a−SiC:H:F,a−SiGe:H,
a−SiGe:F,a−SiGe:H:F,poly−Si:H,p
oly−Si:F,poly−Si:H:FなどのIV族半導体材料
およびびIV族合金系半導体材料が挙げられる。このほ
か、II−VI族化合物半導体材料やIII−V族化合物半導
体材料などが挙げられる。
【0102】i型半導体層904においては、光電変換
効率などの向上を目的として、膜厚方向に組成を変化さ
せ、バンドギャップに変化を持たせることが行なわれ
る。図53(a)〜(d)に、i型半導体層904におけるバ
ンドギャップの変化の様子(バンドギャッププロファイ
ル)の具体例を示した。図中→印は光の入射側を表わし
ている。
【0103】図53(a)に示したバンドギャッププロフ
ァイルは、i型半導体層904中において、バンドギャ
ップが一定のものである。図53(b)に示したバンドギ
ャッププロファイルは、i型半導体層904の光の入射
側のバンドギャップが狭く、徐々にバンドギャップが広
がるタイプのものである。バンドギャップの形状をこの
ようにすることにより、曲線因子(Fill Factor;FF)
の改善に効果がある。図53(c)に示したバンドギャッ
ププロファイルは、光の入射側のバンドギャップが広
く、徐々にバンドギャップが狭くなるタイプのものであ
り、開放電圧(V oc)の改善に効果がある。図53(d)
に示したバンドギャッププロファイルは、光の入射側の
バンドギャップが広く、比較的急峻にバンドギャップが
狭まり、再び広がっていくタイプのものであり、図53
(b)と(c)とを組み合わせて両者の効果を同時に得ること
ができるものである。このようにバンドギャップに変化
を持たせるためには、異なる半導体を組み合せればよ
い。例えば、a−Si:H(Eg opt=1.72eV)とa
−SiGe:H(Eg opt=1.45eV)とを組み合せる
と、図53(d)に示すバンドギャッププロファイルをも
つi型半導体層904を作製することが出来る。また、
a−SiC:H(Eg opt=2.05eV)とa−Si:H
(Eg opt=1.72eV)とを用いて、図53(c)に示す
バンドギャッププロファイルをもつi型半導体層904
を作製することが出来る。
【0104】また、i型半導体層904に微量に添加す
る不純物の濃度を膜厚方向に変化させることにより、導
電型をi型としたまま、i型半導体層904のフェルミ
レベルに変化を持たせることができる。バンドギャップ
プロファイルが図53(a)に示したものである(すなわ
ちバンドギャップが変化しない)i型半導体層904に
おける、フェルミレベルの変化の様子(フェルミレベル
プロファイル)の具体例を図54(a)〜(d)に示した。図
中→印は光の入射側を表わしている。
【0105】図54(a)は、不純物の添加を行なわない
i型半導体層904のフェルミレベルプロファイルであ
る。これに対し、図54(b)に示したものは、光の入射
側のフェルミレベルが価電子帯寄りで、徐々にフェルミ
レベルが伝導帯に寄るタイプのものであり、光発生キャ
リアの再結合を防ぎ、キャリアの走行性を高めるのに効
果がある。図54(c)に示したものは、光の入射側より
フェルミレベルが徐々に価電子帯に寄るタイプのもので
あり、光の入射側にn型半導体層を設けた場合に、図5
4(b)の場合と同様の効果がある。図54(d)に示したも
のは、光の入射側よりほぼ連続的にフェルミレベルが価
電子帯より伝導帯に変化しているタイプのものである。
これらはバンドギャップが一定の場合を例示している
が、図53(b)〜(d)に示すバンドギャッププロファイル
の場合においても、同様にフェルミレベルを制御するこ
とが出来る。
【0106】これらのバンドギャッププロファイルおよ
びフェルミレベルプロファイルの設計を適宜行うことに
より、光電変換効率の高い太陽電池を作製することが出
来る。特に、これらのバンドギャッププロファイルおよ
びフェルミレベルプロファイルの制御は、図52(c),
(d)に示した、いわゆるタンデム型またはトリプル型の
太陽電池のi型半導体層904に適用されるのが望まし
い。 (ii) p型半導体層905およびn型半導体層903 p型半導体層905あるいはn型半導体層903は、前
述したi型半導体層904を構成する半導体材料に、価
電子制御剤を公知の方法でドーピングすることによって
得られる。
【0107】
【実施例】次に本発明の実施例について、図面を参照し
て説明する。 《実施例1》 (実施例1−1)図1は、本発明の1番目の実施例での
堆積膜形成方法の実施に使用される堆積膜形成装置の構
成を示す要部破断斜視図である。帯状の基板を移動しな
がら堆積膜を形成するロールツーロール方式に適用され
る。金属製の堆積膜形成容器101は、不図示の真空容
器内に接地されて設けられている。堆積膜が形成される
長尺の帯状の基板102は、図面左側から、堆積膜形成
容器102の左側すなわち搬入側の側壁103に設けら
れたスリットを通って堆積膜形成容器101を貫通し、
堆積膜形成容器の図示右側の側壁103に設けられたス
リットを通って外部に排出されるようになっている。
【0108】基板102は、堆積膜形成容器101の搬
入側に接続された不図示の基板送り出し容器から、堆積
膜形成容器101の搬出側に接続された不図示の基板巻
取り容器に向けて、連続的に移動させられるようになっ
ている。堆積膜形成容器101内には、プラズマが生成
される柱状の成膜空間107が形成される。また基板1
02は、成膜空間107を外周面の一部をなしている。
堆積膜形成容器101には、基板102と平行に、4台
のマイクロ波アプリケーター109が基板102の移動
方向に沿って等間隔に並ぶように取り付けられている。
各マイクロ波アプリケーター109は成膜空間107に
マイクロ波エネルギーを導入するためのものであり、図
示しないマイクロ波電源に一端が接続された導波管11
0の他端にそれぞれ接続されている。各マイクロ波アプ
リケーター109の堆積膜形成容器101への取り付け
部位は、それぞれマイクロ波を透過する材料からなるマ
イクロ波導入窓となっていて、マイクロ波電源から供給
されたマイクロ波エネルギーを成膜空間107に放射す
るようになっている。堆積膜形成容器101の底面に
は、原料ガスを放出するガス放出手段108が取り付け
られている。ガス放出手段108は、成膜空間107に
向けて開口した多数のガス放出孔を有し、真空容器の外
のガスボンベ(不図示)などの原料ガス供給源に接続さ
れたガス供給管の一端に接続されている。
【0109】堆積膜形成容器101の背面側すなわちマ
イクロ波アプリケータ109に対向する側の側壁106
には、円形の開口が多数設けられ、ここから成膜空間1
07内のガスが排出されるようになっている。この開口
は、マイクロ波の漏洩がないように、直径は3〜5mm
となっている。堆積膜形成容器101の外部に排出され
たガスは、真空容器(不図示)に接続された排気管から
不図示の真空ポンプに排出される。
【0110】基板102をはさんで成膜空間107の反
対側には、多数の赤外線ランプヒーター112と、これ
らの赤外線ランプヒーター112からの放射熱を効率よ
く基板102に集中させるためのランプハウス113が
設けられている。赤外線ランプヒーター112で加熱さ
れた基板102の温度を監視するための熱電対135
が、この基板102に接するように、設けられている。
【0111】成膜空間107に対し、堆積膜形成容器1
01の背面側の側壁106から、バイアス電圧を印加す
るためのロッド状の金属製のバイアス電極111が挿
入、固定されている。バイアス電極111はマイクロ波
アプリケーター109の中心軸上の正面に位置決めされ
ている。バイアス電極111には、後述するように、真
空容器の外部の電源から直流もしくは交流(低周波〜高
周波)のバイアス電圧が印加されるようになっている。
【0112】図2は、図1に示した堆積膜形成容器10
1における、マイクロ波電源から供給されるマイクロ波
電力の制御系統図を示したものである。成膜空間107
内に設置された各バイアス電極111は、バイアス電極
111ごとに設けられたバイアス印加電源117から、
それぞれバイアス電圧を印加されるようになっている。
バイアス印加電源117は直流電源であっても交流(低
周波〜高周波)電源であってもよい。成膜空間107で
マイクロ波プラズマ放電が生起しているときにバイアス
電極111を流れる電流を測定するための電流計116
が、バイアス電極111ごとに設けられている。電流計
116での測定結果は、バイアス電極111ごとに設け
られたマイクロ波コントローラ118に、それぞれ送ら
れるようになっている。マイクロ波コントローラー11
8は、測定された電流値と、あらかじめ設定しておいた
電流値とを比較して、バイアス電極111を流れる電流
値が設定値と等しくなるように、マイクロ波電源115
に対してマイクロ波発振強度の増減するための制御信号
を出力する。このマイクロ波電源115は、マイクロ波
アプリケータ109ごとに設けられている。
【0113】次に、図1および図2を用いて説明した堆
積膜形成装置の動作を説明する。基板102はボビンに
巻かれて、基板送り出し容器(不図示)に装着される。
基板送り出し容器(不図示)から、堆積膜形成容器10
1の設けられた真空容器(不図示)を通して、堆積膜形
成容器に対して基板送り出し容器と反対側に設置された
基板巻取り容器(不図示)にまで、基板102を張り渡
す。基板送り出し容器と真空容器、真空容器と基板巻取
り容器の間は、ゲートガスが導入されるように構成され
たガスゲート(不図示)によりそれぞれ接続されてい
る。
【0114】次に、基板巻出し容器、真空容器、基板巻
取り容器をそれぞれ排気し、所定の真空度に到達した
ら、各ガスゲートにゲートガスを供給する。ゲートガス
は、主として真空容器に取付けられた排気管(不図示)
から排気されることになる。さらに、基板送り出し容器
内に設けられた基板送り出し手段(不図示)と、基板巻
取り容器内に設けられた基板巻取り手段(不図示)とを
作動させ、基板102を基板送り出し容器から基板巻取
り容器に向けて連続的に移動させる。
【0115】続いて、熱電対135の出力を監視しなが
ら赤外線ランプヒーター112を作動させることによ
り、基板102を所定の温度にまで加熱する。ガス放出
手段108から、原料ガスを堆積膜形成容器101内に
放出させる。ガス放出手段108に供給される原料ガス
は、それぞれ、堆積膜の原料となる物質を複数種類含有
している。また、導波管110を介してマイクロ波電力
をマイクロ波アプリケーター109に印加する。そして
各バイアス印加電源117からバイアス電極111に直
流100Vをバイアス電圧を印加する。
【0116】このようにすることにより、堆積膜形成容
器101内において、壁面と基板102とマイクロ波ア
プリケーター109とで囲まれた空間(成膜空間10
7)にガス放出手段108から原料ガスが放出される。
マイクロ波アプリケーター109にマイクロ波電力が印
加されているので、成膜空間107内において、マイク
ロ波グロー放電が生起し、原料ガスがプラズマに分解さ
れ、基板102上に堆積膜が形成される。
【0117】このとき各マイクロ波コントローラ118
は、電流計116を介して、対応するバイアス電極11
1に流れるバイアス電流値を読み込む。マイクロ波コン
トローラー118にはあらかじめ所望のバイアス電流値
が設定されているので、マイクロ波コントローラー11
8は、バイアス電流測定値とバイアス電流設定値とを比
較して、両者の差分に対応して、マイクロ波発振電源1
15にマイクロ波発振強度を増減するための制御信号を
出力する。すなわち、「バイアス電流測定値」−「バイ
アス電流設定値」<0の場合には、マイクロ波出力を増
加する制御信号が出力され、これにしたがってマイクロ
波電源115は出力を増加させる。一方、「バイアス電
流測定値」−「バイアス電流設定値」>0の場合には、
マイクロ波出力を減少させる制御信号が出力され、こに
にしたがってマイクロ波電源115はマイクロ波出力を
減少させる。上記のようにして、マイクロ波電源115
からのマイクロ波出力は、バイアス電流が設定値に維持
されるように制御される。なお、4台のマイクロ波アプ
リケーター109から成膜空間107に放射されるマイ
クロ波エネルギーは、上述のようにそれぞれ別個のマイ
クロ波コントローラ118により制御される。 (実験1−1)ここで、上述の堆積膜形成容器101お
よびマイクロ波コントローラ118を用いて堆積膜を形
成した場合における、堆積膜の一様性、安定性およびプ
ラズマの安定性を調べた結果について説明する。
【0118】この堆積膜形成容器101を用い、長さ2
00m、幅12cmのSUS430BAステンレス製の
帯状の基板102を1.3m/分の速度で長手方向に移
動させ、この基板102上に堆積膜を形成した。成膜空
間107は、基板102の長手方向に90cm、幅方向
に16cm、縦方向(基板102に垂直な方向)に15
cmの角柱状の空間である。各マイクロ波アプリケータ
ー109間の間隔は220mmであり、各バイアス電極
111の直径は10mmであり、成膜空間107にSi
4を200(sccm)×4(箇所)=800(sc
cm)、H2を100(sccm)×4(箇所)=40
0(sccm)の原料ガスを導入した。成膜空間107
の圧力は5mTorrであり、基板102は300℃と
なるように加熱した。そしてバイアス電流がそれぞれ
1.2A(設定値)となるようにマイクロ波電力を制御
し、2.5時間にわたって成膜を行なった。
【0119】図3は、成膜中のバイアス電流値の変化、
および成膜空間107を移動させて形成した堆積膜の膜
厚を測定した結果を示す図である。図から明らかなよう
に、バイアス電流が一定に維持されたプラズマのもとで
安定した堆積膜の形成が行なわれた。 (実施例1−2)上述の実施例1−1では、複数のバイ
アス電極を設けてバイアス電流を測定することによって
マイクロ波電力の制御がなされていたが、複数のバイア
ス電極の代りに複数の探針(プローブ)を設け、各探針
でのフローティング電位を測定してマイクロ波電力の制
御をなすことも可能である。
【0120】図4は、図2と同様のマイクロ波電力の制
御系統図であるが、バイアス電極の代りに探針141を
使用する点で異なっている。この探針141は、図1に
示される堆積膜形成容器101において、バイアス電極
111の代りに、バイアス電極111と同様に取り付け
られている。したがって探針141は、成膜空間107
内に形成されるプラズマと接触することになる。各探針
141の電位(フローティング電位)は、探針141ご
とに設けられた電圧計119で測定され、マイクロ波コ
ントローラ118に伝達される。マイクロ波コントロー
ラー118には予め所望のフローティング電位が設定さ
れており、マイクロ波コントローラー118は、図2に
示した場合と同様に、フローティング電位の測定値と設
定値とを比較して、比較結果に対応してマイクロ波電源
115に対してマイクロ波発振出力の制御信号を伝達す
る。「フローティング電位測定値」−「フローティング
電位設定値」<0の場合には、マイクロ波発振電源15
からのマイクロ波出力は増加し、「フローティング電位
測定値」−「フローティング電位設定値」>0の場合に
は、減少する。
【0121】このようにして、フローティング電位が設
定値に維持されるように、マイクロ波電源115からの
マイクロ波出力が制御される。なお、4台のマイクロ波
アプリケーター109から成膜空間107に放射される
マイクロ波エネルギーは、それぞれ別個の探針141お
よびマイクロ波コントローラ118によって制御される
から、大面積のプラズマを一定の状態に安定して維持す
ることができる。 (実験1−2)ここで、上述の堆積膜形成容器101を
用い、図4に示した制御系統図にしたがって堆積膜を形
成した場合における、堆積膜の一様性、安定性およびプ
ラズマの安定性を調べた結果について説明する。
【0122】長さ200mのSUS430BAステンレ
ス製の帯状の基板102を1.3m/分の速度で移動さ
せながら堆積膜を形成した。成膜空間107に導入する
原料ガスはSiH4を25(sccm)×4(箇所)=
100(sccm)、H2を200(sccm)×4
(4箇所)=800(sccm)とした。成膜空間10
7の圧力は20mTorrとし、基板102は300℃
になるように加熱した。フローティング電位が12V
(設定値)となるようにマイクロ波パワーを制御して、
2.5時間にわたって成膜を行なった。
【0123】図5は、成膜中のフローティング電位の変
化と、基板102を成膜空間107を移動させて形成し
た堆積膜についてその膜厚を測定した結果とを示す。こ
の図から明らかなように、フローティング電位が一定に
維持されたプラズマのもとで、安定した堆積膜の形成が
行なわれた。 (実施例1−3)上述の実施例1−1ではバイアス電極
の形状は棒状であったが、バイアス電極の形状はこれに
限られるものではない。図6は、平行平板型のバイアス
電極を有する、本発明の方法を適用した堆積膜形成装置
の断面図である。
【0124】図6に示す堆積膜形成装置は、概ね直方体
形状の真空容器152と、真空容器152内に設けられ
た堆積膜形成容器153とからなる。真空容器152
は、排気管131を介して図示しない排気手段により排
気されるようになっている。排気管131の途中には、
コンダクタンスバルブ132が設けられている。堆積膜
形成容器153は、上面の全面が開口した概ね直方体形
状の容器である。堆積膜の形成される長尺の帯状の基板
102は、真空容器152の図示左側すなわち搬入側の
側壁に取り付けられたガスゲート126を経てこの真空
容器152内に導入され、堆積膜形成容器153に対向
する位置を通り、真空容器152の図示右側すなわち搬
出側の側壁に取り付けられたガスゲート126を通って
真空容器152の外部に排出されるようになっている。
各ガスゲート126には、ゲートガスを供給するための
ゲートガス供給管128が接続されている。基板102
は、図示左から右へと連続的に移動させられるようにな
っているが、このとき真空容器152内において、堆積
膜形成容器153の開口面に対してわずかの間隔を開け
つつ平行に移動する。基板102と堆積膜形成容器15
3の開口面との間隔を一定に保つため、基板102を保
持するマグネットローラ130が真空容器152内に設
けられている。
【0125】堆積膜形成容器153の側壁には、上述の
実施例1−1と同様に基板102の移動方向に沿って3
個のマイクロ波アプリケータ109が取り付けられてい
る。各マイクロ波アプリケータ109は、マイクロ波電
源115(図2)に導波管(不図示)を介して接続され
ている。また各マイクロ波アプリケータ109の堆積膜
形成容器153への取り付け部位は、それぞれ、マイク
ロ波を透過する材料からなるマイクロ波導入窓となって
いる。さらに堆積膜形成容器153内に原料ガスを導入
するための原料ガス導入管(不図示)が設けられてい
る。基板102の進行方向に関し前端側と後端側になる
堆積膜形成容器153の側壁は、それぞれ金網125で
構成されており、堆積膜形成容器153の排気が排気管
131を介して容易に行なえるようになっている。
【0126】堆積膜形成容器153の底面には、基板1
02に対向するようにして、3個の平板状のバイアス電
極122が取り付けられている。各バイアス電極122
は、それぞれマイクロ波アプリケータ109に対応して
設けられているものであって、相互に絶縁体124で電
気的に絶縁されている。各バイアス電極122は、ぞれ
ぞれケーブル123を介してバイアス印加電源117に
接続されている。
【0127】また、基板102をはさんで堆積膜形成容
器153の開口面に対向するようにして、多数の赤外線
ランプヒータ112と、赤外線ランプヒータ407から
の放射熱を効率良く基板に102に集中させるためのリ
フレクタ113が設けられている。この堆積膜形成装置
では、実施例1−1と同様に、各バイアス電極122を
流れるバイアス電流がモニターされ、電流値に応じてマ
イクロ波アプリケータ109から導入されるマイクロ波
電力が制御されるようになっている。したがって、大面
積の基板102上に安定して形成できることになる。
【0128】(実施例1−4)実施例1−1では堆積膜
形成容器101の一方の側壁にのみマイクロ波アプリケ
ータ109が取り付けられていたが、他方の側壁にもマ
イクロ波アプリケータを取り付け、両者が対向するよう
にすることもできる。図7は、このような堆積膜形成装
置の構成を示す要部破断斜視図である。
【0129】堆積膜形成容器101aには、円柱状のマ
イクロ波アプリケーター109が、帯状の基板102に
平行に、基板102の移動方向に沿って、4組並んでい
る。この組は、対向する2個のマイクロ波アプリケータ
109によって構成されている。すなわち、堆積膜形成
容器101aの側壁のうち基板102の移動方向に延び
る側壁の一方(側壁105)に、組を構成するマイクロ
波アプリケータ109の一方が取り付けられ、側壁10
5に対向する側壁すなわち背面側の側壁106に他方の
マイクロ波アプリケータ109が取り付けられているこ
とになる。
【0130】対向するマイクロ波アプリケーター109
の中心軸上には、T字ロッド状のバイアス電極134が
設けられている。バイアス電極134は、T字の根元の
部分で、堆積膜形成容器101aの底壁104に固定さ
れている。このバイアス電極134には、外部の直流ま
たは交流のバイアス電源からバイアス電位が印加され、
これによって基板102にバイアス電圧が印加されるこ
とになる。またバイアス電極134は中空の管になって
おり、真空容器の外部から堆積膜形成用の原料ガスが供
給され、表面に多数開いた小孔から成膜空間107内に
原料ガスが放出されるようになっている。成膜空間10
7内のガスは、堆積膜形成容器101aの底壁104に
設けられた多数の孔から外部に排出されるようになって
いる。
【0131】この実施例では、対向する2個のマイクロ
波アプリケーター109から放射されるマイクロ波エネ
ルギーによって生起するプラズマをバイアス電極134
によってモニターする。バイアス電極134は、対向す
るマイクロ波アプリケーター109の中心軸上にあって
両マイクロ波アプリケーター109の間にあるから、生
成するプラズマと当然に接触している。そしてバイアス
電流を一定にするように、前述の実施例1−1〜1−3
と同様に、マイクロ波電源のマイクロ波発振出力を制御
する。このとき、対向する2台のマイクロ波アプリケー
ター109に供給するマイクロ波エネルギーの比を予め
設定して制御してもよい。
【0132】この実施例では対向するマイクロ波アプリ
ケータ間にバイアス電極を配置したが、バイアス電極の
代りにフローティング電位を計測する探針を設けてもよ
い。また、原料ガスをバイアス電極から成膜空間に供給
することに限定されるものではない。 《実施例2》 (実施例2−1)次に、本発明の2番目の実施例につい
て説明する。図8は、本発明の2番目の実施例での堆積
膜形成方法の実施に使用されるマイクロ波プラズマCV
D装置の構成を示す透視概略図である。図9は、図8を
部分的に抜き出した説明図である。このマイクロ波プラ
ズマCVD装置200は、可撓性に富んだ帯状の基板2
01に対して連続的に成膜を行なうためのものである。
【0133】このマイクロ波プラズマCVD装置200
は、排気可能な不図示の真空容器と、この真空容器内に
設けられる放電容器205とを有している。放電容器2
05は、上面を基板201で実質的に構成された概ね直
方体形状の容器である。放電容器205の側壁のうち基
板201の搬送方向に平行な側壁には、マイクロ波導入
用の開口207がそれぞれ設けられている。この開口2
07には、後述するマイクロ波アプリケータ213が挿
入される。
【0134】不図示のマイクロ波電源は、方形導波管2
02、円形導波管203、円形誘電体窓204で構成さ
れるマイクロ波アプリケーター213を介して、放電容
器105に接続されている。円形導波管203は、ほぼ
方形導波管202の外接円となるように、内径が選ばれ
ている。また、円形誘電体窓204は、その実効的な厚
さがλ/2(λはマイクロ波の波長)となっている。円
形誘電体窓204の材質は、アルミナ・セラミックス、
石英、酸化ベリリウムなどマイクロ波の吸収の小さい
(すなわち、誘電正接(tan δ)が小さい)ものが望ま
しい。さらに、開口207とマイクロ波アプリケーター
213とが接触する箇所においては、復元力をもつリン
青銅製のスパイラル状ワイヤーをEMIシールド部材2
11として使用して電気的接触をとることが望ましい。
【0135】基板201としては、金属などマイクロ波
の反射体が選択される。ここで基板201の幅は放電容
器205の幅よりも一般に小さいため間隙が生じ、この
感激からマイクロ波およびプラズマが放電容器205の
外部に漏洩することになる。このことは、放電容器2
05内部の圧力制御、放電の安定維持、放電開始の
容易さ、安全性およびメンテナンス性の観点から好
ましくない。そこで図示した装置では、この間隙の部分
にマイクロ波漏洩防止板212a,212bを設置し、
上記の不都合を回避している。
【0136】図8においては、放電容器205のサイズ
は、例えば220(D)×140(H)×400(W)
[単位mm]であって、350mm幅の基板201に対
応できる。この基板201に対してその幅方向に均一な
成膜を行うため、図8に示す通り、放電容器205の幅
方向の両端に対向するように2つのマイクロ波アプリケ
ーター213を配置し、マイクロ波電力密度が放電容器
205内で均一になるよう成膜条件が設定されている。
この対向する2つのマイクロ波アプリケーター213
は、その対称軸を一致させ、同時に対称軸が基板201
と平行になるよう開口207を介して配置される。そし
てこの対称軸上にバイアス電極206を配置する。バイ
アス電極206は、絶縁ブッシュ221を介して放電容
器205に固定されている。このバイアス電極206は
T字形の棒状構造であって、円形誘電体窓204近傍の
バイアス電極206端部には、図9に示すように、円盤
222が取り付けられている。バイアス電極206は、
直流もしくは交流のバイアス電源208に接続されてい
る。円盤222の直径φは、マイクロ波の波長をλとす
るとき、λ/10≦φ≦λ/6を満たしている。
【0137】放電容器205に成膜用の原料ガスを導入
するために、放電容器205の底面部にガス導入ノズル
209が設けられている。底面にガス導入ノズル209
を設けるのは、放電容器205内にあってガス導入ノズ
ル209と基板201との距離を最大にして、原料ガス
の拡散を促進させ、基板201上に形成される堆積膜の
幅方向の膜質および膜厚の均一性を良好とするものであ
る。
【0138】この放電容器205に導入された成膜ガス
は、マイクロ波電力で解離して所望の堆積膜と反応生成
ガスとになり、その反応生成ガスは、ガス排気口210
を介して不図示の真空ポンプによって排気される。この
ガス排気口210は、放電容器205の側壁面上に多数
設けられた孔である。すなわちこのマイクロ波プラズマ
CVD装置200では、放電容器205の底面部より成
膜用の原料ガスが導入され、反応生成ガスは放電容器2
05の両側面上に設けられた多数のガス排気口210を
介して換気される。
【0139】基板201は、不図示の搬送機構によっ
て、図8中の左上から右下方向へ搬送されている。この
とき、基板201を搬送するための搬送ローラーは、基
板201の非成膜面側のみに接触することが望ましい。
そのためには、米国特許4,485,125号公報に提案されて
いるように、基板201をカテナリー状に徐々に湾曲さ
せて適当な張力を加えればよい。これについては図10
を参照して説明する。
【0140】図10は、図8に示したものと同様のマイ
クロ波プラズマCVD装置229を組み込んだ連続堆積
膜形成装置230の構成を示す図である。この連続堆積
膜形成装置230は、pin接合を有する半導体素子を
帯状の基板264上に形成するのに適したものであり、
基板送り出し容器231、第1のドープ層形成用真空容
器232、マイクロ波プラズマCVD装置229、第2
のドープ層形成用真空容器233、基板巻取り容器23
4を4個のガスゲート210〜213によって直列に接
続した構成となっている。ガスゲート240〜243
は、各真空容器に導入された異なる成膜ガスが隣接する
真空容器に拡散しないするためのものでり、ガス分離機
能を生みだすために、ガス導入管254〜257が接続
されこれを介して分離用ガスが流されている。分離用の
ガスの流量は、隣接する真空容器間の圧力差・ガスゲー
トの寸法・分離用ガス種・クロスコンタミネーション許
容量・真空ポンプの性能などに依存するので、適宜調整
することが望ましい。
【0141】基板送り出し容器231は、帯状の基板2
64を格納して基板巻取り容器234に向けて送り出す
ためのものであり、基板264が巻かれるボビン263
が装着される。また、基板送り出し容器231には、図
示しない排気手段に接続された排気管258が取り付け
られている。さらに、基板送り出し容器231には、圧
力計244、基板264を支持、搬送するため搬送ロー
ラ266が設けられている。なお、ボビン263には、
基板264を送り出すための、図示しない基板送り出し
機構が接続されている。
【0142】第1および第2のドープ層形成用真空容器
232,233は、同一の構造であって、ラジオ周波数
の高周波によるプラズマCVD法によって、p型あるい
はn型の半導体層を形成するためのものである。各ドー
プ層形成用真空容器232,233には、成膜室279,
281を有し、図示しない排気手段に接続された排気管
259,261がそれぞれ取り付けられている。各成膜
室279,281には、それぞれ、真空計245,24
9、高周波電源277,278に接続されたカソード電
極238,239、原料ガスを導入するためのガス導入
管251,253、基板264を加熱するための温度制
御機構235,237が設けられている。さらに、第1
のドープ層形成用真空容器232の両端部には、基板2
64を支持するための搬送ローラ267,268が設け
られ、同様に第2のドープ層形成用真空容器233にも
搬送ローラ274,275が設けられている。
【0143】マイクロ波プラズマCVD装置229は、
図8に示したマイクロ波プラズマCVD装置200を3
台直列に接続して共通の真空容器に格納した構成であ
る。すなわち、図8の装置における放電容器205を成
膜室280とし、3個の成膜室280を隣接するように
してつなげてある。当然のことながら各成膜室280に
は、例えば周波数2.45MHzのマイクロ波電力が投
入され、かつガス導入管252を介して原料ガスが供給
されている。さらに、各成膜室280をまたがって移動
する基板264を保持するための搬送ローラ269〜2
73と、基板264を加熱するための温度制御機構23
6が設けられている。また、各成膜室280ごとに、真
空計246〜248がそれぞれ設けられている。
【0144】基板巻取り容器234は、堆積膜が形成さ
れた帯状の基板264を巻取るためのものであり、基板
送り出し容器231と同様の構成である。すなわち、排
気管262を介して排気され、搬送ローラ276と真空
計250とボビン265を有している。ただし基板26
4を巻取るため、ボビン265には、図示しない基板巻
取り機構が接続されるようになっている。
【0145】以上、この連続堆積膜形成装置230の構
成について説明したが、マイクロ波プラズマCVD装置
229を始めとする各真空容器には不図示の真空ポンプ
がそれぞれ接続され、各真空容器内を独立に真空にする
ことが可能であり、各真空容器内の圧力も真空計244
〜250の信号をモニターすることによって自動的に制
御される。
【0146】基板264は、基板巻取りボビン265を
基板巻取り容器234の外部より駆動することによって
矢印の方向に搬送される。このとき、基板繰出しボビン
263に適宜制動力を加えることにより、基板の送り出
し容器231と基板巻取り容器234の間にある基板2
64の張力を制御することができる。図10に示される
ように、基板264は、各搬送ローラ266〜276に
よって支持されることにより、成膜面側を外側にして湾
曲して基板送り出し容器231から基板巻取り容器23
4にまではりわたされるようになっている。このように
して移動する基板364は、各ドープ層形成用真空容器
232,233やマイクロ波プラズマCVD装置229
において、所望の膜質の堆積膜を形成するため温度制御
機構235〜237によって所定の温度に保たれる。各
真空容器内に導入された成膜ガスは、高周波電力あるい
はマイクロ波によって解離させられ、所望する堆積膜と
反応生成ガスに分解される。この反応生成ガスは、前述
のガスゲートの分離用ガスと共に、排気管259〜26
1を介して不図示の真空ポンプで排気される。本装置に
おいては、各ドープ層形成用真空容器232,233で
は周波数13.56MHzのRFプラズマCVD法によ
って堆積膜を形成しているが、もちろん、マイクロ波プ
ラズマCVD法を用いてもよい。
【0147】次に、この連続堆積膜形成装置230の動
作について説明する。連続堆積膜形成装置230の動作
は、概ね、次の手順にしたがって行われる。 (1) 所定の洗浄を完了した基板264の取付け (2) 大気中での基板264の搬送、搬送確認および搬送
停止 (3) 各真空容器の排気 (4) 成膜ガスの成膜室279〜281内への導入 (5) 基板264の温度制御 (6) 高周波あるいはマイクロ波による放電(成膜工程そ
の1) (7) 基板264の搬送(成膜工程その2) (8) 基板264の冷却および搬送停止 (9) 成膜ガスの導入停止 (10)成膜室279〜281の窒素リーク (11)基板264の取出し 以下、上記(1)〜(11)の各手順について詳しく説明す
る。
【0148】 (1) 所定の洗浄を完了した基板264の取付け 送り出し側のボビン263に巻付けられた基板264を
所定の位置に取付け、ボビン263を繰出しながら、各
ガスゲート240〜243、各ドープ層形成用真空容器
232,233、マイクロ波プラズマCVD装置229
の各上蓋を全て開き、この順に基板264を通す。そし
て、巻取り側のボビン265に基板264の端部を固定
して、このボビン265で基板264が巻取られるよう
準備する。このとき、搬送ローラー266〜276は全
て、基板264の非成膜面に接触していることを確認す
る。
【0149】 (2) 大気中での基板264の搬送(搬送確認) 基板264の取付けが完了したら、大気中において、基
板巻取り機構(不図示)および搬送ローラー266〜2
76などの支持・搬送手段によって連続的に支障なく帯
状基板264を搬送できるか否か確認する。ここでこの
支持・搬送手段は、前進機能と後進機能とを兼備するこ
とが望ましく、また基板264繰出し量の表示器を具備
することが望ましい。基板264を支障なく搬送できる
ことを確認した後、基板264の繰出し量の表示器を監
視しながら、基板264を初期設定位置まで戻して、そ
の位置で停止させる。
【0150】(3) 各真空容器の排気 基板264を内蔵した各真空容器すなわち各ガスゲート
240〜243、各ドープ層形成用真空容器232,2
33、マイクロ波プラズマCVD装置229の上蓋を閉
じ、真空ポンプを用いて、基板送り出し容器231、各
ドープ層形成用真空容器232,233、マイクロ波プ
ラズマCVD装置229および基板巻取り容器224容
器内の排気を行う。ロータリーポンプおよびメカニカル
ブースタポンプで粗引きした後、油拡散ポンプで本引き
するという手順で、真空容器内部の各成膜室279〜2
81の圧力が、2×10-5Torrに達するまで連続的
に排気を行う。
【0151】 (4) 成膜ガスの成膜室279〜281内への導入 ガスボンベ(不図示)からステンレス製のパイプ(不図
示)を介してガスの混合およびガス流量の精密制御を行
うミキシングパネル(不図示)にガスを導き、ミキシン
グパネル内のマスフローコントローラ(不図示)で所定
の流量に制御された成膜ガスをガス導入管251〜25
3を介して成膜室279〜281内へ導入する。このと
き、成膜室279〜281内の圧力が5×10-3Tor
r前後になるように、油拡散ポンプの排気能力および排
気管の排気コンダクタンスをあらかじめ選択するか、あ
るいはこの排気能力および排気コンダクタンスに余裕を
もたせ、自動圧力調整器などで圧力を制御する。
【0152】(5) 基板264の温度制御 成膜ガスを流しながら、温度制御機構235〜3237
で基板264を所定の温度にする。ここで、RF(ラジ
オ周波数)を用いたプラズマCVD装置(各ドープ層形
成用真空容器232,233)に比べてマイクロ波プラ
ズマCVD装置229では、電子密度および電子温度が
ともに高いため、プラズマからの熱で基板264の温度
が上昇しやすい。また、投入するマイクロ波電力に応じ
て、基板264の平衡温度が決まる。例えば、基板26
4として幅430mmの材質SUS430BA(ブライ
トアニール)のものを用い、成膜室380の寸法を22
0D×140H×400W[単位mm]とし、SiH4
を270sccm流しながら内圧5×10-3Torrで
成膜を行なった場合の基板264の平衡温度は、表3に
示す通りである。
【0153】
【表3】 表3に示した平衡温度と同じかまたはそれ以上の温度を
基板264の所望の成膜温度とすることができる。した
がって、基板264の材質、表面処理、成膜室の寸法、
ガス流量、成膜室内の圧力が異なる場合には、適宜同様
にして帯状基板264の平衡温度を測定することによ
り、基板264の所望の成膜温度を設定することができ
る。
【0154】(6) 高周波あるいはマイクロ波による放電
(成膜工程その1) RF(ラジオ周波数)電源またはマイクロ波電源から高
周波を発信させ、同軸ケーブルまたは導波管を介して成
膜室279〜281内にRF電力またはマイクロ波電力
を投入する。そして成膜室279〜281内に放電を生
起させて、その結果生ずるラジカルを利用して成膜室2
79〜281内の基板264の表面に均一な堆積膜を形
成する。
【0155】(7) 基板264の搬送(成膜工程その2) 前述した「高周波またはマイクロ波による放電」により
成膜が開始され、放電で生ずるプラズマ発光が安定な状
態に達した後、基板264の表面上に広く堆積膜を形成
させるため、基板264を搬送する。その搬送速度は、
堆積膜の膜厚、堆積速度および成膜室280の幅で決ま
る。すなわち、堆積膜の膜厚が2000Å、堆積速度が
100Å/secの場合、成膜室280内の滞留時間が
2000÷100=20secであればよい。したがっ
て、図8に示すような1個のマイクロ波の放電容器20
5が1個で成膜する場合、搬送速度は、 220mm÷20sec=11mm/sec =66cm/min≒0.7m/min となる。一方、図10に示すように3個の放電容器20
5で堆積速度20Å/secで膜厚2000Åを成膜す
る場合、搬送速度は 220mm×3÷100=6.6mm/sec ≒0.4m/min とすればよい。以上のような搬送速度で基板264を連
続的に搬送することにより、基板264の表面上に広く
所望の堆積膜を形成することができる。
【0156】(8) 基板264の冷却および搬送停止 前述のように基板264を搬送しながら連続的に堆積膜
を形成し、送り出し側のボビン263に巻付けられた基
板264の残量がほとんどなくなったら、基板264の
搬送、マイクロ波放電および温度制御を停止する。ここ
で、ボビン263に巻付けられた基板264の残量を検
知するためには、前述した基板264の繰出し長表示器
やボビン263の外径検知などを用いればよい。また、
成膜が完了した基板264を真空容器外部に取出すため
には、予め基板264を冷却しなければならない。この
冷却による堆積膜の剥離を防止するためには、徐冷する
ことが望ましく、マイクロ波放電を止めた後も暫く成膜
ガスを流しておく。
【0157】(9) 成膜ガスの導入停止 成膜ガスを5分程度流した後、成膜ガスの導入を停止し
てHeガスを500sccm程度の流量で流す。基板2
64の表面温度が70℃程度になったところで、Heガ
スの導入を停止した後、残留ガスを排気して成膜室27
9〜281内の圧力が2×10-5Torrに達するまで
排気を続ける。
【0158】(10)成膜室279〜281の窒素リーク 成膜室279〜281内の圧力を2×10-5Torrか
ら大気圧に戻すために、乾燥窒素を成膜室279〜28
1内に導入し、成膜室279〜281内の圧力が大気圧
になったことをブルドン管式圧力計(不図示)で確認し
た後、各不純物形成用真空容器232,233とマイク
ロ波プラズマCVD装置299の蓋を開き、成膜が完了
した基板264を取出す。
【0159】(11)基板264の取出し 基板264の取出し方法は、概ね次の2通りである。 (a) 1ロール分の基板264を全て巻取り側のボビン2
65に巻取り、繰出し側のボビン263を空にした後、
両方のボビン263,265を取出す。 (b) 繰出し側のボビン263に未だ残量があるときに
は、基板264を切断し、繰出し側のボビン263を別
の基板で巻かれている繰出し用のボビン263と交換し
て、新規の基板264の端部と切断された基板264の
切断部とを接合する。そして、この接合線が巻き取り側
のボビン265近傍にくるまで新規の基板264を搬送
した後、再びこの接合線で基板264を切断する。切断
後に、成膜後の基板264が巻取られたボビン265を
取出し、別の巻取り用のボビン265を取付ける。
【0160】この2通りの取出し方法のいずれがよいか
は、装置の長さや円筒状の成膜室の数によるため、適宜
選択することが望ましい。 (製造例2−1)次に、図10に示した示した連続堆積
膜形成装置230を用いて、アモルファスシリコン膜の
連続堆積を行った例を説明する。マイクロ波電力を投入
する手段としては、図9に示したものを用いた。成膜手
順は上述の通りであり、成膜条件を表4に示す通りであ
る。
【0161】
【表4】 このようにして得られた堆積膜について、膜厚のばらつ
き(膜厚分布)、堆積速度、赤外吸収スペクトル、RH
EED(反射高エネルギー電子回折)および膜中の量の
定量とを行なった。その結果を表5に示す。なお膜厚分
布は、1m間隔で28点の膜厚を測定し、そのばらつき
から調べた。
【0162】
【表5】 なお、赤外吸収スペクトルの測定には反射型FT−IR
装置(パーキン・エルマー社製、1720X)を用い、
RHEEDの測定には日本電子製JEM−100SX、
水素の定量には金属中水素分析計(堀場製作所製、EM
GA−1100)を用いた。 (製造例2−2)製造例2−1と同じ装置を同じ手順で
操作し、SiH4 ガスを流量150sccmで、GeH
4 ガスを流量120sccmで、Heガスを流量80s
ccmで成膜室280内にそれぞれ導入し、成膜室28
0内部の圧力を11mTorrに保持し、マイクロ波の
実効電力1.3kWで成膜する以外は同様の堆積膜形成
条件で、アモルファスシリコンゲルマニウム(a−Si
Ge:H)膜の連続堆積を行った。そして、製造例2−
1と同様に、基板264を取出して各種測定を行った。
その結果は表5に示すとおりであり、a−SiGe:H
膜特有の吸収パターンが認められた。
【0163】(実施例2−2)上述の実施例2−1には
種々の変形実施例が可能である。図11は、基板がΩ字
状に湾曲しながら搬送される例を示している。可撓性に
富む帯状の基板291は、搬送ローラ292で進路を曲
げられ、搬送リング293a,293bに両端を支えら
れながら円筒状の成膜室294すなわち放電容器を形成
し、再び搬送ローラー295で進路を曲げられもとの進
路に戻る。このように基板291で形成された成膜室2
94は、その両端部からマイクロ波アプリケータ213
が挿入され、成膜室294内部でマイクロ波プラズマ放
電が生起するようになっている。さらに、上述の実施例
2−1の場合と同様に、対向するマイクロ波アプリケー
タ213間に、バイアス電極206が配置されている。
【0164】この装置では、基板291のプラズマにさ
らされる面が円筒面であり、バイアス電極206がその
中心軸上に置かれているため、バイアス電界が対称に作
用し、より均一な成膜が行える。この装置の動作は、図
8に示したものの動作と本質的に同じなので、説明を省
略する。 (実施例2−3)図8に示したものでは放電容器205
の形状が角型であったが、図12に示したものでは、断
面がU字型の放電容器297が使用されている。
【0165】堆積膜が形成される基板(不図示)は、放
電容器297の開口部に沿って、放電容器297の長手
方向とは直角の方向に移動する。放電容器297の長手
方向の両端には、マイクロ波導入用の開口298が設け
られ、ここにマイクロ波アプリケータ213が挿入され
るようになっている。実施例2−1の場合と同様に、対
向するマイクロ波アプリケータ213の間に、バイアス
電極206が設けられている。
【0166】この装置では、開口298とマイクロ波ア
プリケーター113との電気的接触には、アルミ環29
9をEMIシールド211(図8)の代用として使用し
ている。マイクロ波プラズマCVD法の場合、60Å/
sec〜100Å/secという高速の堆積速度で成膜
が行われ、放電容器297の壁面上にも同じ速度で堆積
膜が形成される。したがって、その堆積膜を除去するた
め、放電容器297が着脱容易である必要がある。そこ
でEMIシールドに比べて着脱容易であるアルミ環29
9をマイクロ波漏洩防止のために設けてある。この装置
の動作も図8に示したものと本質的に変わるところはな
い。
【0167】(実施例2−4)以上の実施例2−1〜2
−3では帯状の基板上に堆積膜を形成していたが、バイ
アス電極の形状の工夫によって良質な堆積膜を得る本発
明の手法は、円筒形の基体上に堆積膜を形成する場合に
も有効である。図13に示すものは、円筒形の基体18
5の上に堆積膜を形成する装置の概略断面図である。
【0168】真空気密可能な堆積膜形成容器181の側
面には排気管184が一体的に形成され、排気管184
の他端は図示しない真空ポンプに接続されている。堆積
膜形成容器181の上面と下面の中央部にはそれぞれマ
イクロ波アプリケータ183が取り付けられている。マ
イクロ波アプリケータ183の先端側は、誘電体窓18
2となっている。堆積膜形成容器181の中心部を取り
囲むように、堆積膜の形成される6本の円筒状の基体1
85が相互に平行になるように配置されている。基体1
85はそれぞれ回転軸188によって保持され、かつそ
の内部には同軸状に円筒状の発熱体187が配設されて
おり、この発熱体187によって内部から加熱されるよ
うになっている。回転軸188は、堆積膜形成容器18
1に対して回転自在に取り付けられ、一端が減速ギア1
90を介して基体185回転用のモータ189に接続し
ている。
【0169】堆積膜形成容器181内の各基体185と
各誘電体窓182とで囲まれた部分が成膜空間186で
あり、各マイクロ波アプリケータ183からのマイクロ
波によって、この成膜空間186にマイクロ波グロー放
電が生起する。放電空間186の中央部に、基体185
と平行に、バイアス電極191が設けられている。バイ
アス電極191は、上述の実施例2−1〜2−3と同様
に、対向するマイクロ波アプリケータ183の中心軸上
に設けられ、かつ先端の誘電体窓185に対向する部分
には、円盤が設けられている。バイアス電極191は、
外部のバイアス電源192に接続されている。またバイ
アス電極191は中空の管状構造であって、多数のガス
放出孔を有し、成膜空間186に原料ガスを放出するガ
ス放出手段をも兼ね、図示しない原料ガス供給源にも接
続されている。
【0170】この堆積膜形成装置は、金属製の基体18
5の上に比較的抵抗の高いあるいは絶縁性の堆積膜を形
成する場合に特に有効である。従来のこの種の堆積膜形
成装置では、基体の上端部あるいは下端部からしばしば
スパーク(火花放電)が飛ぶことがあったが、図13に
示すような構成とすることにより、スパーク発生頻度が
減り、安定した放電が得られるようになる。
【0171】《実施例3》次に、本発明の3番目の実施
例について説明する。図14は、本発明の3番目の実施
例での堆積膜形成方法の実施に使用されるマイクロ波プ
ラズマCVD装置の構成を示す図である。図14におい
て、スリット状開口部304,305を介して直列に接
続された3個の成膜容器301〜303は、それぞれ真
空気密構造をなしている。各スリット状開口部304,
305には、成膜容器301〜303間で互いに原料ガ
スの混入を抑えるために、不活性ガスを噴射するゲート
ガス導入手段(不図示)がそれぞれ設けられている。ス
リット状開口部304,305の具体例としては、米国
特許出願番号204,493号などに記載されているガスゲー
トが挙げられる。これら各成膜容器301〜303およ
びスリット状開口部304,305を貫通するようにし
て長尺の帯状の基板306が配置されている。基板30
6は、長手方向に連続的に搬送可能なものであって、送
り出し室324内に設けられた接地された送り出しロー
ラ307から繰り出され、巻取り室325内に設けられ
た巻取りローラ308に巻取られるようになっている。
送り出し室324と巻取り室325は、それぞれ排気装
置326,327に連通している。
【0172】各成膜容器301〜303は、それぞれ、
排気口318〜320を介して排気装置321〜323
に連通している。また、各成膜容器301〜303に
は、基体306を加熱するためのランプヒータ309〜
311と誘電体窓315〜317が設けられている。各
誘電体窓315〜317は、マイクロ波電力を成膜容器
内に効率よく透過しかつ真空気密を保持し得るような材
料、例えば石英ガラス、アルミナセラミックスなどで形
成されている。この誘電体窓315〜317の成膜容器
外側には、マイクロ波の伝送路であって主として金属製
である導波管(不図示)が接続され、整合アイソレータ
(不図示)を介してマイクロ波電源(不図示)に接続さ
れている。さらに、図示左右の2個の成膜容器301,
303には原料ガス供給管312,313が設けられ、
図示中央の成膜容器302には原料ガス供給管を兼ねバ
イアス電圧を印加するためのバイアス電圧印加棒314
が設けられている。
【0173】直列に接続された成膜容器301〜303
のうち中央の成膜容器302には、図示しない直流バイ
アス電源に接続されたバイアス印加用の電極328,3
29が設けられている。図15は、この成膜容器302
の要部を拡大して示す模式図である。成膜容器302と
ガスゲート304,305との接続部は、基板306の
幅より長い直角状の稜部となっているが、この稜部に断
面が逆L字型の絶縁体330,331が取り付けられ、
この絶縁体330,331に電極328,329が取り付
けられている。絶縁体330,331は、各稜部を覆う
ように、基板306の幅方向に延びており、このため電
極328,329は基板306の幅方向に延びてかつこ
の基板306に近接している。このとき、電極328,
329と、成膜容器302の端部の側壁との距離は、約
20mm以下となっている。なお、この成膜容器302
におけるバイアス電圧印加棒314は、貫通孔を有する
T字型の中空の管によって構成されている。
【0174】このマイクロ波プラズマCVD装置による
堆積膜形成は以下のようにして行なわれる。すなわち排
気装置321〜323により、それぞれ成膜容器301
〜303内を排気して所望の圧力に調整する。次いでラ
ンプヒータ309〜311に通電して、基板306の温
度を膜堆積に好適な温度に加熱保持する。このとき基板
306は、送り出しローラ307から巻き取りローラ3
08へと好適な速度で搬送されている。原料ガス供給管
312,313と原料ガス供給管を兼ねたバイアス電圧
印加棒314を介して、例えばpin構造の光起電力素
子を形成する場合であれば、それぞれ、シラン(SiH
4)ガスとジボラン(B26)ガスの混合ガスなど、シ
ランガスなど、シランガスとホスフィン(PH3)ガス
の混合ガスなどを成膜容器301〜303に導入する。
中央の成膜容器302(pin構造の光起電力素子を製
造する場合であれば、i型半導体層を形成するための成
膜容器)については、バイアス印加棒314と各電極3
28,329のそれぞれに適当な直流バイアスを印加す
る。この場合、電極328,329に加えられるバイア
スの電位は等しくなっているが、相互に異ならせるよう
にしてもよい。さらに、それと同時平行的にマイクロ波
電源(不図示)を作動させて周波数500MHz以上の
好ましくは2.45GHzのマイクロ波を発生させ、そ
のマイクロ波を導波管(不図示)を通じ誘電体窓315
〜317を介して成膜容器301〜303内にそれぞれ
導入する。かくして成膜容器301〜303内の原料ガ
スはマイクロ波のエネルギーにより励起されて解離し、
基板306の表面にp型半導体層、i型半導体層、n型
半導体層と順次堆積膜が形成されることになる。
【0175】この装置では、成膜空間の端部付近に好適
なバイアス電圧を印加することが可能となるので、連続
的に搬送される基板306に対し、成膜容器302の入
口付近から出口付近にわたって、良好な特性を持つ堆積
膜を形成することが可能となった。上述のようにpin
構造の光起電力素子を製造する場合、i型半導体層の特
性が向上して、光起電力素子として優れた特性を持つも
のを製造できるようになる。さらに、電極328,32
9のシールド効果により、隣接する成膜容器間の荷電粒
子の相互拡散などが抑止され、より良好な堆積膜が得ら
れることになる。
【0176】次に、本実施例について行なった実験につ
いて、具体的に数値を挙げて説明する。 (実験例3−1)図14に示した堆積膜形成装置を用い
て、上述の図52(a)に示した層構成のpin型アモル
ファスシリコン太陽電池を連続的に作成した。基板90
1としては、SUS430BA製の帯状の基板を用い、
下部電極902としてはアルミニウムとクロムの2層構
成のものを用いた。n型半導体層903はn型アモルフ
ァスシリコン(n−Si)層で、i型半導体層904は
i型アモルファスシリコン(a−Si)層で、p型半導
体層905はp型微結晶シリコン(p型μx−Si)層
でそれぞれ構成した。また、透明電極906としてはI
TO(In23+SnO2)膜を使用し、集電電極90
7としてはアルミニウムを使用した。
【0177】まず、ステンレス製の帯状の基板(基板9
01)を十分に洗浄、脱脂したのち、連続式真空蒸着装
置(不図示)を用いてAlとCrを連続蒸着し、下部電
極902を形成した。下部電極902までが形成された
帯状の基板を図14に示す装置に、下部電極902の形
成された面が図中下を向くように装着し、表6に示す成
膜条件で、n型半導体層903(n−Si層;膜厚30
0Å)、i型半導体層904(i−Si層;膜厚400
0Å)、p型半導体層905(p型μx−Si層;膜厚
100Å)の順に堆積膜を連続して積層形成した。この
とき、i型半導体層904を形成する成膜容器302に
おいて、バイアス電圧印加棒314には80Vの直流バ
イアスを印加した。また、各電極328,329に印加
する直流バイアス電圧は、0Vから50Vまで10V刻
みで変化させ、それぞれの直流バイアスの条件ごとに太
陽電池を作成した。なお、n型半導体層903とp型半
導体層905にそれぞれ対応する成膜容器301,30
3では、直流バイアス電圧の印加を行なっていない。n
型半導体層903、i型半導体層904、p型半導体層
905の成膜速度は、それぞれ20Å/s、100Å/
s、6Å/sであり、電極328,329に印加した直
流バイアスの値とは無関係であった。
【0178】
【表6】
【0179】そして、p型半導体層905の上に、IT
O膜を蒸着して透明電極906を形成し、Alを蒸着し
て集電電極907を形成し、さらに表面保護層(不図
示)として樹脂を塗布し、太陽電池を完成させた。この
ようにして得られた太陽電池について、AM値が1.5
であるソーラーシミュレータからの100mW/cm2
の擬似太陽光を照射し、光電変換効率を求めた。図16
は、i型半導体層904形成用の成膜容器302におけ
る電極328,329に対する直流バイアスの値と光電
変換効率との関係を示すグラフである。
【0180】これらの結果から、成膜容器302端部に
設置した電極328,329から直流バイアスを印加し
た方が、印加しない場合に比べ、光電変換効率が向上し
た。これは、成膜容器302端部付近の基板306に不
足していた電界が補われたことで、陽イオンがその部分
の基板306表面に衝突しアニール効果が増加して、堆
積膜界面での膜質が向上したためと考えられる。この効
果は、直流バイアスが20Vのときにほぼ最大に達し、
40Vまではやや減少するものの直流バイアスを印加し
ない場合に比べ光電変換効率は高かった。これは、基板
に対する陽イオンの衝突が過剰になり、衝突による膜中
のダングリングボンドの発生のなどの構造破壊による劣
化の影響が無視できなくなるためと考えられる。40V
を越える直流バイアスを印加するとスパークが多発し、
放電が安定しなかった。
【0181】また、堆積膜形成中の各成膜容器301〜
303内の不純物濃度を光イオン化質量分析計(ULV
AC社製、MSQ−400型)によって測定した。成膜
容器302の電極328,329に直流バイアスを印加
しなかった場合には、他の成膜容器から混入した原料ガ
スが102ppmのオーダーで検出されたのに対し、直
流バイアスを10V以上印加した場合には、他の成膜容
器から混入した原料ガスの濃度は10ppmのオーダー
であった。このことより、電極328,329への直流
バイアスの印加によって、成膜容器間の原料ガスの混入
を抑えられることが確かめられた。 (実験例3−2)i型半導体層904を膜厚3000Å
のi型アモルファスSiC(i−SiC)層とし、p型
半導体層905を膜厚100Åのi型微結晶SiC(p
型μx−SiC)層としたこと以外は実験例3−1と同
様にして、太陽電池を作成した。作成時の成膜条件は表
7に示すとおりであり、また、i型半導体層904に対
応する成膜容器302において、各電極328,329
に加える直流バイアス電圧を0Vから50Vまで10V
刻みで変えて太陽電池を作成したことも同様である。
【0182】その結果、n型半導体層903、i型半導
体層904、p型半導体層905の成膜速度は、それぞ
れ13Å/s、75Å/s、4Å/sであり、電極12
8,129に印加した直流バイアスの値とは無関係であ
った。また、実験例3−1と同様にして作成した太陽電
池の光電変換効率を測定したところ、電極328,32
9に直流バイアスを印加した方が、印加しない場合に比
べ、光電変換効率が高かった。直流バイアスの値と光電
変換効率との関係も実験例3−1と同様のものであっ
て、値20Vで光電変換効率が最大となり、40Vに向
けて徐々に光電変換効率が低下した。
【0183】
【表7】
【0184】さらに、AM値1.5、エネルギー密度1
00mW/cm2の擬似太陽光に500時間連続して照
射したのちの光電変換効率を測定したところ、初期値
(擬似太陽光を照射する前の値)に比べ変化は9%以内
に納まり、変化率への直流バイアス値による影響は認め
られなかった。 (実験例3−3)図14に示す堆積膜形成装置では、巻
き出し室324と巻き取り室325の間に、3個の成膜
容器301〜303が直列に設けられているが、この3
個の成膜容器301〜303をさらに反復して設けた構
成の堆積膜形成装置(成膜容器は合計6個)を使用し、
図52(c)に示すタンデム構成の太陽電池を作成した。
【0185】基板901としてはステンレス製の帯状基
材、下部電極502としてはアルミニウム引出し電極と
銀反射層の2層で構成されるものを使用した。第1のp
in接合911において、n型半導体層903としてn
型アモルファスシリコン(n−Si)層を使用し、i型
半導体層904としてi型アモルファスシリコンゲルマ
ニウム(i−SiGe)層を用い、p型半導体層905
としてp型微結晶シリコン(p型μx−Si)層を使用
した。第2のpin接合912において、n型半導体層
903としてn型アモルファスシリコン(n−Si)層
を使用し、i型半導体層904としてi型アモルファス
シリコン(i−Si)層を用い、p型半導体層905と
してp型微結晶シリコン(p型μx−Si)層を使用し
た。
【0186】各層の成膜条件は表8に示すとおりであ
り、実験例2−1と同様の手順によって太陽電池を作成
した。第1および第2のpin結合911,912にお
けるi型半導体層904の堆積に使用する成膜容器は、
実験例3−1における成膜容器302と同様にものとし
て、成膜中に直流バイアス電圧を印加するようにした。
第2のpin接合912側のi型半導体層903(i−
Si層)に対しては、実験例3−1の結果より、バイア
ス印加棒314に印加する直流バイアスを80Vとし、
各電極328,329に印加する直流バイアス電圧を2
0Vとした。第1のpin接合911側のi型半導体層
904(i−SiGe層)に対しては、バイアス印加棒
314に加える直流バイアスを90Vとし、電極32
8,329に印加する直流バイアスを0Vから50Vま
で10V刻みで変化させてそれぞれ太陽電池を作成し
た。
【0187】
【表8】
【0188】その結果、第1のpin接合911につい
て、n型半導体層903、i型半導体層904、p型半
導体層905の成膜速度は、それぞれ13Å/s、75
Å/s、4Å/sであり、第2のpin接合912につ
いて、n型半導体層903、i型半導体層904、p型
半導体層905の成膜速度は、それぞれ11Å/s、1
25Å/s、4Å/sであり、いずれも電極328,3
29に印加した直流バイアスの値とは無関係であった。
また、実験例3−1と同様に光電変換効率を測定したと
ころ、第1のpin接合側911のi型半導体層904
(i−SiGe層)の堆積に際して電極328,329
に直流バイアスを印加したものの方が、印加しないもの
に比べ、光電変換効率が向上した。また、直流バイアス
の値と光電変換効率との関係についても、実験例3−1
や3−2と同様の傾向が認められた。
【0189】さらに、AM値1.5、エネルギー密度1
00mW/cm2の擬似太陽光に500時間連続して照
射したのちの光電変換効率を測定したところ、初期値
(擬似太陽光を照射する前の値)に比べ変化は9%以内
に納まり、変化率への直流バイアス値による影響は認め
られなかった。 《実施例4》図17は、本発明の一実施例の堆積膜形成
方法の実施に使用される堆積膜形成装置の構成を示す概
略断面図、図18は図17に示す堆積膜形成装置を組み
込んだ連続堆積膜形成装置の構成を示す概略断面図であ
る。
【0190】図17に示す堆積膜形成装置400は、概
ね直方体形状であって図示しない排気手段によって排気
可能な真空容器401と、この真空容器401内に設け
られた成膜容器402とからなる。成膜容器402は、
上面の全面が開口した概ね直方体形状の容器である。成
膜容器402の側壁および底壁は、電気絶縁性の材料か
らなる内壁402aと金属からなる外壁402bとによ
る2重構造となっており、外壁402bは接地されてい
る。堆積膜の形成される長尺の帯状の基板404は、真
空容器401の図示左側すなわち搬入側の側壁に取り付
けられたガスゲート412を経てこの真空容器401内
に導入され、成膜容器402に対向する位置を通り、真
空容器401の図示右側すなわち搬出側の側壁に取り付
けられたガスゲート412を通って真空容器401の外
部に排出されるようになっている。各ガスゲート412
には、ゲートガスを供給するためのゲートガス供給管4
13が接続されている。そして、基板404は、搬入側
のガスゲート412に接続された基板送り出し容器(不
図示)から、搬出側のガスゲート412に接続された基
板巻取り容器(不図示)に向けて、連続的に移動させら
れるようになっている。このとき真空容器401内にお
いて、基板404は、成膜容器402の開口面に対して
わずかの間隔を開けつつ平行に移動する。基板404と
成膜容器402の開口面との間隔を一定に保つため、基
板404を保持するマグネットローラ414が真空容器
401内に設けられている。
【0191】成膜容器402の側壁のうち基板404の
移動方向に沿って延びる側壁には、片側について2個、
合計4個のアプリケータ405が取り付けられている。
アプリケータ405は成膜容器402内にマイクロ波エ
ネルギーを導入するためのものであり、図示しないマイ
クロ波電源に導波管(不図示)を介して接続されてい
る。また各アプリケータ405の成膜容器402への取
り付け部位は、それぞれ、マイクロ波を透過する材料か
らなるマイクロ波導入窓となっている。さらに成膜容器
402内に原料ガスを導入するための原料ガス導入管が
設けられている。両側の側壁にそれぞれ設けられたアプ
リケータ405は、相互に向い合って設けられている。
そして、対向するアプリケータ405を結ぶようにし
て、基板404の表面に対して平行に延びるバイアス棒
406が設けられている。バイアス棒406は図示しな
いバイアス電圧印加手段に接続されており、成膜時に基
板404に対してバイアス電位を加えるためのものであ
る。
【0192】基板404をはさんで成膜容器402の開
口面に対向するようにして、多数の赤外線ランプヒータ
407と、赤外線ランプヒータ407からの放射熱を効
率良く基板に404に集中させるためのリフレクタ41
6が設けられている。これら赤外線ランプヒータ407
とリフレクタ416とによって、成膜中の基板404を
加熱する基板ヒートゾーン409が構成される。さら
に、この基板ヒートゾーン409の上流側(搬入側)に
は、成膜される直前の基板404を予備加熱するための
プレヒートゾーン410が設けられている。プレヒート
ゾーン410の構成は基板ヒートゾーン409と同様で
ある。予備加熱中および成膜中の基板404の温度を監
視するための熱電対411が、基板404に接触するよ
うに、プレヒートゾーン410と基板ヒートゾーン40
9のそれぞれに設けられている。
【0193】帯状の基板404は、成膜容器402に対
向しながら移動するわけであるが、成膜容器402の両
端部には、それぞれ成膜容器402の外側に向って、基
板404の表面に近接して対向するガード電極408が
設けられている。ガード電極408は成膜容器402の
外壁402aと電気的に接続されており、結果として接
地電位にある。ガード電極408は、成膜容器402か
らの、放電エネルギーや生成したプラズマの漏洩を防ぐ
ためのものである。
【0194】次に、この堆積膜形成装置400の動作に
ついて説明する。まず、堆積膜形成装置400を貫通す
るように、搬入側のガスゲート412に接続された基板
送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲート41
2に接続された基板巻取り容器(不図示)にまで、帯状
の基板104を張りわたし、真空容器401、成膜容器
402内を真空に排気する。所定の真空度に到達した
ら、各ゲートガス供給管413からゲートガスを各ガス
ゲート412に供給する。ゲートガスは、主として、真
空容器401に取り付けられた排気管(不図示)から排
気されることになる。
【0195】続いて、熱電対411の出力を監視しなが
ら、プレヒートゾーン410と基板ヒートゾーンの赤外
線ランプヒーター407を作動させることにより、基板
404を所定の温度にまで加熱する。そして原料ガス供
給管(不図示)から、堆積膜の原料となる物質を含む原
料ガスを成膜容器402内に放出させる。また、マイク
ロ波電力を各アプリケータ405に印加し、バイアス電
圧を各バイアス棒406に印加する。さらに、基板送り
出し容器(不図示)内に設けられた基板送り出し手段
(不図示)と、基板巻取り容器(不図示)内に設けられ
た基板巻取り手段(不図示)とを作動させ、基板404
を基板送り出し容器から基板巻取り容器に向けて連続的
に移動させる。
【0196】このようにすることにより、成膜容器40
2と基板404とではさまれた空間(成膜空間)におい
て、マイクロ波グロー放電が生起し、プラズマが発生
し、原料ガスがプラズマにより分解されて基板404上
に堆積膜が形成される。このとき、バイアス棒406に
よってバイアス電圧が印加されているので、バイアス電
流が流れることになるが、上述のように成膜容器402
の内壁402aは電気絶縁性の材料からなるので、成膜
容器402にバイアス電流が流れ込むことはない。した
がって、バイアス電流はバイアス棒406から基板40
4にのみ流れ込むことになる。これにより、成膜の進行
とともに成膜容器402の内壁に大量の堆積膜が形成さ
れたとしても、この堆積膜にはバイアス電流は流れ込ま
ないから、バイアス電流の変化は起こらないことにな
る。よって、絶えず安定して高品質の堆積膜を基板40
4上に連続して形成することが可能となる。なお、ガー
ド電極408が設けられているので、成膜容器402か
らのマイクロ波エネルギーやプラズマの漏洩は起こらな
い。
【0197】次に、図17に示した堆積膜形成装置40
0を組み込んだ連続堆積膜形成装置450について、図
18により説明する。この連続堆積膜形成装置450
は、pin接合を有する半導体素子を帯状の基板404
上に形成するのに適したものであり、基板送り出し容器
451、第1の真空容器452、図17に示した堆積膜
形成装置400、第2の真空容器454、基板巻取り容
器455を4個のガスゲート412によって直列に接続
した構成となっている。各ガスゲート412には、それ
ぞれゲートガスを供給するためのゲートガス供給管41
3が接続されている。
【0198】基板送り出し容器451は、基板404を
格納して基板巻取り容器455に向けて送り出すための
ものであり、基板404が巻かれるボビン456が装着
されるようになっている。基板送り出し容器451に
は、図示しない排気手段に接続された排気管(不図示)
が取り付けられている。さらに、基板送り出し容器45
1には、基板404を支持、搬送するためステアリング
ローラ457と、間紙ローラ458が設けられている。
基板404の損傷を防ぐため、ボビン406に基板40
4を巻くとき、一般に間紙が基板404とともに巻き込
まれ、基板404の隣接する巻き層間に間紙が存在する
ようになっている。この間紙ローラ458は、基板40
4をボビン456から巻き出したために不要となった間
紙を巻き取るためのものである。なお、ボビン456に
は、基板404を送り出すための、図示しない基板送り
出し機構が接続されている。
【0199】第1および第2の真空容器452,454
は、同一の構造であって、p型あるいはn型の半導体層
を形成するためのものである。各真空容器452,45
4は、図17の堆積膜形成装置400と同様の構成であ
るが、マイクロ波を導入するためのアプリケータ405
が、1対ずつしか設けられていない点で相違する。ここ
でアプリケータの対とは、成膜容器402の側壁に相互
に向い合って設けられている2個のアプリケータ405
のことを意味する。
【0200】基板巻取り容器405は、堆積膜が形成さ
れた帯状の基板404を巻取るためのものであり、基板
送り出し容器201と同様の構成である。ただし基板4
04を巻取るため、ボビン456には図示しない基板巻
取り機構が接続され、さらに間紙ローラ458はボビン
456巻き取られる基板404に対して間紙を供給する
ようになっている。
【0201】次に、この連続堆積膜形成装置450の動
作について、pin接合を有する半導体素子を形成する
場合を中心にして、説明する。まず、帯状の基板404
を基板送り出し容器451から基板巻取り容器455に
向けて張りわたす。続いて、基板送り出し容器451、
各真空容器452,454、堆積膜形成装置400、基
板巻取り容器455を排気し、所定の真空度に到達した
ら、各ガスゲート412にゲートガスを供給する。
【0202】次に、各真空容器452,454に、p型
あるいはn型の半導体層を形成するための原料ガスを供
給し、堆積膜形成装置400にi型の半導体層を形成す
るための原料ガスを供給し、さらに各真空容器452,
454、堆積膜形成装置400にマイクロ波電力を供給
し、基板404の基板送り出し容器451から基板巻取
り容器455に向けた移動を開始させることによって、
これら各真空容器452,454、堆積膜形成装置40
0においてプラズマが生起し、基板404の上に堆積膜
が形成する。基板404は、第1の真空容器452、堆
積膜形成装置400、第2の真空容器454と連続的に
移動しているので、基板404の上にpin接合を有す
る半導体素子が形成されることになる。
【0203】次に、本実施例についての実験結果につい
て説明する。 (実験例4−1)図17に示した堆積膜形成装置400
を用い、搬入側のガスゲート412、搬出側のガスゲー
ト412に、それぞれ基板送り出し容器(不図示)、基
板巻取り容器(不図示)を接続した。この基板送り出し
容器と基板巻取り容器には、帯状の基板404を繰り出
す基板送り出し機構(不図示)と、基板104を巻取る
基板巻取り機構(不図示)が、それぞれ設けられてい
る。
【0204】まず、ステンレス(SUS304BA)からなる基板
404(幅40cm×長さ200m×厚さ0.125mm)を
十分に脱脂、洗浄し、基板送り出し容器にこの基板40
4を巻いたボビン(不図示)を装着し、基板404を、
搬入側のガスゲート412、真空容器401および搬出
側のガスゲート412を介し、基板巻取り容器まで通
し、基板404がたるまないように張力調整を行なっ
た。そして、基板送り出し容器(不図示)、真空容器4
01、成膜容器402、基板巻取り容器(不図示)のそ
れぞれを、不図示のメカニカルブースターポンプ/ロー
タリーポンプで荒引きし、油拡散ポンプ(不図示)によ
って5×10-6Torr以下の高真空にまで排気した。その
のち、各赤外線ランプヒーター407を点灯させ、各熱
電対411の出力を監視しつつ、基板404の表面温度
が300℃になるように温度制御を行ない、加熱、脱ガ
スを行なった。
【0205】十分に脱ガスが行なわれたところで、表9
に示す条件により、不図示の油拡散ポンプ(不図示)を
作動させながら、原料ガス導入管(不図示)から堆積膜
形成用の原料ガスを成膜容器内に導入した。同時に、各
ゲートガス供給管413より、各ガスゲート412に、
ゲートガスとして、それぞれ流量が300sccmのH2
スを供給し、このゲートガスを、真空容器401に直接
接続された排気管(不図示)と基板送り出し容器(不図
示)と基板巻取り容器(不図示)とを介して、排気する
ようにした。この状態で、成膜容器402内の圧力をそ
れぞれ8mTorrに保持するようにした。
【0206】
【表9】 成膜容器402内の圧力が安定したところで、各アプリ
ケータ405を介して、不図示のマイクロ波電源より、
周波数2.45GHzのマイクロ波を成膜容器402内に導
入した。この結果、成膜空間内でマイクロ波グロー放電
が生起し、プラズマが発生したが、各ガード電極408
の部分からのマイクロ波およびプラズマの漏洩は認めら
れなかった。また、成膜容器402内においてマイクロ
波グロー放電の発生する領域の大きさは、入射されるマ
イクロ波の電力あるいは原料ガスの種類、流量によって
変化するので、この領域の大きさを目視によって観察
し、基板104の移動方向の長さとしてこの領域の大き
さを求めた。その結果を表9の成膜領域の長さの欄に示
した。
【0207】次に、基板送り出し容器(不図示)から基
板巻取り容器(不図示)の方向に向け、すなわち図17
の図示矢印方向に、基板404の移動を開始した。この
ときの移動速度は、100cm/minであった。10分間に
わたり、基板404を連続的に移動させつつ、基板40
4の上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積膜の形
成を行なった。なお、基板404は、長さ200mと長
尺であるので、この実験例4−1を実施した後、帯状の
基板404を堆積膜形成装置400に装着したまま、後
述の各実験例4−2〜4−4を連続して実施し、同一の
基板404の上に各実験例4−1〜4−4で形成された
堆積膜が、基板404上にその移動方向に対し、順次出
現するようにした。実験例4−1〜4−4に関する全て
の堆積膜の形成が終了したら、基板404を冷却させて
堆積膜形成装置400から取り出した。
【0208】この実験例4−1で形成された堆積膜につ
いて膜厚分布を測定したところ、基板404の幅方向お
よび長手方法に関し、膜厚のばらつきは5%以内に収ま
っていた。また、堆積膜の形成速度を算出したところ、
平均95Å/secであった。金属中水素分析計(堀場製
作所製、EMGA−1100型)を用いて、堆積膜中の
全水素を定量したところ、16±2原子%であった。
【0209】(実験例4−2)上述の実験例4−1によ
る堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の原料ガスと
ゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜容器402
を5×10-6Torrまで排気した。続いて、実験例4−1
と同様に、ゲートガスを供給し、表10に示す条件で、
基板404上に、i型のa−SiC:Hからなる堆積膜
を連続的に形成した。このとき、基板404の移動速度
を95cm/minとした。また、成膜容器402の内圧は、
堆積膜の形成中、14mTorrに保持するようにした。
【0210】
【表10】 実験例4−1と同様に、実験例4−1〜4−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例4−2
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均80Å/secと算出された。堆積膜中の全
水素を定量したところ、14±2原子%であった。
【0211】(実験例4−3)上述の各実験例4−1、
4−2による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜
容器402を5×10 -6Torrまで排気した。続いて、実
験例4−1と同様に、ゲートガスを供給し、表11に示
す条件で、基板404上に、不純物としてBを含むa−
Si:Hからなる堆積膜を連続的に形成した。このと
き、基板404の移動速度を95cm/minとした。また、
堆積膜の形成中、成膜容器402の内圧を4mTorrに保
持するようにした。
【0212】
【表11】 実験例4−1と同様に、実験例4−1〜4−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例4−3
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均110Å/secと算出された。堆積膜中の
全水素を定量したところ、18±2原子%であった。
【0213】(実験例4−4)上述の各実験例4−1〜
4−3による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜
容器402を5×10 -6Torrまで排気した。続いて、実
験例4−1と同様に、ゲートガスを供給し、表12に示
す条件で、基板404上に、i型のa−SiGe:Hか
らなる堆積膜を連続的に形成した。このとき、基板40
4の移動速度を95cm/minとした。また、堆積膜の形成
中、成膜容器402の内圧を7mTorrに保持するように
した。
【0214】
【表12】 実験例4−1と同様に、実験例4−1〜4−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例4−4
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均95Å/secと算出された。堆積膜中の全
水素を定量したところ、15±2原子%であった。
【0215】《実施例5》次に、本発明の5番目の実施
例について説明する。図19に示す堆積膜形成装置50
0は、概ね直方体形状であって金属製の真空容器501
と、この真空容器501内に設けられた第1、第2の成
膜容器502,503とからなる。第1の成膜容器50
2は、上面の全面が開口した概ね直方体形状の容器であ
って、側壁および底壁が、電気絶縁性の材料からなる内
壁546と金属からなる外壁545による2重構造とな
っており、外壁545は接地されている。第2の成膜容
器503も、同様の形状であって、電気絶縁性の内壁5
48と金属からなり接地された外壁547との2重構造
になっている。堆積膜が形成される長尺の帯状の基板5
04は、真空容器501の図示左側すなわち搬入側の側
壁に取り付けられたガスゲート529を経てこの真空容
器501内に導入され、第1および第2の成膜容器50
2,503のそれぞれについて開口面に対し近接しつつ
対向し、真空容器501の図示右側すなわち搬出側の側
壁に取り付けられたガスゲート530を通って真空容器
501の外部に排出されるようになっている。各ガスゲ
ート529,530には、それぞれゲートガスを供給す
るためのゲートガス供給管535,536が接続されて
いる。基板504は、搬入側のガスゲート529に接続
された基板送り出し容器(不図示)から、搬出側のガス
ゲート530に接続された基板巻取り容器(不図示)に
向けて、連続的に移動させられるようになっている。ま
た、真空容器501には、この真空容器501を直接排
気するための排気管539が取り付けられ、この排気管
539は、真空ポンプなどの図示しない排気手段に接続
されている。
【0216】第1の成膜容器502には、この第1の成
膜容器502に対向しながら通過する基板504に対向
するように、第1、第2のアプリケータ505,506
が、基板504の移動方向に沿って並ぶように、取り付
けられている。各アプリケータ505,506は、第1
の成膜容器502内にマイクロ波エネルギーを導入する
ためのものであり、図示しないマイクロ波電源に一端が
接続された導波管511,512の他端が、それぞれ接
続されている。各アプリケータ505,506の第1の
成膜容器502への取り付け部位は、それぞれ、マイク
ロ波を透過する材料からなるマイクロ波導入窓508,
509となっている。さらに第1の成膜容器502内に
は、基板504の表面と平行にかつ基板504の移動方
向に対して垂直に延びる複数のバイアス棒543が設け
られている。このバイアス棒543は、成膜中の基板5
04にバイアス電位を印加するためのものであって、図
示しないバイアス電源印加手段に接続されている。
【0217】また、第1の成膜容器502の搬出側すな
わち図示右側の側壁には、原料ガスを放出する第1のガ
ス放出器514が取り付けられ、搬入側すなわち図示左
側の側壁には、排気管516が第1のガス放出器515
に対向するように取り付けられている。第1のガス放出
器514の表面には、原料ガスを放出するための多数の
ガス放出孔(不図示)が設けられている。第1のガス放
出器514は、ガスボンベなどの図示しない原料ガス供
給源に接続されたガス供給管531の一端が取り付けら
れている。一方、排気管516は、接続管518を介し
て、真空ポンプなどの図示しない排気手段に接続されて
いる。排気管516の第1の成膜容器502への取り付
け部には、排気流量の調整と、マイクロ波エネルギーの
漏洩の防止とを行なうための金網520が取り付けられ
ている。
【0218】第1の成膜容器502の、基板504をは
さんで第1、第2のアプリケータ505,506の反対
側にくる部分には、多数の赤外線ランプヒーター524
と、これらの赤外線ランプヒーター524からの放射熱
を効率よく基板504に集中させるためのランプハウス
522が設けられている。また、赤外線ランプヒーター
524で加熱された基板504の温度を監視するための
熱電対537が、この基板504に接触するように、設
けられている。
【0219】第2の成膜容器503は、第1の成膜容器
502とほぼ同様の構成であり、基板504に対向する
ように、第3のアプリケータ507が取り付けられてい
る。第3のアプリケータ507には、図示しないマイク
ロ波電源に接続された導波管513が接続され、また第
3のアプリケータ507の第2の成膜容器503への取
り付け部分はマイクロ波導入窓510となっている。さ
らに、図示しないバイアス電圧印加手段に接続された複
数のバイアス棒544が、第2の成膜容器503内に設
けられている。
【0220】第2の成膜容器503の搬入側の側壁に
は、第2のガス放出器515が取り付けられ、第2のガ
ス放出器515は、図示しない原料ガス供給源と原料ガ
ス供給管532によって接続されている。また、第2の
成膜容器503の搬出側の側壁には、第2のガス放出器
515に対向するように、排気管517が取り付けら
れ、この排気管517は、接続管519を介して、図示
しない排気手段に接続されている。排気管517の第2
の成膜容器503への取り付け部には、金網521が設
けられている。さらに、第2の成膜容器503には、第
1の成膜容器502と同様に、赤外線ランプヒーター5
25とランプハウス523と熱電対538とが設けられ
ている。
【0221】基板504は、まず第1の成膜容器502
にその搬入側(図示左側)から接近し、第1の成膜容器
502の開口面上を通過し、その搬出側(図示右側)か
ら遠ざかり、続いて第2の成膜容器503にその搬入側
から接近し、第2の成膜容器503の開口面上を通過
し、そしてその搬出側から遠ざかるようになっている。
第1の成膜容器502の搬入側の側壁、第2の成膜容器
503の排出側の側壁には、それぞれガード電極52
6,527が設けられている。また、第1の成膜容器5
02の搬出側と第2の成膜容器503の搬入側とは隣接
しているので、これら相互を連結するようにガード電極
528が設けられている。これら各ガード電極526〜
528は、各成膜容器502,503の外側に向かっ
て、帯状の基板504の表側の面に(各アプリケータ5
05〜507に対向する側の面)近接し対向して設けら
れ、かつ図示しない接地手段により接地されている。こ
れら各ガード電極526〜528は、各成膜容器50
2,503からの、放電エネルギーや生成したプラズマ
の漏洩を防止するためのものである。
【0222】次に、この堆積膜形成装置500の動作に
ついて説明する。まず、堆積膜形成装置500を貫通す
るように、搬入側のガスゲート529に接続された基板
送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲート53
0に接続された基板巻取り容器(不図示)にまで、帯状
の基板504を張りわたし、各排気管516,518,5
39を通じて、真空容器501、各成膜容器502,5
03内を真空に排気する。所定の真空度に到達したら、
各ゲートガス供給管535,536からゲートガスを各
ガスゲート529,530に供給する。ゲートガスは、
主として、真空容器501に取り付けられた排気管53
9から排気されることになる。
【0223】続いて、熱電対537の出力を監視しなが
ら、赤外線ランプヒーター524を作動させることによ
り、基板504を所定の温度にまで加熱する。そして、
各原料ガス供給管531,532から第1、第2のガス
放出器514,515のそれぞれに原料ガスを供給し、
原料ガスを各成膜容器502,503内に放出させる。
各ガス放出器514,515に供給される原料ガスは、
それぞれ、堆積膜の原料となる物質を複数種類含有して
いる。また、各導波管511〜513を介してマイクロ
波電力を各アプリケータ505〜507に印加する。ま
た、各バイアス棒543,544には、バイアス電位を
印加する。
【0224】さらに、基板送り出し容器(不図示)内に
設けられた基板送り出し手段(不図示)と、基板巻取り
容器(不図示)内に設けられた基板巻取り手段(不図
示)とを作動させ、基板504を基板送り出し容器から
基板巻取り容器に向けて連続的に移動させる。このよう
にすることにより、第1の成膜容器502と基板504
とではさまれた空間(第1の成膜空間533)におい
て、原料ガスが第1のガス放出器514から排気管51
6に向けて流れ、すなわち基板504の移動方向と逆方
向に流れる。さらに第1、第2のアプリケータ505,
506にマイクロ波電力が印加されているので、第1の
成膜空間533内において、マイクロ波グロー放電が生
起し、プラズマが発生し、原料ガスがプラズマにより分
解されて基板504上に堆積膜が形成される。このと
き、原料ガスが基板504の移動方向とは逆方向に流れ
るので、基板504の移動方向の位置によって堆積膜の
形成条件が異なることになり、かつ原料ガスが堆積膜の
原料となる物質を複数種類含有しているので、連続的に
移動している基板504上に形成される堆積膜には、膜
厚方向に組成の分布が生じることになる。このとき、バ
イアス棒543によってバイアス電圧が印加されている
ので、バイアス電流が流れることになるが、上述のよう
に成膜容器502の内壁546は電気絶縁性の材料から
なるので、成膜容器502にバイアス電流が流れ込むこ
とはない。したがって、バイアス電流はバイアス棒54
3から基板504にのみ流れ込むことになる。これによ
り、成膜の進行とともに成膜容器502の内壁に大量の
堆積膜が形成されたとしても、この堆積膜にはバイアス
電流は流れ込まないから、バイアス電流の変化は起こら
ないことになる。よって、絶えず安定して高品質の堆積
膜を基板504上に連続して形成することが可能とな
る。
【0225】第1、第2のアプリケータ505,506
に印加するマイクロ波の電力をそれぞれ制御することに
より、より効果的に堆積膜の膜厚方向の組成分布を形成
することができる。ガード電極526,528が設けら
れているので、第1の成膜容器502からのマイクロ波
エネルギーやプラズマの漏洩は起こらない。第2の成膜
容器503についても、第1の成膜容器502と同様
に、第2のガス放出器515に原料ガスを供給し、第3
のアプリケータ507にマイクロ波電力を印加し、バイ
アス棒544にバイアス電圧を印加することにより、基
板504と第3のアプリケータ507とにはさまれた空
間(第2の成膜空間534)でプラズマが発生し、基板
504上に堆積膜が形成される。この場合も、第2の成
膜容器503の内壁に大量の堆積膜が形成されたとして
も、バイアス電流は安定しており、堆積膜の品質が低下
することはない。この堆積膜においても、膜厚方向に組
成の分布が生じている。
【0226】基板504は、第1の成膜容器502から
第2の成膜容器503に向けて連続的に移動しているか
ら、第1の成膜容器502で形成された堆積膜の上に、
第2の成膜容器503で形成される堆積膜が積層される
ことになる。堆積膜の各成膜容器502,503で形成
された部分は、それぞれ膜厚方向に組成の分布が生じて
いるので、堆積膜全体としてみたときも、膜厚方向に組
成の分布が生じていることになる。
【0227】次に、図19に示した堆積膜形成装置50
0を組み込んだ連続堆積膜形成装置550について、図
20により説明する。この連続堆積膜形成装置550
は、pin接合を有する半導体素子を帯状の基板504
上に形成するのに適したものであり、基板送り出し容器
551、第1の不純物形成用真空容器552、堆積膜形
成装置500、第2の不純物形成用真空容器553、基
板巻取り容器554を4個のガスゲート561,529,
530,562によって直列に接続した構成となってい
る。各ガスゲート561,529,530,562には、
それぞれゲートガスを供給するためのゲートガス供給管
563,535,536,564がそれぞれ接続されてい
る。
【0228】基板送り出し容器551は、帯状の基板5
04を格納して基板巻取り容器554に向けて送り出す
ためのものであり、基板504が巻かれるボビン571
が装着されるようになっている。また、基板送り出し容
器551には、図示しない排気手段に接続された排気管
572が取り付けられ、この排気管572の途中には、
基板送り出し容器551内の圧力を制御するためのスロ
ットルバルブ573が設けられている。さらに、基板送
り出し容器552には、圧力計574、基板504を加
熱するためのヒーター575、基板504を支持、搬送
するため搬送ローラ576が設けられている。なお、ボ
ビン571には、基板504を送り出すための、図示し
ない基板送り出し機構が接続されている。
【0229】第1、第2の不純物層形成用真空容器55
2,553は、同一の構造であって、p型あるいはn型
の半導体層を形成するためのものである。各不純物層形
成用真空容器552,553には、図示しない排気手段
に接続された排気管580が取り付けられ、この排気管
580の途中には、不純物層形成用真空容器552,5
53の内圧を制御するためのスロットルバルブ581が
設けられている。基板504は、2本の搬送ローラ58
2で支持され、さらにその横幅方向の端部が支持リング
583に支持されることにより、不純物層形成用真空容
器552,553の内部では、概ね円筒状の空間の側面
を沿うように移動するようになっている。そして、この
円筒状の空間の中心部には、原料ガス導入管584が設
けられ、この円筒状の空間の頂面にあたる部分には、マ
イクロ波をこの円筒状の空間に導入するためのアプリケ
ータ585が設けられている。このアプリケータ585
は、図示しないマイクロ波電源に接続されている。さら
に基板504を加熱するためのヒーター586が、各不
純物層形成用真空容器552,553内に設けられてい
る。
【0230】基板巻取り容器554は、堆積膜が形成さ
れた基板504を巻取るためのものであり、基板送り出
し容器551と同様の構成である。ただし基板504を
巻取るため、ボビン571には、図示しない基板巻取り
機構が接続されるようになっている。次に、この連続堆
積膜形成装置550の動作について、pin接合を有す
る半導体素子を形成する場合を中心にして、説明する。
【0231】まず、基板504を基板送り出し容器55
1から基板巻取り容器554に向けて張りわたす。続い
て、基板送り出し容器551、各不純物形成用真空容器
552,553、堆積膜形成装置500、基板巻取り容
器554を排気し、所定の真空度に到達したら、各ガス
ゲート561,529,530,562にゲートガスを供
給する。
【0232】次に、各不純物層形成用真空容器552,
553に、p型あるいはn型の半導体層を形成するため
の原料ガスを供給し、堆積膜形成装置500にi型の半
導体層を形成するための原料ガスを供給し、さらに各不
純物層形成用真空容器552,553、堆積膜形成装置
500にマイクロ波電力を供給し、基板504の基板送
り出し容器551から基板巻取り容器554に向けた移
動を開始させることによって、これら各不純物層形成用
真空容器552,553、堆積膜形成装置500におい
てプラズマが生起し、基板504の上に堆積膜が形成す
る。当然のことであるが、堆積膜形成装置500につい
ては、バイアス電圧も供給する。基板504は、第1の
不純物層形成用真空容器552、堆積膜形成装置50
0、第2の不純物層形成用真空容器553と連続的に移
動しているので、基板504の上にpin接合を有する
半導体素子が形成されることになる。このとき、堆積膜
形成装置500では、上述のように堆積膜の膜厚方向に
組成の分布を持たせることができるので、形成された半
導体素子においては、i型の半導体層の膜厚方向に、例
えば、バンドギャップやフェルミレベルを変化させるこ
とができる。
【0233】次に、本実施例についての実験結果につい
て説明する。 (実験例5−1)図19に示した堆積膜形成装置500
を用い、搬入側のガスゲート529、搬出側のガスゲー
ト530に、それぞれ基板送り出し容器(不図示)、基
板巻取り容器(不図示)を接続した。この基板送り出し
容器と基板巻取り容器には、基板504を繰り出す基板
送り出し機構(不図示)と、基板504を巻取る基板巻
取り機構(不図示)が、それぞれ設けられている。
【0234】まず、ステンレス(SUS304BA)からなる基板
504(幅40cm×長さ200m×厚さ0.125mm)を
十分に脱脂、洗浄し、基板送り出し容器にこの基板50
4を巻いたボビン(不図示)を装着し、基板504を、
搬入側のガスゲート529、第1、第2の成膜容器50
2,503および搬出側のガスゲート530を介し、基
板巻取り容器まで通し、基板504がたるまないように
張力調整を行なった。そして、基板送り出し容器(不図
示)、真空容器501、各成膜容器502,503、基
板巻取り容器(不図示)のそれぞれを、不図示のメカニ
カルブースターポンプ/ロータリーポンプで荒引きし、
油拡散ポンプ(不図示)によって5×10-6Torr以下の
高真空にまで排気した。そののち、各赤外線ランプヒー
ター524,525を点灯させ、各熱電対536,537
の出力を監視しつつ、基板504の表面温度が300℃
になるように温度制御を行ない、加熱、脱ガスを行なっ
た。
【0235】十分に脱ガスが行なわれたところで、表1
3に示す条件により、各排気管516,517に接続さ
れた油拡散ポンプ(不図示)を作動させながら、各ガス
放出器514,515から堆積膜形成用の原料ガスを各
成膜容器502,503内に導入した。同時に、各ゲー
トガス供給管535,536より、各ガスゲート529,
530に、ゲートガスとして、それぞれ流量が300sc
cmのH2ガスを供給し、このゲートガスを、真空容器5
01に直接接続された排気管538と基板送り出し容器
(不図示)と基板巻取り容器(不図示)とを介して、排
気するようにした。この状態で、第1、第2の成膜容器
502,503内の圧力をそれぞれ8mTorr,6mTorrに保
持するようにした。
【0236】
【表13】 各成膜容器502,503内の圧力が安定したところ
で、各導波管511〜513、各アプリケータ505〜
507を介して、不図示のマイクロ波電源より、周波数
2.45GHzのマイクロ波を各成膜容器502,503内
に導入した。この結果、各成膜空間533,534内で
マイクロ波グロー放電が生起し、プラズマが発生した
が、各ガード電極526〜528の部分からの、マイク
ロ波およびプラズマの漏洩は認められなかった。また、
各成膜容器502,503内においてマイクロ波グロー
放電の発生する領域の大きさは、入射されるマイクロ波
の電力あるいは原料ガスの種類、流量によって変化する
ので、この領域の大きさを目視によって観察し、基板5
04の移動方向の長さとしてこの領域の大きさを求め
た。その結果を表13の成膜領域の長さの欄に示した。
【0237】次に、基板送り出し容器(不図示)から基
板巻取り容器(不図示)の方向に向け、すなわち図19
の図示矢印方向に、基板504の移動を開始した。この
ときの移動速度は、100cm/minであった。10分間に
わたり、基板504を連続的に移動させつつ、帯状の基
板504の上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積
膜の形成を行なった。
【0238】なお、基板504は、長さ200mと長尺
であるので、この実験例5−1を実施した後、基板50
4を堆積膜形成装置500に装着したまま、後述の各実
験例5−2〜5−4を連続して実施し、同一の帯状の基
板504の上に各実験例5−1〜5−4で形成された堆
積膜が、基板504上にその移動方向に対し、順次出現
するようにした。実験例5−1〜5−4に関する全ての
堆積膜の形成が終了したら、基板504を冷却させて堆
積膜形成装置500から取り出した。
【0239】この実験例5−1で形成された堆積膜につ
いて膜厚分布を測定したところ、基板504の幅方向お
よび長手方法に関し、膜厚のばらつきは5%以内に収ま
っていた。また堆積膜の形成速度を算出したところ、平
均95Å/secであった。次に、基板504の、この実
験例5−1でa−SiGe:Hからなる堆積膜が形成さ
れた部分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、2
次イオン質量分析計(SIMS)(CAMECA社製、
imf−3型)を用い、深さ方向の元素分布を測定し
た。その結果、図21に示した深さ方向分布が得られ、
図53(d)に示したのと同様のバンドギャッププロファ
イルとなっていることがわかった。また、金属中水素分
析計(堀場製作所製、EMGA−1100型)を用い
て、堆積膜中の全水素を定量したところ、16±2原子
%であった。なお、図21において、横軸は時間で表さ
れているが、2次イオン質量分析においては、経過時間
と深さが比例するので、図21の横軸を表面からの深さ
と考えて差し支えない。
【0240】(実験例5−2)上述の実験例5−1によ
る堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の原料ガスと
ゲートガスとの導入をいったん中止し、第1、第2の成
膜容器502,503をそれぞれ5×10-6Torrまで排
気した。続いて、実験例5−1と同様に、ゲートガスを
供給し、表14に示す条件で、基板504上に、i型の
a−SiC:Hからなる堆積膜を連続的に形成した。こ
のとき、基板504の移動速度を95cm/minとした。ま
た、第1、第2の成膜容器502,503の内圧は、堆
積膜の形成中、それぞれ14mTorrおよび12mTorrに保
持するようにした。
【0241】
【表14】 実験例5−1と同様に、実験例5−1〜5−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例5−2
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆
積膜の形成速度は平均80Å/secであると算出された。
【0242】次に、実験例5−1と同様に、この実験例
5−2でa−SiC:Hからなる堆積膜が形成された部
分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向
の元素分布を測定した。その結果、図22に示した深さ
方向分布が得られ、図53(c)に示したのと同様のバン
ドギャッププロファイルとなっていることがわかった。
また、堆積膜中の全水素を定量したところ、14±2原
子%であった。
【0243】(実験例5−3)上述の各実験例5−1、
5−2による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、第
1、第2の成膜容器502,503をそれぞれ5×10
-6Torrまで排気した。続いて、実験例5−1と同様に、
ゲートガスを供給し、表15に示す条件で、基板504
上に、不純物としてBを含むa−Si:Hからなる堆積
膜を連続的に形成した。このとき、基板504の移動速
度を95cm/minとした。また、堆積膜の形成中、第1、
第2の成膜容器502,503の内圧をそれぞれ4mTorr
および5mTorrに保持するようにした。
【0244】
【表15】 実験例5−1と同様に、実験例5−1〜5−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例5−3
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆
積膜の形成速度は平均110Å/secであると算出され
た。
【0245】次に、実験例5−1と同様に、この実験例
5−3でa−Si:Hからなる堆積膜が形成された部分
について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向の
元素分布を測定した。その結果、図23に示した深さ方
向分布が得られ、図54(b)に示したのと同様のフェル
ミレベルプロファイルとなっていることがわかった。ま
た、堆積膜中の全水素を定量したところ、18±2原子
%であった。
【0246】(実験例5−4)上述の各実験例5−1〜
5−3による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、第
1、第2の成膜容器502,503をそれぞれ5×10
-6Torrまで排気した。続いて、実験例5−1と同様に、
ゲートガスを供給し、表16に示す条件で、基板504
上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積膜を連続的
に形成した。このとき、基板504の移動速度を95cm
/minとした。また、堆積膜の形成中、第1、第2の成膜
容器502,503の内圧をそれぞれ7mTorrおよび9mT
orrに保持するようにした。
【0247】
【表16】 実験例5−1と同様に、実験例5−1〜5−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例5−4
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆
積膜の形成速度は平均95Å/secであると算出された。
【0248】次に、実験例5−1と同様に、この実験例
5−4でa−SiGe:Hからなる堆積膜が形成された
部分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方
向の元素分布を測定した。その結果、図24に示した深
さ方向分布が得られ、図53(b)に示したのと同様のバ
ンドギャッププロファイルとなっていることがわかっ
た。また、堆積膜中の全水素を定量したところ、15±
2原子%であった。
【0249】(実験例5−5)図20に示す連続堆積膜
形成装置550を用い、図52(a)に示した層構成のア
モルファスシリコン系太陽電池を作製した。このアモル
ファスシリコン太陽電池は、単一のpin接合を有し、
i型半導体層904におけるバンドギャッププロファイ
ルは図53(d)に示したものとなっている。
【0250】まず、上述の実験例5−1で使用したのと
同様の、SUS430BAからなる基板504を、不図
示の連続スパッタ装置に装着し、Ag電極(Ag純度:
99.99%)をターゲットとして、基板504の上に
厚さ1000ÅのAg薄膜をスパッタ蒸着した、さら
に、ZnO(ZnO純度:99.999%)電極をター
ゲットとして厚さ1.2μmのZnO薄膜をAg薄膜の
上にスパッタ蒸着し、基板504の上に下部電極902
を形成した。すなわち帯状の基板504がアモルファス
太陽電池の基板901となっている。
【0251】下部電極902の形成された基板504
を、基板送り出し容器551に装着し、第1の不純物層
形成用真空容器552、堆積膜形成装置500、第2の
不純物層形成用真空容器553を介し、基板巻取り容器
554まで通した。そして、基板504がたるまないよ
うに、基板504の張力を調整し、実験例5−1同様
に、各不純物層形成用真空容器552,553、堆積膜
形成装置500、基板送り出し容器551、基板巻取り
容器554を5×10-6Torrまで排気した。
【0252】続いて、基板504を真空送り出し容器5
51から真空巻取り容器554に向けて連続的に移動さ
せながら、この基板504の上に、第1の不純物層形成
用真空容器552でn型半導体層903を、堆積膜形成
装置500でi型半導体層904を、第2の不純物層形
成用真空容器553でp型半導体層905を順次形成す
るようにした。n型半導体層903とp型半導体層90
5の形成の条件は、表17に示すとおりであり、i型半
導体層804の形成条件は、実験例5−1においてi型
a−SiGe:Hからなる堆積層を形成する場合と同じ
にした。各半導体層903〜905の形成は、それぞれ
の不純物層形成用真空容器552、553の内部と堆積
膜形成装置500の内部でマイクロ波グロー放電を生起
させ、グロー放電によるプラズマが安定したら、帯状の
基板504を移動速度95cm/minで移動させることによ
り行なった。なお、各不純物層形成用真空容器552,
553内において、マイクロ波グロー放電が発生してい
る領域の、帯状の基板504の移動方向の長さを表17
の成膜領域の長さの欄に示した。
【0253】
【表17】 基板504の全長(200m)のすべてにわたって、各
半導体層903〜905が形成されたら、帯状の基板5
04を冷却させてから連続堆積膜形成装置550から取
り出し、p型半導体層905の上に、さらに、透明電極
906と集電電極907とを形成し、帯状の太陽電池を
完成させた。
【0254】次に、連続モジュール化装置(不図示)を
用いて、作製した太陽電池を、大きさが36cm×22
cmの多数の太陽電池モジュールに加工した。作製した
太陽電池モジュールについて、AM値が1.5でエネル
ギー密度100mw/cm2の疑似太陽光を用いて特性評価を
行なったところ、光電変換効率で7.8%以上が得ら
れ、また各太陽電池モジュール間の特性のばらつきも5
%以内に収まった。また、作製した太陽電池モジュール
の中から2個を抜き取り、連続200回の繰り返し曲げ
試験を行なったところ、試験後においても特性が劣化す
ることはなく、堆積膜の剥離などの現象も認められたか
った。さらに、上述のAM値が1.5でエネルギー密度
100mw/cm2の疑似太陽光に連続して500時間照射し
たのちにおいても、光電変換効率の変動は、初期値に対
して8.5%以内に収まっていた。
【0255】この太陽電池モジュールを接続することに
より、出力5kWの電力供給システムを作製することが
できた。 (実験例5−6)実験例5−5においては、i型半導体
層904として、a−SiGe:H堆積膜を用いたが、
ここではa−SiGe:Hのかわりにa−SiC:Hを用
いて太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工し
た。このi型半導体層904を実験例5−2と同様の条
件で堆積させる以外は実験例5−5と同様にした。な
お、このi型半導体層904は、図53(c)に示すよう
なバンドギャッププロファイルとなっている。
【0256】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例5−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で7.2%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0257】(実験例5−7)実験例5−5において
は、i型半導体層904として、a−SiGe:H堆積
膜を用いたが、ここではa−SiGe:Hのかわりにa
−Si:Hを用いて太陽電池を作製し、太陽電池モジュ
ールに加工した。このi型半導体層904を実験例5−
3と同様の条件で堆積させる以外は実験例5−5と同様
にした。なお、このi型半導体層904は、図54(b)
に示すようなフェルミレベルプロファイルとなってい
る。
【0258】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例5−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で8.4%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0259】(実験例5−8)図52(c)に示す、2組
のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン系
太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。作
製にあたっては、2組のpin接合を形成できるよう
に、図20に示す連続堆積膜形成装置550の第2の不
純物層形成用真空容器553と基板巻取り容器554と
の間に、この連続堆積膜形成装置550の第1の不純物
層形成用真空容器552、堆積膜形成装置500、第2
の不純物層形成用真空容器553を順次直列に接続した
ものを挿入した構成の装置を用いた。
【0260】基板504としては、実験例5−1で使用
したのと同様のものを使用し、2組のpin接合のう
ち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合911
は、上述の実験例5−5でのpin接合と同じ条件で形
成し、光の入射側に近い方の第2のpin接合912
は、実験例5−7のpin接合と同じ条件で形成した。
第1、第2のpin接合911,912の形成後、実験
例5−5と同様の工程により、太陽電池モジュールとし
た。
【0261】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例5−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で11.0%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まって
いた。この太陽電池モジュールを使用することにより、
出力5kWの電力供給システムを作製することができ
た。
【0262】(実験例5−9)図52(c)に示す、2組
のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン系
太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。作
製にあたっては、第1のpin接合911を上述の実験
例5−7でのpin接合と同じ条件で形成し、第2のp
in接合912をは実験例5−6のpin接合と同じ条
件で形成したこと以外は、実験例5−8と同様にした。
【0263】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例5−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で10.5%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まって
いた。この太陽電池モジュールを使用することにより、
出力5kWの電力供給システムを作製することができ
た。
【0264】(実験例5−10)図52(d)に示す、3
組のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン
系太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。
作製にあたっては、3組のpin接合を形成できるよう
に、図20に示す連続堆積膜形成装置550の第2の不
純物層形成用真空容器553と基板巻取り容器554と
の間に、この連続堆積膜形成装置550の第1の不純物
層形成用真空容器552、堆積膜形成装置500、第2
の不純物層形成用真空容器553、第1の不純物層形成
用真空容器552、堆積膜形成装置500、第2の不純
物層形成用真空容器553を順次直列に接続したものを
挿入した構成の装置を用いた。
【0265】帯状の基板504としては、実験例5−1
で使用したのと同様のものを使用し、3組のpin接合
のうち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合91
1は、上述の実験例5−5でのpin接合と同じ条件で
形成し、第2のpin接合912は、実験例5−7のp
in接合と同じ条件で形成し、光の入射側に位置する第
3のpin接合913は、実験例5−6のpin接合と
同じ条件で形成した。各pin接合911〜913の形
成後、実験例5−5と同様の工程により、太陽電池モジ
ュールとした。
【0266】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例5−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で12.0%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7%以内に収まってい
た。この太陽電池モジュールを使用することにより、出
力5kWの電力供給システムを作製することができた。
【0267】《実施例6》図25は、本発明の6番目の
実施例の堆積膜形成方法の実施に使用される堆積膜形成
装置の構成を示す概略断面図、図26は図25に示す堆
積膜形成装置を組み込んだ連続堆積膜形成装置の構成を
示す概略断面図である。図25に示す堆積膜形成装置6
00は、概ね直方体形状であって図示しない排気手段に
よって排気可能な真空容器601と、この真空容器60
1内に設けられた成膜容器602と、成膜容器602内
に設けられたカゴ状であって金属製のパンチングボード
615とからなる。成膜容器602は、上面の全面が開
口した概ね直方体形状の容器である。成膜容器602の
側壁および底壁は、電気絶縁性の材料からなる内壁60
2aと金属からなる外壁602bとによる2重構造とな
っており、外壁602bは接地されている。パンチング
ボード615は、概ね成膜容器602の内壁602aに
沿って設けられているが、後述するアプリケータ605
に対応する位置には設けられておらず、また成膜容器6
02の開口面に対応する部分にも設けられていない。堆
積膜の形成される長尺の帯状の基板604は、真空容器
601の図示左側すなわち搬入側の側壁に取り付けられ
たガスゲート612を経てこの真空容器601内に導入
され、成膜容器602すなわちパンチングボード615
に対向する位置を通り、真空容器601の図示右側すな
わち搬出側の側壁に取り付けられたガスゲート612を
通って真空容器602の外部に排出されるようになって
いる。各ガスゲート612には、ゲートガスを供給する
ためのゲートガス供給管613が接続されている。そし
て、基板604は、搬入側のガスゲート612に接続さ
れた基板送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲ
ート612に接続された基板巻取り容器(不図示)に向
けて、連続的に移動させられるようになっている。この
とき真空容器601内において、基板604は、成膜容
器602の開口面に対してわずかの間隔を開けつつ平行
に移動する。基板604と成膜容器602の開口面との
間隔を一定に保つため、基板604を保持するマグネッ
トローラ614が真空容器内に設けられている。
【0268】成膜容器602の側壁のうち基板604の
移動方向に沿って延びる側壁には、片側について2個、
合計4個のアプリケータ605が取り付けられている。
アプリケータ605は成膜容器602内にマイクロ波エ
ネルギーを導入するためのものであり、図示しないマイ
クロ波電源に導波管(不図示)を介して接続されてい
る。また各アプリケータ605の成膜容器602への取
り付け部位は、それぞれ、マイクロ波を透過する材料か
らなるマイクロ波導入窓となっている。さらに成膜容器
602内に原料ガスを導入するための原料ガス導入管が
設けられている。両側の側壁にそれぞれ設けられたアプ
リケータ605は、相互に向い合って設けられている。
【0269】パンチングボード615は、導線617を
介してバイアス電源606に接続されている。パンチン
グボード615にバイアス電圧を印加することにより、
基板604に対してバイアス電位を印加できることにな
る。基板604をはさんで成膜容器602の開口面に対
向するようにして、多数の赤外線ランプヒータ607
と、赤外線ランプヒータ607からの放射熱を効率良く
基板に604に集中させるためのリフレクタ616が設
けられている。これら赤外線ランプヒータ607とリフ
レクタ616とによって、成膜中の基板604を加熱す
る基板ヒートゾーン609が構成される。さらに、この
基板ヒートゾーン609の上流側(搬入側)には、成膜
される直前の基板604を予備加熱するためのプレヒー
トゾーン610が設けられている。プレヒートゾーン6
10の構成は基板ヒートゾーン609と同様である。予
備加熱中および成膜中の基板604の温度を監視するた
めの熱電対611が、基板604に接触するように、プ
レヒートゾーン610と基板ヒートゾーン609のそれ
ぞれに設けられている。
【0270】帯状の基板604は、成膜容器602に対
向しながら移動するわけであるが、成膜容器602の両
端部には、それぞれ成膜容器602の外側に向って、基
板604の表面に近接して対向するガード電極608が
設けられている。ガード電極608は成膜容器602の
外壁602aと電気的に接続されており、結果として接
地電位にある。ガード電極608は、成膜容器602か
らの、放電エネルギーや生成したプラズマの漏洩を防ぐ
ためのものである。
【0271】次に、この堆積膜形成装置600の動作に
ついて説明する。まず、堆積膜形成装置600を貫通す
るように、搬入側のガスゲート612に接続された基板
送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲート61
2に接続された基板巻取り容器(不図示)にまで、帯状
の基板604を張りわたし、真空容器601、成膜容器
602内を真空に排気する。所定の真空度に到達した
ら、各ゲートガス供給管613からゲートガスを各ガス
ゲート612に供給する。ゲートガスは、主として、真
空容器601に取り付けられた排気管(不図示)から排
気されることになる。
【0272】続いて、熱電対611の出力を監視しなが
ら、プレヒートゾーン610と基板ヒートゾーンの赤外
線ランプヒーター607を作動させることにより、基板
604を所定の温度にまで加熱する。そして原料ガス供
給管(不図示)から、堆積膜の原料となる物質を含む原
料ガスを成膜容器602内に放出させる。また、マイク
ロ波電力を各アプリケータ605に印加し、バイアス電
圧をパンチングボード615に印加する。さらに、基板
送り出し容器(不図示)内に設けられた基板送り出し手
段(不図示)と、基板巻取り容器(不図示)内に設けら
れた基板巻取り手段(不図示)とを作動させ、帯状の基
板604を基板送り出し容器から基板巻取り容器に向け
て連続的に移動させる。
【0273】このようにすることにより、パンチングボ
ード615と基板604とではさまれた空間(成膜空
間)において、マイクロ波グロー放電が生起し、プラズ
マが発生し、原料ガスがプラズマにより分解されて基板
604上に堆積膜が形成される。このとき、バイアス電
源606によってバイアス電圧がパンチングボード61
5に印加されているので、パンチングボード615から
基板604に向ってバイアス電流が流れることになる。
この場合、実質的に成膜容器602の内壁面を構成する
パンチングボード615全体がバイアス電極となってい
るので、基板604以外に流れ込むバイアス電流はな
く、成膜の進行とともに成膜容器602の内壁に大量の
堆積膜が形成されたとしても、この堆積膜にはバイアス
電流は流れ込まないから、バイアス電流の変化は起こら
ないことになる。よって、絶えず安定して高品質の堆積
膜を基板604上に連続して形成することが可能とな
る。なお、ガード電極608が設けられているので、成
膜容器602からのマイクロ波エネルギーやプラズマの
漏洩は起こらない。
【0274】次に、図25に示した堆積膜形成装置60
0を組み込んだ連続堆積膜形成装置650について、図
26により説明する。この連続堆積膜形成装置650
は、pin接合を有する半導体素子を帯状の基板604
上に形成するのに適したものであり、基板送り出し容器
651、第1の真空容器652、図25に示した堆積膜
形成装置600、第2の真空容器654、基板巻取り容
器655を4個のガスゲート612によって直列に接続
した構成となっている。各ガスゲート612には、それ
ぞれゲートガスを供給するためのゲートガス供給管61
3が接続されている。
【0275】基板送り出し容器651は、帯状の基板6
04を格納して巻取りチャンバー655に向けて送り出
すためのものであり、基板604が巻かれるボビン65
6が装着されるようになっている。基板送り出し容器6
51には、図示しない排気手段に接続された排気管(不
図示)が取り付けられている。さらに、基板送り出し容
器651には、基板604を支持、搬送するためステア
リングローラ657と、間紙ローラ658が設けられて
いる。基板604の損傷を防ぐため、ボビン656に基
板604を巻くとき、一般に間紙が基板604とともに
巻き込まれ、基板604の隣接する巻き層間に間紙が存
在するようになっている。この間紙ローラ658は、基
板604をボビン656から巻き出したために不要とな
った間紙を巻き取るためのものである。なお、ボビン6
56には、基板604を送り出すための、図示しない基
板送り出し機構が接続されている。
【0276】第1および第2の真空容器652,654
は、同一の構造であって、p型あるいはn型の半導体層
を形成するためのものである。各真空容器652,65
4は、図25の堆積膜形成装置600と同様の構成であ
るが、マイクロ波を導入するためのアプリケータ605
が、1対ずつしか設けられていない点で相違する。ここ
でアプリケータの対とは、成膜容器602の側壁に相互
に向い合って設けられている2個のアプリケータ605
のことを意味する。
【0277】基板巻取り容器655は、堆積膜が形成さ
れた帯状の基板604を巻取るためのものであり、基板
送り出し容器651と同様の構成である。ただし基板6
04を巻取るため、ボビン656には図示しない基板巻
取り機構が接続され、さらに間紙ローラ658はボビン
656巻き取られる基板604に対して間紙を供給する
ようになっている。
【0278】次に、この連続堆積膜形成装置650の動
作について、pin接合を有する半導体素子を形成する
場合を中心にして、説明する。まず、帯状の基板604
を基板送り出し容器651から基板巻取り容器655に
向けて張りわたす。続いて、基板送り出し容器651、
各真空容器652,654、堆積膜形成装置600、巻
取りチャンバ655を排気し、所定の真空度に到達した
ら、各ガスゲート612にゲートガスを供給する。
【0279】次に、各真空容器652,654に、p型
あるいはn型の半導体層を形成するための原料ガスを供
給し、堆積膜形成装置600にi型の半導体層を形成す
るための原料ガスを供給し、さらに各真空容器652,
654、堆積膜形成装置600にマイクロ波電力を供給
し、基板604の基板送り出し容器651から基板巻き
取り容器655に向けた移動を開始させることによっ
て、これら各真空容器652,654、堆積膜形成装置
600においてプラズマが生起し、基板604の上に堆
積膜が形成する。基板604は、第1の真空容器65
2、堆積膜形成装置600、第2の真空容器654と連
続的に移動しているので、基板604の上にpin接合
を有する半導体素子が形成されることになる。
【0280】次に、本実施例についての実験結果につい
て説明する。 (実験例6−1)図25に示した堆積膜形成装置600
を用い、搬入側のガスゲート612、搬出側のガスゲー
ト612に、それぞれ基板送り出し容器(不図示)、基
板巻取り容器(不図示)を接続した。この基板送り出し
容器と基板巻取り容器には、帯状の基板604を繰り出
す基板送り出し機構(不図示)と、基板604を巻取る
基板巻取り機構(不図示)が、それぞれ設けられてい
る。
【0281】まず、ステンレス(SUS304BA)からなる基板
604(幅40cm×長さ200m×厚さ0.125mm)を
十分に脱脂、洗浄し、基板送り出し容器にこの基板60
4を巻いたボビン(不図示)を装着し、基板604を、
搬入側のガスゲート612、真空容器601および搬出
側のガスゲート612を介し、基板巻取り容器まで通
し、基板604がたるまないように張力調整を行なっ
た。そして、基板送り出し容器(不図示)、真空容器6
01、成膜容器602、基板巻取り容器(不図示)のそ
れぞれを、不図示のメカニカルブースターポンプ/ロー
タリーポンプで荒引きし、油拡散ポンプ(不図示)によ
って5×10-6Torr以下の高真空にまで排気した。その
のち、各赤外線ランプヒーター607を点灯させ、各熱
電対611の出力を監視しつつ、基板604の表面温度
が300℃になるように温度制御を行ない、加熱、脱ガ
スを行なった。
【0282】十分に脱ガスが行なわれたところで、表1
8に示す条件により、不図示の油拡散ポンプ(不図示)
を作動させながら、原料ガス導入管(不図示)から堆積
膜形成用の原料ガスを成膜容器内に導入した。同時に、
各ゲートガス供給管613より、各ガスゲート612
に、ゲートガスとして、それぞれ流量が300sccmのH
2ガスを供給し、このゲートガスを、真空容器601に
直接接続された排気管(不図示)と基板送り出し容器
(不図示)と基板巻取り容器(不図示)とを介して、排
気するようにした。この状態で、成膜容器602内の圧
力をそれぞれ8mTorrに保持するようにした。
【0283】
【表18】 成膜容器602内の圧力が安定したところで、各アプリ
ケータ605を介して、不図示のマイクロ波電源より、
周波数2.45GHzのマイクロ波を成膜容器602内に導
入した。この結果、成膜空間内でマイクロ波グロー放電
が生起し、プラズマが発生したが、各ガード電極608
の部分からのマイクロ波およびプラズマの漏洩は認めら
れなかった。また、成膜容器602内においてマイクロ
波グロー放電の発生する領域の大きさは、入射されるマ
イクロ波の電力あるいは原料ガスの種類、流量によって
変化するので、この領域の大きさを目視によって観察
し、基板604の移動方向の長さとしてこの領域の大き
さを求めた。その結果を表18の成膜領域の長さの欄に
示した。
【0284】次に、基板送り出し容器(不図示)から基
板巻取り容器(不図示)の方向に向け、すなわち図25
の図示矢印方向に、基板604の移動を開始した。この
ときの移動速度は、100cm/minであった。10分間に
わたり、基板604を連続的に移動させつつ、基板60
4の上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積膜の形
成を行なった。なお、基板604は、長さ200mと長
尺であるので、この実験例6−1を実施した後、帯状の
基板604を堆積膜形成装置600に装着したまま、後
述の各実験例6−2〜6−4を連続して実施し、同一の
基板604の上に各実験例6−1〜6−4で形成された
堆積膜が、基板604上にその移動方向に対し、順次出
現するようにした。実験例6−1〜6−4に関する全て
の堆積膜の形成が終了したら、基板604を冷却させて
堆積膜形成装置600から取り出した。
【0285】この実験例6−1で形成された堆積膜につ
いて膜厚分布を測定したところ、基板604の幅方向お
よび長手方法に関し、膜厚のばらつきは5%以内に収ま
っていた。堆積膜の形成速度を算出したところ、平均9
5Å/secであった。また、金属中水素分析計(堀場製
作所製、EMGA−1100型)を用いて、堆積膜中の
全水素を定量したところ、16±2原子%であった。
【0286】(実験例6−2)上述の実験例6−1によ
る堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の原料ガスと
ゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜容器602
を5×10-6Torrまで排気した。続いて、実験例6−1
と同様に、ゲートガスを供給し、表19に示す条件で、
基板604上に、i型のa−SiC:Hからなる堆積膜
を連続的に形成した。このとき、基板604の移動速度
を95cm/minとした。また、成膜容器602の内圧は、
堆積膜の形成中、14mTorrに保持するようにした。
【0287】
【表19】 実験例6−1と同様に、実験例6−1〜6−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例6−2
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均80Å/secであると算出された。堆積膜
中の全水素を定量したところ、14±2原子%であっ
た。
【0288】(実験例6−3)上述の各実験例6−1、
6−2による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜
容器602を5×10 -6Torrまで排気した。続いて、実
験例6−1と同様に、ゲートガスを供給し、表20に示
す条件で、基板604上に、不純物としてBを含むa−
Si:Hからなる堆積膜を連続的に形成した。このと
き、基板604の移動速度を95cm/minとした。また、
堆積膜の形成中、成膜容器602の内圧を4mTorrに保
持するようにした。
【0289】
【表20】 実験例6−1と同様に、実験例6−1〜6−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例6−3
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均110Å/secと算出された。堆積膜中の
全水素を定量したところ、18±2原子%であった。
【0290】(実験例6−4)上述の各実験例6−1〜
6−3による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、成膜
容器602を5×10 -6Torrまで排気した。続いて、実
験例6−1と同様に、ゲートガスを供給し、表21に示
す条件で、基板604上に、i型のa−SiGe:Hか
らなる堆積膜を連続的に形成した。このとき、基板60
4の移動速度を95cm/minとした。また、堆積膜の形成
中、成膜容器602の内圧を7mTorrに保持するように
した。
【0291】
【表21】 実験例6−1と同様に、実験例6−1〜6−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例6−4
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、堆積膜の
形成速度は平均95Å/secと算出された。また堆積膜中
の全水素を定量したところ、15±2原子%であった。
【0292】(実験例6−5)図26に示す連続堆積膜
形成装置650を用い、図52(a)に示した層構成のア
モルファスシリコン系太陽電池を作製した。このアモル
ファスシリコン太陽電池は、単一のpin接合を有し、
i型半導体層904におけるバンドギャッププロファイ
ルは図53(a)に示したものとなっている。
【0293】まず、上述の実験例6−1で使用したのと
同様の、SUS430BAからなる基板604を、不図
示の連続スパッタ装置に装着し、Ag電極(Ag純度:
99.99%)をターゲットとして、基板604の上に
厚さ1000ÅのAg薄膜をスパッタ蒸着した、さら
に、ZnO(ZnO純度:99.999%)電極をター
ゲットとして厚さ1.2μmのZnO薄膜をAg薄膜の
上にスパッタ蒸着し、基板604の上に下部電極902
を形成した。
【0294】次に、下部電極902の形成された基板6
04を、基板送り出し容器651に装着し、第1の真空
容器652、堆積膜形成装置600、第2の真空容器6
54を介し、巻取りチャンバ655まで通した。そし
て、基板604がたるまないように、基板604の張力
を調整し、実験例6−1同様に、各真空容器652,6
54、堆積膜形成装置600、基板送り出し容器65
1、基板巻取り容器655を5×10-6Torrまで排気し
た。
【0295】続いて、基板604を基板送り出し容器6
51から基板巻取り容器655に向けて連続的に移動さ
せながら、この基板604の上に、第1の真空容器65
2でn型半導体層903を、堆積膜形成装置600でi
型半導体層904を、第2の真空容器654でp型半導
体層905を順次形成するようにした。n型半導体層9
03とp型半導体層905の形成の条件は、表22に示
すとおりであり、i型半導体層904の形成条件は、実
験例6−1においてi型a−SiGe:Hからなる堆積
層を形成する場合と同じにした。各半導体層903〜9
05の形成は、それぞれの真空容器652,654の内
部と堆積膜形成装置600の内部でマイクロ波グロー放
電を生起させ、グロー放電によるプラズマが安定した
ら、基板604を移動速度95cm/minで移動させること
により行なった。なお、各真空容器652,654内に
おいて、マイクロ波グロー放電が発生している領域の、
基板604の移動方向の長さを表22の成膜領域の長さ
の欄に示した。
【0296】
【表22】 基板604の全長(200m)のすべてにわたって、各
半導体層903〜905が形成されたら、基板604を
冷却させてから連続堆積膜形成装置650から取り出
し、p型半導体層905の上に、さらに、透明電極90
6と集電電極907とを形成し、帯状の太陽電池を完成
させた。
【0297】次に、連続モジュール化装置(不図示)を
用いて、作製した太陽電池を、大きさが36cm×22
cmの多数の太陽電池モジュールに加工した。作製した
太陽電池モジュールについて、AM値が1.5でエネル
ギー密度100mw/cm2の疑似太陽光を用いて特性評価を
行なったところ、光電変換効率で7.8%以上が得ら
れ、また各太陽電池モジュール間の特性のばらつきも5
%以内に収まった。また、作製した太陽電池モジュール
の中から2個を抜き取り、連続200回の繰り返し曲げ
試験を行なったところ、試験後においても特性が劣化す
ることはなく、堆積膜の剥離などの現象も認められたか
った。さらに、上述のAM値が1.5でエネルギー密度
100mw/cm2の疑似太陽光に連続して500時間照射し
たのちにおいても、光電変換効率の変動は、初期値に対
して8.5%以内に収まっていた。
【0298】この太陽電池モジュールを接続することに
より、出力5kWの電力供給システムを作製することが
できた。 《実施例7》次に本発明の7番目の実施例について説明
する。図27に示す堆積膜形成装置700は、概ね直方
体形状であって金属製の真空容器701と、この真空容
器701内に設けられた第1、第2の成膜容器702,
703と、第1、第2の成膜容器702,703内にそ
れぞれ設けられたカゴ状であって金属製のパンチングボ
ード743,745からなる。
【0299】第1の成膜容器702は、上面の全面が開
口した概ね直方体形状の容器であって、パンチングボー
ド743は、概ね第1の成膜容器702の内壁に沿って
設けられているが、後述する第1および第2アプリケー
タ705,706に対応する位置には設けられておら
ず、また第1の成膜容器702の開口面に対応する部分
にも設けられていない。第2の成膜容器703も同様の
形状である。パンチングボード745は、概ね第2の成
膜容器703の内壁に沿って設けられているが、後述す
る第3のアプリケータ707に対応する位置には設けら
れておらず、また第2の成膜容器703の開口面に対応
する部分にも設けられていない。
【0300】堆積膜が形成される長尺の帯状の基板70
4は、真空容器701の図示左側すなわち搬入側の側壁
に取り付けられたガスゲート729を経てこの真空容器
701内に導入され、第1および第2の成膜容器70
2,703のそれぞれについて開口面に対し近接しつつ
対向し、真空容器701の図示右側すなわち搬出側の側
壁に取り付けられたガスゲート730を通って真空容器
701の外部に排出されるようになっている。各ガスゲ
ート729,730には、それぞれゲートガスを供給す
るためのゲートガス供給管735,736が接続されて
いる。基板704は、搬入側のガスゲート729に接続
された基板送り出し容器(不図示)から、搬出側のガス
ゲート730に接続された基板巻取り容器(不図示)に
向けて、連続的に移動させられるようになっている。ま
た、真空容器701には、この真空容器701を直接排
気するための排気管739が取り付けられ、この排気管
739は、真空ポンプなどの図示しない排気手段に接続
されている。
【0301】第1の成膜容器702には、この第1の成
膜容器702に対向しながら通過する基板704に対向
するように、第1、第2のアプリケータ705,706
が、基板704の移動方向に沿って並ぶように、取り付
けられている。各アプリケータ705,706は、第1
の成膜容器702内にマイクロ波エネルギーを導入する
ためのものであり、図示しないマイクロ波電源に一端が
接続された導波管711,712の他端が、それぞれ接
続されている。各アプリケータ705,706の第1の
成膜容器702への取り付け部位は、それぞれ、マイク
ロ波を透過する材料からなるマイクロ波導入窓708,
709となっている。
【0302】これらパンチングボード743,745
は、それぞれバイアス電源744,746に接続されて
いる。パンチングボード743,745にバイアス電圧
を印加することにより、成膜中の基板704に対してバ
イアス電位を印加できることになる。また、第1の成膜
容器702の搬出側すなわち図示右側の側壁には、原料
ガスを放出する第1のガス放出器714が取り付けら
れ、搬入側すなわち図示左側の側壁には、排気管716
が第1のガス放出器715に対向するように取り付けら
れている。第1のガス放出器714の表面には、原料ガ
スを放出するための多数のガス放出孔(不図示)が設け
られている。第1のガス放出器714は、ガスボンベな
どの図示しない原料ガス供給源に接続されたガス供給管
731の一端が取り付けられている。一方、排気管71
6は、接続管718を介して、真空ポンプなどの図示し
ない排気手段に接続されている。排気管716の第1の
成膜容器702への取り付け部には、排気流量の調整
と、マイクロ波エネルギーの漏洩の防止とを行なうため
の金網720が取り付けられている。
【0303】第1の成膜容器702の、基板704をは
さんで第1、第2のアプリケータ705,706の反対
側にくる部分には、多数の赤外線ランプヒーター724
と、これらの赤外線ランプヒーター724からの放射熱
を効率よく基板704に集中させるためのランプハウス
722が設けられている。また、赤外線ランプヒーター
724で加熱された基板704の温度を監視するための
熱電対737が、この基板704に接触するように、設
けられている。
【0304】第2の成膜容器703は、第1の成膜容器
702とほぼ同様の構成であり、基板704に対向する
ように、第3のアプリケータ707が取り付けられてい
る。第3のアプリケータ707には、図示しないマイク
ロ波電源に接続された導波管713が接続され、また第
3のアプリケータ707の第2の成膜容器703への取
り付け部分はマイクロ波導入窓710となっている。さ
らに、図示しないバイアス電圧印加手段に接続された複
数のバイアス棒744が、第2の成膜容器703内に設
けられている。
【0305】第2の成膜容器703の搬入側の側壁に
は、第2のガス放出器715が取り付けられ、第2のガ
ス放出器715は、図示しない原料ガス供給源と原料ガ
ス供給管732によって接続されている。また、第2の
成膜容器703の搬出側の側壁には、第2のガス放出器
715に対向するように、排気管717が取り付けら
れ、この排気管717は、接続管719を介して、図示
しない排気手段に接続されている。排気管717の第2
の成膜容器703への取り付け部には、金網721が設
けられている。さらに、第2の成膜容器703には、第
1の成膜容器702と同様に、赤外線ランプヒーター7
25とランプハウス723と熱電対738とが設けられ
ている。
【0306】基板704は、まず第1の成膜容器702
にその搬入側(図示左側)から接近し、第1の成膜容器
702の開口面上を通過してパンチングボード743に
対向し、第1の成膜容器702の搬出側(図示右側)か
ら遠ざかり、続いて第2の成膜容器703にその搬入側
から接近し、第2の成膜容器703の開口面上を通過し
てパンチングボード743に対向し、そして第2の成膜
容器703の搬出側から遠ざかるようになっている。第
1の成膜容器702の搬入側の側壁、第2の成膜容器7
03の排出側の側壁には、それぞれガード電極726,
727が設けられている。また、第1の成膜容器702
の搬出側と第2の成膜容器703の搬入側とは隣接して
いるので、これら相互を連結するようにガード電極72
8が設けられている。これら各ガード電極726〜72
8は、各成膜容器702,703の外側に向かって、帯
状の基板704の表側の面に(各アプリケータ705〜
707に対向する側の面)近接し対向して設けられ、か
つ図示しない接地手段により接地されている。これら各
ガード電極726〜728は、各成膜容器702,70
3からの、放電エネルギーや生成したプラズマの漏洩を
防止するためのものである。
【0307】次に、この堆積膜形成装置700の動作に
ついて説明する。まず、堆積膜形成装置700を貫通す
るように、搬入側のガスゲート729に接続された基板
送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲート73
0に接続された基板巻取り容器(不図示)にまで、帯状
の基板704を張りわたし、各排気管739,716,7
18を通じて、真空容器701、各成膜容器702,7
03内を真空に排気する。所定の真空度に到達したら、
各ゲートガス供給管735,736からゲートガスを各
ガスゲート729,730に供給する。ゲートガスは、
主として、真空容器701に取り付けられた排気管73
9から排気されることになる。
【0308】続いて、熱電対737の出力を監視しなが
ら、赤外線ランプヒーター724を作動させることによ
り、基板704を所定の温度にまで加熱する。そして、
各原料ガス供給管731,732から第1、第2のガス
放出器714,715のそれぞれに原料ガスを供給し、
原料ガスを各成膜容器702,703内に放出させる。
各ガス放出器714,715に供給される原料ガスは、
それぞれ、堆積膜の原料となる物質を複数種類含有して
いる。また、各導波管711〜713を介してマイクロ
波電力を各アプリケータ705〜707に印加する。ま
た、各バイアス棒743,744には、バイアス電位を
印加する。
【0309】さらに、基板送り出し容器(不図示)内に
設けられた基板送り出し手段(不図示)と、基板巻取り
容器(不図示)内に設けられた基板巻取り手段(不図
示)とを作動させ、基板704を基板送り出し容器から
基板巻取り容器に向けて連続的に移動させる。このよう
にすることにより、第1の成膜容器702と基板704
とではさまれた空間(第1の成膜空間733)におい
て、原料ガスが第1のガス放出器714から排気管71
6に向けて流れ、すなわち基板704の移動方向と逆方
向に流れる。さらに第1、第2のアプリケータ705,
706にマイクロ波電力が印加されているので、第1の
成膜空間733内において、マイクロ波グロー放電が生
起し、プラズマが発生し、原料ガスがプラズマにより分
解されて基板704上に堆積膜が形成される。このと
き、原料ガスが基板704の移動方向とは逆方向に流れ
るので、基板704の移動方向の位置によって堆積膜の
形成条件が異なることになり、かつ原料ガスが堆積膜の
原料となる物質を複数種類含有しているので、連続的に
移動している基板704上に形成される堆積膜には、膜
厚方向に組成の分布が生じることになる。このとき、パ
ンチングボード743によってバイアス電圧が印加され
ているので、バイアス電流が流れることになる。上述の
ように、パンチングボード743は第1の成膜容器70
2の内壁に沿って設けられているので、実質的に第1の
成膜空間733は、パンチングボード743と基板70
4にのみ囲まれていることになる。したがって、バイア
ス電流はパンチングボード743から基板704にのみ
流れ込むことになる。すなわち基板704以外に流れ込
むバイアス電流はなく、成膜の進行とともに第1の成膜
容器702の内壁などに大量の堆積膜が形成されたとし
ても、この堆積膜にはバイアス電流は流れ込まないか
ら、バイアス電流の変化は起こらないことになる。よっ
て、絶えず安定して高品質の堆積膜を基板704上に連
続して形成することが可能となる。
【0310】第1、第2のアプリケータ705,706
に印加するマイクロ波の電力をそれぞれ制御することに
より、より効果的に堆積膜の膜厚方向の組成分布を形成
することができる。ガード電極726,728が設けら
れているので、第1の成膜容器702からのマイクロ波
エネルギーやプラズマの漏洩は起こらない。第2の成膜
容器703についても、第1の成膜容器702と同様
に、第2のガス放出器715に原料ガスを供給し、第3
のアプリケータ707にマイクロ波電力を印加し、パン
チングボード745にバイアス電圧を印加することによ
り、基板704と第3のアプリケータ707とにはさま
れた空間(第2の成膜空間734)でプラズマが発生
し、基板704上に堆積膜が形成される。この場合も、
第2の成膜容器703の内壁などに大量の堆積膜が形成
されたとしても、バイアス電流は安定しており、堆積膜
の品質が低下することはない。この堆積膜においても、
膜厚方向に組成の分布が生じている。
【0311】基板704は、第1の成膜容器702から
第2の成膜容器703に向けて連続的に移動しているか
ら、第1の成膜容器702で形成された堆積膜の上に、
第2の成膜容器703で形成される堆積膜が積層される
ことになる。堆積膜の各成膜容器702,703で形成
された部分は、それぞれ膜厚方向に組成の分布が生じて
いるので、堆積膜全体としてみたときも、膜厚方向に組
成の分布が生じていることになる。
【0312】次に、図27に示した堆積膜形成装置70
0を組み込んだ連続堆積膜形成装置750について、図
28により説明する。この連続堆積膜形成装置750
は、pin接合を有する半導体素子を帯状の基板704
上に形成するのに適したものであり、上述の実施例5で
図20を用いて説明した連続堆積膜形成装置550にお
ける堆積膜形成装置500をこの実施例の堆積膜形成装
置700で置き換えた構成となっている。したがって、
基板送り出し容器551、第1の不純物形成用真空容器
552、堆積膜形成装置550、第2の不純物形成用真
空容器553、基板巻取り容器554を4個のガスゲー
ト561,729,730,562によって直列に接続し
た構成となっている。各ガスゲート561,729,73
0,562には、それぞれゲートガスを供給するための
ゲートガス供給管563,735,736,564がそれ
ぞれ接続されている。またこの連続堆積膜形成装置75
0の動作は、上述の実施例5での連続堆積膜形成装置5
50の動作と同様である。
【0313】次に、本実施例についての実験結果につい
て説明する。 (実験例7−1)図27に示した堆積膜形成装置700
を用い、搬入側のガスゲート729、搬出側のガスゲー
ト730に、それぞれ基板送り出し容器(不図示)、基
板巻取り容器(不図示)を接続した。この基板送り出し
容器と基板巻取り容器には、基板704を繰り出す基板
送り出し機構(不図示)と、基板704を巻取る基板巻
取り機構(不図示)が、それぞれ設けられている。
【0314】まず、ステンレス(SUS304BA)からなる基板
704(幅40cm×長さ200m×厚さ0.125mm)を
十分に脱脂、洗浄し、基板送り出し容器にこの基板70
4を巻いたボビン(不図示)を装着し、基板704を、
搬入側のガスゲート729、第1、第2の成膜容器70
2,703および搬出側のガスゲート730を介し、基
板巻取り容器まで通し、基板704がたるまないように
張力調整を行なった。そして、基板送り出し容器(不図
示)、真空容器701、各成膜容器702,703、基
板巻取り容器(不図示)のそれぞれを、不図示のメカニ
カルブースターポンプ/ロータリーポンプで荒引きし、
油拡散ポンプ(不図示)によって5×10-6Torr以下の
高真空にまで排気した。そののち、各赤外線ランプヒー
ター724,725を点灯させ、各熱電対736,737
の出力を監視しつつ、基板704の表面温度が300℃
になるように温度制御を行ない、加熱、脱ガスを行なっ
た。
【0315】十分に脱ガスが行なわれたところで、表2
3に示す条件により、各排気管716,717に接続さ
れた油拡散ポンプ(不図示)を作動させながら、各ガス
放出器714,715から堆積膜形成用の原料ガスを各
成膜容器702,703内に導入した。同時に、各ゲー
トガス供給管735,736より、各ガスゲート729,
730に、ゲートガスとして、それぞれ流量が300sc
cmのH2ガスを供給し、このゲートガスを、真空容器7
01に直接接続された排気管738と基板送り出し容器
(不図示)と基板巻取り容器(不図示)とを介して、排
気するようにした。この状態で、第1、第2の成膜容器
702,703内の圧力をそれぞれ8mTorr,6mTorrに保
持するようにした。
【0316】
【表23】 各成膜容器702,703内の圧力が安定したところ
で、各導波管711〜713、各アプリケータ705〜
707を介して、不図示のマイクロ波電源より、周波数
2.45GHzのマイクロ波を各成膜容器702,703内
に導入した。この結果、各成膜空間733,734内で
マイクロ波グロー放電が生起し、プラズマが発生した
が、各ガード電極726〜728の部分からの、マイク
ロ波およびプラズマの漏洩は認められなかった。また、
各成膜容器702,703内においてマイクロ波グロー
放電の発生する領域の大きさは、入射されるマイクロ波
の電力あるいは原料ガスの種類、流量によって変化する
ので、この領域の大きさを目視によって観察し、基板7
04の移動方向の長さとしてこの領域の大きさを求め
た。その結果を表23の成膜領域の長さの欄に示した。
【0317】次に、基板送り出し容器(不図示)から基
板巻取り容器(不図示)の方向に向け、すなわち図27
の図示矢印方向に、基板704の移動を開始した。この
ときの移動速度は、100cm/minであった。10分間に
わたり、基板704を連続的に移動させつつ、帯状の基
板704の上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積
膜の形成を行なった。
【0318】なお、基板704は、長さ200mと長尺
であるので、この実験例7−1を実施した後、基板70
4を堆積膜形成装置700に装着したまま、後述の各実
験例7−2〜7−4を連続して実施し、同一の帯状の基
板704の上に各実験例7−1〜7−4で形成された堆
積膜が、基板704上にその移動方向に対し、順次出現
するようにした。実験例7−1〜7−4に関する全ての
堆積膜の形成が終了したら、基板704を冷却させて堆
積膜形成装置700から取り出した。
【0319】この実験例7−1で形成された堆積膜につ
いて膜厚分布を測定したところ、基板704の幅方向お
よび長手方法に関し、膜厚のばらつきは5%以内に収ま
っていた。また堆積膜の形成速度を算出したところ、平
均95Å/secであった。次に、基板704の、この実
験例7−1でa−SiGe:Hからなる堆積膜が形成さ
れた部分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、2
次イオン質量分析計(SIMS)(CAMECA社製、
imf−3型)を用い、深さ方向の元素分布を測定し
た。その結果、図29に示した深さ方向分布が得られ、
図53(d)に示したのと同様のバンドギャッププロファ
イルとなっていることがわかった。また、金属中水素分
析計(堀場製作所製、EMGA−1100型)を用い
て、堆積膜中の全水素を定量したところ、16±2原子
%であった。なお、図29において、横軸は時間で表さ
れているが、2次イオン質量分析においては、経過時間
と深さが比例するので、図29の横軸を表面からの深さ
と考えて差し支えない。
【0320】(実験例7−2)上述の実験例7−1によ
る堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の原料ガスと
ゲートガスとの導入をいったん中止し、第1、第2の成
膜容器702,703をそれぞれ5×10-6Torrまで排
気した。続いて、実験例7−2と同様に、ゲートガスを
供給し、表24に示す条件で、基板704上に、i型の
a−SiC:Hからなる堆積膜を連続的に形成した。こ
のとき、基板704の移動速度を95cm/minとした。ま
た、第1、第2の成膜容器702,703の内圧は、堆
積膜の形成中、それぞれ14mTorrおよび12mTorrに保
持するようにした。
【0321】
【表24】 実験例7−1と同様に、実験例7−1〜7−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例7−2
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆
積膜の形成速度は平均80Å/secであると算出された。
【0322】次に、実験例7−1と同様に、この実験例
7−2でa−SiC:Hからなる堆積膜が形成された部
分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向
の元素分布を測定した。その結果、図30に示した深さ
方向分布が得られ、図53(c)に示したのと同様のバン
ドギャッププロファイルとなっていることがわかった。
また、堆積膜中の全水素を定量したところ、14±2原
子%であった。
【0323】(実験例7−3)上述の各実験例7−1、
7−2による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、第
1、第2の成膜容器702,703をそれぞれ5×10
-6Torrまで排気した。続いて、実験例7−1と同様に、
ゲートガスを供給し、表25に示す条件で、基板704
上に、不純物としてBを含むa−Si:Hからなる堆積
膜を連続的に形成した。このとき、基板704の移動速
度を95cm/minとした。また、堆積膜の形成中、第1、
第2の成膜容器702,703の内圧をそれぞれ4mTorr
および5mTorrに保持するようにした。
【0324】
【表25】 実験例7−1と同様に、実験例7−1〜7−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例3で形
成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつきを
調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆積膜
の形成速度は平均110Å/secであると算出された。
【0325】次に、実験例7−1と同様に、この実験例
7−3でa−Si:Hからなる堆積膜が形成された部分
について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向の
元素分布を測定した。その結果、図31に示した深さ方
向分布が得られ、図54(b)に示したのと同様のフェル
ミレベルプロファイルとなっていることがわかった。ま
た、堆積膜中の全水素を定量したところ、18±2原子
%であった。
【0326】(実験例7−4)上述の各実験例7−1〜
7−3による堆積膜の形成が終ったら、堆積膜形成用の
原料ガスとゲートガスとの導入をいったん中止し、第
1、第2の成膜容器702,703をそれぞれ5×10
-6Torrまで排気した。続いて、実験例7−1と同様に、
ゲートガスを供給し、表26に示す条件で、基板704
上に、i型のa−SiGe:Hからなる堆積膜を連続的
に形成した。このとき、基板704の移動速度を95cm
/minとした。また、堆積膜の形成中、第1、第2の成膜
容器702,703の内圧をそれぞれ7mTorrおよび9mT
orrに保持するようにした。
【0327】
【表26】 実験例7−1と同様に、実験例7−1〜7−4について
の堆積膜の形成がすべて終了した後、この実験例7−4
で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のばらつ
きを調べたところ、5%以内に収まっており、また、堆
積膜の形成速度は平均95Å/secであると算出された。
【0328】次に、実験例7−1と同様に、この実験例
7−4でa−SiGe:Hからなる堆積膜が形成された
部分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方
向の元素分布を測定した。その結果、図32に示した深
さ方向分布が得られ、図53(b)に示したのと同様のバ
ンドギャッププロファイルとなっていることがわかっ
た。また、堆積膜中の全水素を定量したところ、15±
2原子%であった。
【0329】(実験例7−5)図28に示す連続堆積膜
形成装置750を用い、図52(a)に示した層構成のア
モルファスシリコン系太陽電池を作製した。このアモル
ファスシリコン太陽電池は、単一のpin接合を有し、
i型半導体層904におけるバンドギャッププロファイ
ルは図53(d)に示したものとなっている。
【0330】まず、上述の実験例7−1で使用したのと
同様の、SUS430BAからなる帯状の基板704
を、不図示の連続スパッタ装置に装着し、Ag電極(A
g純度:99.99%)をターゲットとして、基板70
4の上に厚さ1000ÅのAg薄膜をスパッタ蒸着し
た、さらに、ZnO(ZnO純度:99.999%)電
極をターゲットとして厚さ1.2μmのZnO薄膜をA
g薄膜の上にスパッタ蒸着し、基板704の上に下部電
極902を形成した。
【0331】次に、下部電極902の形成された基板7
04を、基板送り出し容器551に装着し、第1の不純
物層形成用真空容器552、堆積膜形成装置700、第
2の不純物層形成用真空容器553を介し、基板巻取り
容器554まで通した。そして、基板704がたるまな
いように、基板704の張力を調整し、実験例7−1同
様に、各不純物層形成用真空容器552,553、堆積
膜形成装置700、基板送り出し容器551、基板巻取
り容器554を5×10-6Torrまで排気した。
【0332】続いて、基板704を真空送り出し容器5
51から真空巻取り容器554に向けて連続的に移動さ
せながら、この基板704の上に、第1の不純物層形成
用真空容器552でn型半導体層903を、堆積膜形成
装置700でi型半導体層904を、第2の不純物層形
成用真空容器553でp型半導体層905を順次形成す
るようにした。n型半導体層903とp型半導体層90
5の形成の条件は、表27に示すとおりであり、i型半
導体層904の形成条件は、実験例7−1においてi型
a−SiGe:Hからなる堆積層を形成する場合と同じ
にした。各半導体層903〜905の形成は、それぞれ
の不純物層形成用真空容器552、553の内部と堆積
膜形成装置700の内部でマイクロ波グロー放電を生起
させ、グロー放電によるプラズマが安定したら、基板7
04を移動速度95cm/minで移動させることにより行な
った。なお、各不純物層形成用真空容器552,553
内において、マイクロ波グロー放電が発生している領域
の、基板704の移動方向の長さを表27の成膜領域の
長さの欄に示した。
【0333】
【表27】 基板704の全長(200m)のすべてにわたって、各
半導体層903〜905が形成されたら、基板704を
冷却させてから連続堆積膜形成装置750から取り出
し、p型半導体層905の上に、さらに、透明電極90
6と集電電極907とを形成し、帯状の太陽電池を完成
させた。
【0334】次に、連続モジュール化装置(不図示)を
用いて、作製した太陽電池を、大きさが36cm×22
cmの多数の太陽電池モジュールに加工した。作製した
太陽電池モジュールについて、AM値が1.5でエネル
ギー密度100mw/cm2の疑似太陽光を用いて特性評価を
行なったところ、光電変換効率で7.8%以上が得ら
れ、また各太陽電池モジュール間の特性のばらつきも5
%以内に収まった。また、作製した太陽電池モジュール
の中から2個を抜き取り、連続200回の繰り返し曲げ
試験を行なったところ、試験後においても特性が劣化す
ることはなく、堆積膜の剥離などの現象も認められたか
った。さらに、上述のAM値が1.5でエネルギー密度
100mw/cm2の疑似太陽光に連続して500時間照射し
たのちにおいても、光電変換効率の変動は、初期値に対
して8.5%以内に収まっていた。
【0335】この太陽電池モジュールを接続することに
より、出力5kWの電力供給システムを作製することが
できた。 (実験例7−6)実験例7−5においては、i型半導体
層904として、a−SiGe:H堆積膜を用いたが、
ここではa−SiGe:Hのかわりにa−SiC:Hを用
いて太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工し
た。このi型半導体層904を実験例7−2と同様の条
件で堆積させる以外は実験例7−と同様にした。なお、
このi型半導体層904は、図53(c)に示すようなバ
ンドギャッププロファイルとなっている。
【0336】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例7−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で7.2%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0337】(実験例7−7)実験例7−5において
は、i型半導体層404として、a−SiGe:H堆積
膜を用いたが、ここではa−SiGe:Hのかわりにa
−Si:Hを用いて太陽電池を作製し、太陽電池モジュ
ールに加工した。このi型半導体層904を実験例7−
3と同様の条件で堆積させる以外は実験例7−5と同様
にした。なお、このi型半導体層904は、図54(b)
に示すようなフェルミレベルプロファイルとなってい
る。
【0338】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例7−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で8.4%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0339】(実験例7−8)図52(c)に示す、2組
のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン系
太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。作
製にあたっては、2組のpin接合を形成できるよう
に、図28に示す連続堆積膜形成装置750の第2の不
純物層形成用真空容器553と基板巻取り容器554と
の間に、この連続堆積膜形成装置750の第1の不純物
層形成用真空容器552、堆積膜形成装置700、第2
の不純物層形成用真空容器553を順次直列に接続した
ものを挿入した構成の装置を用いた。
【0340】基板704としては、実験例7−1で使用
したのと同様のものを使用し、2組のpin接合のう
ち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合911
は、上述の実験例7−5でのpin接合と同じ条件で形
成し、光の入射側に近い方の第2のpin接合912
は、実験例7−7のpin接合と同じ条件で形成した。
第1、第2のpin接合911,912の形成後、実験
例7−5と同様の工程により、太陽電池モジュールとし
た。
【0341】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例7−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で11.0%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まって
いた。この太陽電池モジュールを使用することにより、
出力5kWの電力供給システムを作製することができ
た。
【0342】(実験例7−9)図52(c)に示す、2組
のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン系
太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。作
製にあたっては、第1のpin接合911を上述の実験
例7−7でのpin接合と同じ条件で形成し、第2のp
in接合912をは実験例7−6のpin接合と同じ条
件で形成したこと以外は、実験例7−8と同様にした。
【0343】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例5と同様の特性の評価を行なったところ、光電変換
効率で10.5%以上が得られ、さらに各太陽電池モジ
ュール間の特性のばらつきも5%以内に収まっていた。
また、連続200回の繰り返し曲げ試験後においても、
特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらなかっ
た。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射ののち
の光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まってい
た。この太陽電池モジュールを使用することにより、出
力5kWの電力供給システムを作製することができた。
【0344】(実験例7−10)図52(d)に示す、3
組のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン
系太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。
作製にあたっては、3組のpin接合を形成できるよう
に、図28に示す連続堆積膜形成装置750の第2の不
純物層形成用真空容器553と基板巻取り容器554と
の間に、この連続堆積膜形成装置750の第1の不純物
層形成用真空容器552、堆積膜形成装置700、第2
の不純物層形成用真空容器553、第1の不純物層形成
用真空容器552、堆積膜形成装置700、第2の不純
物層形成用真空容器553を順次直列に接続したものを
挿入した構成の装置を用いた。
【0345】帯状の基板704としては、実験例7−1
で使用したのと同様のものを使用し、3組のpin接合
のうち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合91
1は、上述の実験例7−5でのpin接合と同じ条件で
形成し、第2のpin接合912は、実験例7−7のp
in接合と同じ条件で形成し、光の入射側に位置する第
3のpin接合913は、実験例7−6のpin接合と
同じ条件で形成した。各pin接合911〜913の形
成後、実験例7−5と同様の工程により、太陽電池モジ
ュールとした。
【0346】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例7−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で12.0%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7%以内に収まってい
た。この太陽電池モジュールを使用することにより、出
力5kWの電力供給システムを作製することができた。
【0347】《実施例8》図33は、本発明の実施例8
の堆積膜形成方法の実施に使用される堆積膜形成装置の
構成を示す概略図であり、図34は主要な内部構成を立
体図として示したものである。図33および34に示さ
れる堆積膜形成装置891は、概ね直方体形状の金属製
の真空容器800と、この真空容器内に設けられた成膜
容器801とからなる。
【0348】堆積膜が形成される長尺の帯状の基板80
4は、真空容器800の図示左側すなわち搬入側の側壁
に取り付けられたガスゲート803を経て、この真空容
器800内に導入され、成膜容器801内の成膜空間8
02を貫通し、真空容器800の図示右側すなわち搬出
側の側壁に取り付けられたガスゲート805を通って、
真空容器800内の外部に排出されるようになってい
る。
【0349】各ガスゲート803,805には、それぞ
れゲートガスを供給するためのゲートガス供給管80
6,807が接続されている。基板804は、搬入側の
ガスゲート803に接続された基板送り出し容器(不図
示)から搬出側のガスゲート805に接続された基板巻
き取り容器(不図示)に向けて、連続的に移動させられ
るようになっている。また、真空容器800には、この
真空容器800内を直接排気するための排気管808が
取り付けられ、この排気管808は、バルブ808aを
介して真空ポンプなどの図示しない排気手段に接続され
ている。
【0350】成膜容器801は、導電性部材で構成され
た柱状の構造をし、基板804は成膜容器801を形成
する壁面の一部をなしている。プラズマが実質的に形成
される空間である成膜空間802は、成膜容器801内
に、基板804に接して形成される。この成膜空間80
2は、基板804に垂直にかつ幅方向に設置した金属製
の壁(すなわち分離壁、仕切壁)809によって、複数
の小成膜空間810に分割されている。各小成膜空間8
10には、基板804と垂直な成膜容器801の側面か
ら、マイクロ波アプリケータ811が、基板804の移
動方向に沿って並ぶように、取り付けられている。各マ
イクロ波アプリケータ811は、成膜空間802内にマ
イクロ波エネルギーを放射、伝達させるためのものであ
り、図示しないマイクロ波電源に一端が接続された導波
管812の他端が、それぞれ接続されている。
【0351】成膜容器801においては、この成膜容器
801を貫通する帯状の基板804に垂直であって、マ
イクロ波アプリケータ811と対向する排気面819か
ら原料ガスが排気される。排気面819はメッシュもし
くはパンチングボードで形成され、マイクロ波エネルギ
ーの漏洩を防いでいる。成膜容器801には、基板80
4と平行にかつ基板804の幅方向に延びた、ロッド状
の原料ガス放出手段814が設けられている。原料ガス
放出手段814に表面には、原料ガスを放出するための
多数のガス放出孔が設けられている。原料ガス放出手段
814は、成膜容器801の外部において、ガスボン
ベ、マスフローコントローラなどの図示しない原料ガス
供給源に接続された原料ガス供給管815の一端と、絶
縁ガイシ821を介して接続されている。小成膜空間8
10のそれぞれは、少なくともひとつの原料ガス放出手
段814が設けられ、堆積膜形成用の原料ガスが供給さ
れるようになっている。この原料ガス放出手段814
は、金属製であって、直流もしくは交流のバイアス電圧
を印加するためのバイアス電極も兼ねている。バイアス
電極を兼ねるため原料ガス放出手段814には、バイア
ス供給線822を介して、真空容器800の外部のバイ
アス電源(不図示)から直流もしくは交流のバイアスを
印加することができるようになっている。
【0352】帯状の基板804をはさんで成膜空間80
2の反対側には、多数の赤外線ランプヒータ816と、
これらの赤外線ランプヒータ816からの放射熱を効率
良く基板804に集中させるためのランプハウス817
が設けられている。赤外線ランプヒータ816で加熱さ
れた基板804の温度を監視するための熱電対818
が、基板804に接触するように設けられている。
【0353】次に、この堆積膜形成装置891の動作に
ついて説明する。まず、堆積膜形成装置891を貫通す
るように、搬入側のガスゲート803に接続された基板
送り出し容器(不図示)から、搬出側のガスゲート80
5に接続された基板巻き取り容器(不図示)にまで、例
えばSUS403BAからなる帯状の基板804を張り
渡し、排気管808を通じて真空容器801および成膜
空間802内を排気する。所定の真空度圧力に到達した
ら、各ゲートガス供給管806,807からゲートガス
を各ガスゲート803,805に供給する。ゲートガス
は、主として真空容器801に取り付けられた排気管8
08から排気されることになる。
【0354】次に、基板送り出し容器(不図示)内に設
けられた基板送り出し手段(不図示)と、基板巻き取り
容器(不図示)内に設けられた基板巻き取り手段(不図
示)とを作動させ、基板804を基板送り出し容器から
基板巻き取り容器に向けて連続的に移動させる。そし
て、熱電対818の出力を監視しながら赤外線ランプヒ
ータ816を作動させることにより、基板804を所定
の温度にまで加熱する。各原料ガス供給管815から原
料ガス放出手段814に原料ガスを供給し、各小成膜空
間810内に放出させる。各原料ガス放出手段814に
供給される原料ガスは、それぞれ、堆積膜の原料となる
物質を複数種類含有している。
【0355】次に、各導波管812を介してマイクロ波
電源からマイクロ波電力を各マイクロ波アプリケータ8
11に供給して、成膜空間802内にマイクロ波グロー
放電を生起させた。放電が生起するまでは基板804や
その他成膜容器802を構成する壁面はマイクロ波の反
射体となるので、効率良くマイクロ波エネルギーを成膜
空間802内に蓄積でき、容易に放電を生起させること
ができる。放電生起後、例えば直流+90Vのバイアス
電圧を原料ガス放出手段814に印加する。
【0356】以上の動作により、原料ガスが成膜空間8
02内で分解し、連続的に移動しつつある基板804上
に堆積膜が形成される。この堆積膜形成装置891で
は、各小成膜空間810では、原料ガスの種類、供給
量、マイクロ波パワー、バイアス電圧、圧力を適当に選
択することにより、堆積膜の形成条件を変えることがで
きる。その結果、連続的に移動している基板804に形
成される堆積膜には、膜厚方向に組成の分布が生じるこ
とになる。各小成膜空間810を分離する壁809(仕
切板)の開口率を調整することにより、膜厚方向に生じ
る組成の傾斜角度を変えることができる。
【0357】成膜空間を小成膜空間に分離して大面積の
機能製堆積膜を連続的に形成する方法を適用した堆積膜
形成装置は、図33および図34に示しただけのもので
はない。図35〜図37に、他の堆積膜形成装置の成膜
容器の例を示す。図35に示したものでは、成膜容器8
01aの背面壁819aから成膜容器801a内のガス
を排気するようになっている。また、原料ガス放出手段
とバイアス電極とが各小成膜空間ごとに別個に設けられ
ている。すなわち成膜容器801aの底面壁に原料ガス
放出手段813が設けられ、原料ガスは原料ガス放出手
段813のガスは小さな多数の開口から各小成膜空間8
10に放出されるようになっている。これに対しバイア
ス電極820は、基板804と平行にかつ基板804の
幅方向に延びたロッド状の部材であって、成膜容器80
1aに取り付けられている。
【0358】図36に示した成膜容器801bでは、マ
イクロ波アプリケータ811が、帯状の基板804と平
行に、かつ基板804の幅方向に対向して成膜容器80
1bに設置されている。バイアス電極を兼ねた原料ガス
放出手段814が、対向したマイクロ波アプリケータ8
11の中心軸上に基板804と平行に設置されている。
小成膜空間810内の原料ガスは、成膜容器801bの
基板804の移動方向両端の壁面819bから外部に排
出される。また、各小成膜空間810を分離する壁80
9はパンチングボードで形成され、両隣の小成膜空間に
ガスの相互拡散が可能となっている。
【0359】図37に示した成膜容器801cは、図3
6に示した成膜容器801bにおいて、各小成膜空間8
10内の原料ガスの排気方向を基板804と対向する成
膜容器801cの底面にしたものである。したがって成
膜容器801cの底面壁には多数の小さい開口が設けら
れている。次に、図33に示した堆積膜形成装置891
を組み込んだ連続堆積膜形成装置850について、図3
8により説明する。
【0360】この連続堆積膜形成装置850は、pin
接合を有する半導体素子を帯状の基板804上に形成す
るのに適したものであり、基板送り出し容器851、第
1の不純物形成用真空容器852、堆積膜形成装置89
1、第2の不純物形成用真空容器853、基板巻取り容
器854を4個のガスゲート861,803,805,8
62によって直列に接続した構成となっている。各ガス
ゲート861,803,805,862には、それぞれゲ
ートガスを供給するためのゲートガス供給管863,8
06,807,864がそれぞれ接続されている。
【0361】基板送り出し容器851は、基板804を
格納して基板巻取り容器854に向けて送り出すための
ものであり、基板804が巻かれるボビン865が装着
されるようになっている。また、基板送り出し容器85
1には、図示しない排気手段に接続された排気管866
が取り付けられ、この排気管866の途中には、基板送
り出し容器851内の圧力を制御するためのスロットル
バルブ867が設けられている。さらに、基板送り出し
容器851には、圧力計868、基板804を加熱する
ためのヒーター869、基板804を支持、搬送するた
め搬送ローラ870が設けられている。なお、ボビン8
65には、基板804を送り出すための図示しない基板
送り出し機構が接続されている。
【0362】第1および第2の不純物層形成用真空容器
852,853は、同一の構造であって、p型あるいは
n型の半導体層を形成するためのものである。各不純物
層形成用真空容器852,853には、図示しない排気
手段に接続された排気管871,872が取り付けら
れ、この排気管871,872の途中には、不純物層形
成用真空容器852,853の内圧を制御するためのス
ロットルバルブ873,874が設けられている。各不
純物層形成用真空容器852,853は、マイクロ波プ
ラズマCVD法による連続堆積膜形成装置であり、その
内部には、直方体状の成膜容器875,876がそれぞ
れ設けられている。この成膜容器875,876は、小
成膜空間に分割されていないことを除けば上述の堆積膜
形成装置891での成膜容器と同様のものであり、内部
の成膜空間にプラズマを生起させ、移動する基板804
上に堆積膜を形成するものである。成膜容器875,8
76内には、堆積膜形成用原料ガスを導入するための原
料ガス放出手段877,878と、マイクロ波エネルギ
ーを導入するためのマイクロ波アプリケータ879,8
80が設けられている。さらに各不純物層形成用真空容
器852,853内には、堆積膜形成中の基板804を
加熱するヒータ881,882と、基板804を搬送す
るための搬送ローラ825が設けられている。
【0363】堆積膜形成装置891は、成膜空間802
が7つの小成膜空間810に分割されている。基板巻取
り容器854は、堆積膜が形成された基板804を巻取
るためのものであり、基板送り出し容器851と同様の
構成である。ただし帯状の基板804を巻取るため、ボ
ビン883には、図示しない基板巻取り機構が接続され
るようになっている。
【0364】次に、この連続堆積膜形成装置850の動
作について、pin接合を有する半導体素子を形成する
場合を中心にして、説明する。まず、基板804を基板
送り出し容器851から基板巻取り容器854に向けて
たるまないように張力をかけてカテナリー曲線状に張り
わたす。張り渡した基板805は各真空容器内に設置さ
れた搬送ローラ825に裏面(堆積膜が形成されない
面)が接触している。続いて、基板送り出し容器85
1、各不純物形成用真空容器852,853、堆積膜形
成装置891、基板巻取り容器854を排気し、所定の
真空度に到達したら、各ガスゲート861,803,80
5,862にゲートガスを供給する。
【0365】次に、各不純物層形成用真空容器302,
303に、p型あるいはn型の半導体層を形成するため
の原料ガスを供給し、堆積膜形成装置891にi型の半
導体層を形成するための原料ガスを供給し、さらに各不
純物層形成用真空容器852,853、堆積膜形成装置
891にマイクロ波電力を供給し、基板804の基板送
り出し容器851から基板巻取り容器854に向けた移
動を開始させることによって、これら各不純物層形成用
真空容器852,853、堆積膜形成装置891におい
てプラズマが生起し、基板804の上に堆積膜が形成す
る。基板804は、第1の不純物層形成用真空容器85
2、堆積膜形成装置891、第2の不純物層形成用真空
容器853と連続的に移動しているので、基板804の
上にpin接合を有する半導体素子が形成されることに
なる。このとき、堆積膜形成装置891では、上述のよ
うに堆積膜の膜厚方向に組成の分布を持たせることがで
きるので、形成された半導体素子においては、i型の半
導体層の膜厚方向に、例えば、バンドギャップやフェル
ミレベルを変化させることができる。
【0366】次に、本実施例について行なった実験結果
について、具体的数値を挙げて説明する。なお、ここで
述べる各実験例は、上記の「作用」欄で図52〜図54
を用いて説明したアモルファスシリコン系太陽電池ある
いはこの太陽電池の構成要素であるアモルファスシリコ
ン半導体膜の形成に、本実施例の堆積膜形成方法を適用
したものである。ここでi型半導体層のバンドギャップ
プロファイルあるいはフェルミレベルプロファイルにつ
いてさらに詳しく説明すると、これらのプロファイルは
上述の図53あるいは図54に示されるように、連続的
かつ滑らかに変化することが望ましい。しかし、堆積膜
のバンドギャップあるいはフェルミレベルの変化に対し
てその最適な堆積膜形成条件(例えばガス種混合比、マ
イクロ波パワー、圧力、基板温度など)も変化するた
め、最適な堆積膜形成条件を維持したままバンドギャッ
ププロファイルおよびフェルミレベルプロファイルの連
続的制御を行なうことは容易ではない。本実施例では、
成膜空間を複数の小成膜空間に分割することにより、図
39(a)〜(c)および図41(a)に示したように近似的に
階段状にこれらバンドギャップやフェルミレベルを変化
させることにした。
【0367】また、小成膜空間を分離する壁を通して原
料ガスの相互拡散を生じさせることも可能であり、この
ようにすることによって、良好な堆積膜形成条件を維持
しつつ、バンドギャップおよびフェルミレベルの階段状
の変化部分を図40(a)〜(c)および図41(b)に示した
ように滑らかに接続することを可能とした。 (実験例8−1)図33に示した堆積膜形成装置891
を用い、搬入側のガスゲート803、搬出側のガスゲー
ト805に、それぞれ基板送り出し容器(不図示)、基
板巻取り容器(不図示)を接続した。この基板送り出し
容器と基板巻取り容器には、帯状の基板を繰り出す基板
送り出し機構(不図示)と、帯状の基板を巻取る基板巻
取り機構(不図示)が、それぞれ設けられている。ただ
し、堆積膜形成装置891の成膜空間は7つの小成膜空
間810に分割した。小成膜空間810を分離する壁8
09は、原料ガスの相互拡散が起こらないように、開口
のない板とした。
【0368】まず、ステンレス(SUS304BA)からなる帯状
の基板804(幅20cm×長さ200m×厚さ0.125
mm)を十分に脱脂、洗浄し、基板送り出し容器にこの基
板804を巻いたボビン(不図示)を装着し、基板80
4を、搬入側のガスゲート803、成膜容器801およ
び搬出側のガスゲート805を介し、基板巻取り容器ま
で通し、基板804がたるまないように張力調整を行な
った。そして、基板送り出し容器(不図示)、真空容器
800、成膜容器801、基板巻取り容器(不図示)の
それぞれを、不図示のメカニカルブースターポンプ/ロ
ータリーポンプで荒引きし、油拡散ポンプ(不図示)に
よって5×10-6Torr以下の高真空にまで排気した。そ
ののち、赤外線ランプヒーター816を点灯させ、熱電
対818の出力を監視しつつ、基板804の表面温度が
300℃になるように温度制御を行ない、加熱、脱ガス
を行なった。
【0369】十分に脱ガスが行なわれたところで、表2
8に示す条件により、排気管808に接続された油拡散
ポンプ(不図示)を作動させながら、各ガス放出手段8
14から堆積膜形成用の原料ガスを各小成膜容器810
内に導入した。同時に、各ゲートガス供給管806,8
07より、各ガスゲート803,805に、ゲートガス
とし、それぞれ流量が300sccmのH2ガスを供給し、
真空容器800に直接接続された排気管808と基板送
り出し容器(不図示)と基板巻取り容器(不図示)とを
介してこのゲートガス、排気するようにした。この状態
で、成膜容器801内の圧力を6mTorrに保持するよう
にした。
【0370】
【表28】
【0371】成膜容器801内の圧力が安定したところ
で、各導波管812、各マイクロ波アプリケータ811
を介して、不図示のマイクロ波電源より周波数2.45
GHzのマイクロ波を成膜容器801内に導入した。こ
の結果、成膜空間802の各小成膜空間810内でマイ
クロ波グロー放電が生起し、プラズマが発生した。次
に、基板送り出し容器(不図示)から基板巻取り容器
(不図示)の方向に向け、すなわち図33の図示矢印方
向に、基板804の移動を開始した。このときの移動速
度は、100cm/minであった。10分間にわたり、基板
804を連続的に移動させつつ基板804の上に、i型
のa−SiGe:Hからなる堆積膜の形成を行なった。
堆積膜の形成が終了したら、基板803を冷却させて堆
積膜形成装置891から取り出した。
【0372】この実験例8−1で形成された堆積膜につ
いて膜厚分布を測定したところ、基板804の幅方向お
よび長手方法に関し、膜厚のばらつきは5%以内に収ま
っていた。堆積膜の形成速度を算出したところ、平均9
5Å/secであった。次に、基板804の、この実験例
8−1でa−SiGe:Hからなる堆積膜が形成された
部分について、任意に6ヶ所を選んで切りだし、2次イ
オン質量分析計(SIMS)(CAMECA社製、im
f−3型)を用い、深さ方向の元素分布を測定した。そ
の結果、図42に示した深さ方向分布が得られ、図39
(c)に示したのと同様のバンドギャッププロファイルと
なっていることがわかった。また、金属中水素分析計
(堀場製作所製、EMGA−1100型)を用いて、堆
積膜中の全水素を定量したところ、16±2原子%であ
った。なお、図42において、横軸は時間で表されてい
るが、2次イオン質量分析においては、経過時間と深さ
が比例するので、図42の横軸を表面からの深さと考え
て差し支えない。
【0373】(実験例8−2)上述の実験例8−1に用
いた堆積膜形成装置891の7つの小成膜空間810を
分離する壁809の開孔率を25%として、原料ガスの
相互拡散をある程度可能とした。その他の装置構成は実
験例8−1と変えずに、実験例8−1と同様の条件にて
基板804上に堆積膜を形成した。
【0374】この実験例8−2で形成された堆積膜につ
いて、その膜厚の分布のばらつきを調べたところ、5%
以内に収まっており、また、堆積膜の形成速度は平均8
0Å/secであると算出された。次に、実験例8−1と同
様に、この実験例8−2でa−SiGe:Hからなる堆
積膜が形成された部分について、任意に6ヶ所を選んで
切りだし、深さ方向の元素分布を測定した。その結果、
図43に示した深さ方向分布が得られ、図40(c)に示
したのと同様のバンドギャッププロファイルとなってい
ることがわかった。隣接する小成膜空間で形成される堆
積膜のバンドギャップのつながりは連続的となった。ま
た、堆積膜中の全水素を定量したところ、14±2原子
%であった。
【0375】(実験例8−3)実験例8−2と同様にゲ
ートガスを供給し、表29に示す条件で、基板804上
にi型のa−SiC:Hからなる堆積膜を連続的に形成
した。このとき、基板804の移動速度を95cm/minと
した。また、成膜容器801の内圧は、堆積膜の形成
中、12mTorrに保持するようにした。
【0376】
【表29】
【0377】堆積膜の形成が終了した後、この実験例8
−3で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のば
らつきを調べたところ、5%以内に収まっており、ま
た、堆積膜の形成速度は平均80Å/secであると算出さ
れた。また、実験例8−1と同様に、この実験例8−3
でa−SiC:Hからなる堆積膜が形成された部分につ
いて、任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向の元素
分布を測定した。その結果、図44に示した深さ方向分
布が得られ、図40(b)に示したのと同様のバンドギャ
ッププロファイルとなっていることがわかった。また、
堆積膜中の全水素を定量したところ、14±2原子%で
あった。
【0378】(実験例8−4)実験例2と同様にして、
表30に示す条件で、基板804上に、不純物としてB
を含むa−Si:Hからなる堆積膜を連続的に形成し
た。このとき、基板804の移動速度を95cm/minとし
た。また、堆積膜の形成中、成膜容器801の内圧を5
mTorrに保持するようにした。
【0379】
【表30】
【0380】堆積膜の形成が終了した後、この実験例8
−4で形成された堆積膜について、その膜厚の分布のば
らつきを調べたところ、5%以内に収まっており、ま
た、堆積膜の形成速度は平均110Å/secであると算出
された。実験例8−1と同様に、この実験例8−4でa
−Si:Hからなる堆積膜が形成された部分について、
任意に6ヶ所を選んで切りだし、深さ方向の元素分布を
測定した。その結果、図45に示した深さ方向分布が得
られ、図41(b)に示したのと同様のフェルミレベルプ
ロファイルとなっていることがわかった。また、堆積膜
中の全水素を定量したところ、18±2原子%であっ
た。
【0381】(実験例8−5)図38に示す連続堆積膜
形成装置850を用い、図52(a)に示した層構成のア
モルファスシリコン系太陽電池を作製した。堆積膜形成
装置891内の成膜空間802は7つの小成膜空間81
0に分割し、小成膜空間810を分離する壁は開口のな
い板とした。このアモルファスシリコン太陽電池は、単
一のpin接合を有し、i型半導体層404におけるバ
ンドギャッププロファイルは図40(c)に示したものと
なっている。
【0382】まず、上述の実験例1で使用したのと同様
の、SUS430BAからなる帯状の基板804を、不
図示の連続スパッタ装置に装着し、Ag電極(Ag純
度:99.99%)をターゲットとして、基板804の
上に厚さ1000ÅのAg薄膜をスパッタ蒸着した、さ
らに、ZnO(ZnO純度:99.999%)電極をタ
ーゲットとして厚さ1.2μmのZnO薄膜をAg薄膜
の上にスパッタ蒸着し、基板804の上に下部電極90
2を形成した。
【0383】次に、下部電極902の形成された基板8
04を、基板送り出し容器851に装着し、第1の不純
物層形成用真空容器852、堆積膜形成装置891、第
2の不純物層形成用真空容器853を介し、基板巻取り
容器854まで通した。そして、基板804がたるまな
いようにその張力を調整し、実験例8−1と同様に、各
不純物層形成用真空容器852,853、堆積膜形成装
置891、基板送り出し容器851、基板巻取り容器8
54を5×10-6Torrまで排気した。
【0384】続いて、基板804を基板送り出し容器8
51から基板巻取り容器3854に向けて連続的に移動
させながら、この基板804の上に、第1の不純物層形
成用真空容器852でn型半導体層903を、堆積膜形
成装置891でi型半導体層904を、第2の不純物層
形成用真空容器853でp型半導体層905を順次形成
するようにした。n型半導体層903とp型半導体層9
05の形成の条件は、表31に示すとおりであり、i型
半導体層904の形成条件は、実験例8−1においてi
型a−SiGe:Hからなる堆積層を形成する場合と同
じにした。各半導体層903〜905の形成は、各不純
物層形成用真空容器852,853の内部と堆積膜形成
装置891の内部でマイクロ波グロー放電を生起させ、
グロー放電によるプラズマが安定したら、基板804を
移動速度95cm/minで移動させることにより行なった。
なお、各不純物層形成用真空容器852,853内にお
いて、マイクロ波グロー放電が発生している領域の、基
板804の移動方向の長さを表31の成膜領域の長さの
欄に示した。
【0385】
【表31】 基板804の全長(200m)のすべてにわたって、各
半導体層903〜905が形成されたら、基板804を
冷却させてから連続堆積膜形成装置850から取り出
し、p型半導体層905の上に、さらに、透明電極90
6と集電電極907とを形成し、帯状の太陽電池を完成
させた。
【0386】次に、連続モジュール化装置(不図示)を
用いて、作製した太陽電池を、大きさが36cm×20
cmの多数の太陽電池モジュールに加工した。作製した
太陽電池モジュールについて、AM値が1.5でエネル
ギー密度100mw/cm2の疑似太陽光を用いて特性評価を
行なったところ、光電変換効率で7.0%以上が得ら
れ、また各太陽電池モジュール間の特性のばらつきも5
%以内に収まった。また、作製した太陽電池モジュール
の中から2個を抜き取り、連続200回の繰り返し曲げ
試験を行なったところ、試験後においても特性が劣化す
ることはなく、堆積膜の剥離などの現象も認められたか
った。上述のAM値が1.5でエネルギー密度100mw/
cm2の疑似太陽光に連続して500時間照射したのちに
おいても、光電変換効率の変動は、初期値に対して1
0.0%以内に収まっていた。
【0387】この太陽電池モジュールを接続することに
より、出力2.5kWの電力供給システムを作製するこ
とができた。 (実験例8−6)上述の実験例8−5に用いた連続堆積
膜形成装置850において、堆積膜形成装置891の7
つの小成膜空間810を分離する壁809の開孔率を2
5%として、原料ガスの相互拡散をある程度可能とし
た。i型半導体層904を実験例8−2と同様の条件で
堆積させること以外は実験例8−5と同様にして太陽電
池を作成し、太陽電池モジュールに加工した。なお、i
型半導体層904は図40(c)に示すようなバンドギャ
ッププロファイルとなっている。
【0388】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例8−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で8.0%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0389】(実験例8−7)実験例8−5,8−6に
おいては、i型半導体層904としてa−SiGe:H
堆積膜を用いたが、ここではa−SiGe:Hのかわり
にa−SiC:Hを用いて太陽電池を作製し、太陽電池
モジュールに加工した。このi型半導体層904を実験
例8−3と同様の条件で堆積させる以外は実験例8−5
と同様にした。なお、このi型半導体層904は、図4
0(b)に示すようなバンドギャッププロファイルとなっ
ている。
【0390】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例8−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で7.2%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力5kWの電力供給システム
を作製することができた。
【0391】(実験例8−8)実験例8−5,8−6に
おいては、i型半導体層904としてa−SiGe:H
堆積膜を用いたが、ここではa−SiGe:Hのかわり
にa−Si:Hを用いて太陽電池を作製し、太陽電池モ
ジュールに加工した。このi型半導体層904を実験例
8−4と同様の条件で堆積させる以外は実験例5と同様
にした。なお、このi型半導体層904は、図41(b)
に示すようなフェルミレベルプロファイルとなってい
る。
【0392】そして、作製した太陽電池モジュールにつ
いて、実験例8−5と同様の特性の評価を行なったとこ
ろ、光電変換効率で8.4%以上が得られ、さらに各太
陽電池モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収ま
っていた。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後に
おいても、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起
こらなかった。さらに、連続500時間の疑似太陽光照
射ののちも、光電変換効率の変動は、初期値に対して
8.5%以内に収まっていた。この太陽電池モジュール
を使用することにより、出力2.5kWの電力供給シス
テムを作製することができた。
【0393】(実験例8−9)図52(c)に示す、2組
のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン系
太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。作
製にあたっては、2組のpin接合を形成できるよう
に、図38に示す連続堆積膜形成装置850の第2の不
純物層形成用真空容器853と基板巻取り容器854と
の間に、この連続堆積膜形成装置850の第1の不純物
層形成用真空容器852、堆積膜形成装置891、第2
の不純物層形成用真空容器853を順次直列に接続した
ものを挿入した構成の装置を用いた。
【0394】帯状の基板804としては、実験例8−1
で使用したのと同様のものを使用し、2組のpin接合
のうち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合91
1は、上述の実験例8−6でのpin接合と同じ条件で
形成し、光の入射側に近い方の第2のpin接合912
は、実験例8−8のpin接合と同じ条件で形成した。
第1および第2のpin接合911,912の形成後、
実験例8−6と同様の工程により、太陽電池モジュール
とした。
【0395】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例5と同様の特性の評価を行なったところ、光電変換
効率で11.0%以上が得られ、さらに各太陽電池モジ
ュール間の特性のばらつきも5%以内に収まっていた。
また、連続200回の繰り返し曲げ試験後においても、
特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらなかっ
た。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射ののち
の光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まってい
た。この太陽電池モジュールを使用することにより、出
力2.5kWの電力供給システムを作製することができ
た。
【0396】(実験例8−10)図52(c)に示す、2
組のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン
系太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。
作製にあたっては、第1のpin接合911を上述の実
験例8−8でのpin接合と同じ条件で形成し、第2の
pin接合912をは実験例8−7のpin接合と同じ
条件で形成したこと以外は、実験例8−9と同様にし
た。
【0397】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例8−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で10.5%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7.5%以内に収まって
いた。この太陽電池モジュールを使用することにより、
出力2.5kWの電力供給システムを作製することがで
きた。
【0398】(実験例8−11)図52(d)に示す、3
組のpin接合を積層した構成のアモルファスシリコン
系太陽電池を作製し、太陽電池モジュールに加工した。
作製にあたっては、3組のpin接合を形成できるよう
に、図38に示す連続堆積膜形成装置850の第2の不
純物層形成用真空容器853と基板巻取り容器854と
の間に、この連続堆積膜形成装置850の第1の不純物
層形成用真空容器852、堆積膜形成装置891、第2
の不純物層形成用真空容器853、第1の不純物層形成
用真空容器852、堆積膜形成装置891、第2の不純
物層形成用真空容器853を順次直列に接続したものを
挿入した構成の装置を用いた。
【0399】基板804としては、実験例8−1で使用
したのと同様のものを使用し、3組のpin接合のう
ち、光の入射側から遠い方の第1のpin接合911
は、上述の実験例8−6でのpin接合と同じ条件で形
成し、第2のpin接合912は、実験例8−8のpi
n接合と同じ条件で形成し、光の入射側に位置する第3
のpin接合913は、実験例8−7のpin接合と同
じ条件で形成した。各pin接合911〜913の形成
後、実験例8−6と同様の工程により、太陽電池モジュ
ールとした。
【0400】作製した太陽電池モジュールについて、実
験例8−5と同様の特性の評価を行なったところ、光電
変換効率で12.0%以上が得られ、さらに各太陽電池
モジュール間の特性のばらつきも5%以内に収まってい
た。また、連続200回の繰り返し曲げ試験後において
も、特性の劣化は認められず、堆積膜の剥離も起こらな
かった。さらに、連続500時間の疑似太陽光の照射の
のちの光電変換効率の変化率は7%以内に収まってい
た。この太陽電池モジュールを使用することにより、出
力2.5kWの電力供給システムを作製することができ
た。
【0401】以上、第11の発明の実施例について、主
として、アモルファスシリコン系太陽電池を作製する場
合について説明してきたが、本発明は、アモルファスシ
リコン系太陽電池以外の、大面積あるいは長尺であるこ
とが要求される薄膜半導体素子を形成する場合にも、好
適に用いられるものである。このような薄膜半導体素子
として、例えば、液晶ディスプレイの画素を駆動するた
めの薄膜トランジスタ(TFT)や、密着型イメージセ
ンサ用の光電変換素子、スイッチング素子などが挙げら
れる。これら薄膜半導体素子は画像入出力装置の主要な
部品として使用されることが多く、本発明を実施するこ
とにより、これら薄膜半導体素子を高品質で均一性よく
量産できることとなり、画像入出力装置がさらに広く普
及することが期待されている。
【0402】
【発明の効果】以上説明したように請求項1に記載され
た発明は、成膜容器内に生成するプラズマの内部にまた
はこのプラズマに接するように、複数の電極を設置し、
これら電極の各々に電圧を印加して、バイアス電流が一
定になるようにマイクロ波エネルギーの強度を制御する
ことにより、一様でかつ安定な大面積プラズマを長時間
にわたって維持できるようになり、所望の空間的分布を
持った大面積プラズマを安定して維持できるようになる
という効果がある。
【0403】請求項2に記載された発明は、成膜容器内
に生成するプラズマの内部にまたはこのプラズマに接す
るように、複数の探針を設置し、これら探針のフローテ
ィング電位を測定して、フローティング電位が一定にな
るようにマイクロ波エネルギーの強度を制御することに
より、一様でかつ安定な大面積プラズマを長時間にわた
って維持できるようになり、所望の空間的分布を持った
大面積プラズマを安定して維持できるようになるという
効果がある。
【0404】請求項3ないし4に記載された発明は、バ
イアス電極の端部形状を工夫することにより、大面積用
のマイクロ波プラズマCVD装置において、高品質であ
って均一な膜質を有する部材を大量に高速度にかつ安定
して経済的に形成できるようになるという効果がある。
請求項5ないし6に記載された発明は、複数のバイアス
電圧印加手段のうち1つ以上をスリット状開口部から5
0mm以内の位置に設けることにより、成膜容器端部で
のバイアス電界の強度が改善され、形成される堆積膜の
特性が向上するという効果がある。
【0405】請求項7ないし10に記載された発明は、
基板の立体の一面としこの立体の他の面が電気絶縁体で
構成された放電容器を形成し、この放電容器とは電気的
に絶縁されたバイアス印加手段によりバイアス電圧を印
加することにより、バイアス電流は基板のみに流れ込
み、放電容器の他の内壁面には流れ込まなくなるので、
バイアス電流に変化を生じることはなくなり、絶えず安
定して高品質の堆積膜を基板上に連続的に形成すること
が可能となるという効果がある。さらに、堆積膜の原料
となる物質を複数種類含有する原料ガスの流れを、基板
の移動方向と平行な方向に形成し、基板の移動方向に沿
って複数の放電手段を設けることにより、膜厚方向に組
成分布を有する良質の堆積膜を形成できるという効果が
ある。
【0406】請求項11ないし14に記載された発明
は、基板の立体の一面としこの立体の他の面が導電性部
材で構成された放電容器を形成し、この導電性部材にバ
イアス電圧を印加することにより、バイアス電流の流れ
込む先は基板だけとなって、大量のの堆積膜が形成され
たとしてもバイアス電流に変化を生じることはなくな
り、絶えず安定して高品質の堆積膜を基板上に連続的に
形成することが可能となるという効果がある。さらに、
堆積膜の原料となる物質を複数種類含有する原料ガスの
流れを、基板の移動方向と平行な方向に形成し、基板の
移動方向に沿って複数の放電手段を設けることにより、
膜厚方向に組成分布を有する良質の堆積膜を形成できる
という効果がある。
【0407】請求項15ないし17に記載された発明
は、移動成膜式マイクロ波プラズマCVD法において、
壁で分離された複数の小成膜空間によって成膜空間を構
成し、組成制御を行なうことにより、大面積の組成制御
された機能性堆積膜を連続して再現性よく形成でき、ま
た、大面積のプラズマの制御性、安定性が向上して、大
面積にわたって一様なプラズマを生起することが可能と
なり、膜厚方向で組成の一様な堆積膜の形成を容易に行
なえるようになるという効果がある。また、連続して移
動する帯状の部材上に、任意のバンドギャッププロファ
イルを有する機能性堆積膜を連続して形成できるように
なるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1番目の実施例で使用される堆積膜形
成装置の構成を示す要部破断斜視図である。
【図2】図1に示した堆積膜形成容器におけるマイクロ
波電力の制御系統図である。
【図3】成膜中のバイアス電流値の変化と堆積膜の膜厚
とを示す特性図である。
【図4】バイアス電極の代りに探針を用いた場合の制御
系統図である。
【図5】成膜中のバイアス電流値の変化と堆積膜の膜厚
とを示す特性図である。
【図6】実施例1−3での堆積膜形成装置の構成を示す
要部破断斜視図である。
【図7】実施例1−4での堆積膜形成装置の構成を示す
要部破断斜視図である。
【図8】2番目の実施例でのマイクロ波プラズマCVD
装置の透視概略図である。
【図9】図8の装置のバイアス電極近傍の部分拡大図で
ある。
【図10】図8の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装置
の構成を示す図である。
【図11】基板がΩ字型に湾曲して搬送される変形実施
例を示す透視概略図である。
【図12】断面がU字型の放電容器を使用する変形実施
例を示す透視概略図である。
【図13】円筒形の基体上に堆積膜を形成する変形実施
例を示す模式断面図である。
【図14】3番目の実施例でのマイクロ波プラズマCV
D装置の構成を示す図である。
【図15】成膜容器の要部を拡大して示す透視概略図で
ある。
【図16】バイアス電圧と光電変換効率との関係を示す
特性図である。
【図17】4番目の実施例での堆積膜形成装置の構成を
示す模式断面図である。
【図18】図17の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装
置の構成を示す図である。
【図19】5番目の実施例での堆積膜形成装置の構成を
示す模式断面図である。
【図20】図19の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装
置の構成を示す図である。
【図21】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図22】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図23】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図24】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図25】6番目の実施例での堆積膜形成装置の構成を
示す模式断面図である。
【図26】図25の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装
置の構成を示す図である。
【図27】7番目の実施例での堆積膜形成装置の構成を
示す模式断面図である。
【図28】図27の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装
置の構成を示す図である。
【図29】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図30】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図31】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図32】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図33】8番目の実施例での堆積膜形成装置の構成を
示す模式断面図である。
【図34】図33の堆積膜形成装置の成膜容器の構成を
示す要部破断斜視図である。
【図35】図34とは別の構成の成膜容器を示す要部破
断斜視図である。
【図36】図34および図35とは別の構成の成膜容器
を示す要部破断斜視図である。
【図37】さらに別の構成の成膜容器を示す要部破断斜
視図である。
【図38】図33の装置を組み込んだ連続堆積膜形成装
置の構成を示す図である。
【図39】(a)〜(c)はi型半導体層のバンドギャッププ
ロファイルを示す図である。
【図40】(a)〜(c)はi型半導体層のバンドギャッププ
ロファイルを示す図である。
【図41】(a),(b)はi型半導体層のフェルミレベルプ
ロファイルを示す図である。
【図42】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図43】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図44】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図45】2次イオン質量分析の結果を示す特性図であ
る。
【図46】従来のマイクロ波プラズマCVD装置の構成
を示す模式断面図である。
【図47】従来の移動成膜式マイクロ波プラズマCVD
装置の構成を示す模式断面図である。
【図48】従来のマイクロ波プラズマCVD装置におけ
るバイアス電界のかかり方を示す模式図である。
【図49】放電容器の内圧と放電維持電力との関係を示
す特性図である。
【図50】バイアス印加手段の設置位置を検討するため
に使用した実験装置の構成を示す模式断面図である。
【図51】成膜容器端部からの距離と暗導電率との関係
を示す特性図である。
【図52】(a)〜(d)はそれぞれ太陽電池の構成を示す概
略断面図である。
【図53】(a)〜(d)はi型半導体層のバンドギャッププ
ロファイルを示す図である。
【図54】(a)〜(d)はi型半導体層のフェルミレベルプ
ロファイルを示す図である。
【符号の説明】
101,400,500,600,700,891 堆積膜形成装置 102,201,264,291,306,404,504,604,704,804 基板 107,802 成膜空間 108 ガス放出手段 109,183,213,811 マイクロ波アプリケータ 110,812 導波管 111,122,134,191,206,820 バイアス電極 115 マイクロ波電源 116 電流計 117 バイアス印加電源 118 マイクロ波コントローラ 119 電圧計 126,240〜243,412,529,530,561,562,612,729,730,803,8
05 ガスゲート 141 探針 152,401,501,601,701,800 真空容器 153,181 堆積膜形成容器 185 基体 192,208,606,744,746 バイアス電源 200,229 マイクロ波プラズマCVD装置 202 方形導波管 203 円形導波管 204 円形誘電体窓 205,297 放電容器 209 ガス導入ノズル 222 円盤 230,450,550,650,850 連続堆積膜形成装置 231,451,551,651,851 基板送り出し容器 232 第1のドープ層形成用真空容器 233 第2のドープ層形成用真空容器 234,455,554,655,854 基板巻取り容器 301〜303,402,602,801,801a,801b,801c 成膜容器 312,313,815 原料ガス供給管 314 バイアス電圧印加棒 315〜317 誘電体窓 328,329 電極 330,331 絶縁体 402a,546,602a 内壁 402b,545,602b 外壁 405,585,605 アプリケータ 406,543,544 バイアス棒 408,526〜528 ガード電極 452,652 第1の真空容器 454,654 第2の真空容器 502,702 第1の成膜容器 503,703 第2の成膜容器 505,705 第1のアプリケータ 506,706 第2のアプリケータ 507,707 第3のアプリケータ 514,714 第1のガス放出器 515,715 第2のガス放出器 533,733 第1の成膜空間 534,734 第2の成膜空間 552,852 第1の不純物層形成用真空容器 553,853 第2の不純物層形成用真空容器 615 パンチングボード 809 壁 810 小成膜空間 814 原料ガス供給手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 酒井 明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 芳里 直 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 越前 裕 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 杉山 秀一郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数のマイクロ波導入手段を備え真空排
    気可能な成膜容器を使用し、マイクロ波プラズマCVD
    法により大面積の基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成
    方法において、 前記各マイクロ波導入手段から前記成膜容器内に放射伝
    播されるマイクロ波エネルギーによって生起するプラズ
    マの内部に、または前記プラズマに接するように、複数
    の電極を配置し、 前記電極の各々にバイアス電圧を印加し、 前記電極を流れるバイアス電流の値が一定値を維持する
    ように、前記マイクロ波導入手段から前記成膜容器内に
    放射伝播されるマイクロ波エネルギーの強度を制御する
    ことを特徴とする堆積膜形成方法。
  2. 【請求項2】 複数のマイクロ波導入手段を備え真空排
    気可能な成膜容器を使用し、マイクロ波プラズマCVD
    法により大面積の基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成
    方法において、 前記各マイクロ波導入手段から前記成膜容器内に放射伝
    播されるマイクロ波エネルギーによって生起するプラズ
    マの内部に、または前記プラズマに接するように、複数
    の探針を配置し、 前記各探針のフローティング電位を測定し、 前記フローティング電位の値が一定値を維持するよう
    に、前記マイクロ波導入手段から前記成膜容器内に放射
    伝播されるマイクロ波エネルギーの強度を制御すること
    を特徴とする堆積膜形成方法。
  3. 【請求項3】 マイクロ波電源に接続する方形導波管と
    一端が前記方形導波路に接続する円形導波管と前記円形
    導波管の他端に設けられた円形誘電体窓とから少なくと
    もなるマイクロ波導入手段と、基板に対向する開口部を
    備え前記マイクロ波導入手段からマイクロ波が導入され
    る放電容器とを有する堆積膜形成装置を使用し、前記基
    板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、 前記円形誘電体窓の表面に垂直であってかつ前記マイク
    ロ波の進行方向および前記基板の表面に平行な部分を有
    するT字形の棒状部と、前記棒状部の先端部に設けられ
    前記誘電体窓の表面に平行である円板部とからなるバイ
    アス電極を前記放電容器内に設け、 前記マイクロ波の波長をλとするとき前記円板の直径φ
    が、 λ/10≦φ≦λ/6 を満たすようにすることを特徴とする堆積膜形成方法。
  4. 【請求項4】 基板に対向する開口部を有する放電容器
    と、前記放電容器にマイクロ波を導入するマイクロ波導
    入手段とを有し、前記マイクロ波導入手段が、少なくと
    も、マイクロ波電源に接続する方形導波管と、一端が前
    記方形導波路に接続する円形導波管と、前記円形導波管
    の他端に設けられた円形誘電体窓とからなる堆積膜形成
    装置において、 前記円形誘電体窓の表面に垂直であってかつ前記マイク
    ロ波の進行方向および前記基板の表面に平行な部分を有
    するT字形の棒状部と、前記棒状部の先端部に設けられ
    前記誘電体窓の表面に平行である円板部とからなるバイ
    アス電極が前記放電容器内に設けられ、 前記マイクロ波の波長をλとするとき、前記円板の直径
    φが、 λ/10≦φ≦λ/6 を満たしていることを特徴とする堆積膜形成装置。
  5. 【請求項5】 真空排気可能な成膜容器と、前記成膜容
    器内に基板を連続的に通過させるための基板搬送手段
    と、前記成膜容器の側壁両側に設けられ前記基板を通過
    させるためのスリット状開口部と、前記成膜容器内にマ
    イクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記成膜容
    器に取り付けられた複数のバイアス電圧印加手段とを有
    する堆積膜形成装置を使用し、マイクロ波プラズマCV
    D法により前記基板上に堆積膜を形成する堆積膜形成方
    法において、 前記バイアス電圧印加手段のうち1つ以上を、前記スリ
    ット状開口部から50mm以内の位置に設けることを特
    徴とする堆積膜形成方法。
  6. 【請求項6】 真空排気可能な成膜容器と、前記成膜容
    器内に基板を連続的に通過させるための基板搬送手段
    と、前記成膜容器の側壁両側に設けられ前記基板を通過
    させるためのスリット状開口部と、前記成膜容器内にマ
    イクロ波を導入するマイクロ波導入手段と、前記成膜容
    器に取り付けられた複数のバイアス電圧印加手段とを有
    し、マイクロ波プラズマCVD法により前記基板上に堆
    積膜を形成する堆積膜形成装置において、 前記バイアス電圧印加手段のうち1つ以上が、前記スリ
    ット状開口部から50mm以内の位置に設けられている
    ことを特徴とする堆積膜形成装置。
  7. 【請求項7】 プラズマCVD法により長尺の基板上に
    連続的に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、 真空容器の内部に、前記基板を立体の一面とし前記立体
    の他の面が電気絶縁体からなる放電容器を形成し、前記
    放電容器の内部に前記放電容器から電気的に絶縁された
    バイアス印加手段を設置し、 前記真空容器内において前記基板の長手方向に前記基板
    を連続的に搬送しながら、かつ前記バイアス印加手段に
    よって前記基板に対してバイアス電圧を印加しながら、 前記放電容器内に放電エネルギーと原料ガスとを導入し
    て前記放電容器内にプラズマを生成させ、前記基板の表
    面に堆積膜を形成させることを特徴とする堆積膜形成方
    法。
  8. 【請求項8】 放電容器内に放電エネルギーを導入する
    ための放電手段が基板の長手方向に沿って複数個設けら
    れ、放電エネルギーを前記放電容器内に導入しつつ前記
    放電容器内において前記基板の移動方向と平行な方向に
    堆積膜の原料となる物質を複数種含有する原料ガスの流
    れを形成しながら、前記各放電手段のそれぞれに放電エ
    ネルギーを印加する請求項7記載の堆積膜形成方法。
  9. 【請求項9】 真空排気可能な成膜容器を有し、プラズ
    マCVD法により長尺の基板上に連続的に堆積膜を形成
    する堆積膜形成装置において、 前記真空容器内に設けられ、実質的に内壁の一部を構成
    しつつ前記基板がその長手方向に連続的に移動可能に通
    過する放電容器と、 前記放電容器の前記基板が貫通する部分に前記基板に近
    接させて取り付けられた、放電エネルギーとプラズマと
    の前記放電容器からの漏洩を防止する接地されたガード
    電極と、 前記放電容器内に設けられ、前記放電容器とは電気的に
    絶縁されたバイアス印加手段と、 前記放電容器内に放電エネルギーを導入する放電手段と
    を有し、 前記放電容器を構成する内壁であって前記プラズマに接
    する部分のうち、前記基板以外の部分が電気絶縁体で構
    成されていることを特徴とする堆積膜形成装置。
  10. 【請求項10】 放電手段が基板の長手方向に沿って複
    数個設けられ、堆積膜の原料となる物質を複数種含有す
    る原料ガスを放電容器内に導入する原料ガス放出手段を
    有し、前記放電容器内で前記基板の移動方向と平行な方
    向に前記原料ガスの流れが形成される請求項9記載の堆
    積膜形成装置。
  11. 【請求項11】 プラズマCVD法により長尺の基板上
    に連続的に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、 真空容器の内部に、前記基板を立体の一面とし前記立体
    の他の面が導電性部材からなる放電容器を形成し、 前記真空容器内において前記基板の長手方向に前記基板
    を連続的に搬送しながら、かつ前記真空容器とは電気的
    に絶縁された状態で前記導電性部材にバイアス電圧を印
    加しながら、 前記放電容器内に放電エネルギーと原料ガスとを導入し
    て前記放電容器内にプラズマを生成させ、前記基板の表
    面に堆積膜を形成させることを特徴とする堆積膜形成方
    法。
  12. 【請求項12】 放電容器内に放電エネルギーを導入す
    るための放電手段が基板の長手方向に沿って複数個設け
    られ、放電エネルギーを前記放電容器内に導入しつつ前
    記放電容器内において前記基板の移動方向と平行な方向
    に堆積膜の原料となる物質を複数種含有する原料ガスの
    流れを形成しながら、前記各放電手段のそれぞれに放電
    エネルギーを印加する請求項11記載の堆積膜形成方
    法。
  13. 【請求項13】 真空排気可能な成膜容器を有し、プラ
    ズマCVD法により長尺の基板上に連続的に堆積膜を形
    成する堆積膜形成装置において、 前記真空容器内に設けられ、実質的に内壁の一部を構成
    しつつ前記基板がその長手方向に連続的に移動可能に通
    過する放電容器と、 前記放電容器の前記基板が貫通する部分に前記基板に近
    接させて取り付けられた、放電エネルギーとプラズマと
    の前記放電容器からの漏洩を防止する接地されたガード
    電極と、 前記放電容器内に放電エネルギーを導入する放電手段
    と、 バイアス電源とを有し、 前記放電容器を構成する内壁であって前記プラズマに接
    する部分のうち、前記基板以外の部分が全て導電性部材
    で構成され、前記導電性部材は前記真空容器からは電気
    的に絶縁されかつ前記バイアス電源によってバイアス電
    圧を印加できることを特徴とする堆積膜形成装置。
  14. 【請求項14】 放電手段が基板の長手方向に沿って複
    数個設けられ、堆積膜の原料となる物質を複数種含有す
    る原料ガスを放電容器内に導入する原料ガス放出手段を
    有し、前記放電容器内で前記基板の移動方向と平行な方
    向に前記原料ガスの流れが形成される請求項10記載の
    堆積膜形成装置。
  15. 【請求項15】 帯状の基板をその長手方向に連続的に
    移動させながら、前記基板が側壁の一面となる柱状の成
    膜空間に堆積膜形成用の原料ガスを導入し、同時に前記
    成膜空間へマイクロ波エネルギーを導入させてマイクロ
    波プラズマを前記成膜空間内に生起させ、前記基板の前
    記成膜空間側の表面上に堆積膜を形成させる堆積膜形成
    方法において、 前記成膜空間が壁によって分離されて複数の小成膜空間
    によって構成され、組成制御を行なって前記堆積膜を形
    成することを特徴とする堆積膜形成方法。
  16. 【請求項16】 各小成膜空間に導入されるマイクロ波
    エネルギーの強度および堆積膜形成用原料ガスの組成
    が、前記小成膜空間ごとにそれぞれ独立に制御される請
    求項15に記載の堆積膜形成方法。
  17. 【請求項17】 小成膜空間を分離する壁を通して堆積
    膜形成用原料ガスの相互拡散が可能であるようにした請
    求項15に記載の堆積膜形成方法。
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