JPH06191789A - クレーンにおける吊り荷の制振装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、クレーンにおける吊り荷の制振装
置に関するものである。従来のクレーンの吊り荷の制振
装置としては、ブームの先端部あるいは横行フレームを
吊り荷Ｗの振動（揺動）に対応して水平方向に強制駆動
して吊り荷の振動を制振するようにしたものが提案され
ているが、このような制振装置はブームあるいは横行フ
レームが作動限界位置にある場合には、利用出来ないと
いう問題があった。 【構成】吊り荷Ｗの振れ状態を検出する吊り荷振動状態
検出手段１１、および、この吊り荷振動状態検出手段１
１からの振れ状態に関する情報を受け取り、この情報か
ら、吊り荷Ｗが、振動振幅の終端部近傍にあるか振動振
幅の中心近傍にあるかを算出すると共に、終端部近傍に
あることを算出した時にはウインチ制御装置９へ巻き上
げ指令信号を出力し、中心部近傍にあることを算出した
ときにはウインチ制御装置９へ巻き下げ指令信号を出力
するよう構成した演算部１２、とで以て構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ウインチから吊具吊下
滑車を経て引き出したワイヤーロープを介して巻き上げ
巻き下げ駆動自在に吊下した吊具により、荷を吊り上げ
るようにしたクレーンに用いられる吊り荷の制振装置に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ウインチから吊具吊下滑車を経て引き出
したワイヤーロープを介して巻き上げ巻き下げ駆動自在
に吊下した吊具により、荷を吊り上げるようにしたクレ
ーンとしては、移動式クレーン、あるいは天井クレーン
等がある。上記吊具吊下滑車は、移動式クレーンの場
合、車輌上に旋回駆動自在に搭載した旋回台に起伏駆動
自在に取り付けたブームの先端部に配置されており、天
井クレーンの場合、横行フレームに取り付けられてい
る。そして、クレーン作業をする場合には、吊具に吊り
荷を吊下した上でウインチを巻き上げ巻き下げ駆動する
と共に吊具吊下滑車を移動させてクレーン作業をするも
のである。

【０００３】この種のクレーンにおいて、ブームの先端
部または横行フレームの動きを停止した場合に、吊り上
げ状態にある吊り荷に単純振り子としての振動（揺動）
がのこる。この振動は、クレーン作業の能率に悪影響を
与えるため、できるだけ早く制振させる必要がある。従
来のクレーンの吊り荷の制振装置としては、ブームの先
端部あるいは横行フレームを吊り荷の振動に対応して水
平方向に強制駆動して吊り荷の振動を制振するようにし
たものが提案されているが、このような制振装置はブー
ムあるいは横行フレームが作動限界位置にある場合に
は、利用出来ないという問題があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ブー
ムあるいは横行フレームを吊り荷の振動に対応して強制
駆動することなく、吊り荷の振動（揺動）を制振するこ
とのできる新規なクレーンの吊り荷の制振装置、即ち、
ブームあるいは横行フレームが作動限界位置にあっても
吊り荷の振動（揺動）を速やかに制振することができる
新規なクレーンの吊り荷の制振装置を提供することにあ
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明のクレーンの吊り
荷の制振装置は、次の如く構成する。ウインチから吊具
吊下滑車を経て引き出したワイヤーロープを介して巻き
上げ巻き下げ駆動自在に吊下した吊具により、荷を吊り
上げるようにしたクレーンに用いられる吊り荷の制振装
置であって、吊り荷の振れ状態を検出する吊り荷振動状
態検出手段、および、この吊り荷振動状態検出手段から
の振れ状態に関する情報を受け取り、この受け取った情
報から、吊り荷が、振動振幅の終端部近傍にあるか振動
振幅の中心近傍にあるかを算出すると共に、終端部近傍
にあることを算出した時にはウインチの制御装置へ巻き
上げ指令信号を出力し、中心部近傍にあることを算出し
たときにはウインチの制御装置へ巻き下げ指令信号を出
力するよう構成した演算部、とからなり、吊り荷の振動
振幅の終端部近傍で当該吊り荷を巻き上げ駆動し、吊り
荷の振動振幅の中心部近傍で当該吊り荷を巻き下げする
よう構成してなるクレーンにおける吊り荷の制振装置。

【０００６】

【作用】このように構成した本発明の吊り荷の制振装置
は、吊り荷の吊下距離を、吊り荷の振動振幅の終端部近
傍で巻き上げて吊下距離を短くし、吊り荷の振動振幅の
中心部近傍で巻き下げて吊下距離を長くするようウイン
チを自動制御するものであるから、これによって、吊り
荷がもつ振動（揺動）のエネルギーを漸減して吊り荷の
振動（揺動）を制振することができるものである。

【０００７】

【実施例】以下、本発明のクレーンにおける吊り荷の制
振装置を、移動式クレーンに採用した実施例を図１〜図
２に基づいて説明する。図１は、移動式クレーンを示
し、車輌１上に旋回駆動自在に搭載した旋回台２、旋回
台２に起伏駆動自在に取り付けたブーム３、ウインチ
４、および、ウインチ４からブーム３の先端部に配置し
た吊具吊下滑車５を経て引き出したワイヤーロープ６を
介して巻き上げ巻き下げ駆動自在に吊下した吊具７を備
えている。この移動式クレーンは、前記吊具７に吊り荷
Ｗを引っ掛けた上で、旋回台２を旋回駆動、および、ブ
ーム３を起伏駆動（ブーム３が伸縮式のものである場合
にはブーム３の伸縮駆動も）してブーム３の先端部の吊
具吊下滑車５を適宜移動させると共に、ウインチ４によ
り吊具７を巻き上げ巻き下げ駆動することで、吊り荷Ｗ
を希望する位置へ移動するものである。

【０００８】図２は、移動式クレーンのウインチ４の駆
動装置の説明図である。図２において８は、ウインチ４
駆動用の油圧モータであって、この油圧モータ８は、そ
の回転方向および回転速度を四方向三位置型の油圧切換
弁で構成されたウインチ制御装置９により制御されるよ
うになっている。ウインチ制御装置９は、操作レバー１
０ａを備えた操作信号発生手段１０の出力する操作用電
気信号によって切り換え制御される電磁比例制御弁とし
て構成されている。即ち、操作信号発生手段１０の操作
レバー１０ａをオペレータが操作することで、ウインチ
制御装置９を操作し、ウインチ４を巻き上げ巻き下げ駆
動するようになっている。このような駆動装置は公知で
ある。

【０００９】このようにウインチ４から吊具吊下滑車５
を経て引き出したワイヤーロープ６を介して巻き上げ巻
き下げ駆動自在に吊下した吊具７により、吊り荷Ｗを吊
り上げるようにしたクレーンでは、クレーン作業中に吊
り荷Ｗが吊り荷吊下滑車５を吊下点として単純振り子と
して振動（揺動）するものである。この振動は、吊り荷
吊下滑車５の位置変更（旋回台２の旋回駆動、ブーム３
の起伏並びに伸縮駆動）時にも発生するし、また吊り荷
吊下滑車５の位置変更を停止した場合にも発生する。

【００１０】次に、本発明のクレーンにおける吊り荷の
制振装置を説明する。図２において、１１は、吊り荷Ｗ
の振れ状態を検出する吊り荷振れ状態検出手段である。
１２は、吊り荷振れ状態検出手段１１からの吊り荷Ｗの
振れ状態に関する情報を受け取り、この受け取った情報
から、吊り荷Ｗがその振動振幅の中心部近傍にあるか振
動振幅の終端部近傍にあるかを算出すると共に、終端部
近傍にあることを算出したときは前記ウインチ制御装置
９へ巻き上げ指令信号を出力し、中心部近傍にあること
を算出したときは前記ウインチ制御装置９へ巻き下げ指
令信号を出力する演算部である。

【００１１】前記吊り荷振れ状態検出手段１１の検出情
報は、単純振り子として振動（揺動）する吊り荷Ｗが振
動振幅の中心部近傍にあるかあるいは振動振幅の終端部
近傍にあるかを、前記演算部１２が算出できるようなも
のであれば良く、例えば、吊具吊下滑車５の近傍に位置
してブーム３先端部に配置され、吊り荷吊下滑車５から
吊具７に到るワイヤーロープ６の鉛直線からの変位角度
を検出するもので構成されている。

【００１２】前記演算部１２は、吊り荷振れ状態検出手
段１１から上記変位角度（この変位角度は、吊り荷の振
動即ち揺動により時々刻々変化する）を受け取り、変位
角度の最大値を検出すると共に、受け取りに係る変位角
度がこの最大値の近傍（換言すれば吊り荷Ｗが振動振幅
の終端部近傍）にあるか、あるいは受け取りに係る変位
角度が零近傍（換言すれば吊り荷Ｗが振動振幅の中心部
近傍）にあるかを算出すると共に、前者を算出したとき
にはウインチ制御装置９に巻き上げ指令信号を出力し、
後者を検出したときにはウインチ制御装置９に巻き下げ
指令信号を出力するよう構成している。

【００１３】このように構成した本発明のクレーンにお
ける吊り荷の制振装置は、吊り荷Ｗが振動振幅の終端部
近傍にきた時にはウインチ４が自動的に巻き上げ駆動さ
れ、吊り荷Ｗが振動振幅の中心部近傍にきた時にはウイ
ンチ４が自動的に巻き下げ駆動されるものである。

【００１４】上記の如く構成した本発明のクレーンにお
ける吊り荷の制振装置の作用を説明する。作用の説明に
先立ち、単純振り子について説明を加えておく。

【００１５】単純振り子の持つ振動エネルギーは、振り
子の揺動速度のエネルギー（速度のエネルギー）と、振
り子の振動振幅の中心部からの振れに伴い生ずる高さ方
向の変位に対応するエネルギー（位置のエネルギー）の
総和として求められる。速度のエネルギーＥｖは、下記
の（１）式によって求められ、位置のエネルギーＥｈ
は、下記の（２）式によって求められる。 Ｅｖ＝ｍ・Ｖ² ……（１） Ｅｈ＝ｍ・ｇ・Ｌ（１−ｃｏｓΘ）……（２） Ｖ；振り子の揺動速度 ｍ；振り子の質量 Ｌ；吊り荷Ｗの吊下長さ Θ；振動振幅の中心からの振れ角 ｇ；重力の加速度 この場合、速度のエネルギーと位置のエネルギーの関係
は次の如き関係を持っている。即ち、振り子がその振動
振幅の終端から振動振幅の中心に到る過程、即ち振り子
が振動振幅の中心に近づく過程では、振り子の持つ位置
のエネルギーは次第に速度のエネルギーに転嫁されるの
である。そして、振り子が振動振幅の中心に位置する状
態では、位置のエネルギーは全て速度のエネルギーに転
嫁されて零となり、この位置で速度のエネルギーが最大
となっている。

【００１６】また、振り子がその振動振幅の中心から振
動振幅の終端に到る過程、即ち振り子が振動振幅の中心
から遠ざかる過程では、振り子の持つ速度のエネルギー
が次第に位置のエネルギーに転嫁されるのである。そし
て、振り子の振動振幅の終端部では、速度のエネルギー
は全て位置のエネルギーに転嫁されて零となり、この位
置で位置のエネルギーが最大となっている。従って、振
り子が持つ位置のエネルギーに着目すると、当該振り子
がその振動振幅の中心部近傍に位置する場合に比し振動
振幅の終端部近傍に位置する場合の方が、位置のエネル
ギーが大きいということが言える。

【００１７】一方、その吊下距離Ｌのみが異なる質量の
同じ振り子が持つ振動エネルギーのうち位置エネルギー
成分は、同じ振れ角度（振動振幅の中心からの振れ角
度）の下では、吊下距離が小さい程小さくなることは上
記（２）式から明らかである。いま、振り子の吊下距離
Ｌを調整できるようにし、振り子の吊下距離Ｌを振り子
の振動中に変化させた場合を考える。この吊下距離Ｌの
調整は、振り子の吊下支点部に、振り子吊下部材（ロー
プ等）を巻き上げ巻き下げするウインチを設けることで
行うようにする。

【００１８】この吊下距離Ｌの変化は、主として振り子
を吊下支点を中心とするラジアル方向に移動させるもの
であるから、この変化は、振り子の持つ振動エネルギー
のうち速度エネルギー成分に対して余り影響を与えな
い。しかもこの変化は、振り子の振れ角度にも余り影響
を与えない。しかしながら、この変化は、振り子が持つ
振動のエネルギーのうち位置エネルギー成分を変動させ
る。そしてこの位置エネルギー成分の変動傾向は、吊下
距離Ｌを短くすると小さくなり吊下距離Ｌを長くすると
大きくなるのである。何故ならば、上述した如く、その
吊下距離Ｌのみが異なる質量の同じ振り子が持つ振動エ
ネルギーのうち位置エネルギー成分は、同じ振れ角度
（振動振幅の中心からの振れ角度）の下では、吊下距離
が小さい程小さくなるためである。

【００１９】このように、吊下距離Ｌの変化は、振り子
の持つ速度エネルギー成分に余り影響を与えることな
く、振り子の振動エネルギー中の位置エネルギー成分の
値を変動させその傾向は、吊下距離Ｌを短くしたときは
小さくなり吊下距離Ｌを長くしたときは大きくなる傾向
をもっている。 Ａ）一方上述したように、振り子の位置エネルギー成分
は、当該振り子の振動振幅の終端部近傍で大きくなり、
振動振幅の中心部近傍で小さくなるものであるから、位
置エネルギー成分の大きい時点（速度エネルギーの小さ
い時点）換言すれば振動振幅の終端部近傍で吊下距離が
小さくなるよう変化させると、変化後の振り子の持つ振
動エネルギー（速度エネルギー成分と位置エネルギー成
分の合計値）が変化前のそれに比して減少する。 Ｂ）また、振り子の位置エネルギー成分は、当該振り子
の振動振幅の中心部近傍で小さくなる（ほぼ零）となる
ものであるから、位置エネルギー成分の小さな時点（速
度エネルギー成分の大きい時点）換言すれば振動振幅の
中心部近傍で吊下距離を大きくしてもとの吊下距離に戻
すよう変化させると、変化後の振り子の持つ振動エネル
ギー（速度エネルギー成分と位置エネルギー成分の合計
値）が変化前のそれに比して余り変化しない。

【００２０】従って、上記のＡ）およびＢ）を繰り返す
ことにより、振り子の持つ振動エネルギーを漸次減少さ
せ、振り子の振動（揺動）を制振させることができるの
である。

【００２１】以上、単純振り子の吊下距離Ｌを、当該単
純振り子の振動振幅の終端部近傍で短くし、振動振幅の
中心部近傍で長くすることで、振り子の持つ振動エネル
ギーを漸次減少させることができることについて説明し
た。クレーンの吊り荷Ｗもまた単純振り子として振動
（揺動）するものであるから、上述した如く吊り荷Ｗの
吊下距離を、吊り荷Ｗの振動振幅の終端部近傍で巻き上
げて吊下距離Ｌを短くし、吊り荷Ｗの振動振幅の中心部
近傍で巻き下げて吊下距離Ｌを長くするようウインチ４
を自動制御することにより、吊り荷Ｗの振動（揺動）を
漸次して制振することができるのである。

【００２２】

【発明の効果】以上の如く構成し、作用する本発明のク
レーンにおける吊り荷の制振装置は、ブームあるいは横
行フレームを吊り荷の振動に対応して強制駆動すること
なく、吊り荷の振動（揺動）を制振することのできるの
で、ブームあるいは横行フレームが作動限界位置にある
場合においても吊り荷Ｗの振動（揺動）を制振できると
いう優れた効果を有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】移動式クレーンの説明図である。

【図２】本発明に係るクレーンにおける吊り荷の制振装
置の説明図である。

【符号の説明】

１；車輌、２；旋回台、３；ブーム、４；ウインチ、
５；吊具吊下滑車、６；ワイヤーロープ、７；吊具、
８；油圧モータ、９；ウインチ制御装置、１０；操作信
号発生手段、１０ａ；操作レバー、１１；吊り荷振れ状
態検出手段、１２；演算部、Ｗ；吊り荷、

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ウインチから吊具吊下滑車を経て引き出
   したワイヤーロープを介して巻き上げ巻き下げ駆動自在
   に吊下した吊具により、荷を吊り上げるようにしたクレ
   ーンに用いられる吊り荷の制振装置であって、 吊り荷の振れ状態を検出する吊り荷振動状態検出手段、
   および、この吊り荷振動状態検出手段からの振れ状態に
   関する情報を受け取り、この受け取った情報から、吊り
   荷が、振動振幅の終端部近傍にあるか振動振幅の中心近
   傍にあるかを算出すると共に、終端部近傍にあることを
   算出した時にはウインチの制御装置へ巻き上げ指令信号
   を出力し、中心部近傍にあることを算出したときにはウ
   インチの制御装置へ巻き下げ指令信号を出力するよう構
   成した演算部、とからなり、吊り荷の振動振幅の終端部
   近傍で当該吊り荷を巻き上げ駆動し、吊り荷の振動振幅
   の中心部近傍で当該吊り荷を巻き下げするよう構成して
   なるクレーンにおける吊り荷の制振装置。