JPH0618194Y2 - 冷蔵庫 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、冷蔵庫に関し、さらに詳しくは、冷蔵庫の運
転時に生じる騒音の低減に関するものである。

〔従来の技術〕

近年における冷蔵庫は、使用目的に応じて温度を区分け
できるように、例えば冷凍室や冷蔵室等を有する２ドア
タイプや３ドアタイプ等が主流を占めている。

一般に、上記の冷蔵庫は、第５図に示すように、最も低
温にするための冷凍室１を最上部に備えている。この冷
凍室１の前面側には、開閉用の扉１２が回動自在に設け
られている。一方、冷凍室１内の背面側には、冷却され
た空気を冷凍室１内に送出する吹出口１４…が形成され
た吹出ルーバ５が設けられている。この吹出ルーバ５の
背面側には、軸流ファン３が固設されたファン固定板１
０が設けられている。

上記の軸流ファン３の下方には、ファン固定板１０と背
板内壁９とで形成された吸込側空間７に熱交換器４が設
けられている。また、冷凍室１内の扉１２側の下面に
は、開口部１３が形成され、この開口部１３は、熱交換
器４へ連通されている。

これにより、上記の冷蔵庫内の空気は、矢符で示される
ように軸流ファン３で常に循環されるようになってい
る。従って、冷蔵庫内は、上記の空気が循環される際に
熱交換器４により冷却されることで、所定の低温を維持
できるようになっている。

ところで、上記の空気は、軸流ファン３で送出される際
に、空気の流れに乱れを生じ乱流となっている。これ
は、軸流ファン３の空気吸込部が下方に限定され、且つ
吹出部の前方に吹出ルーバ５が設けられているためであ
る。そして、上記の乱流となった空気は、広範な周波数
域を有するいわゆる乱流音を発生させている。

上記の乱流音は、冷凍室１内や吸込側空間７が、一般
に、下記の関係式(1)で表される共鳴周波数Ｆｒを有し
ているために、共鳴を誘発し易くなっている。

Ｆｒ＝ｎ＊Ｃ／（２＊Ｌ）……(1) 尚、Ｃは音速(m/s)、Ｌは共鳴寸法（ｍ）、ｎは整数
（１，２，…）である。

これにより、吸込側空間７は、第６図に示すように、共
鳴寸法Ｌで決定される共鳴周波数Ｆｒを有することにな
る。そして、上記の共鳴は、冷蔵庫の運転時における騒
音を増大させる要因となっている。

従って、従来、冷凍室１の外壁には、第５図に示すよう
に、冷凍室１内や吸込側空間７で発生した騒音を冷凍室
１の外部に漏洩させないための吸音材６が設けられてい
る。上記の吸音材６には、多孔質の材質である例えばグ
ラスウールやフェルト等が使用されている。これによ
り、冷蔵庫は、冷凍室１内や吸込側空間７で発生した騒
音が低減されるようになっている。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、上記従来の冷蔵庫は、冷凍室１内や吸込
側空間７で発生した騒音を充分に低減することが困難と
なっている。

これは、上記の騒音が広範な周波数域を有しているのに
対して、一般に使用されている吸音材６は、例えば６０
０Hzのように、ある周波数以上において吸音率が優れて
いるためである。即ち、従来の冷蔵庫は、騒音の周波数
域とこの騒音を吸収する吸音材６の周波数域とが充分に
適合していないために、騒音が冷蔵庫の外部へ漏洩し易
くなっているのである。

従って、冷蔵庫は、冷凍室１内や吸込側空間７で発生す
る騒音を充分に低減しようとすると、吸音材６の厚さを
大幅に厚くするか、あるいは薄くても吸音性に優れた特
殊な材質の吸音材６を使用する必要がある。

これにより、吸音材６の厚さを大幅に厚くした場合に
は、冷蔵庫の外径寸法を大きくするか、または冷凍室１
の容量を削減する必要があるという問題が発生する。一
方、薄くても吸音性に優れた特殊な材質の吸音材６を使
用した場合には、このように特殊な材質の吸音材６は一
般に高価なために、冷蔵庫のコストアップを招来という
問題が発生する。

従って、本考案においては、吸音材６の厚みを大幅に厚
くしたり、あるいは高価となる特殊な吸音材６を使用す
ることなく、冷蔵庫の運転時に吸込側空間７で発生した
騒音が冷蔵庫外部へ漏洩するのを充分に低減させること
により、コストアップを招来せずに冷蔵庫の騒音を低減
することができる冷蔵庫を提供することを目的としてい
る。

〔課題を解決するための手段〕

本考案に係る冷蔵庫は、上記課題を解決するために、冷
蔵室および冷凍室からなる冷却室と、上記冷却室内の空
気を循環させる送出手段と、この送出手段により循環さ
れる空気を冷却する熱交換器と、この熱交換器から送出
手段まで熱交換器で冷却された空気を案内するように形
成された吸込側空間と、この吸込側空間および冷却室で
発生した騒音を吸音して冷蔵庫外部へ漏洩させないよう
にする吸音材とを有し、上記の吸込側空間および冷却室
は、それぞれ特定の周波数域において共鳴する共鳴寸法
を有する冷蔵庫において、上記の吸込側空間は、吸音材
が効率良く吸音できる周波数域に共鳴寸法が設定されて
いることを特徴としている。

〔作用〕

上記の構成によれば、送出手段が冷却室内の空気を循環
させる際に乱流音が発生する。この乱流音は、広範囲な
周波数域を有しており、冷却室や吸込側空間が共鳴する
周波数域も有している。従って、冷却室や吸込側空間
は、共鳴が励起されることにより騒音を増大することに
なる。

上記の冷却室は、冷却室内に保存される食品物等の形状
や容積により、共鳴寸法が変化する可能性が高い。一
方、吸込側空間は、形状や容積を一定に保持できるため
共鳴寸法を一定に設定することができる。そこで、吸込
側空間で発生した騒音は、吸込側空間の共鳴寸法を吸音
材が効率良く吸音できる周波数域に設定することで、冷
蔵庫外部へ漏洩するのを減少させることができる。

これにより、冷蔵庫は、吸音材の厚みを大幅に厚くした
り、あるいは高価となる特殊な吸音材を使用することな
く、冷蔵庫の運転時に吸込側空間で発生した騒音が冷蔵
庫外部へ漏洩するのを充分に低減することができる。

〔実施例〕

本考案の一実施例を第１図ないし第４図に基づいて説明
すれば、以下の通りである。尚、説明の便宜上、従来例
で示した部材と同様の機能を有する部材には同一の符合
を付記している。

本考案に係る冷蔵庫は、第１図に示すように、最も低温
にするための冷却室である冷凍室１を最上部に備えてい
る。この冷凍室１の外壁には、騒音を吸収するための吸
音材６が設けられている。尚、この吸音材６には、例え
ばグラスウール、フェルト、および発泡ウレタン等の多
孔質材料や鉄板等が用いられている。

上記の冷凍室１の前面側には、開閉用の扉１２が回動自
在に設けられている。一方、冷凍室１内の背面側には、
冷却された空気を冷凍室１内に送出する吹出口１４…が
形成された吹出ルーバ５が設けられている。この吹出ル
ーバ５の背面側には、送出手段である軸流ファン３が固
設されたファン固定板１０が設けられている。また、こ
のファン固定板１０には、第２図に示すように、軸流フ
ァン３の側方に冷蔵室吹出口１１が形成されている。こ
の冷蔵室吹出口１１は、第１図に示すように、冷凍室１
の下方に位置する冷却室である冷蔵室１５と連通されて
いる。これにより、軸流ファン３で昇圧された空気は、
冷凍室１と冷蔵室１５とに分配されるようになってい
る。

上記の軸流ファン３の下方には、ファン固定板１０と背
板内壁９とで吸込側空間７が形成されている。この吸込
側空間７には、空気を冷却するための熱交換器４が配設
されている。また、上記の吸込側空間７には、奥行き方
向にファン固定板１０から背板内壁９に渡って、第２図
に示すように、吸込側空間７で発生する騒音を低減する
ための仕切板８が設けられている。

この仕切板８は、一端が軸流ファン３を中心として冷蔵
室吹出口１１の反対側における冷凍室１の上面外壁に当
接されている。そして、この仕切板８は、冷凍室１の上
面外壁より垂直に下ろされ、軸流ファン３とほぼ水平に
なった位置で冷蔵室吹出口１１の反対方向に折り曲げら
れて、他端が熱交換器４の上面端部に当接されている。
これにより、熱交換器４を通過した空気は、上記の仕切
板８による影響が最小限に抑えられて流れるようになっ
ている。

また、冷凍室１内の扉１２側の下面には、開口部１３が
形成され、この開口部１３は、上記の熱交換器４と連通
されている。一方、冷凍室１の下方には、冷蔵室１５が
配置され、この冷蔵室１５の上面には、開口部１６が設
けられている。そして、この開口部１６は、上記の開口
部１３と同様の経路で熱交換器４と連通されている。

上記の構成において、第３図に示すように、共鳴寸法Ｌ
を仕切板８により２８０mmとした吸込側空間７を有する
冷蔵庫（以下冷蔵庫(1)と称する。）と、仕切板８を用
いずに共鳴寸法Ｌを３８０mmとした吸込側空間７を有す
る冷蔵庫（以下冷蔵庫(2)と称する。）との各周波数に
おける音圧レベル(dBA)である騒音スペクトルおよび騒
音値(dBA)を測定した。

そして、これらの測定結果を第４図に示した。尚、冷蔵
庫(1)および冷蔵庫(2)の各周波数における音圧レベル(d
BA)は、曲線Ａおよび曲線Ｂで示されている。

上記の測定結果から、冷蔵庫(1)は、冷蔵庫(2)と比較し
て、音圧レベル(dBA)が４５０Hzの周波数域において減
少する一方、６００Hzの周波数域において上昇している
ことが判明した。これにより、冷蔵庫の吸込側空間７
は、上述の関係式(1)に示したように、例えば共鳴寸法
Ｌを小さくすれば、共鳴周波数Ｆｒを高くできることが
判明した。

上記の冷蔵庫(1)は、吸音材６が効率良く吸収できない
周波数域である４５０Hz付近の音圧レベル(dBA)が低下
する一方、吸音材６が効率良く吸収できる周波数域であ
る６００Hz付近の音圧レベル(dBA)が上昇している。従
って、冷蔵庫(1)は、新たな周波数域（６００Hz付近）
における音圧レベルの上昇が騒音全体のレベルを上昇さ
せる要因となっていない。これにより、冷蔵庫(1)の騒
音値(dBA)は、冷蔵庫(2)の騒音値(dBA)である２６dBAか
ら２５dBAへと低下している。

上記の結果より、冷蔵庫は、吸込側空間７に仕切板８を
設けた場合、吸込側空間７の共鳴周波数Ｆｒを任意に変
更できることになる。これにより、上記の吸込側空間７
で発生した騒音は、吸音材６が効率良く吸音できる周波
数域に合わせることが可能となる。従って、冷蔵庫は、
吸音材６の厚みを大幅に厚くしたり、特殊な材質を用い
たりする必要がないためにコストアップを招来すること
なく騒音の低減が可能となる。

尚、本実施例において、吸込側空間７の共鳴周波数Ｆｒ
は、吸込側空間７に仕切板８を設けることで変更してい
るがこれに限定されることはない。即ち、吸込側空間７
の共鳴周波数Ｆｒは、背板内壁９とファン固定板１０と
を接合し、熱交換器４を通過した空気が軸流ファン３へ
流れるところのみ背板内壁９をへこみ形状にして吸込側
空間７を形成することで変更しても良い。

〔考案の効果〕

本考案に係る冷蔵庫は、以上のように、冷蔵室および冷
凍室からなる冷却室と、上記冷却室内の空気を循環させ
る送出手段と、この送出手段により循環される空気を冷
却する熱交換器と、この熱交換器から送出手段まで熱交
換器で冷却された空気を案内するように形成された吸込
側空間と、この吸込側空間および冷却室で発生した騒音
を吸音して冷蔵庫外部へ漏洩させないようにする吸音材
とを有し、上記の吸込側空間および冷却室は、それぞれ
特定の周波数域において共鳴する共鳴寸法を有する冷蔵
庫において、上記の吸込側空間は、吸音材が効率良く吸
音できる周波数域に共鳴寸法が設定されている構成であ
る。

これにより、吸込側空間において、吸音材が効率良く吸
音する周波数域に設定することで、吸音材の厚みを大幅
に厚くしたり、あるいは高価となる特殊な吸音材を使用
することなく、冷蔵庫の運転時に吸込側空間で発生した
騒音が冷蔵庫外部へ漏洩するのを充分に低減することが
できる。

従って、コストアップを招来することなく冷蔵庫の運転
時に発生する騒音を低減できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第４図は、本考案の一実施例を示すもので
ある。 第１図は、冷蔵庫の上部を破断して示す概略側面図であ
る。 第２図は、冷蔵庫の吸込側空間付近を示す概略正面図で
ある。 第３図は、本考案の効果を確認するために行った際の冷
蔵庫の吸込側空間を示す概略正面図である。 第４図は、仕切板を備えた冷蔵庫および仕切板を備えな
い冷蔵庫の各周波数における音圧レベル(dBA)と騒音値
(dBA)とを示す図である。 第５図および第６図は、従来例を示すものである。 第５図は、冷蔵庫の上部を破断して示す概略側面図であ
る。 第６図は、冷蔵庫の吸込側空間付近を示す概略正面図で
ある。 １は冷凍室（冷却室）、３は軸流ファン（送出手段）、
４は熱交換器、６は吸音材、７は吸込側空間、８は仕切
板である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】冷蔵室および冷凍室からなる冷却室と、上
   記冷却室内の空気を循環させる送出手段と、この送出手
   段により循環される空気を冷却する熱交換器と、この熱
   交換器から送出手段まで熱交換器で冷却された空気を案
   内するように形成された吸込側空間と、この吸込側空間
   および冷却室で発生した騒音を吸音して冷蔵庫外部へ漏
   洩させないようにする吸音材とを有し、上記の吸込側空
   間および冷却室は、それぞれ特定の周波数域において共
   鳴する共鳴寸法を有する冷蔵庫において、 上記の吸込側空間は、吸音材が効率良く吸音できる周波
   数域に共鳴寸法が設定されていることを特徴とする冷蔵
   庫。