JPH0616776A - 晶出が抑制された未硬化エポキシ樹脂 - Google Patents

晶出が抑制された未硬化エポキシ樹脂

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JPH0616776A
JPH0616776A JP3149230A JP14923091A JPH0616776A JP H0616776 A JPH0616776 A JP H0616776A JP 3149230 A JP3149230 A JP 3149230A JP 14923091 A JP14923091 A JP 14923091A JP H0616776 A JPH0616776 A JP H0616776A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 (A)ビスフェノールAとエピハロヒドリン
との反応により得られるエポキシ樹脂と、(B)炭素数
10〜30の脂肪族モノカルボン酸との付加物であっ
て、(B)の含有量が(A)の中のエポキシ基に基づき
0.5〜30当量%である未硬化エポキシ樹脂である。 【効果】 この未硬化エポキシ樹脂は、低粘度で取り扱
いやすく、かつ低温条件下に放置しても晶出を生じるこ
とがない上に、良好な物性をもつ硬化物を与える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、晶出が抑制された新規
な未硬化エポキシ樹脂に関するものである。さらに詳し
くいえば、本発明は、塗料、土木建築材料、接着剤、注
型品などの用途に好適な、低粘度で使用性がよく、かつ
硬化物の物性に優れ、しかも晶出が起りにくい新規な未
硬化エポキシ樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、エポキシ樹脂は、例えば塗装、接
着、注型、ライニング、積層などの材料として、種々の
分野において広く用いられているが、用途によっては、
使用時の流れ性、脱泡性、クロスへの含浸性などの改善
や、充填剤の添加量の増大などの目的で、エポキシ樹脂
の粘度を下げる必要性が生じる。
【0003】エポキシ樹脂の粘度を下げるために、例え
ば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとから得ら
れるエポキシ樹脂の場合、これまでビスフェノールAの
純ジグリシジルエーテルの成分を多くすることにより、
低粘度化することが行われてきた。しかしながら、この
ようにして得られるエポキシ樹脂は、硬化物の物性は比
較的良いものの、晶出しやすくなり、特に平均繰り返し
単位数nが0.15以下のビスフェノールエーテル系の
エポキシ樹脂の場合、室温、特に冬期の外気温などの低
温に放置されていると晶出が起るという欠点があった。
このような晶出の傾向は、温度変化や充填剤の添加など
によって助長され、またビスフェノールAのジグリシジ
ルエーテル系の液状エポキシ樹脂の場合、晶出する物質
は平均繰り返し単位数nが0の場合のビスフェノールA
の純グリシジルエーテルであることが知られている。
【0004】このような晶出を抑制する方法としては、
例えばビスフェノールAとエピクロロヒドリンとから得
られるエポキシ樹脂中の加水分解性塩素として検出され
る未閉環クロロヒドリン基を、該エポキシ樹脂に含まれ
るエポキシ基に対して、約10重量%程度に調整するこ
とにより、晶出を抑制する方法がこれまで用いられてき
た。しかしながら、この方法においては、晶出抑制効果
はあるものの、硬化物の物性の低下を免れないという欠
点があった。
【0005】他方、エポキシ樹脂に、酸性化合物を5〜
16%反応させることにより、晶出を抑制することも提
案されているが(特公昭55−42093号公報)、こ
の場合、エポキシ樹脂の変性率を高めれば、晶出抑制効
果はある程度向上するものの、まだ十分ではない上、粘
度が著しく上昇して使用性が悪くなり、しかも硬化物の
物性が不十分であるなどの欠点がある。
【0006】また、エポキシ当量202.3(n=0.
23)のエポキシ樹脂にステアリン酸を無触媒で反応さ
せたものも知られているが、このようにして得られる樹
脂は粘度が著しく高く、取り扱いにくい上に硬化物の物
性も満足しうるものとはならないという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、硬化物の物性に優れ、かつ低粘度で使用
性がよい上、晶出が抑制された未硬化エポキシ樹脂を提
供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、晶出が抑制
され、しかも低粘度の未硬化エポキシ樹脂を開発するた
めのに鋭意研究を重ねた結果、芳香族ジヒドロキシ化合
物から誘導される未硬化エポキシ樹脂に、特定炭素数の
脂肪族モノカルボン酸を所定の割合で付加させることに
より、前記目的を達成しうることを見出し、この知見に
基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、一般式
【化2】 〔式中のRは水素原子又はメチル基、R及びR
は、それぞれハロゲン原子又はメチル基、Yは単なる
結合、−CH−、−C(CH−、−SO−、
−SO−、−CO−、−S−又は−O−、nは平均繰り
返し単位数で0〜0.18、l及びmはそれぞれ0又は
1〜4の整数であって、lが2以上の場合、Rは異な
るものであってもよいし、mが2以上の場合、Rは異
なるものであってもよい〕で表わされるエポキシ樹脂
(A)と炭素数10〜30の脂肪族モノカルボン酸
(B)との付加物であって、(B)の含有量が(A)の
中のエポキシ基に基づき0.5〜30当量%であること
を特徴とする晶出が抑制された未硬化エポキシ樹脂を提
供するものである。
【0010】上記の一般式(I)で表わされるエポキシ
樹脂は、例えば一般式
【化3】 (式中のR,R,Y,l及びmは前記と同じ意味を
もつ)で表わされる芳香族ジヒドロキシ化合物とエピハ
ロヒドリンとの反応によって得られるものである。この
一般式(II)で表わされる芳香族ジヒドロキシ化合物
の代表例としては、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェ
ニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(ヒドロキ
シフェニル)メタン異性体混合物(ビスフェノール
F)、4,4′‐ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビ
スフェノールS)、2,2‐ビス(3,5‐ジブロモ‐
4‐ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビス
フェノールA)などが挙げられる。該エポキシ樹脂のも
う1つの原料として用いられるエピハロヒドリンは、一
般式
【化4】 (式中のXは塩素原子又は臭素原子、Rは前記と同じ
意味をもつ)で表わされ、このようなものの具体例とし
ては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、2‐
メチルエピクロロヒドリン、2‐メチルエピブロモヒド
リンなどが挙げられるが、これらの中で、エピクロロヒ
ドリンが好適である。
【0011】前記芳香族ジヒドロキシ化合物とエピハロ
ヒドリンとの反応は、従来エポキシ樹脂の製造において
慣用されている方法によって行うことができる。該芳香
族ジヒドロキシ化合物とエピハロヒドリンとの反応によ
って得られるエポキシ樹脂の代表的なものとしては、ビ
スフェノールAのジグリシジルエーテル、特に一般式
【化5】 で表わされ、平均繰り返し単位数nが0〜0.15の低
重合度のビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙
げられる。
【0012】次に本発明において用いられる炭素数10
〜30の脂肪族モノカルボン酸としては、例えばデカン
酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリス
チン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン
酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ミリ
ストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノー
ル酸、リノレン酸などが挙げられる。炭素数が10より
小さいものでは晶出抑制効果が十分に発揮されない。好
ましい脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数14〜3
0のものが挙げられるが、特に安価に入手可能な点から
オレイン酸及びステアリン酸が好適である。
【0013】前記炭素数10〜30のモノカルボン酸
は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わ
せて用いてもよく、また、これらのモノカルボン酸は前
記未硬化エポキシ樹脂のエポキシ基の0.5〜30当量
%、好ましくは1〜10当量%、より好ましくは1〜5
当量%が変性されるような割合で使用される。この量が
0.5当量%では晶出抑制効果が十分に発揮されない
し、30当量%を超えると該エポキシ樹脂中にエポキシ
基を有しない分子種が増大し、硬化物の物性の低下をも
たらす。
【0014】該未硬化エポキシ樹脂と炭素数10〜30
の脂肪族モノカルボン酸との反応においては、所望に応
じ触媒を用いることができる。この触媒としては、例え
ば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金
属水酸化物、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラ
ートなどの金属アルコラート、トリエチルアミン、トリ
エタノールアミン、2,4,6‐トリス(ジメチルアミ
ノメチル)フェノールなどの第三級アミン化合物、テト
ラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニ
ウムクロリドなどの第四級アンモニウム塩、ベンジルト
リフェニルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホ
ニウムヒドロオキシド、ブチルトリフェニルホスホニウ
ムブロミドなどの第四級ホスホニウム塩、トリブチルホ
スフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホス
フィン、スチリルジフェニルホスフィンなどの第三級ホ
スフィンなどが挙げられる。
【0015】これらの触媒は1種用いてもよいし、2種
以上組み合わせて用いてもよく、その使用量は、未硬化
エポキシ樹脂に対し、通常50重量ppmないし5重量
%の範囲で、使用する触媒の種類に応じて適宜選ばれ
る。
【0016】また、該未硬化エポキシ樹脂と脂肪族モノ
カルボン酸との反応は、通常60〜200℃、好ましく
は80〜150℃の範囲の温度において、反応が完結す
るまで行うのがよい。未反応の脂肪族モノカルボン酸が
残存すると、硬化物の物性が低下するおそれがある。
【0017】このようにして、晶出が抑制された変性エ
ポキシ樹脂の硬化剤については特に制限はなく、公知の
エポキシ樹脂用硬化剤、例えばポリアミン系、酸無水物
系などの中から、使用目的やエポキシ樹脂の種類などに
応じて適宜選択することができる。
【0018】前記の晶出が抑制された変性エポキシ樹脂
を硬化剤を用いて硬化させる際、該変性エポキシ樹脂
に、必要に応じ、本発明の目的をそこなわない範囲で、
例えばアルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジ
ルエーテル、カルボン酸グリシジルエステルなどの反応
性希釈剤、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンな
どの非反応性希釈剤、あるいは顔料などの添加剤や充填
剤を添加することができる。該充填剤としては、例えば
ガラス繊維、ホウ素繊維、炭素繊維、セルロース、ポリ
エチレン粉末、石英粉、雲母、アスベスト粉、スレート
粉、カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウ
ム、セッコウ、三酸化アンチモン、シリカ、バライト、
ゼオライト、二酸化チタン、タルク、カーボンブラッ
ク、グラファイト、酸化鉄、鉄粉、アルミニウム粉末、
炭酸カルシウム、エロージール、ベントナイト及びこれ
らに類似するものなどが挙げられる。
【0019】
【発明の効果】本発明の変性された未硬化エポキシ樹脂
は、硬化物の物性に優れ、かつ低粘度で使用性がよい
上、低温条件下に放置しても晶出を生じることがないと
いう利点がある。この変性エポキシ樹脂は、例えば塗
料、土木建築材料、接着剤、注型品などの用途に好適に
用いられる。
【0020】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定され
るものではない。なお、例中の各特性は次のようにして
求めた。 (1)エポキシ樹脂 JIS K‐7236に準拠して測定した。
【0021】(2)加水分解性塩素量 試料1gを50mlのトルエンに溶解し、これに0.1
規定KOH‐メタノール溶液で20mlを加えて15分
間煮沸したのち、硝酸銀で滴定し求めた。
【0022】(3)粘 度 比重を測定したのち、JIS K‐7233に準拠して
求めた。
【0023】(4)酸 価 JIS K‐6901に準拠して測定した。
【0024】(5)晶出日数 晶出時間を短縮させるために、エポキシ樹脂技術協会発
行、「試験規格委員会技術報告I」、23ページ(19
85年)記載の方法に準拠し、結晶化が進行し、樹脂が
完全に固化した日数を測定した。
【0025】(6)熱変形温度(HDT) JIS K‐6911に準拠して測定した。
【0026】製造例1 ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを反応させ
て、平均繰り返し単位数n=0.14、エポキシ当量1
89g/eq、粘度14,000センチポイズ、加水分
解性塩素量0.05重量%のエポキシ樹脂Aを得た。
【0027】製造例2 ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを反応させ
て、平均繰り返し単位数n=0.11、エポキシ当量1
85g/eq、粘度9,900センチポイズ、加水分解
性塩素量0.05重量%のエポキシ樹脂Bを得た。
【0028】実施例1〜5、比較例1〜5 製造例1で得たエポキシ樹脂Aに対し、トリフェニルホ
スフィン500重量ppmを加え、表1に示す種類と量
の脂肪族モノカルボン酸又は塩酸を添加し、100℃で
酸価が0.01以下になるまで反応させたのち、真空乾
燥して変性エポキシ樹脂を得た。得られた変性エポキシ
樹脂の粘度及び晶出日数を表1に示す。 また、前記の
変性エポキシ樹脂を、そのエポキシ基に対して等当量の
トリエチレンテトラミンを用いて80℃、2時間で硬化
させ、硬化物の熱変形温度を測定した。その結果を表1
に示す。
【表1】 この表から分かるように、実施例1〜5は比較例1に比
べて晶出日数は4倍以上となっており、その晶出抑制効
果は著しい。特に実施例5はその晶出抑制効果が比較例
1の10倍である。実施例1〜5で得られた変性エポキ
シ樹脂の粘度は、比較例1に比べて3,000センチポ
イズ以上低く、使用性が著しく改善されており、さら
に、硬化物の物性も満足しうる結果が得られている。
比較例2及び4は晶出抑制効果はあるものの、粘度はい
ずれも高い上に、硬化物の物性も悪い。比較例3及び5
は、晶出抑制及び低粘度化の効果は実施例と比べて悪
い。
【0029】実施例6〜11、比較例6〜9 製造例2で得たエポキシ樹脂Bに対し、トリフェニルホ
スフィン300重量%を加え、表2に示す種類と量の脂
肪族モノカルボン酸を添加し、100℃で10時間反応
させることにより、酸価0.1以下の変性エポキシ樹脂
を得た。このようにして得た変性エポキシ樹脂のエポキ
シ当量と、該カルボン酸とエポキシ基がすべて反応した
と仮定した場合のエポキシ当量(理論値)との差は1以
下の範囲であった。
【0030】比較例10 ビスフェノールAとエピクロロヒドリンを反応させて、
平均繰り返し単位n=0.22、エポキシ当量が、20
1g/eq、粘度29,800センチポイズ、加水分解
性塩素量0.05重量%のエポキシ樹脂を得た。このエ
ポキシ樹脂に対し、表2に示す種類と量のステアリン酸
を添加し、180℃で0.5時間反応させて、酸価0.
1の変性エポキシ樹脂を得た。
【表2】 この表から分かるように、実施例6〜11で得られた変
性エポキシ樹脂の粘度は、比較例6に比べて3,000
センチポイズ以上低く、さらに晶出抑制効果について
は、実施例6〜10の場合、比較例6と比較し効果は1
0倍以上であり、その硬化物の物性も良い。比較例7〜
9は粘度低下の効果は、比較例6と比較して、数100
センチポイズ程度しかなく、かつ晶出抑制効果も顕著な
差は認められなかった。比較例10の粘度は実施例1〜
11と比較し著しく高く、硬化物の物性も劣っている。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 【化1】 〔式中のRは水素原子又はメチル基、R及びR
    は、それぞれハロゲン原子又はメチル基、Yは単なる
    結合、−CH−、−C(CH−、−SO−、
    −SO−、−CO−、−S−又は−O−、nは平均繰り
    返し単位数で0〜0.18、l及びmはそれぞれ0又は
    1〜4の整数であって、lが2以上の場合、Rは異な
    るものであってもよいし、mが2以上の場合、Rは異
    なるものであってもよい〕で表わされるエポキシ樹脂
    (A)と炭素数10〜30の脂肪族モノカルボン酸
    (B)との付加物であって、(B)の含有量が(A)の
    中のエポキシ基に基づき0.5〜30当量%であること
    を特徴とする晶出が抑制された未硬化エポキシ樹脂。
  2. 【請求項2】 エポキシ樹脂(A)がビスフェノールA
    から誘導されるエポキシ樹脂である特許請求の範囲第1
    項記載の未硬化エポキシ樹脂。
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