JPH0615278A - 弗素含有廃水処理における消石灰注入量の制御方法及び弗素分除去装置 - Google Patents

弗素含有廃水処理における消石灰注入量の制御方法及び弗素分除去装置

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JPH0615278A
JPH0615278A JP33152191A JP33152191A JPH0615278A JP H0615278 A JPH0615278 A JP H0615278A JP 33152191 A JP33152191 A JP 33152191A JP 33152191 A JP33152191 A JP 33152191A JP H0615278 A JPH0615278 A JP H0615278A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 弗素含有廃水の弗素分(弗素イオン)除去処
理において、消石灰注入量を必要最小限に留め、更には
処理水質の安定化も図る。 【構成】 廃水弗素濃度分析計3からの弗素濃度信号に
より、必要カルシウム濃度を予め定めた計算式又は乗算
係数により算出し、この値から廃水カルシウム濃度分析
計4からのカルシウム濃度信号を減算し、さらに廃水流
量検出器1からの流入廃水流量信号を乗算する演算回路
により消石灰注入量を演算出力して、反応槽5に消石灰
を注入する。目標弗素濃度値と処理水の弗素濃度測定値
との偏差の極性及びその大きさから補正乗算係数を間欠
的に演算・修正しつつ消石灰注入量の制御を行い、処理
水質の安定化を図ることもできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、弗素(本明細書では
「弗素イオン」を意味する)を含有する廃水処理におけ
る消石灰注入量の制御方法に関するものであり、更に詳
しくは、弗素又は弗素及びカルシウム(本明細書では
「カルシウムイオン」を意味する)を含有する廃水中の
弗素分を消石灰により弗化カルシウムとして除去する廃
水処理方法において、該消石灰の注入量を制御する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭火力発電所において生ずる排煙脱硫
廃水(以下、「脱硫廃水」と言う)や半導体工場におい
て生ずる廃水(以下、「弗酸廃水」と言う)には、弗素
分が含有されており、消石灰等のカルシウム塩を使用し
て、かかる廃水中の弗素分を弗化カルシウムとして除去
する廃水処理方法が広く行われている。
【0003】しかしながら、例えば、石炭火力発電所に
おける脱硫廃水中の弗素濃度は、発電のために使用する
石炭の種類(炭種)や排煙脱硫装置の方式(スート分離
方式やスート混合方式)、更には例え炭種が同一であっ
ても発電負荷量によって異なるのが一般的である。この
ことは、弗酸廃水についても同様で、半導体の製造工程
での弗酸や水の使用状況によって、一般に弗酸廃水の弗
素濃度は異なってくる。
【0004】従来、このような弗素含有廃水の弗素分除
去装置を用いた処理は、手動により薬品量の調節を行う
のが実情であった。
【0005】図4は、一例として、石炭火力発電所の運
転時間の経過に伴う脱硫廃水の弗素濃度の変化をモデル
的に表したグラフ図である。この図の横軸は運転時間を
表し、縦軸は弗素濃度を表す。脱硫廃水中の弗素濃度
は、図4に示されるように、運転時間の経過とともに変
動するが、従来、弗素の分析は時間と労力を要するの
で、予想弗素濃度(A)を基凖にして、一定注入率で消
石灰を注入しつつ弗素分除去装置を運転する場合が多か
った。
【0006】
【発明が解決しようとする問題点】この場合、廃水中の
実際の弗素濃度が予定弗素濃度(A)より低濃度(C)
〔即ち、濃度変動の山が下〕であれば、消石灰の過剰注
入となり、更にこれに伴う炭酸ソーダの注入量が多くな
り、ランニングコストの上昇を招くこととなる。逆に、
実際の弗素濃度が予定弗素濃度(A)より高濃度(B)
〔即ち、濃度変動の山が上〕であれば、消石灰注入量が
不足することとなり、弗素分除去の効率が低下し、処理
水質の悪化を招き、放流基準水質を満足できなくなる。
従来、かかる不都合が多々見られていた。
【0007】また、脱硫廃水中にはカルシウム分(カル
シウムイオン)が存在し、このカルシウム分が弗素除去
に有効利用されうることも明らかとなっている。しかし
ながら、脱硫廃水中のカルシウム濃度も排煙脱硫装置の
運転状況や使用する石炭の種類等によって異なってくる
のが一般的である。
【0008】このため、脱硫廃水中のカルシウム分を弗
素除去に有効利用する場合は、或る基準の脱硫廃水中含
有カルシウム濃度(通常は、計画値)を想定し、不足分
の消石灰注入量を設定することが一般的である。この方
法では、前述と同様に、消石灰の過不足が生じ、運転経
費の上昇、処理水質の安定化が図れない等の問題が生じ
ていた。
【0009】しかも、上記の場合、脱硫廃水中のカルシ
ウム濃度が弗素濃度と同調して変動するとは限らず、殆
ど相関関係の無い状態で変化することが多い。従って、
廃水中の弗素濃度のみの測定では、適正な消石灰注入量
が決定できない等、脱硫廃水処理装置は従来の総合廃水
処理装置とは異なった運転管理を必要とする。
【0010】処理水質の安定化を図ろうとすれば、消石
灰の過剰注入を余儀無くされ、消石灰消費量の増加に伴
うコスト増大と廃棄汚泥(弗化カルシウム、炭酸カルシ
ウム、硫酸カルシウム等)の増加に伴う産業廃棄物処理
の問題を生じていた。また、流入廃水の弗素やカルシウ
ムの濃度変動を吸収し、流入廃水の性状を極力均一化さ
せるために、前段に充分大容量の貯留槽とその為の均一
化設備を設ける必要が有った。
【0011】従って、本発明は、上記の諸問題を解決せ
んとするものであり、弗素含有廃水の弗素分除去処理に
おいて、消石灰注入量を必要最小限に留めることをその
主目的とし、更には処理水質の安定化をも図らんとする
ものである。
【0012】かかる諸問題の解決に当たっては、弗素分
除去装置へ流入する廃水流量の変動、流入廃水中の弗素
濃度の変動及び場合によっては流入廃水中のカルシウム
濃度の変動に対応した消石灰注入量の制御手段を案出す
ること、消石灰の注入量が過剰とならないように必要最
小限とする手段を案出すること、更には、廃水の弗素イ
オン及びカルシウムイオンとの各種結合イオン(硫酸イ
オン、燐酸イオン、珪酸イオン等:これらカルシウムイ
オンと反応する各種結合イオンの廃水中の濃度も炭種等
により異なってくる)の成分構成比の変動に伴う処理水
質の変動を目標値と比較してフィードバックするにして
も、廃水処理が少なくとも反応→pH調整→沈澱分離と
いうプロセスを踏むために制御時定数が桁違いに大きい
という問題を解決する手段を案出することが必要であっ
た。
【0013】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、かかる
観点から鋭意検討した結果、本発明を完成するに到っ
た。
【0014】即ち、本発明によれば、流入する廃水の流
量を検出する廃水流量検出器及び流入廃水の弗素濃度を
検出する廃水弗素濃度分析計を備えた弗素含有廃水から
弗素分を除去する弗素分除去装置の制御方法において、
前記廃水弗素濃度分析計からの弗素濃度信号により、弗
素分除去に必要なカルシウム濃度を予め定めた計算式又
は乗算係数により算出し、更に前記廃水流量検出器から
の流入廃水流量信号を乗算する演算回路により消石灰注
入量を演算出力することを特徴とする弗素含有廃水処理
における消石灰注入量の制御方法が提供される。
【0015】この弗素含有廃水処理における消石灰注入
量の制御方法において、処理水の目標弗素濃度値をゼロ
では無い排水許容限度内の正の値に設定し、該目標弗素
濃度値と処理水の弗素濃度測定値との偏差の極性及びそ
の大きさにより消石灰注入量の演算出力を補正する為の
乗算係数を算出する演算回路を設け、流入廃水流量を積
算する積算回路による積算値が前記処理水の弗素濃度検
出位置までの前記弗素分除去装置の実効滞留容積値に達
したと比較回路が判断する毎に、前記補正乗算係数を演
算・修正すると共に前記積算値をリセットする機能を前
記弗素分除去装置が備え、前記消石灰注入量に前記補正
乗算係数を乗算した値を消石灰注入量コントローラーの
リモート設定値として消石灰注入量を制御するのが好ま
しい。
【0016】また、本発明によれば、流入する廃水の流
量を検出する廃水流量検出器、流入廃水の弗素濃度を検
出する廃水弗素濃度分析計、及び流入廃水のカルシウム
濃度を検出する廃水カルシウム濃度分析計を備えた弗素
及びカルシウム含有廃水から弗素分を除去する弗素分除
去装置の制御方法において、前記廃水弗素濃度分析計か
らの弗素濃度信号により、弗素分除去に必要なカルシウ
ム濃度を予め定めた計算式又は乗算係数により算出し、
この算出必要カルシウム濃度から前記廃水カルシウム濃
度分析計からのカルシウム濃度信号を減算し、更に前記
廃水流量検出器からの流入廃水流量信号を乗算する演算
回路により消石灰注入量を演算出力する弗素及びカルシ
ウム含有廃水処理における消石灰注入量の制御方法も提
供される。
【0017】この弗素及びカルシウム含有廃水処理にお
ける消石灰注入量の制御方法において、処理水の目標弗
素濃度値をゼロでは無い排水許容限度内の正の値に設定
し、該目標弗素濃度値と処理水の弗素濃度測定値との偏
差の極性及びその大きさにより消石灰注入量の演算出力
を補正する為の乗算係数を算出する演算回路を設け、流
入廃水流量を積算する積算回路による積算値が前記処理
水の弗素濃度検出位置までの前記弗素分除去装置の実効
滞留容積値に達したと比較回路が判断する毎に、前記補
正乗算係数を演算・修正すると共に前記積算値をリセッ
トする機能を前記弗素分除去装置が備え、前記消石灰注
入量に前記補正乗算係数を乗算した値を消石灰注入量コ
ントローラーのリモート設定値として消石灰注入量を制
御するのが好ましい。
【0018】更に、本発明によれば、消石灰を注入する
反応槽を有する一次処理装置及び二次処理装置を包含す
る弗素分除去装置であって、前記反応槽の上流に流入廃
水流量検出器並びに廃水弗素濃度分析計あるいは廃水弗
素濃度分析計及び廃水カルシウム濃度分析計を備え、前
記一次処理装置と前記二次処理装置の間か前記二次処理
装置の下流に処理水弗素濃度分析計を所要に応じて備え
ており、前記した本発明の消石灰注入量の制御方法の各
種態様のいづれかに従った制御を行うための演算手段を
備え、更に、前記演算手段による演算結果に応じて消石
灰を前記反応槽に注入するための消石灰注入手段を備え
ていることを特徴とする弗素分除去装置も提供される。
【0019】以下、本発明を具体的且つ詳細に説明す
る。脱硫廃水の場合を中心的に説明を行うが、これは、
弗酸廃水の場合には、廃水中にカルシウム分が含有され
ていないのが一般的であるので、以下の説明から「含有
カルシウム量」というファクターを抜いて考えさえすれ
ば良いからである。
【0020】先ず、弗素分除去装置へ流入する廃水の弗
素濃度(F)を測定し、弗素除去に必要なカルシウム濃
度(即ち、カルシウム量、これを仮に「全カルシウム
量」とする)を実機の運転で得られた計算式〔F
(x)〕又は簡易な乗算係数(α)により、上記弗素濃
度に応じて算出し、場合によっては更に流入廃水中のカ
ルシウム濃度(Ca’、これを仮に「含有カルシウム
量」とする)を測定し、この値を前記全カルシウム量か
ら減算して、注入すべき「不足分カルシウム量」を算出
し、更にこの「不足分カルシウム量」もしくは前記「全
カルシウム量」(廃水中にカルシウムが含まれ無い場
合)を消石灰量に換算する。
【0021】また、流入廃水量も変動するため、前記消
石灰量に廃水流量検出器による流入廃水流量信号(Q)
を乗算して、その時点の流入廃水に対する消石灰注入量
を求め、これによって消石灰注入量の制御を行う。
【0022】この消石灰注入量に、好ましくは、注入結
果としてのフィードバック修正用の係数(β)を乗算し
て、得られる値を消石灰注入流量コントローラーのリモ
ート設定値として利用し、消石灰注入量を制御する。
【0023】また、消石灰の過剰注入防止のため、処理
水の目標弗素濃度(f)を許容されるゼロでは無い正の
値と設定し、これと処理水弗素濃度測定値(F’)との
偏差の大きさ(F’−f)及び極性(±)により、乗算
係数(β)をフィードバック修正するのが好ましい。
【0024】しかしながら、前述したように、消石灰を
注入された廃水は、処理水として流出してくるまでに相
当の時間遅れを要するだけでなく、この時間遅れが流入
廃水流量によっても大きく変動するため、過去の制御時
点に対応するフィードバックを確実とするように、通常
のフィードバック制御を用いる代わりに、前記処理水の
弗素濃度検出位置までの弗素分除去装置系統内の実効滞
留容積(Qs )を求め、流入廃水量の積算値(Qr )が
該実効滞留容積(Qs )に達する毎に、乗算係数(β)
を修正する演算を行わしめることとするのが好ましい。
なお、実効滞留容積とは、前記弗素分除去装置内におけ
る処理水(以下の実施例においては一次処理水と二次処
理水がある)の弗素濃度検出位置までの実際に水が通過
して行く部分の容積である。
【0025】以上を纏めると、以下の式のいづれかに従
い消石灰注入量(Ca)を演算することになる。なお、
以下の式において、Kは装置固有の定数を表し、γは実
際に注入する消石灰スラリーの濃度(あるいは密度)を
表す。
【0026】
【数1】〔詳細式〕 Ca = K・〔F(x)−Ca’〕・Q・β・1/γ
【0027】
【数2】〔簡易式〕 Ca = K・〔F・α −Ca’〕・Q・β・1/γ
【0028】
【作用】上記の様に構成された弗素分除去装置の消石灰
注入量制御方法においては、脱硫廃水の発電負荷の変動
に伴う弗素濃度や含有カルシウム濃度の変動及び廃水流
量の変動に対して実機で得られた正確な計算式〔F
(x)〕や乗算係数(α)により最適量の消石灰の注入
が直ちに自動的に行えるため、負荷変動の大きな中間負
荷の石炭火力発電所においては、従来に比べて大幅な消
石灰等の薬品の費用を節減できるようになる。
【0029】また、炭種の変動や炭種のブレンド比の変
更に伴う廃水の成分構成比の変動に対しても処理水の弗
素濃度による消石灰注入量補正機構による制御を有効に
作用させることも可能なので、従来の様に処理水質を安
全側に確保するために消石灰を過剰に注入する必要が無
くなるのみならず、発電負荷の変動に合わせて運転員が
消石灰注入量の設定変更をその都度行う必要も無くなっ
た。
【0030】以上の様な作用とそれに伴う効果は、脱硫
廃水だけでなく弗酸廃水においても同様である。
【0031】
【実施例】以下、図面を参照しつつ、本発明を実施例で
更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるも
のでは無い。
【0032】図1は、本発明に使用する弗素分除去装置
である廃水処理装置の一例における各処理工程と信号系
統を示すフローチャートである。
【0033】この装置は、脱硫廃水処理用装置であり、
図1において一次処理水16が流出する位置より左側は
一次処理装置であり、右側は二次処理装置(軟化装置)
である。
【0034】この一次処理装置は、反応槽5(消石灰を
注入)、pH調整槽6(例えば、苛性ソーダを注入、p
H値を約6〜約8に調整)、第一凝集槽7(例えば、ア
ニオン系高分子凝集剤を助剤として使用)、第一沈澱槽
15を有し、更に附帯設備として、消石灰溶解槽12、
消石灰注入ポンプ13、消石灰注入コントロール弁9、
pH調整剤注入バルブ18、pH調整剤貯槽(図示され
ていない)を備えている。第一沈澱槽15には、汚泥引
抜きポンプ17が備えられ、pH調整槽6には、pH検
出器19が備えられている。
【0035】二次処理装置は、軟化槽31(例えば、炭
酸ソーダ、苛性ソーダを注入)、第二凝集槽32(例え
ば、アニオン系高分子凝集剤を助剤として使用)、第二
沈澱槽33を有する。軟化槽31には、pH検出器36
が備えられ、第二沈澱槽33には、汚泥引抜きポンプ3
5が備えられている。
【0036】脱硫廃水には一般にマグネシウム分(マグ
ネシウムイオン)が含まれており、例えば、軟化槽31
に炭酸ソーダに加えると共に苛性ソーダを注入してpH
が10を越えるように(例えば、約10.5)pH調整
すると、水酸化マグネシウムの沈澱が生成するが、恐ら
くこれに吸着される形で一次処理水に残存する弗素分の
かなりの部分が同時に沈澱(共沈)し、従って、二次処
理水中の弗素濃度は更に低くなる。
【0037】上記の弗素分除去装置において、流入廃水
2の弗素イオン濃度を連続又は短時間の間隔で測定する
廃水弗素濃度自動分析計3(例えば、イオン電極法を利
用、特開平3−51754号公報参照)により廃水の弗
素濃度Fを測定し、このFの信号を演算手段としての例
えばコンピューター100に入力し、必要な全カルシウ
ム量を下記の式に従いコンピューターのCPUで計算す
る。
【0038】
【数3】 F(x)=a・logF2 +b・logF+C 〔但し、a、b、Cは定数〕
【0039】しかし、この演算が複雑なため、下記の係
数αを使うのが便利である。係数αは、実機及び各種フ
ィールドテストの結果より求めるもので、簡便に使用で
き、F×αとして、必要な全カルシウム量を求めること
ができる。なお、αはコンピューター100のメモリー
部に格納されており、その値は2.5ないし5.0の範
囲に存在する。
【0040】流入廃水2の含有カルシウムイオン濃度を
連続又は短時間の間隔で測定する廃水カルシウム濃度自
動分析計4(例えば、発光プラズマ法を利用、実開平2
−118856、2−118857、2−11885
8、2−120057号公報参照)により含有カルシウ
ム濃度Ca’を測定し、このCa’の信号をコンピュー
ター100に入力し、CPUで〔(F(x)−Ca’〕
又は〔F・α−Ca’〕の減算を行い、注入により増加
すべきカルシウム濃度を算出する。
【0041】この値に流入廃水2の流量を検出する流量
検出器1よりの瞬時流量信号QをCPUで乗算し、更に
本装置に使用されている分析機器や測定機器等の各種機
器類の測定レンジ、制御レンジ及び使用単位によって決
まる装置固有の定数K(メモリー部に格納されている)
を乗算して、消石灰濃度100%とした場合の瞬時の消
石灰注入量が算出される。
【0042】更に、実際の消石灰スラリー濃度を測定す
る消石灰濃度検出器11の濃度信号γをコンピューター
100に入力し、CPUで上記の消石灰濃度100%と
した場合の瞬時の消石灰注入量に1/γを乗算すること
により実液濃度における消石灰注入流量が算出される。
【0043】なお、消石灰濃度を常時一定制御可能な自
動溶解設備が用意されている場合は、1/γを演算器の
内部定数に含めて取扱い、消石灰濃度検出器11を省略
することもできる。
【0044】次に、上記「数1」又は「数2」の式にお
ける注入量補正乗算係数βを使用する好ましい態様の場
合については、例えば、図2のプログラム処理手順を示
すフローチャートで説明されている。
【0045】βは、下記の式で表される。
【0046】
【数4】β=1+RV(tn-1)+ΔRV(tn) 〔但し、ΔRV(tn)=k(F’−f)(tn)である。〕
【0047】この式で、一次処理水16の弗素イオン濃
度を測定する一次処理水弗素濃度分析計14からの弗素
濃度信号F’と一次処理水16の弗素濃度目標値fとの
偏差(F’−f)による今回の補正値が、ΔRV(tn)
k(F’−f)(tn)である。kは、1回毎の補正値に対
する比例係数である。前回までの補正値の累積値が、R
(tn-1)である。
【0048】「数1」や「数2」の式が常時演算される
のに対し、「数4」の式は流入廃水量の積算値QT が実
効滞留容積QS (この場合、図1の弗素分除去装置にお
いて弗素濃度分析計14の位置までの実効滞留容積であ
る)に達する毎に演算される。即ち、QT ≧QS となっ
た時に係数βが新しい値に修正され、次回まで固定され
る。また、同時に流入廃水量積算値QT もゼロにリセッ
トされ、積算を再開する。
【0049】次に、図2のフローチャートに従って、コ
ンピューター100で行われるプログラム処理手順を説
明する。ある時点で、装置運転中と検知されると〔ステ
ップ(1)〕、次に前回のサイクルまでの流入廃水量の
積算回路による積算値が処理水の弗素濃度検出位置まで
の弗素分除去装置の実効滞留容積の値に達したか否かを
比較回路で判断し〔ステップ(2)〕、まだ達していな
ければ前回のサイクルと同じ記憶β値を用い、「数2」
(「数1」でもよい)の式の演算を演算回路で行い〔ス
テップ(3)〕、この結果に基づいて消石灰が反応槽5
に注入される。次に今回の流入廃水流量を前回までの同
積算値に加算する〔ステップ(4)〕。
【0050】かかるサイクルを繰り返し、ステップ
(2)でQT ≧QS の条件を満足することとなったら、
「数4」の式の演算を演算回路で行い〔ステップ
(5)〕、新しい注入量補正乗算係数βを求め、これを
次回サイクルからのステップ(3)の演算に用いる。こ
の場合、流入廃水流量の前記積算回路の積算値をゼロに
リセットする〔ステップ(6)〕。そこから、新たな
「β」を用いてステップ(2)→ステップ(3)→ステ
ップ(4)のサイクルを繰り返し、再度QT ≧QS の条
件を満足したらステップ(5)→ステップ(6)と進
む。かかる処理手順が繰り返される訳である。
【0051】上述の場合には、注入量乗算係数βを求め
るための弗素濃度の測定を一次処理水16を用いて行う
フィードバック制御であるが、代わりに二次処理水37
を用いて二次処理水弗素濃度分析計34により処理水の
弗素イオン濃度を測定して、これをF’としてフィード
バックしても全く同様に制御することができる。後者の
場合、実効滞留容積QS は、図1の弗素分除去装置にお
ける二次処理水弗素濃度分析計34の位置までの実効滞
留容積である。
【0052】また、一次処理水弗素濃度分析計14と二
次処理水弗素濃度分析計34の両方を設けてもよい。こ
の場合、例えば、流入廃水流量や流入廃水の弗素イオン
濃度の単位時間当りの変動が或る値を越えた時は一次処
理水弗素濃度分析計14による一次処理水弗素イオン濃
度信号を注入量乗算係数βを求めるために用い、それ以
外の時は二次処理水弗素濃度分析計34による二次処理
水弗素イオン濃度信号を注入量乗算係数βを求めるため
に用いるようにしてもよい。こうすれば、前者の場合は
後者の場合に比して実効滞留容積が小さいので、流入廃
水流量や流入廃水弗素イオン濃度の急激な変動に対しよ
り短時間で対応できるという利点が有り、一方、流入廃
水流量や流入廃水弗素イオン濃度の変動がそれ程大きく
ない時は、所望の処理水質により密接に関係する二次処
理水弗素イオン濃度信号でより精密にフィードバック制
御できるという利点も確保できる。また、この目的のた
めに処理水弗素濃度分析計を共用とし、サンプルライン
を交互に切り換え可能とし、一次処理水弗素イオン濃度
も二次処理水弗素イオン濃度も一つの処理水弗素濃度分
析計で測定できるようにしてもよい。
【0053】処理水弗素濃度目標値fをゼロではない排
水許容限度内の正の値に設定するとは、具体的には、弗
素濃度分析計14又は34の測定限界値(下限)より高
く、測定誤差値より大きな値で且つ排出許容限度内の値
に設定することを意味し、これは消石灰の過剰注入を避
ける制御を行うためである。なぜならば、弗素濃度分析
計14又は34の測定限界値+測定誤差値の値以下にf
値を設定すると、過剰注入によってF’が弗素濃度分析
計14又は34の測定限界値+測定誤差値の値以下にな
った時には、過剰注入かどうか、その過剰注入度合いも
判別できなくなるからである。
【0054】この様にして求められた「数1」又は「数
2」の式による消石灰注入量Caは、消石灰注入流量コ
ントローラー10のリモート設定値として設定され、消
石灰注入流量検出器8により実測された注入量とコンピ
ューター100で比較調整され、注入量コントロール弁
9への開度指令MV値(操作出力値、manipulating val
ue)として出力される。なお、注入量を制御する駆動部
のコントロール弁9については、必ずしもコントロール
弁でなくても良く、例えば、コントロール弁を無くして
消石灰注入ポンプ13としてプランジャー型定量ポンプ
を使用し、このプランジャー型定量ポンプにストローク
制御や回転数制御を組み合わせたものでも良い。
【0055】図3は、一例として、脱硫廃水中の弗素濃
度とカルシウム濃度、第一沈澱槽から得られる一次処理
水中の弗素濃度、第二沈澱槽から得られる二次処理水の
弗素濃度(「フィードバック無」の場合と二次処理水の
弗素濃度による「フィードバック有」の場合)の経時変
動を表すグラフ図である。この図3において、横軸は運
転時間を表し、縦軸は濃度を表す。このグラフは、セミ
ロググラフで、縦軸の濃度目盛は対数目盛である。
【0056】図3において、曲線(a)は廃水のカルシ
ウム濃度であり、曲線(b)は廃水の弗素濃度であり、
曲線(c)は一次処理水の弗素濃度であり、曲線(d)
は「フィードバック無」の場合の二次処理水の弗素濃度
であり、曲線(e)は「フィードバック有」の場合の二
次処理水の弗素濃度である。
【0057】「フィードバック有」の制御を行った方
が、「フィードバック無」の場合と比べて、二次処理水
の弗素濃度の変動巾が小さくなり、好ましいことが分か
る。
【0058】なお、本発明における「数1」又は「数
2」の式の演算は、専用の演算器の他に、制御用コンピ
ューターでも、市販品で上記演算が可能なワンループ・
コントローラーでも、パソコンやシーケンサーの演算回
路でも使用できる。
【0059】上述の実施例では、脱硫廃水を例として本
発明を説明してきたが、弗酸廃水について殆ど同じであ
る。但し、弗酸廃水にはカルシウムが一般に含まれてい
ないので、含有カルシウム濃度というファクターを除い
てプロセス設計すればよいということになる。
【0060】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、弗素含有廃水の性状変動、廃水流量変動に対して、
ほぼリアルタイムで消石灰の適正量の注入ができ、更
に、必要に応じて微妙な補正修正機構により消石灰の過
剰注入の防止ができるため、特に負荷変動の大きな中間
負荷石炭火力発電所の脱硫廃水や時間帯によって弗酸の
使用量が大幅に変動するプロセスを行う半導体工場の弗
酸廃水では、消石灰やその他の薬品の使用量が大幅に低
減可能となる。
【0061】また、廃棄物としての炭酸カルシウム等の
量も低減され、汚泥処理設備も小さくすることができ、
産業廃棄物の問題を軽減化するにも役立つ。
【0062】流入廃水の流量・性状等の変動に対する自
動追従が従来に比較して格段に改善されるため、運転員
の負担も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用する弗素分除去装置を含む廃水処
理装置の一例における各処理工程と信号系統を示すフロ
ーチャートである。
【図2】注入量補正乗算係数βによる制御系のプログラ
ム処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の制御方法に従った場合の廃水処理効果
を説明する図で、脱硫廃水中の弗素濃度とカルシウム濃
度、第一沈澱槽から得られる一次処理水中の弗素濃度、
第二沈澱槽から得られる二次処理水の弗素濃度(フィー
ドバック無の場合とフィードバック有の場合)の経時変
動を表すグラフ図である。
【図4】石炭火力発電所の運転時間の経過に伴う脱硫廃
水の弗素濃度の変化をモデル的に表したグラフ図であ
る。
【符号の説明】
1 廃水流量検出器 2 流入廃水 3 廃水弗素濃度分析計 4 廃水カルシウム濃度分析計 5 反応槽 6 pH調整槽 7 第一凝集槽 8 消石灰流量検出器 9 消石灰注入コントロール弁 10 消石灰注入コントローラー 11 消石灰濃度検出器 12 消石灰溶解槽 13 消石灰注入ポンプ 14 一次処理水弗素濃度分析計 15 第一沈澱槽 16 一次処理水 17 汚泥引抜きポンプ 18 pH調整剤注入バルブ 19 pH検出器 31 軟化槽 32 第二凝集槽 33 第二沈澱槽 34 二次処理水弗素濃度分析計 35 汚泥引抜きポンプ 36 pH検出器 37 二次処理水 100 コンピューター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ▲浅▼野 宗光 愛知県名古屋市緑区大高町字北関山20番地 の1 中部電力株式会社電力技術研究所内 (72)発明者 高田 ▲とき▼男 東京都文京区本郷5丁目5番16号 オルガ ノ株式会社内 (72)発明者 高見 英俊 東京都文京区本郷5丁目5番16号 オルガ ノ株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 流入する廃水の流量を検出する廃水流量
    検出器及び流入廃水の弗素濃度を検出する廃水弗素濃度
    分析計を備えた弗素含有廃水から弗素分を除去する弗素
    分除去装置の制御方法において、前記廃水弗素濃度分析
    計からの弗素濃度信号により、弗素分除去に必要なカル
    シウム濃度を予め定めた計算式又は乗算係数により算出
    し、更に前記廃水流量検出器からの流入廃水流量信号を
    乗算する演算回路により消石灰注入量を演算出力するこ
    とを特徴とする弗素含有廃水処理における消石灰注入量
    の制御方法。
  2. 【請求項2】 処理水の目標弗素濃度値をゼロでは無い
    排水許容限度内の正の値に設定し、該目標弗素濃度値と
    処理水の弗素濃度測定値との偏差の極性及びその大きさ
    により前記消石灰注入量の演算出力を補正する為の補正
    乗算係数を算出する演算回路を設け、流入廃水流量を積
    算する積算回路による積算値が前記処理水の弗素濃度検
    出位置までの前記弗素分除去装置の実効滞留容積値に達
    したと比較回路が判断する毎に、前記補正乗算係数を演
    算・修正すると共に前記積算値をリセットする機能を前
    記弗素分除去装置が備え、前記消石灰注入量に前記補正
    乗算係数を乗算した値を消石灰注入量コントローラーの
    リモート設定値として消石灰注入量を制御することを特
    徴とする請求項1に記載の弗素含有廃水処理における消
    石灰注入量の制御方法。
  3. 【請求項3】 流入する廃水の流量を検出する廃水流量
    検出器、流入廃水の弗素濃度を検出する廃水弗素濃度分
    析計、及び流入廃水のカルシウム濃度を検出する廃水カ
    ルシウム濃度分析計を備えた弗素及びカルシウム含有廃
    水から弗素分を除去する弗素分除去装置の制御方法にお
    いて、前記廃水弗素濃度分析計からの弗素濃度信号によ
    り、弗素分除去に必要なカルシウム濃度を予め定めた計
    算式又は乗算係数により算出し、この算出必要カルシウ
    ム濃度から前記廃水カルシウム濃度分析計からのカルシ
    ウム濃度信号を減算し、更に前記廃水流量検出器からの
    流入廃水流量信号を乗算する演算回路により消石灰注入
    量を演算出力する弗素及びカルシウム含有廃水処理にお
    ける消石灰注入量の制御方法。
  4. 【請求項4】 処理水の目標弗素濃度値をゼロでは無い
    排水許容限度内の正の値に設定し、該目標弗素濃度値と
    処理水の弗素濃度測定値との偏差の極性及びその大きさ
    により前記消石灰注入量の演算出力を補正する為の補正
    乗算係数を算出する演算回路を設け、流入廃水流量を積
    算する積算回路による積算値が前記処理水の弗素濃度検
    出位置までの前記弗素分除去装置の実効滞留容積値に達
    したと比較回路が判断する毎に、前記補正乗算係数を演
    算・修正すると共に前記積算値をリセットする機能を前
    記弗素分除去装置が備え、前記消石灰注入量に前記補正
    乗算係数を乗算した値を消石灰注入量コントローラーの
    リモート設定値として消石灰注入量を制御することを特
    徴とする請求項3に記載の弗素及びカルシウム含有廃水
    処理における消石灰注入量の制御方法。
  5. 【請求項5】 消石灰を注入する反応槽を有する一次処
    理装置及び二次処理装置を包含する弗素分除去装置であ
    って、前記反応槽の上流に流入廃水流量検出器並びに廃
    水弗素濃度分析計あるいは廃水弗素濃度分析計及び廃水
    カルシウム濃度分析計を備え、前記一次処理装置と前記
    二次処理装置の間か前記二次処理装置の下流かあるいは
    双方に処理水弗素濃度分析計を所要に応じて備えてお
    り、請求項1ないし4のいづれかに記載の消石灰注入量
    の制御方法を行うための演算手段を備え、更に、前記演
    算手段による演算結果に応じて消石灰を前記反応槽に注
    入するための消石灰注入手段を備えていることを特徴と
    する弗素分除去装置。
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