JPH06138081A - 塩素イオン選択性電極用応答膜の製造方法 - Google Patents

塩素イオン選択性電極用応答膜の製造方法

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JPH06138081A
JPH06138081A JP5194042A JP19404293A JPH06138081A JP H06138081 A JPH06138081 A JP H06138081A JP 5194042 A JP5194042 A JP 5194042A JP 19404293 A JP19404293 A JP 19404293A JP H06138081 A JPH06138081 A JP H06138081A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電極によるバラツキが少なく、かつ他のアニ
オンの影響を受け難い安定した性能を有するとともに、
保存期間や使用有効期間が長いといった優れた特性を有
する塩素イオン選択性電極用応答膜を作業性よく短期間
に製造できる製造方法を提供する。 【構成】 重量比で8:1〜1:2としたエポキシ樹脂
および塩化ビニル樹脂と、第4級アンモニウム塩と、硬
化剤との混合物を60±5℃の温度に保って4〜5日間で
硬化させる。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、血液等の体液、尿等を
測定する塩素イオン選択性電極用応答膜の製造方法に関
する。 【0002】 【従来の技術】従来の塩素イオン選択性電極用応答膜と
して、例えば塩化ビニル樹脂(以下、PVCという)
を用いたプラスチック膜に応答物質と溶媒(例えばペン
タノールやオルトーニトロフェニルオクチルエーテル等
の誘電率の高いもの、又はジアルキルフタレートやジア
ルキルアジペート等の誘電率の低いもの)とを封じ込め
てなる応答膜や、エポキシ樹脂を用いたプラスチック
膜に応答物質と溶媒(上記溶媒と同様)とを封じ込めて
なる応答膜がある。 【0003】しかしながら、上記の応答膜は膜の安定
性が悪く、応答膜形成後1週間程度で応答物質が浮き出
てしまう欠点がある他、初期電極での性能が悪く、血液
中でのドリフトが大きく、しかも使用有効期間も1〜2
週間と極めて短いという欠点がある。又、上記の応答
膜は内部抵抗が1×109 Ωオーダと極めて高いため、応
答膜と電極ボディとの接着部の絶縁が取り難く、この接
着部の劣化により保存期間や使用有効期間が非常に短い
という欠点の他、内部抵抗が高いため誘導を受け易いと
いう欠点がある。 【0004】上記,の応答膜を改良するものとし
て、本願出願人によって出願された特願昭59−56778 号
(特開昭60−233541号)に係る応答膜がある。このもの
は、エポキシ樹脂とPVCとからなる特殊プラスチック
膜に応答物質としての第4級アンモニウム塩と溶媒とを
封じ込めてなるもので、エポキシ樹脂をベースにして内
部抵抗を下げ、応答物質をより安定な状態でエポキシ樹
脂中に封じ込めるために、PVC及びその可塑剤を添加
すると共に、エポキシ樹脂の硬化剤として脂肪族ポリア
ミンを使用したものである。このように構成した応答膜
は初期状態及び血液や尿の測定において良好な結果を示
す。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この応
答膜においては次のような欠点がある。 (1) 先ず、応答膜の製造方法が煩雑である。 (a) 膜の形成時、硬化剤を添加直後から応答膜の硬
化が始まるので、硬化剤添加後の撹拌はなるべく低い温
度(4℃前後)で行わなければならないし、膜形成のた
め揮発溶媒としてのテトラヒドラフランは24時間以内に
飛ばしてやる必要がある。そして、これらの作業を怠っ
た場合、応答膜形成前から部分凝固が起こり均一な膜が
形成できなくなる。 【0006】(b) 膜形成後、硬化剤による硬化を確
実にするため40°±5℃に保持した恒温槽内に20〜30日
間入れておく必要がある。恒温槽内の温度を60℃ぐらい
にまで上げると硬化前に溶媒が浮き出てしまう。又、20
日間以上恒温槽内に入れておかないと硬化が不十分とな
る。上記(a),(b)2点に特に注意しなければ、均
一で同性能の応答膜を得ることは困難である。 【0007】(2) 保存期間や使用有効期間が短く、
又、電極によりバラツキが大きいという欠点がある。応
答膜を室温で長期保存した場合、応答膜表面より溶媒が
浮き上がってくる。使用開始後もサンプル中に溶媒と共
に応答物質が流出するため、使用有効期間も2〜3ヵ月
と短く、又、この使用有効期間も電極によってバラツク
といった欠点がある。 【0008】本発明は、上述の事柄に留意してなされた
もので、その目的とするところは、電極によるバラツキ
が少なく、かつ、他のアニオンの影響を受け難い安定し
た性能を有すると共に、保存期間や使用有効期間が長い
といった優れた特性を有する塩素イオン選択性電極用応
答膜を作業性よく短期間に製造できる製造方法を提供す
ることにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
め、本発明においては応答膜組成より溶媒を除き、その
分応答物質及びPVCの量を増やすようにしている。従
来より、溶媒はPVCの可塑剤として機能すると考えら
れており、塩素イオン選択性電極用応答膜組成でもアニ
オン交換体である応答物質が界面で移動(又はイオン交
換)するのを補佐するものと考えられていた。 【0010】しかし、発明者の研究によれば、エポキシ
樹脂の中にPVCを加え、硬化剤として脂肪族ポリアミ
ンを使用した場合、硬化と共にPVC内のClと脂肪族
ポリアミン内のアミノ基(NH2 )とが結合し、より強
固なマトリックスを形成することが判明し、PVCの可
塑剤としての溶媒は必要ではなくなり、又、応答物質で
ある第4級アンモニウム塩も溶液状であり流動性もある
ため、溶媒がなくても界面でのイオン交換がスムーズに
行われることが判った。尚、PVCは膜の内部抵抗を下
げると共に、膜と電極ボディとの接着強度を強める働き
をしていると考えられる。 【0011】従って、本発明の塩素イオン選択性電極用
応答膜の製造方法は、重量比で8:1〜1:2としたエ
ポキシ樹脂と塩化ビニル樹脂と、第4級アンモニウム塩
と、硬化剤の混合物を60°±5℃の温度に保って4〜5
日間で硬化させることに特徴がある。 【0012】このような製造方法において、 (1) エポキシ樹脂としては、メチル置換型であるビ
スフェノールタイプのものを用いるのがよい。この種エ
ポキシ樹脂として、例えばエピクロン840 (商品名, 大
日本インキ社製)がある。 【0013】(2) PVCとしては、重合度が1100〜
2800程度、より好ましくは2500程度のものを用いるのが
よい。 【0014】(3) エポキシ樹脂とPVCとの混合比
を、重量比で8:1〜1:2としたのは次の理由によ
る。即ち、エポキシ樹脂の量を1としたとき、PVCの
量が1/8以下であると内部抵抗が一桁高く(108 Ω以
上)なるし、又、PVCの量が2/1以上であると血清中
のドリフトが急に大きくなり、何れも不都合であるから
である。 【0015】(4) 全組成に対するエポキシ樹脂の重
量比は30〜50w%の範囲にあることが望ましい。前記重
量比が30w%以下の場合には硬化剤の量を多くしても血
清中でのドリフトが大きく、又、重量比が50w%以上の
場合は内部抵抗が高いし、標準液中での寿命が短いとい
う不都合がある。 【0016】(5) 硬化剤はアミン系の中でも脂肪族
ポリアミンを用いるのがよい。図2に硬化剤の違いによ
る血清中のドリフトの違いを示す。図中、aが脂肪族ポ
リアミンの中でも最も一般的なトリエチレンテトラミン
(TETA)を、bが変性脂肪族ポリアミンであるジエ
チレントリアミンアダクトを、それぞれ硬化剤として用
いた場合の曲線である。 【0017】(6) エポキシ樹脂と硬化剤との重量比
は、エポキシ樹脂を 100部とした場合、硬化剤を40〜60
部の範囲とするのがよい。硬化剤が40部以下の場合に
は、エポキシ樹脂の量に拘わらず血清中でのドリフトが
大きいためである。 【0018】(7) 応答物質に用いる第4級アンモニ
ウム塩としては、例えばトリオクチルメチルアンモニウ
ムクロライド(TOMA)、トリドデシルメチルアンモ
ニウムクロライド(TDMA)、テトラオクチルアンモ
ニウムクロライドを用いるのがよい。応答物質の重量比
としては全組成の 0.4〜30w%の範囲とするのがよい。
0.4w%以下であれば低濃度での応答速度が遅いし、30
w%以上では選択比が悪くなるからである。 【0019】(8) 膜厚は 0.2〜 0.3mm程度が好まし
い。 0.2〜2%PVCを含むテトラヒドロフランで膜を
接着する場合、上記膜厚であると電極ボディに最も接着
し易い。 【0020】 【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。応答膜を
製造するにあたっては、次の表1に示す組成を用いた。 【0021】 【表1】 【0022】応答膜の製造手順は次の通りである。 先ず、三角フラスコを使用してPVCをテトラヒド
ロフラン(揮発溶媒)に溶かす。 次に第4級アンモニウム塩としてのTOMAを加え
る。 次にエポキシ樹脂としてのエピクロン840 を加え、
回転子(10〜15mm)を三角フラスコの中に入れ、10分程
度撹拌する。エピクロン840 はかなり粘性があるため、
十分撹拌しないと膜作成時エポキシ樹脂の固まりが部分
的に生ずる。 次に硬化剤としてのTETAを入れ、10分程度撹拌
する。 次にテフロンシャーレに移し、濾紙2枚、ガラスプ
レートでふたをし、デシケータ中で1昼夜N2 パージを
行う。 ガラスシャーレに応答膜を移し替え、60°±5℃の
温度において乾燥機中に保存する。この場合、光が当た
らないように注意する。保存期間は4〜5日が適当であ
る。 乾燥機から取り出し、デシケータ中(室温)で保存
する。この場合、光が当たらないように注意する。 【0023】上述の如くして製造された応答膜(直径60
mm)からポンチによって直径5mmの大きさに切り抜いた
ものを例えばフロースルー型電極に組み込む。図1はフ
ロースルー型電極の一例を示し、同図において、1はセ
ル、2は蓋、3は応答膜、4は内部液、5は内極、6は
シリコン樹脂等の充填剤、7は固定リング、8はOリン
グ等のシール材である。 【0024】次に、本発明の製造方法により得た応答膜
(溶媒なし)と前記特開昭60−233541号によって得られ
た応答膜(溶媒有り)とをそれぞれ組み込んだ電極を3
本ずつ用意し、これらを電解質分析装置に装着して、人
の血清中及び尿中の塩素イオンについて測定したとこ
ろ、表2及び表3が得られた。 【0025】即ち、表2及び表3はそれぞれ血清中及び
尿中の塩素イオン濃度(単位はmmol/l)を示している。
尚、両表において、Iは比較例としての従来の溶媒有り
の応答膜を、IIは実施例としての本発明に係る溶媒なし
の応答膜をそれぞれ用いたものを示す。そして、S1…
はサンプルナンバーを示し、又、ばらつきとは最大値と
最小値との差である。 【0026】 【表2】 【0027】 【表3】 【0028】そして、他のアニオンの干渉影響を調べる
ため、上記各電極によって、100mmol/l のNaClにト
リスバッファを加えてなる標準液に、NaHCO3 ,N
aNO3 ,NaBr, NaIを添加したサンプル液を測
定し、基準液からの濃度差を測定したところ、図3,図
4,図5,図6に示すグラフが得られた。 【0029】即ち、図3,図4,図5,図6はそれぞれ
HCO3 - , NO3 - , Br- , I- の干渉影響を示
し、△−△で示される曲線は比較例としての従来の溶媒
有りの応答膜を、○−○で示される曲線は本発明に係る
溶媒なしの応答膜を、それぞれ用いたものを示す曲線で
ある。 【0030】上記表2及び表3から、本発明に係る応答
膜におけるバラツキが従来の応答膜のそれよりも小さく
なっていることが判る。又、図3,図4,図5,図6か
ら、本発明に係る応答膜は従来の応答膜に比べて、他の
アニオンの干渉影響が小さくなると共にバラツキが小さ
くなっていることが判る。 【0031】更に、表4は塩素イオン電極の選択係数
(塩素イオン10- 2 mmol/lにおける)を測定した結果を
示し、同表においてIは比較例としての従来の溶媒有り
の応答膜を、IIは本発明に係る溶媒なしの応答膜をそれ
ぞれ示す。 【0032】 【表4】【0033】上記表4から、本発明に係る応答膜は従来
の応答膜に比べて他のアニオンに対する選択性が改善さ
れていることが判る。 【0034】以上のことから、本発明に係る応答膜は、
従来の溶媒有りの応答膜に比べて、その性能が向上して
いることが判る。 【0035】そして、従来の応答膜は室温状態で長期間
保存しておくと溶媒が浮き出てくるため、冷暗所に保存
する必要があったが、本発明に係る応答膜はたとえ室温
よりも高いところに保存しておいても溶媒が浮き出るお
それがなく、従って、1〜2年といった長期間の保存が
可能であるといった利点を有する。 【0036】又、従来の応答膜と、本発明に係る応答膜
によって電極を形成し、それぞれの電極で標準液と血清
とを交互に連続測定した場合における電極の感度の経時
変化を調べてみたところ、図7に示すグラフが得られ
た。同図において、▲−▲で示される曲線は比較例とし
ての従来の応答膜を、●−●で示される曲線は本発明に
係る応答膜を、それぞれ用いた電極感度の経時変化を示
す曲線である。 【0037】上記図7から、従来の応答膜を用いた電極
が2〜3ヵ月で寿命限界に達し、しかも寿命にバラツキ
があるのに対し、本発明に係る応答膜を用いた電極は何
れも4ヵ月以上の寿命を有すると共に、バラツキも小さ
いことが判る。 【0038】更に又、従来の応答膜はその製造過程にお
いて、溶媒を短時間で気化させる必要があり、かつ完全
に硬化させるのに20〜30日間も要していたが、本発明に
よる応答膜の製造方法では、溶媒を気化させるための作
業を要さないので作業性が著しく向上し、かつPVCの
許容温度である60℃付近まで温度を高めて硬化させるこ
とができるので、完全硬化に至るまで4〜5日で済み、
短期間で製造できるという利点を有するのである。 【0039】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の製造方法
は、重量比で8:1〜1:2としたエポキシ樹脂と塩化
ビニル樹脂と、第4級アンモニウム塩と、硬化剤とから
なる混合物を60°±5℃の温度に保って4〜5日間で硬
化させるので、溶媒を組成に含ませていないため、溶媒
の気化に要する時間と手間が省けて作業性が著しく向上
し、かつ短期間に製造できるという優れた利点がある。 【0040】また、この方法により得た応答膜は溶媒を
組成に含んでいないので、電極によるバラツキが少な
く、かつ他のアニオンの影響を受け難い安定した性能を
有すると共に保存期間や使用期間が長いという優れた特
性を有する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明により得られる応答膜を組み込んだフロ
ースルー型電極の一例を示す断面図である。 【図2】硬化剤の違いによるドリフトの違いを示す図で
ある。 【図3】NaHCO3 を添加した場合の塩素イオン電極
における他のアニオンの干渉影響を示す図である。 【図4】NaNO3 を添加した場合の塩素イオン電極に
おける他のアニオンの干渉影響を示す図である。 【図5】NaBrを添加した場合の塩素イオン電極にお
ける他のアニオンの干渉影響を示す図である。 【図6】NaIを添加した場合の塩素イオン電極におけ
る他のアニオンの干渉影響を示す図である。 【図7】塩素イオン電極の感度の経時変化を示す図であ
る。 【符号の説明】 3…応答膜。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08J 5/22 104 9267−4F

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 (1) 重量比で8:1〜1:2としたエポキシ樹脂お
    よび塩化ビニル樹脂と、第4級アンモニウム塩と、硬化
    剤との混合物を60°±5℃の温度に保って4〜5日間で
    硬化させることを特徴とする塩素イオン選択性電極用応
    答膜の製造方法。 (2) 全組成に対するエポキシ樹脂の重量比を30〜50
    w%の範囲に設定したことを特徴とする特許請求の範囲
    第(1)項記載の塩素イオン選択性電極用応答膜の製造
    方法。 (3) 全組成に対する応答物質の重量比を 0.4〜30w
    %の範囲に設定したことを特徴とする特許請求の範囲第
    (1)項記載の塩素イオン選択性電極用応答膜の製造方
    法。 (4) エポキシ樹脂と硬化剤との比を、エポキシ樹脂
    を 100部としたとき硬化剤を40〜60部の範囲に設定した
    ことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の塩素
    イオン選択性電極用応答膜の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001124735A (ja) * 1999-09-13 2001-05-11 Avl Medical Instr Ag 塩化物イオン感応性電極膜
KR100517105B1 (ko) * 2002-10-09 2005-09-27 주식회사 아이센스 염화이온 선택성 막 조성물 및 이를 이용한 염화이온 선택성 전극
JP6996781B1 (ja) * 2020-10-05 2022-01-17 株式会社常光 陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法及び陰イオン選択性電極用応答膜

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