JP6996781B1 - 陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法及び陰イオン選択性電極用応答膜 - Google Patents

陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法及び陰イオン選択性電極用応答膜 Download PDF

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Abstract

【課題】陰イオン選択性電極用応答膜の組成を最適化し、所望の電極性能を備える陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含むエポキシ樹脂組成物Xの硬化物である陰イオン選択性電極用のモデル応答膜の陰イオン選択性パターンを準備し、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂組成物Xに含まれる硬化剤と電位安定剤と同じ硬化剤と電位安定剤とを含み、エポキシ樹脂の重量がエポキシ樹脂組成物X中のエポキシ樹脂の重量と異なり、硬化剤と電位安定剤との各重量がエポキシ樹脂組成物X中の硬化剤と電位安定剤の各重量と等しいエポキシ樹脂組成物Y1を硬化させたテスト応答膜の陰イオン選択性を測定し、陰イオン選択性パターンとの一致性が高い陰イオン選択性を備えるテスト応答膜のエポキシ樹脂組成物を、陰イオン選択性電極用応答膜に用いるエポキシ樹脂組成物Zとして選択する。【選択図】図4

Description

本発明は、陰イオン選択性電極用応答膜に関する。
従来型の液膜電極の感応物質は液体又は粉末であるため、固体として形状を維持するため基材を用いる。すなわち、液体又は粉末の感応物質を可塑剤に溶かし塩化ビニル等の樹脂内に拡散させ、電極用応答膜を作製する。この場合、樹脂が基材である。エポキシ樹脂を基材又は基材の一部として用いた陰イオン選択性電極としては下記のものが知られる。
特許文献1には、少なくとも1種の電気活性成分(感応物質)を含むポリマ-マトリックスを有し、そのポリマ-マトリックスが硬化剤としてのアミン化合物とともにエポキシ樹脂を含有する塩化物イオン感応性電極膜が開示される。しかし、特許文献1には電極膜の具体的な作製法が記載されていない。
特許文献2には、基材であるポリマ-マトリックスがエポキシ樹脂とアミド基を含有するアミンを含み、このアミンが化学量論的に過剰量で存在し、硬化剤及び塩化物選別剤(感応物質)の両方として機能する塩化物選択性電極膜が開示される。
特許文献3には、エポキシ樹脂主剤と硬化剤とを、又はエポキシ樹脂主剤と硬化剤と硬化促進剤とを、陰イオン選択性感応物質を添加することなく混合して硬化させて作製した陰イオン選択性電極用応答膜が開示される。該電極用応答膜中には、エポキシ樹脂主剤の硬化反応の際に生じた4級アンモニウム陽イオンが陰イオン選択性感応物質として存在し、前記電極用応答膜中に電位安定剤が添加される。特許文献3に関連する特許文献4には、エポキシ樹脂主剤と硬化剤とを、又はエポキシ樹脂主剤と硬化剤と硬化促進剤を混合するとき、電位安定剤が0.8パーセント未満添加された電極用応答膜が開示される。
特許文献1に開示される塩化物イオン感応性電極膜は、塩化物イオン感応物質を電極基材に加えているので、従来型の塩化ビニルと可塑剤を基材とした電極用応答膜と構成的な違いは少ない。特許文献2に開示される塩化物選択性電極膜も化学量論的に過剰なアミンが感応物質として機能するので、特許文献1に開示されるものと同様に、従来型の電極膜の構成と大きな違いはない。それに比して特許文献3、4に開示される陰イオン選択性応答膜は感応物質を添加しておらず、エポキシ樹脂硬化反応の際に生じる4級アンモニウム
塩をそのまま感応物質として用いるため、画期的である。
なお特許文献1ないし4に開示されるイオン選択性電極用応答膜はいずれも、妨害イオン(例えば、塩化物イオンを測定したい場合の臭化物イオンや重炭酸イオン等)に対する選択性を高めるため、検体に存在しない妨害イオンに対する選択性を低くする場合がある。
特許第3350728号公報 特許第4503599号公報 特許第3970032号公報 特開2020-51930号公報
イオン選択性電極法でイオン濃度を測定する検体は多岐にわたる。例えば、飲料水、工業用水、農業用水、廃液、体液(ヒト、動物、魚類、等)等が挙げられる。
陽イオン選択性電極、例えば、ナトリウムイオン選択性電極、カリウムイオン選択性電極、カルシウムイオン選択性電極、或いはpH電極であれば、上記検体例に対し、同一の電極(膜)を使用できる。また測定対象イオン以外のイオン(妨害イオン)に対し、少なくとも数百倍以上の選択性を有し、イオン選択性に優れる。
一方、陰イオン選択性電極については、陽イオン選択性電極のイオン選択性に相当する優れたイオン選択性を有する電極(膜)は見出されていない。そのため、検体の種類ごとに、電極用応答膜の性能を所望の検体に最適化させる必要がある。しかし陰イオン選択性の最適化の指針は確立されておらず、各研究者が、それぞれの知見に基づき試行錯誤している。
本発明の課題は上記の事情に鑑み成されたもので、所望の電極性能を得るため、陰イオン選択性電極用応答膜の組成を最適化する陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法と、これにより得られる陰イオン選択性電極用応答膜を示すことにある。
本発明は、エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含むエポキシ樹脂組成物Xの硬化物である、陰イオン選択性電極用のモデル応答膜の陰イオン選択性パターンを準備する陰イオン選択性パターン準備工程と、エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含み、エポキシ樹脂の含有量がエポキシ樹脂組成物X中のエポキシ樹脂の含有量と異なり、硬化剤と電位安定剤との各含有量がエポキシ樹脂組成物X中の硬化剤と電位安定剤の各含有量と等しいエポキシ樹脂組成物Y1を硬化させたテスト応答膜の陰イオン選択性を測定する、第一の陰イオン選択性測定工程と、陰イオン選択性パターンとの一致性が高い陰イオン選択性を備えるテスト応答膜のエポキシ樹脂組成物を、陰イオン選択性電極用応答膜に用いるエポキシ樹脂組成物Zとして選択する選択工程とを含む、陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法である。なお本発明において、「含有量」は重量で測られ、「含有比率」は「重量比」で測られる。
本発明は、エポキシ樹脂組成物Y1とエポキシ樹脂に対する硬化剤の含有比率が同等で電位安定剤の含有量が総量の0.8重量%未満である、エポキシ樹脂組成物Y2を硬化させたテスト応答膜の陰イオン選択性を測定する第二の陰イオン選択性測定工程を含む陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法を包含する。
本発明は、エポキシ樹脂組成物Zの硬化物である陰イオン選択性電極用応答膜を包含する。該陰イオン選択性電極用応答膜には、塩化物イオンに感応するものが含まれる。
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物の組成を最適化して、効率的に所望の陰イオン選択性に優れた電極用応答膜を作製でき、特に、エポキシ樹脂硬化反応の際に生じる4級アンモニウム塩がそのまま感応物質となる陰イオン選択性電極用応答膜の作製に有用である。
本発明の陰イオン選択性電極用応答膜を形成した電極セル(流路部)の概要を示す図である。 本発明の陰イオン選択性電極用応答膜を使用した測定系の概要(フロ-スル-型)を示す図である。 本発明の実施例1、2、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の実施例1、2、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。 本発明の実施例3、4、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の実施例3、4、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。 本発明の実施例1、3、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の実施例1、3、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。 本発明の実施例2、4、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の実施例2、4、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。 本発明の比較例1、2、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の比較例1、2、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。 本発明の実施例3、比較例1、3、4、参考例の測定結果を示す図(表)である。 本発明の実施例3、比較例1、3、4、参考例の測定結果を示す図(グラフ)である。
本発明の陰イオン選択性電極用応答膜は、エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含むエポキシ樹脂組成物の硬化物である。本発明の陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法は陰イオン選択性パターン準備工程と、陰イオン選択性測定工程と、選択工程とを含む。これにより、エポキシ樹脂組成物の組成が最適化され、所望の陰イオン選択性に優れる陰イオン選択性電極用応答膜を製造できる。
本明細書において、陰イオン選択性パターン準備工程で示されるエポキシ樹脂組成物Xに含まれるエポキシ樹脂、硬化剤、電位安定剤等含有成分の説明は、陰イオン選択性測定工程と選択工程で示されるエポキシ樹脂組成物Y1、Y2、及びZのそれぞれに含まれる各成分の説明と共通する。またエポキシ樹脂組成物の硬化方法には、公知の方法を適用できる。
[陰イオン選択性パターン準備工程]
本工程は、所望の陰イオン選択性を備える陰イオン選択性電極用応答膜をモデル応答膜とし、その陰イオン選択性の測定結果である陰イオン選択性パターンを準備する工程である。モデル応答膜の陰イオン選択性パターンは後の選択工程で、モデルパターンとして用いる。モデル応答膜は既存の陰イオン選択性電極用応答膜から選んでもよく、新たな組成のエポキシ樹脂硬化物を採用してもよい。モデル応答膜の陰イオン選択性の測定方法としては、イオン選択性電極法を利用する公知の分析装置に当該モデル応答膜を装備させて測定する方法を例示できる。陰イオン選択性パターンは、検体中の1種の陰イオン濃度の測定結果又は2種以上の陰イオン濃度の測定結果の組み合わせで表される。なお陰イオン選択性パターンは、陰イオン濃度の測定結果に替えて、又は併用して選択係数で構成されてもよい。
ナトリウムイオン選択性電極用応答膜に於いて、ナトリウムイオンの測定値を、例えば100mmol/Lの測定値を1とした場合、カリウムイオン100mmol/Lの測定値が1mmol/L、リチウムイオン100mmol/Lの測定値が0.1mmol/L、マグネシウムイオン(2+)100mmol/Lの測定値が0.01mmol/L、であったとき、非ナトリウムイオンの選択係数は、それぞれ-2.0、-3.0、-4.0となる。血液(血清)中のナトリウムイオン濃度は~140mmol/L、一方、カリウムイオン濃度は~4mmol/Lである。カリウムイオンに対して-2.0の選択性があれば、実際に感応するのは0.04mmol/Lで、測定時の誤差範囲内として許容される。上記では陽イオン選択性電極用応答膜の例で説明したが、陰イオン選択性電極用応答膜においても選択係数からみた誤差範囲の考え方は同様である。
モデル応答膜の硬化前のエポキシ樹脂組成物Xは、エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含む。エポキシ樹脂は主剤であり、エポキシ樹脂組成物の総量の50重量%以上含有される。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノ-ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノ-ルF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、可撓型エポキシ樹脂、臭素化型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、高分子型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及び上記の類似物を例示できる。本発明でエポキシ樹脂は、1種を用いてもよく2種以上を用いてもよい。本発明においては市販のエポキシ樹脂を使用できる。市販品は単一成分のものも存在するが、多くの場合、混合品である。
本発明で用いられる硬化剤はエポキシ樹脂に用いられるものであればよく、具体例としては、メルカプタン系化合物(脂肪族チオエ-テル、芳香族含有チオエ-テル、脂肪族チオエステル等を含む)、脂肪族ポリアミン系化合物、ポリアミノアミド(ポリアミド樹脂)系化合物、芳香族ジアミン系化合物、脂環族ジアミン系化合物、イミダゾ-ル系化合物、3級アミン系化合物(トリスジメチルアミノメチルフェノ-ル等を含む)、フェノ-ル樹脂系化合物、アミノ樹脂系化合物、ジシアンジアミド系化合物、ルイス酸錯化合物系化合物、シラン樹脂系化合物(アミノ化シラン化合物を含む)、及び上記の類似物を例示できる。なお本明細書中、類似物とは互いに基本骨格が同じである化合物を意味する。
本発明で硬化剤として用いられる化合物は、その機能を硬化促進剤と分類し難い場合がある。そのため本発明で用いられる硬化剤には、硬化剤としても使用できる硬化促進剤も包含される。硬化剤としても使用できるエポキシ樹脂硬化促進剤としては、脂肪族ポリアミン系化合物、ポリアミノアミド(ポリアミド樹脂)系化合物、芳香族ジアミン系化合物、脂環族ジアミン系化合物、イミダゾ-ル系化合物(イミダゾ-ル、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾ-ル、1-ベンジル-2-メチルイミダゾ-ル、1-イソブチル-2-メチルイミダゾ-ル、1-シアノエチル-2-エチル-4(5)-メチルイミダゾ-ル、2-ヘプタデシルイミダゾ-ル、2-メチルイミダゾ-ルアジン、2-ウンデシルイミダゾ-ル等を含む)、3級アミン系化合物(トリスジメチルアミノメチルフェノ-ル等を含む)、フェノ-ル樹脂系化合物、アミノ樹脂系化合物、ジシアンジアミド系化合物、ルイス酸錯化合物系、シラン樹脂系化合物、及び上記の類似物を例示できる。
上記に硬化促進剤として例示する化合物が、硬化剤として例示した化合物と一部重複するのは、該化合物の機能が硬化剤か硬化促進剤かを一概に分類できないからである。上記の硬化剤及び硬化剤としても使用できる硬化促進剤は、1種でもよく2種以上を添加してもよいが、反応制御の観点から1種を添加することが好ましい。市販品を使用でき、市販品でも単一成分のものがある。
本発明で用いられる電位安定剤は、エポキシ樹脂組成物と化学的に反発し合わないものが好ましく、具体的には、4級アンモニウム塩(メチルトリドデシルアンモニウムクロライド、ブチルトリドデシルアンモニウムクロライド、テトラオクタデシルアンモニウムクロライド、((8S,9R)-(-)-ベンジルシンコジニウムクロライド、1,14-ジステアリルビシクロ[2,2,2]オクタ-1,14アンモニウムジクロライド等を含む)、4級アンモニウム陰イオンとポリスチレンスルホン酸陰イオンからなるイオン会合体(((8S,9R)-(-)-ベンジルシンコジニウム陽イオンとポリスチレンスルホン酸陰イオンからなるイオン会合体、1,14-ジステアリルビシクロ[2,2,2]オクタ-1,14アンモニウム二陽イオンとポリスチレンスルホン酸陰イオンからなるイオン会合体等を含む)、及び上記の類似物を例示できる。電位安定剤は1種でもよく2種以上を用いてもよいが、反応制御の観点から1種を添加することが好ましい。市販品を使用でき、市販品でも単一成分のものがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の作用効果を損なわない限りにおいて、硬化剤として使用できない硬化促進剤や各種添加剤等、他の成分を含んでもよい。
[陰イオン選択性測定工程]
本工程の第一の陰イオン選択性測定工程では、エポキシ樹脂組成物Y1の硬化物であるテスト応答膜の陰イオン選択性を測定する。エポキシ樹脂組成物Y1はエポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含む。エポキシ樹脂組成物Y1に含まれる硬化剤と電位安定剤は、それぞれエポキシ樹脂組成物Xに含まれる化合物と同じものを、エポキシ樹脂組成物X中の含有量と等しくして含有させる。エポキシ樹脂組成物Y1に含まれるエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂組成物Xに使用できるエポキシ樹脂群から選択され、そのエポキシ樹脂組成物Y1中の含有量は、エポキシ樹脂組成物X中のエポキシ樹脂の含有量と異ならせる。
上記の基準に従って得られたエポキシ樹脂組成物Y1を公知の方法で硬化させることにより、テスト応答膜を作製する。テスト応答膜の膜厚はモデル応答膜と同様であることが好ましい。テスト応答膜は、エポキシ樹脂の種類や含有量を変えて複数作製してもよい。テスト応答膜は、モデル応答膜と同様の方法で陰イオン選択性を測定する。当該測定結果は、別言すればテスト応答膜の陰イオン選択性パターンである。測定対象の陰イオンが1種の場合、その陰イオン種がモデル応答膜の陰イオン選択性パターンに含まれることが好ましく、測定対象の陰イオンが2種以上の場合、その組み合わせがモデル応答膜の陰イオン選択性パターンと比較可能な態様であることが好ましい。
[選択工程]
本工程では、テスト応答膜の陰イオン選択性パターンとモデル応答膜の陰イオン選択性とを比較し、モデル応答膜の陰イオン選択性パターンと一致性が高い陰イオン選択性を備えるテスト応答膜の硬化前のエポキシ樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物Zとして選択される。エポキシ樹脂組成物Zは、所望の陰イオン選択性を備えさせるために最適化された組成を持つ。本発明において、「陰イオン選択性パターンの一致性が高い」とは、テスト応答膜とモデル応答膜の陰イオン選択性パターンが完全に一致する場合や、測定結果の傾向が近似し相異があっても誤差範囲内である場合を意味する。
本発明によれば、エポキシ樹脂組成物Y1のテスト応答膜のように、硬化剤や電位安定剤の種類や含有量をモデル応答膜の硬化前のエポキシ樹脂組成物Xと同じにしたまま、エポキシ樹脂の種類や含有量を変えることでモデル応答膜の陰イオン選択性に近い陰イオン選択性を有する別の陰イオン選択性電極用応答膜を得ることができる。これは、他の化学系では稀な事象である。その理由は、例えば、樹脂(塩化ビニル等)、可塑剤(フタル酸エステル等)、イオノフォア(感応物質)からなる陽イオン選択性電極膜において、樹脂を塩化ビニルから塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体へと替えればイオン選択性が変化するし、可塑剤をフタル酸エステルからセバシン酸エステルへと替えればイオン選択性が変化する、又は応答しなくなるからである。
本発明は、テスト応答膜の陰イオン選択性を向上させるため、又はモデル応答膜の陰イオン選択性パターンに一層近づけるため、第二の陰イオン選択性測定工程を実施してもよい。第二の陰イオン選択性測定工程では、エポキシ樹脂組成物Y2の陰イオン選択性を測定する。エポキシ樹脂組成物Y2は、エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤を含み、エポキシ樹脂と硬化剤とはエポキシ樹脂組成物Y1に含まれる化合物と同じものを使用し、エポキシ樹脂と硬化剤との含有比率(エポキシ樹脂の含有量/硬化剤の含有量)もエポキシ樹脂組成物Y1と同等にする。
本発明において、「エポキシ樹脂組成物Y2のエポキシ樹脂と硬化剤との含有比率(エポキシ樹脂の含有量/硬化剤の含有量)がエポキシ樹脂組成物Y1のものと同等である」とは、エポキシ樹脂Y2の当該含有比率がエポキシ樹脂組成物Y1の当該含有比率と同じである場合に加え、本発明の作用効果を損なわない限りでの相異が許容されることを意味する。
エポキシ樹脂と硬化剤電位安定剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物Y2の総量に対し0.8重量%未満とする。これにより電位安定剤が感応物質として機能することがほぼ不可能となり、相対的にエポキシ樹脂組成物Y2の硬化反応時に発生する4級アンモニウムイオンの感応物質としての寄与が大きくなる。
上記の基準に従って得られたエポキシ樹脂組成物Y2を硬化させることにより、テスト応答膜を作製する。テスト応答膜の膜厚はモデル応答膜と同様であることが好ましい。テスト応答膜は、電位安定剤の含有量を変えたりして複数作製してもよい。テスト応答膜は、モデル応答膜と同様の方法で陰イオン選択性を測定する。当該測定結果は、別言すればテスト応答膜の陰イオン選択性パターンである。測定対象の陰イオンが1種の場合、その陰イオン種がモデル応答膜の陰イオン選択性パターンに含まれることが好ましく、測定対象の陰イオンが2種以上の場合、その組み合わせがモデル応答膜の陰イオン選択性パターンと比較可能な態様であることが好ましい。
第二の陰イオン選択性測定工程でエポキシ樹脂組成物Y2から得たテスト応答膜の陰イオン選択性の測定結果は、エポキシ樹脂組成物Y1から得たテスト応答膜の陰イオン選択性の測定結果と同様に選択工程を実施する。第二の陰イオン選択性測定工程は、先にエポキシ樹脂組成物Y1から得たテスト応答膜について選択工程を実施し、エポキシ樹脂組成物Zとして選択されたエポキシ樹脂組成物Y1の組成に基づいて得たエポキシ樹脂組成物Y2について実施する。ただし、第一及び第二の陰イオン選択性測定工程を連続して行い、エポキシ樹脂組成物Y1及びエポキシ樹脂組成物Y2から得られたテスト応答膜について、まとめて選択工程を実施してもよい。
[陰イオン選択性電極用応答膜]
本発明の製造方法で得られるエポキシ樹脂組成物Zを公知の方法で硬化、成膜させることにより、本発明の陰イオン選択性電極用応答膜を得られる。その膜厚は、所望の陰イオン選択性を損なわない範囲内で装備する機器に合わせて調整される。本発明は、塩化物イオンをはじめ所望の陰イオン選択性に優れるように製造されるため、飲料水、工業用水、農業用水、廃液、体液の各イオン濃度測定等、用途に適した陰イオン選択性電極用応答膜である。
本発明を、実施例を用いて説明する。なお本発明は以下に説明する実施例に限定されるものではない。本実施例では所定のエポキシ樹脂組成物を硬化させて応答膜を形成した電極セルを作製し、該電極セルを装備した分析装置で陰イオン選択性を試験した。電極セルは流路部と端子部とを一体化させてなり、図1は一体化前の電極セル(流路部)を端子部との接着面側から見たときの概要を示す図である。図2は図1の流路部と端子部を一体化させた電極セルを装備した測定系の概要を示す図である。図1、2において、1は電極セルの流路部、2は流路、3は電極セルの端子部6との接着面、4は電極膜形成後の電極セル内面、5は応答膜である。6は電極セルの端子部、7は内極、8は電極内部液、9は参照電極、10は液絡部、11は参照電極内極、12は参照電極内部液、13は電位差計である。手順1)~10)の説明中、カッコ内の数字は図1、2の符号と対応する。
下記の参考例、実施例、比較例の陰イオン選択性電極応答膜に使用したエポキシ樹脂の性状は、下記のとおりである。
エピコート(登録商標)815XA(参考例):ビスフェノ-ルA型1(液状):86%、ビスフェノ-ルA型2(液状):3%、その他(希釈剤):11%
エピコート(登録商標)828(実施例1、実施例3、比較例1、3):ビスフェノ-ルA型(液状)
エピコート(登録商標)811(実施例2、実施例4、及び比較例2):ビスフェノ-ルA型(液状):70-90%、ビスフェノ-ルF型(液状):1-11%、その他(希釈剤):5-20%
エピコート(登録商標)807(比較例4):ビスフェノ-ルF型(液状)
[参考例](モデル応答膜)
前処理として電極セル(流路部)(1)内面に加工を行う手順を1)~3)に示す。
1)流路径よりも僅かに径の大きなフッ素樹脂チュ-ブの先端を引き延ばし、電極セル(流路部)(1)の流路(2)内に入れる。これは加工で流路を汚染しないための対策である。
2)カッタ-ナイフでフッ素樹脂チューブに縦横斜めに傷を付ける。それぞれ、0.5mm間隔以下で行う。ブラスト処理を行う場合は、カッタ-ナイフで付けた傷痕と同様の粗さになるようにする。
3)筆などでフッ素樹脂の屑を除き、傷ついたフッ素樹脂チュ-ブを取り換える。
ついで、電極セルの作製法を4)~10)に示す。
4)エポキシ樹脂組成物Xの成分として、メチルトリドデシルアンモニウムクロライド(電位安定剤、略記:MTDDA-Cl)(販売業者:シグマ-アルドリッチ)(1.44mg)及びエピコ-ト(登録商標)815XA(略記:815)(販売業者:三菱ケミカル)(156.00mg)を薬匙で、2,4,6-トリス(ジアミノメチル)フェノ-ル(硬化剤、略記:DMP-30)(26.40mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりである。
815:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:26.40:1.44=84.86:14.36:0.78
84.86+14.36+0.78=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/26.40mg=5.91
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで815を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加えて均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
6)先に用意した電極セル(流路部)(1)の内面の流路2内の検体14との接触領域に5)で作製した混合物を塗り付けた(混合物量は電極セル3ヶ分であった。この作業は30秒程度で終わらせた)。
7)混合物を塗り付けた電極セル(流路部)(1)を、ホットプレ-ト(60℃)上で一時間加熱放置した。
8)加熱終了後、ホットプレ-トから電極セル(流路部)(1)を降ろして放冷し、流路(2)からフッ素樹脂チュ-ブを引き抜いた。
9)シクロヘキサノンを用い、電極セル(流路部)(1)を電極セル(端子部)(6)と接着し、一晩放置し、乾燥させた。
10)完成した電極セル(流路部と端子部を一体化したもの)内に電極内部液(8)を充填し、封印した。
参考例のエポキシ樹脂組成物の硬化物は、臨床検査用塩化物イオン測定電極用応答膜として、極めて良好なイオン選択性を備える。すなわち、参考例の硬化物を使用した電極はCl電極よりも感受性が良く、血液中には存在しない陰イオン種に対しては応答性が高い。血液中に存在しない陰イオン種としては、チオシアン酸イオン(SCN)、ヨウ化物イオン(I)、臭化物イオン(Br)、サリチル酸イオン(Sal)、硝酸イオン(NO )、アジ化物イオン(N )、ギ酸イオン(HCOO)、トリエタノ-ルアミン(TEA)が挙げられる。
一方、血液中に存在する陰イオン種に対しては応答性が極めて低い。血液中に存在する陰イオンとしては、重炭酸イオン(HCO )、酢酸イオン(AcO)、硫酸イオン(SO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、乳酸イオン(Lac)が挙げられる。なお参考例では、ギ酸イオン、TEAは、血液中に存在しない陰イオン種であるものの、血液中に存在する陰イオンに近い応答性を示した。参考例のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂組成物Xに相当し、その硬化物はモデル応答膜に相当する。
上記4)、5)の手順を下記のとおりとして参考例のエポキシ樹脂組成物の組成を変え、実施例1~4、比較例1~4とした。いずれの実施例、比較例においても1)~3)と6)~10)の手順は参考例と同様に行い、電極セルを作製した。
[実施例1]
実施例1では、エピコート(登録商標)828(略記:828)を用い、その含有量は参考例のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量の1/3量にした。硬化剤と電位安定剤の含有量は参考例のエポキシ樹脂組成物中の硬化剤と電位安定剤とそれぞれ同量にした。ただし、作製の都合上、実際に作製したエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂の量を据え置き、硬化剤及び電位安定剤の量を3倍とした。
4)MTDDA-Cl(4.32mg=1.44mg×3)及び828(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(79.20mg=26.40mg×3)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
828:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:79.20:4.32=65.13:33.07:1.80
65.13+33.07+1.80=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/79.20mg=1.97
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで828を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[実施例2]
実施例2では、エピコート(登録商標)811(略記:811)を用い、その含有量は参考例のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量の1/2量にした。硬化剤と電位安定剤の含有量は参考例のエポキシ樹脂組成物とそれぞれ同量にした。ただし、作製の都合上、実際に作製したエポキシ樹脂組成物Y1は、エポキシ樹脂の量を据え置き、硬化剤、及び電位安定剤の量を2倍とした。
4)MTDDA-Cl(2.88mg=1.44×2)及び811(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(52.80mg=16.40mg×2)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
811:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:52.80:2.88=73.70:24.94:1.36
73.70+24.94+1.36=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/52.80mg=2.95
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで811を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[実施例3]
実施例3では、エポキシ樹脂と硬化剤との含有比率(エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量)を実施例1のエポキシ樹脂組成物と同様にし、かつ電位安定剤は実施例3のエポキシ樹脂組成物中0.8重量%未満となるようにした。
4)MTDDA-Cl(1.50mg)及び828(125.03mg)を薬匙で、DMP-30(63.47mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
828:DMP-30:MTDDA-Cl=125.03:63.47:1.50=65.80:33.41:0.79
65.80+33.41+0.79=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=125.03mg/63.47mg=1.97
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで828を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[実施例4]
実施例4では、エポキシ樹脂と硬化剤との含有比率(エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量)を実施例2のエポキシ樹脂組成物と同様にし、かつ電位安定剤は実施例4のエポキシ樹脂組成物中0.8重量%未満となるようにした。
4)MTDDA-Cl(1.44mg)及び811(140.88mg)を薬匙で、DMP-30(47.68mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
811:DMP-30:MTDDA-Cl=140.88:47.68:1.44=74.15:25.09:0.76
74.15+25.09+0.76=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=140.88mg/47.68mg=2.95
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで811を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[比較例1]
比較例1では、参考例のエポキシ樹脂を828に替え、各成分の含有量を参考例と同量にした。
4)MTDDA-Cl(1.44mg)及び828(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(26.40mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
828:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:26.40:1.44=84.86:14.36:0.78
84.86+14.36+0.78=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/26.40mg=5.91
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで828を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[比較例2]
比較例2では、参考例のエポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂を811に替え、各成分の含有量を参考例と同量にした。
4)MTDDA-Cl(1.44mg)及び811(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(26.40mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
811:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:26.40:1.44=84.86:14.36:0.78
84.86+14.36+0.78=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/26.40mg=5.91
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで811を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[比較例3]
比較例3では、硬化剤の含有量を参考例のエポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量の半分にし、エポキシ樹脂は828を用いた。比較例3のエポキシ樹脂組成物は、参考例と比較して、硬化剤の含有量を減少させ、相対的にエポキシ樹脂の含有比率を増加させた組成である。
4)MTDDA-Cl(1.44mg)及び828(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(13.20mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
828:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:13.20:1.44=91.42:7.74:0.84
91.42+7.74+0.84=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/13.20mg=11.82
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで828を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
[比較例4]
比較例4では、参考例のエポキシ樹脂をエピコート(登録商標)807(略記:807)に替え、各成分の含有量を参考例と同量にした。
4)MTDDA-Cl(1.44mg)及び807(156.00mg)を薬匙で、DMP-30(26.40mg)をパスツ-ルピペットで量り取った。上記の各成分の量をエポキシ樹脂組成物中の含有比率(重量%)に換算すると、下記のとおりであった。
807:DMP-30:MTDDA-Cl=156.00:26.40:1.44=84.86:14.36:0.78
84.86+14.36+0.78=100.00(重量%)
エポキシ樹脂含有量/硬化剤含有量=156.00mg/26.40mg=5.91
5)瑪瑙又はセラミック乳鉢にMTDDA-Clを加えて押し潰し、次いで807を加えてよく混ぜ、最後にDMP-30を加え、均一に練った(この間、30秒程度で作業した)。
参考例及び実施例1~4、比較例1~4のエポキシ樹脂硬化物を陰イオン選択性電極用応答膜とした電極セルを臨床検査用の塩化物イオン選択性電極として用い、その性能を評価した。評価機器には、株式会社常光製電解質分析装置EX-Gを用いた。
[陰イオン選択性試験]
EX-G用の校正液1をベ-スにした試験液を用い、陰イオン選択性試験を行った。後述する化合物のナトリウム塩濃度が100mmol/L(0.1規定(N))となるように濃度を調製して試験液とし、陰イオン種を添加しない試験液(校正液1と同じ)をブランクとした。ただし、チオシアン酸ナトリウム及び硫酸ナトリウムについてはイオン濃度を50mmol/Lとした。チオシアン酸イオンは電極膜に対する応答性が高い(Cl電極より選択性が良い)ので0.05規定(N)に、他のイオン種は0.1規定(N)に統一した。なお、トリエタノ-ルアミンはナトリウム塩ではない。
各試験液は6重測定し、1検体目を除く5検体の平均値を測定結果とした。測定結果のイオン濃度がブランクの値に近い程、当陰イオンのClイオンから見た応答性が低いと評価した。また参考例(モデル応答膜)の測定結果との一致性や各陰イオンの選択性の傾向から塩化物イオン選択性電極用としての適性を検討した。図3~図14に示す測定値の単位は、mmol/Lである。
試験液に添加した陰イオン種は、チオシアン酸イオン(SCN)、ヨウ化物イオン(I)、臭化物イオン(Br)、サリチル酸イオン(Sal)、硝酸イオン(NO )、重炭酸イオン(HCO )、酢酸イオン(AcO)、ギ酸イオン(HCOO)、硫酸イオン(SO 2-)、リン酸二水素イオン(HPO )、トリエタノ-ルアミン(TEA)、乳酸イオン(Lac)、アジ化物イオン(N )である。
図3、4は参考例、実施例1、2の測定結果である。図3(表)及び図4(グラフ)からわかるように、実施例1の測定結果(陰イオン選択性パターン)は、殆どの陰イオン種で参考例(モデル応答膜)の陰イオン選択性パターンと一致性が高かった。これらの一致性が高かった陰イオン種は、血液中に存在する陰イオン種であった。一方、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、アジ化物イオンのイオン濃度は参考例との乖離が認められ、参考例の対応するイオン濃度より低値であった。これらの陰イオン種は、アジ化物イオンが防腐剤に含まれる成分である等、血液中に存在しない陰イオン種であった。上記の結果から、実施例1の塩化物イオン選択性電極としての性能は参考例より優れる。
実施例2の測定結果は、測定したすべての陰イオン種について、参考例の陰イオン選択性パターンとの一致性が高かった。従って実施例1、2は、参考例に相当する陰イオン選択性を備え、ともに参考例の代替品と成り得る。
実施例3、4は、実施例1、2の組成を基に、電位安定剤の含有量をエポキシ樹脂組成物の総量の0.8重量%未満としたものである。図5、6は参考例、実施例3、4の測定結果である。図5(表)及び図6(グラフ)からわかるように、実施例3、実施例4の測定結果(陰イオン選択性パターン)は、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、アジ化物イオンで乖離が認められるものの、他の陰イオン種については、参考例の陰イオン選択性パターンと一致性が高かった。従って実施例3、4は、実施例1、2と同様に参考例(モデル応答膜)に相当する陰イオン選択性を備え、参考例の代替品と成り得る。なお、実施例3、4の測定結果は実施例1、2に近い。
図7、8は参考例、実施例1、3の測定結果である。図7(表)及び図8(グラフ)からわかるように、実施例1、3の測定結果は、いずれも参考例の陰イオン選択性パターンと一致性が高かった。また実施例3の測定結果は実施例1のものとほぼ同一ながら、実施例3は、血液中に存在する陰イオン種の選択性が若干ではあるが実施例1より高い点で塩化物イオン選択性電極として、実施例1より優れる。
図9、10は参考例、実施例2、4の測定結果である。図9(表)及び図10(グラフ)からわかるように、実施例2、4の測定結果の相異は誤差範囲内で、ほぼ同一であった。更に、実施例2、4の陰イオン選択性パターンは、いずれも参考例の陰イオン選択性パターンとの一致性が高かった。
図11、12は参考例、比較例1、2の測定結果である。図11(表)及び図12(グラフ)からわかるように、比較例1、2はいずれも、チオシアン酸イオン(振り切れ)、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、アジ化物イオンで参考例の陰イオン選択性パターンとの乖離が認められた。なお、その乖離の度合いは比較例1の方が大きかった。比較例1、2は、医薬品の代謝物として生体内に存在する臭化物イオン、及び防腐剤成分であるアジ化物イオンのイオン濃度が高く、当該陰イオンの選択性が参考例より劣るため、参考例の代替品とはなり得ない。
図13、14は参考例、実施例3、比較例1、3、4の測定結果である。上記実施例の理解を深めるため、比較例3では参考例より硬化剤の含有量を減少させ、相対的にエポキシ樹脂の含有比率を増加させた。比較例4では、参考例と異なるエポキシ樹脂(807)を参考例と同一の含有比率で調製した。
図13(表)及び図14(グラフ)からわかるように、比較例3では、チオシアン酸イオン及びアジ化物イオンで振り切れ、ヨウ化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオンの測定結果で参考例との乖離が認められた。また、比較例4のイオン選択性は、興味深いことに、比較例1のイオン選択性と類似していた。
上記の実施例に示されるように、本発明の方法により、エポキシ樹脂組成物の組成を効率的に最適化して、所定の検体に適した陰イオン選択性を備える、実用性の高い電極用応答膜を作製することが可能となった。また特許文献3に示されるような陰イオン選択性応答膜の成分の一部を他の化合物に変えても、該陰イオン選択性応答膜とほぼ同様の性能を有する別の電極用応答膜を作製することが可能となった。
1 電極セル(流路部)
2 流路
3 電極セル(端子部)との接着面
4 加工後の電極セル内面
5 電極(応答膜)
6 電極セル(端子部)
7 内極
8 電極内部液
9 参照電極
10 液絡部
11 参照電極内極
12 参照電極内部液
13 電位差計
14 検体

Claims (2)

  1. エポキシ樹脂と硬化剤と電位安定剤とを含むエポキシ樹脂組成物Xの硬化物である、陰イオン選択性電極用のモデル応答膜の陰イオン選択性パターンを準備する陰イオン選択性パターン準備工程と、
    エポキシ樹脂とエポキシ樹脂組成物Xに含まれる硬化剤と電位安定剤と同じ硬化剤と電位安定剤とを含み、エポキシ樹脂の重量がエポキシ樹脂組成物X中のエポキシ樹脂の重量と異なり、硬化剤と電位安定剤との各重量がエポキシ樹脂組成物X中の硬化剤と電位安定剤の各重量と等しいエポキシ樹脂組成物Y1を硬化させたテスト応答膜の陰イオン選択性を測定する、第一の陰イオン選択性測定工程と、
    陰イオン選択性パターンとの一致性が高い陰イオン選択性を備えるテスト応答膜のエポキシ樹脂組成物を、陰イオン選択性電極用応答膜に用いるエポキシ樹脂組成物Zとして選択する選択工程とを含む、陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法。
  2. エポキシ樹脂組成物Y1とエポキシ樹脂に対する硬化剤の重量比が同等で電位安定剤の重量が総量の0.8重量%未満である、エポキシ樹脂組成物Y2を硬化させたテスト応答膜の陰イオン選択性を測定する第二の陰イオン選択性測定工程を含む、請求項1に記載の陰イオン選択性電極用応答膜の製造方法。
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