JPH06134875A - 繊維強化プラスチツク製中空柱体の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 均一な強度と剛性を有した繊維強化プラスチ
ツク製中空柱体を損傷することなく、しかも容易に製造
する方法を提供することにある。 【構成】 繊維強化プラスチツク製中空柱体を成形する
に際し、分割線が長軸に対して角度を有しかつ両端面に
存在するように少なくとも２分割した中空柱体を芯材と
して用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、等しい長軸断面を有す
る繊維強化プラスチツク製中空柱体を製造する方法に関
する。

【０００２】

【従来の技術】プラスチツクを構造材として使用する場
合、強度および剛性を向上させると同時に低コスト化お
よび軽量化を図るうえで、中空体として構成することが
好ましい。プラスチツクの中空柱体としては、溶融押出
しにより製造された中空柱体が一般的に用いられるが、
強度が要求される構造部材には補強繊維を用いて強化し
たプラスチツクの中空柱体が通常用いられる。繊維強化
プラスチツクを素材として中空柱体を製造するには、板
状に加工された繊維強化プラスチツク材料を加熱軟化さ
せて芯材に巻き付ける方法、あるいは芯材にあらかじめ
巻き付けた高強度繊維または高強度繊維の織物等に熱硬
化性樹脂を含侵硬化する方法などが知られている。これ
らの方法において、成形後芯材を抜き取るためには、芯
材に機械的な力をかける方法、芯材に膨張可能な袋状の
部材を用いる方法、芯材に抜き角を設ける方法などが知
られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、芯材を
機械的な力で片端から抜き取る方法では、芯材を抜き取
るために成形品を保持することが必要となり、抜き取る
力と同等の力が成形品にかかり成形品が損傷する場合が
あり、特に長軸断面の等しい中空柱体では損傷の程度が
大きい。

【０００４】また、芯材に膨張可能な袋状の部材を用い
る方法では、膨張させていた内容物を減少させ、成形品
と芯材とに間隙を形成させて芯材の抜き取りを容易にす
る方法であるので、芯材が変形しやすく成形品の寸法安
定性に問題が生じ、強度および剛性が不均一の中空柱体
となるという問題がある。

【０００５】一方、芯材に抜き角を設ける方法では、芯
材の抜き取りは容易になる半面、成形品の断面は長軸方
向に一定でなく、強度および剛性が不均一の中空柱体と
なるという問題がある。したがって、本発明は、上記の
問題点を解決すべくなされたもので、中空柱体を製造す
るにあたって、均一な強度と剛性を有した成形品を損傷
することなく、しかも容易に製造する方法を提供するこ
とを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的は本発明によれ
ば、繊維強化プラスチツク製中空柱体を成形するに際
し、分割線が長軸に対して角度を有しかつ両端面に存在
するように少なくとも２分割した中空柱体を芯材として
用いることによって達成できる。

【０００７】以下、本発明を詳細に説明する。

【０００８】本発明の方法に用いられる芯材としては、
分割線が長軸に対して角度を有しかつ両端面に存在する
ように少なくとも２分割した中空柱体が用いられ、より
好ましくは分割線が長軸に対して角度を有しかつ分割線
が両端面に存在するように２分割した中空柱体が用いら
れる。２分割した中空柱体の分割線の角度等は芯材の長
さにより変化するが、分割線が長軸に対してとる角度と
しては５〜４５度であることが好ましく、また分割線の
両端面における位置としては分割される端面の狭い面と
広い面との比が１／３以下であることが好ましい。中空
柱体の断面形状としては、特に制限はないが円であるこ
とが好ましい。図１は、本発明の方法に好ましい態様の
一つであり、円筒形の中空柱体を成形するための芯材の
構造を模式的に示す図であって、長軸に対して角度をも
った分割線２により分割される芯材１ａおよび１ｂから
構成される。

【０００９】芯材用中空柱体としては、目的とするプラ
スチツク製中空柱体の成形時にかかる力に耐えうる剛
性、強度を有する材料であれば特に制限はなく、例えば
ステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属製中空柱体、
陶器、セラミック等の無機物製中空柱体、各種プラスチ
ツク製中空柱体、またはそれらの表面にクロムメッキ、
テフロン加工等により離型性を向上させるための表面加
工を行った中空柱体を用いることができる。これらの中
空柱体を分割して芯材として用いられる。

【００１０】本発明の方法に用いられる繊維強化プラス
チツクの材料としては、特に制限はなく、２次加工が可
能な板状の材料、例えば不飽和ポリエステル、ビニルエ
ステル、エポキシ等の熱硬化性樹脂を、ガラス繊維やカ
ーボン繊維等の無機繊維、もしくは芳香族ポリアミド繊
維、液晶繊維などの合成繊維に含侵させた通常ＦＲＰと
して使用されているプリプレグシート、あるいはシート
状に並べたガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、も
しくは芳香族ポリアミド繊維、液晶繊維などの合成繊維
に、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂を
含侵させた通常のスタンパブルシートなどを用いること
ができる。

【００１１】本発明の方法によって得られる繊維強化プ
ラスチツク製中空柱体は、両端治具固定の前記芯材に加
熱したスタンパブルシートなどの板状の繊維強化プラス
チツク材料を巻きつけるか、プリプレグシートなどの板
状の繊維強化プラスチツク材料を巻きつけて加熱硬させ
るか、あるいはマツト状繊維を巻きつけこれに熱硬化性
樹脂を含侵させ加熱硬化させるなどして繊維強化プラス
チツク製中空柱体を成形した後、芯材固定治具を取り外
して芯材を両側からそれぞれ引き抜くことにより脱型し
て製造することができる。

【００１２】

【作用】本発明の方法では、少なくとも２分割した芯材
を異なる方向へそれぞれ引き抜く機構であり、互いに一
方が他方を保持するように働くために、成形品を引き抜
くのに必要な力以外はかからない。しかも芯材の分割面
が長軸に対して角度を有しているために、芯材を引き抜
く時の分割面間での摩擦力は極めて小さくすることがで
きるので成形品の脱型が容易に行われる。

【００１３】

【実施例】次に本発明の方法を実施例に基づいて説明す
る。

【００１４】実施例１ 図２および図３は本発明の方法により円筒形の中空柱
体、例えば積層ＦＲＰパイプを脱型する際の過程を模式
的に示す図であつて、プリプレグ材を積層硬化したＦＲ
Ｐパイプ３、芯材１ａ、１ｂおよび固定リング４ａ、４
ｂとが図示されている。このＦＲＰパイプは通常のプリ
プレグ材を芯材に巻きつけ積層硬化したパイプであり、
芯材には長さ８５０ｍｍ、肉厚３ｍｍのステンレスパイ
プを長軸に対して１２度の角度で分割したものを、固定
リングには芯材の外径に等しい内径を持つステンレスリ
ングをそれぞれ使用した。

【００１５】図１の様な分割面を持つ芯材１ａ、１ｂの
両端に元の円筒形状を保持するように固定リング４ａ、
４ｂをはめ、図２に示すようにプリプレグ材をその芯材
に巻き付け硬化させる。硬化冷却後図３に示すように固
定リング４ａ、４ｂを外し長軸方向へ芯材１ａおよび１
ｂをそれぞれＡおよびＢ方向に引き、ＦＲＰパイプから
芯材を抜き取った。その際芯材の分割線もしくはＦＲＰ
パイプと芯材の境界に軽い衝撃を加えることによって、
より容易に抜き取りを行うことが可能となる。また一方
の芯材部品のみ抜けて、他方へＦＲＰパイプが残ってし
まった場合でも軽い衝撃を加えることによって、芯材の
抜き取りを容易に行うことが可能である。

【００１６】比較例１ 図４は、実施例と同様な円筒形中空柱体を、分割しない
芯材から脱型する際の過程を模式的に示す図であって、
例えばプリプレグ材を積層硬化したＦＲＰパイプ３、芯
材５および脱型補助ブロック６が図示されている。この
ＦＲＰパイプ３は実施例と同様、通常のＦＲＰパイプで
あり、芯材に肉厚３ｍｍのステンレスパイプを、脱型補
助ブロックには引き抜き時にＦＲＰパイプを保持するこ
とができるように固定された、内径が芯材の内径よりも
大きく、かつＦＲＰパイプの外径よりも小さい穴の開い
たステンレス製の金属ブロックを使用した。

【００１７】図４のように硬化したＦＲＰパイプの芯材
を引き抜くためにステンレスブロックへセットする。セ
ットした側から芯材を引き抜く。この際芯材を引き抜く
ためには非常に大きな力が必要であり、多くの脱型した
ＦＲＰパイプの脱型補助ブロックとの接触端に損傷が認
められた。また成形するＦＲＰパイプ長が増大するほど
引き抜くのに必要な力と、ＦＲＰパイプの損傷率は増大
した。

【００１８】比較例２ 図５は実施例と同様な円筒形中空柱体を長軸を含む分割
面で分割した芯材を用いて脱型する際の過程を模式的に
示す図であって、例えばプリプレグ材を積層硬化したＦ
ＲＰパイプ３、芯材７ａ、７ｂおよび固定リング４ａ、
４ｂが図示されている。このＦＲＰパイプ３は実施例と
同様、通常のＦＲＰパイプであり、芯材には長さ８５０
ｍｍ、肉厚３ｍｍのステンレスパイプを長軸で分割した
ものを、固定リングには芯材の外径に等しい内径を持つ
ステンレスリングを使用した。

【００１９】図５の様な分割面を持つ芯材７ａ、７ｂの
両端に元の円筒形状を保持するよう固定リング４ａ、４
ｂをはめ、図６に示すようにプリプレグ材をその芯材に
巻き付け硬化した。硬化後図７に示すように固定リング
４ａ、４ｂを外し長軸方向へ芯材７ａおよび７ｂをそれ
ぞれＡおよびＢ方向に引き、ＦＲＰパイプから芯材を抜
き取った。この際ＦＲＰパイプに損傷が認められ、また
ＦＲＰパイプの成形収縮により、芯材の分割面に働く摩
擦力は大きく、実施例での引き抜く力よりも遥かに多大
な力を必要とした。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように本発明の方法によれ
ば、長軸断面の等しい繊維強化プラスチツク中空柱体の
脱型時に、成形品を損傷することなく、容易に芯材を抜
き取ることが可能となり、従来よりも長い中空柱体の製
造が可能となる。しかも用いる芯材の構造は非常に単純
であり、その結果、設備コストの増大を抑制することが
可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の方法に好ましい態様の一つである芯材
を示す図である。

【図２】本発明の方法により円筒形の中空柱体を成形す
る過程の模式図である。

【図３】成形品の脱型過程を示す模式図である。

【図４】従来の成形品の脱型過程を示す模式図である。

【図５】長軸を含む分割面で分割した芯材を示す図であ
る。

【図６】円筒形の中空柱体を成形する過程の模式図であ
る。

【図７】成形品の脱型過程を示す模式図である。

【符号の説明】

１ａ，１ｂ，５，７ａ，７ｂ；芯材 ２ ；分割線 ３ ；ＦＲＰパイプ ４ａ，４ｂ；固定リング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 繊維強化プラスチツク製中空柱体を成形
   するに際し、分割線が長軸に対して角度を有し、かつ両
   端面に存在するように少なくとも２分割した中空柱体を
   芯材として用いることを特徴とする繊維強化プラスチツ
   ク製中空柱体の製造方法。